JP4038831B2 - ワニス、樹脂付き銅箔および積層板 - Google Patents

ワニス、樹脂付き銅箔および積層板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性コ−ティング剤、耐熱性フィルム、耐熱性プリプレグおよび耐熱性被覆剤等に有用なワニス(樹脂を有機溶剤に溶解させたもの)ならびに該ワニスを用いた樹脂付き銅箔および積層板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子機器の小型化、多機能化に伴って、プリント配線板はより高密度化の方向に進んでいる。例えば、導体回路の細線化、スルーバイアホール、ブラインドバイアホ−ル(めくら穴)およびバリ−ドバイアホ−ル(埋め込み穴)等のインタ−スティシャルバイアホ−ルを含むスル−ホ−ルの小径化、多層化、薄型化ならびに小型チップ部品の表面実装による高密度実装等が挙げられる。
【0003】
従来、多層プリント配線板は、ガラスエポキシプリプレグまたはガラスポリイミドプリプレグを単数または複数枚介し、両面に銅箔を積層してなる銅張積層板の両面をエッチング処理を施して、配線パターンを形成させた内層用パネルを作成し、これに黒化処理を行った後、さらにプリプレグおよび銅箔を適宜レイアップしてプレスにより加熱加圧積層し、続いてドリル穴加工、スルーホールめっきおよびエッチング等の処理をして配線パターン形成を行うことにより製造されている。
【0004】
しかしながら、上記多層プリント配線板の製造方法では、熱プレスを使用するため、内層用パネル、0.05〜0.2mm厚のプリプレグ1〜2枚、銅箔、離型フィルムおよび鏡面プレス板等をレイアップし、それらを熱プレスまたは真空熱プレスで熱圧着させ、その後取り出して解体する等の作業が必要であり、この製造方法では、レイアップ、加熱時の温度上昇、加熱圧着、冷却および解体等のバッチ生産を行うため、作業が煩雑であるという問題があった。
【0005】
これらの問題点を解決する方法として、従来、絶縁層として使用していたガラスエポキシプリプレグまたはガラスポリイミドプリプレグの代わりに樹脂が塗布された銅箔を使用することが検討され、この方法によると、従来の製造工数を低減できるだけでなく、ガラスクロスを用いないので基材の低誘電率化がはかれるというメリットが期待できる。
【0006】
これら樹脂付き銅箔に用いる樹脂としては、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂およびポリイミドが検討されている。しかしながらアクリル系樹脂およびエポキシ樹脂の場合は接着特性は良好なものの耐熱性が不十分であり、ポリイミドを用いた場合は耐熱性は良好なものの接着性ならびに加工時に350℃以上の高温を要するという問題点を有していた。
本発明者らは、これらの問題点を解決するため、アルケニルフェノール化合物およびマレイミド化合物からなる樹脂組成物を提案している(特開平8−302273号公報)。しかしながら、この樹脂組成物からなるワニスは、その放置安定性の面で改良の余地があることがわかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、耐熱性および接着性のみならず、放置安定性に優れたワニスを提供すること、さらにそのワニスを用いた樹脂付き銅箔および該樹脂付き銅箔を用いた耐熱性積層板を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、その他の成分を混合する前に、マレイミド化合物とアルケニルフェノール化合物および/またはアルケニルフェニルエーテル化合物を部分的に反応させることにより、ワニスとした場合の放置安定性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記成分(a)と下記成分(b)とを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの面積比から算出した反応率が30〜90%となるまで反応させて得られる反応混合物、下記成分(c)および下記成分(d)からなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解させたワニスである。
(a)1分子中に2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物
(b)1分子中に2つのアルケニル基を有するアルケニルフェノール化合物および/または1分子中に2つのアルケニル基を有するアルケニルフェニルエーテル化合物
(c)エポキシ樹脂
(d)エポキシ樹脂硬化剤
さらに、本発明における第5発明は前記ワニスを用いた樹脂付き銅箔であり、第6発明は該樹脂付き銅箔を用いた積層板である。以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0009】
本発明における成分(a)1分子中に2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0010】
【化1】
Figure 0004038831
【0011】
(式中、Zは一価以上の残基であり、nはである)
【0012】
前記式(1)におけるZは、脂肪族、芳香族、脂環式および複素環式残基のいずれであっても良い。1分子中に2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物としてはビス(4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−マレイミドフェニル)メタン、ビス(4−マレイミドシクロヘキシル)メタン、ビス(3−マレイミドシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−プロピル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジプロピル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−ブチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジブチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミド−5−メチルフェニル)メタン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェニルオキシ)フェニル]プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−マレイミドフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−マレイミドフェニルオキシ)フェニル]プロパン、ビス(4−マレイミドフェニル) エーテル、ビス(3−マレイミドフェニル) エーテル、ビス(4−マレイミドフェニル) ケトン、ビス(3−マレイミドフェニル) ケトン、ビス(4−マレイミドフェニル) スルホン、ビス(3−マレイミドフェニル) スルホン、ビス[4−(4−マレイミドフェニルオキシ)フェニル] スルホン、ビス(4−マレイミドフェニル) スルフィド、ビス(3−マレイミドフェニル) スルフィド、ビス(4−マレイミドフェニル) スルホキシド、ビス(3−マレイミドフェニル) スルホキシド、ビス(4−マレイミドフェニル)ジフェニルシラン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4−ジマレイミドナフタレン、2,3−ジマレイミドナフタレン、1,5−ジマレイミドナフタレン、1,8−ジマレイミドナフタレン、2,6−ジマレイミドナフタレン、2,7−ジマレイミドナフタレン、4,4' −ジマレイミドビフェニル、3,3' −ジマレイミドビフェニル、3,4' −ジマレイミドビフェニル、2,5−ジマレイミド−1,3−キシレン、1,5−ジマレイミドアントラキノン、1,2−ジマレイミドアントラキノン、2,7−ジマレイミドフルオレン、9,9−ビス(4−マレイミドフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−マレイミド−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)フルオレン、3,7−ジマレイミド−2−メトキシフルオレン、9,10−ジマレイミドフェナントレン、1,2−ジマレイミドアントラキノン、1,5−ジマレイミドアントラキノン、2,6−ジマレイミドアントラキノン、1,2−ジマレイミドベンゼン、1,3−ジマレイミドベンゼン、1,4−ジマレイミドベンゼン、1,4−ビス(4−マレイミドフェニル)ベンゼン、2−メチル−1,4−ジマレイミドベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジマレイミドベンゼン、2,5−ジメチル−1,4−ジマレイミドベンゼン、2,6−ジメチル−1,4−ジマレイミドベンゼン、4−エチル−1,3−ジマレイミドベンゼン、5−エチル−1,3−ジマレイミドベンゼン、4,6−ジメチル−1,3−ジマレイミドベンゼン、2,4,6−トリメチル−1,3−ジマレイミドベンゼン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジマレイミドベンゼンおよび4−メチル−1,3−ジマレイミドベンゼン等のビスマレイミド;ビス(3,4−ジマレイミドフェニル)メタン等のテトラキスマレイミドを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性に優れた硬化物を容易に得ることができる点で、特に芳香族系ビスマレイミド化合物が好ましい。また、これらビスマレイミド化合物は2種以上混合して用いてもかまわない。
【0013】
本発明における成分(b)は1分子中に2つのアルケニル基を有するアルケニルフェノール化合物および/または1分子中に2つのアルケニル基を有するアルケニルフェニルエーテル化合物であり、アルケニルフェノール化合物としては、例えば、下記(b−[1])〜(b−[3])項に記載の化合物を挙げることができる。
【0014】
(b−▲1▼):ジアルケニルビフェニルジオール化合物
3,3' −ビス(2−プロペニル)−4,4' −ビフェニルジオール、3,3' −ビス(2−プロペニル)−2,2' −ビフェニルジオール、3,3' −ビス(2−メチル−2−プロペニル)−4,4' −ビフェニルジオールおよび3,3' −ビス(2−メチル−2−プロペニル)−2,2' −ビフェニルジオール。
【0015】
(b−▲2▼):ジアルケニルビスフェノール化合物
2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル] スルホキシド、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル] スルフィド、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル] エーテル、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル] スルホン、1,1−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]−1−フェニルエタン、1,1−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]シクロヘキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス−[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル] ケトン、9,9−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]フルオレン、3,3−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]フタリド、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−メチル−5−(2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル] ケトン、2−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル 4−ヒドロキシ−3−(2−プロペニル)フェニル ケトン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]メタン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル] スルホキシド、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]スルフィド、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル] エーテル、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル] スルホン、1,1−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]エチルベンゼン、1,1−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]シクロヘキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス−[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル] ケトン、9,9−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]フルオレン、3,3−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]フタリド、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]メタン、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−メチル−5−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパン、ビス[2−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル] ケトンおよび2−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル 4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニルケトン。
【0017】
(b−[3]):その他のアルケニルフェノール系化合物
2,3−ビス(2−プロペニル)−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ビス(2−プロペニル)−1,4−ベンゼンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3,5−ビス(2−プロペニル)アセトフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3,4−ビス(2−プロペニル)アセトフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3,6−ビス(2−プロペニル)アセトフェノン、2,6−ジヒドロキシ−3,5−ビス(2−プロペニル)アセトフェノン、3,5−ジヒドロキシ−2,4−ビス(2−プロペニル)アセトフェノン、3,5−ジヒドロキシ−2,6−ビス(2−プロペニル)アセトフェノン、1,8−ジヒドロキシ−2,7−ビス(2−プロペニル)アントラキノン、2,4−ジヒドロキシ−3,4−ビス(2−プロペニル)ベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシ−3,4−ビス(2−プロペニル)ベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシ−3,6−ビス(2−プロペニル)ベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシ−2,5−ビス(2−プロペニル)ベンズアルデヒド、2,2 ' −ジヒドロキシ−3,3 ' −(2−プロペニル)アゾベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2,4−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、1,4−ジヒドロキシ−2,3−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、1,5−ジヒドロキシ−2,6−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、1,6−ジヒドロキシ−2,5−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、1,6−ジヒドロキシ−2,7−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−1,5−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−1,7−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−3,7−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−3,5−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、2,7−ジヒドロキシ−3,6−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、2,7−ジヒドロキシ−1,6−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、2,7−ジヒドロキシ−1,8−ビス(2−プロペニル)ナフタレン、1,4−ジヒドロキシ−2,3−ビス(2−プロペニル)アントラキノン、1,5−ジヒドロキシ−2,6−ビス(2−プロペニル)アントラキノン、1,8−ジヒドロキシ−2,7−ビス(2−プロペニル)アントラキノン、5,8−ジヒドロキシ−6,7−ビス(2−プロペニル)−1,4−ナフトキノン、2,3−ビス(2−メチル−2−プロペニル)−1,4−ベンゼンジオール、2,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)−1,4−ベンゼンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アセトフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3,4−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アセトフェノン、2,5−ジヒドロキシ−3,6−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アセトフェノン、2,6−ジヒドロキシ−3,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アセトフェノン、3,5−ジヒドロキシ−2,4−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アセトフェノン、3,5−ジヒドロキシ−2,6−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アセトフェノン、1,8−ジヒドロキシ−2,7−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アントラキノン、2,4−ジヒドロキシ−3,4−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシ−3,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシ−3,6−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロキシ−2,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ベンズアルデヒド、2,2 ' −ジヒドロキシ−3,3 ' −(2−メチル−2−プロペニル)アゾベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2,4−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、1,4−ジヒドロキシ−2,3−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、1,5−ジヒドロキシ−2,6−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、1,6−ジヒドロキシ−2,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、1,6−ジヒドロキシ−2,7−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−1,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−1,7−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−3,7−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、2,6−ジヒドロキシ−3,5−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、2,7−ジヒドロキシ−3,6−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、2,7−ジヒドロキシ−1,6−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、2,7−ジヒドロキシ−1,8−ビス(2−メチル−2−プロペニル)ナフタレン、1,4−ジヒドロキシ−2,3−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アントラキノン、1,5−ジヒドロキシ−2,6−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アントラキノン、1,8−ジヒドロキシ−2,7−ビス(2−メチル−2−プロペニル)アントラキノンおよび5,8−ジヒドロキシ−6,7−ビス(2−メチル−2−プロペニル)−1,4−ナフトキノン。
【0018】
これらの中でも、ワニスの調製し易さから、2個のアルケニル基を有するアルケニルフェノール化合物が好ましく、さらに好ましくは2個の2−メチル−2−プロペニル基(メタリル基)を有するアルケニルフェノ−ル化合物である。
また、これらアルケニルフェノ−ル化合物は2種以上混合して用いることができる。
【0019】
一方、アルケニルフェニルエーテル化合物としては、例えば下記(b−[1]’)〜(b−[2]’)項に記載の化合物が挙げられる。
【0020】
(b−▲1▼’):ビフェニルジオ−ルのジメタリルエ−テル化合物
4,4’−ビス(2−プロペニルオキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−メチル−2−プロペニルオキシ)ビフェニルおよび2,2’−ビス(2−メチル−2−プロペニルオキシ)ビフェニル。
【0021】
(b−▲2▼’):ビスフェノ−ルのジアルケニルエ−テル化合物
2,2’−ビス[4−(2−プロペニルオキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]エ−テル、ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−プロペニルオキシ)フェニル]エチルベンゼン、1,1−ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]エチルベンゼン、1,1−ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]シクロヘキサン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニル]ケトンおよび2−(2−メチル−2−プロペニルオキシ)フェニルケトン。
【0023】
本発明においては、前記成分(a)および成分(b)は、後記成分(c)および後記成分(d)を混合する前に部分的に反応させる。前記反応における両成分の割合は特に限定されないが、成分(a)および成分(b)の合計重量を基準として成分(a)が30〜80重量%であるのが好ましい。成分(a)が80重量%を越えると架橋密度が高くなるため硬化物が脆くなる恐れがあり、30重量%未満では硬化物の耐熱性が低下する恐れがある。
反応温度は70〜200℃が好適であり、反応時間は、反応温度および後記反応率との兼ね合いで決定されるものであるが、通常1〜24時間である。
また、前記反応は有機溶剤中で行うことが好ましく、有機溶剤としてはN,N−ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。更に、反応を行うにあたり、ラジカル開始剤の使用の有無は問わないが、反応途中で反応制御が困難となり、系内がゲル化する恐れがあるため、開始剤を用いないのが好ましい。
【0024】
本発明において使用される反応混合物は、前記成分(a)および成分(b)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」という。)の面積比から算出した反応率が30〜90%となるまで反応させて得られるものであり、反応率がこの範囲になるように前記反応温度および反応時間等を調整する。この反応混合物には未反応の成分(a)および成分(b)が合計10〜70%残存する。
反応率が30%未満の場合には、調製したワニスに沈澱が生じることがあり、90%を越える場合は、樹脂付き銅箔を接着する際に、樹脂の流れ性が悪く接着不良を起こすことがある。
【0025】
本発明における成分(c)エポキシ樹脂としてはメチルグリシジルエ−テル、エチルグリシジルエ−テル、プロピルグリシジルエ−テル、ブチルグリシジルエ−テル、ブチルグリシジルエ−テル、ペンチルグリシジルエ−テル、ヘキシルグリシジルエ−テル、シクロヘキシルグリシジルエ−テル、ヘプチルグリシジルエ−テル、シクロヘプチルグリシジルエ−テル、オクチルグリシジルエ−テル、シクロオクチルグリシジルエ−テル、ノニルグリシジルエ−テル、デシルグリシジルエ−テル、ドデシルグリシジルエ−テル、トリデシルグリシジルエ−テル、テトラデシルグリシジルエ−テル、フェニルグリシジルエ−テル、クレシルグリシジルエ−テル、ノニルフェニルグリシジルエ−テル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエ−テルおよび2−エチルヘキシルグリシジルエ−テル等の単官能エポキシ化合物;1,4ブタンジオ−ルジグリシジルエ−テル、ネオペンチルグリコ−ルジグリシジルエ−テル、エチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、ポリエチレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、プロピレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、トリプロピレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、ポリプロピレングリコ−ルジグリシジルエ−テル、1,6ヘキサンジオ−ルジグリシジルエ−テル、グリセリンジグリシジルエ−テル、トリメチロ−ルプロパントリグリシジルエ−テル、水添ビスフェノ−ルAジグリシジルエ−テル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコ−ルジグリシジルエ−テル、トリメチロ−ルエタントリグリシジルエ−テル、脂肪族ポリオ−ルポリグリシジルエ−テル、ポリグリコ−ルジエポキサイド、ヒマシ油ポリグリシジルエ−テル、シクロヘキサンジメタノ−ルジグリシジルエ−テル、レゾルシノ−ルジグリシジルエ−テル、ビスフェノ−ルAジグリシジルエ−テル、ビスフェノ−ルFジグリシジルエ−テル、ビスフェノ−ルSジグリシジルエ−テル、ビスフェノ−ルA プロピレンオキサイド付加ジグリシジルエ−テル、フタル酸およびジヒドロフタル酸等の二塩基酸とエピハロヒドリンとの反応によって得られるジグリシジルエステル化合物;アミノフェノ−ルおよびビス(4−アミノフェニル)メタン等の芳香族アミンとエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ化合物;1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、フェノ−ルノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ化合物が挙げられる。
これらエポキシ樹脂は所望により1種もしくは2種以上を混合して使用することができる。好ましいエポキシ樹脂としては、ワニスを銅箔上に塗布し乾燥させた後に粉体化しない点で、エポキシ当量が1000以下のエポキシ樹脂が好ましく、さらに好ましくはエポキシ当量が1000以下でかつ25℃における性状が液状または半固形状のエポキシ樹脂である。
【0026】
成分(c)エポキシ樹脂の配合量は、成分(a)、成分(b)および成分(c)の合計量を基準にして、1〜70重量%であり、さらに好ましくは5〜50重量%である。エポキシ樹脂の配合量が1重量%未満の場合は、樹脂付き銅箔を作成した際に樹脂にひびが入りやすく作業性を低下させることがある。また、配合量が70重量%を越えると、樹脂の耐熱性が低下する恐れがある。
【0027】
本発明における成分(d)エポキシ樹脂硬化剤としては、エポキシ化合物の硬化剤として知られているものはいずれも用いることができる。好ましいエポキシ樹脂硬化剤として、例えば、下記(d−▲1▼)〜(d−▲4▼)に記載の化合物が挙げられる。
【0028】
(d−▲1▼):アミン類
トリエチレンテトラミン、ビス(4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、テトラエチレンペンタミン、ビス(4−アミノ−3−プロピルフェニル)メタン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジプロピルフェニル)メタン、N−アミノエチルピペリジン、ビス(4−アミノ−3−ブチルフェニル)メタン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3,5−ジブチルフェニル)メタン、メタフェニレンジアミン、2−メチル−1,4−フェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル) スルホン、2,3−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、ビス(3−アミノフェニル)メタン、2,5−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル) エーテル、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンジアミン、ビス(3−アミノフェニル) エーテル、4−エチル−1,3−フェニレンジアミン、4,4' −ビフェニルジアミン、5−エチル−1,3−フェニレンジアミン、3,3' −ジフェニルジアミン、4,6−ジメチル−1,3−フェニレンジアミン、3,4' −ジフェニルジアミン、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、1,2' −フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、ビス(4−アミノ−3−エチル−5−メチルフェニル)メタン、1,4−フェニレンジアミン、4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、1,5−ナフタレンジアミン、1,8−ナフタレンジアミン、2,6−ナフタレンジアミン、2,7−ナフタレンジアミン、2,5−ジアミノ−1,3−キシレン、ビス(4−アミノフェニル) スルホン、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、2,7−ジアミノフルオレン、3,7−ジアミノ−2−メトキシフルオレン、9,10−ジアミノフェナントレン、3,6−ジアミノアクリジン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,5−ジアミノアントラキノン、2,6−ジアミノアントラキノン、2,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェニルオキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)ジフェニルシラン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル) スルフィド、ビス(4−アミノフェニル) スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル) スルホキシド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェニルオキシ)フェニル]プロパン、ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルフェニル)メタン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよびDBU。
【0029】
(d−▲2▼):酸無水物
無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水テトラヒドロフタル酸および無水メチルテトラヒドロフタル酸。
【0030】
(d−▲3▼):多価フェノール
ビスフェノールF、ビスフェノールA、ノボラックフェノール樹脂およびp−ヒドロキシスチレン樹脂。
【0031】
(d−▲4▼):イミダゾール系化合物
キュアゾール2MZ、キュアゾール2EZ、キュアゾール2E4MZ、キュアゾール2IZ、キュアゾール2MZ−CMSおよびキュアゾール2E4MZ−CMS〔以上、いずれも四国化成(株)製の市販品〕。
【0032】
これらのエポキシ樹脂硬化剤は単独で使用しても良いが、二種以上を併用して使用することも可能である。好ましいエポキシ樹脂硬化剤としては、得られる硬化物の耐熱性の面から、芳香族系ジアミンを挙げることができる。
エポキシ樹脂硬化剤の好ましい使用量は、前記(c)エポキシ樹脂100重量部当たり、10〜120重量部である。
【0033】
本発明におけるワニスは、成分(a)〜(d)からなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解させて得られるものである。
前記有機溶剤としては、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチルおよび酢酸ブチル等のエステル類、トルエンおよびキシレン等の炭化水素類、塩化メチレンおよび1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素類、ジオキサンおよびテトラヒドロフラン等のエ−テル類、セロソルブアセテ−ト等のエ−テルエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドおよびスルホラン等の非プロトン性有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は1種または2種以上を混合して使用することができる。
有機溶剤の使用量は、用途および有機溶剤の種類に応じて種々異なり、明確に規定することは困難であるが、ワニス全重量に対して10〜95重量%、より好ましくは20〜90重量%用いるのが適当である。使用する有機溶剤が10重量%よりも少ないとワニスの粘度が高くなるため、作業性の低下および保存安定性が低下する恐れがある。また、使用する有機溶剤が95重量%よりも多い場合は、ワニスの粘度が下がるため、均一に塗布しにくくなる恐れがる。
【0034】
本発明におけるワニスは、上記成分(a)〜(d)の他に、必要に応じて、ラジカル重合開始剤、エポキシ基反応触媒、難燃剤、無機質フィラ−およびシランカップリング剤等を添加してもよい。
【0035】
前記ラジカル重合開始剤としては、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化アセチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化−2−クロロベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパ−オキシ)ヘキサン等の有機過酸化物が挙げられる。
【0036】
前記エポキシ基反応触媒としては、以下に具体例を挙げるアミン類、トリフェニルホスフィンおよびトリフェニルホスフェ−ト等に代表されるリン化合物ならびに三フッ化ホウ素等のルイス酸が挙げられる。
アミン類としては、テトラメチルグアニジン、トリエタノ−ルアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、ピリジン、ピコリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ベンジルメチルアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル等が挙げられる。
【0037】
前記難燃剤としては、テトラブロモビスフェノ−ルA、テトラブロモビスフェノ−ルAのジ(メタ)アクリレ−ト反応物、テトラブロモビスフェノ−ルAジアリルエ−テル、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレ−ト、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)フェニルプロパン、デカブロモジフェニルエ−テルおよび臭素化ポリカ−ボネ−ト等の有機難燃剤、酸化アンチモン、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウムおよび酸化スズ等の無機系難燃剤、トリフェニルホスフェ−トおよびトリキシレニルホスフェ−ト等の芳香族リン酸エステル系難燃剤等が挙げられる。これらの中でも、分解温度が高いことおよびワニスに添加し沈殿し難いことから臭素化ポリカ−ボネ−トが好ましい。
これらの難燃剤は1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0038】
前記シランカップリング剤としては、成分(a)〜(d)と反応する官能基を有する化合物であれば特に限定されない。具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびN−[β−(N−ビニルベンジルアミノ)エチル]−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等を挙げることができる。
これらの中でも、反応性および接着性の向上等の理由により、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよびβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤が好ましい。
これらシランカップリング剤は、所望により1種もしくは2種以上混合して使用することができる。
【0039】
次に、本発明におけるワニスの製造方法、樹脂付き銅箔の作成方法ならびに積層板の作成方法について説明する。
(1)ワニスの製造方法
冷却コンデンサ−、温度計および攪拌機を備え付けた反応容器に成分(a)マレイミド化合物と成分(b)アルケニルフェノ−ル系化合物および/またはアルケニルフェニルエーテル化合物を所定量入れ、前記条件で反応させる。GPCの分析により、反応率が30〜90重量%の範囲に入っていることを確認し、室温まで冷却する。さらに、成分(c)エポキシ樹脂および成分(d)エポキシ樹脂硬化剤を配合し、必要に応じてラジカル重合開始剤、エポキシ基反応触媒、難燃剤、無機質フィラ−およびシランカップリング剤等を配合して得られた樹脂組成物を有機溶剤に溶解させてワニスを得る。
【0040】
(2)前記ワニスを用いた樹脂付き銅箔の作成方法
ワニスを銅箔の粗面に所定厚になるよう塗布し、室温〜200℃の温度で0.1〜24時間乾燥または反応させることにより、樹脂付き銅箔を作成する。使用する銅箔は特に限定されず、用途により圧延銅箔および電解銅箔等を用いることができる。なお、本発明における樹脂付き銅箔の樹脂は、完全に硬化させた樹脂ではなく、B−ステ−ジ状態で止めておくことが望ましい。
【0041】
(3)前記樹脂付き銅箔を用いた積層板の作成方法
ガラスクロス入り積層板に前記樹脂付き銅箔を室温〜250℃の温度でラミネ−トし、さらに必要に応じて70〜250℃、好ましくは150〜250℃の温度で0.5〜24時間硬化させて積層板を作成する。また、必要に応じてこの操作を数回繰り返し多層化しても良い。なお、ラミネ−ト方法および積層方法は特に限定されるものではない。
【0042】
【実施例】
本発明を更に具体的に説明する為、以下に実施例および比較例を挙げてさらに具体的に詳述する。
【0043】
(実施例1)
冷却管、攪拌機および温度計を取り付けた1L三口フラスコに、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンを100.6g、2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパンを75.5gおよびN,N−ジメチルアセトアミドを58.9g仕込み、150℃で75分間反応させた。反応物のGPC分析を行った結果、未反応のビス(4−マレイミドフェニル)メタンと2,2−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル〕プロパンの合計量は52.6%であった(反応率47.4%)。
次に、上記反応液を50℃まで冷却した後、メチルエチルケトンを137.2g、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂〔油化シェルエポキシ(株)製:エピコ−ト828〕を75.5g、難燃化剤である臭素化ポリカ−ボネ−ト〔帝人化成(株)製:ファイヤ−ガ−ド8500〕を31.0g、ジアミノジフェニルスルホンを24.5gおよびジクミルパ−オキシドを11.6gを配合し、均一になるまで攪拌しワニスを得た。得られたワニスを室温下で3カ月放置したが、沈殿は認められなかった。
【0044】
(実施例2)
150℃で100分間反応させた以外は、実施例1と同様に反応を行った。
反応物のGPC分析を行った結果、未反応のビス(4−マレイミドフェニル)メタンと2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパンの合計量は39.1%であった(反応率60.9%)。
次に、前記反応液を50℃まで冷却した後、ジアミノジフェニルスルホンの代わりにジシアンジアミド8.3gを用いた以外は実施例1と同様に配合し、均一になるまで攪拌しワニスを得た。得られたワニスを室温下で3カ月放置したが、沈殿は認められなかった。
【0045】
(実施例3)
冷却管、攪拌機および温度計を取り付けた1L三口フラスコに、ビス(4−マレイミドフェニル)メタンを71.9g、2,2−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル〕プロパンを53.9gおよびN,N−ジメチルアセトアミドを58.9g仕込み、150℃で60分間反応させた。反応物のGPC分析を行った結果、未反応のビス(4−マレイミドフェニル)メタンと2,2−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル〕プロパンの合計量は58.2%であった(反応率41.8%)。
次に、上記反応液を50℃まで冷却した後、メチルエチルケトンを135.6g、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂〔油化シェルエポキシ(株)製:エピコ−ト828〕を125.8g、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕メタンを85.4g、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを2.9gおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパ−オキシ)ヘキサンを6.2g配合し、均一になるまで攪拌しワニスを得た。得られたワニスを室温下で3カ月放置したが、沈殿は認められなかった。
【0046】
(実施例4)
実施例1と同様に反応を行った。反応物のGPC分析を行った結果、未反応のビス(4−マレイミドフェニル)メタンと2,2−ビス〔4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル〕プロパンの合計量は50.1%であった(反応率49.9%)。
次に、上記反応液を50℃まで冷却した後、メチルエチルケトンを137.2g、ビスフェノ−ルA型エポキシ樹脂〔油化シェルエポキシ(株)製:エピコ−ト834〕を75.5g、難燃化剤である臭素化ポリカ−ボネ−ト〔帝人化成(株)製:ファイヤ−ガ−ド8500〕を31.0g、ジアミノジフェニルスルホンを18.7gおよびジクミルパ−オキシドを11.6gを配合し、均一になるまで攪拌しワニスを得た。得られたワニスを室温下で3カ月放置したが、沈殿は認められなかった。
【0047】
(比較例1)
反応条件を150℃で15分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。GPC分析の結果、未反応のビス(4−マレイミドフェニル)メタンと2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパンの合計量は、77.5%であった(反応率22.5%)。
50℃に冷却後、実施例1と同様に配合を行い、ワニスを調製した。得られたワニスを室温下で放置したところ、1日で沈殿が析出した。
【0048】
(実施例5)
実施例1で得たワニスを電解銅箔(厚み35μm)の粗面に、乾燥後の樹脂の厚みが50μmになるようにバ−コ−タ−を用いて塗布し、150℃で7分間乾燥させて樹脂付き銅箔を得た。
上記で得られた樹脂付き銅箔をFR−4基板(厚み:1.0mm、銅箔エッチング済み)に90℃で真空ラミネ−トし、さらに200℃で3時間オ−ブンで硬化させて試験片を得た。銅箔のPeel強度を23℃および150℃で測定した結果、23℃で1.6kgf/cm、150℃で1.5kgf/cmであった。また、JIS C 6481(プリント配線板用銅張積層板試験方法)記載の方法に準じてハンダ耐熱試験(試験条件:280℃×3分)を行った結果、上記試験片は合格であった。
【0049】
(実施例6)
実施例5で得た樹脂付き銅箔をBT−CCL−H800基板〔三菱瓦斯化学(株)製、厚み:1.6mm、銅箔エッチング済み〕に90℃で真空ラミネ−トし、さらに200℃で3時間オ−ブンで硬化させ試験片を得た。銅箔のPeel強度は、23℃で1.7kgf/cm、150℃で1.6kgf/cmであった。また、前記ハンダ耐熱試験は合格であった。
【0050】
(実施例7)
実施例2で得たワニスを電解銅箔(厚み35μm)の粗面に乾燥後の樹脂の厚みが50μmになるようにバ−コ−タ−を用いて塗布し、150℃で5分間乾燥させることにより樹脂付き銅箔を得た。
得られた樹脂付き銅箔をFR−4基板(厚み:1.0mm、銅箔エッチング済み)に120℃で真空ラミネ−トし、さらに200℃で3時間オ−ブンで硬化させ試験片を得た。銅箔のPeel強度は、23℃で1.6kgf/cm、150℃で1.4kgf/cmであった。また、前記ハンダ耐熱試験は合格であった。
【0051】
(実施例8)
実施例3で得たワニスを電解銅箔(厚み35μm)の粗面に乾燥後の樹脂の厚みが60μmになるようにバ−コ−タ−を用いて塗布し、170℃で8分間乾燥させることにより樹脂付き銅箔を得た。
得られた樹脂付き銅箔をFR−4基板(厚み:1.0mm、銅箔エッチング済み)に100℃で真空ラミネ−トし、さらに200℃で3時間オ−ブンで硬化させ試験片を得た。銅箔のPeel強度は、23℃で1.7kgf/cm、150℃で1.5kgf/cmであった。また、前記ハンダ耐熱試験は合格であった。
【0052】
(実施例9)
実施例4で得たワニスを電解銅箔(厚み35μm)の粗面に乾燥後の樹脂の厚みが60μmになるようにバ−コ−タ−を用いて塗布し、150℃で8分間乾燥させることにより樹脂付き銅箔を得た。
得られた樹脂付き銅箔をFR−4基板(厚み:1.0mm、銅箔エッチング済み)に90℃で真空ラミネ−トし、さらに200℃で3時間オ−ブンで硬化させ試験片を得た。銅箔のPeel強度は、23℃で1.6kgf/cm、150℃で1.4kgf/cmであった。また、前記ハンダ耐熱試験は合格であった。
【0053】
(比較例2)
反応条件を150℃で210分間とした以外は実施例1と同様に反応を行った。GPC分析の結果、未反応のビス(4−マレイミドフェニル)メタンと2,2−ビス[4−ヒドロキシ−3−(2−メチル−2−プロペニル)フェニル]プロパンの合計量は、7.8%であった(反応率92.2%)。
上記で得たワニスを電解銅箔(厚み35μm)の粗面に乾燥後の樹脂の厚みが50μmになるようにバ−コ−タ−を用いて塗布し、140℃で5分間乾燥させることにより樹脂付き銅箔を得た。
得られた樹脂付き銅箔をFR−4基板(厚み:1.0mm、銅箔エッチング済み)に120℃で真空ラミネ−トしたところ、樹脂付き銅箔とFR−4基板の間に気泡が残存し、さらに200℃で3時間オ−ブンで硬化させたところ、銅箔に膨れが生じた。
【0054】
【発明の効果】
本発明のワニスは、例えば耐熱性コ−ティング剤、耐熱性フィルム、耐熱性プリプレグおよび耐熱性被覆剤等の用途に用いられ、耐熱性等の性能に優れ、信頼性に十分耐えられる。また、本発明のワニスを用いた樹脂付き銅箔を用いることにより、耐熱性が高く高温信頼性に優れた積層板が得られるため、工業的価値は著しく大きい。

Claims (6)

  1. 下記成分(a)と下記成分(b)とを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの面積比から算出した反応率が30〜90%となるまで反応させて得られる反応混合物、下記成分(c)および下記成分(d)からなる樹脂組成物を有機溶剤に溶解させたワニス。
    (a)1分子中に2つのマレイミド基を有するマレイミド化合物
    (b)1分子中に2つのアルケニル基を有するアルケニルフェノール化合物および/または1分子中に2つのアルケニル基を有するアルケニルフェニルエーテル化合物
    (c)エポキシ樹脂
    (d)エポキシ樹脂硬化剤
  2. エポキシ樹脂のエポキシ当量が1000以下である請求項1記載のワニス。
  3. エポキシ樹脂のエポキシ当量が1000以下であり、かつ25℃における性状が液状または半固形状である請求項1〜請求項2のいずれかに記載のワニス。
  4. アルケニルフェノ−ル化合物および/またはアルケニルフェニルエ−テル化合物がメタリルフェノ−ル化合物および/またはメタリルフェニルエ−テル化合物である請求項1〜請求項3のいずれかに記載のワニス。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のワニスを用いた樹脂付き銅箔。
  6. 請求項5に記載の樹脂付き銅箔を用いた積層板。
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