JP4038706B2 - アルカリ乾電池及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、性能改善して重負荷用途に適するようにしたアルカリ乾電池及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ノート型パソコン、CDプレーヤ,MDプレーヤ,液晶テレビ等の携帯用AV機器、携帯電話などのように超重負荷あるいは重負荷の用途が最近のアルカリ乾電池に要求されてきている。
【0003】
かかるアルカリ乾電池において、その正極缶は、鋼板の両面に予めニッケルメッキを施したものをプレス絞りしごき加工するか、鋼板のみで絞り加工した後ニッケルメッキを施し、それぞれ内面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成させたものが使用されており、これにより正極合剤と正極缶との接触抵抗を低減させ、重負荷特性を改善している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところでアルカリ乾電池において高容量化を実現させるためには、正極合剤中の二酸化マンガン含有率を増加させなければならず、必然的に導電剤の黒鉛粉末の含有率が低くなる。このことは、正極合剤と正極缶との接触抵抗を増大させ、短絡電流の低下や重負荷特性を低下させる原因となる。
【0005】
この対策として、上記したように正極缶の内面に導電性被膜を形成させることが行われているが、このような高容量化電池は、貯蔵後、特に高温貯蔵後に重負荷特性が低下するという問題がある。
本発明は上記問題に対処してなされたもので、アルカリ乾電池の高容量化を達成し、かつ貯蔵後の重負荷特性の低下を防止することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題を正極缶を改良することによって達成した。すなわち本発明は、正極端子を兼ねる有底円筒の正極缶と、その正極缶内に配置された中空円筒状の正極合剤と、有底円筒状のセパレータを介して前記正極合剤の中空部に充填されたゲル状亜鉛負極とを備えるアルカリ乾電池において、前記正極缶として、予め両面にニッケル−リンメッキ層を形成させた冷間圧延鋼板材を、500℃〜600℃で加熱処理して鋼板とニッケル−リンメッキ層の間にさらにニッケル−リン合金メッキ層を形成させ、これをプレス絞りしごき加工した缶を使用したことを特徴とする。
【0007】
またさらに本発明は、正極端子を兼ねる有底円筒の正極缶と、その正極缶内に配置された中空円筒状の正極合剤と、有底円筒状のセパレータを介して前記正極合剤の中空部に充填されたゲル状亜鉛負極とを備えるアルカリ乾電池の製造方法において、冷間圧延鋼板材に予め両面にニッケル−リンメッキ層を形成させ、次に500℃〜600℃で加熱処理して前記冷間圧延材とニッケル−リンメッキ層の間にさらにニッケル−リン合金メッキ層を形成させ、これをプレス絞りしごき加工して前記正極缶を形成することを特徴とする。
【0008】
記の本発明のアルカリ乾電池で使用する正極缶は、その内面に形成されたニッケル−リンメッキ層が、プレス絞りしごき加工時に発生した非常に細かいひび割れによって凹凸面を構成するので、正極合剤や導電性被膜との接触面積が大きくなり、電池の内部抵抗を低減させる。一方、ニッケル−リン合金メッキ層の下にはさらにニッケル−リン合金メッキ層が、形成されているので、これらの層がひび割れしても鉄の下地が露出することが少ない。したがって、高温貯蔵した際の鉄の酸化により、正極合剤や導電性被膜との接触抵抗が大きくなることがなく、高温貯蔵後の重負荷特性の劣化が小さい。また、後処理によるニッケル−リン合金メッキ層の形成により上層のニッケル−リンメッキ層が強固に結合し、さらに放電容量の劣化が少なくなる。
【0009】
本発明のアルカリ乾電池はこのような特性を有するので、正極合剤中の二酸化マンガンの量を増加させ、その結果、黒鉛粉末含有量を8wt%以下にしても、従来のような問題が生じないので、高容量化を達成できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、上記(1)の本発明の実施例について詳細に説明する。
(実施例1)
まず、予め両面に厚さ2μmのニッケルメッキ層を形成させた冷間圧延鋼板材の一方の面に更に厚さ2μmのニッケル−リンメッキ層を形成させた。このニッケル−リン合金メッキ層の形成は、硫酸ニッケル20g/l,次亜リン酸ナトリウム10g/l,乳酸25g/lおよびプロピオン酸3g/lを含有し、pH4.5、浴温85℃の浴中で処理する無電解ニッケル−リンメッキ法で行った。メッキ被膜はリンを3%含むニッケル−リン合金である。
【0011】
この鋼板を用いて、ニッケル−リン合金メッキ層面が内側になるように、有底の円筒形にプレス絞りしごき加工して正極缶を形成した。この正極缶のメッキ層の構成を図2に示す。この図に示されるように、正極缶の鋼板9には厚さ2μmのニッケルメッキ層10が形成され、その上に、缶内側になる面に厚さ2μmのニッケル−リン合金メッキ層11が形成されている。
【0012】
このように形成した正極缶の内面に、開口部のガスケットと接する部分を除いて黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成した。導電性被膜の塗布方法は、黒鉛粉末を主成分とする導電性塗料をメチルエチルケトン等の低沸点有機溶剤にて希釈し、スプレーガンによって霧状に正極缶内面に塗布することによって行い、正極缶開口部のガスケットに接する部分には塗布しないようにする。導電塗料をスプレーガンにて塗布した後、乾燥機にて溶剤を蒸発させる。残った導電膜の厚さは1〜10μm程度が望ましい。この正極缶のメッキ層の構成を図3に示す。図3において12は導電性被膜である。
【0013】
図3に示す導電性被膜が形成された正極缶を用いて、図1に示すJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。この図1において、1は前記の方法で製造した正極端子を兼ねる有底円筒形の正極缶であり、前記したように、この正極缶の内面側には厚さ2μmのニッケルメッキ層が形成され、その上に厚さ2μmのニッケル−リン合金メッキ層が形成され、更にその上に導電性被膜が形成されている。
【0014】
この正極缶内には円筒状に加圧成形した3個の正極合剤2が分割充填されている。正極合剤2は二酸化マンガン粉末と黒鉛粉末を混合し、これを成形型を用いて所定の圧力で中空円筒状に加圧成形したものであり、放電容量の高容量化のために正極合剤2中の黒鉛粉末含有率は8wt%となっている。
【0015】
また、正極合剤2の中空部にはアセタール化ポリビニルアルコール繊維の不織布からなる有底円筒状のセパレータ3が配置されている。このセパレータ3を介して、無汞化亜鉛合金粉末、アルカリ電解液及びゲル化剤としてのポリアクリル酸からなるゲル状亜鉛負極4が充填されている。ゲル状亜鉛負極4内には真鍮製の負極集電棒5が、その先端部をゲル状負極4に差し込むようにして装着されている。負極集電棒5の上部外周及び正極缶1の上部内周面には二重環状のポリアミド樹脂からなる絶縁ガスケット6が配設されている。また、絶縁ガスケット6の二重環状部の間にはリング状の金属板7が配設され、かつ金属板7には負極端子を兼ねる帽子型の金属封口板8が集電棒5の頭部に当接するように配設されている。そして、正極缶1の開口縁を内方に屈曲させることによりガスケット6及び金属封口板8で正極缶1内を密封口している。
【0016】
(実施例2)
その内面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成せず、それ以外は実施例1と同様にして製造した正極缶を用いて、実施例1と同様にしてJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。
【0017】
(比較例1)
予め両面に厚さ2μmのニッケルメッキ層を形成させた冷間圧延鋼板材を有底の円筒形にプレス絞りしごき加工し、内側面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成したものを正極缶として用い、それ以外は実施例1と同様にしてJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。
【0018】
(比較例2)
冷間圧延鋼板材を有底の円筒形にプレス絞りしごき加工した後で、厚さ1〜2μmのニッケルメッキ層を形成させ、内側面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成したものを正極缶として用い、それ以外は実施例1と同様にしてJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。
【0019】
(比較例3)
内側面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成しないで、それ以外は比較例1と同様にしてJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。
【0020】
(比較例4)
内側面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成しないで、それ以外は比較例2と同様にしてJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。
【0021】
上記のようにして組み立てた実施例1〜2、比較例1〜4の各LR6形アルカリ乾電池について、60℃で0日、10日及び60日間貯蔵した後の、20℃における内部抵抗と放電容量を調べ、その結果を表1に示した。内部抵抗(mΩ)はそれぞれの電池10個を1kHzの交流抵抗計を用い測定し、それらの平均値を示した。放電容量はそれぞれの電池10個について2Ω連続放電試験を実施し、終止電圧0.9Vまでの持続時間(min)の平均値を示した。
【0022】
【表1】
Figure 0004038706
【0023】
上記表から明らかなように、実施例1〜2は、比較例1〜4に比べて、60℃に60日間貯蔵しても電池の内部抵抗の増大が少なく、放電容量の劣化も少ないことが判る。
【0024】
次に上記(2)の本発明の実施例について説明する。
(実施例3)
まず、予め両面に厚さ2〜3μmのニッケル−リンメッキ層を形成させた冷間圧延鋼板材のフープ材に、500〜600℃の温度を数時間かけ、鋼板とニッケル−リンメッキの間にニッケル−リン合金メッキ層を形成させた。なお、ニッケル−リンメッキ層の形成は上記実施例1と同じ方法によって行なった。
【0025】
この鋼板を用いて有底の円筒形にプレス絞りしごき加工して、正極缶を形成した。この正極缶のメッキ層の構成を図4に示す。この図に示されるように、正極缶の鋼板9には厚さ2〜3μmのニッケル−リンメッキ層11が形成され、それと鋼板9との間にはニッケル−リン合金メッキ層13が形成されている。
【0026】
このように形成した正極缶の内面に、開口部のガスケットと接する部分を除いて黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成した。導電性被膜の塗布方法は、前記実施例1と同じで、黒鉛粉末を主成分とする導電性塗料をメチルエチルケトン等の低沸点有機溶剤にて希釈し、スプレーガンによって霧状に正極缶内面に塗布することによって行い、正極缶開口部のガスケットに接する部分には塗布しないようにする。導電塗料をスプレーガンにて塗布した後、乾燥機にて溶剤を蒸発させる。残った導電膜の厚さは1〜10μm程度が望ましい。この正極缶のメッキ層の構成を図5に示す。図5において12は導電性被膜である。
【0027】
得られた正極缶を用いて、実施例1と同様に図1に示すJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。前記したように、この正極缶の内面側には厚さ1〜2μmのニッケル−リン合金メッキ層が形成され、その上に厚さ1〜2μmのニッケル−リンメッキ層が形成され、更にその上に導電性被膜が形成されている。
【0028】
(実施例4)
その内面に黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜を形成せず、それ以外は実施例3と同様にして製造した正極缶を用いて、実施例3と同様にしてJIS規格LR6形(単3形)アルカリ乾電池を組み立てた。
【0029】
上記の実施例3および実施例4のアルカリ乾電池と、前記比較例1〜4のアルカリ乾電池とについて、60℃で0日、10日及び60日間貯蔵した後の、20℃における内部抵抗と放電容量を調べ、その結果を表2に示した。内部抵抗(mΩ)はそれぞれの電池10個を1kHzの交流抵抗計を用い測定し、それらの平均値を示した。放電容量はそれぞれの電池10個について2Ω連続放電試験を実施し、終止電圧0.9Vまでの持続時間(min)の平均値を示した。
【0030】
【表2】
Figure 0004038706
【0031】
上記表から明らかなように、実施例3および実施例4は、比較例1〜4に比べて、60℃に60日間貯蔵しても電池の内部抵抗の増大が少なく、放電容量の劣化も少ないことが判る。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアルカリ乾電池は、高容量で重負荷特性に優れており、また貯蔵特性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるアルカリ乾電池の断面図。
【図2】本発明の実施例における正極缶の層構成図。
【図3】本発明の他の実施例における正極缶の層構成図。
【図4】本発明の他の実施例における正極缶の層構成図。
【図5】本発明の他の実施例における正極缶の層構成図。
【符号の説明】
1…正極缶、2…正極合剤、3…セパレータ、4…ゲル状亜鉛負極、5…負極集電棒、6…絶縁ガスケット、7…リング状金属板、8…金属封口板、9…冷間圧延鋼板材、10…ニッケルメッキ層、11…ニッケル−リンメッキ層、12…黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜層、13…ニッケル−リン合金メッキ層。

Claims (4)

  1. 正極端子を兼ねる有底円筒の正極缶と、その正極缶内に配置された中空円筒状の正極合剤と、有底円筒状のセパレータを介して前記正極合剤の中空部に充填されたゲル状亜鉛負極とを備えるアルカリ乾電池において、前記正極缶として、予め両面にニッケル−リンメッキ層を形成させた冷間圧延鋼板材を、500℃〜600℃で加熱処理して鋼板とニッケル−リンメッキ層の間にさらにニッケル−リン合金メッキ層を形成させ、これをプレス絞りしごき加工した缶を使用したことを特徴とするアルカリ乾電池。
  2. 前記正極缶の内面には、黒鉛粉末を主成分とする導電性被膜が形成されていることを特徴とする請求項記載のアルカリ乾電池。
  3. 正極合剤中の黒鉛粉末含有率が8wt%以下であることを特徴とする請求項または記載のアルカリ乾電池。
  4. 正極端子を兼ねる有底円筒の正極缶と、その正極缶内に配置された中空円筒状の正極合剤と、有底円筒状のセパレータを介して前記正極合剤の中空部に充填されたゲル状亜鉛負極とを備えるアルカリ乾電池の製造方法において、冷間圧延鋼板材に予め両面にニッケル−リンメッキ層を形成させ、次に500℃〜600℃で加熱処理して前記冷間圧延材とニッケル−リンメッキ層の間にさらにニッケル−リン合金メッキ層を形成させ、これをプレス絞りしごき加工して前記正極缶を形成することを特徴とするアルカリ乾電池の製造方法
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