JP4042815B2 - リガンドに結合している物質の測定装置、及び測定方法 - Google Patents
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Description
本発明は、タンパク質等のリガンドに結合した測定対象物質だけを特異的に測定することができる測定装置、及び測定方法に関し、分析化学、生命科学、及び臨床検査等の分野において特に有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
生体内において、物質はリガンドとなる物質と結合した形態で生体内を移動し、貯蔵され、そして使用されることが多い。
例えば、アルミニウム、鉄、銅、及び亜鉛等の金属やホルモンは、タンパク質等のリガンドと結合して存在することが多い。
近年、リガンドと結合した金属の生体内での挙動が注目を浴びてきた。
例えば、アルツハイマー型痴呆症とアルミニウムの因果関係が推測されているが、この痴呆症や神経障害において注目すべきアルミニウムは、脳関門を通過することができるトランスフェリンと結合したアルミニウムである。
また、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やアルミニウム骨症では、トランスフェリン結合型以外のアルミニウムの関与が推測されている。
このように、リガンドと結合している金属とリガンドと結合していない遊離の金属を分別して測定することは、デフェロオキサミン製剤などの薬剤による治療効果の判定、疾病の診断、及び予防等において大変重要になってきている。
【0003】
これまで、試料中の上記の金属の測定には、原子吸光装置又はフレームレス原子吸光装置が用いられてきた。しかしながら、原子吸光装置及びフレームレス原子吸光装置とも試料を高温に加熱して原子化するものであり、リガンドに結合している金属とリガンドに結合していない遊離の金属を分離することができず、リガンドに結合している金属だけを測定するものではなかった。
また、測定しようとする金属と、この測定しようとする金属に対してキレート結合するキレート発色剤を含む試薬とを混合し、生じる吸光度より試料中の金属を測定する吸光光度法や蛍光法も行われてきた。
例えば、測定しようとする金属が鉄の場合、キレート発色剤としては、2−ニトロソ−5−(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)−フェノール、又はバソフェナンスロリンスルホン酸塩等が、銅の場合、キレート発色剤としては4−(3,5−ジブロモ−2−ピリジルアゾ)−N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリンナトリウム、2−(2−チアゾリルアゾ)−4−メチル−5−スルホメチルアミノ安息香酸、又はバソクプロインスルホン酸塩等が用いられる。
【0004】
しかし、やはりこの吸光光度法や蛍光法においてもリガンドに結合している金属とリガンドに結合していない遊離の金属を分離することができず、リガンドに結合している金属だけを測定することはできなかった。
なお、前段にアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等のクロマトグラフィー手法を用い、次にこのクロマトグラフィーにより分離されたリガンドに結合している測定対象物質をフレームレス原子吸光装置により測定する方法が知られていた。(「Distribution of Zinc Amongst Human Serum Proteins Determined by Affinity Chromatography and Atomic−absorption Spectrophotometry」J.Footeら著,Analyst誌,108巻,492〜504頁,1983年、「Ultrafiltration Studies inVitro of Serum Aluminum in Dialysisafter Deferoxamine Chelation Therapy」F.Leungら著,CLIN.CHEM.誌,31巻,20〜23頁,1985年、「Quantitative Studies of Aluminium Binding Species in Human Uremic Serum by Fast Protein Liquid Chromatography Coupled With Electrothermal Atomic Absorption Spectrometry」A.Soldadoら著,Analyst誌,122巻,573〜577頁,1997年)
【0005】
しかし、このフレームレス原子吸光装置は、大変高価であり、また広いスペースを必要とし配管や換気装置が必要であって設置場所が限定されるものであり、そして試料溶液を原子化する炭素炉が測定のたびに消耗し約100回測定するたびに交換しなければならず、煩雑であり費用がかかるものであった。
更に、前段にアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等のクロマトグラフィー手法を用い、次にこのクロマトグラフィーにより分離されたリガンドに結合している測定対象物質をフローインジェクション分析により測定する方法も知られていた。(「Flow−injection And Liquid Chromatographic Determination Of Aluminum Based On Its Fluorimetric Reaction With 8−Hydroxyquinoline−5−sulphonic Acid In A MicellarMedium」J.Alonsoら著,Analytica ChimicaActa誌,225巻,339〜350巻,1989年)
しかしながら、このフローインジェクション分析に用いる装置は、複数のポンプ、複数の溶離液、濃度勾配装置、及び流路切り替えバルブなどの特別の装置等を必要とするものであって、高価であり、かつ他の測定に用いることが難しい専用装置であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように、従来の測定装置及び測定方法は、リガンドに結合している測定対象物質だけを簡便に測定することはできなかった。
本発明者らは、この問題点の解決を目指して鋭意検討を行った結果、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなる第1のカラム、及び他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなる第2のカラムを備える液体クロマトグラフィー装置により、リガンドに結合している測定対象物質とリガンドに結合していない測定対象物質とを分離でき、そして他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができることを見い出し、簡便に試料中のリガンドに結合している測定対象物質だけを特異的に測定することができる測定装置、及び測定方法を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポンプ、試料導入部、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなる第1のカラム、他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなる第2のカラム、及び検出部よりなる、試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置である。
本発明の液体クロマトグラフィー装置においては、ポンプ、試料導入部、第1のカラム、第2のカラム、及び検出部が、ポンプ−試料導入部−第1のカラム−第2のカラム−検出部の順に連結されていることが好適である。
また、本発明の液体クロマトグラフィー装置においては、リガンドに対する特異的結合物質が、リガンドに対する抗体であることが好適である。
更に、本発明の液体クロマトグラフィー装置においては、測定対象物質が、金属の場合に好適である。
また、本発明は、ポンプ、試料導入部、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなる第1のカラム、他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなる第2のカラム、及び検出部よりなる、試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置の試料導入部に試料を注入し、次に、測定対象物質と結合する信号物質を含み測定対象物質をリガンドより遊離させることができる溶液を試料導入部より注入し、そして、測定対象物質と結合した信号物質を検出部において検出することよりなる、試料中のリガンドに結合している測定対象物質の特異的測定方法である。
本発明の特異的測定方法においては、液体クロマトグラフィー装置のポンプ、試料導入部、第1のカラム、第2のカラム、及び検出部が、ポンプ−試料導入部−第1のカラム−第2のカラム−検出部の順に連結されていることが好適である。
また、本発明の特異的測定方法においては、リガンドに対する特異的結合物質が、リガンドに対する抗体であることが好適である。
更に、本発明の特異的測定方法においては、測定対象物質が、金属の場合に好適である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、試料中に存在する測定対象物質のうち、リガンドに結合しているものだけを特異的に測定することができるものである。
本発明において、測定対象物質としては、試料中に存在することの測定(定性測定)、又は試料中の量の測定(定量測定)を行おうとするものであれば、いかなるものでも良い。
この測定対象物質としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、コバルト、マグネシウム、ニッケル、鉛、リチウム、水銀、クロム、マンガン、カドミウム、カルシウム、若しくはスズなどの金属、セレンなどの無機元素、チロキシンなどのホルモン、ヘムなどのポルフィリン化合物、ビオチン、リポ酸、FAD、若しくはFMNなどの補酵素(補欠分子族)等を挙げることができる。
【0009】
本発明において、リガンドとは、測定対象物質と結合できる物質のことである。 測定対象物質と結合できるものであれば、特に限定はない。
このリガンドとしては、例えば、酵素、その他のタンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖質、脂質、核酸、ビタミン類、キレート化合物、包接化合物、その他の有機化合物、若しくは無機化合物等を挙げることができる。
より具体的には、α−アミラーゼ、カタラーゼ、若しくはスーパーオキサイドディスムターゼなどの酵素、トランスフェリン、フェリチン、セルロプラスミン、メタロチオネイン、シトクローム、ヘモグロビン、ミオグロビン、ヘモシアニン、カルモデュリン、アルブミン、若しくはグロブリンなどのタンパク質、ヒスチジン−システインなどのペプチド、システインなどのアミノ酸、DNA、若しくはRNAなどの核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ビタミンBなどのビタミン類、EDTAなどのキレート化合物、サイクロデキストリン、サイクロデキストリン誘導体、若しくはクラウンエーテル化合物などの包接化合物、ヘム、クロロフィル、クエン酸などの有機化合物、又はリン酸などの無機化合物等を例示することができる。
【0010】
本発明において、試料は、リガンドに結合している測定対象物質を含む可能性があるものであれば、いかなるものでもよい。
この試料としては、例えば、生体試料(血液、血清、血漿、尿、髄液、精液、唾液、若しくは涙などの体液、脳、肝臓、若しくは腎臓などの臓器の抽出液、毛髪、爪、若しくは皮膚などの組織の抽出液、あるいは糞便等)、食品(穀物、野菜、果物、魚介類、若しくは加工食品など)、飲料(水、茶、牛乳、果汁、若しくは酒類など)、又は環境分析用試料(飲料水、河川水、湖沼水、海水、地下水、温泉、鉱泉、若しくは土壌など)等を挙げることができる。
【0011】
本発明において、信号物質とは、測定対象物質と結合するものであって、かつ検出できるものであれば良い。
この検出は、紫外部、可視部、若しくは赤外部の吸光、蛍光強度、化学発光若しくは生物発光、電位、電気伝導度、又は屈折率等、液体クロマトグラフィーにおいて通常用いられる検出方法により行うことができる。
信号物質は、測定対象物質と比べて検出時の強度、又は波長等の性質が異なることが好ましく、強度が高いことが特に好ましい。
また、信号物質は、測定対象物質と結合している場合と、遊離の場合又は他の物質と結合している場合とで、検出時の強度、又は波長等の性質が異なることが好ましく、測定対象物質と結合している場合に強度が高いことが特に好ましい。
なお、測定対象物質が単体で検出できるものであれば、信号物質を使用しなくとも良い。
【0012】
信号物質としては、2,2−ジヒドロキシアゾベンゼン〔DHAB〕、ポルフィリン、4−(2−ピリジルアゾ)レゾルシノール、8−キノリノール、1,10−フェナントロリン、2−ニトロソ−5−(N−プロピル−N−スルホプロピルアミノ)−フェノール〔Nitroso−PSAP〕、バソフェナンスロリン、4−(2−ピリジラゾ)レゾルシノール(PAR)2−(2−チアゾリルアゾ)−4−メチル−5−スルホメチルアミノ安息香酸〔TAMSMB〕、若しくは4−(3,5−ジブロモ−2−ピリジルアゾ)−N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリンナトリウム〔3,5−DiBr−PAESA〕などのキレート発色剤、3−ブロモメチル−6,7−ジメトキシ−1−メチル−2(1H)−キノキサリン、3−ブロモメチル−6,7−メチレンジオキシ−1−メチル−2(1H)−キノキサリン、3−カルボニルクロリド−6,7−ジメトキシ−1−メチル−2(1H)−キノキサリン、若しくは3−カルボニルアジド−6,7−ジメトキシ−1−メチル−2(1H)−キノキサリンなどの蛍光ラベル化剤、(+)−1−(1−イソシアナトエチル)ナフタレン、若しくは(+)−1−(9−フルオレニル)エチルクロロホルメートなどの光学活性ラベル化剤、アミドブラック、若しくはクマジーブリリアントブルーなどのタンパク質染色剤、測定対象物質に対する抗体にパーオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−グルコシダーゼなどの酵素を結合させた酵素標識抗体、測定対象物質に対する抗体に蛍光物質を結合させた蛍光物質標識抗体、測定対象物質に対する抗体に放射物質を結合させた放射物質標識抗体、又は測定対象物質に対する抗体に化学発光関連物質を結合させた化学発光物質標識抗体等が挙げられる。
【0013】
測定対象物質と結合する信号物質を含み測定対象物質をリガンドより遊離させることができる溶液は、上記の信号物質を含み、かつ測定対象物質を第1のカラムの担体に結合したリガンドから遊離させることができるものである。つまり、リガンドと測定対象物質との結合を切ることができるものである。
このような溶液は、酸性にすること、アルカリ性にすること、界面活性剤を含有させること、変性剤を含有させること、又はリガンドと測定対象物質との結合を切る酵素などの触媒を含有させること等により達成できる。
なお、測定対象物質と結合する信号物質を含むことにより、リガンドと測定対象物質との結合を切ることができる場合は、他に何も含有させなくとも良い。
【0014】
本発明における液体クロマトグラフィー装置は、少なくとも、ポンプ、試料導入部、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなる第1のカラム、他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなる第2のカラム、及び検出部よりなるものである。
なお、必要に応じて他の部品、機器を組み合わせて使用しても良い。
【0015】
第1のカラムは、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなるものであるが、リガンドに対する特異的結合物質とは、リガンドに対し親和性を有する物質をいい、リガンドとの特異的な相互作用によりリガンドに安定に結合する物質をいう。
【0016】
このリガンドに対する特異的結合物質は、例えば、リガンドに対する抗体(ポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体)である。また、リガンドが抗体である場合、リガンドに対する特異的結合物質はこの抗体に対する抗原であっても良い。
リガンドとリガンドに対する特異的結合物質の組み合わせとしては、この他にも、タンパク質とプロテインA若しくはプロテインG、糖質とレクチン、核酸とこの核酸に相補的な核酸、酵素と基質、酵素と阻害物質、キレート化合物と金属、包接化合物とゲスト化合物、アビジンとビオチン、又はレセプターとこれに特異的に結合する物質等を挙げることができる。なお、これらのリガンドとリガンドに対する特異的結合物質の組み合わせは、それぞれ逆であっても良い。
【0017】
本発明の液体クロマトグラフィー装置における液体クロマトグラフィーとしては、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、中圧液体クロマトグラフィー、又はキャピラリー高速液体クロマトグラフィー等を挙げることができる。
また、これらのモードとして、分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、又はゲルクロマトグラフィー等を挙げることができる。
【0018】
リガンドに対する特異的結合物質を固定する担体は、リガンドに対する特異的結合物質を化学的、又は物理的に結合することができる不溶性の物質であれば良い。
例えば、この担体としては、アガロース、セルロース、デキストラン、ポリアクリルアミド、又は多孔性ガラス等を挙げることができる。
リガンドに対する特異的結合物質の担体への固定は、「蛋白質・酵素の基礎実験法(改訂第2版)」堀尾編,177〜209頁,南江堂,1994年11月10日発行、及び「Affinity Chromatography Principles and Methods」ファルマシア バイオテク株式会社,1994年発行等に記載の公知の方法により行えば良い。
【0019】
このリガンドに対する特異的結合物質の担体への固定方法としては、例えば、アガロース等の多糖類をブロムシアン(CNBr)等のハロゲン化シアンで処理して得られる活性化された多糖類に、リガンドに対する特異的結合物質が有するアミノ基を介して共有結合させる方法等を挙げることができる。
また、アームを有する担体のアームと、リガンドに対する特異的結合物質が有するアームと結合する反応基を結合させる方法を用いても良い。このアームとリガンドに対する特異的結合物質が有するアームと結合する反応基の組み合わせとしては、例えば、ω−アミノアルキル基とカルボキシル基若しくはアルデヒド基、ブロモアセチル基とイミダゾール基あるいはフェノール性水酸基若しくはアミノ基、ヒドラジドとカルボキシル基若しくはアルデヒド基、又は、エポキシ基と糖の水酸基若しくはアミノ基、N−アミノカプロン酸基とアミノ基、又はN−ヒドロキシスクシンイミド化合物とアミノ基等を挙げることができる。
【0020】
この担体を内包するカラムのサイズは特に限定されるものではないが、一般的に分析用としては、内径0.1〜0.5mm×長さ3.5〜30cm(キャピラリーHPLC用)や、内径0.5〜2mm×長さ3.5〜30cm(セミミクロHPLC用)、又は内径2〜10mm×長さ3.5〜30cmのものを用いることができる。
【0021】
第2のカラムは、他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなるものである。
【0022】
この測定対象物質と結合した信号物質を他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と分離することができる担体は、「他の物質と結合した信号物質」及び「遊離の信号物質」と、「測定対象物質と結合した信号物質」とを分離することができる担体であればいかなるものでも良く、測定対象物質及び信号物質に応じて適宜選択すれば良い。
【0023】
この担体としては、例えば、分配クロマトグラフィーおよび吸着クロマトグラフィーの担体に関しては、i)順相系として、シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、多孔性ガラス、ハイドロキシアパタイト、ニトロフェニル; ii )逆相系として、ポリスチレンゲル、ハイドロキシアパタイト、若しくはニトロフェニル、又はシリカやポリマー等に下記の基を結合させたもの:オクタデシルシリル(ODS)基、オクチルシリル基、エチルシリル基、メチルシリル基、フェニル基、シアノ基、フルオロカーボン基、グラファイトカーボン基、2−(1−ピレニル)エチルシリル基、; iii) 順相逆相系として、アミノプロピル、シアノプロピル、ジオール、キラル;iv)内面逆相系として、細孔部表面がODS、フェニル基などの疎水性基であり、担体粒子外表面がポリオキシエチレン基などの親水性基である担体、ならびに;v)ポリオキシエチレンのネットワーク構造系等が挙げられる。
なお、試料がタンパク質等の高分子物質を含む場合には、担体として内面逆相系の担体を用いることが好ましい。
【0024】
また、イオン交換クロマトグラフィーの担体に関しては、下記のイオン交換基などが結合したセルロース、架橋デキストラン、架橋アガロースや親水性ビニルポリマー等が挙げられる:i)陽イオン交換基として、−O−(CH2)3−SO3 - 、−O−(CH2)2−SO3 - 、−CH2−SO3 - 、−SO3 - 、−PO4 2- 、−O−CH2−COO- 等を有する樹脂、ならびに;ii)陰イオン交換基として、−N+(CH3)3、−CH2−N+(CH3)3、−N+(CH2CH2OH)(CH3)2、−O−(CH2)2−N+(C2H5)2H、−O−(CH2)2−N+(C2H5)2−CH2−CH(OH)−CH3、−NH2、−NHR、−NR2等を有する樹脂(ここで、Rは例えばアルキルなどを表す)。
【0025】
また、ゲルクロマトグラフィーの担体に関しては、i)有機溶媒系として、ポリスチレンゲル、ポリメチルメタクリレートゲル、ならびに;ii)水溶媒系として、ポリビニルアルコールゲル、ポリアクリルアミドゲル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートゲル等が挙げられる。
【0026】
また、疎水クロマトグラフィーの担体に関しては、疎水基(例えば、フェニル基、ブチル基、オクチル基)などが結合した多孔性セルロース、架橋アガロース、親水性ビニルポリマー等が挙げられる。
【0027】
そして、この担体を内包するカラムのサイズは特に限定されるものではないが、一般的に分析用としては、内径0.1〜0.5mm×長さ0.5〜30cm(キャピラリーHPLC用)や、内径0.5〜2mm×長さ0.5〜30cm(セミミクロHPLC用)、又は内径2〜10mm×長さ0.5〜30cmのものを用いることができる。
【0028】
本発明において、試料、測定対象物質と結合する信号物質を含み測定対象物質をリガンドより遊離させることができる溶液、及び溶離液を液体クロマトグラフィー装置上で流す流速はカラムの内径により変わるが、カラムの内径と流速の関係は通常、0.1〜1mmの場合は0.001〜0.1mL/分、1〜5mmの場合は0.05〜2mL/分、及び5〜50mmの場合は1〜30mL/分である。
【0029】
本発明の液体クロマトグラフィー装置におけるポンプは、プランジャー型、シリンジ型、又はガス圧型等の上記流速に対応できるポンプであれば良い。
本発明の液体クロマトグラフィー装置における試料導入部は、液体クロマトグラフィーに使用できるものであれば良い。
【0030】
本発明の液体クロマトグラフィー装置における検出部は、信号物質を検出できるものであれば良く、具体的には、紫外部、可視部、若しくは赤外部の吸光、蛍光強度、放射強度、化学発光若しくは生物発光、電位、電気伝導度、屈折率、蒸発光散乱、旋光度、レーザー光散乱、質量分析、又はICP質量分析等の検出を行えるものであれば良い。
【0031】
本発明において、液体クロマトグラフィー装置に流す溶離液は、第2のカラムの担体として分配クロマトグラフィー用の担体、又は吸着クロマトグラフィー用の担体を用いる場合であって、順相系である場合は、n−ヘキサン等の低極性の有機溶媒に高極性の溶媒を混合したものを使用する。
なお、一般に、高極性の溶媒の比率を増やすほど測定対象物質の溶出は早くなる。
溶出は、水の場合が一番早く、アルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、n−ヘキサンの順で遅くなる。
【0032】
また、逆相系、又は内面逆相系である場合は、水と有機溶媒を混合したものを使用する。
この場合、一般に、有機溶媒の比率を増すほど測定対象物質の溶出は早くなる。
溶出は、テトラヒドロフラン、ジオキサン、イソプロパノール、アセトニトリル、エタノール、メタノールの順で遅くなる。
【0033】
第2のカラムの担体として、イオン交換クロマトグラフィーを用いる場合、溶離液は、酸性水溶液、塩基性水溶液、又は塩を含む緩衝液を使用することができる。溶出の早さの調整は、溶離液中のイオン濃度を変えることにより行うことができる。
【0034】
第2のカラムの担体として、ゲルクロマトグラフィーを用いる場合、溶離液は、有機系溶媒では、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ヘキサフルオロイソプロパノール、又はトルエン等を用いることができ、水系溶媒では、塩の水溶液を用いることができる。
【0035】
なお、上記の溶離液には、必要に応じて、緩衝剤、界面活性剤、又はキレート化合物等の添加剤を含有させても良い。
【0036】
緩衝剤としては、グリシン、MES、ビス−トリス、ADA、ACES、イミダゾール、PIPES、MOPSO、MOPS、BES、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、塩酸トリエタノールアミン、HEPPSO、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、EPPS、グリシルグリシン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、ビシン、TAPS、トリシン、ホウ酸、CHES、N−メチル−D−グルカミン、CAPSO、CAPS、ジエタノールアミン、又は2−エチルアミノエタノール等を挙げることができる。
この緩衝剤の濃度とpHは、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0037】
界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどの非イオン性界面活性剤、酢酸ベタイン等のカルボキシベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩などの陰イオン性界面活性剤、アミン塩、第4級アンモニウム塩などの陽イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0038】
キレート化合物としては、EDTA、NTA、CyDTA、DTPA、EDTA−OH、GEDTA、TTHA、DHEG、IDA、EDDA、DPTA−OH、NTP、メチル−EDTA、又はHIDA等を挙げることができる。
【0039】
本発明の試料中のリガンドに結合している測定対象物質の特異的測定方法においては、溶離液を流している本発明の液体クロマトグラフィー装置の試料導入部に試料を、通常は1〜1,000μL注入する。
次に、測定対象物質と結合する信号物質を含み測定対象物質をリガンドより遊離させることができる溶液を試料導入部に、通常は1〜1,000μL注入する。
この測定対象物質と結合する信号物質を含み測定対象物質をリガンドより遊離させることができる溶液の注入は、試料の注入の後、第1のカラムにおいてリガンドに結合している測定対象物質と遊離の測定対象物質が充分分離できる時間をおいた後、行うことが好ましい。この時間は、一般的には試料注入後5〜60分、好ましくは10〜30分である。
そして、液体クロマトグラフィー装置の検出部において、測定対象物質と結合した信号物質の検出を行い、試料中のリガンドに結合している測定対象物質の測定を行う。
【0040】
【作用】
本発明における作用は以下の通りである。
ポンプ、試料導入部、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなる第1のカラム、他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなる第2のカラム、及び検出部よりなる、試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置の試料導入部に試料を注入して測定対象物質が結合しているリガンドを第1のカラムの担体に結合させ、次に、測定対象物質と結合する信号物質を含み測定対象物質をリガンドより遊離させることができる溶液を試料導入部より注入してこの信号物質を測定対象物質に結合させ、かつリガンドから遊離させ、更に第2のカラム中において他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離させ、そして、この分離した測定対象物質と結合した信号物質を検出部において検出することにより、試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定する。
【0041】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に詳述するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1) 〔血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウムの測定〕
本発明の液体クロマトグラフィー測定装置を構築し、これを用いて血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウムの測定を行った。
【0043】
(1)第1のカラムの調製
FPLC用アガロースカラム〔内径7mm×長さ25mm〕(ファルマシア バイオテク社製)に充填されたアガロースに、6−アミノカプロン酸をエポキシ活性化法で共有結合させた。
次に、この末端カルボキシル基を、N−ヒドロキシサクシンイミドでエステル化した。
更にこのエステル結合に、0.5M塩化ナトリウムを含む0.2M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8.3)に10mg/mLの濃度で溶解したウサギの抗ヒト・トランスフェリン抗体〔製品番号:A704/R5H、バイオジェネシス社(英国)〕の1mLを接触、求核攻撃させて、アミド結合させた。
その後、これに0.5M塩化ナトリウムを含む0.5Mエタノールアミン緩衝液(pH8.3)を加え、1時間放置して、過剰な活性基を不活性化させた。
更に、0.5M塩化ナトリウムを含む0.5Mエタノールアミン緩衝液(pH8.3)と0.5M塩化ナトリウムを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4)を交互に3回ずつ流し、結合しなかった抗ヒト・トランスフェリン抗体を洗い流した。
このようにして、ウサギの抗ヒト・トランスフェリン抗体を固定させた担体よりなる第1のカラムを調製した。
【0044】
(2)液体クロマトグラフィー装置の構築
ポンプ、試料導入部、及び検出部は、ナノスペース・システムSI−1(資生堂社製)を用いた。
第2のカラムとして、内面逆相型カラムのカプセルパック MF ph−1〔内径1.5mm×長さ35mm〕(資生堂社製)を使用した。
ポンプ、試料導入部、上記(1)で調製した第1のカラム、第2のカラム、検出部、及びフラクションコレクターを、図1に示したように、ポンプ−試料導入部−第1のカラム−第2のカラム−検出部−フラクションコレクターの順に連結して、本発明の液体クロマトグラフィー装置を構築した。
【0045】
(3)試料の調製
ヒト血清試料にアルミニウムを100μg/L(ppb)になるように添加して、アルミニウム添加血清試料を調製した。
試料として、このアルミニウム添加血清試料とヒト血清試料の2種類の試料を用意した。
【0046】
(4)ヒト血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウムの測定
上記(2)で構築した液体クロマトグラフィー装置に、溶離液として20%(w/w)2−プロパノールを含む0.1M N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)緩衝液(pH7.0)を120μL/分の流速で流しておき、上記(3)で調製したヒト血清試料、又はアルミニウム添加血清試料の100μLを試料導入部に注入した。
なお、第1のカラム、及び第2のカラムの温度は、16℃となるようにした。
280nmにおける吸光度の検出によりタンパク質のピークが過ぎたことが確認された試料注入15分後に、10mM 8−キノリノールを含む100mM塩酸を100μL試料注入部に注入した。
検出部による検出を、励起波長370nm、及び放射波長504nmでの蛍光強度の測定により行った。
【0047】
これらの測定の結果を図2に示した。
これらのクロマトグラムにおいて、(a)は試料がヒト血清試料の場合であり、(b)は試料がアルミニウム添加血清試料の場合である。また、横軸は試料を注入してからの経過時間、縦軸は励起波長370nm、放射波長504nmでの蛍光強度を表す。
【0048】
これらの図より、血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウムが二十数分で測定できることが確かめられた。
【0049】
(実施例2) 〔トランスフェリン結合アルミニウム測定の検量線の作成〕
トランスフェリン結合アルミニウムを添加した試料を測定して、検量線の作成を行った。
【0050】
(1)試料の作成。
ヒト血清試料にアルミニウムを100μg/L(ppb)、又は300μg/L(ppb)になるように添加して、アルミニウム添加血清試料を調製した。
試料として、100μg/L(ppb)のアルミニウム添加血清試料、300μg/L(ppb)のアルミニウム添加血清試料、及びヒト血清試料の3種類の試料を用意した。
【0051】
(2)ヒト血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウムの測定
上記実施例1の(2)で構築した液体クロマトグラフィー装置を用いて、上記(1)で調製した3種類のヒト血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウムの測定を、上記実施例1の(4)の記載と同様にして行った。
【0052】
この測定の結果を図3に示した。
この検量線において、横軸は添加した試料中のトランスフェリン結合アルミニウムの濃度、縦軸は励起波長370nm、放射波長504nmでの蛍光強度を表す。
【0053】
この図より、本発明の測定において、試料中のトランスフェリン結合アルミニウム測定の検量線が直線であることが確かめられた。
このことより、本発明の測定装置及び測定方法は、試料中のリガンドに結合している物質を、定量的かつ正確に測定できることが確かめられた。
【0054】
(実施例3) 〔試料中のトランスフェリン結合鉄の測定〕
本発明の液体クロマトグラフィー測定装置を構築し、これを用いて試料中のトランスフェリン結合鉄の測定を行った。
【0055】
(1)試料の調製
ヒト・ホロ型トランスフェリン〔シグマ社製(米国)〕を10mg/mLになるように0.1M BES緩衝液(pH7.0)に溶解して、トランスフェリン結合鉄含有試料を調製した。
【0056】
(2)試料中のトランスフェリン結合鉄の測定
上記実施例1の(2)で構築した液体クロマトグラフィー装置に、溶離液として15%(w/w)2−プロパノールを含む0.1M BES緩衝液(pH7.0)を100μL/分の流速で流しておき、上記(1)で調製した試料の100μLを試料導入部に注入した。
なお、第1のカラム、及び第2のカラムの温度は、25℃となるようにした。
280nmにおける吸光度の検出によりタンパク質のピークが過ぎたことが確認された試料注入15分後に、1mM 4−(2−ピリジラゾ)レゾルシノール〔PAR〕、及び10mMアスコルビン酸を含む100mM塩酸を100μL試料注入部に注入した。
検出部による検出を、495nmでの吸光の測定により行った。
また、対照として、試料の注入を行わない他は上記と同様に測定を行い、試薬盲検の測定を行った。
【0057】
これらの測定の結果を図4に示した。
これらのクロマトグラムにおいて、(a)はトランスフェリン結合鉄含有試料を測定した場合であり、(b)は試薬盲検を測定した場合である。また、横軸は試料を注入してからの経過時間(aの場合)、又はPAR等を注入してからの経過時間(bの場合)を、縦軸は495nmでの吸光を表す。
【0058】
これらの図より、トランスフェリン結合鉄含有試料を測定した場合は、PARに結合した鉄のピークである経過時間37分付近のピークが試薬盲検の経過時間21分付近のピークに比べて顕著に増大していることが分かる。
このことより、本発明の測定においては、試料中のトランスフェリン結合鉄を特異的に測定できることが確かめられた。
なお、ヒト・アポ型トランスフェリン〔シグマ社製(米国)〕試料についても測定を行ったが、試薬盲検の場合と同様のクロマトグラムであった。
【0059】
(実施例4) 〔試料中のセルロプラスミン結合銅の測定〕
本発明の液体クロマトグラフィー測定装置を構築し、これを用いて試料中のセルロプラスミン結合銅の測定を行った。
【0060】
(1)第1のカラムの調製
FPLC用アガロースカラム〔内径7mm×長さ25mm〕(ファルマシア バイオテク社製)に充填されたアガロースに、6−アミノカプロン酸をエポキシ活性化法で共有結合させた。
次に、この末端カルボキシル基を、N−ヒドロキシサクシンイミドでエステル化した。
更にこのエステル結合に、0.5M塩化ナトリウムを含む0.2M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8.3)に10mg/mLの濃度で溶解したヒツジの抗ヒト・セルロプラスミン抗体〔製品番号:1940−0004、バイオジェネシス社(英国)〕の1mLを接触、求核攻撃させて、アミド結合させた。
その後、これに0.5M塩化ナトリウムを含む0.5Mエタノールアミン緩衝液(pH8.3)を加え、1時間放置して、過剰な活性基を不活性化させた。
更に、0.5M塩化ナトリウムを含む0.5Mエタノールアミン緩衝液(pH8.3)と0.5M塩化ナトリウムを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4)を交互に3回ずつ流し、結合しなかった抗ヒト・セルロプラスミン抗体を洗い流した。
このようにして、ヒツジの抗ヒト・セルロプラスミン抗体を固定させた担体よりなる第1のカラムを調製した。
【0061】
(2)液体クロマトグラフィー装置の構築
ポンプ、試料導入部、及び検出部は、ナノスペース・システムSI−1(資生堂社製)を用いた。
第2のカラムとして、内面逆相型カラムのカプセルパック MF ph−1〔内径1.5mm×長さ35mm〕(資生堂社製)を使用した。
ポンプ、試料導入部、上記1で調製した第1のカラム、第2のカラム、検出部、及びフラクションコレクターを、図1に示したように、ポンプ−試料導入部−第1のカラム−第2のカラム−検出部−フラクションコレクターの順に連結して、本発明の液体クロマトグラフィー装置を構築した。
【0062】
(3)試料の調製
ヒト・セルロプラスミン〔製品番号:C4770、シグマ社製(米国)〕を90mg/mLになるように0.1M BES緩衝液(pH7.0)に溶解して、セルロプラスミン結合銅含有試料を調製した。
【0063】
(4)試料中のセルロプラスミン結合銅の測定
上記(2)で構築した液体クロマトグラフィー装置に、溶離液として20%(w/w)2−プロパノール、及び0.5M塩化ナトリウムを含む0.1M BES緩衝液(pH7.0)を100μL/分の流速で流しておき、上記(3)で調製したセルロプラスミン結合銅含有試料の100μLを試料導入部に注入した。
なお、第1のカラム、及び第2のカラムの温度は、25℃となるようにした。
280nmにおける吸光度の検出によりタンパク質のピークが過ぎたことが確認された試料注入20分後に、1mM 4−(3,5−ジブロモ−2−ピリジルアゾ)−N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリンナトリウム〔3,5−DiBr−PAESA〕、及び10mMアスコルビン酸を含む100mM塩酸を100μL試料注入部に注入した。
検出部による検出を、637nmでの吸光の測定により行った。
また、対照として、試料の注入を行わない他は上記と同様に測定を行い、試薬盲検の測定を行った。
【0064】
これらの測定の結果を図5に示した。
これらのクロマトグラムにおいて、(a)はセルロプラスミン結合銅含有試料を測定した場合であり、(b)は試薬盲検を測定した場合である。また、横軸は試料を注入してからの経過時間(aの場合)、又は3,5−DiBr−PAESA等を注入してからの経過時間(bの場合)を、縦軸は637nmでの吸光を表す。
【0065】
これらの図より、セルロプラスミン結合銅含有試料を測定した場合は、3,5−DiBr−PAESAに結合した銅のピークである経過時間43分付近のピークが試薬盲検の経過時間13分付近のピークに比べて顕著に増大していることが分かる。
このことより、本発明の測定においては、試料中のセルロプラスミン結合銅を特異的に測定できることが確かめられた。
なお、ヒト・アポ型セルロプラスミン〔シグマ社製(米国)〕試料についても測定を行ったが、試薬盲検の場合と同様のクロマトグラムであった。
【0066】
(実施例5) 〔試料中の血清アルブミン結合亜鉛の測定〕
本発明の液体クロマトグラフィー測定装置を構築し、これを用いて試料中の血清アルブミン結合亜鉛の測定を行った。
【0067】
(1)第1のカラムの調製
FPLC用アガロースカラム〔内径7mm×長さ25mm〕(ファルマシア バイオテク社製)に充填されたアガロースに、6−アミノカプロン酸をエポキシ活性化法で共有結合させた。
次に、この末端カルボキシル基を、N−ヒドロキシサクシンイミドでエステル化した。
更にこのエステル結合に、0.5M塩化ナトリウムを含む0.2M炭酸水素ナトリウム緩衝液(pH8.3)に10mg/mLの濃度で溶解したウサギの抗ヒト・血清アルブミン抗体〔シグマ社製(米国)〕の1mLを接触、求核攻撃させて、アミド結合させた。
その後、これに0.5M塩化ナトリウムを含む0.5Mエタノールアミン緩衝液(pH8.3)を加え、1時間放置して、過剰な活性基を不活性化させた。
更に、0.5M塩化ナトリウムを含む0.5Mエタノールアミン緩衝液(pH8.3)と0.5M塩化ナトリウムを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4)を交互に3回ずつ流し、結合しなかったウサギ抗ヒト・血清アルブミン抗体を洗い流した。
このようにして、ウサギの抗ヒト・血清アルブミン抗体を固定させた担体よりなる第1のカラムを調製した。
【0068】
(2)液体クロマトグラフィー装置の構築
ポンプ、試料導入部、及び検出部は、ナノスペース・システムSI−1(資生堂社製)を用いた。
第2のカラムとして、内面逆相型カラムのカプセルパック MF ph−1〔内径1.5mm×長さ35mm〕(資生堂社製)を使用した。
ポンプ、試料導入部、上記(1)で調製した第1のカラム、第2のカラム、検出部、及びフラクションコレクターを、図1に示したように、ポンプ−試料導入部−第1のカラム−第2のカラム−検出部−フラクションコレクターの順に連結して、本発明の液体クロマトグラフィー装置を構築した。
【0069】
(3)試料の調製
ヒト・血清アルブミン〔シグマ社製(米国)〕を40mg/mLになるよう、そして、亜鉛濃度が10μg/mLになるよう硝酸亜鉛を、0.1M BES緩衝液(pH7.0)にそれぞれ溶解して、ヒト・血清アルブミン結合亜鉛含有試料を調製した。
【0070】
(4)試料中のヒト・血清アルブミン結合亜鉛の測定
上記(2)で構築した液体クロマトグラフィー装置に、溶離液として23%(w/w)アセトニトリル、20mMアデニン、及び1M塩化ナトリウムを含む0.2M BES緩衝液(pH7.0)を200μL/分の流速で流しておき、上記(3)で調製したヒト・血清アルブミン結合亜鉛含有試料の100μLを試料導入部に注入した。
なお、第1のカラム、及び第2のカラムの温度は、30℃となるようにした。
280nmにおける吸光度の検出によりタンパク質のピークが過ぎたことが確認された試料注入15分後に、0.1mM α,β,γ,δ−テトラキス(4−カルボキシフェニル)ポルフィン〔TCPP〕、及び20mMアデニンを含む1M 2−(シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸〔CHES〕緩衝液(pH9.0)を100μL試料注入部に注入した。
検出部による検出を、励起波長422nm、及び放射波長606nmでの蛍光強度の測定により行った。
また、対照として、試料の注入を行わない他は上記と同様に測定を行い、試薬盲検の測定を行った。
【0071】
これらの測定の結果を図6に示した。
これらのクロマトグラムにおいて、(a)はヒト・血清アルブミン結合亜鉛含有試料を測定した場合であり、(b)は試薬盲検を測定した場合である。また、横軸は試料を注入してからの経過時間(aの場合)、又はTCPP等を注入してからの経過時間(bの場合)を、縦軸は励起波長422nm、及び放射波長606nmでの蛍光強度を表す。
【0072】
これらの図より、ヒト・血清アルブミン結合亜鉛含有試料を測定した場合は、TCPPに結合した亜鉛のピークである経過時間34分付近のピークが試薬盲検の経過時間19分付近のピークに比べて顕著に増大していることが分かる。
このことより、本発明の測定においては、試料中のヒト・血清アルブミン結合亜鉛を特異的に測定できることが確かめられた。
なお、ヒト・血清アルブミン〔シグマ社製(米国)〕試料についても測定を行ったが、試薬盲検の場合と同様のクロマトグラムであった。
【0073】
【発明の効果】
本発明の測定装置及び測定方法は、特殊若しくは高価な装置又は部品を使用することなく、かつ煩雑な操作を必要とせず、現在広く普及している装置を用いるものでありながら、吸着、濃縮、遊離、結合体形成、分解、及び分離の各工程を簡便な操作で行うことができ、試料中のリガンドに結合している測定対象物質だけを特異的に測定することができる測定装置、及び測定方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体クロマトグラフィー装置の構成を示した図である。
【図2】ヒト血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウム測定のクロマトグラムを示した図である。
【図3】ヒト血清試料中のトランスフェリン結合アルミニウム測定の検量線を示した図である。
【図4】試料中のトランスフェリン結合鉄測定のクロマトグラムを示した図である。
【図5】試料中のセルロプラスミン結合銅測定のクロマトグラムを示した図である。
【図6】試料中の血清アルブミン結合亜鉛測定のクロマトグラムを示した図である。
Claims (8)
- ポンプ、試料導入部、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなる第1のカラム、他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなる第2のカラム、及び検出部よりなる、試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置。
- ポンプ、試料導入部、第1のカラム、第2のカラム、及び検出部が、ポンプ−試料導入部−第1のカラム−第2のカラム−検出部の順に連結されている、請求項1記載の試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置。
- リガンドに対する特異的結合物質が、リガンドに対する抗体である、請求項1又は請求項2記載の試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置。
- 測定対象物質が、金属である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置。
- ポンプ、試料導入部、リガンドに対する特異的結合物質を固定した担体よりなる第1のカラム、他の物質と結合した信号物質及び遊離の信号物質と測定対象物質と結合した信号物質とを分離することができる担体よりなる第2のカラム、及び検出部よりなる、試料中のリガンドに結合している測定対象物質を特異的に測定するための液体クロマトグラフィー装置の試料導入部に試料を注入し、次に、測定対象物質と結合する信号物質を含み測定対象物質をリガンドより遊離させることができる溶液を試料導入部より注入し、そして、測定対象物質と結合した信号物質を検出部において検出することよりなる、試料中のリガンドに結合している測定対象物質の特異的測定方法。
- 液体クロマトグラフィー装置のポンプ、試料導入部、第1のカラム、第2のカラム、及び検出部が、ポンプ−試料導入部−第1のカラム−第2のカラム−検出部の順に連結されている、請求項5記載の試料中のリガンドに結合している測定対象物質の特異的測定方法。
- リガンドに対する特異的結合物質が、リガンドに対する抗体である、請求項5又は請求項6記載の試料中のリガンドに結合している測定対象物質の特異的測定方法。
- 測定対象物質が、金属である、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の試料中のリガンドに結合している測定対象物質の特異的測定方法。
【0001】
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