JP4038672B2 - 導電性シリコーンゴム粒子、その製造方法及び導電材料 - Google Patents

導電性シリコーンゴム粒子、その製造方法及び導電材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、電気特性等の優れた特性を発揮し得る貴金属で密着性よく被覆され、導電性充填剤、抗菌剤、塗料、コーティング剤等として広範囲の分野で利用することができる耐熱性、電気特性に優れ、低比重、低弾性の導電性シリコーンゴム粒子、その製造方法、及びこの導電性シリコーンゴム粒子を樹脂又はゴムに配合してなる導電材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴムやプラスチック製品を電子材料に応用する場合、しばしば導電性が要求されるため、導電性の粉体を混合することは一般的に行われているが、必ずしも良好な結果が得られていなかった。例えば、銅粉、ニッケル粉、銀粉のような金属粉を用いた場合、高価であり、8〜11という高比重のため、低重量が望ましい電子材料の重量が上がるという問題点があり、また、グラファイトやカーボンのような炭素粉を用いた場合、炭素粉の抵抗率が高いため、mΩ・cmレベルの抵抗率が得にくいという問題点があった。
【0003】
このため、微小のガラスビーズの表面に連続的に銀被膜を形成することで、低価格、低比重でありながら、銀の電気特性をもつ導電性粉体が米国のポッターズ社で開発され、これが昭和53年より東芝バロティーニ社から販売され、いろいろな用途に用いられていることはよく知られている。
【0004】
また、無機材料より低弾性である高分子材料からなる成形体が金属で被覆されたものとしては、例えばプラスチック、特にエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックあるいは強化プラスチック等の成形体表面に無電解金属メッキ層が形成されたものが挙げられ、その技術は公知である(例えば、非特許文献1:岡村寿郎,川岸重光,神戸徳蔵,鷹野修:「無電解メッキの応用」,p.83〜133,槇書店(1991))。プラスチック微粒子にメッキ層を形成させて導電性を付与する具体的技術としては、例えば、特開平8−311655号公報(特許文献1)や特開平9−22620号公報(特許文献2)等に開示されている。
【0005】
プラスチックやゴム材料の中でもシリコーン樹脂は、他のプラスチックやゴム材料に比較して、柔軟性があり、低温でもゴム弾力性に富む優れた特性を有しているが、この微粒子をメッキするため、無電解メッキ法によりアルカリでエッチングを行うと、アルカリの強度の程度によってはシリコーン樹脂微粒子の表面が溶解し、凝集するという問題が発生するために、効果的なメッキ層を形成させることができなかった。そこで、シリコーン樹脂粒子が三次元網目状に架橋した構造(ポリメチルシルセスキオキサン構造)を有するシリコーン樹脂粒子の場合には、メッキ時に弱アルカリでエッチングを施すか、又はエッチングは施さず、メッキ反応の触媒としてアルカリ触媒を使用することによる方法が提案されている(特許文献3:特開2001−126532号公報)。しかし、この方法における無電解メッキ法でも、アルカリ触媒や無電解メッキ液、還元剤を使用するため、柔軟性に富むシリコーンゴム粒子では表面が溶解して凝集したり、メッキ金属のシリコーンゴム粒子との密着が不十分となり、金属が剥がれるなどの問題があった。
【0006】
【特許文献1】
特開平8−311655号公報
【特許文献2】
特開平9−22620号公報
【特許文献3】
特開2001−126532号公報
【非特許文献1】
岡村寿郎,川岸重光,神戸徳蔵,鷹野修、「無電解メッキの応用」、槇書店(1991)、p.83〜133
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーンゴム粒子の表面に貴金属が密着性よく被覆された、耐熱性があり、柔軟性に富み、安定な導電性を呈する導電性シリコーンゴム粒子、その製造方法、及びその導電性シリコーンゴム粒子が樹脂又はゴムに配合された導電材料を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンゴム粒子の表面に、スパッタリング法で該スパッタリング処理後の貴金属被覆シリコーンゴム粒子全体に対して30〜80重量%の、下地被覆層と表面層とからなる貴金属被覆層を形成することにより、シリコーンゴム粒子に貴金属が密着性よく被覆され、耐熱性があり、柔軟性に富み、安定な導電性を呈する導電性シリコーンゴム粒子が得られることを見出した。
【0009】
そして、シリコーンゴム粒子として、その分子構造中のケイ素原子の70〜99.96モル%がジメチルシロキサン単位であるシリコーンゴム粒子を使用し、貴金属の被覆方法として、物理蒸着法の中でもスパッタリング法を用いることにより、上記特性が更に向上することを知見し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記の導電性シリコーンゴム粒子、その製造方法及び導電材料を提供する。
〔1〕 平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンゴム粒子の表面に、スパッタリング法で、スパッタリング処理後の貴金属被覆シリコーンゴム粒子全体に対して30〜80重量%の貴金属被覆層が形成されてなる導電性シリコーンゴム粒子であって、
上記シリコーンゴム粒子が、(a)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを(c)白金系触媒の存在下でヒドロシリル化付加反応によりゴム状弾性体に硬化させたものであり、かつシリコーンゴム粒子を構成するシロキサン単位中の70〜99.96モル%がジメチルシロキサン単位であり、
上記貴金属被覆層が、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケルから選ばれる貴金属の下地被覆層と金の表面層とからなることを特徴とする導電性シリコーンゴム粒子。
〔2〕 シリコーンゴム粒子が、(a)成分と(b)成分をO/W型エマルジョンとしたのち硬化させて得られたものであることを特徴とする〔1〕の導電性シリコーンゴム粒子。
〔3〕 下地被覆層がニッケルであることを特徴とする〔1〕又は〔2〕の導電性シリコーンゴム粒子。
〕 〔1〕〜〔〕のいずれかに記載の導電性シリコーンゴム粒子を樹脂又はゴム組成物に配合してなることを特徴とする導電材料。
〕 (a)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを(c)白金系触媒の存在下でヒドロシリル化付加反応によりゴム状弾性体に硬化させてなり、シリコーンゴム粒子を構成するシロキサン単位中の70〜99.96モル%がジメチルシロキサン単位である、平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンゴム粒子の表面に、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケルから選ばれる貴金属の下地被覆層をスパッタリング法で形成し、更に金の表面層をスパッタリング法で形成して、スパッタリング後の貴金属被覆シリコーンゴム粒子全体に対して30〜80重量%の、上記下地被覆層と表面層とからなる貴金属被覆層を形成することを特徴とする導電性シリコーンゴム粒子の製造方法。
〕 シリコーンゴム粒子が、(a)成分と(b)成分をO/W型エマルジョンとしたのち硬化させて得られたものであることを特徴とする〔〕の導電性シリコーンゴム粒子の製造方法。
〕 下地被覆層がニッケルであることを特徴とする〔〕又は〔〕の導電性シリコーンゴム粒子の製造方法。
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明の導電性シリコーンゴム粒子は、物理蒸着法により、シリコーンゴム粒子の表面を貴金属で被覆して貴金属被覆層(導電層)を形成することにより得られる。また、本発明においては、繰り返し異種の貴金属材料を物理蒸着することによって2層以上の多層被覆を施すことも可能であり、更に被覆後に加熱、拡散処理を行なって合金皮膜とすることも可能である。
【0012】
本発明においては、物理蒸着法を用いてシリコーンゴム粒子表面に貴金属を被覆する。シリコーンゴム粉末粒子の表面に貴金属被覆層を形成する物理蒸着法としては、真空蒸着法も採用できるが、スパッタリング法を用いることが好ましい。この場合、スパッタリング法としては、粉体表面にスパッタリングによって貴金属層を形成し得る方法であればよく、粉体を流動させながら、ターゲットからの貴金属粒子を粉体表面に付着させる方法を採用することができる。具体的には、貴金属ターゲットを内部に配設した回転バレルにシリコーンゴム粒子を入れ、シリコーンゴム粒子を撹拌流動させながらスパッタされた貴金属粒子をシリコーンゴム粒子に衝突させることにより、シリコーンゴム粒子の表面を貴金属被覆層で被覆する方法が好適である。該スパッタリング法は、シリコーンゴム粒子に付着する貴金属粒子のエネルギーが大きいため、シリコーンゴム粒子と貴金属との密着性に優れる。
なお、本発明に用いるスパッタ装置は、特に限定されるものではなく、そのスパッタ方式も公知の方式を使用することができる。
【0013】
本発明の導電性シリコーンゴム粒子のコアとなるシリコーンゴム粒子は、その平均粒径が0.1μm未満では粒子の凝集性が高くなるし、流動性も低くなり、貴金属被覆しづらくなり、また100μmを超える径ではゴムやプラスチックに添加したとき、成型物の表面に凝集物のように凹凸となって現れたり、沈降を起こしたりするので、シリコーンゴム粒子の平均粒径は0.1〜100μmの範囲とすることが必要とされ、好ましい平均粒径の範囲は0.5〜50μm、より好ましい平均粒径の範囲は1〜30μmである。
なお、このシリコーンゴム粒子の平均粒径は、例えばレーザー光回折法による粒度分布測定における50%累積重量平均値(あるいはメジアン径)等として求めることができる。
【0014】
ここで、本発明に用いられるシリコーンゴム粒子としては、シリコーンゴム粒子を構成するシロキサン単位として、分子構造中に下記式(1)で示されるジオルガノシロキサンブロック(即ち、ジオルガノシロキサン単位の繰り返し構造)を有し、ゴム弾性を有するシリコーン硬化物からなるものが好ましい。
−(R1 2SiO)a− (1)
【0015】
式中、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、β−フェニルエチル基、β−フェニルプロピル基などのアラルキル基等や、これらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部を塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換したクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換1価炭化水素基、更にはエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基などの反応性基含有の有機基から選択される1種又は2種以上の炭素数1〜20、特に1〜12の1価の有機基から選択される基である。
【0016】
aは、3未満では線状オルガノポリシロキサンの特徴が十分に出ないため、内部応力低下及び潤滑性向上の効果が得られなくなる場合があるし、また、aの最大値は特に定めるものではないが、実際に5,000より大きいとシリコーンゴム微粒子の製造が困難となるために、aは3〜5,000であることが好ましく、より好ましくは10〜1,000、更に好ましくは50〜1,000である。
【0017】
上記ジオルガノシロキサン単位としては、その製造コスト、耐熱性、ゴム弾性などの点からジメチルシロキサン単位であることが好ましい。
【0018】
シリコーンゴム粒子は、上記ジオルガノシロキサン単位以外に、トリオルガノシロキシ単位、モノオルガノシルセスキオキサン単位及びシリケート単位(即ち、SiO4/2単位)を含んでいてもよいが、シリコーンゴム粒子がゴム弾性を有するためには、分子構造中のケイ素原子の50モル%以上がジオルガノシロキサン単位であることが好ましい。なお、ジオルガノシロキサン単位の上限は100モル%未満であれば特に定めるものではないが、実際に99.96モル%より大きいとシリコーンゴム微粒子の製造が困難となるために50〜99.96モル%が好ましく、更に好ましくは70〜99.8モル%である。
【0019】
このコアとなるシリコーンゴム粒子の硬化機構は、メトキシシリル基(≡SiOCH3)とヒドロキシシリル基(≡SiOH)などとの縮合反応、メルカプトシリル基(≡SiSH)とビニルシリル基(≡SiCH=CH2)とのラジカル反応、ビニルシリル基(≡SiCH=CH2)と≡SiH基との付加反応によるものなどが例示されるが、反応性、反応工程上の点からは(ヒドロシリル化)付加反応によるものとすることが好ましい。即ち、本発明においては、(a)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンを(c)白金系触媒の存在下で付加反応させて硬化させる組成物とすることが好ましい。
【0020】
上記(a)成分のビニル基含有オルガノポリシロキサンは、シリコーンゴム球状微粒子を与えるオルガノポリシロキサン組成物の主成分であり、(c)成分の触媒作用により(b)成分と付加反応して硬化する成分である。この(a)成分は、1分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個有することが必要であり、このビニル基は分子のどの部分に存在してもよいが、少なくとも分子の末端に存在することが好ましい。ビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前述したR1と同様の1価の有機基から選択されるものとすることができる。また、このものの分子構造は、直鎖状であっても分岐状であっても、更にはこれらの混合物であってもよく、本成分の分子量も特に限定されるものではないが、硬化物がゴム状弾性体となるには25℃における粘度が1cP以上、通常、1〜1,000,000cP、特に50〜100,000cPであることが好ましい。
【0021】
このような(a)成分として、具体的には、下記一般式で示されるものが挙げられる。
【化1】
Figure 0004038672
(ここで、R1は上記と同様であるが、脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。b及びcは0、1、2又は3、且つb+c=3であり、dは正数、eは0又は正数、且つ2b+e≧2である。)
【0022】
次に、上記(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(a)成分の架橋剤であり、本成分中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)が(c)成分の触媒作用により(a)成分中のビニル基と付加反応して硬化する。従って、この(b)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個(通常2〜200個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)有することが必要であり、またこの水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基は前述のR1と同様の1価の有機基から選択されるものとすることができる。この(b)成分の分子構造は特に限定されるものではなく、直鎖状、分岐状、三次元網状又は環状の何れでも、またこれらの混合物であってもよい。分子量にも特に限定はないが、(a)成分との相溶性を良好にするために、25℃の粘度を0.1〜10,000cP、特に0.5〜1,000cPとすることが好ましい。
【0023】
この(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものが用いられる。
2 fgSiO(4-f-g)/2 (2)
【0024】
上記式(2)中、R2は、脂肪族不飽和結合を除く、通常、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のケイ素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基であり、このR2における非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、へキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等が挙げられる。R2の非置換又は置換の一価炭化水素基としては、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。また、fは0.7〜2.1、gは0.001〜1.0で、かつf+gが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくは、fは1.0〜2.0、gは0.01〜1.0、f+gが1.5〜2.5である。
【0025】
一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は、通常、2〜1,000個、好ましくは3〜300個、より好ましくは4〜150個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常、0.1〜10,000mPa・s、好ましくは、0.5〜1,000mPa・s程度の、室温(25℃)で液状のものが使用される。
【0026】
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる他、下記一般式で示されるものが挙げられる。
【0027】
【化2】
Figure 0004038672
(但し、R1は上記と同様であるが、脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。mは0又は1、nは2又は3、且つm+n=3であり、pは0又は正数、qは0又は正数、且つ2m+q≧2である。)
【0028】
(b)成分の添加量は、(a)成分中のビニル基1個に対し、(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.5個未満となるような量の場合には、良好な硬化性を得にくく、また20個を超えるような量の場合には、硬化後のゴムの物理的性質が低下するおそれがあるので、ケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)が0.5〜20個、特に0.5〜5個となる量とすることが好ましい。
【0029】
また、上記(c)成分の白金系触媒は、(a)成分中のケイ素原子に結合したビニル基と、(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)とを付加反応させる触媒であり、例えば、白金担持カーボン或いはシリカ、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−リン錯体、白金配位化合物等が挙げられる。
【0030】
(c)成分の使用量は、触媒量であるが、(a)成分に対し、白金原子の重量で1ppm以下では硬化が遅くなる上、触媒毒の影響も受けやすく、一方500ppmを超えても特に硬化速度の向上等を期待することができないおそれがあり、経済性の面で好ましくないので、1〜500ppm、特に1〜100ppmとなる範囲が好ましい。
【0031】
上記(a)〜(c)成分を用いてシリコーンゴム粒子を製造する方法としては、(a)成分と(b)成分を(c)成分の存在下で反応させ、硬化させればよく、その方法に特に限定されるものではないが、例えば(a)成分と(b)成分を高温のスプレードライ中で硬化させる方法、有機溶媒中で硬化させる方法、これをエマルジョンとしたのち硬化させる方法などで行うことができる。また、更にシリコーンゴム粒子の分散性をよくするために、必要に応じ、このシリコーンゴム粒子の表面にポリオルガノシルセスキオキサン樹脂を被覆して使用することも可能である。
【0032】
本発明において、シリコーンゴム粒子の表面を被覆して貴金属被覆層(導電層)を形成する貴金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル等が挙げられるが、耐熱性や化学的安定性などの点から、表面層は金であることが好ましい。
【0033】
シリコーンゴム粒子に対する貴金属被覆量は、優れた導電性を確保する上から貴金属被覆後のシリコーンゴム粒子全体に対して30〜80重量%の範囲である。貴金属被覆量が30重量%に満たないと、シリコーンゴム粒子の表面を覆う貴金属被覆層が薄すぎて不均一になりやすく、導電性は確保できない。逆に80重量%を超える被覆量では、シリコーンゴム粒子の表面に形成された貴金属被覆層が厚くなって導電性粒子の弾性が大きくなり、コア材となるシリコーンゴム粒子のゴム弾性の効果が失われてしまう上、原料コストが高くなる
【0034】
本発明の導電性シリコーンゴム粒子を用いて、導電材料を作製することができる。例えば、上記導電性シリコーンゴム粒子をエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、PET樹脂、PBT樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等の有機樹脂や、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコーンゴム、(メタ)アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム等の有機ゴム硬化物及びこれらの硬化前のゴム組成物などに配合すると、低弾性で優れた導電材料を作製することができる。
【0035】
この導電材料は、導電ペースト、上下導通用接着剤、異方性導電接着剤、電磁波シールド用の導電材等として使用することができるが、これらのみに限定されるものではなく、導電性微粒子を使用して作製される導電材料であれば如何なるものであってもよい。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、スパッタリング等の物理蒸着を被覆法として採用することにより、プラズマで高エネルギー状態に励起された貴金属原子によって、従来メッキが困難であったシリコーンゴム粒子の表面に、密着した貴金属被覆層を形成することができる。従って、本発明の導電性シリコーンゴム粒子は、シリコーンゴムが本来有する優れた柔軟性や弾力性と優れた導電性とを兼備する。
【0037】
特に、シリコーンゴム粒子として、その分子構造中のケイ素原子の50モル%以上がジオルガノシロキサン単位、好ましくはジメチルシロキサン単位であるシリコーンゴム粒子を使用し、貴金属の被覆方法として、物理蒸着法の中でもスパッタリング法を用いることにより、上記特性は著しく向上する。
【0038】
従って、この導電性シリコーンゴム粒子を用いて作製された導電材料を、導電ペーストなどに使用する場合、柔軟性を有するため、基材を傷つけることがなく、また異方性導電接着剤に使用する場合、熱圧着時に適度につぶれて良好な導電性を確保することができる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、粘度は25℃における値を示す。
【0040】
シリコーンゴム粒子の調製
[調製例1]
下記式
【化3】
Figure 0004038672
で示される粘度が600cPのメチルビニルシロキサン500gと、下記式
【化4】
Figure 0004038672
で示される粘度が30cPのメチルハイドロジェンポリシロキサン20gを、1リットルのガラスビーカーに仕込み、ホモミキサーを用いて2,000rpmで撹拌混合したのち、ポリオキシエチレン(付加モル数=9モル)オクチルフェニルエーテル1g、水150gを加えて6,000rpmで撹拌を継続したところ、転相が起り、増粘が認められたが、更にそのまま2,000rpmで撹拌を行ないながら水329gを加えたところ、O/W型エマルジョンが得られた。
【0041】
次いで、このエマルジョンを錨型撹拌翼による撹拌装置の付いたガラスフラスコに移し、室温(25℃)で撹拌下に塩化白金酸−オレフィン錯体のトルエン溶液(白金含有量0.05%)1gとポリオキシエチレン(付加モル数=9モル)オクチルフェニルエーテル1gの混合物を添加し、12時間反応を行ったところ、分散液が得られ、この分散液中の粒子の平均粒径をコールターカウンター(コールターエレクトロニクス社製)を用いて測定したところ、15μmであった。この分散液を室温乾燥したところ、弾性のある白色のゴム粉末(以下、ゴム粒子−1という)が得られた。なお、このゴム粒子−1を構成するシロキサン単位中の96モル%がジメチルシロキサン単位であった。
【0042】
[調製例2]
前記した調製例1におけるO/W型エマルジョン作製時に使用したポリオキシエチレン(付加モル数=9モル)オクチルフェニルエーテル1gを5gとしたほかは調製例1と同様に処理したところ、分散液(シリコーンゴム粒子水分散液−2)が得られたので、この分散液中の粒子の平均粒径を調べたところ、3μmであった。またこの分散液数gを風乾したところ、弾性のある白色のゴム粉末が得られた。
【0043】
更に、3リットルのガラスフラスコに水2,290g、前述のシリコーンゴム粒子水分散液−2を580g、アンモニア水(濃度28重量%)60gを仕込み、水温を10℃とし、翼回転数200rpmの条件で錨型撹拌翼により撹拌を行なった。このときの液のpHは11.2であった。この液にメチルトリメトキシシラン65gを20分かけて滴下し、この間液温を5〜15℃に保ち、更に4時間撹拌を行なったのち55〜60℃まで加熱し、引続き1時間撹拌を行ない、得られた液を加圧ろ過器を用いて水約30%のケーキ状物とした。
【0044】
次いで、このケーキ状物を熱風循環乾燥機中で105℃の温度で乾燥し、乾燥物をジェットミルで解砕した。得られた微粒子(以下、ゴム粒子−2という)を光学顕微鏡で観察したところ、これは球状微粒子であることが確認された。また、界面活性剤を用いて水に分散させてその平均粒径をコールターカウンターを用いて測定したところ、3μmであった。なお、このゴム粒子−2を構成するシロキサン単位中の88モル%がジメチルシロキサン単位であった。
【0045】
参考例1]
上記ゴム粒子−1に金を被覆した。ここで、金被覆は、特許第2909744号公報に記載のあるような装置で行なった。その略図を図1に示す。また、図2は図1のII−II線にそった断面を示す同様の図面である。
装置の要部は、減圧加熱処理室1、回転式バレル型スパッタリング室2、流体ジェットミル3及び粉末フィルター付捕集器4からなる。減圧加熱処理室1は、電気抵抗加熱される容器であって、フィルター5を介して主排気系6および高度排気系7に連通する。減圧加熱処理室1は減圧加熱処理した微粉末8を回転式バレル型スパッタリング室2に送入する導管10へ落下させるためのスクリューフィーダー9とこれを回転するモーター40を備えている。回転式バレル型スパッタリング室2は、図2に示されるようにボールミルのような構造の回転円筒体であって、支持ロール13と回転モーター14とベルト15によって回転させられ、また制御される。その一方の側壁には、回転軸として機能する軸受機構30を介してシャフト12が挿入され、その先端にターゲット50が対峙して保持されている。また、反対側の側壁からは、回転軸として機能する同様の軸受機構30を介して前記減圧加熱処理室1に連通する前記導管10が挿入され、これは不活性ガス送入パイプ19、排気系6,7に連通している。なお、減圧加熱処理室1と流体ジェットミル3は、回転式バレル型スパッタリング室2を介して連結するが、その導管10と11には弁121および122を備えている。流体ジェットミル3は、モーター20によって高速回転するプロペラ21が備えられている。流体ジェットミル3の排出側は、弁22を備えた微粉末循環パイプ23に連通し、更に減圧加熱処理室1に連通する。この微粉末循環パイプ23の弁22の下部側から弁24を備えた分岐管により粉末フィルター付捕集器4に連通する。この粉末フィルター付捕集器4は円筒形フィルター25を介して排気系26に連なっている。
【0046】
まず、シリコーンゴム粒子−1 500gを回転式バレル型スパッタリング室2に投入し、次いで減圧加熱処理室1を2×10-2Torrに減圧し、弁121を閉じ、弁122を解放して、減圧加熱処理室1とスパッタリング室2との連絡を遮断した後、アルゴンガスを不活性ガス送入パイプ19より徐々に送入することによって流体ジェットミル3に搬送し、流体ジェットミル3を使用してシリコーンゴム粒子−1を一次粒子に分散し、これを減圧加熱処理室1に捕集した。捕集した微粉末を2×10-2Torrに減圧しつつ、ヒーターで200℃に加熱して、乾燥及び脱ガスを30分間行った。次に、あらかじめアルゴンガスで置換された後に脱気された回転式バレル型スパッタリング室2に微粉末を移送した。移送後、回転式バレル型スパッタリング室2を回転数5rpmで回転しつつ、金ターゲットを使用し、2×10-2Torrの減圧下で二極方式マグネトロン方式によるスパッタリング(電力3kW×2個、周波数13.56MHz)を開始した。1時間でスパッタリング処理後のシリコーンゴム粒子全体の約10重量%の金が被覆できた。スパッタリングを中止して、前述の流体ジェットミル3により分散及び減圧加熱処理を行った後、再び回転式バレル型スパッタリング室2に移送し、金のスパッタリングを1時間行った。この工程を5回繰り返して金を被覆した。スパッタリングによる被覆作業終了後は、不活性ガス送入パイプ19を通して回転式バレル型スパッタリング室2にアルゴンガスを導入しつつ、微粉末を含むアルゴンガス流を粉末フィルター付捕集器4に送り込んで、金被覆済みのシリコーンゴム粉末を得た。
【0047】
参考例2〜4、実施例
表1に示すコア材及び貴金属ターゲットを用いて参考例1と同様の方法で各種貴金属被覆シリコーンゴム粉末を製造した。なお、実施例においては、下地被覆層として最初にニッケル層を被覆したシリコーンゴム粉末を製造し、次いでこのニッケル被覆シリコーンゴム粉末の表面に金の被覆層を形成したシリコーンゴム粉末を製造した。
【0048】
[比較例1]
シリコーンゴム粒子−1を5重量%苛性ソーダ水溶液に投入分散し、50℃で10分間攪拌して、エッチングした後、酢酸で中和し、濾過、洗浄を行い、更に1重量%ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ水溶液に投入分散し、40℃で3分間攪拌して表面調整を行った。次に、これを濾過、洗浄した後、アミン錯塩系アルカリキャタリスト(商品名「OPC−50インリューサ」、奥野製薬社製)液に分散し、攪拌しながら触媒を吸着させ、ジメチルアミノボランを添加して、25℃で3分間還元した。
【0049】
次に、これを濾過、洗浄し、水に分散した後、無電解銅メッキ液(商品名「化学銅500」、奥野製薬社製)を添加して、40℃で7分間攪拌して、銅メッキを行ったが、シリコーンゴム粒子の溶解と凝集が発生して、表面が銅メッキされたシリコーンゴム粒子は得られなかった。
【0050】
上記で得られた導電性シリコーンゴム粒子の貴金属量と抵抗率を下記の方法により測定した。これらの結果を表1に併記する。
【0051】
《貴金属量の定量法》
導電性シリコーンゴム粒子の貴金属量は、導電性シリコーンゴム粒子をフッ素混酸(HF/HClO4)中、300℃で処理してシリコーン分を除去した後、硝酸で金属成分を再溶解させ、ICP分析(Shimadzu ICPS−1000)で貴金属の定量を行った。
【0052】
《抵抗率の測定法》
導電性シリコーンゴム粒子の抵抗率は、4端子をもつ円筒状のセルに導電性シリコーンゴム粒子を充填し、両末端の面積0.2cm2の端子からSMU−257(ケースレ社製電流源)より1〜10mAの電流を流し、円筒の中央部に0.2cm離して設置した端子から2000型ケースレ社製ナノボルトメーターで電圧降下を測定することで求めた。
【0053】
【表1】
Figure 0004038672
【0054】
【図面の簡単な説明】
【図1】スパッタリング装置の一側面を示す概略図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面の概略図である。
【符号の説明】
1 減圧加熱処理室
2 回転式バレル型スパッタリング室
3 流体ジェットミル
4 粉末フィルター付捕集器
5 フィルター
6 主排気系
7 高度排気系
8 減圧加熱処理した微粉末
9 スクリューフィーダー
10,11 導管
121,122 弁
13 支持ロール
14 回転モーター
15 ベルト
18 微粉末の流動層
19 不活性ガス送入パイプ
20 モーター
21 プロペラ
22 弁
23 微粉末循環パイプ
24 弁
25 円筒形フィルター
26 排気系
40 モーター
50 ターゲット

Claims (7)

  1. 平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンゴム粒子の表面に、スパッタリング法で、スパッタリング処理後の貴金属被覆シリコーンゴム粒子全体に対して30〜80重量%の貴金属被覆層が形成されてなる導電性シリコーンゴム粒子であって、
    上記シリコーンゴム粒子が、(a)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを(c)白金系触媒の存在下でヒドロシリル化付加反応によりゴム状弾性体に硬化させたものであり、かつシリコーンゴム粒子を構成するシロキサン単位中の70〜99.96モル%がジメチルシロキサン単位であり、
    上記貴金属被覆層が、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケルから選ばれる貴金属の下地被覆層と金の表面層とからなることを特徴とする導電性シリコーンゴム粒子。
  2. シリコーンゴム粒子が、(a)成分と(b)成分をO/W型エマルジョンとしたのち硬化させて得られたものであることを特徴とする請求項1記載の導電性シリコーンゴム粒子。
  3. 下地被覆層がニッケルであることを特徴とする請求項1又は2記載の導電性シリコーンゴム粒子。
  4. 請求項1乃至のいずれか1項に記載の導電性シリコーンゴム粒子を樹脂又はゴム組成物に配合してなることを特徴とする導電材料。
  5. (a)ビニル基含有オルガノポリシロキサンと(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとを(c)白金系触媒の存在下でヒドロシリル化付加反応によりゴム状弾性体に硬化させてなり、シリコーンゴム粒子を構成するシロキサン単位中の70〜99.96モル%がジメチルシロキサン単位である、平均粒径が0.1〜100μmのシリコーンゴム粒子の表面に、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケルから選ばれる貴金属の下地被覆層をスパッタリング法で形成し、更に金の表面層をスパッタリング法で形成して、スパッタリング後の貴金属被覆シリコーンゴム粒子全体に対して30〜80重量%の、上記下地被覆層と表面層とからなる貴金属被覆層を形成することを特徴とする導電性シリコーンゴム粒子の製造方法。
  6. シリコーンゴム粒子が、(a)成分と(b)成分をO/W型エマルジョンとしたのち硬化させて得られたものであることを特徴とする請求項記載の導電性シリコーンゴム粒子の製造方法。
  7. 下地被覆層がニッケルであることを特徴とする請求項又は記載の導電性シリコーンゴム粒子の製造方法。
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