JP4039320B2 - 流体機械 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱ガスを略等エントロピ膨脹させて流体の有する内部エネルギを回転エネルギに変換する機能、及び流体を吸入圧縮する機能を兼ね備えるポンプモータ機構を備える流体機械に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
図6は、発明者が試作検討した流体機械を示す断面図であり、この流体機械は、流体を加圧して吐出するポンプモードと、流体圧を運動エネルギに変換して機械的エネルギを出力するモータモードとを兼ね備えるもので、以下に述べるように作動する。
【0003】
1.ポンプモード
このモードは、シャフト109pに回転力を与えることによりポンプモータ機構100pの旋回スクロール102pを旋回させて冷媒を吸入圧縮する運転モードである。
【0004】
具体的には、電磁弁107pを閉じて流入ポート106pを閉じた状態でシャフト109pを回転させるものである。これにより、膨脹機一体型圧縮機、つまり流体機械は、周知のスクロール型圧縮機と同様に、低圧ポート111pから冷媒を吸引して作動室103pにて圧縮した後、吐出ポート105pから高圧室104pに圧縮した冷媒を吐出し、高圧ポート110pから圧縮された冷媒を吐出する。
【0005】
なお、シャフト109pに回転力を与えるに当たっては、電磁クラッチ300pにてエンジン側と膨脹機一体型圧縮機側とを切り離して回転電機200pにより回転力を与える場合と、電磁クラッチ300pにてエンジン側と膨脹機一体型圧縮機側とを繋いでエンジンの動力により回転力を与える場合とがある。
【0006】
2.モータモード
このモードは、電磁クラッチ300pにて膨脹機一体型圧縮機側とを切り離した状態で、高圧室104pに高圧の過熱蒸気冷媒をポンプモータ機構100pに導入して膨脹させることにより、旋回スクロール102pを旋回させてシャフト109pを回転させ、機械的出力を得るものである。
【0007】
ところで、この試作品では、シャフト109pがハウジング230p内外を貫通しているので、リップシール等の軸封装置333によりハウジング230pとシャフト109pとの隙間を気密に密閉せざるを得ない。
【0008】
そして、軸封装置333は、所定の面圧にてシャフト109pの外周面に接触することによりシャフト109pとの隙間を気密に密閉するので、シャフト109pが回転すると、軸封装置333にて摩擦抵抗によるエネルギ損失が発生する。
【0009】
このため、上記試作検討品では、モータモード時に、実質的に回収できるエネルギが減少してしまうので、エネルギ回収効率が低下してしまう。
【0010】
なお、モータモード時に回収できる得る最大エネルギは、図7に示すp−h線図を用いて説明するまでもなく明らかなように、回収熱量に比べて小さいので、軸封装置333での回収エネルギの損失は、回収可能最大エネルギに対して大きな割合を占める。
【0011】
本発明は、上記点に鑑み、第1には、従来と異なる新規な流体機械を提供し、第2には、軸封装置での回収エネルギの損失を低減することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、加熱ガスを略等エントロピ膨脹させて流体の有する内部エネルギを回転エネルギに変換する機能、及び流体を吸入圧縮する機能を兼ね備えるポンプモータ機構(100)と、ポンプモータ機構(100)に変換された回転エネルギを電力に変換する回転電機(200)と、ハウジング(230)外に設けられた外部駆動源(20)の動力を受けて回転するとともに、ハウジング(230)内外を貫通して外部駆動源(20)の動力をポンプモータ機構(100)側に伝達する第1シャフト(331)と、ハウジング(230)内に設けられ、ポンプモータ機構(100)に連結された第2シャフト(108)と、第1シャフト(331)に摺動接触し、第1シャフト(331)とハウジング(230)との隙間を密閉する軸封装置(333)と、第1シャフト(331)側から第2シャフト(108)側への動力伝達を許容し、第2シャフト(108)側から第1シャフト(331)側への動力伝達を遮断する動力伝達機構(400、500、600、601)とを備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、軸封装置(333)に接触する第1シャフト(331)がモータモード時に回転することがない。したがって、ポンプモータ機構(100)にて回収したエネルギが軸封装置(333)で損失してしまうことはない。
【0014】
請求項2に記載の発明では、動力伝達機構は、第2シャフト(108)と一体的に回転するリング状のリングギヤ(401)、リングギヤ(401)と噛み合うとともに第1シャフト(331)と一体的に回転するプラネタリギヤ(402)、及びプラネタリギヤ(402)と噛み合うサンギヤ(403)からなる遊星歯車機構(400)と、第1シャフト(331)が一方向に回転することを許容するワンウェイクラッチ(500)と、を有して構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載の発明では、動力伝達機構は、第1、2シャフト(331、108)間に伝達される動力を断続するクラッチ手段(600)、及びクラッチ手段(600)を制御する制御手段(601)を有して構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載の発明では、動力伝達機構は、第1、2シャフト(108、331)間に伝達される回転動力のうち一方向の回転動力のみ伝達するワンウェイクラッチ(500)により構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項に記載の発明では、回転電機(200)は、第2シャフト(108)に回転力を与える機能を兼ね備え、さらに、回転電機(200)は、動力伝達経路において、動力伝達機構(400、500、600)よりポンプモータ機構(100)側に位置していることを特徴とするものである。
【0020】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0021】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、ランキンサイクルを備える車両用蒸気圧縮式冷凍機に本発明に係る流体機械を適用したものであって、図1は本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍機の模式図である。
【0022】
そして、本実施形態に係るランキンサイクルを備える蒸気圧縮式冷凍機は、走行用動力を発生させる熱機関をなすエンジン20で発生した廃熱からエネルギを回収するとともに、蒸気圧縮式冷凍機で発生した冷熱及び温熱を空調に利用するものである。以下、ランキンサイクルを備える蒸気圧縮式冷凍機について述べる。
【0023】
膨脹機一体型圧縮機10は、気相冷媒を加圧して吐出するポンプモードと、過熱蒸気冷媒の流体圧を運動エネルギに変換して機械的エネルギを出力するモータモードとを兼ね備える流体機械であり、凝縮器11は、膨脹機一体型圧縮機10の吐出側に接続されて放熱しながら冷媒を冷却する放冷器である。なお、膨脹機一体型圧縮機10の詳細は後述する。
【0024】
気液分離器12は凝縮器11から流出した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離するレシーバであり、減圧器13は気液分離器12で分離された液相冷媒を減圧膨脹させるもので、本実施形態では、冷媒を等エンタルピ的に減圧するとともに、膨脹機一体型圧縮機10がポンプモードで作動しているときに膨脹機一体型圧縮機10に吸入される冷媒の過熱度が所定値となるように絞り開度を制御する温度式膨脹弁を採用している。
【0025】
蒸発器14は、減圧器13にて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱器であり、膨脹機一体型圧縮機10、凝縮器11、気液分離器12、減圧器13及び蒸発器14等にて低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍機が構成される。
【0026】
加熱器30は、膨脹機一体型圧縮機10と凝縮器11とを繋ぐ冷媒回路に設けられて、この冷媒回路を流れる冷媒とエンジン冷却水とを熱交換することにより冷媒を加熱する熱交換器であり、三方弁21によりエンジン20から流出したエンジン冷却水を加熱器30に循環させる場合と循環させない場合とが切り替えられる。
【0027】
第1バイパス回路31は、気液分離器12で分離された液相冷媒を加熱器30のうち凝縮器11側の冷媒出入口側に導く冷媒通路であり、この第1バイパス回路31には、液相冷媒を循環させるための液ポンプ32及び気液分離器12側から加熱器30側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁31aが設けられている。なお、液ポンプ32は、本実施形態では、電動式のポンプを採用している。
【0028】
また、第2バイパス回路34は、膨脹機一体型圧縮機10がモータモードで作動するときの冷媒出口側と凝縮器11の冷媒入口側とを繋ぐ冷媒通路であり、この第2バイパス回路34には、膨脹機一体型圧縮機10側から凝縮器11の冷媒入口側にのみ冷媒が流れることを許容する逆止弁34aが設けられている。
【0029】
なお、逆止弁14aは蒸発器14の冷媒出口側から膨脹機一体型圧縮機10がポンプモードで作動するとき冷媒吸入側にのみ冷媒が流れることを許容するもので、開閉弁34は冷媒通路の開閉する電磁式のバルブであり、開閉弁34及び三方弁21等は電子制御装置により制御されている。
【0030】
ところで、水ポンプ22はエンジン冷却水を循環させるもので、ラジエータ23はエンジン冷却水と外気とを熱交換してエンジン冷却水を冷却する熱交換器である。なお、図1では、ラジエータ23を迂回させて冷却水を流すバイパス回路及びこのバイパス回路に流す冷却水量とラジエータ23に流す冷却水量とを調節する流量調整弁は省略されている。
【0031】
因みに、水ポンプ22はエンジン20から動力を得て稼動する機械式のポンプであるが、電動モータにて駆動される電動ポンプを用いてもよいことは言うまでもない。
【0032】
次に、膨脹機一体型圧縮機10について述べる。
【0033】
図2は膨脹機一体型圧縮機10の断面図であり、膨脹機一体型圧縮機10は、流体(本実施形態では、気相冷媒)を圧縮又は膨脹させるポンプモータ機構100、回転エネルギが入力されることにより電気エネルギを出力し、電力が入力されることにより回転エネルギを出力する回転電機200、外部駆動源をなすエンジン20からの動力を断続可能にポンプモータ機構100側に伝達する動力伝達機構をなす電磁クラッチ300、並びにポンプモータ機構100、回転電機200及び電磁クラッチ300間における動力伝達経路を切り換えるとともに、その回転動力を減速又は増速して伝達する遊星歯車機構からなる変速機構400等から構成されている。
【0034】
ここで、回転電機200はステータ210及びステータ210内で回転するロータ220等からなるもので、ステータ210は巻き線が巻かれたステータコイルであり、ロータ220は永久磁石が埋設されたマグネットロータである。
【0035】
そして、本実施形態では、ステータ210に電力が供給された場合にはロータ220を回転させてポンプモータ機構100を駆動する電動モータとして作動し、ロータ220を回転させるトルクが入力された場合には電力を発生させる発電機として作動する。
【0036】
また、電磁クラッチ300は、Vベルトを介してエンジン20からの動力を受けるプーリ部310、磁界を発生させる励磁コイル320、及び励磁コイル320により誘起された磁界により電磁力により変位するフリクションプレート330等からなるもので、エンジン20側と膨脹機一体型圧縮機10側とを繋ぐときは励磁コイル320に通電し、エンジン20側と膨脹機一体型圧縮機10側とを切り離すときは励磁コイル320への通電を遮断する。
【0037】
また、ポンプモータ機構100は、周知のスクロール型圧縮機構と同一構造を有するもので、具体的には、ミドルハウジング101を介して回転電機200のステータハウジング230に対して固定された固定スクロール(シェル)102、ミドルハウジング101と固定スクロール102との間の空間で旋回変位する可動部材をなす旋回スクロール103、及び作動室Vと高圧室104とを連通させる連通路105、106を開閉する弁機構107等からなるものである。
【0038】
ここで、固定スクロール102は、板状の基板部102a及び基板部102aから旋回スクロール103側に突出した渦巻状の歯部102bを有して構成され、一方、旋回スクロール103は、歯部102bに接触して噛み合う渦巻状の歯部103b、及び歯部103bが形成された基板部103aを有して構成されており、両歯部102b、歯部103bが接触した状態で旋回スクロール103が旋回することにより、両スクロール102、103により構成された作動室Vの体積が拡大縮小する。
【0039】
シャフト108は、変速機構400の内歯車401の回転軸を兼ねるとともに、その長手方向端部に回転中心軸に対して偏心した偏心部108aを有する第2シャフトであり、旋回スクロール103は、ベアリング103c及びブッシング103d等を介して偏心部108aに回転可能に連結されている。
【0040】
なお、ブッシング103dは、偏心部108aに対して僅かに変位することができるものであり、旋回スクロール103に作用する圧縮反力により、両歯部102b、103bの接触圧力が増大する向きに旋回スクロール103を変位させる従動クランク機構を構成するものである。
【0041】
また、自転防止機構109は、シャフト108が1回転する間に旋回スクロール103が偏心部108a周りに1回転するようにするものである。このためシャフト108が回転すると、旋回スクロール103は、自転せずにシャフト108の回転中心軸周りを公転旋回し、かつ、作動室Vは、旋回スクロール103の外径側から中心側に変位するほど、その体積が縮小するように変化する。
【0042】
因みに、本実施形態では、自転防止機構109としてピン−リング(ピン−ホール)式を採用している。
【0043】
また、連通路105は、ポンプモード時に最小体積となる作動室Vと高圧室104とを連通させて圧縮された冷媒を吐出する吐出ポートであり、連通路106はモータモード時に最小体積となる作動室Vと高圧室104とを連通させて高圧室104に導入された高温、高圧の冷媒、つまり過熱蒸気を作動室Vに導く流入ポートである。
【0044】
また、高圧室104は連通路105(以下、吐出ポート105と呼ぶ。)から吐出された冷媒の脈動を平滑化する吐出室を機能を有するものであり、この高圧室104には、加熱器30及び凝縮器11側に接続される高圧ポート110が設けられている。
【0045】
なお、蒸発器14及び第2バイパス回路34側に接続される低圧ポート111は、ステータハウジング230に設けられてステータハウジング230内を経由してステータハウジング230と固定スクロール102との間の空間に連通している。
【0046】
また、吐出弁107aは、吐出ポート105の高圧室104側に配置されて吐出ポート105から吐出された冷媒が高圧室104から作動室Vに逆流することを防止するリード弁状の逆止弁であり、ストッパ107bは吐出弁107aの最大開度を規制する弁止板であり、吐出弁107a及び弁止板107bはボルト107cにて基板部102aに固定されている。
【0047】
スプール107dは、連通路106(以下、流入ポート106と呼ぶ。)を開閉する弁体であり、電磁弁107eは低圧ポート111側と背圧室107fとの連通状態制御することにより背圧室107f内の圧力を制御する制御弁であり、バネ107gは流入ポート106を閉じる向きの弾性力をスプール107dに作用させる弾性手段であり、絞り107hは所定の通路抵抗を有して背圧室107fと高圧室104とを連通させる抵抗手段である。
【0048】
そして、電磁弁107eを開くと、背圧室107fの圧力が高圧室104より低下してスプール107dがバネ107gを押し縮めながら紙面右側に変位するので、流入ポート106が開く。なお、絞り107hでの圧力損失は非常に大きいので、高圧室104から背圧室107fに流れ込む冷媒量は無視できるほど小さい。
【0049】
逆に、電磁弁107eを閉じると、背圧室107fの圧力と高圧室104との圧力が等しくなるので、スプール107dはバネ107gの力により紙面左側に変位するので、流入ポート106が閉じる。つまり、スプール107d、電磁弁107e、背圧室107f、バネ107g及び絞り107h等により流入ポート106を開閉するパイロット式の電気開閉弁が構成される。
【0050】
また、変速機構400は、シャフト108と一体的に回転するリング状の内歯車(リングギヤ)401、内歯車401と噛み合う複数枚(例えば、3枚)の遊星歯車(プラネタリギヤ)402、及び遊星歯車402に噛み合う太陽歯車(サンギヤ)403等からなるものである。
【0051】
そして、太陽歯車403は、回転電機200のロータ220と一体化され、遊星歯車402は、電磁クラッチ300のフリクションプレート330と一体的に回転するシャフト331に一体化されている。
【0052】
また、ワンウェイクラッチ500は、シャフト331が一方向にのみ回転することを許容するもので、軸受332はシャフト331を回転可能に支持するもので、軸受404は太陽歯車403、つまりロータ220をシャフト331に対して回転可能に支持するものであり、軸受405は内歯車401をシャフト108に対して回転可能に支持するものであり、軸受108cはシャフト108をミドルハウジング101対して回転可能に支持するものである。
【0053】
また、リップシール333は、シャフト331の外周面に接触することにより、シャフト331とステータハウジング230との隙間から冷媒がステータハウジング230外に漏れ出すことを防止する軸封装置である。
【0054】
次に、本実施形態に係る膨脹機一体型圧縮機10の作動を述べる。
【0055】
1.ポンプモード
このモードは、シャフト108に回転力を与えることによりポンプモータ機構100の旋回スクロール103を旋回させて冷媒を吸入圧縮する運転モードである。
【0056】
具体的には、電磁弁107eを閉じて流入ポート106を閉じた状態でシャフト108を回転させるものである。これにより、膨脹機一体型圧縮機10は、周知のスクロール型圧縮機と同様に、低圧ポート111から冷媒を吸引して作動室Vにて圧縮した後、吐出ポート105から高圧室104に圧縮した冷媒を吐出し、高圧ポート110から圧縮された冷媒を凝縮器11側に吐出する。
【0057】
このとき、シャフト108に回転力を与えるに当たっては、電磁クラッチ300にてエンジン20側と膨脹機一体型圧縮機10側とを切り離して回転電機200により回転力を与える場合と、電磁クラッチ300にてエンジン20側と膨脹機一体型圧縮機10側とを繋いでエンジン20の動力により回転力を与える場合とがある。
【0058】
そして、電磁クラッチ300にてエンジン20側と膨脹機一体型圧縮機10側とを切り離して回転電機200により回転力を与える場合には、電磁クラッチ300への通電を遮断して電磁クラッチ300を切った状態で回転電機200に通電してポンプモータ機構100を圧縮機として稼動させる。
【0059】
このとき、太陽歯車403は、ワンウェイクラッチ500により回転しないので、回転電機200の回転力は、変速機構400にて減速されてポンプモータ機構100に伝達される。
【0060】
また、電磁クラッチ300にてエンジン20側と膨脹機一体型圧縮機10側とを繋いでエンジン20の動力により回転力を与える場合には、電磁クラッチ300に通電して電磁クラッチ300を繋ぐとともに、太陽歯車403、つまりロータ220が回転しない程度のトルクがロータ220に発生するように回転電機200に通電する。
【0061】
これにより、電磁クラッチ300に伝達されたエンジン20の回転動力は、変速機構400にて増速されてポンプモータ機構100に伝達される。
【0062】
2.モータモード
このモードは、高圧室104に加熱器30にて加熱された高圧の過熱蒸気冷媒をポンプモータ機構100に導入して膨脹させることにより、旋回スクロール103を旋回させてシャフト108を回転させ、機械的出力を得るものである。
【0063】
なお、本実施形態では、得られた機械的出力によりロータ220を回転させて回転電機200により発電し、その発電された電力を蓄電器に蓄える。
【0064】
具体的には、電磁クラッチ300への通電を遮断して電磁クラッチ300を切った状態で電磁弁107eを開いて流入ポート106を開き、高圧室104に加熱器30にて加熱された高圧の過熱蒸気冷媒を流入ポート106を経由させて作動室Vに導入して膨脹させるものである。
【0065】
これにより、過熱蒸気の膨脹により旋回スクロール103が回転するので、膨脹を終えて圧力が低下した冷媒は、低圧ポート111から凝縮器11側に流出する。
【0066】
このとき、旋回スクロール103がポンプモード時の逆向きに回転するので、遊星歯車402がポンプモード時と逆向きにシャフト331周りに回転(旋回)しようとするが、第1シャフトをなすシャフト331の回転の向きがワンウェイクラッチ500により規制されているので、遊星歯車402はシャフト331周りに回転(旋回)せずに、その位置で自転する。
【0067】
したがって、旋回スクロール103に与えられた回転エネルギは、変速機構400にて増速されて回転電機200のロータ220に伝達される。なお、図3は上記作動をまとめた線図である。
【0068】
因みに、本実施形態では、変速機構400及びワンウェイクラッチ500が「特許請求の範囲」に記載された動力伝達機構に相当する。
【0069】
なお、上記作動説明からも明らかなように、回転電機200は、動力伝達経路において、動力伝達機構をなす変速機構400及びワンウェイクラッチ500よりポンプモータ機構100側に位置した構成となっている。
【0070】
次に、本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍機の作動を述べる。
【0071】
1.空調運転モード
この運転モードは、蒸発器14にて冷凍能力を発揮させながら凝縮器11にて冷媒を放冷する運転モードである。なお、本実施形態では、蒸気圧縮式冷凍機で発生する冷熱、つまり吸熱作用を利用した冷房運転及び除湿運転にのみ蒸気圧縮式冷凍機を稼動させており、凝縮器11で発生する温熱を利用した暖房運転は行っていないが、暖房運転時であっても蒸気圧縮式冷凍機の作動は冷房運転及び除湿運転時と同じである。
【0072】
具体的には、液ポンプ32を停止させた状態で開閉弁34を開いて膨脹機一体型圧縮機10をポンプモードで稼動させるとともに、三方弁21を作動させて加熱器30を迂回させて冷却水を循環させるものである。
【0073】
これにより、冷媒は、膨脹機一体型圧縮機10→加熱器30→凝縮器11→気液分離器12→減圧器13→蒸発器14→膨脹機一体型圧縮機10の順に循環する。なお、加熱器30にエンジン冷却水が循環しないので、加熱器30にて冷媒は加熱されず、加熱器30は単なる冷媒通路として機能する。
【0074】
したがって、減圧器13にて減圧された低圧冷媒は、室内に吹き出す空気から吸熱して蒸発し、この蒸発した気相冷媒は膨脹機一体型圧縮機10にて圧縮されて高温となって凝縮器11にて室外空気にて冷却されて凝縮する。
【0075】
なお、本実施形態では、冷媒としてフロン(HFC134a)を利用しているが、高圧側にて冷媒が液化する冷媒であれば、HFC134aに限定されるではない。
【0076】
2.廃熱回収運転モード
この運転モードは、空調装置、つまり膨脹機一体型圧縮機10を停止させてエンジン20の廃熱を利用可能なエネルギとして回収するモードである。
【0077】
具体的には、開閉弁34を閉じた状態で液ポンプ32を稼動させて膨脹機一体型圧縮機10をモータモードとするとともに、三方弁21を作動させてエンジン20から流出したエンジン冷却水を加熱器30に循環させるものである。
【0078】
これにより、冷媒は、気液分離器12→第1バイパス回路31→加熱器30→膨脹機一体型圧縮機10→第2バイパス回路34→凝縮器11→気液分離器12の順に循環し、凝縮器11内を流れる冷媒は空調運転モード時と逆転する。
【0079】
したがって、膨脹機一体型圧縮機10には、加熱器30にて加熱された過熱蒸気が流入し、膨脹機一体型圧縮機10に流入した蒸気冷媒は、ポンプモータ機構100内で膨脹しながらその等エントロピ的にエンタルピを低下させていく。このため、膨脹機一体型圧縮機10は、低下したエンタルピに相当する電力が蓄電器に蓄えられる。
【0080】
また、膨脹機一体型圧縮機10から流出した冷媒は、凝縮器11にて冷却されて凝縮し、気液分離器12に蓄えられ、気液分離器12内の液相冷媒は、液ポンプ32にて加熱器30側に送られる。なお、液ポンプ32は、加熱器30にて加熱されて生成された過熱蒸気は、気液分離器12側に逆流しない程度の圧力にて液相冷媒を加熱器30に送り込む。
【0081】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0082】
前述のごとく、本実施形態では、変速機構400及びワンウェイクラッチ500の存在により、リップシール333に接触するシャフト331がモータモード時に回転することがない。したがって、ポンプモータ機構100にて回収したエネルギがリップシール333で損失してしまうことはない。
【0083】
(第2実施形態)
第1実施形態では、変速機構400及びワンウェイクラッチ500にて動力伝達機構を構成したが、本実施形態は、図4に示すように、ステータハウジング230等の膨脹機一体型圧縮機10のハウジング内に電磁クラッチ600を配置して、この電磁クラッチ600介してシャフト331とシャフト108とを繋ぐととも、モータモード時及び回転電機200にてポンプモータ機構100を駆動するときには、電磁クラッチ600にてシャフト331とシャフト108との間の動力伝達を遮断し、エンジン20にてポンプモータ機構100を駆動するときには、電磁クラッチ600を繋いでシャフト331からシャフト108に動力を伝達するものである。
【0084】
つまり、本実施形態では、電磁クラッチ600及びこの電磁クラッチ600を制御する電子制御装置601が、特許請求の範囲に記載された動力伝達機構となる。
【0085】
(第3実施形態)
本実施形態は、第2実施形態の変形例であり、シャフト331とシャフト108とを繋ぐ動力伝達機構として、電磁クラッチ600に代えて、一方向の回転のみを伝達するワンウェイクラッチ500を採用したものである。
【0086】
したがって、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、シャフト331側からシャフト108側への動力伝達が許容され、シャフト108側からシャフト331側への動力伝達が遮断される。
【0087】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、スクロール型のポンプモータ機構100を採用したが、本発明はこれに限定されるものはなく、ロータリ型、ピストン型、ベーン型等のその他の形式のポンプモータ機構にも適用することができる。
【0088】
また、上述の実施形態では、膨脹機一体型圧縮機10にて回収したエネルギを蓄電器にて蓄えたが、フライホィールによる運動エネルギ又はバネにより弾性エネルギ等の機械的エネルギとして蓄えてもよい。
【0089】
また、ランキンサイクルを備える車両用蒸気圧縮式冷凍機に本発明に係る流体機械を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではない。
【0090】
また、上述の実施形態では、1つのポンプモータ機構100にて加熱ガスを略等エントロピ膨脹させて流体の有する内部エネルギを回転エネルギに変換する機能と流体を吸入圧縮する機能とを有するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば加熱ガスを略等エントロピ膨脹させて流体の有する内部エネルギを回転エネルギに変換する機能専用の機構と流体を吸入圧縮する機能専用の機構とをそれぞれ有するポンプモータ機構としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るランキン蒸気圧縮式冷凍機の模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る膨脹機一体型圧縮機の断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る膨脹機一体型圧縮機の作動を示す線図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る膨脹機一体型圧縮機の模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る膨脹機一体型圧縮機の模式図である。
【図6】試作検討品に係る膨脹機一体型圧縮機の模式図である。
【図7】p−h線図である。
【符号の説明】
100…ポンプモータ機構、103…作動室、104…高圧室、
105…吐出ポート、106…流入ポート、107a…吐出弁、
107d…スプール、107f…背圧室、
107g…バネ、107e…電磁弁、107h…絞り、
108…シャフト、200…回転電機(モータジェネレータ)、
300…電磁クラッチ、331…シャフト、333…リップシール、
400…遊星歯車変速機構、500…ワンウェイクラッチ。

Claims (5)

  1. 加熱ガスを略等エントロピ膨脹させて流体の有する内部エネルギを回転エネルギに変換する機能、及び流体を吸入圧縮する機能を有するポンプモータ機構(100)と、
    前記ポンプモータ機構(100)に変換された回転エネルギを電力に変換する回転電機(200)と、
    前記ハウジング(230)外に設けられた外部駆動源(20)の動力を受けて回転するとともに、前記ハウジング(230)内外を貫通して前記外部駆動源(20)の動力をポンプモータ機構(100)側に伝達する第1シャフト(331)と、
    前記ハウジング(230)内に設けられ、前記ポンプモータ機構(100)に連結された第2シャフト(108)と、
    前記第1シャフト(331)に摺動接触し、前記第1シャフト(331)と前記ハウジング(230)との隙間を密閉する軸封装置(333)と、
    前記第1シャフト(331)側から前記第2シャフト(108)側への動力伝達を許容し、前記第2シャフト(108)側から前記第1シャフト(331)側への動力伝達を遮断する動力伝達機構(400、500、600、601)とを備えることを特徴とする流体機械。
  2. 前記動力伝達機構は、
    前記第2シャフト(108)と一体的に回転するリング状のリングギヤ(401)、前記リングギヤ(401)と噛み合うとともに前記第1シャフト(331)と一体的に回転するプラネタリギヤ(402)、及び前記プラネタリギヤ(402)と噛み合うサンギヤ(403)からなる遊星歯車機構(400)と、
    前記第1シャフト(331)が一方向に回転することを許容するワンウェイクラッチ(500)と、
    を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
  3. 前記動力伝達機構は、前記第1、2シャフト(331、108)間に伝達される動力を断続するクラッチ手段(600)、及び前記クラッチ手段(600)を制御する制御手段(601)を有して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
  4. 前記動力伝達機構は、前記第1、2シャフト(108、331)間に伝達される回転動力のうち一方向の回転動力のみ伝達するワンウェイクラッチ(500)により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
  5. 前記回転電機(200)は、前記第2シャフト(108)に回転力を与える機能を兼ね備え、
    さらに、前記回転電機(200)は、動力伝達経路において、前記動力伝達機構(400、500、600)より前記ポンプモータ機構(100)側に位置していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の流体機械。
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