JP4042022B2 - プロセス制御システムにおける通信方法及びプロセス制御システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラントに設置されたフィールド機器と通信を行ってプラントを制御するプロセス制御システムにおける通信方法及びプロセス制御システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、プラント等の制御における通信は、4〜20mA信号の伝送方式のようなアナログ伝送により行っていた。しかし、近年、制御装置とフィールド機器との通信にはデジタル伝送が要請され、この伝送方式が標準化されつつある。この伝送方式はフィールドバスを用いて行われる。フィールドバスの仕様として、デジタル双方向通信仕様であるFOUNDATION Fieldbus仕様がある。
【0003】
図5は上述した仕様のフィールドバスを敷設したプロセス制御システムの従来例の構成図である。
図5で、操作監視ステーション1は、オペレータの操作パネルや監視画面を有し、プラントの運転操作と監視を担当する。制御装置2は、操作監視ステーション1により操作され、プラントの制御を担当する。制御対象であるプラントの規模に応じて複数の制御装置が分散配置される。
通信装置3は、制御装置2と内部通信バスを介して接続し、フィールドバス4の通信制御を行うとともに、制御装置2とフィールドバス4に接続されたフィールド機器5との通信のインタフェイスを行う。フィールド機器5は、例えばセンサ、バルブ等である。
【0004】
図5のシステムでは、制御装置2に実装されているファンクションブロックの出力を、フィールド機器5に実装されているファンクションブロックに入力パラメータとして書き込む。
FOUNDATION Fieldbus仕様のフィールドバスでは、一般的な入力パラメータでは、書き込んだ入力パラメータを読み返す仕様になっていない。
このため、制御装置2またはフィールド機器5に故障が発生すると、故障の復旧時にフィールド機器5の入力パラメータを読み返して制御装置2に与えることは行っていない。このため、制御装置2は故障発生前とは全く異なる出力値を発生することがある。これによって、制御装置2がフィールド機器5に与える出力値が急変(バンプ)するため、制御を継続できないという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、制御装置またはフィールド機器が故障から復旧したときに、フィールド機器から現在のデータを読み返し、読み返したデータで制御装置が出力を調整することによって、読み返しパラメータが規定されていないパラメータを用いた場合でも、バンプレスな制御を実現できるプロセス制御システムにおける通信方法及びプロセス制御システムを実現することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は次のとおりの構成になったプロセス制御システムにおける通信方法及びプロセス制御システムである。
【0007】
(1)通常時には、入力パラメータの読み返しを行うことなくプロセス制御を行う制御装置と、この制御装置から入力パラメータが書き込まれるフィールド機器と、前記制御装置とフィールド機器との間の通信を制御する通信装置とを備え、次の手順で通信を行うことを特徴とするプロセス制御システムにおける通信方法。
(a)前記制御装置は、制御装置とフィールド機器の少なくとも一方に故障発生を検出すると、制御装置からフィールド機器への入力パラメータの書き込みを抑制する工程。
(b)前記通信装置は、工程(a)の故障から復旧したことを検出すると、フィールド機器から現在の入力パラメータを読み返す工程。
(c)制御装置は、出力を停止し、通信装置からの読み返された入力パラメータの通知を待つ工程。
(d)通信装置は、工程(b)で得た読み返された入力パラメータを制御装置に通知する工程。
(e)制御装置は、通知された入力パラメータを出力データに一致させるトラッキング処理を行い、この入力パラメータで出力を再開する工程。
(f)通信装置は、トラッキング処理が完了すると、制御装置が再開した出力でフィールド機器への入力パラメータの書き込みを再開する工程。
【0008】
(2)通常時には、入力パラメータの読み返しを行うことなくプロセス制御を行う制御装置と、この制御装置から入力パラメータが書き込まれるフィールド機器と、前記制御装置とフィールド機器との間の通信を制御する通信装置とを備えたプロセス制御システムにおいて、
制御装置とフィールド機器の故障発生と復旧を検出する状態検出手段と、
この状態検出手段が故障発生を検出すると、前記制御装置からフィールド機器への入力パラメータの書き込みを抑制する書込抑制手段と、
状態検出手段が故障から復旧したことを検出すると、フィールド機器から現在の入力パラメータを読み返す読返し手段と、
この読返し手段から読み返された入力パラメータの通知があるまでは制御装置の出力を停止する出力停止手段と、
読返し手段から通知された入力パラメータを出力データに一致させるトラッキング処理を行い、この入力パラメータで出力を再開するトラッキング手段と、
トラッキング処理が完了すると、前記入力パラメータを出力データとしてフィールド機器へのデータ書き込み通信を再開する書込再開手段と、
を有することを特徴とするプロセス制御システム。
【0009】
(3)前記制御装置がフィールド機器に入力パラメータを書き込む通信は定周期通信により行い、通信装置がフィールド機器から入力パラメータを読み返す通信は定周期通信の合間をぬった非定周期通信により行うことを特徴とする(2)記載のプロセス制御システム。
【0010】
(4)前記制御装置がフィールド機器に入力パラメータを書き込む通信はPublisher/Subscriber通信により行うことを特徴とする(3)記載のプロセス制御システム。
【0011】
(5)前記制御装置がフィールド機器から入力パラメータを読み返す通信はClient/Server通信により行うことを特徴とする(3)記載のプロセス制御システム。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下図面を用いて本発明を詳しく説明する。
図1は本発明の一実施例を示す構成図である。図1で図5と同一のものは同一符号を付ける。
図1で、通信装置10と制御装置20には本発明の特徴とする手段が設けられている。
【0013】
データ入出力手段11は、制御装置20との間でデータを入出力する。
状態検出手段12は、制御装置20とフィールド機器5の故障発生と復旧を検出する。
書込抑制手段13は、状態検出手段12が故障発生を検出すると、制御装置20からフィールド機器5へのデータの書込みを抑制する。
読返し手段14は、状態検出手段12が故障から復旧したことを検出すると、フィールド機器から現在のデータを読み返す。
【0014】
制御装置20からフィールド機器5へのデータの書込みは、例えばFOUNDATION Fieldbus仕様で規定される定周期通信であるPublisher/Subscriber通信により行う。
フィールド機器からのデータの読み返しは、例えばFOUNDATION Fieldbus仕様で規定される非定周期通信であるClient/Server通信により行う。
【0015】
出力停止手段21は、復旧時に、読返し手段14から読み返しデータの通知があるまでは制御装置20の出力を停止する。
トラッキング手段22は、復旧時に、読返し手段14から通知された読み返しデータを出力データに一致させるトラッキング処理を行い、この読み返しデータで出力を再開する。
書込再開手段15は、トラッキング処理が完了すると、上記読み返しデータを出力データとしてフィールド機器5へのデータ書き込み通信を再開する。
【0016】
図1のシステムの動作を説明する。
図2はフィールド機器に実装されるファンクションブロックの構成例を示した図である。
図2で、AIはアナログ入力を行うファンクションブロック、PIDはPID(比例・積分・微分)の制御演算を行うファンクションブロック、AOはアナログ出力を行うファンクションブロックである。これらのブロックを組み合わせてPID制御ループを構成している。
【0017】
図3は図2の制御ループの処理手順を示したタイムチャートである。
図の例では、AIブロックはフィールド機器#1に、PIDブロックとAOブロックはフィールド機器#2にある。
タイムチャートに示すように、AIブロックにアナログデータを入力する処理、フィールド機器#1からフィールド機器#2にデータ転送する処理、PIDブロックで制御演算を行う処理、AOブロックからアナログデータを出力する処理を順番に行う。これらの処理はPublisher/Subscriber通信のような定周期通信により行う。
定周期通信の合間をぬってAIブロックに書き込んだデータ(入力パラメータ)を読み返す通信を行う。この通信は、Client/Server通信のような非定周期通信により行う。
【0018】
制御装置またはフィールド機器に故障が発生したときの動作について説明する。図4は動作手順を示したフローチャートである。フローチャートのステップ順に従って説明する。
(S1)制御装置20とフィールド機器5の少なくとも一方に故障が発生する。(S2)通信装置10は、制御装置20とフィールド機器5の少なくとも一方に故障発生を検出すると、制御装置20からフィールド機器5へのデータの書込みを抑制する。
(S3)制御装置20とフィールド機器5が故障から復旧する。
(S4)通信装置10は、制御装置20とフィールド機器5が故障から復旧したことを検出すると、フィールド機器5へデータを再書き込みする前に、フィールド機器から現在のデータを読み返す。
(S5)制御装置20は、出力を停止し、通信装置からの読み返しデータの通知を待つ。
(S6)通信装置10がステップ(S5)で得た読み返しデータを制御装置20に通知すると、制御装置20は、通知された読み返しデータを出力データに一致させるトラッキング処理を行い、この読み返しデータで出力を再開する。
(S7)通信装置10は、トラッキング処理が完了すると、制御装置20が再開した出力でフィールド機器5へのデータ書き込みを再開する。なお、通信装置10におけるトラッキング処理の完了は、データ書き込み通信が再開することで確認できる。
【0019】
制御装置20は、フィールド機器5の異常を読み返しデータに付加されるデータステータスによって確認することができる。このデータステータスは、、通信装置10がフィールド機器5の異常を検出したときは、「Good」から「Bad」に変化させる。
【0020】
このようにして故障から復旧したときに、現在データの読み返しとトラッキング処理とを組み合わせることによって、制御装置20の出力をトラッキングすることができる。これによって、バンプレスな制御を実現できる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によれば次の効果が得られる。
【0022】
請求項1及び請求項2記載の発明では、制御装置またはフィールド機器が故障から復旧したときに、フィールド機器から現在のデータを読み返し、読み返したデータで制御装置が出力を調整するトラッキング処理を行っている。これによって、読み返しパラメータが規定されていないパラメータを用いた場合でも、バンプレスな制御を実現できる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、フィールド機器へデータ書き込む処理に影響を与えることなくフィールド機器からデータを読み返すことができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、FOUNDATION Fieldbus仕様に従った通信方式でフィールド機器へのデータの書き込みを行うことができる。
【0025】
請求項5記載の発明によれば、FOUNDATION Fieldbus仕様に従った通信方式でフィールド機器からのデータの読み返しを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明の動作説明図である。
【図3】本発明の動作説明図である。
【図4】本発明の動作説明図である。
【図5】プロセス制御システムの従来例の構成図である。
【符号の説明】
5 フィールド機器
10 通信装置
12 状態検出手段
13 書込抑制手段
14 読返し手段
15 書込再開手段
16 フィールド通信手段
20 制御装置
21 出力停止手段
22 トラッキング手段

Claims (5)

  1. 通常時には、入力パラメータの読み返しを行うことなくプロセス制御を行う制御装置と、この制御装置から入力パラメータが書き込まれるフィールド機器と、前記制御装置とフィールド機器との間の通信を制御する通信装置とを備え、次の手順で通信を行うことを特徴とするプロセス制御システムにおける通信方法。
    (a)前記制御装置は、制御装置とフィールド機器の少なくとも一方に故障発生を検出すると、制御装置からフィールド機器への入力パラメータの書き込みを抑制する工程。
    (b)前記通信装置は、工程(a)の故障から復旧したことを検出すると、フィールド機器から現在の入力パラメータを読み返す工程。
    (c)制御装置は、出力を停止し、通信装置からの読み返された入力パラメータの通知を待つ工程。
    (d)通信装置は、工程(b)で得た読み返された入力パラメータを制御装置に通知する工程。
    (e)制御装置は、通知された入力パラメータを出力データに一致させるトラッキング処理を行い、この入力パラメータで出力を再開する工程。
    (f)通信装置は、トラッキング処理が完了すると、制御装置が再開した出力でフィールド機器への入力パラメータの書き込みを再開する工程。
  2. 通常時には、入力パラメータの読み返しを行うことなくプロセス制御を行う制御装置と、この制御装置から入力パラメータが書き込まれるフィールド機器と、前記制御装置とフィールド機器との間の通信を制御する通信装置とを備えたプロセス制御システムにおいて、
    制御装置とフィールド機器の故障発生と復旧を検出する状態検出手段と、
    この状態検出手段が故障発生を検出すると、前記制御装置からフィールド機器への入力パラメータの書き込みを抑制する書込抑制手段と、
    状態検出手段が故障から復旧したことを検出すると、フィールド機器から現在の入力パラメータを読み返す読返し手段と、
    この読返し手段から読み返された入力パラメータの通知があるまでは制御装置の出力を停止する出力停止手段と、
    読返し手段から通知された入力パラメータを出力データに一致させるトラッキング処理を行い、この入力パラメータで出力を再開するトラッキング手段と、
    トラッキング処理が完了すると、前記入力パラメータを出力データとしてフィールド機器へのデータ書き込み通信を再開する書込み再開手段と、
    を有することを特徴とするプロセス制御システム。
  3. 前記制御装置がフィールド機器に入力パラメータを書き込む通信は定周期通信により行い、通信装置がフィールド機器から入力パラメータを読み返す通信は定周期通信の合間をぬった非定周期通信により行うことを特徴とする請求項2記載のプロセス制御システム。
  4. 前記制御装置がフィールド機器に入力パラメータを書き込む通信はPublisher/Subscriber通信により行うことを特徴とする請求項3記載のプロセス制御システム。
  5. 前記制御装置がフィールド機器から入力パラメータを読み返す通信はClient/Server通信により行うことを特徴とする請求項3記載のプロセス制御システム。
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