JP4040745B2 - Mr装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、被検体内の原子核スピンの磁気共鳴現象を利用した磁気共鳴(MR)装置に係り、とくに、CPMGパルス系列を利用した高速SE法に基づく位相情報を反映したデータ収集を行うMR装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
磁気共鳴(MR)装置は一般に、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生するMR信号から画像を再構成したりスペクトルデータを得る装置である。
【0003】
この種のMR装置に要求される最近の傾向の1つとして、撮影の高速化がある。この高速撮影を行うことができるパルスシーケンスには種々のものが使用または提案されているが、その1つに、CPMGパルス系列を利用した高速SE法がある。この高速SE法の手法の1つとしてRARE法も知られている。
【0004】
図15に、高速SE法のパルスシーケンスの一例を示す。RFパルスとしては、励起RFパルスP1および反転(リフォーカス)RFパルスP2〜Pnが、それぞれスライス方向傾斜磁場Gsと共に順次印加される。反転RFパルスP2〜Pnの印加に応答してエコー信号E1〜Enが得られるが、このエコー信号はそれぞれ読み出し方向傾斜磁場Grを印加した状態で読み出される。また、エコー信号E1〜Enのそれぞれには、大きさの異なる位相エンコード方向傾斜磁場GeのパルスPE1,PE3,P5〜が印加される。これにより、エコー信号は、K空間上の対応する位相エンコード位置にマッピングされ、フーリエ変換法により実空間画像に再構成される。なお、上述のRFパルスの送信位相はCPMGパルス系列に従う「X,Y,Y,Y,…)になっている。
【0005】
この高速SE法を適用した応用シーケンスとしては、文献「David c.Alsop, "Phase Insensitive Preparation of Single-Shot RARE: Application to Diffusion Imaging in Humans", MRM 38:527-533 (1997) 」により、シングルショットのディフュージョン(拡散強調)画像を撮影するパルスシーケンスが提案されている。このパルスシーケンスを図16に示す。同図において、P1は励起RFパルス、P2〜Pnは反転(リフォーカス)RFパルス、Gsはスライス方向傾斜磁場、Grは読み出し方向傾斜磁場、Geは位相エンコード方向傾斜磁場をそれぞれ示す。
【0006】
このパルスシーケンスでは、さらに、以下のような特徴が付加されている。PRパルスの送信位相は、CPMGパルス系列のものではなく、最初の励起RFパルスP1のみ90°ずれた値に設定され、全体として、「Y,Y,Y,Y,…」または「−Y,Y,Y,Y,…」になっている。また、それらのRFパルス列の時間的前に別のRFパルスPa、Pbがスライス選択的に設定される。この内、2番目のRFパルスPbの時間的前後には、拡散強調用の傾斜磁場パルス(MPG:Motion Probing Gradient )Ma,Mbが所定方向の傾斜磁場Gmpとして印加される。さらに、2番目のRFパルスPbと励起RFパルスP1との間にて、位相エンコード方向に一定の時間積分値の傾斜磁場パルスPEaを加える。さらに、反転RFパルスP2以降の位相エンコード方向傾斜磁場Geに対しても、上述した図16の位相エンコード方向傾斜磁場Ge=PE1〜PE6…に上記傾斜磁場パルスPEaと同量の時間積分値を加えた傾斜磁場パルスGe=PE1′〜PE6′…が印加され、エコー信号E1〜E3...が収集される。これにより、各エコー信号には、それぞれ異なる大きさの位相エンコードが施され、上述と同様にK空間へのマッピングを介して再構成される。
【0007】
このように拡散強調イメージングにあっては、ボクセル内のランダムな動きの水分子からの信号を消去するMPGパルスが印加され、生体組織内の分子拡散運動を強調した画像が得られる。MPGパルスは、分子の微小な動きに対する感度を得るため、その強度は大きく、印加時間も長くなっている。このため、診断対象それ自体の僅かな動き(体動など)が大きな位相シフトを起こし、アーチファクトの原因になる。
【0008】
このアーチファクトを抑制するには、1つの対策として、シングルショットEPI法などのように、全てのデータを1回の励起で収集してしまうという方法がある。このように収集すると、体動に起因した位相シフトが全てのエコーデータでほぼ同じ程度になるので、アーチファクトが抑制される。この方法によれば、したがって、特別な後処理も必要なく、比較的容易にアーチファクトの少ない画像が得られる。しかし、データ収集の時間が制約されるので、スライスの面内分解能があまり良くないという欠点があった。
【0009】
これに対して、複数回の励起に分割して全てのデータを収集するイメージングにおいて体動アーチファクトを抑制するには、ナビゲータエコー法が知られている(例えば、「R.J.Ordidge et al., "CORRECTION OF MOTIONAL ARTIFACTS IN DIFFUSION-WEIGHTED MR IMAGES USING NAVIGATION ECHOES", Magnetic Reso-nance Imaging, Vol.12, No.3, pp.455-460, 1994 」参照)。このナビゲータエコー法は、ナビゲータエコーという位相エンコードを印加していないエコーデータを画像再構成用エコーデータとは別に収集し、このナビゲータエコーのデータから体動に因る位相シフト量を各励起毎に求め、その位相シフト分だけ後処理により戻す(補正する)という手法である。ナビゲータエコー法を使用すれば、1回の励起で全データを収集する必要が無いので、面内分解能やS/Nを自由に調整でき、また3D−FT法による撮影も容易に行える。その反面、位相シフト量を計測するときの誤差などに因って、体動アーチファクトを完全には抑制できないというデメリットも併せ持っている。
【0010】
ところで、血流などの流れの情報をイメージングするフローイメージング法としては、図17に示すように、FE(フィールドエコー)法を利用した位相コントラスト(Phase Contrast)法が知られている。同図において、P11,P12は励起RFパルス、E11,E12はエコー信号、Gsはスライス方向傾斜磁場、Grは読み出し方向傾斜磁場、Geは位相エンコード方向傾斜磁場、および、Gfeはフローエンコード傾斜磁場をそれぞれ示す。フローエンコード傾斜磁場Gfe=Faを印加したパルスシーケンスで1組のエコーデータが収集され、またフローエンコード傾斜磁場Gfe=Fbを印加したパルスシーケンスでもう1組のエコーデータが収集される。各組のエコーデータが個別に再構成され、得られた2つの複素画像IA,IB間の画素毎の差分画像ICが演算される。この場合、エコーデータ(生データ)の段階で複素差分が演算し、その後に再構成してもよい。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の高速SE法の場合、CPMGパルス系列のRFパルスを採用しているため、その特性上、第2番目以降のRFパルスの印加位相と第2番目のRFパルスを印加する時の横磁化の位相との差の程度によって、後続のエコーの振幅が変化するという問題がある。このため、高速SE法は、T1強調画像、T2強調画像など、画素値の絶対値を利用する画像を得るには問題無く利用できるが、位相コントラスト法による流速測定、ナビゲーションエコー法よる体動アーチファクト補正、静磁場不均一性の測定など、画像の位相情報を利用する場合には、適用できなかった。
【0012】
このため、かかる補正、測定などを行う場合、通常SE法、FE法、またはEPI法を利用するしか手立てがないが、通常SE法、FE法は撮影時間が長く、一方、EPI法は磁場不均一による形態の歪みが大きいなどの別の問題があり、これを甘んじて受ける必要があった。
【0013】
本発明は、上述した従来の高速SE法と位相情報を利用した応用とを取り巻く不便な状況に鑑みてなされたもので、撮影の高速化と静磁場の不均一性に対する高い耐性とを維持し、かつ、エコー信号からスピンの位相情報を利用した種々の画像などの情報を得ることができる、改善した高速SE法によるMR撮影法を実行するMR装置を提供することを、その目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、CPMGパルス系列に従うデータ収集シーケンスを改善して上記目的を達成しようとするものである。その構成の骨子は、高速SEシーケンスの最初の励起RFパルスの位相をCPMGパルス系列のそれから90°だけずらし、その変形した高速SEシーケンスの前に、前置励起RFパルスを含むパルス列を前置的に付加し、さらに、前置励起RFパルスと変形高速SEシーケンスの最初の励起RFパルスとの間、および、その変形高速SEシーケンスの反転RFパルスの間にスポイラー傾斜磁場パルスを挿入する、ことである。
【0015】
これにより、前置励起RFパルスと変形RAREシーケンスの最初の励起RFパルスとの間で横磁化が受ける位相変化を反映したエコー信号を得ることができ、このエコー信号を適宜にデータ処理することで位相を利用した画像データ、スペクトロスコピー、位相分布データなどを得ることができる。
【0016】
具体的な本発明の構成は以下のようである。
【0017】
本発明に係るMR装置は、時間軸上の最初に位置する前置励起RFパルスおよび前記前置励起RFパルスよりも後に位置する前置反転RFパルスを少なくとも含む第1のパルス列を前置的に被検体に印加する第1の印加手段と、送信位相がCPMGパルス系列に従う最初のパルス送信位相よりも90°ずらして設定された励起RFパルスと送信位相がCPMGパルス系列に従う2番目以降のパルス送信位相と同じに設定された複数個の反転RFパルスとを含む第2のパルス列を前記第1のパルス列を前置的に印加した後に前記被検体に時系列に印加する第2の印加手段と、前記前置励起RFパルスの印加と前記励起RFパルスの印加との間の期間内に及び前記複数個の反転RFパルスのそれぞれの印加後に、一定の時間積分値を有するスポイラーパルスを所望の傾斜磁場方向に発生させて前記被検体に印加する第3の印加手段と、前記前置励起RFパルスの印加と前記励起RFパルスの印加との間の期間であり、かつ前記前置反転RFパルスの時間軸上前後の位置において組織拡散の程度に応じて、前記複数個の反転RFパルスに応答して発生する複数個のエコー信号の強度を変化させるMPGパルスを所望の傾斜磁場方向にそれぞれ印加する第4の印加手段と、前記複数個のエコー信号を収集して位相情報に関わるデータ処理を行うデータ処理手段と、を備えたことを特徴とする。
【0025】
また、上述の構成において、前記複数個のエコー信号の内の少なくとも1個のエコー信号に付与する位相エンコードを零とし且つ残りのエコー信号に付与する位相エンコードをイメージング必要量とする位相エンコード用傾斜磁場を印加する第5の印加手段を備え、前記データ処理手段は、前記位相エンコードが零のエコー信号に応じたエコーデータを収集して当該エコーデータが有する位相情報を演算する手段と、この位相情報から前記被検体の体動に拠る位相シフト量を演算する手段と、前記位相エンコードとしてイメージング必要量を与えるエコー信号に応じたエコーデータを収集して当該エコーデータの位相を前記位相シフト量に基づき補正する手段とを備える、ことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0028】
第1の実施の形態
第1の実施形態を図1〜図3を参照して説明する。この実施形態にかかるMRI(磁気共鳴イメージング)装置の概略構成を図1に示す。
【0029】
このMRI装置は、被検体Pを載せる寝台部と、静磁場を発生させる静磁場発生部と、静磁場に位置情報を付加するための傾斜磁場発生部と、高周波信号を送受信する送受信部と、システム全体のコントロール及び画像再構成を担う制御・演算部とを備えている。
【0030】
静磁場発生部は、例えば超電導方式の磁石1と、この磁石1に電流を供給する静磁場電源2とを備え、被検体Pが遊挿される円筒状の開口部(診断用空間)の軸方向(Z軸方向)に静磁場H0 を発生させる。なお、この磁石部にはシムコイル14が設けられている。このシムコイル14には、後述するコントローラの制御下で、シムコイル電源15から静磁場均一化のための電流が供給される。寝台部は、被検体Pを載せた天板を磁石1の開口部に退避可能に挿入できる。
【0031】
傾斜磁場発生部は、磁石1に組み込まれた傾斜磁場コイルユニット3を備える。この傾斜磁場コイルユニット3は、互いに直交するX、Y、Z軸方向の傾斜磁場を発生させるための3組(種類)のx,y,zコイル3x〜3zを備える。傾斜磁場部はさらに、x,y,zコイル3x〜3zに電流を供給する傾斜磁場電源4を備える。この傾斜磁場電源4は、後述するシーケンサ5の制御のもと、x,y,zコイル3x〜3zに傾斜磁場を発生させるためのパルス電流を供給する。
【0032】
傾斜磁場電源4からx,y,zコイル3x〜3zに供給されるパルス電流を制御することにより、物理軸としての3軸であるX,Y,Z方向の傾斜磁場を合成して、論理軸としてのスライス方向傾斜磁場Gs、位相エンコード方向傾斜磁場Ge、および読出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Grの各方向を任意に設定・変更することができる。スライス方向、位相エンコード方向、および読出し方向の各傾斜磁場は静磁場H0 に重畳される。
【0033】
送受信部は、磁石1内の撮影空間にて被検体Pの近傍に配設されるRFコイル7と、このコイル7に接続された送信器8T及び受信器8Rとを備える。この送信器8T及び受信器8Rは、後述するシーケンサ5の制御のもとで、磁気共鳴(MR)現象を誘起させるためのラーモア周波数のRF電流パルスをRFコイル7に供給する一方、RFコイル7が受信した高周波のMR信号を受信し、各種の信号処理を施して、対応するデジタル信号を形成するようになっている。
【0034】
さらに、制御・演算部は、シーケンサ5、コントローラ6、演算ユニット10、記憶ユニット11、表示器12、および入力器13を備える。この内、コントローラ6はコンピュータを有し、このコンピュータに記憶させたソフトウエア手順により、シーケンサ5にスキャンシーケンス情報を指令するとともに、シーケンサ5を含む装置全体の制御ブロックの動作タイミングの同期をとりながら、それらの制御を統括する機能を有する。
【0035】
シーケンサ5は、CPUおよびメモリを備えており、コントローラ6から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報にしたがって傾斜磁場電源4、送信器8T、受信器8Rの一連の動作を制御する。ここで、パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスにしたがって傾斜磁場電源4、送信器8Rおよび受信器8Tを動作させるために必要な全ての情報であり、例えばx,y,zコイル3x〜3zに印加するパルス電流の強度、印加時間、印加タイミングなどに関する情報を含む。
【0036】
また、演算ユニット10は、受信器8RからのMR信号のデジタルデータを入力して内蔵メモリで形成されるフーリエ空間(k空間または周波数空間とも呼ばれる)への生データ(原データとも呼ばれる)の配置、および、生データを実空間画像に再構成するための2次元または3次元のフーリエ変換処理を行うようになっている。また、演算ユニット10は、3次元画像データから2次元画像を生成するためにMIP(最大値投影)処理なども実施できるようになっている。
【0037】
記憶ユニット11は、生データおよび再構成画像データのみならず、演算処理が施された画像データなどを保管することができる。表示器12は画像を表示する。また、術者は入力器13を介して所望のスキャン条件、スキャンシーケンス、画像処理法などの必要情報をコントローラ6に入力できるようになっている。
【0038】
次に、この実施形態の動作を、本発明のイメージング原理と共に説明する。
【0039】
本実施形態では、本発明に係る改善した高速SE法を位相コントラスト(Phase Contrast)法に適用してフローイメージングを行う。このイメージングでは、スキャンは2回実施される。
【0040】
この2回のスキャンに使用するパルスシーケンスを図2に示す。同図は、2回のスキャンのパルスシーケンスを同一図面上で同時に表している。後述するように、2回のパルスシーケンスの違いはフローエンコード用傾斜磁場Gfeのパルス波形の極性にある。
【0041】
1回目のスキャンAを説明する。1回目のスキャンAのパルスシーケンスは、図2、3に示す如く、CPMGパルス系列を利用したデータ収集パルス列PTacqと、このデータ収集パルス列PTacqの実行前に印加するプリパルス列PTpreとを含む。
【0042】
プリパルス列PTpreは、最初に印加する前置励起RFパルスPaと、この前置励起RFパルスPaと並行して印加するスライス方向傾斜磁場パルスGsと、この両パルスPaおよびGsを印加した後のデータ収集パルス列PTacqを印加までの期間で印加するフローエンコードパルス用傾斜磁場パルスGfe=Faとを含む。前置励起パルスPaは、例えば所望のRF周波数の信号をSINC関数で変調した90°パルスとして形成される。フローエンコード用傾斜磁場パルスGfe=Faは、最初に負方向に立ち下がる矩形パルスと、その後で正方向に極性反転する矩形パルスとから成る。このフローエンコード用傾斜磁場の印加方向は、描出したい方向に応じて任意に設定できる。例えば、スライス方向、読み出し方向、および位相エンコード方向のいずれかであってもよいし、その内の複数の方向に同時に印加してもよい。また、それらの3方向を個別に印加し、3つの画像を加算することで任意方向を画像化する場合であってもよい。
【0043】
データ収集パルス列PTacqは、1個目のRFパルスである励起RFパルス(90°RFパルス)P1と、この励起RFパルスP1と並行して印加するスライス方向傾斜磁場パルスGsとを含む。このスライス方向傾斜磁場パルスGsにおいて、先に印加する負極性の矩形波P1aは、パルスPa〜P1間で印加されるスライス方向の傾斜磁場の時間積分値を零にするためのリワインドパルスであり、その後の正極性側に反転したスライス選択用矩形波P1bを経て、再び負極性に反転する矩形波P1cは、パルスP1〜P2間で印加されるスライス方向の傾斜磁場の時間積分値を零にするためのリワインドパルスである。
【0044】
このパルス列PTacqはさらに、その後に印加する、リフォーカスおよびエコーデータ収集用のパルス群を含む。このパルス群としては、一定間隔で印加されるリフォーカス用の反転RFパルス(180°RFパルス)P2〜P5…と、この反転RFパルスのそれぞれと並行して印加するスライス方向傾斜磁場パルスGsとを含む。さらに、このパルス群は、複数の反転RFパルスのそれぞれに応答して発生するエコー信号E1〜E3…を個別に収集するための読み出し方向傾斜磁場パルスGrと、この読み出しに際して各エコー信号に互いに異なる強度の位相エンコードを付加する位相エンコード方向傾斜磁場パルスGeとを含む。
【0045】
データ収集パルス列PTacqにRFパルスとして用意されている励起RFパルスP1および反転RFパルスP2〜P5…は、その印加位相が「Y,Y,Y,Y,…」または「−Y,Y,Y,Y,…」に設定されている。つまり、CPMGパルス系列の送信印加位相「X,Y,Y,Y,…」を踏襲しつつも、最初の励起RFパルスP1の送信印加位相を90°ずらして設定されている。
【0046】
また、このデータ収集パルス列PTacqにおいて、位相エンコード方向傾斜磁場パルスGeは、図2に示す如く、エコー信号E1〜E3…に異なるエンコード量を与える位相エンコードパルスGencと、所定方向に一定の時間積分値を有するディフェーズ用のスポイラーパルスGspoとを合成して設定されている。この例では、スポイラーパルスGspoは、図2において負方向に立ち下がる、強度Gαを一定時間積分した値を有する矩形パルスとして設定されている。
【0047】
位相エンコードパルスGencおよびスポイラーパルスGspoは共に、図示の如く、エコー信号収集後に印加する逆極性のリワインディングパルスを伴っている。
【0048】
スライス方向傾斜磁場GsおよびRFパルスの周波数は、被検体の所望位置のスライスを選択できるようにその強度および値が設定されている。
【0049】
なお、スポイラーパルスGspoの最初のパルスSPO1はデータ収集パルス列PTacqの一部として説明したが、この最初のパルスSPO1は前置励起RFパルスPaの印加後であって励起RFパルスP1の印加前の期間内にいずれかのタイミングで印加すればよい。
【0050】
一方、2回目のスキャンBのパルスシーケンスは、図2、3に示す如く、全体としては1回目のスキャンAと同様であるが、プリパルス列PTpreの中で印加するフローエンコードパルス用傾斜磁場パルスGfeの極性が1回目と反対になっている。つまり、このフローエンコード用傾斜磁場パルスGfe=Fbは、最初に正方向の矩形波として立ち下がり、その後に負方向に極性反転する矩形波が続くようになっている。その他のパルス波形、パルス印加タイミングは1回目と同じに設定してある。
【0051】
シーケンサ5は、コントローラ6から1回目のスキャンA開始の指令を受けると、図2に示すスキャンA用のパルスシーケンスを実行する。最初に、傾斜磁場電源4および送信器8Tを駆動して、プリパルス列PTpreにおける前置励起RFパルスPaがスライス方向傾斜磁場Gsと共にスライス選択的に印加される。これにより、原子核スピンは90°フリップしてX′−Y′面(回転座標)まで倒れる。この後、フローエンコードパルスFaが印加される。このフローエンコードパルスFaの最初の矩形パルスによる傾斜磁場がスピンに位相ずれを与える。そして、2つ目の極性反転した矩形パルスによる傾斜磁場がスピンの位相を元に戻すように働く。この2つの矩形パルスの印加の間にスピンの位置が変化していない場合、フローエンコードパルスFa印加後の位相は変わらないが、スピンが動いていた場合、その位相は変化する。つまり、後続のデータ収集パルス列PTacqが印加される直前に、スピンにその動きに応じた横磁化の位相情報が与えられる。
【0052】
この後、シーケンサ5によって、データ収集パルス列PTacqの実行が順次指令される。この実行により、反転RFパルスP2〜を印加する度にエコー信号E1〜が生成される。このとき、位相エンコード方向にスポイラーパルスGspoを印加しているので、励起RFパルスP1で初めて励起されるエコー成分を十分に抑制しつつ、前置励起RFパルスPaで励起されたエコー成分を収集することができる。エコー信号E1〜は位相エンコード方向傾斜磁場Geにより所要の位相エンコード量が与えられ、かつ、読み出し方向傾斜磁場Grと共に読み出される。1回目のスキャンAのエコー信号E1〜がRFコイル7を介して時系列に受信され、受信器8Tに送られる。
【0053】
受信器8Rにおいて、エコー信号は、増幅、中間周波変換、位相検波、低周波増幅などの所定の処理に付された後、A/D変換処理されてデジタル量のエコーデータに変換される。このエコーデータは演算ユニット10に送られ、2次元のk空間に対応したメモリ領域に位相エンコード量に対応して配置される。演算ユニット10は、例えばk空間へのエコーデータの配置が完了した時点で、コントローラ6からの指令の元に、その1組のエコーデータに2次元フーリエ変換を施し、実空間画像に再構成する。このようにして生成された、1回目のスキャンAに係る所望スライスの第1の画像Iaのデータは演算ユニット10の内蔵メモリまたは記憶ユニット11に一時保管される。
【0054】
この後、上述と同様にして、シーケンサ5は2回目のスキャンBを実行する。このときには、プリパルス列PTpreの中で印加されるフローエンコードパルスFbの極性が1回目スキャン時のときとは反対の順に制御される。このため、横磁化に倒れたスピンの位相情報も逆極性となる。この2回のスキャンBによって、1回目スキャン時と同様に、もう1組のエコーデータが得られ、第2の画像Ibが生成される。
【0055】
このようにして2回のスキャンA,Bおよびそのデータ収集、再構成が完了すると、コントローラ6は、演算ユニット10に第1、第2の画像Ia,Ibの2組のデータに対する複素差分を指令する(図3のフロー説明部分を参照)。これに応答して演算ユニット10は、2組のデータの間で対応画素毎の複素差分を演算し、最終画像Icの1組のデータを生成する。このデータは必要に応じて記憶ユニット11に格納されるとともに表示器12で画像Icとして表示される。位相分布は、最終画像Icの実数部、虚数部の画像データからtan−1を演算することで計算でき、血流等の流速が求められる。
【0056】
なお、上述の複素差分の処理は、2組のエコーデータが生データの段階で、相互に差分演算して1組の差分データを生成し、これを再構成して最終画像Icを得るようにしてもよい。
【0057】
以上によって、各エコー信号E1〜は、フローエンコード傾斜磁場Gfe(=Fa,Fb)の印加に伴って、前置励起RFパルスPaの印加からCPMGパルス系列の最初の励起RFパルスP1の印加までの期間に、スピンの横磁化が受ける位相変化を、位相成分として確実に反映されたエコー信号となる。つまり、2回のスキャンA,Bによって得られる第1、第2の画像Ia,Ibは、その位相変化を反映した画像である。そこで、この第1、第2の画像Ia,Ibの複素差分をとることで、かかる位相変化のみを抽出した画像を得ることができる。
【0058】
これにより、CPMGパルス系列を踏襲した高速SE法であっても、血流速などを測定できる高画質の位相コントラスト像(フロー像)を得ることができる。したがって、位相コントラスト像を撮影するときに、従来のように通常SE法やFE法を使用する必要がなく、撮影時間を短縮できる。また、従来のようにEPI法を使用する必要も無くなるから、静磁場の不均一性の影響を受けにくく、形態歪みを抑制でき、またサセスタビリティに強いという利点も得られる。
【0059】
なお、本発明に係るスポイラーパルスGspoは、図2に記載のものに限定されることなく、図4に表すように印加してもよい。つまり、図2の場合には、CPMGパルス系列の2番目以降のRFパルス、すなわち最初の反転RFパルスP2以降のRFパルス間に印加するスポイラーパルスSPO2〜は、最初のスポイラーパルスSPO1と同方向(同極性)で、しかも同量の時間積分値を持つが、図4の場合には、そのスポイラーパルスSPO2〜は、最初のスポイラーパルスSPO1と反対方向(反対極性)で、しかも同量の時間積分値を持つように設定してある。この図4記載のスポイラーパルスの印加法によっても、図2のものとは別のエコー成分を同様に画像化でき、同様に流速情報を得ることができる。
【0060】
第2の実施形態
本発明の第2の実施形態を図5に基づき説明する。これ以降の実施形態において、上述した第1の実施形態の構成要素と同一または同等の要素には同一符号を用いて、その説明を省略または簡略化する。
【0061】
この第2の実施形態では、第1の実施形態で説明したパルスシーケンスを変形して実行し、位相コントラスト法に拠るフローイメージングを行うことを特徴とする。
【0062】
この実施形態のMRI装置のハード的構成は、第1の実施形態のものと同一である。シーケンサ5は、図5に示すパルスシーケンスを2回のスキャンで実行するようになっている。演算ユニット10は、前述した図3の処理と同様に、2回のスキャンで得た2組のエコーデータの再構成およびその2枚の画像データ間での複素差分演算を行うようになっている。
【0063】
図5に示す如く、このプリパルス列PTpreでは、第1の実施形態のものに比較し、RFパルスが1個追加されている。つまり、最初の前置励起RFパルスPaの印加から所定時間T/2が経過した後で反転(リフォーカス)RFパルスPbが印加されるようになっている。ここで時間Tは、最初の前置励起RFパルスPaの印加からデータ収集パルス列PTacqの最初の励起RFパルスP1の印加までの時間である。このように、前置励起RFパルスPaから前置反転RFパルスPbまでの時間幅T/2と、前置反転RFパルスPbから最初の励起RFパルスP1までの時間幅T/2とを等しく設定することができ、そのように設定することは、画像の位相成分が静磁場の不均一度の大小に影響されず、変化しないという有利さがある。
【0064】
前置反転RFパルスPbは例えば180°RFパルスで形成され、かつ、スライス方向傾斜磁場パルスGsと共に印加される。
【0065】
このプリパルス列PTpreでは、さらに、前置反転RFパルスPbの時間軸上の前後に、印加時間が比較的長く、高強度で、かつ等量の矩形状のフローエンコード用傾斜磁場GfeのパルスFc(又はFd)がそれぞれ印加される。1回目のスキャンAのときは、2つの矩形状のフローエンコードパルスFc(図5中の実線参照)はいずれか一方の極性(例えば正極性)に印加され、反対に、2回目のスキャンBのときは、2つの矩形状のフローエンコードパルスFd(図5中の点線参照)はその逆極性(例えば負極性)に印加される。このフローエンコードパルスパルスFcまたはFdにより位相分散が強調される。
【0066】
データ収集パルス列PTacqは、第1の実施形態のものと同一に設定されている。
【0067】
本実施形態では、シーケンサ5の指令の元に、フローエンコード用傾斜磁場Gfeの極性(方向)を変えて、このパルスシーケンスに基づくスキャンA、Bが2回行われてエコーデータがそれぞれ収集される。この2組のエコーデータは、演算ユニット10によって、第1の実施形態のときと同様に再構成、複素差分演算、位相演算などを処理に付される。このため、位相コントラスト法による流速画像が得られる。
【0068】
この実施形態によっても、第1の実施形態と同等の作用効果が得られる。とくに、前置反転RFパルスPbを追加したので、静磁場不均一性が大きい場合でも、ピクセル内の位相分散に因るエコー信号の低下を抑制したデータを収集でき、S/Nを向上させることができる。
【0069】
第3の実施形態
本発明の第3の実施形態を図6に基づき説明する。この実施形態に係るMRI装置は、本発明を磁場分布測定に適用したことを特徴とする。
【0070】
このMRI装置では、シーケンサ5は図6に示すスキャンA,Bに対応した2通りのパルスシーケンスを実行する。この2組のパルスシーケンスは共に、前述したと同一または同様のデータ収集パルス列PTacqを基礎とし、その実行までの時間幅の互いに異なるプリパルス列PTpreを印加するように設定したものである。
【0071】
この内、スキャンAのパルスシーケンスにおけるプリパルス列PTpreは、スライス方向傾斜磁場Gs(その強度はデータ収集パルス列PTacqのものと同じ)と共に印加する前置励起RFパルスPaを含む。この前置励起RFパルスPaの印加からデータ収集パルス列PTacqの最初の励起RFパルスP1の印加までの時間幅は所定時間Taに設定されている。これに対し、スキャンBのそれにおけるプリパルス列PTpreでは、上述の時間幅が所定時間Tb(<Ta)に設定されている。つまり、スキャンAにおける時間幅Taに対して、スキャンBのそれは時間dTだけ短縮されている。
【0072】
このように前置励起RFパルスPaから最初の励起RFパルスP1までの時間幅(エコータイム)を違えてスキャンA,Bをそれぞれ実行すると、収集される各組のエコーデータには時間幅Ta(またはTb)に相当する時間幅と各空間位置の静磁場不均一性に比例した位相変化が反映される。
【0073】
そこで、演算ユニット10は、各組の収集エコーデータを個別に再構成し、互いの再構成データの複素差分を画素毎に演算する。この差分画像の位相演算により、磁場分布を測定できる。例えば、上述の例で言えば、時間幅の差=Ta−Tb=4.8msに設定した場合、静磁場強度1.5Tにおいて、3.2ppmの磁場不均一性がある位置の位相差は360°になる。このように位相差を介して撮影対象の磁場分布が測定される。
【0074】
第4の実施形態
本発明の第4の実施形態を図7に基づき説明する。この実施形態に係るMRI装置は、本発明を磁場分布スペクトルに適用したものである。
【0075】
このMRI装置では、シーケンサ5は、図7に示すスキャンN1〜Nnまでの複数n回に個別に対応した複数n組のパルスシーケンスを実行する。この複数n組のパルスシーケンスも共に、第3の実施形態と同様のデータ収集パルス列PTacqを基礎とし、その実行までの時間幅の互いに異なるプリパルス列PTpreを印加することを特徴とする。
【0076】
例えば、図7に示す如く、前置励起RFパルスPaの印加からデータ収集パルス列PTacqの最初の励起RFパルスP1の印加までの時間幅Tiは、1回目のスキャンN1では所定値に、m回目のスキャンNmでは所定値よりもdT′だけ短縮され、n回目のスキャンNnでは所定値よりもdT”だけ短縮されるといった具合である。
【0077】
このn通りのパルスシーケンスによってそれぞれ収集される各組のエコーデータは、時間幅Tiと空間各位置の静磁場不均一度に比例した位相変化を起こしている。そこで、演算ユニット10は、各組のエコーデータを2次元フーリエ変換(2DFT)して実時間の画像In1〜Innに再構成する。次いで、演算ユニット10は、その複数枚の画像In1〜Innの同一ピクセル位置の画素データをそれぞれ一連のデータと見做して1次元のフーリエ変換を行うことで、各ピクセルの周波数スペクトルを演算する。この演算を全部のピクセルに対して行い、各ピクセルの周波数スペクトル分布情報を有する1枚の画像Ispecをつくる。これにより、撮影対象の磁場分布スペクトルの測定ができる。
【0078】
通常SE法(1回の励起により1個のスピンエコーを得る方法)に基づく従来のスペクトロスコピーは、1エコーを収集する度に縦磁化の回復を待つ必要があるため、数百ミリ秒から数秒の間、次の収集を控えねばならなかった。したがって、画像再構成に必要な全データを収集するには、数十分程度の非常に長い時間が掛かっていた。しかし、このMRI装置を用いてスペクトロスコピーを行う場合、1回の繰り返し時間TRで数十から数百個のエコー信号を収集することができるので、撮影時間の大幅な短縮、画像の空間分解能向上、または、周波数スペクトルの分解能向上を期することができる。
【0079】
第5の実施形態
さらに、第5の実施形態を図8、9に基づき説明する。この実施形態のMRI装置は、本発明に係るデータ収集法をSE(スピンエコー)タイプの3次元撮影に応用したイメージングを実施できる。
【0080】
図8に、コントローラ6の制御下でシーケンサ5により実行される3次元撮影のパルスシーケンスを示す。
【0081】
このパルスシーケンスもプリパルス列PTpreおよびデータ収集パルス列PTacqから成る。プリパルス列PTpreは、図示の如く、前置励起RFパルスPaおよび反転励起RFパルスPbを含み、共にスライス方向傾斜磁場Gsのパルスと共にスライス選択的に印加される。前置励起RFパルスPaおよび前置反転RFパルスPbを印加する間の期間に、スライス方向の位相エンコード(スライスエンコード)パルスGslが印加される。スライスエンコードパルスGslの強度(波形面積)は、このパルスシーケンスの繰り返し毎に、徐々に変化させて、所望の撮影ボリューム領域のスライス方向の位置情報を与えるようになっている。
【0082】
データ収集パルス列PTacqは、前述した各実施形態のものと同一または同等である。
【0083】
シーケンサ5により、スライスエンコードパルスGslの強度を変えながら、上述のパルスシーケンスが複数回実行される。これにより、各回で1組のエコーデータが収集される。図9に示す如く、この各組のエコーデータは演算ユニット10により2次元フーリエ変換されて複数n枚の画像Ix1〜Ixnに再構成される。演算ユニット10はさらに、この複数n枚の画像の互いに対応する同一位置の画素データをそれぞれ一連のデータと見做して1次元のフーリエ変換を行う。この変換により、各画素位置のスライス方向の信号分布が求められて、3次元の画像Ixのデータに再構成される。
【0084】
このように、SE(スピンエコー)タイプのプリパルス列PTpreにおいて、位相情報を与えるパルスとしてスライスエンコードを用いることにより、3次元撮影も好適に行うことができる。
【0085】
第6の実施形態
第6の実施形態を図10に基づき説明する。この実施形態のMRI装置も、本発明に係るデータ収集法をFE(フィールドエコー)タイプの3次元撮影に応用したイメージングを実施する。ここで用いる「FEタイプ」とは、FE法に拠る画像のように、静磁場の不均一に応じて位相成分が変化する」、ことを意味している。なお、前述したように、前置励起RFパルスPaの印加から前置反転RFパルスPbの印加までの時間と、前置反転RFパルスPbの印加から最初の励起RFパルスP1の印加までの時間とが等しい場合、SE法の画像のように、静磁場の不均一によっては位相成分が変化しないので、「SEタイプ」として対比できる。
【0086】
図10に、コントローラ6の制御下でシーケンサ5により実行される3次元撮影のパルスシーケンスを示す。
【0087】
このパルスシーケンスもプリパルス列PTpreおよびデータ収集パルス列PTacqから成る。プリパルス列PTpreは、図示の如く、前置励起RFパルスPaのみを含み、スライス方向傾斜磁場Gsのパルスと共にスライス選択的に印加される。前置励起RFパルスPaが印加された後に、スライス方向の位相エンコード(スライスエンコード)パルスGslが第5の実施形態のときと同様に印加される。データ収集パルス列PTacqは、前述した各実施形態のものと同一または同等である。
【0088】
このパルスシーケンスを実行して収集されたエコーデータは、前述した図9と同様に処理される。これにより、SEタイプのときと同様に、プリパルス列PTpreが「FEタイプ」である3次元撮影が好適に実施できる。
【0089】
なお、本発明に係る、CPMGパルス系列を基礎とする改善した高速SE法は、プリパルス列の段階で画像の位相成分に何等かの情報を反映させることを要旨としているが、この実施の態様としては上述した実施形態のものに限定れない。例えば、温度計測、エラストグラフィーなども、この手法で実施できる。
【0090】
また、演算ユニット10によって行われるデータ収集後の処理において、複素差分を演算する必要がある場合、各組のエコーデータ同士を最初に複素差分し、その後に、差分結果に係るエコーデータを再構成処理するようにしてもよい。
【0091】
さらに、前述した実施形態において連続撮影を行う場合、スキャンA,Bを交互に且つ連続して行い、時間的に隣接した2組ずつの画像データの複素差分演算を行って、連続的に処理画像を表示することもできる。
【0092】
第7の実施形態
第7の実施形態を図11、12を参照して説明する。
【0093】
この実施形態のMRI装置は、本発明の改善した高速SE法を2D拡散強調イメージング(2D−DWI)で適用し、これにナビゲーターエコー法を組み込んだイメージング法を実施することを特徴とする。
【0094】
図11には、シーケンサ5によって指令される2次元拡散強調イメージングのパルスシーケンスを示す。このパルスシーケンスは、プリパルス列PTpreおよびデータ収集パルス列PTacqから成る。プリパルス列PTpreでは、前置励起RFパルスPaと前置反転RFパルスPbとがこの順に一定間隔を置いてスライス方向傾斜磁場Gsと共に印加される。前置反転RFパルスPbの時間軸上の前後において、水分子のスピンの位相分散を強調するMPG(Motion Pro- bing Gradient)用傾斜磁場Ggmpとして矩形状のパルスMPG1、MPG2が任意の1つまたは複数の傾斜磁場印加方向に夫々印加されている。このパルスMPG1、MPG2は共に同極性で同一の波形面積を有し、しかも、比較的に高い強度、長い印加時間に設定されている。
【0095】
一方、データ収集パルス列PTacqは、ナビゲーターエコーEnavの収集を除いて前述した実施形態のものと同一である。ナビゲーターエコーEnavはここでは第1エコー信号E1を当てており、この第1エコー信号E1=ナビゲーターエコーEnavを収集するときは、図に示す如く、位相エンコード方向傾斜磁場Geの位相エンコードパルスGenc=0に設定され(このときスポイラーパルスSPO2とそのリワインディングパルスSPO2′のみが印加される。図11参照)、読み出し方向傾斜磁場GrのパルスGrnavのみが印加される。なお、ナビゲーターエコーEnavを何番目のエコー信号にとるかは任意に設定できる。
【0096】
図11に示すパルスシーケンスを実行すると、その繰り返し時間TRに基づくショット(励起)毎に、第1エコー信号E1はナビゲーターエコーEnavとしてRFコイル7および受信器8Rにより収集され、ナビゲーション・エコーデータSnavi(Kx,nShot)に加工される。このナビゲーション・エコーデータは演算ユニット10に送られ、その内部メモリに記憶される。
【0097】
また、そのショット毎に第2エコー信号E2以降のエコー信号も同様に収集され、イメージング・エコーデータSim(Kx,nShot)に加工される。このイメージング・エコーデータは演算ユニット10に送られ、その内部メモリで仮想的に形成される2次元フーリエ空間Kに2次元イメージング・エコーデータSim(Kx,Ky)として配置される。
【0098】
演算ユニット10はナビゲーション・エコーデータおよびイメージング・エコーデータを入力すると、ナビゲーターエコー法の処理を行う。すなわちナビゲーション・エコーデータSnavi(Kx,nShot)から体動に拠る位相シフトを演算(計測)し、その演算値でイメージング・エコーデータSim(Kx,Ky)の位相を補正する。
【0099】
図12には、この位相補正処理の概要を示す。ナビゲーション・エコーデータSnavi(Kx,nShot)はまず、拡大処理に付されてK空間全体に拡大されたナビゲーション・エコーデータSnavi(Kx,Ky)に展開される(ステップS101)。具体的には、K空間の読み出し方向Kyの対応するイメージングデータと同じショットで収集したナビゲーション・エコーデータSnavi(Kx,nShot)でK空間を埋めることにより拡大される。
【0100】
拡大されたナビゲーション・エコーデータSnavi(Kx,Ky)は、K空間内での位相補正(ステップS102)、ウインドウ処理(ステップS103)に付された後、Kx方向を実空間の読み出し方向X方向に戻す1次元フーリエ変換(1DFT)が行われる(ステップS104)。この後、位相差分が演算されて、1回フーリエ変換されたK空間のナビゲーション・エコーデータSnavi(X,Ky)が求められる(ステップS105)。さらに、これから体動を表す位相データφnavi(X,Ky)が演算される(ステップS106)。
【0101】
一方、2次元のイメージング・エコーデータSim(Kx,Ky)は、演算ユニット10において、DCオフセット補正などの所望の補正処理に付された後(ステップS107)、Kx方向を実時間軸X方向に戻す1次元フーリエ変換(1DFT)が実行されてエコーデータSim(X,Ky)に加工される(ステップS108)。
【0102】
このイメージング・エコーデータSim(X,Ky)に対して、前述したように求めていた位相データφnavi(X,Ky)によりショット毎の位相補正がなされる(ステップS109)。この位相補正によって得られるイメージング・エコーデータScorim(X,Ky)は、さらに、K空間の位相エンコード方向Kyを実時間の位相エンコードY方向に戻す1次元フーリエ変換に付される(ステップS110)。これにより、ナビゲーターエコーに基づき体動補正された実空間の2次元像Vcorim(X,Y)が得られる。
【0103】
したがって、本実施形態の2D拡散強調イメージングによれば、前置励起RFパルスPaとCPMGパルス系列の最初の励起RFパルスP1との間で生じる位相変化を、位相成分として反映させた高速SEの画像が得られる。つまり、MPGパルスが生じさせる位相シフトを位相情報としてその画像に取り込むことができる。また、イメージング用のデータは同じショットで収集したナビゲーション・エコーデータから求めた位相量だけ元に戻されるから、体動に起因したアーチファクトを補正することができる。とくに、2次元の各ピクセル毎に位相変化を測定できるので、位相シフト量を計測するときの誤差が従来のナビゲーターエコー法よりも少なく、体動に因る位相シフトをより高精度に補正できる。また、高速SE法を使用するので、シングルショットEPI法を使用する従来法に比べて、データ収集時間の制約が少ないので、面内分解能が良いという利点がある。
【0104】
第8の実施形態
第8の実施形態を図13、14を参照して説明する。
【0105】
この実施形態のMRI装置は、本発明の改善した高速SE法を3D拡散強調イメージング(2D−DWI)で適用し、これにナビゲーターエコー法を組み込んだイメージング法を実施することを特徴とする。この3次元法は、第7の実施形態の2次元法を3次元に展開したことを基本とする。
【0106】
図13には、シーケンサ5によって指令される3次元拡散強調イメージングのパルスシーケンスを示す。このパルスシーケンスは、プリパルス列PTpreおよびデータ収集パルス列PTacqから成る。プリパルス列PTpreは第7の実施形態のもの同一である。
【0107】
データ収集パルス列PTacqには、そのスライス方向傾斜磁場Gsとしてスライスエンコード用パルスSLl,SL2,…が、そのリワインディングパルスSLl′,SL2′,…と共に図示の如く付加されている。また、ナビゲータエコーEnavは、ここでは第1エコー信号E1を当てているが、これはどのエコー信号をナビゲータ用に使用してもよい。そのほかのパルス形態は第7の実施形態のものと同様である。
【0108】
演算ユニット10は図14に示す手順概要に沿って、3次元のナビゲーターエコー法による位相補正を実施する。この処理も、前述した2次元のものを3次元に拡張したもので、ナビゲーション・エコーデータおよびイメージング・エコーデータ共に3次元のものを扱うことと、最終のフーリエ変換処理が2次元になっている(ステップS110′)ことが異なるだけである。この一連の処理により、3次元の拡散強調像Vcorim(X,Y,Z)が得られる。
【0109】
この結果、2次元の場合と同様に、イメージング・エコーデータは同じショット(RF励起)で収集したナビゲーション・エコーデータから求めた位相量分だけ、元の位相に戻され、体動の影響が的確にキャンセルされる。これにより、前述の2次元DWIのときと同等の効果を得る。
【0110】
なお、この実施形態では、あるスライスエンコード量印加したときに全ての位相エンコードに対するエコーデータを収集し、その後で、次のスライスエンコード量の印加に対するデータ収集に進むという手順で撮影を行っているが、スライスエンコードと位相エンコードはどのような順番で掛けてもよく、全体として3次元でエコーデータを収集できればよい。
【0111】
また、本発明は、代表的に例示した上述の実施の形態に限定されるものではなく、当業者であれば、特許請求の範囲の記載内容に基づき、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の態様に変形、変更することができ、それらも本発明の権利範囲に属するものである。
【0112】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るMR装置によれば、前置励起RFパルスとデータ収集パルス列の最初の励起RFパルスとの間で生じる位相変化の影響を受けた位相成分を持つ高速SE法の画像データが得られる。
【0113】
したがって、撮影の高速化と静磁場の不均一性に対する高い耐性とを維持し、かつ、エコー信号からスピンの位相情報を利用した種々の画像などの情報を得ることができる。つまり、これまで高速SE法では不可能又は実用性に乏しかった各種のイメージング、測定、例えば位相コントラスト法による流速画像、ナビゲーターエコー法による体動アーチファクトの補正、エコータイムの異なる2画像の位相差を利用した磁場分布測定やスペクトロスコピーなどを好適に実施できるようになる。
【0114】
したがって、この改善した高速SE法のMR撮影によって、MR診断における高速SE法の適用分野を大幅に広げ、利用者に各種の撮像法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るMRI装置の一例を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態で実施する位相コントラスト法に拠るフローイメージングの1回目、2回目のスキャンをまとめて示すパルスシーケンスの図。
【図3】第1の実施形態における処理の全体の概要を示す説明図。
【図4】第1の実施形態の変形例に係る位相コントラスト法の1回目、2回目のスキャンをまとめて示すパルスシーケンスの図。
【図5】第2の実施形態で実施する位相コントラスト法に拠るフローイメージングの1回目、2回目のスキャンをまとめて示すパルスシーケンスの図。
【図6】第3の実施形態で実施する磁場分布測定のパルスシーケンスを、全体の処理の概要と共に説明する図。
【図7】第4の実施形態で実施するスペクトロスコピーのパルスシーケンスを、全体の処理の概要と共に説明する図。
【図8】本発明の第5の実施形態で実施するSEタイプの3次元撮影法のパルスシーケンスを示す図。
【図9】第6の実施形態における処理の全体の概要を示す説明図。
【図10】本発明の第6の実施形態で実施するFEタイプの3次元撮影法のパルスシーケンスを示す図。
【図11】本発明の第7の実施形態で実施する2次元拡散強調撮影法のパルスシーケンスおよび模式的なエコーデータを示す図。
【図12】2次元拡散強調撮影の場合のナビゲーターエコー法に基づく位相補正処理の概要を説明するフローチャート。
【図13】本発明の第8の実施形態で実施する3次元拡散強調撮影法のパルスシーケンスおよび模式的なエコーデータを示す図。
【図14】3次元拡散強調撮影の場合のナビゲーターエコー法に基づく位相補正処理の概要を説明するフローチャート。
【図15】従来の高速SE法に係るパルスシーケンスの一例を示す図。
【図16】従来の高速SE法を応用したシングルショットのディフュージョン画像用のパルスシーケンスの一例を示す図。
【図17】FE法を利用した位相コントラスト法によるフローイメージングのパルスシーケンスを示す図。
【符号の説明】
1 磁石
2 静磁場電源
3 傾斜磁場コイルユニット
4 傾斜磁場電源
5 シーケンサ
6 コントローラ
7 RFコイル
8T 送信器
8R 受信器
10 演算ユニット
11 記憶ユニット

Claims (3)

  1. 時間軸上の最初に位置する前置励起RFパルスおよび前記前置励起RFパルスよりも後に位置する前置反転RFパルスを少なくとも含む第1のパルス列を前置的に被検体に印加する第1の印加手段と、
    送信位相がCPMGパルス系列に従う最初のパルス送信位相よりも90°ずらして設定された励起RFパルスと送信位相がCPMGパルス系列に従う2番目以降のパルス送信位相と同じに設定された複数個の反転RFパルスとを含む第2のパルス列を前記第1のパルス列を前置的に印加した後に前記被検体に時系列に印加する第2の印加手段と、
    前記前置励起RFパルスの印加と前記励起RFパルスの印加との間の期間内に及び前記複数個の反転RFパルスのそれぞれの印加後に、一定の時間積分値を有するスポイラーパルスを所望の傾斜磁場方向に発生させて前記被検体に印加する第3の印加手段と、
    前記前置励起RFパルスの印加と前記励起RFパルスの印加との間の期間であり、かつ前記前置反転RFパルスの時間軸上前後の位置において組織拡散の程度に応じて、前記複数個の反転RFパルスに応答して発生する複数個のエコー信号の強度を変化させるMPGパルスを所望の傾斜磁場方向にそれぞれ印加する第4の印加手段と、
    前記複数個のエコー信号を収集して位相情報に関わるデータ処理を行うデータ処理手段と、を備えたことを特徴とするMR装置
  2. 前記複数個のエコー信号の内の少なくとも1個のエコー信号に付与する位相エンコードを零とし且つ残りのエコー信号に付与する位相エンコードをイメージング必要量とする位相エンコード用傾斜磁場を印加する第5の印加手段を備え、
    前記データ処理手段は、前記位相エンコードが零のエコー信号に応じたエコーデータを収集して当該エコーデータが有する位相情報を演算する手段と、この位相情報から前記被検体の体動に拠る位相シフト量を演算する手段と、前記位相エンコードとしてイメージング必要量を与えるエコー信号に応じたエコーデータを収集して当該エコーデータの位相を前記位相シフト量に基づき補正する手段とを備えた請求項記載のMR装置。
  3. 前記エコー信号に対してスライスエンコードを付与するスライス方向の傾斜磁場パルスを印加する第6の印加手段を備えた請求項1記載のMR装置。
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