JP4044346B2 - デンプン系水溶性高分子前処理剤を用いた壁面亀裂補修工法 - Google Patents

デンプン系水溶性高分子前処理剤を用いた壁面亀裂補修工法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はデンプン系水溶性高分子前処理剤を用いた壁面亀裂補修工法に関し、さらに詳しくはコンクリ−ト建築物等の壁面に生じた亀裂の補修工法に関し、壁面の亀裂補修箇所に蓋材を施した後に注入材組成物を注入して補修する工法において、蓋材の施工前にデンプン系水溶性高分子亀裂補修用前処理剤を当該施工部位に塗布する壁面亀裂補修工法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンクリ−ト、石材、タイル等による建造物は、長年の経時変化や大気汚染等の様々な原因により劣化し、その結果亀裂が発生することが避けられず、亀裂補修工事の社会的要求は年々高まっている。この亀裂補修工法においては、蓋材や座金用接着剤が樹脂注入圧力に十分耐え得ると共に、樹脂が硬化した後には、蓋材や座金用接着剤が容易に撤去できることが要求されている。
【0003】
このため種々の提案がなされており、特公昭48−11195号公報、特公平5−10467号公報及び特公平7−11195号公報等には、酢酸ビニル、ポリビニ−ルアルコ−ル、スチレン−ブタジエン−スチレン系熱可塑性ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン系熱可塑性ゴム等、剥離性に優れたストリッパブルペイントが蓋剤に使用され、注入後の後処理を大幅に改善している。また、特公平3−64029号公報には、このストリッパブルペイント系の欠点の改良を試みた工法、すなわち亀裂のシ−ルと座金の接着ができ、しかも撤去が簡単なポリウレタン樹脂組成物を使った工法、特開平9−189134号公報には、加水分解性シリコ−ン官能基を有し、シロキサン結合を形成することにより架橋し得るポリアルキレンエ−テル化合物を使った工法が記載されている。
【0004】
一方、特開平3−119264号公報には、一般に使われているポリウレタン系シ−リング材や変成シリコ−ン系シ−リング材を蓋材や座金用接着剤に使い、それらを撤去しやすいようにラウリル酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノ−ルアミンおよびラノリンを主成分とする壁面補修前処理剤を施す工法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの工法は、蓋材や座金用接着剤を容易に剥離、撤去できるようにはなったが、コンクリ−ト面等のポ−ラスな面においては、蓋材や座金用接着剤に含有される液状成分が下地面に移行して汚染し、その結果、補修箇所近傍にしみが発生して建築物等の美観を損なってしまう問題があった。また、そのように液状成分が移行した補修箇所に塗装仕上げをした場合には、その液状成分が塗装材を新たに汚染し、やはり美観を損ねてしまう。
一方、表面に塗装の施されたコンクリ−ト面等に発生した亀裂の補修においては、蓋材や座金用接着剤に含有される液状成分が旧塗装材に浸透して、その塗膜を軟化させ、蓋材や座金用接着剤の剥離、撤去時にその軟化塗膜をも同時に除去してしまい、その結果、塗装面のテキスチャ−が変更され、やはり建築物等の美観を損なってしまう問題があった。また、その軟化塗膜に含有される液状成分が塗り重ねられた新塗膜に再度移行し汚染の原因になっていた。
【0006】
本発明はコンクリート建造物等の壁面に生じた亀裂を補修する際、亀裂補修箇所に蓋材を施工した後に注入材組成物を注入して壁面亀裂を補修する工法において、注入材組成物の注入治具固定用座金を間隔を設けて接着し、その座金部に取り付けられた注入治具から注入材組成物を注入して亀裂を補修する方法であって、蓋材や座金用接着剤の液状成分などが建築物の下地表面にしみとして残らないようにすることを課題とするものである。これらの課題は亀裂補修箇所に蓋材を施工した後に塗膜を形成する注入材組成物を注入して壁面亀裂を補修する工法において、蓋材の施工前に亀裂補修用前処理剤を当該施工部位に塗布する壁面亀裂補修工法によって達成される。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、この技術的課題を解決するために、本発明者は、塗膜を形成するデンプン系水溶性高分子組成物の少なくとも一種又は二種以上より選ばれたものを、亀裂蓋材或いは座金用接着剤による施工前に塗布することが有用であることを見いだして、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記組成物は、亀裂面および蓋材、座金用接着剤とは十分な接着力を持ちながらも、撤去時は容易に剥離することができ、しかも残った部分は水洗い等の簡単な方法で除去できるので、施工箇所にしみを残さず、建物の美観を損なわない。また、上記組成物は、粉体混合物のみならず、カ−トリッジ、チュ−ブ、スプレ−等、各種形態にて供給される。また、塗布方法も、刷毛塗り以外にロ−ラ−、スプレ−等、各種の方法を自由に採用でき、容易に塗工・塗布することが可能である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる水溶性高分子組成物としては、蓋材や座金用接着剤に含有される液状成分の移行を防ぐというその目的より、Fedorsの方法に従って化学構造式より計算された溶解度パラメ−タ(SP値)が、少なくとも25以上の水溶性高分子を使用することが望ましい。
【0010】
上記の水溶性高分子組成物としては、以下のものが例示できる。
(1)天然高分子系 デンプン、寒天、グァ−ガム、ロ−カストビ−ンガム、カラギ−ナン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、コラ−ゲン、キチン、キトサン、卵白等が挙げられる。
(2)半合成高分子系 可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、メチルセルロ−ス、エチルセルロ−ス、ヒドロキシメチルセルロ−ス、ヒドロキシエチルセルロ−ス、エチルヒドロキシセルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−ス、メチルヒドロキシセルロ−ス、アルギン酸塩等が挙げられる。
(3)合成高分子系 ポリビニルアルコ−ル等が挙げられる。
本発明において、水溶性高分子組成物としては、上記が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら上記の水溶性高分子組成物の少なくとも一種又は二種以上より選ばれたものを混合して使用することができる。
【0011】
本発明において、上記の水溶性高分子組成物の使用では、(1)蓋材や座金用接着剤に配合されている液状成分、例えばポリウレタン樹脂組成物に含まれている分子量400〜77000のポリオキシプロピレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルやこれら水酸基物質を使ったイソシアネ−ト末端プレボリマ−、或いはポリアルキレンエ−テル化合物、いわゆる変成シリコ−ン樹脂組成物等、或いはエポキシ基を含有するエポキシ樹脂組成物等、およびこれら組成物に添加される可塑剤等に溶解、膨潤しない。(2)冷水等に容易に溶解し、塗工に適した粘度を有している。(3)塗工後、速やかに塗膜を形成する。更に、補修作業完了後は、水洗い等で容易に洗浄、除去できる等の条件により、適宜選択する。デンプン系、セルロ−ズ系水溶性高分子は、生分解性があるため、より好適に用いることができる。
【0012】
本発明の水溶性高分子組成物に、接着性を付与する水酸基等を含んだ水溶性高分子、例えばポリビニルアルコ−ルを添加して、亀裂面や蓋材との接着力をより高めることも可能である。この接着付与剤の添加量は、水100重量部当たり0.5〜80重量部であることが望ましく、好ましくは1〜50重量部の範囲である。添加量が多すぎると亀裂面との接着力が大きくなり撤去しにくくなる。
【0013】
また、乾燥性をより高めるためにメチルアルコ−ル、エチルアルコ−ル等の水溶性溶剤を添加すること、或いは作業性を改良するためにヒュ−ムドシリカ、沈降性シリカ、含水珪酸、珪藻土、ベントナイト等の増粘剤を添加することも可能である。
【0014】
さらに、亀裂補修用前処理に、例えばデンプンに対するヨ−ドのような呈色剤を予め添加しておけば、施工前の塗布確認、施工後の除去確認等の作業確認の手段として利用できるように働く。
【0015】
【発明の効果】
蓋材や座金用接着剤を撤去後、それらのしみが亀裂面に残らないため、建築物等の美観を損なわない亀裂補修工事が可能となった。特に、コンクリ−ト等の粗面を有する建築物、塗装コンクリ−ト面を有する建築物等の補修に適している。
蓋材や座金用接着剤と補修面との間に亀裂補修用前処理剤の膜が介在する為、補修工事用専用材料としての蓋材や座金用接着材を必要とせず、通常の建築用材料をそのまま使用することが可能となり、材料の在庫管理等が低減される。
【0016】
【実施例】
実施例を以下に示して本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1 水100部に対して、冷水可溶性を有するα化デンプン(日澱化学株式会社製,商品名アミコ−ルML、Fedorsの方法によるSP値35.0)20部、並びに鹸化度86.5〜89.0モル%のポリビニルアルコ−ル(株式会社クラレ製,商品名クラレポバ−ルPVA−205、Fedorsの方法によるSP値27.3)10部を溶解し、均一な溶液を作成した。粘度を調整するために、カルボキシメチルセルロ−ス(日本製紙株式会社製,商品名サンロ−ズF100MC)1部添加し、粘度1.9Pa・sの亀裂補修前処理剤を得た。
実施例2 水100部に対して、化工でんぷんの焙焼デキストリン(日澱化学株式会社製,商品名赤玉デキストリンNo.4−C、Fedorsの方法によるSP値35.0)200部、鹸化度86.5〜89.0モル%のポリビニルアルコ−ル(株式会社クラレ製,商品名クラレポバ−ルPVA−205、Fedorsの方法によるSP値27.3)5部を溶解し、粘度769Pa・sの均一な混合物を得た。
【0017】
蓋材による亀裂面しみの確認試験
実施例1及び2で得られた亀裂補修前処理剤を、コンクリ−ト製歩道板に発生した亀裂に沿って、幅50mm程度の刷毛を用いて塗布し、20℃、30分乾燥後、通常の蓋材(例えば、世界長株式会社製,商品名グラウトパックP、変成シリコ−ン系シ−リング材,商品名セカイチョ−シ−ラ−M1)の塗布ならびに座金の接着を行い、約1日養生する。その後、座金に注入器具を取り付け、エポキシ樹脂系注入剤を注入工具を用いて、注入圧力1.5kg/cm2 で注入する。1昼夜養生し、注入樹脂の硬化を確認後、蓋材、座金と共に亀裂補修用前処理剤を撤去する。コンクリ−ト面に残った亀裂補修用前処理剤は、ブラシを用いて水洗いし撤去する。
その後、歩道板に蓋材のシミが付着するか確認したところ、いずれの場合もシミによる汚れの発生を認めなかった。

Claims (1)

  1. コンクリート建造物等の壁面に生じた亀裂を補修する際、亀裂補修箇所に、下地面に移行しうる液状成分を含む蓋材を施工した後、注入材組成物を注入して壁面亀裂を補修する方法において、蓋材の施工前に、Fedors方法に準拠した化学構造式より計算された溶解度パラメーター(SP値)が少なくとも25以上であるデンプン系水溶性高分子を主成分とする水溶性高分子組成物より選ばれた亀裂補修用前処理剤を当該施工部位に塗布し、さらに乾燥させることを特徴とするデンプン系水溶性高分子前処理剤を用いた壁面亀裂補修方法。
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