JP4038038B2 - トロポロン化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、抗菌、抗カビ剤又は合成中間体として有用なトロポロン化合物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トロポロン化合物の合成法は種々知られている。その中で、下記式(1)
【0003】
【化1】
【0004】
で表される7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物を塩基と水および有機溶媒の存在下に分解してトロポロン化合物を製造する方法(以下、加溶媒分解反応という。)は、原料が入手しやすく工程数も少ないので、工業的に実施する上で有利な方法である。従来技術では、7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物に対して大過剰の水を反応系中に存在させ、親水性溶媒でこれらを均一混合して加溶媒分解反応を実施していた。
【0005】
しかし、この加溶媒分解反応は副生成物が多く、収率が低いという問題があった。例えば特公昭51−33901号公報には、7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物、酢酸、酢酸ナトリウム、水の混合溶液を還流させることによりトロポロン化合物を得る方法が記されているが、収率は50%前後と低い。また該合成法で得られた粗トロポロン化合物含有の溶液中には副生成物が多く、極めて煩雑な精製を必要とする。特開平08−40971号公報には、アセトン、酢酸、トリエチルアミン、水の混合溶媒中での加溶媒分解反応が記されているが、これも収率は43%と低い。特開2001−97917号公報では7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物を含む親水性有機溶媒−有機酸―水の混合溶媒液にトリエチルアミンを滴下して反応を実施する方法が記載されている。該公報では7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物に対する水のモル比は下限が1.0倍モル以上で、上限については特に制限はなく、実施例には7.0倍モルおよび20.0倍モルのみについての記載がされている。実施例によると、トロポロン化合物の収率は71.2〜85.8%である。最高収率は7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物に対し20倍モルの水を用いた実施例10の85.8%であり、かなり向上しているが、更なる収率向上が望まれていた。しかし該反応は4員環の開環を含んだ複雑な反応である。そのため、これ以上の収率を出すことは極めて困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、トロポロン化合物を従来法よりも高収率で合成し、かつ副生成物を低減する製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前期課題を解決するため鋭意検討した結果、7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物を塩基と水および有機溶媒の存在下に分解してトロポロン化合物を製造する方法において系中の水分量をある適正範囲に制限することでさらに高い反応収率を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は(1)7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物を塩基と水および有機溶媒の存在下に分解するトロポロン化合物の製造方法であって、反応系中の水分量が、7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物に対し1.0〜5.0mol倍であることを特徴とするトロポロン化合物の製造方法。
(2)有機溶媒が疎水性溶媒であることを特徴とする(1)のトロポロン化合物の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明につき好ましい態様を具体的に説明する。
本発明の製造方法においては、反応系中の水分量が7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物に対し1.0〜5.0mol倍であることが必須要件である。好ましくは1.2〜4.0mol倍である。1.0mol倍未満では化学量論的にも水が不足しており、トロポロン化合物の収率が低下する。また5.0mol倍を超える場合は、副反応が起こりやすくなり収率が低下する。
【0010】
加溶媒分解反応は7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物からの塩素引き抜きが引き金となって起こるといわれており、塩素受容体として塩基が使われる。またトロポロン化合物のヒドロキシ基源として水の存在が必須である。しかし、水の量が多過ぎると副反応が顕著になり、主反応の収率が低下することは、本発明者らが見出した驚くべき事実であり、本発明の根幹をなすものである。本発明は、反応系中の水の量を適正範囲に抑える事により副反応の進行を抑制し反応収率を向上させるものである。
【0011】
本発明でいう7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物、トロポロン化合物とは、それぞれ式(2)、(3)で表される。
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
ただし、R1、R2およびR3は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素、または直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基を表し、直鎖状または分岐状を問わない。また不飽和結合が含まれていてもかまわない。また酸素、ケイ素、ハロゲンなどのヘテロ原子が含まれていてもかまわない。
【0015】
アルキル基としては例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、 1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−メチルー2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。アルケニル基としては一般式―CH=CR4R5で表され、アルキニル基としては一般式―CH≡C−R4で表される。R4、R5は、それぞれ同一でも異なってもよく、水素または炭化水素基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、 1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−メチルー2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペンテンー1−イル、2−シクロペンテンー1−イル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキセンー1−イル、2−シクロヘキセンー1−イル、3−シクロヘキセンー1−イル、1,3−シクロヘキサジエンー1−イル、2,4−シクロヘキサジエンー1−イル、シクロヘプチル、1−シクロヘプテンー1−イル、2,4−シクロヘキサジエンー1−イル、シクロヘプチル、1−シクロヘプテンー1−イル、2−シクロヘプテンー1−イル、3−シクロヘプテンー1−イル、4−シクロヘプテンー1−イル、シクロオクチル、1−シクロオクテンー1−イル、2−シクロオクテンー1−イル、シクロノニル、シクロデシルなどが挙げられる。また酸素が含まれるものとしては、今まで述べた基に一般式―OR6や―COOR7で表される置換基を有するものが挙げられる。R6やR7はそれぞれ同一でも異なってもよく、水素または炭化水素であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、 1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、2−プロペニル、2−メチルー2−プロペニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニルなどが挙げられる。また今まで述べた基にケイ素やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲンが含まれていてもかまわない。
【0016】
前記式(3)で表されるトロポロン類で、4位にイソプロピル基を有する4−イソプロピルトロポロン(β―ツヤプリシン、別名ヒノキチオール)、4位にイソプロペニル基を有するβ―ドラブリン、3位にイソプロピル基を有するα―ツヤプリシン、5位にイソプロピル基を有するγ―ツヤプリシンは、青森ヒバや台湾ヒノキの精油中に含まれる天然物であり、その安全性の高さと抗菌・防黴などの優れた性質をもつことから有用性が高く広く用いられている物質である。中でも、4−イソプロピルトロポロン(以下、ヒノキチオールという。)は、上記精油中に最も多く含まれる成分の一つであり、天然抽出物を端緒として用途が広がり、近年では化学合成品が主流となって様々な分野で利用されている。この化学合成品のほとんどが前記の化学合成法によるものである。本発明を用いると、加溶媒分解反応の収率向上で化学合成品をより多量に得ることができるようになり、かつ副生成物の生成が抑制されるため精製をより容易にできる。このことは本発明の有用性を顕著に示している。
【0017】
本発明の製造方法において、反応温度は20℃から、その系における還流温度が好ましい。
本発明の製造方法においては、均一系で反応を実施することが好ましいが、2相以上の相分離状態で反応を実施してもかまわない。
本発明における水分量とは、反応開始時における反応系中の総水分量のことであり、使用する溶媒中に含まれる水分も考慮しなければならない。溶媒に疎水性溶媒を用いて2相系となる場合は、実際の反応が起こる有機相中の水分量が本発明の必須条件の範囲に入っていればよい。
【0018】
本発明で用いる塩基は、酢酸―酢酸カリウム―水、酢酸―酢酸ナトリウム―水のような緩衝溶液か有機アミンを用いるのが好ましい。なかでも有機アミンを用いると反応速度が速く好ましい。有機アミンとしては入手が容易なトリエチルアミンを用いるのが好ましい。また有機アミンを用いる場合、一括に仕込むよりも滴下することが好ましい。用いる塩基の量は7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物に対し、2.0〜14.0mol倍が好ましい。さらに好ましくは5.0〜10.0mol倍である。2.0mol倍以上であれば、十分に脱塩素が起こり収率が高い。一方、14.0mol倍以下であれば、生成したトロポロン化合物と過剰の塩基により形成した塩を中和するのに大量の酸を要しない。
【0019】
本発明において、ギ酸、酢酸またはプロピオン酸の群から選ばれる少なくとも1種からなる有機酸や、鉱酸(例えば塩酸や硫酸)を単独もしくは混合して添加することが好ましい。酸の添加量は特に制限はない。ただし、酸のモル量が塩基よりも多い場合、反応速度が著しく低下するため、あらかじめ添加する酸の総モル量は、使用する塩基の総モルよりも少ないほうが好ましい。
【0020】
本発明では溶媒を用いる場合の溶媒の種類には特に制限はなく、反応系中の水分量が本発明の必要条件範囲内であれば疎水性有機溶媒、親水性有機溶媒のどちらか、もしくはその混合溶媒でもかまわない。本発明における疎水性溶媒とは、常温で溶媒100gに対し水が1g以下しか相互溶解しないものをいい、例えば、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。また、本発明における親水性溶媒とは、常温で溶媒100gに対し水が1gよりも多く相互溶解するものをいい、例えばアセトン、メチルエチルケトン、エタノール、メタノール、ターシャリーブチルアルコール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジオキサン、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
【0021】
これらの溶媒を単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。ただし、使用する溶媒の沸点は30℃〜200℃の範囲のものが好ましい。通常、反応は常圧で行うため、沸点が30℃未満では反応温度が低くなり反応終了に時間を要する傾向があり、また溶媒が系外へ揮発しやすい。一方、200℃を越えると溶媒の除去が困難になる傾向がある。使用する溶媒の量は特に制限はなく、7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物の初期濃度も特に制限はないが、加溶媒分解反応では塩が生成するため、あまり溶媒が少ないと析出した塩により良好な攪拌条件を維持しづらくなる。また、7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物の初期濃度は、溶媒の留去の容易性から1.0wt%以上が好ましい。また、反応の後処理において、反応で副生する塩を取り除くには有機相中からの水による塩の抽出が最も簡便で効果的である。しかし反応に親水性溶媒を用いた場合、水を加えるだけでは相分離が起こらず、反応に用いた親水性溶媒を留去するか、疎水性溶媒を大量に加えなければ液―液抽出が困難である。一方、反応に疎水性溶媒を用いた場合は、水を加えるだけで相分離が起こり液―液抽出を容易に行える。そのため、溶媒留去の省略や使用する溶媒の種類を減じることができる。このことは疎水性溶媒を用いて反応を実施することの大きなメリットである。本発明は、従来法に比べ反応系中の水分量が大幅に低い領域で反応を実施するので、疎水性溶媒をも使用できるところに実用上のもうひとつの優位性がある。
【0022】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の例によってなんら限定されるものではない。
測定機器の分析条件を次に示す。
<分析装置>
ガスクロマトグラフ
装置:島津製作所GC−14A、島津製作所クロマトパックCR−4A
カラム:J&Wサイエンティフィック社キャピラリーカラムDB−1(長さ30m×内径0.25mm、液相膜厚0.25μm)
温度条件:カラム100℃×2分→250℃(10℃/分)
注入口250℃、検出器300℃(FID)
【0023】
【実施例1】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン84.54g(純度68.6wt%、264.7mmol)に対し、18倍モルのターシャリーブチルアルコール(354.85g)、6倍モルの酢酸(95.97g)、2倍モルの水(9.62g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(188.43g)を2時間かけて滴下した。還流温度を保ったまま、さらに3時間攪拌した。その後、反応液に濃塩酸(37.5g)、水(532.24g)を加えターシャリーブチルアルコールを減圧で留去した。留去終了後、45℃に冷却しトルエン(683.97g)を加えて10分間攪拌した。その後10分間静置して有機層と水層を分離させた後、反応器底端から水層を抜き出し、続けて有機層を抜き出して4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)を含むトルエン溶液723.2g(ヒノキチオール濃度5.4wt%)を得た。ヒノキチオールの収率は90%であった。
【0024】
【実施例2】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン84.85g(純度68.6wt%、265.7mmol)に対し、18倍モル比のターシャリーブチルアルコール(355.71g)、6倍モルの酢酸(96.09g)、水分量が2倍モルになる量の濃塩酸(含量36wt%、14.94g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(188.61g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに3時間攪拌した。その後、反応液に濃塩酸(33.04g)、水(469.34g)を加えターシャリーブチルアルコールを減圧で留去した。留去終了後、45℃に冷却しトルエン(343.03g)を加えて10分間攪拌した。その後10分間静置して有機層と水層を分離させた後、反応器底端から水層を抜き出し、続けて有機層を抜き出して4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)を含むトルエン溶液377.96g(ヒノキチオール濃度10.95wt%)を得た。ヒノキチオールの収率は95%であった。
【0025】
【実施例3】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン15.91g(純度75.0wt%、54.5mmol)に対し、18倍モルのターシャリーブチルアルコール(72.67g)、6倍モルの酢酸(19.55g)、1.2倍モルの水(1.22g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(38.90g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに3時間攪拌した。その後、塩酸(22.33g)、水(122.07g)をヘキサン(158.54g)を加えて5分間攪拌した。その後5分間静置して有機層と水層を分離させた後、水層を抜き出したのちに有機層を抜き出した。水層を再び容器に戻しヘキサン(158.88g)を加えて5分間攪拌した。その後5分間静置して有機層と水層を分離させた後、水層を抜き出したのちに有機層を抜き出した。先の有機層と合わせて4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)のヘキサン溶液408.64g(ヒノキチオール濃度1.97wt%)を得た。ヒノキチオールの収率90%であった。
【0026】
【実施例4】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン84.47g(純度68.6wt%、264.5mmol)に対し、18倍モルのターシャリーブチルアルコール(407.95g)、6倍モルの酢酸(96.12g)、4倍モルの水(19.04g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(188.57g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに3時間攪拌した。その後、塩酸(38.34g)、水(454.04g)を加えターシャリーブチルアルコールを減圧で留去した。留去終了後、45℃に冷却しトルエン(341.17g)を加えて10分間攪拌した。その後10分間静置して有機層と水層を分離し、4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)のトルエン溶液375.76g(ヒノキチオール濃度10.5wt%)を得た。ヒノキチオールの収率は92%であった。
【0027】
【実施例5】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン99.78g(純度57.5wt%、261.8mmol)に対し、13倍モルのトルエン(316.09g)、9倍モルの酢酸(141.89g)、2倍モルの水(9.32g)を加え還流温度に保ち、そこに10倍モルのトリエチルアミン(266.21g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに4時間攪拌した。その後、塩酸(53.86g)、水(315.73g)を加え10分間攪拌した。その後10分間静置して有機層と水層を分離し、4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)のトルエン溶液345.08g(ヒノキチオール濃度11.70wt%)を得た。ヒノキチオールの収率は94%であった。
【0028】
【実施例6】
7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン99.80g(純度86.0wt%、484.6mmol)に対し、9.3倍モルのトルエン(417.04g)、6倍モルの酢酸(174.60g)、5倍モルの水(43.62g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(343.26g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに4時間攪拌した。その後、トルエン(151.81g)、塩酸(99.65g)、水(582.82g)を加え10分間攪拌した。その後10分間静置して有機層と水層を分離し、トロポロンのトルエン溶液653.77g(トロポロン濃度9.70wt%)を得た。トロポロンの収率は94%であった。
【0029】
【比較例1】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン14.91g(純度89.7wt%、61.4mmol)に対し、20倍モルのターシャリーブチルアルコール(96.89g)、6倍モルの酢酸(22.31g)、40倍モルの水(44.27g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(43.52g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに3時間攪拌した。その後、塩酸(22.03g)、水(97.78g)を加えて5分間攪拌した。その後5分間静置して有機層と水層を分離させた後、水層を抜き出したのちに有機層を抜き出した。水層を再び容器に戻しヘキサン(133.56g)で抽出し、ヘキサン(106.52g)を加えて5分間攪拌した。その後5分間静置して有機層と水層を分離させた後、水層を抜き出したのちに有機層を抜き出した。先の有機層と合わせて4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)のヘキサン溶液333.77g(ヒノキチオール濃度2.41wt%)を得た。ヒノキチオールの収率は80%であった。
【0030】
【比較例2】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン84.39g(純度68.6wt%、264.2mmol)に対し、18倍モルのターシャリーブチルアルコール(354.87g)、6倍モルの酢酸(96.24g)、20倍モルの水(95.78g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(188.49g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに3時間攪拌した。反応液に濃塩酸(37.57g)、水(532.69g)を加えたあと、ターシャリーブチルアルコールを減圧で留去した。留去終了後トルエン(588.04g)を該溶液に加えて10分間攪拌した。その後10分間静置して有機層と水層を分離させて4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)のトルエン溶液625.81g(ヒノキチオール濃度5.75wt%)を得た。ヒノキチオールの収率は83%であった。
【0031】
【比較例3】
7,7−ジクロロ−3−(1−メチルエチル)−ビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン69.98g(純度68.6wt%、219.2mmol)に対し、18倍モルのトルエン(363.10g)、6倍モルの酢酸(80.11g)、0.9倍モルの水(3.56g)を加え還流温度に保ち、そこに7倍モルのトリエチルアミン(155.85g)を2時間かけて滴下し、還流温度を保ったまま、さらに4時間攪拌した。反応液に濃塩酸(32.02g)、水(366.20g)を加えて10分間攪拌した。その後10分間静置して有機層と水層を分離させて4−イソプロピルトロポロン(ヒノキチオール)のトルエン溶液404.06g(ヒノキチオール濃度 6.23wt%)を得た。ヒノキチオールの収率は70%であった。
【0032】
【発明の効果】
本発明により、抗菌・抗カビ剤又は合成中間体として有用なトロポロン化合物を従来にない高収率で合成できる製造方法を提供することが可能となる。
Claims (2)
- 7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物を塩基と水および有機溶媒の存在下に分解するトロポロン化合物の製造方法であって、反応系中の水分量が、7,7−ジクロロビシクロ[3.2.0]ヘプト−2−エン−6−オン化合物に対し1.0〜5.0mol倍であることを特徴とするトロポロン化合物の製造方法。
- 有機溶媒が疎水性溶媒であることを特徴とする請求項1記載のトロポロン化合物の製造方法。
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