JP4036984B2 - タイヤ滑り止め装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、非金属製の長尺ネット状成形体からなるタイヤ滑り止め本体の長手方向両端のジョイント部が、タイヤ周上でつき合わされて連結・装着されるタイヤ滑り止め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用タイヤ等に装着して使用される非金属製タイヤ滑り止め装置のなかで乗用車用としては、長尺ネット状体に成形されたタイヤ滑り止め本体を備えたものが最近の主流製品とされている。
【0003】
この種のタイヤ滑り止め本体は、ネット状に編成した補強芯材の周りにゴム・合成樹脂等の被覆材を設けた長尺体を加熱して所定形状・寸法のものに成形されており、その長手方向の両端部分には、タイヤ周上でつき合わせて環状に連結するためのジョイント部が形成されている。
【0004】
上記タイヤ滑り止め本体がタイヤに装着されたときは、タイヤ滑り止め本体のタイヤインナー側の周縁とタイヤアウター側の周縁とが夫々非伸長ロープ、ゴムバンド等の締付用具によりタイヤ中心方向に対して緊締され、タイヤ外周面に密着した状態となるようにしてある。
【0005】
ところが、タイヤに装着されたタイヤ滑り止め本体は、車両の走行速度が高速になるにしたがって、タイヤの回転に伴って発生する遠心力が増大するため、タイヤ外周面から半径方向外方へ浮き上がる膨らみ現象が生じるようになる。このようにして生じるタイヤ外周面からのタイヤ滑り止め本体の浮き上がりは、タイヤ全周において観察されるが、膨らみ量はタイヤ滑り止め本体の全長(タイヤ外周面の全周長)に亘って一定ではなく、タイヤ周上でつき合わせ連結された長手方向両端のジョイント部における膨らみ量が最大となる。このような膨らみ量が許容限度を超えると、タイヤ滑り止め本体の車体との干渉、さらには車体との接触による損傷・破壊に至るおそれがあり、車両の高速性能を妨げる要因となる。とくに近年においては車両スペースの利用効率の向上を理由としてサスペンション部分の容積を狭く設計する車両が増加しているところから、上記のようなタイヤ滑り止め本体の膨らみ量を可能な限り低減することが、より一層要請されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記のように、補強芯材の周りにゴム・合成樹脂等の被覆材を設けてネット型に成形された長尺体の長手方向両端部分がジョイント部とされたタイヤ滑り止め本体を備え、タイヤ周上で上記ジョイント部をつき合わせ連結して装着されるタイヤ滑り止め装置において、車両が高速で走行しても、タイヤの回転に伴って生じる遠心力によりタイヤ滑り止め本体がタイヤの外周面から浮き上がるのを抑制して、上記ジョイント部でのタイヤ半径方向外方への膨らみ量が許容限度以下となるように低減することを課題とする。
【0007】
この発明が採用した手段は、前記タイヤ滑り止め本体のジョイント部に該ジョイント部におけるネット型補強芯材の芯材部分とは別個の追加芯材を、ネット型補強芯材と非結合状態で配設したことである
【0008】
この手段によれば、タイヤ滑り止め本体のジョイント部における曲げ剛性が高くなり、タイヤ周上で高速回転による遠心力を受けても、ジョイント部はタイヤ外周面から凸型に膨らむのを抑制され、全体的に平らな形状を保って膨らむので、膨らみ量の絶対値を低減させることができる。
【0009】
この発明において、前記ジョイント部の追加芯材のタイヤ滑り止め本体の幅方向の長さは、タイヤの接地幅に対して90〜120%の範囲内周側に設定するのが好ましい。また、追加芯材は、前記被覆材に対して1×10倍以上のヤング率を有する金属繊維または合成繊維からなるコードあるいはワイヤーからなるものを用いるのが好ましい。
【0010】
このようにジョイント部の追加芯材の配設長さおよびその素材のヤング率や材質などを限定したものでは、タイヤ外周面からのジョイント部の膨らみ量を低減させる作用が最も大きくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明のタイヤ滑り止め本体10の一例を展開して示す平面図であり、長手方向両端部分を互いにつき合わせ対向させた状態としてある。
【0012】
タイヤ滑り止め本体10は、高張力合成繊維等の補強芯材の周りにゴム・合成樹脂等の被覆材を設けた線状材を用いてネット型の構造をもつ長尺体に編成した後に、加硫成形したものである。このタイヤ滑り止め本体10の長手方向の両側の側縁には、それぞれ所定間隔をおいて対向する位置に幅方向外側へ突出するフック係止部11,12が形成され、長手方向の両端には、幅方向にほぼ平板状に延びるジョイント部17,18が形成されている。
【0013】
上記タイヤ滑り止め本体10の長手方向の一方の側縁(インナー側)のフック係止部11には、図示を省略した非伸長ロープが止着されるフック13をかしめて取り付け、長手方向の他方の側縁(アウター側)のフック係止部12に取り付けたフック14には、適宜の締付具、たとえば単体のゴムバンド、あるいは非伸長ベルトとゴムバンドとからなる締付バンドにワンウェイバックルが組み付けられたもの(何れも図示を省略)を掛け止めするようになっている。
【0014】
上記のように構成されたタイヤ滑り止め本体10において、各ジョイント部17,18を構成する芯材として、本来のネット型補強芯材の芯材部分とは別個の追加芯材17a,18aが設けてある。図示を省略したネット型補強芯材の各ジョイント部17,18における芯材部分は、各ジョイント部17,18の長手方向(タイヤ滑り止め本体10の幅方向)に平行に配設されているが、上記追加芯材17a,18aは該ネット型補強芯材の芯材部分と並列に配設し、かつ長さ方向の全長に亘ってネット型補強芯材と結合されることのない単体の部材としてある。
【0015】
上記各ジョイント部17,18に配設する追加芯材17a,18aのタイヤ滑り止め本体10の幅方向の長さLは、後述する図2に示すようにタイヤ20に装着された状態において、タイヤ20の接地幅に対し90〜120%の範囲となるように設定するのが好ましい。このように追加芯材の配設長さを数値限定した理由は次の通りである。
【0016】
近年、乗用車用タイヤはラジアル化が進み、これが主流とされているので、タイヤのトレッド部(タイヤが路面と接触する路面)の断面形状は、路面と平行になっている。したがって、タイヤ滑り止め装置をタイヤに装着する際、タイヤ滑り止め本体をタイヤに対してより強く密着させるためには、タイヤ滑り止め本体は、タイヤのトレッド部とサイドウォール部とをつなぐショルダー部での外形と合致するように、ショルダー部に対応する部分を急激な角度をつけて半径方向内側にわん曲変形させた状態で取り付ける必要がある。
【0017】
しかしこの発明のようにタイヤ滑り止め本体のジョイント部に追加芯材を配設した場合に、追加芯材のタイヤ滑り止め本体の幅方向の長さをタイヤの接地幅に対して過度に長くすると、ジョイント部においてタイヤのショルダー部に対応する部分を急激な角度で変形させることが困難となるため、その変形不充分の範囲がジョイント部以外の部分にまで拡がり、結果としてタイヤ滑り止め本体の浮き上がりを増大させることになるので好ましくない。また追加芯材のタイヤ滑り止め本体の幅方向の長さをタイヤの接地幅に対して過度に短くすると、タイヤの回転による遠心力が作用したとき、タイヤへの装着当初におけるジョイント部のタイヤのトレッド部に対応する部分を平らな形状に保つことができず、追加芯材としての機能を十分に果たすことができないので好ましくない。
【0018】
また、上記追加芯材の素材としては、軽量のものであって、かつネット型補強芯材の被覆材とされるゴム材に対して1×103 倍以上のヤング率を有する金属繊維または合成繊維からなるコード、ワイヤーを用いるのが好ましい。
このように追加芯材の素材・材質を限定したのは次の理由による。
【0019】
タイヤ滑り止め本体には、車両の走行中、常に遠心力が作用しているため、絶えずタイヤの半径方向外側に向かって膨らもうとしており、この力をできる限り抑えて最小限にするためには、ジョイント部に配設する追加芯材としては軽量の素材を用いることが好ましい。
【0020】
また、追加芯材の素材のヤング率をゴム材に対して1×10倍以上とすることにより、ジョイント部における曲げ剛性を必要かつ十分なものとることができ、作用する遠心力に打ち勝ってジョイント部のタイヤのトレッド部に対応する部分が凸型に膨らむのを抑制して、全体的にタイヤへの装着当初における平らな形状を保持したまま膨らむようにすることが容易にできる。
【0021】
なお、上記のタイヤ滑り止め本体10とその他の附属部材とからなるタイヤ滑り止め装置がタイヤに装着された状態は図2に示すとおりである。
【0022】
タイヤ20に上記のタイヤ滑り止め装置を装着するときは、タイヤ滑り止め本体10のインナー側とアウター側とを夫々タイヤ20の両側面と対応させてタイヤ20のトレッド面に被せた後、まず、タイヤ20の周上で両ジョイント部同士がつき合わされたタイヤ滑り止め本体10のインナー側のフック13に止着されている非伸長ロープ15の両端を結着し、次いでタイヤ滑り止め本体10のアウター側のフック14にゴムバンド等16を掛け止めして、両ジョイント部がインナー側及びアウター側において連結されたタイヤ滑り止め本体10をタイヤ20に対し所定の締付力を与えた状態で密着させる。
【0023】
【実施例】
この発明と従来のタイヤ滑り止め本体について、車両の高速走行時における膨らみ量を比較するために実施した試験の結果は表1に示すとおりである。
【0024】
試験品は乗用車用タイヤ(サイズ265/70R15)に適応する図1に示したネット型のタイヤ滑り止め本体であり、室内ドラム走行試験機を用いて、タイヤ周上におけるタイヤ滑り止め本体のジョイント部での膨らみ量を測定した。試験条件は、タイヤ空気圧200kPa、荷重4.9kN、走行速度70Km/hに設定した。表1には、タイヤ20周上におけるこの発明のタイヤ滑り止め本体10の膨らみ量A(図3)が、従来のタイヤ滑り止め本体100の膨らみ量B(図4)を基準とする100点法による指数で示してある。
【0025】
この発明のタイヤ滑り止め本体のジョイント部に用いた追加芯材の素材としては、スチールワイヤ(太細別に各1種)と芳香族ポリアミド繊維のコードとを用い、何れもその配設長さはタイヤの接地幅に対し100%とした。上記追加芯材以外の構成素材については従来のタイヤ滑り止め本体と変わりがない。
【0026】
【表1】
Figure 0004036984
表1のデータによれば、本発明品は従来品に比べて高速走行時におけるタイヤ滑り止め本体の浮き上がりを抑制してジョイント部における膨らみ量を大幅に低減できることが分かる。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、ネット型のタイヤ滑り止め本体のジョイント部における芯材として、ネット型補強芯材の芯材部分とは別個の追加芯材を、ネット型補強芯材に対して非結合状態で配設しているため、車両の高速走行時においてタイヤの回転により増強された遠心力を受けても、タイヤ外周面からの浮き上がりを小さく抑制してジョイント部における膨らみ量を最小限にすることができるので、近年のサスペンション部分のスペースが狭く設計された車両においても車体との緩衝接触による損傷のおそれがなく、耐高速性に優れた長寿命を有するタイヤ滑り止め本体を備えたタイヤ滑り止め装置が得られる
【0028】
また、この発明において、上記タイヤ滑り止め本体のジョイント部における追加芯材の配設長さをタイヤの接地幅に対して90〜120%の範囲内に限定すると共に、被覆材に対して1×10倍以上のヤング率を有する金属繊維または合成繊維からなるコードあるいはワイヤーから構成したため、タイヤ外周面からのタイヤ滑り止め本体の浮き上がりを抑制してジョイント部における膨らみ量を最小限にする効果を、より確実、かつ容易に達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のタイヤ滑り止め本体の一例を、長手方向両端のジョイント部をつき合わせた状態で展開して示す平面図である。
【図2】この発明のタイヤ滑り止め本体がタイヤに装着された状態を示す子午断面図である。
【図3】この発明のタイヤ滑り止め本体の膨らみ量を示す子午断面図である。
【図4】従来のタイヤ滑り止め本体の膨らみ量を示す子午断面図である。
【符号の説明】
10 タイヤ滑り止め本体
17,18 ジョイント部
17a,18a 追加芯材

Claims (1)

  1. 補強芯材の周りにゴム・合成樹脂等の被覆材を設けてネット型に成型された長尺体の長手方向両端部分がジョイント部とされたタイヤ滑り止め本体を備え、タイヤ周上で前記ジョイント部をつき合わせ連結して装着されるタイヤ滑り止め装置において、
    前記タイヤ滑り止め本体のジョイント部に、当該ジョイント部におけるネット型補強芯の芯材部分とは別個の追加芯材を、前記ネット型補強芯材とは非結合状態で配設し、かつ、当該追加芯材は、前記被覆材に対して1×10倍以上のヤング率を有する金属繊維または合成繊維からなるコードあるいはワイヤーからなると共に、前記タイヤ滑り止め本体の幅方向の長さがタイヤの接地幅に対して90〜120%の範囲内に配設されていることを特徴とするタイヤ滑り止め装置。
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