JP4039216B2 - 複合トラス橋およびその施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、上弦材、下弦材および腹材からなるトラス橋の主構造を、鋼材またはPC鋼材とコンクリート部材などを組み合わせて構成した複合トラス橋およびその施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トラス橋は、軸引張材および軸圧縮材を組み合わせて、全体として曲げモーメントおよびせん断力に抵抗する橋梁形式であり、基本的にはトラス部材が軸力のみを受ける構造であるため、力学的に単純明快であり、設計も容易であるとされている。
【0003】
トラス橋の利点として、例えばコンクリート桁橋と比べた場合、型枠、鉄筋の組立てなどに要する手間が少なく、施工スピードが速い点、コンクリート桁橋に比べ、大幅な自重の低減が図られるといった点が挙げられる。
【0004】
また、例えばエクストラドーズド橋と比べた場合、エクストラドーズド橋の主桁剛性は、全てコンクリート主桁が担うのに対し、トラス橋では上・下弦材、腹材全ての部材で剛性を確保する構造であり、斜材等の腹材も主桁剛性の一部として働き、また主桁の簡素化により、全体重量の軽減につながるといった点、コンクリート部材が少ないため、型枠、鉄筋の組立てに要する時間を低減し、施工の合理化につながるといった利点がある。
【0005】
この他、特許文献1には、トラス橋の上弦材、下弦材および斜材を鋼製とし、上弦材に橋面を形成するコンクリート床版を剛結合して一体化したトラス橋が記載されている。
【0006】
また、特許文献2の図9には、従来技術として、コンクリート桁と鋼桁を組み合わせた鋼コンクリート複合構造の橋桁として、上下のコンクリート床版間を斜材としての鋼材でトラス状に連結した構造が記載されている。
【0007】
その他、コンクリートと鋼材を組み合わせた各種鋼コンクリート複合構造の橋梁が知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−104221号公報
【特許文献2】
特開平10−140525号公報 (図9)
【特許文献3】
特開平11−222816号公報
【特許文献4】
特開2000−170263号公報 (図3)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の鋼コンクリート複合構造の橋梁における橋桁は、鋼製トラス構造とコンクリート床版を一体化したものか、またはコンクリート箱桁の上下床版間をトラス状に配置した鋼材に置き換えたものであり、従来のコンクリート桁橋等に比べると軽量化が図れ、かつコンクリートを主体とするため材料コストが抑えられる。
【0010】
しかし、特許文献1記載のものは、鋼コンクリート複合構造としての剛性面での効果は期待できるが、施工性やコスト面での効果は得にくい。
【0011】
また、車両等の走行路となるコンクリート床版をトラスの構成要素とした構造では、鋼製のトラス橋等に比べ騒音や振動の低減の面での効果も期待できるが、これらの構造では、コンクリート床版と斜材や鉛直材との接合部の構造が複雑となり、工期や施工コストの面でも不利となる傾向がある。
【0012】
本願発明は、トラス橋を構成する各部材に作用する力を考慮し、より合理的で経済性に優れた複合トラス橋およびその施工方法を提供することを目的としたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る複合トラス橋は、トラス橋の特定区間について、主構造を構成するトラスの上弦材が鋼材またはPC鋼材であり、下弦材がコンクリートであり、腹材のうち引張材が鋼材またはPC鋼材、圧縮材がコンクリート充填鋼管であって、引張材としての上弦材と斜材、および前記上弦材と下弦材間をつなぐ腹材としての鉛直材を有し、少なくとも一部の引張材は上弦材と斜材が連続する一体の鋼材またはPC鋼材で構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
引張材に用いられる鋼材としては、鋼棒、形鋼、鋼管、鋼板等があり、PC鋼材としては、PC鋼棒、PC鋼線、PC鋼より線等がある。
【0015】
また、圧縮材として用いられるコンクリート部材としては、通常の鉄筋コンクリート部材の他、プレストレストコンクリート部材、鉄骨鉄筋コンクリート部材等があり、またコンクリートの製造に関しては現場打ちコンクリートの場合とプレキャストコンクリートの場合、その他現場打ちコンクリートと組み合わせた半プレキャスト部材の場合等がある。コンクリート充填鋼管についても、あらかじめ工場等でコンクリートを充填してある場合と、現場でコンクリートを充填する場合とがある。
【0016】
支持形態として、例えば多径間連続下路橋を想定した場合、支点となる中間の橋脚近傍では、通常、上弦材が引張材、下弦材が圧縮材となるため、請求項1ではそのような部分について、上弦材が鋼材またはPC鋼材、下弦材がコンクリートとしたものである。
【0017】
また、ともに引張材として機能する上弦材と斜材を一体の鋼材またはPC鋼材とすることで、部材数が減る他、緊張力を導入する場合にも一度に導入できるため、施工性がよい。特に鋼ケーブルあるいはPCケーブル等の形で屈曲が比較的容易な形態では、現場での設置および緊張力の導入が容易である。
【0018】
なお、ここで、上弦材と斜材が連続する一体の鋼材またはPC鋼材で構成されているというのは、これらを構成する鋼材またはPC鋼材が連続する1つの部材であることを意味する。
【0019】
ただし、個々の連続する上弦材と斜材については、1つの部材だけで形成されていなければならないということではなく、実際の構造、特にある程度の規模の大きい橋梁では、むしろ複数の部材が並列に配置されること、すなわちPCケーブル等が並列的に複数本配置されることが普通である。
【0020】
さらに、この場合、上弦材については、鉛直材複数スパン分について連続させることができ、複数並列して配置される鋼材またはPC鋼材について、異なる斜材と連続させることで、上弦材の鋼材またはPC鋼材の本数を要求される断面力に応じて断面ごと変化させることもできる。
【0021】
請求項2は、請求項1に係る複合トラス橋において、前記下弦材がトラス橋の床版を兼ねていることを特徴とするものである。
【0022】
従来の鋼製のトラス橋、特に下路橋の場合、下弦材を構成する鋼材の上方に車両等の走行路を構成するコンクリート床版が設置されているが、下弦材をコンクリート床版とすることで、構造的な無駄がなくなり、単純な形態となり設計が容易となるとともに、部材が少なくなる分、軽量化、施工性の向上、コストの低減が図れる。
【0023】
また、下弦材が床版を兼ねることで、従来のトラス橋に比べ、桁高を低く抑えることができる。
【0024】
本願の請求項3に係る発明は、請求項1、2に係る複合トラス橋を張出し架設する複合トラス橋の施工方法であって、まず張出し方向端部に位置する既設の下弦材部分に対し新設の下弦材および鉛直材を増設し、続いて鋼材またはPC鋼材を既設の鉛直材の頂部から前記新設の鉛直材の頂部を経由して前記新設の下弦材の張出し方向端部に架け渡して緊張し固定する工程を繰り返すことで、張出し架設して行くことを特徴とするものである。
【0025】
請求項3に係る施工方法によれば、請求項1、2に係る複合トラス橋について、連続する上弦材と斜材の取付けおよび緊張を同時に行うことができ、かつこれらの取付け緊張と同時に、新設の下弦材が既設部分から吊り支持されることになり、構造的に安定した状態で張出し架設を行うことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1は、本願発明の複合トラス橋の一実施形態としての基本構造を示したものである。
【0027】
図示したものは、多径間連続下路橋を想定しており、中央の橋脚10から両側に張出し架設して行く途中の状態であり、この区間については、上弦材1と斜材4が引張材であり、下弦材2と鉛直材3が圧縮材となっている。
【0028】
本実施形態においては、引張材としての上弦材1と斜材4にPC鋼材(PCケーブル)を用い、圧縮材としての下弦材2に鉄筋コンクリート(鉄筋コンクリート床版)、鉛直材3にコンクリート充填鋼管を用いている。
【0029】
この他、種々の組み合わせが考えられ、例えば上弦材1について鋼管や形鋼を用い、斜材4はPC鋼材としたり、下弦材2をプレストレストコンクリート(プレストレストコンクリート床版)にするといった組み合わせがある。
【0030】
また、これらと別に、例えば外ケーブル方式のプレストレスの導入を組み合わせることも可能である。
【0031】
図2は、本願の請求項1、2に係る複合トラス橋の一実施形態における連続材としての上弦材1と斜材4の取付け構造の一例を示したもので、上弦材1と斜材4を兼ねる連続材1aを鉛直材の頂部に設けたサドル部Aを介して設置し、緊張する構造としている。
【0032】
この例では、連続材1aとしてPC鋼材によるPCケーブルを想定しており、サドル部Sを構成する円弧状部材12に沿って連続材1aが滑らかに屈曲する構造としている。また、この例ではサドル部Sの曲率半径を大きくとるため、サドル部Sの円弧状部材12を垂直材3の頂部から下弦材2まで延びる部材とし、さらに鉛直材3の補助としてステーの機能を有する補助材3aを設けている。
【0033】
サドル部Sの円弧状部材12および補助材3aは、PCケーブル等からなる連続材1aに導入される緊張力および連続材1aに生ずる引張力に抵抗できる強度が必要であるため、例えば鉛直材3とともにコンクリート充填鋼管等が用いられる。
【0034】
連続材1aや鉛直材3、補助材3a、サドル部12についても、上記実施形態に限定されず、例えば連続材1aが鋼板(フラットバー等)等の鋼材の場合や、鉛直材3、補助材3a、円弧状部材12がプレストレストコンクリート製の場合なども考えられる。
【0035】
なお、図示しないが、連続材1aは複数本が並列的に配されているものとする。
【0036】
図3は、本願の請求項3に係る複合トラス橋の施工方法、すなわち請求項1、2のように上弦材1と斜材4が連続する部材の場合における施工手順の一例を示したもので、以下の手順で架設作業を行う。
(1) 移動支保工11上での1ブロックの作業終了状態(図3(a)参照)
(2) 移動支保工11の移設・鉛直材3の設置(図3(b)参照)
(3) 次ブロックの下弦材2の配筋およびコンクリートの打設(図3(c)参照)
(4) 連続部材である上弦材1と斜材4の設置・緊張による1ブロックの作業終了(図3(d)参照)
(5) 移動支保工11の移設(図3(e)参照)
以上の作業の繰り返しにより複合トラス橋が張出し架設される。
【0037】
【発明の効果】
本願発明の複合トラス橋では、トラス橋の主構造を構成するトラスの引張材が鋼材またはPC鋼材であり、圧縮材がコンクリートまたはコンクリート充填鋼管であることから、各部材に作用する力との関係で適材適所となる材質の部材を用いることになり、力学的にも、また軽量化や経済性の面でも合理的な構造となり、最適な構造の設計が可能となる。
【0038】
また、ともに引張材として機能する上弦材と斜材を一体の鋼材またはPC鋼材とすることで、部材数が減る他、緊張力を導入する場合にも一度に導入できるため、施工性がよい。特に鋼ケーブルあるいはPCケーブル等の形で屈曲が比較的容易な形態では、現場での設置および緊張力の導入が容易である。
【0039】
その他、PC鋼材やコンクリート充填鋼管を用いる場合には、これらの特徴を生かすことで、施工性の面などでも高い効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願の請求項1、2に係る複合トラス橋の一実施形態としての基本構造を示したものであり、(a)は正面図、(b)はそのA−A断面図である。
【図2】 本願の請求項1、2に係る複合トラス橋の一実施形態における連続材としての上弦材と斜材の取付け構造の一例を示す正面図である。
【図3】 本願の請求項3に係る複合トラス橋の施工方法の一実施形態としての施工手順を示す正面図である。
【符号の説明】
1…上弦材、1a…連続材、2…下弦材、3…鉛直材、3a…補助材、4…斜材、10…橋脚、11…移動支保工、12…円弧状部材、S…サドル部
Claims (3)
- トラス橋の特定区間について、主構造を構成するトラスの上弦材が鋼材またはPC鋼材であり、下弦材がコンクリートであり、腹材のうち引張材が鋼材またはPC鋼材、圧縮材がコンクリート充填鋼管であって、引張材としての上弦材と斜材、および前記上弦材と下弦材間をつなぐ腹材としての鉛直材を有し、少なくとも一部の引張材は上弦材と斜材が連続する一体の鋼材またはPC鋼材で構成されていることを特徴とする複合トラス橋。
- 前記下弦材がトラス橋の床版を兼ねていることを特徴とする請求項1記載の複合トラス橋。
- 請求項1または2記載の複合トラス橋を張出し架設する複合トラス橋の施工方法であって、まず張出し方向端部に位置する既設の下弦材部分に対し新設の下弦材および鉛直材を増設し、続いて鋼材またはPC鋼材を既設の鉛直材の頂部から前記新設の鉛直材の頂部を経由して前記新設の下弦材の張出し方向端部に架け渡して緊張し固定する工程を繰り返すことで、張出し架設して行くことを特徴とする複合トラス橋の施工方法。
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