JP4044355B2 - 魚群探知機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は魚群探知技術、とくに音波を利用する魚群探知機に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、魚群探知機は超音波を探知波として水中に射出し、その反射波に基づいて魚群や海底の状態を視覚化する。典型的な魚群探知機は、水中へ探知波を射出し、水中からの反射波を受波するトランスジューサと、トランスジューサを駆動する送信部と、トランスジューサからの信号を増幅、検波する受信部と、トランスジューサへの送波を指示するとともに、受波した反射波に基づいて海中の状態を検出する処理部と、その検出結果の視覚化部とを備える。処理部は、例えば反射波の強度に応じてその反射波をデジタル値に変換し、探知波の送波から反射波の受波までの経過時間に基づいて物体までの距離を測定する。視覚化部は、例えば反射波の強度、物体の大きさや距離をユーザが認識できるよう表示装置に描画する。
【0003】
送信部は、電気信号を音波に変えるトランスジューサを駆動し、受信部は、トランスジューサからの反射波を増幅、検波する。トランスジューサは、この送波と受波のための音響電気変換器であり、通常、船底に取り付けられる。トランスジューサは電歪振動子、磁歪振動子などの振動子が用いられる。
【0004】
探知波の周波数は探知目的による。周波数を高くすると減衰しやすくなり音波の到達距離は短くなるが、物体の識別解像度は上がる。周波数を低くすると識別解像度は下がるが、到達距離が長くなり深い水深まで探知できる。したがって、探知波の周波数は、探知対象魚種や操業水域の水深に応じて決められる。高周波、低周波双方の特長を生かすべく、複数周波数の探知波を使うこともあり、その場合、各周波数に対応するトランスジューサ、送信部および受信部を設ける。
【0005】
図1は、魚探画面の表示例を示す図である。探知波を送信すると、それが水底に衝突して生じる反射波、魚群に衝突して生じる反射波など複数の反射波が生じる。図示しない処理部は、ある探知波に対する反射波から反射の生じた位置を算出し、それらの位置を一本の、例えば上下方向のライン上にマークする(以下、探知ラインという)。魚探画面は、その探知ラインを時系列に並べて構成される。探知ラインは、画面の右端に順次追加表示および順送りされ、右端から左端方向に探知ラインが並び一枚の魚探画面が構成される。
【0006】
図1(a)は、水底が徐々に浅くなっている状態を示している。図1(b)は、水底が徐々に深くなっている状態を示している。図1(c)は、水底の傾斜が点Pにおいて急激に上昇から下降に変化している状態を示している。図1(d)は、水底がなだらかな状態を示している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
魚探画面を利用してユーザは水底の傾斜を判断し、漁場の把握をする。特に水底の昇降または傾斜やそれらの変化は漁の重要な情報とされる。ユーザは、ある程度の期間にわたり探知ラインに示される水底の形状や、画面上に表示される水深値の変化を見て判断を下す必要がある。しかし、いずれの場合も、次の探知ラインで水底の形状がどうなっていたかは、ある程度の時間が経過しないと把握できない。とくに、図1(c)のように急激な変化があった場合では相当時間が経過してからでないと傾斜状態を把握できず、タイムリーな操業に支障をきたす。
【0008】
本発明者はそうした点に着目して本発明をなしたものであり、その目的は、水底面の傾斜を検出する技術を提供することにある。また、それを実現する装置を提供することにある。さらに、そうした技術で検出した水底面の傾斜状態をユーザが容易に認識できるユーザインターフェイスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のある態様は、魚群探知機である。この装置は、探知信号を送信し、反射信号を受信する送受信部と、前記反射信号に基づいて水底の深度を検出する水底検出部と、前記水底の深度の変化に基づいて、水底の傾斜を検出する傾斜検出部とを備える。
【0010】
この装置は、前記水底の昇降を示すシンボルを、所定のタイミングで魚探画面に表示させる表示処理部を更に備えてもよい。「所定のタイミング」は、例えば、探知ラインの表示の1回から数回毎であってよい。
【0011】
前記傾斜検出部は、現在の反射信号および前回の反射信号に基づいて前記水底検出部が検出したそれぞれの深度の差をもとに処理をなしてもよい。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、方法、システム、コンピュータプログラムの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0013】
【発明の実施の形態】
図2は、実施の形態に係る魚群探知機100の構成図である。タイミング生成部34は、探知波の送信を送信部12に指示するとともに、サンプリングクロック生成部22にサンプリング開始タイミングおよびサンプリング終了タイミングを出力する。送信部12は、送受波器16を駆動するための電気信号を送受波器16に出力する。送受波器16は、例えばトランスジューサであって、送信部12から供給された電気信号に基づいて探知波を水中に射出する。その探知波は、魚群18および海底20に衝突してそれぞれ反射波となる。送受波器16は、それらの反射波を受波して電気信号(以下、反射信号という)に変換して受信部14に出力する。
【0014】
受信部14は、例えば対数増幅回路などの広ダイナミックレンジ増幅回路である。受信部14は、送受波器16から供給された反射信号を増幅、検波する。音波は水中を伝搬する間に減衰してしまう。その減衰量は、伝搬距離が長くなるほど大きくなる。これにより、同一反射率の物体でも、音源からの距離が離れるほどその反射波の強度は弱くなってしまう。そこで、反射波の到達時間に応じて増幅率を変えることで減衰の影響を抑えるSTC(Sensitivity Time Control)が施される。
【0015】
STCを行なうために、タイミング生成部34は、STC信号生成部44にSTC起動タイミングを出力する。STC信号生成部44は、操作部28のSTC調整部32からSTC特性指示値を取得し、STC信号をSTCタイミングで受信部14に出力する。受信部14は、STC信号に基づいて、探知距離が近いほど増幅率を小さくし、探知距離が遠いほど増幅率を大きくする。
【0016】
A/D変換部26は、増幅された反射信号をサンプリングクロック生成部22から供給されるサンプリングタイミングでデジタル値(以下、探知情報という)に変換し、バッファメモリ24に格納する。さらにA/D変換部26は、その探知情報を探知画像生成部38に出力する。
【0017】
探知画像生成部38は、その探知情報から反射波の強度や距離を算出し、探知ラインを生成する。探知画像生成部38は、生成した探知ラインを描画プロセッサ48を介してビデオメモリ50に格納する。探知画像生成部38は、距離に基づいて探知ライン上の表示位置を決め、強度に応じて表示色を決める。探知画像生成部38は、ユーザに指定された感度に基づいて反射波の強度に応じた表示色を決める。操作部28の感度調整部30は、感度をユーザから受け付け、探知画像生成部38に出力する。最終的な表示は表示部46で行われる。
【0018】
海底検出部36は、バッファメモリ24に保持されている探知情報、すなわち反射波の強度に基づいて水底を検出し、その反射波の到達時間から水深を算出する。海底検出部36は、算出した水深値を補助画像生成部40および傾斜検出部42に出力する。
【0019】
傾斜検出部42は、海底検出部36から供給された水深値に基づいて海底の傾斜を検出する。傾斜検出部42は、現在の水深値と前回の水深値とに基づいて、水底面の昇降を判断する。傾斜検出部42は、その判断結果を補助画像生成部40に出力する。他の例では、傾斜検出部42は、複数の探知シーケンスにおける水深値から平均的な水底面の傾斜を演算してもよいし、ヒステリシスを考慮して傾斜の極性が頻繁に切り替わらないようにしてもよい。また、複数の水深値に基づいて水底面を、例えば、最小二乗法やスプライン関数などを利用し、関数的に捉えて傾斜状態を判断してもよい。
【0020】
補助画像生成部40は、魚探画面に探知ラインとともに表示する、スケール、水深値、水底の昇降状態を示すシンボルなどのユーザが水中の状態を直観的に把握できるような補助画像のデータを生成して描画プロセッサ48に出力する。
【0021】
タイミング生成部34、海底検出部36、探知画像生成部38、補助画像生成部40、傾斜検出部42、およびSTC信号生成部44は、CPU56にプログラムを実行させることで構成される機能ブロックである。プログラムメモリ54は、それらの機能ブロックを構成するためのプログラムを格納する。メインメモリ52は、プログラムを実行する際にCPU56により利用される。他の例では、これらの機能ブロックがハードウエアで実現されてもよい。
【0022】
図3は、海底の傾斜状態を検出する処理のフローチャートである。まず、海底検出部36は、探知情報に基づいて海底を検出し(S10)、現在の水深を算出する(S12)。傾斜検出部42は、現在の水深値から前回の水深値を減じて差分Δを算出する(S14)。その後、傾斜検出部42は現在水深値を次回の探知シーケンス用に前回水深値として記録する(S16)。例えば、傾斜検出部42は前回水深値を、図2のメインメモリ52に一時的に格納する。
【0023】
差分Δの絶対値が所定値α以内の場合(S18のY)、傾斜検出部42は、水底の水深の変化量が微小であると判断する(S26)。所定値αは、予め設定されていてもよいし、ユーザが任意に設定できてもよい。S18で、差分Δの絶対値が所定値αより大きい場合(S18のN)、差分Δの正負を判定する(S20)。差分Δが正の値の場合(S20のY)、傾斜検出部42は水底の水深が上昇した、すなわち浅くなったと判断する(S22)。差分Δが負の値の場合(S20のN)、傾斜検出部42は水底の水深が下降した、すなわち深くなったと判断する(S24)。このように、新しい探知情報を取得する度に、水底の昇降を判断するので、ユーザはリアルタイムで水底の状態を把握できる。
【0024】
図4(a)、図4(b)は、魚群探知機100の魚探画面の一例を示す図である。この魚探画面は、探知ラインとともに水深を表示する水深表示領域70、水底の昇降を示すシンボルを表示する昇降表示領域72を有する。水深表示領域70には、水深値が表示され、その表示色は水底の昇降に応じて変化する。例えば、水深が浅くなったときに青色で水深値を表示し、水深が深くなったときに赤色で水深値を表示してもよい。
【0025】
昇降表示領域72には、昇降状態を端的に表現するシンボルが表示される。本図では、上向矢印、四角、下向矢印のシンボルがあり、それぞれ水底の上昇、微小変化、下降に対応付けられている。そして、補助画像生成部40は、傾斜検出部42からの水底状態の判断結果に対応するシンボルを強調表示する。
【0026】
図4(a)は、探知した最新の水底が深くなっていることを示し、水深値が赤色で表示され、下向矢印が強調されている。図4(b)は、水深が浅くなっていることを示し、水深値が青色で表示され、上向矢印が強調されている。他の例としては、水底の状態に応じて水深値の表示色を変え、昇降表示領域72を設けなくてもよい。また、水深値の表示色を変えずに、昇降表示領域のシンボルの強調表示を行なってもよい。要は、補助画像生成部40は、傾斜検出部42から供給される水底の傾斜状態を、ユーザが容易に認識できるように魚探画面を生成すればよい。
【0027】
図5(a)、図5(b)は、図4で説明した昇降表示領域72に表示されるシンボルの一例を示す図である。図5(a)は、矢印を使って昇降状態を示すシンボルであり、図5(b)は、三角形を使って昇降状態を示すシンボルである。いずれのシンボルも、水底の上昇を示す上方シンボル74、微小変化を示す微小変化シンボル76、下降を示す下降シンボル78を有し、傾斜検出部42の判断結果に対応する表示ができる。このように、水底の昇降状態を表示することにより、ユーザは直観的に現在の水底の状態を認識できる。
【0028】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、ユーザは水底の傾斜状態を直観的に認識できる。また、魚群探知機の利便性、操作性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 従来の魚探画面の一例を示す図である。
【図2】 実施の形態に係る魚群探知機の構成図である。
【図3】 図2の魚群探知機における、水底の傾斜状態を検出する処理のフローチャートである。
【図4】 図2の魚群探知機の魚探画面の一例を示す図である。
【図5】 図4の魚探画面に表示される水底の傾斜状態を示すシンボルの一例を示す図である。
【符号の説明】
12 送信部、14 受信部、16 送受波器、22 サンプリングクロック生成部、34 タイミング生成部、36 海底検出部、38 探知画像生成部、40 補助画像生成部、42 傾斜検出部、46 表示部。

Claims (3)

  1. 探知信号を送信し、反射信号を受信する送受信部と、
    前記反射信号に基づいて水底の深度を検出する水底検出部と、
    現在の反射信号および前回の反射信号の二つの信号に基づいて、前記水底検出部が検出したそれぞれの深度の差をもとに水底の昇降を検出する傾斜検出部と、
    前記水底検出部によって検出された水底の昇降が、上昇、微小変化、下降のいずれかであるかを示すシンボルを、所定のタイミングで魚探画面に表示させる表示処理部と、
    を備えることを特徴とする魚群探知機。
  2. 探知信号を送信し、反射信号を受信する送受信部と、
    前記反射信号に基づいて水底の深度を検出する水底検出部と、
    現在の反射信号および前回の反射信号の二つの信号に基づいて、前記水底検出部が検出したそれぞれの深度の差をもとに水底の昇降を検出する傾斜検出部と、
    前記水底検出部によって検出された水底の昇降が、上昇、微小変化、下降のいずれかであるかを、水深値の表示色を所定のタイミングで変化させることによって、魚探画面に表示させる表示処理部と、
    を備えることを特徴とする魚群探知機。
  3. 探知信号を送信し、反射信号を受信する送受信部と、
    前記反射信号に基づいて水底の深度を検出する水底検出部と、
    現在の反射信号および前回の反射信号の二つの信号に基づいて、前記水底検出部が検出したそれぞれの深度の差をもとに水底の昇降を検出する傾斜検出部と、
    前記水底検出部によって検出された水底の昇降が、上昇、微小変化、下降のいずれかであるかを、シンボルとともに、水深値の表示色の変化によって、所定のタイミングで魚探画面に表示させる表示処理部と、
    を備えることを特徴とする魚群探知機。
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