JP4036077B2 - 車両用推奨操作量生成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載された車両用推奨操作量生成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献】
特開2001−52297号。
【0003】
車線変更も含むような自動車の運転を支援する装置に関する発明として、上記特許文献に記載されたものがある。この発明においては、周囲の情報をセンサにより取得できるという前提のもとに、自車の希望する運転動作(例えば車線変更)を指定しておき、指定された希望運転動作が実施できるか否かを周囲状況をもとに判断し、希望動作が実施可能と判断された後で、運転動作指令信号を生成、出力する、という運転支援の方法等が示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献に示された方法では、あらかじめ運転動作のモデルが決められており、動作モデルの切り替えを周囲情報をもとにした判断ロジックで実行するという構成になっている。言い換えると、判断してから切り替える、という二段階の処理から構成されていると言える。このため、多数の車両に囲まれて併走する場合や、渋滞している中での車線変更をする際等、複雑な状況での対応をすることが難しかった。
本発明の目的は、多数の車両に囲まれて併走する場合や、渋滞している中での車線変更をする際等、複雑な状況での対応が可能な車両用推奨操作量生成装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、自車の周囲車両検出手段と、自車状態検出手段と、周囲車両挙動予測手段と、前記周囲車両検出手段と前記自車状態検出手段から自車に対する運転操作の望ましさを算出する評価関数を構成する評価関数構成手段と、前記周囲車両挙動予測手段と前記評価関数構成手段から自車にとって望ましい操作を計算する推奨操作量演算手段とを備え、前記周囲車両挙動予測手段は、自車の予測応答を出力とする自車モデルと、周囲車両の予測応答を出力とする他車モデルと、自車を含む車両の情報から前記自車モデルおよび前記他車モデルの計算に必要な情報を算出する車両情報抽出関数群とからなり、前記他車モデルと前記自車モデルは、前記車両情報抽出関数群で結合することによって構成され、前記周囲車両挙動予測手段は、複数の前記周囲車両に対して前記他車モデルを計算するとともに、前記自車と複数の前記周囲車両とからなる車両群から先行車と後続車の関係となる結合関係を特定し、この結合関係となる前記後続車の前記他車モデルに対して前記先行車の前記他車モデルまたは前記自車モデルを結合するようになっている。
【0006】
【発明の効果】
本発明によれば、多数の車両に囲まれて併走する場合や、渋滞している中での車線変更をする際等、複雑な状況での対応を行うことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
《第一の実施の形態》
本発明の第一の実施の形態を図1から図8までの図面に基づいて説明する。 図1は本発明である車両用推奨操作量生成装置を構成するのに必要な第一の実施の形態の一配置図である。
図1において、前方レーダー1aは車両前面に取り付けられ、自車両前方に位置する複数の車両の位置を測定する。画像センサ1bも車両前面の適当な位置に取り付けられ、前方レーダー1aの測定情報を補完するとともに、道路上に引かれた車線を検出する。後方レーダー1cは車両背面に取り付けられ、自車両後方に位置する複数の車両の位置を測定する。側方センサ1dは左右の車両側面に一個ずつ取り付けられ、前方レーダー1aと後方レーダー1cの死角となる車両側方に位置する車両の位置を検出する。なお、側方センサ1dとしては、レーダーを用いることもできるが、超音波センサや画像センサを用いることができる。
【0008】
車速センサ2はロータリーエンコーダーをホイールに取り付けることで実現できる。ホイールの回転速度に応じた周期のパルス列を出力し、車速の計測値を得る。
【0009】
演算部3はマイクロコンピュータとその周辺部品から構成され、各センサからの信号を内蔵メモリに記録されたプログラムに従って処理し、計算結果を表示装置4に送る。
【0010】
表示装置4は液晶画面などの表示用ディスプレイおよび該ディスプレイに表示する画像を描画するためのマイクロコンピュータとその周辺部品から構成され、演算部3から送られてきた信号を内蔵メモリに記録された描画プログラムに従って処理し、画像をディスプレイに描画することで運転者に情報を提示する。
【0011】
演算部3はマイクロコンピュータのソフトウェア形態により、図2に示すブロック3a〜3cを構成する。
【0012】
図2において、3aは周囲車両挙動予測手段、3bは評価関数構成手段、3cは推奨操作量演算手段、5は車速センサ2と車線検出器としての画像センサ1bにより構成される自車状態検出手段、6は周囲センサ1a〜1dにより構成される周囲車両検出手段、7は周囲車両全情報である。周囲車両挙動予測手段3aは、自車モデル3a−1、他車モデル3a−2、車両情報抽出関数群3a−3を有する。評価関数構成手段3bは、相互関係評価項3b−1、その他の評価項3b−2、車両情報抽出関数群3b−3を有する。
【0013】
以下、図3に示すような道路状況における動作の例に基づいて、各ブロックの具体的な構成方法を説明する。
図3は片側二車線の直線道路を自車(車両0と定義)と3台の他車両(他車1、他車2、他車3と図に示すように定義)が走行している場面である。ここでは、道路の進行方向に沿ってx座標をとり、道路の進行方向と垂直にy座標をとる。各車両のx座標の値を表す変数をx、座標の値を表す変数をyと表記する。ここで、iは0から3までの値をとり、車両を区別するインデックスである。また、検出された車線の中心に車線の基準位置をとり、左車線および右車線の基準位置をそれぞれy、yと表記する。
【0014】
周囲センサ1a〜1dからは周囲車両と自車両との相対的な位置および相対速度を得ることができる。従って、座標系の原点を適当に定めれば、自車および各車のx座標とy座標の値を具体的に確定することができる。また、車速センサ2からは自車両の縦方向の絶対速度を得ることができるので、自車速に各車の相対速度を加算することで、各車の絶対速度を得ることができる。以上より、センサから得られた周囲車両の全情報を次のようなベクトルの形でまとめることができる。
【0015】
【数1】
Figure 0004036077
ただし、v=x は各車の縦方向の絶対速度を表す。なお、「・」は時間微分を表す。また、括弧( )付きの数式においては「・」は変数の上にあるものとし、上付きの「・」と、変数の上にある「・」は同意とする。
【0016】
センサから以上のような情報を受け取ると、周囲車両挙動予測手段3aは各検出車両ごとに予測モデルを生成する。予測モデルには自車の挙動を予測する自車モデル3a−1と他車の挙動を予測する他車モデル3a−2の二種類が用意される。
【0017】
自車モデル3a−1は、自車に対する操作の結果としての車両の挙動を予測する式であり、例えば以下のような予測式をたてることができる。
【0018】
【数2】
Figure 0004036077
【0019】
【数3】
Figure 0004036077
ただし、uは自車両に対する加減速指令値、uは自車の横方向の走行位置に対する指令値、wは横方向の運動の速さを規定する時定数の逆数である。
【0020】
他車モデル3a−2は、周囲の車両の挙動から他車両の挙動を予測する式である。一般に、ある車両の挙動はその周囲を走行する車両すべての影響を直接的に受けるとは考えにくく、ある特定の位置関係にある車両だけから直接的な影響を受けると考えられる。典型的な例としては先行車に対する追従操作を挙げることができ、追従操作においては同一車線上を走行する先行車の挙動が直接影響するものと考えることができる。すなわち、この場合、同一車線上の先行車(以下、特に混同の恐れがない場合には、単に先行車と表記する)、という特定の位置関係にある車両の挙動から、他車両の挙動を予測することができると考える。例えば、他車両が車線変更をしないという仮定のもとでは、次のような追従モデルを他車挙動の予測式として用いることができる。
【0021】
【数4】
Figure 0004036077
ここで、車両iは固有の目標車間時間(車間時間とは車間距離を追従側の車両の速度で割った値として定義される)と希望走行車速を持っていると仮定し、それらをそれぞれ、h、v と表記している。また、k 、k 、k は車両iの追従特性を決めるパラメータである。x、vが先行車の位置と速度である。
【0022】
なお、先行車が存在しない時には、各車は希望走行車速で走行すると予想される。そのようなモデルとしては、例えば、
【0023】
【数5】
Figure 0004036077
のような式が考えられるが、先行車の有無によって予測モデルを切り替えるのは煩雑である。そこで、先行車が存在しない場合には、車両iの遠方に車両iと同じ速度で走行する仮想車両が存在するとみなし、さらに(4)式におけるパラメータk 、k 、k を車間距離x−xに応じて変化するパラメータであるとして、x−xが大きくなるにつれて、
【0024】
【数6】
Figure 0004036077
となるようにパラメータを設計すれば、(4)式は(5)式を含むような構成となるので、予測モデルを切り替える必要がなくなる。
【0025】
自車モデル3a−1と異なり、他車モデル3a−2は単独では予測計算を行なうことができない。なぜなら、(4)式には先行車の位置と速度という抽象的に定義された変数が残っており、これらの変数に実際の車両に対応する変数を割り当てなければ具体性を持った式として完成しないからである。予測式を具体的に構成するためには、どの車両がどの車両の先行車になっているかを特定した上で、自車モデルと各検出車両に割り当てられた他車モデルを結合して、車群全体の予測式としてまとめあげるという処理が必要である。
【0026】
車両iの先行車が具体的にはどの車両であるのかを特定することは、車群の全情報ベクトルXが与えられればそれほど困難なことではない。例えば、図3の場面において、各モデルの結合関係が以下のようになることは明らかである。
【0027】
【数7】
Figure 0004036077
ここで、記号j→kは車両kのモデルの先行車を表す変数に車両jの変数を割り当てることを意味し、(V)は先行車が存在しない車両に割り当てる仮想車両を表す。
【0028】
問題は、予測計算を行なう場合には、(7)式のような位置関係がそのまま保存されるとは限らず、車線変更が起きるような予測が成立した場合には、先行車を切り替える必要が出てくることである。例えば、図3の場面でも、自車0が3秒後に右車線(車両2の後方)に車線変更するという予測が成立した場合には、モデルの結合関係は、最初の3秒間は(7)式のままであるが、3秒後からは以下のような関係に切り替えなければならない。
【0029】
【数8】
Figure 0004036077
この場合、具体的には車両3のモデルの先行車を車両2から車両0へと切り替える必要があることを示している。以上の様子を模式的に示したのが、図4である。
【0030】
簡単のため、ここでは、車両0以外の車両は車線変更しないという仮定を置いているが、この仮定を緩めて他車両が車線変更することも想定した場合には、さらに多様なモデルの結合関係のパターンが発生する。
【0031】
このように、(4)式のような追従モデルを利用した予測式は、予測計算の精度を向上させる可能性がある一方で、先行車の割り当てと切り替え処理が必要になるという問題点が発生する。切り替え処理を記述することは不可能ではないが、検出車両と車線数が増加するにつれて、また車両挙動に関する仮定を緩めるにつれて、起こり得る事象のパターンは爆発的に増加していくので、すべての切り替えパターンを網羅することは非常に大きな設計上の負担となる。そこで、このような変数の割り当てと切り替え処理を自動的に行なうような関数を構成して、各モデルを結合することができれば、切り替え処理を記述する必要がなくなるので、車両数や車線数、車線変更に関する仮定とは無関係に予測式を構成することができる。そのような機能を実現するのが、車両情報抽出関数群3a−3である。
【0032】
車両情報抽出関数群3a−3とは、検出車両の全情報ベクトルXの中から、ある車両に関して特定の位置関係にある車両の情報を抽出する関数の集合である。この場合、予測モデルを結合するためには先行車の位置と速度が必要なので、各車両iに関して、全情報ベクトルXから先行車の位置と速度を抽出する関数の集合として車両情報抽出関数群3a−3が構成されることになる。以下、具体的な構成方法を説明する。
【0033】
最初に先行車の位置を抽出する関数の構成方法を説明する。車両iの先行車の位置を抽出する関数は、以下のような値を出力する関数として定義される。
【0034】
【数9】
Figure 0004036077
ここで、Rdumは先行車が存在しないときに配置される仮想車両である車両iからの距離を表す適当な定数である。以上のような関数を実現するためには、まず、先行車を数学的に定義する必要がある。車両jが車両iの先行車であるための条件として、以下の三条件を考えることができる。
条件A:車両jは車両iよりも前方を走行している。
条件B:車両jは車両iと同一車線上を走行している。
条件C:車両jは条件A、Bを満たす車両の中で最も車両iに近い。
このうち、条件Bの同一車線の判定は必ずしも数学的な定義ではないので、ここでは次のような条件をもって同一車線上の車両か否かを判定する。
条件B’:車両jと車両iの横方向位置の偏差が車線幅に比べて十分小さい。
【0035】
条件Aを数学的に表現すると、
【0036】
【数10】
Figure 0004036077
となる。
【0037】
条件B’の数学的な表現は、同一車線上の車両とみなすか否かのしきい値をdとして、
【0038】
【数11】
Figure 0004036077
となる。
【0039】
条件Cの最も車両iに近いという条件を満たす車両の位置を返す関数が近傍情報抽出関数である。この場合、最も車両iに近いという条件は、条件A、Bを満たすxの中で最も値が小さい、という条件と等価になるので、近傍情報抽出関数は入力引数の中から最小値をとる引数を選び出す最小値関数で表現することができる。以上をまとめると、先行車の位置を抽出する関数は、次のように書ける。
【0040】
【数12】
Figure 0004036077
ただし、ここでは、A,Bは、それぞれ条件A、B’を満たすインデックスの集合であり、δij
【0041】
【数13】
Figure 0004036077
である。minは最小値関数である。
【0042】
(12)式は、(9)式の条件を満たす関数になっていることは事実である。しかし、推奨操作量を計算することを考えた場合、(12)式は必ずしも都合のよい関数ではない。なぜなら、(12)式は微分可能な関数とはなっていないので、推奨操作量を効率良く計算する手段を与えてくれる最適制御理論の枠組みで扱えないからである。
【0043】
最適制御理論に基づく効率的な計算方法を利用するためには、(12)式を微分可能な関数で再構成しなければならない。
【0044】
簡単のため、ここではすべてのインデックスjが条件A、Bを満たしていると仮定する。このとき、(12)式はすべてのインデックスに関する最小値関数となる。最小値関数自体が微分不可能な関数なので、まず最小値関数を微分可能な関数で近似する方法を考える。
【0045】
一般に、N個の正の値をとる変数z、j=1,2,…,Nがあったとして、zの最大値に対応するインデックスをM、最小値に対応するインデックスをmであらわすとする。すなわち、
【0046】
【数14】
Figure 0004036077
【0047】
【数15】
Figure 0004036077
である。このとき、適当な正の定数nをとり、
【0048】
【数16】
Figure 0004036077
という式を計算すると、(16)式はnの値を大きくするにつれてzの最大値zへと収束していく。なぜなら、(16)式は以下のように変形できるからである。
【0049】
【数17】
Figure 0004036077
(17)式の右辺の根号内部は、zが最大値であるという仮定より、zの項だけが1として残り、その他の項はnを大きくするにつれて0に収束していくからである。
【0050】
以上より、
【0051】
【数18】
Figure 0004036077
という近似式を構成することができた。(18)式の左辺は、zに関して微分可能な関数となっているので、推奨操作量の計算を行なうのに好都合な表現となっている。
【0052】
最大値関数を構成できれば、それから最小値関数を構成することができる。(16)式のかわりに
【0053】
【数19】
Figure 0004036077
を計算すると、(18)式より、
【0054】
【数20】
Figure 0004036077
が成り立つので、最小値関数は、
【0055】
【数21】
Figure 0004036077
で近似できる。従って、(12)式に表れる最小値関数は(21)式で置き換えれば、微分可能な関数として再構成することができる。
【0056】
なお、(21)式の最小値関数を用いるときには、変数zはすべて正であるという条件がついていた。これは(12)式に適用する場合には、車両の位置xがすべて正であるという条件となる。座標系の原点は任意にとることができるので、この条件を満たすことは容易である。すなわち、後方物体を検出するセンサの検出レンジよりもさらに後方に原点を定めれば、xがすべて正という条件は自動的に満たされる。
【0057】
次に、条件A、B’を(21)式の中に反映させることを考える。そのためには、条件A、B’を満たさないインデックスに対応する項を消去、すなわち、0になるような仕組みを導入すればいいことがわかる。
【0058】
そこで、(10)式で表される条件Aを満たすときに値1をとり、満たさないときに値0をとる関数である前後判別関数c(x,x)と、(11)式で表される条件B’を満たすときに値1をとり、満たさないときに値0をとる関数である車線判別関数c(y,y)を導入する。
【0059】
そのような性質を持つ二つの判別関数をz −nの項に作用させれば、条件A,B’を満たさない項は0となるので、最小値演算の対象から自動的に除外されることになる。
【0060】
以上をまとめると、(12)式は以下の関数で近似できることになる。
【0061】
【数22】
Figure 0004036077
関数c(x,x)、c(y,y)を微分可能な関数で構成すれば、(22)式全体も微分可能な関数となる。そこで、前後判別関数を次のような微分可能な関数で構成する。
【0062】
【数23】
Figure 0004036077
と定義する。ここで、dは関数の連続化のために導入した中間状態の幅に相当する適当な正の定数である。(23)式をグラフとしてプロットしたものを図5に示す。また、車線判別関数c(y,y)を次のような微分可能な関数で構成する。
【0063】
【数24】
Figure 0004036077
と定義する。ここで、dは車両iの運転者が車両jを同一車線上の車両と認識する横方向の位置偏差の限界値であり、dは車両iの運転者が車両jを隣接車線上の車両と認識する横方向の位置偏差の限界値であり、関数の連続化のためにd>dとなるように設定され、幅d−dの中間領域が形成される。(24)式をグラフとしてプロットしたものを図6に示す。
【0064】
以上、先行車の縦位置を検出車両の全情報ベクトルXから抽出する微分可能な関数を構成した。関数(22)式を用いることで、任意の車両iの先行車の縦方向の位置xを微分可能な関数を用いて特定することができる。
【0065】
(4)式の予測モデルでは、先行車の位置xだけでなく、先行車の速度vの情報も必要になる。そこで、次に先行車の速度を抽出する関数の構成方法について説明する。
【0066】
車両iの先行車の速度を抽出する関数は、以下のような値を出力する関数として定義される。
【0067】
【数25】
Figure 0004036077
正の値をとる変数z、j=1,2,…,Nに対応して、同じく正の値をとる変数vが定義されているものとする。このとき、v、j=1,2,…,Nの中から、vとvを抽出する関数を構成できればよいことになる。そこで、次のような式を構成する。
【0068】
【数26】
Figure 0004036077
(26)式は次のように変形できる。
【0069】
【数27】
Figure 0004036077
は(16)式で近似できるので、(27)式の両辺をzで割って、さらに両辺をn乗すれば、次式が得られる。
【0070】
【数28】
Figure 0004036077
同様にして、vについても次式のような近似式を導出することができる。
【0071】
【数29】
Figure 0004036077
以上より、先行車の条件A,B’を考慮すれば、先行車の速度を抽出する微分可能な関数として、次式のような関数を構成することができる。
【0072】
【数30】
Figure 0004036077
以上、先行車の速度を検出車両の全情報ベクトルXから抽出する微分可能な関数を構成した。関数(30)式を用いることで、任意の車両iの先行車の縦方向の速度vを微分可能な関数を用いて特定することができる。
【0073】
(22)式、(30)式を用いることで、図3の状況から、他車の車線変更がないという仮定のもとで、周囲車両の挙動を予測する単一の予測式系を以下のように構成することができる。
【0074】
【数31】
Figure 0004036077
(31)式は、自車の車線変更に伴う式の切り替えが不要な上、式全体が微分可能な関数で構成されており、最適制御理論を用いた計算に適した形式となっている。
【0075】
以上が周囲車両挙動予測手段3a(図2)で行なわれる処理の内容である。
【0076】
次に評価関数構成手段3bについて説明する。
評価関数構成は、自車に対する操作の結果として予想される周囲車両の未来の挙動を評価し、自車に対する操作がどれくらい望ましいものであるかを評価する関数であり、一般形として次式のように表現することができる。
【0077】
【数32】
Figure 0004036077
ここで、tは現在の時刻を表す時間変数、Tは評価時間の長さを表す正の定数、τは予測計算における時間を表示するための時間変数である。関数L(X,u,u,τ)は望ましい操作を定義する一つ以上の評価項から構成される。評価項として表現される運転操作に対する要請としてはさまざまなものが考えられるが、大きく分類すると、自車の状態だけを評価する項と、他車との位置関係を評価する項の二つから構成されると考えられる。自車の状態だけを評価する項としては、例えば自車に対する加減速を小さくするという要請を表現した
【0078】
【数33】
Figure 0004036077
といった項や、あるいはなるべく車線の中央を走行するという要請を表現した
【0079】
【数34】
Figure 0004036077
という項や、あるいはなるべく希望車速に近い速度で走行するという要請を表現した
【0080】
【数35】
Figure 0004036077
といった評価項が考えられる。
【0081】
一方、他車との位置関係を評価する項としては、基本的な要請として他車両に近づきすぎないという要請を考慮する必要がある。自動車の運転の場合、車線によって走行方向が規定されている場の中での運動となるので、そのような制約を考慮した上で評価項を構成する必要がある。例えば、縦方向の車間距離が同じであっても、同一車線上の車両と隣接車線上の車両とを同等に評価することは不適切である。また、たとえ同一車線上の車両であったとしても、直前の先行車ともう一台別の車両を挟んだ二台目の先行車とでは、やはり同等に評価することはできない。他にも、前方車両と後方車両に対する評価を異なるものにした方がよい場合もある。このように、評価関数の構成においても、他車両との位置関係を特定することは重要な処理となる。また、予測を立てる場合には、評価対象となる位置関係を占める車両が予測区間の中で切り替わることもあり得るので、効率的に評価関数を構成するためには予測式で用いたような車両情報抽出関数群3a−3が必要となってくる。
【0082】
図7に示すように、図3のような片側二車線道路において考慮する必要がある位置関係というのは、左右両車線の先行車と後続車の全部で四方向であると考えられる。この四方向に存在する他車両と適切な距離が保たれていれば、リスクの大きな追従操作や車線変更操作を避けることができる。そこで、他車との位置関係を評価する評価項として、次式を導入する。
【0083】
【数36】
Figure 0004036077
ここで、xpL、xpR、xfL、xfRはそれぞれ、左車線の先行車、右車線の先行車、左車線の後続車、右車線の後続車の縦方向の位置を表し、関数c(y)は自車が左車線を走行している場合に値1をとり、右車線を走行している場合には0になる関数で、この場合、
【0084】
【数37】
Figure 0004036077
のような関数を利用することができる。関数c(y)はその逆で、左車線で1、右車線で0をとる関数で、
【0085】
【数38】
Figure 0004036077
のような関数を利用することができる。
【0086】
pL、xpRに具体的な検出車両の変数を割り当てるには、予測式の構成の部分で説明した先行車抽出関数をそのまま利用することができる。ただし、この場合、左車線および右車線上の先行車を抽出することになるので、車線判別関数については、比較の対象となるのは自車との横方向位置の偏差ではなく、yまたはyとの偏差を比較することになる。以上より、xpL、xpRを抽出する関数の具体形として、
【0087】
【数39】
Figure 0004036077
【0088】
【数40】
Figure 0004036077
を導くことができる。
【0089】
fL、xfRについても考え方はまったく同じであるが、この場合、自車の前方車両ではなく後方車両の中から該当車両を探すことになるため、前後判別関数に代入する変数の順序を逆にする必要があることと、最小値関数ではなく最大値関数を利用する部分を修正する必要がある。式の具体形を書き下すと、
【0090】
【数41】
Figure 0004036077
【0091】
【数42】
Figure 0004036077
と書くことができる。
【0092】
以上に導入した各評価項の線形加重和をとることで評価関数全体を構成する。すなわち、
【0093】
【数43】
Figure 0004036077
を評価関数(の被積分関数)とする。ここで、w、w、w、wは各評価項に対する重みパラメータである。
【0094】
なお、ここでは用いなかったが、他車との位置関係を評価するとき、他車の位置だけでなく、速度も評価式の中に入れることも可能である。例えば、(36)式の評価項では車間距離の逆数の二乗が評価式として用いられているが、車間距離ではなく車間時間の逆数の二乗を評価式として用いる方法も考えられる。その場合、例えば左車線の先行車に対する評価項は
【0095】
【数44】
Figure 0004036077
となり、左車線の先行車の速度vpLを求めるのに予測式の部分で説明した速度抽出関数を変形して利用することができる。vpL、vpR、vfL、vfRをそれぞれ、左車線の先行車、右車線の先行車、左車線の後続車、右車線の後続車の速度とするなら、速度抽出関数の具体形は次のようになる。
【0096】
【数45】
Figure 0004036077
【0097】
【数46】
Figure 0004036077
【0098】
【数47】
Figure 0004036077
【0099】
【数48】
Figure 0004036077
以上のように予測式と評価関数を構成すると、推奨操作量を計算する問題は最適制御問題に帰着することができる。すなわち、(31)式のような車群挙動が予想されている中で、(32)、(43)式から定義される評価関数を最小にするような操作量の系列u(τ)、u(τ)、t≦τ≦t+Tを求めるという最適制御問題となる。最適制御問題の系統的な解法はよく研究されており(例えば、文献1:加藤寛一郎著 工学的最適制御 非線形へのアプローチ、文献2:T. Ohtsuka, Continuation/GMRES method for fast algorithm of nonlinear receding horizon control Proc. 39th IEEE Conference on Decision and Control, pp.766-771, 2000. など)、効率的に解を計算する手法が数多く提案されている。推奨操作量演算手段はそのような計算を実行することによって、実際に推奨操作量を算出する処理を行なう。推奨操作量を計算して得られる結果の例を図8に示す。
【0100】
図8の例では、加速しながら他車3の前方の右車線に車線変更した後、緩く減速しながら他車1の前方の左車線に車線変更する操作が生成されている。このように車線変更が二度起きるような例では、本来は予測式と評価関数の切り替え処理を最適化計算の最中に行なわなければいけないが、車両情報抽出関数群3a−3を用いることによって切り替え処理が不要になり、どのような動作に対しても単一の予測式と評価関数で最適制御問題を定義、計算できるようになる。生成された操作量系列は表示装置4を通して運転者に知らされる。
【0101】
まとめとして、全体としての処理の流れを図9のフローチャートに沿って説明する。
ステップ1では、周囲センサ1a〜1dおよび自車状態検出手段(車速センサ2、車線検出器としての画像センサ1b)のセンサ信号を読み込む。この時点で各車の速度および自車と周囲車両との相対的な位置を算出することができる。
【0102】
ステップ2では、縦方向に適当な原点をとって座標系を導入し、自車と周囲車両の縦方向の位置を表す変数x、i=0,…,N(Nは検出した他車両の台数)の値を具体的に定める。このとき、(22)式をはじめとする車両情報抽出関数群3a−3は、x>0でないと正しく機能しないので、すべての座標値が正となるように座標系の原点を定める。具体的には、例えば最も後方に検出した車両のさらに10m後方に原点をとる、といったようなルールを定めればよい。
【0103】
ステップ3では、横方向に適当な原点をとって座標系を導入し、自車と周囲車両の横方向の位置を表す変数y、i=0,…,Nの値を具体的に定める。座標系の原点はどこにとってもよいが、例えば左車線の左側の白線上などにとることができる。このとき、各車両の横方向の座標だけでなく、左車線と右車線の基準位置y、yの値も確定する。以上の処理により、周囲車両の全情報をまとめた(1)式で表されるベクトルXが構成される。
【0104】
ステップ4では、検出した車両ごとに、必要な車両情報抽出関数群3a−3が構成される。この第一の実施の形態の場合、他車については周囲車両群挙動予測式を構成するために、(22)、(30)式の先行車抽出関数が各車ごとに割り当てられる。自車については評価関数を構成するために、(39)〜(43)式の車両情報抽出関数群3a−3が割り当てられる。
【0105】
ステップ5では、自車モデルが生成される。具体的には(2)、(3)式がメモリー上に読み出される。
【0106】
ステップ6では、検出車両1台ごとに、他車モデルが生成される。具体的には、(4)式のモデルが適当に割り当てられたパラメータとともにメモリー上に生成される。
【0107】
ステップ7では、ステップ5とステップ6で生成された自車モデルと他車モデルをステップ4で生成した車両情報抽出関数群3a−3で結合する。具体的には、(31)式で表されるような微分方程式系としてモデルをまとめあげることになる。
【0108】
ステップ8では、評価関数を設定する。具体的にはあらかじめ設定されている(43)式のような評価関数を読み出して、ステップ4で構成した車両情報抽出関数群3a−3を適用することで、評価関数を現在の周囲状況に適合する形に再構成する。
【0109】
ステップ9では、ステップ7で設定された車両情報抽出関数群3a−3と、ステップ8で設定された評価関数を、推奨操作量演算手段に入力し、推奨操作量を生成する。
【0110】
ステップ10では、生成された推奨操作量を表示装置4に転送して処理を終える。
【0111】
上記が、第一の実施の形態における車両用推奨操作量生成装置の処理内容である。
以上が本発明の第一の実施の形態である。
【0112】
以上説明したように、本実施の形態では、自車の周囲車両を検出する周囲車両検出手段6と、自車の状態を検出する自車状態検出手段5と、周囲車両の挙動を予測する周囲車両挙動予測手段3aと、周囲車両検出手段6の出力と自車状態検出手段5の出力とから自車に対する運転操作の望ましさを算出する評価関数を構成する評価関数構成手段3bと、周囲車両挙動予測手段3aの出力と評価関数構成手段3bの出力とから自車にとって望ましい操作を計算する推奨操作量演算手段3cとを備えた車両用推奨操作量生成装置であって、周囲車両挙動予測手段3aは、自車の予測応答を出力とする自車モデル3a−1と、周囲車両の予測応答を出力とする他車モデル3a−2と、自車を含む車両の情報から自車モデル3a−1および他車モデル3a−2の計算に必要な情報を算出する車両情報抽出関数群3a−3とを有し、他車モデル3a−2と自車モデル3a−1とを、車両情報抽出関数群3a−3で結合することによって構成され、周囲車両挙動予測手段3aは、複数の周囲車両に対して他車モデル3a−2を計算するとともに、自車と複数の周囲車両とからなる車両群から先行車と後続車の関係となる結合関係を特定し、この結合関係となる後続車の他車モデル3a−2に対して先行車の他車モデル3a−2または自車モデル3a−1を結合することを特徴とする。
このような構成により、予測の結果として起こる車線変更などによって車群の配置状態に変化が生じても、車両情報抽出関数群3a−3によって各車両モデルの間の依存関係が自動的に切り替わるので、事前に起こり得る事象をすべて列挙して予測式の切り替え規則を作る必要がなくなり、単一の予測式系で複雑な車両挙動の予測計算ができるようになる。この結果、多数の車両に囲まれて併走する場合や、渋滞している中での車線変更をする際等、複雑な状況での対応を行うことができる。すなわち、周囲車両挙動予測手段3aの設計の手間を大幅に軽減することができる。
【0113】
また、自車モデル3a−1は、運転者の操作を入力とし、他車モデル3a−2は、検出された周囲車両の中で特定の位置関係を満たす車両に関する情報を入力とし、周囲車両の予測応答を出力とし、車両情報抽出関数群3b−3は、自車を含む全検出車両の情報から他車モデル3a−2の入力に該当する情報を算出し、車両情報抽出関数群3a−3は、検出車両ごとに割り当てられた他車モデル3a−2と自車モデル3a−1を結合することを特徴とする。
このような構成により、予測の結果として起こる車線変更などによって車群の配置状態に変化が生じても、車両情報抽出関数群3a−3によって各車両モデルの間の依存関係が自動的に切り替わるので、事前に起こり得る事象をすべて列挙して予測式の切り替え規則を作る必要がなくなり、単一の予測式系で複雑な車両挙動の予測計算ができるようになる。
【0114】
また、評価関数構成手段3bは、検出された周囲車両の中で特定の位置関係を満たす車両との相互関係を評価する項(相互関係評価項3b−1)を含み、評価関数構成手段3bの車両情報抽出関数群3b−3は、全検出車両の情報から、評価対象となる位置関係を満たす車両の情報を算出することを特徴とする。
このような構成により、特定の位置関係にある車両(例えば先行車など)だけを評価する評価関数を構成する際に、評価の対象となる車両が予測の途中で切り替わっても、車両情報抽出関数群3b−3によって車両の切り替えが自動的に行なわれるので、事前に起こり得る事象をすべて列挙して評価関数の切り替え規則を作る必要がなくなり、単一の評価関数でそのような評価を表現することが可能になる。すなわち、評価関数構成手段3bの設計の手間を大幅に軽減することができる。
【0115】
また、周囲車両挙動予測手段3aおよび評価関数構成手段3bの車両情報抽出関数群3a−3、3b−3は、予測および評価の対象となる特定の位置関係の一つごとに定義される一つ以上の車両情報抽出関数から構成され、各車両情報抽出関数は、注目車両と他の検出車両の縦方向の相対的な位置関係を判別する前後判別関数と、他の検出車両の走行車線位置を判別する車線判別関数と、 注目車両に最も近い車両の情報を抽出する近傍情報抽出関数とから構成されることを特徴とする。
このような構成により、前後関係の判別、車線の判別、最近傍車両情報の抽出、という三つの要素から関数を構成することにより、予測と評価の対象となる特定の位置関係として各車線ごとの先行車および後続車を表現することができる。人間の運転行動における他車との相互作用も他車との前後関係と走行車線位置の関係によって影響されていると考えることができるので、実際の運転者の感覚に近い予測式と評価関数を構成することができる。
【0116】
また、車線判別関数は、任意の検出車両と注目車両との横方向の位置の偏差に基づいて、走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする。
このような構成により、横方向の相対的な位置の偏差に基づいて他車両の車線位置を判別しているので、予測と評価の対象となる特定の位置関係として、例えば右方向の隣接車線上を走行する車両、といったような相対的な車線位置に基づく位置関係を規定することができる。
【0117】
また、車線判別関数は、検出された車線ごとに基準となる横位置を設定し、任意の検出車両の横位置と車線ごとの基準位置の偏差に基づいて、走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする。
このような構成により、車線を基準とした絶対的な位置に基づいて他車両の車線位置を判別しているので、予測と評価の対象となる特定の位置関係として、例えば左から2番目の車線上を走行する車両、といったような絶対的な車線位置に基づく位置関係を規定することができる。
【0118】
また、車線判別関数および前後判別関数は、検出車両の各情報を表す変数に関して一階微分可能な関数で構成することを特徴とする。
このような構成により、車線判別関数を微分可能な関数で構成することにより、推奨操作量を計算する場合に偏微分計算に基づく最適制御理論を活用することができるので、効率的な計算を行なうことができる。
【0119】
また、周囲車両挙動予測手段3aおよび評価関数構成手段3bの車両情報抽出関数群3a−3、3b−3は、注目車両について予測および評価の対象となる特定の位置関係に他の検出車両が存在する場合には、該当する車両の縦方向の位置情報を出力し、存在しない場合には、注目車両の縦方向の位置にあらかじめ定められた値を加算して出力することを特徴とする。
このような構成により、車両の情報として縦方向の位置を出力することで、縦方向の車間距離を入力とする他車モデル3a−2や縦方向の車間距離を評価する評価関数を用いることができるようになり、追従動作の予測や追突回避といった基本的な予測と評価を表現することができる。また、該当車両が存在しない場合に自車の遠方に仮想的な車両が存在するものとして、その仮想的な車両の縦位置を出力する構成とし、遠方車両の影響が小さくなるような予測式と評価関数を設定することで、該当車両の有無によって予測式や評価関数を切り替える必要がなくなる。
【0120】
また、近傍情報抽出関数は、適当な実数nをとり、検出車両の縦位置情報のn乗和のn乗根、または縦位置情報の逆数のn乗和のn乗根の逆数をとることによって近似的に実現することを特徴とする。
このような構成により、本来は不連続関数である近傍情報抽出関数を微分可能な関数で近似的に実現することによって、車両の縦位置を抽出する関数全体を微分可能な関数で構成することが可能になり、推奨操作量を計算する場合に偏微分計算に基づく最適制御理論を活用することができるので、効率的な計算を行なうことができる。また、近傍情報抽出関数は、二変数の最大値関数または最小値関数をすべての検出車両の縦位置情報に関して逐次的に適用することで実現する場合と異なり、逐次的な構成方法によらずに関数が構成できるので、関数の表現形式がより簡潔なものとなり、最適化計算のアルゴリズムを容易に設計することができる。
【0121】
また、近傍情報抽出関数は、適当な実数nをとり、検出車両の抽出対象情報で重みづけした縦位置変数またはその逆数のn乗和を縦位置変数またはその逆数のn乗和で除算した量を計算することによって近似的に実現することを特徴とする。
このような構成により、本来は不連続関数である近傍情報抽出関数を微分可能な関数で近似的に実現することによって、車両情報抽出関数全体を微分可能な関数で構成することが可能になり、推奨操作量を計算する場合に偏微分計算に基づく最適制御理論を活用することができるので、効率的な計算を行なうことができる。また、車両情報抽出関数群3a−3が、注目車両について予測および評価の対象となる特定の位置関係に他の検出車両が存在する場合には、該当する車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかを出力し、存在しない場合には、注目車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかにあらかじめ定められた値を加算して出力する場合と異なり、逐次的な構成方法によらずに関数が構成できるので、関数の表現形式がより簡潔なものとなり、最適化計算のアルゴリズムを容易に設計することができる。
【0122】
《第二の実施の形態》
次に、本発明の第二の実施の形態を説明する。
本発明の第二の実施の形態における装置の基本的な構成は、第一の実施の形態と同様であり、図1に示した配置図と図2に示した構成図は同一である。
【0123】
第一の実施の形態では、車両情報抽出関数群3a−3を構成するのに必要な最大値関数あるいは最小値関数を(18)式あるいは(21)式を用いて構成していた。(18)式あるいは(21)式の方法は、べき乗関数による収束を利用して最大値あるいは最小値関数を近似する方法であった。この方法は比較的簡潔な数式表現で実現できることができる一方、べき乗関数の指数nの値に注意が必要である。nが小さすぎると収束が十分でなくなり、抽出される値と実際の値との間に生じる誤差が大きくなる恐れがある。逆にnが大きすぎると、今度は数値計算自体が不安定になる恐れがある。適当な指数nが見つかれば実際の問題にはならないが、本実施の形態では、べき乗関数の収束性を利用しないで、最大値または最小値関数を微分可能な関数で近似する方法を示す。
【0124】
ここで、再びN個の変数z、j=1,2,…,Nを考え、zの最大値zを抽出する方法を考える。もし、N=2、すなわち、二つの変数のうちで値が大きい方の変数を抽出する問題を考えると、例えば次のような最大値関数の近似関数を構成することができる。
【0125】
【数49】
Figure 0004036077
ここで、kは適当な正のパラメータである。(49)式は、zとzとの値の差が十分に大きければ、最大値関数とほぼ同じ値を出力する。
【0126】
二変数の最大値関数が構成できれば、三変数の最大値関数は次のようにすれば構成できる。
【0127】
【数50】
Figure 0004036077
とzの大きい方の値とzとを比較し、大きい方の値が出力されれば、出力された値は三つの変数の中で最も大きい値になっているはずであり、(50)はそれを利用したものである。変数がN個ある場合には、(50)式と同様の比較を繰り返していけばよい。すなわち、
【0128】
【数51】
Figure 0004036077
でN変数の最大値関数を構成できる。(51)式の表現は再帰的な表現であり、陽な表現形式とはなっていないが、微分可能な関数fmaxの合成関数として定義されているので、全体も微分可能な関数になっている。最小値関数については、関数fmaxの替わりに以下の関数を用いればよい。
【0129】
【数52】
Figure 0004036077
N変数関数については、(51)式と同様、以下のように構成できる。
【0130】
【数53】
Figure 0004036077
(22)式に対応する先行車抽出関数は、(53)式を利用すれば、
【0131】
【数54】
Figure 0004036077
と構成することができる。ただし、(53)式が正しく機能するためには、座標系の原点を、x+Rdum<0となるようにとらなければならない。すなわち、座標系の原点を周囲センサの前方検出レンジよりもさらに前方に設定する必要がある。
【0132】
次に、(30)式に対応する先行車の速度を抽出する関数を以上のような逐次比較の方法を用いて構成する。今、(z,v)、j=1,…,Nというペアを考え、zが最大になるインデックスMに対応するvを抽出するという問題を考える。ここでも、まず、N=2の問題を考えると、次のような抽出関数を構成することができる。
【0133】
【数55】
Figure 0004036077
二変数間の抽出操作を繰り返せば、変数の数がいくつになってもvを抽出することができる。すなわち、
【0134】
【数56】
Figure 0004036077
で、N変数の抽出関数になる。式は複雑であるが、微分可能な関数の合成関数から構成されているので、全体の式も微分可能になっている。
【0135】
最小値関数については、
【0136】
【数57】
Figure 0004036077
を定義して、
【0137】
【数58】
Figure 0004036077
とすれば構成できる。
【0138】
(30)式に相当する先行車速度抽出関数は、
【0139】
【数59】
Figure 0004036077
で構成される。
【0140】
第一の実施の形態における他の抽出関数(39)〜(42)式、および(44)〜(47)式についても、(54)式、(59)式に準じて構成することができる。実施の形態の他の要素については、第一の実施の形態の場合とまったく同じである。
以上が本発明の第二の実施の形態である。
【0141】
上記のように、本実施の形態では、近傍情報抽出関数は、二変数の最大値関数または最小値関数をすべての検出車両の縦位置情報に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする。
このような構成により、二変数の逐次比較によって最大値関数または最小値関数が構成されるので、前後判定関数と車線判別関数と組み合わせることにより、注目車両に最も近い先行車または後続車の縦方向の位置を系統的に抽出することができる。
【0142】
また、近傍情報抽出関数は、二変数の最大値関数または最小値関数を微分可能な関数で近似し、近似された関数をすべての検出車両の縦位置情報に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする。
このような構成により、本来は不連続関数である近傍情報抽出関数を微分可能な2変数比較関数を逐次的に適用することで近似的に実現することによって、車両の縦位置を抽出する関数全体を微分可能な関数で構成することが可能になり、推奨操作量を計算する場合に偏微分計算に基づく最適制御理論を活用することができるので、効率的な計算を行なうことができる。
【0143】
《第三の実施の形態》
本発明の第三の実施の形態を図10〜図12の図面に基づいて説明する。
本発明の第二の実施の形態における装置の基本的な構成は、第一の実施の形態と同様であり、図1に示した配置図と図2に示した構成図は同一である。
【0144】
第一の実施の形態では、自車だけが車線変更し、他車は車線変更しないという仮定を置いていた。第三の実施の形態では、逆に自車は車線変更せず、他車の車線変更が予想される場面に基づいて説明を行なう。場面としては第一の実施の形態と同様、図3のような場面を考える。ただし、本実施の形態においては、他車3が前方を走行している他車2を追い越すために、左車線に車線変更する意志をもっているものとする。
【0145】
本実施の形態では、周囲センサは周囲車両の横方向の位置だけでなく横方向の速度も算出する構成を仮定する。各車の横方向の速度をwであらわすと、周囲車両の全情報ベクトルXは、
【0146】
【数60】
Figure 0004036077
となる。
【0147】
他車1から3は、縦方向の追従モデルは(4)式が割り当てられているものとする。一方横方向の運動については、次のようなダイナミクスを割り当てる。
【0148】
【数61】
Figure 0004036077
ここで、u は横方向の速度に対する指令値であり、後述する車線変更の判断ロジックに基づいて決定される。
【0149】
各車の挙動を予測する予測モデルの構成において、車線変更の動作を予測するために、各車にはダイナミクス以外に車線変更するか否かを判断するロジックも割り当てられる。車線変更のロジックは、車線変更の意志を決定するロジックと車線変更の可能性を判断するロジックに分割される。
【0150】
車線変更の意志を決定するロジックは、各車の希望走行車速と実際の走行車速とが比較され、実際の走行車速が希望車速よりも低い状態がある所定の水準以上に継続した場合に、車線変更の意志を固めるというロジックを設定する。具体的には、車線変更の意志を反映する変数z(t)が定義され、次式が計算される。
【0151】
【数62】
Figure 0004036077
ただし、tは車両iが最後に車線変更した時刻かあるいは車両iが検出された時刻とする。ここで定義したz(t)の値が、あるしきい値z thrよりも大きくなった場合に、車線変更の意志を固めて車線変更の可能性を判断するロジックを起動する。
【0152】
車線変更の判断は、車線変更先の先行車および後続車との車間時間をチェックし、車間時間が両方とも許容値よりも長い場合に車線変更を開始する。車線変更開始の条件が成立したら、横方向の速度指令値u にあらかじめ定められた典型的な車線変更パターンの時系列信号が与えられ、(61)式に従って車線変更運動の計算が実行される。以上の車線変更のロジックを模式的に説明したものが図11である。
【0153】
このような車線変更のロジックが加えられる以外は、車両情報抽出関数群3a−3を用いて予測モデルを結合して予測式を構成するという手順は同じである。ただ、他車両の横方向の速度が測定できる場合には、車両情報抽出関数群3a−3に改良を加えることができる。
【0154】
車両情報抽出関数群3a−3を構成する際に定義した車線判別関数(24)式は、先行車であるための条件Bを、車両間の横方向の偏差が所定値以下であるという数学的な条件B’に置き換えられるものとして構成された関数であった。しかし、実際の運転においては、横方向の偏差だけでなく、横方向の速度も考慮して他車両の車線位置を判断している場合もあると考えられる。例えば、車線変更の動作が開始され、横方向の速度がある程度大きくなった場合には、車両自体がまだ車線内に進入してくるより前に、該当車両が車線変更してくることを前提とした運転に切り替えることがあり得る。従って、条件Bの数学的な表現は必ずしも条件B’だけに限定されるものではなく、以下に示すような条件B''による表現も考えることができる。
【0155】
条件B'':車両jと車両iのl秒後に予想される横方向位置の偏差が車線幅に比べて十分小さい。
【0156】
車両jと車両iの横方向の速度wとwがl秒間にわたって一定に保たれると仮定すれば、車線判別関数は次のように再構成される。
【0157】
【数63】
Figure 0004036077
(63)式をプロットした三次元グラフを図10に示す。
【0158】
このような車線判別関数を採用すると、車線変更してくる車両をより早く同一車線上の車両と判断して、迅速に割り込みに対応する操作を算出することが可能になる。
【0159】
(63)式の車線判別関数を用いた場合、(22)式の先行車抽出関数は(24)式が(63)式に置き換えられて、
【0160】
【数64】
Figure 0004036077
となる。他の関数についても同様の置き換えによって関数を再構成することが可能である。
【0161】
第一の実施の形態の評価関数は、縦方向の位置だけを評価する評価項を構成したが、横方向の位置を評価する評価項を構成することも可能である。例えば、次のような評価関数を構成することが可能である。
【0162】
【数65】
Figure 0004036077
、Lは第一の実施の形態と同じく、(33)、(35)式を利用する。Lについては、自車両が車線変更しないという仮定を置いているので、
【0163】
【数66】
Figure 0004036077
と変更する。LRXは次のように定義する。
【0164】
【数67】
Figure 0004036077
抽出関数xpL(X)、xfL(X)は、
【0165】
【数68】
Figure 0004036077
【0166】
【数69】
Figure 0004036077
と構成される。LRYは次のように定義する。
【0167】
【数70】
Figure 0004036077
λは適当な正の定数である。抽出関数xpR(X)、xfR(X)は、(68)、(69)式における車線判別関数の引数yをyに置き換えることで、それぞれ構成することができる。
【0168】
抽出関数xpR(X)、xfR(X)は、
【0169】
【数71】
Figure 0004036077
【0170】
【数72】
Figure 0004036077
と構成される。ただし、(71)、(72)式では、該当車両が存在しない場合の仮想車両は、車線の基準位置に配置されるものとして構成した。
【0171】
(70)式のかわりに、次式のようなl秒後に予想される横方向の位置を評価する評価項も考えることが可能である。
【0172】
【数73】
Figure 0004036077
この場合、抽出関数WpR(X)、WfR(X)は、
【0173】
【数74】
Figure 0004036077
【0174】
【数75】
Figure 0004036077
と構成される。ここでは、該当車両が存在しない場合の仮想車両は横方向の速度が0になるものとして構成した。
【0175】
推奨操作量と周囲車両の挙動予測を計算して得られる結果の例を図12に示す。図12の例では、他車3の接近に伴って自車両0は若干左方向に移動する操作量となり、ついで他車3が自車0を追い抜いて左車線に車線変更を始めると、他車3が左車線に進入する前から減速を指示する操作量が生成される。
【0176】
以上が本発明の第三の実施の形態である。
【0177】
上記のように、本実施の形態では、車線判別関数は、任意の検出車両と注目車両との横方向の位置の偏差、および横方向の相対速度に基づいて、走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする。
このような構成により、横方向の相対的な位置の偏差に加えて横方向の相対速度の情報も用いて他車両の車線位置を判別しているので、他車両が車線変更してくる場合に、物理的に車線位置が変わるよりも早い段階で車線変更を検知して予測と評価に反映させることができるようになり、より実際の運転者の感覚に近い予測と評価を実現することができる。
【0178】
また、車線判別関数は、検出された車線ごとに基準となる横位置を設定し、任意の検出車両の横位置と車線ごとの基準位置の偏差、および検出車両の横速度に基づいて、走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする。
このような構成により、横方向の絶対的な位置に加えて横方向の速度の情報も用いて他車両の車線位置を判別しているので、他車両が車線変更してくる場合に、物理的に車線位置が変わるよりも早い段階で車線変更を検知して予測と評価に反映させることができるようになり、より実際の運転者の感覚に近い予測と評価を実現することができる。
【0179】
また、周囲車両挙動予測手段3aおよび評価関数構成手段3bの車両情報抽出関数群3a−3、3b−3は、注目車両について予測および評価の対象となる特定の位置関係に他の検出車両が存在する場合には、該当する車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかを出力し、存在しない場合には、注目車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかにあらかじめ定められた値を加算して出力することを特徴とする。
このような構成により、車両の情報として縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度を出力することで、それらの情報を入力とする他車モデル3a−2やそれらの情報を評価する評価関数を用いることができるようになり、縦位置だけでは表現できない多様な予測と評価の方法を表現することができる。また、該当車両が存在しない場合には、自車の遠方に仮想的な車両が存在するものとし、その仮想的な車両が予測と評価に与える影響を小さくするように情報を割り当てることで、該当車両の有無によって予測式や評価関数を切り替える必要がなくなる。
【0180】
また、近傍情報抽出関数は、二車両の縦方向の位置を比較し、値が大きい方の車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかを出力する関数を、すべての検出車両に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする。
このような構成により、二車両の情報の比較を繰り返すことで、注目車両に最も近い先行車あるいは後続車に付随する縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度を系統的に抽出することができる。
【0181】
また、近傍情報抽出関数は、二車両の縦方向の位置を比較し、値が大きい方の車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかを出力する関数を微分可能な関数を用いて近似的に表現し、近似された関数をすべての検出車両に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする。
このような構成により、本来は不連続関数である近傍情報抽出関数を微分可能な2変数比較関数を逐次的に適用することで近似的に実現することによって、車両情報抽出関数全体を微分可能な関数で構成することが可能になり、推奨操作量を計算する場合に偏微分計算に基づく最適制御理論を活用することができるので、効率的な計算を行なうことができる。
【0182】
《第四の実施の形態》
本発明の第四の実施の形態を説明する。
本発明の第四の実施の形態における装置の基本的な構成は、第一の実施の形態と同様であり、図1に示した配置図と図2に示した構成図は同一である。
【0183】
本実施の形態では、自車モデルは、(2)、(3)式のように自車の操作量を入力とするモデルではなく、次のようなモデルを考える。
【0184】
【数76】
Figure 0004036077
【0185】
【数77】
Figure 0004036077
ここで、ycmdはyまたはyのどちらかの値をとる変数であり、その遷移規則が次のように定められているとする。
【0186】
【数78】
Figure 0004036077
また、他車の挙動は時系列信号として予測が与えられるものとする。すなわち、任意の未来の時刻tに関して、x(t)とv(t)(i=1,2,3)の予測値を得ることができるとする。例えば、
【0187】
【数79】
Figure 0004036077
のような時系列信号が得られているとする。ただし、tは現在時刻である。
【0188】
評価関数としては、(35)式の速度評価項と(36)式の他車評価項だけを用いて、
【0189】
【数80】
Figure 0004036077
のように構成した被積分関数を用いて、
【0190】
【数81】
Figure 0004036077
と構成する。
【0191】
推奨操作量は、自車モデル(76)、(77)、(78)に含まれるパラメータを変更して、評価関数値が最も小さくなるパラメータから生成される操作量を推奨操作量として提示するものとする。ここでは、例えばhとv を可変のパラメータとして、考えられるパラメータの組をあらかじめメモリに記録しておく。すなわち、(h(k) v (k))k=1,2,…,nというn組のパラメータを用意する。h(k)とv (k)をパラメータとして設定したときの評価関数(81)式の値をJとする。
【0192】
【数82】
Figure 0004036077
として最適なkが求まれば、h(k)とv (k)をパラメータとしたときに、周囲車両群挙動予測式(76)〜(79)を計算して得られた軌道が推奨操作量になっている。具体的な操作量としては、(76)の第二式の右辺を時系列信号としてまとめたものが推奨加減速パターン、変数ycmdの時系列信号が推奨車線変更パターンとなっている。
【0193】
以上本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態の一配置図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態における演算部のソフトウェアブロックを示す図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態の適用場面の一例を示す図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態における予測式の構成方法を説明した図である。
【図5】本発明の第一の実施の形態における前後判別関数をプロットした図である。
【図6】本発明の第一の実施の形態における車線判別関数をプロットした図である。
【図7】本発明の第一の実施の形態における評価対象となる位置関係を示した図である。
【図8】本発明の第一の実施の形態における推奨操作量計算の結果の例を示した図である。
【図9】本発明の第一の実施の形態におけるフローチャートである。
【図10】本発明の第三の実施の形態における車線判別関数をプロットした図である。
【図11】本発明の第三の実施の形態における車線変更のロジックを説明した図である。
【図12】本発明の第三の実施の形態における推奨操作量計算の結果の例を示した図である。
【符号の説明】
1a…前方レーダー
1b…画像センサ
1c…後方レーダー
1d…側方センサ
2…車速センサ
3…演算部
3a…周囲車両挙動予測手段
3a−1…自車モデル
3a−2…他車モデル
3a−3…車両情報抽出関数群
3b…評価関数構成手段
3b−1…相互関係評価項
3b−2…その他の評価項
3b−3…車両情報抽出関数群
3c…推奨操作量演算手段
4…表示装置
5…自車状態検出手段
6…周囲車両検出手段
7…周囲車両全情報

Claims (17)

  1. 自車の周囲車両を検出する周囲車両検出手段と、
    前記自車の状態を検出する自車状態検出手段と、
    前記周囲車両の挙動を予測する周囲車両挙動予測手段と、
    前記周囲車両検出手段の出力と前記自車状態検出手段の出力とから前記自車に対する運転操作の望ましさを算出する評価関数を構成する評価関数構成手段と、
    前記周囲車両挙動予測手段の出力と前記評価関数構成手段の出力とから前記自車にとって望ましい操作を計算する推奨操作量演算手段、とを備えた車両用推奨操作量生成装置であって、
    前記周囲車両挙動予測手段は、
    前記自車の予測応答を出力とする自車モデルと、
    前記周囲車両の予測応答を出力とする他車モデルと、
    前記自車を含む車両の情報から前記自車モデルおよび前記他車モデルの計算に必要な情報を算出する車両情報抽出関数群と、を有し、
    前記他車モデルと前記自車モデルとを、前記車両情報抽出関数群で結合することによって構成され
    前記周囲車両挙動予測手段は、
    複数の前記周囲車両に対して前記他車モデルを計算するとともに、前記自車と複数の前記周囲車両とからなる車両群から先行車と後続車の関係となる結合関係を特定し、
    この結合関係となる前記後続車の前記他車モデルに対して前記先行車の前記他車モデルまたは前記自車モデルを結合することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  2. 請求項1記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記自車モデルは、運転者の操作を入力とし、
    前記他車モデルは、検出された前記周囲車両の中で特定の位置関係を満たす車両に関する情報を入力とし、前記周囲車両の予測応答を出力とし、
    前記車両情報抽出関数群は、前記自車を含む全検出車両の情報から前記他車モデルの入力に該当する情報を算出し、
    前記車両情報抽出関数群は、検出車両ごとに割り当てられた前記他車モデルと前記自車モデルを結合することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  3. 請求項1記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記評価関数構成手段は、
    検出された前記周囲車両の中で特定の位置関係を満たす車両との相互関係を評価する項を含み、
    前記評価関数構成手段の車両情報抽出関数群は、全検出車両の情報から、評価対象となる位置関係を満たす車両の情報を算出することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  4. 請求項1乃至3のいずれか記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記周囲車両挙動予測手段および前記評価関数構成手段の前記車両情報抽出関数群は、
    予測および評価の対象となる特定の位置関係の一つごとに定義される一つ以上の車両情報抽出関数から構成され、
    各前記車両情報抽出関数は、
    注目車両と他の検出車両の縦方向の相対的な位置関係を判別する前後判別関数と、
    他の検出車両の走行車線位置を判別する車線判別関数と、
    前記注目車両に最も近い車両の情報を抽出する近傍情報抽出関数と
    から構成されることを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  5. 請求項4記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記車線判別関数は、
    任意の前記検出車両と前記注目車両との横方向の位置の偏差に基づいて、前記走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  6. 請求項4記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記車線判別関数は、
    任意の前記検出車両と前記注目車両との横方向の位置の偏差、および横方向の相対速度に基づいて、前記走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  7. 請求項4記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記車線判別関数は、
    検出された車線ごとに基準となる横位置を設定し、
    任意の前記検出車両の横位置と前記車線ごとの基準位置の偏差に基づいて、前記走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  8. 請求項4記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記車線判別関数は、
    検出された車線ごとに基準となる横位置を設定し、
    任意の前記検出車両の横位置と前記車線ごとの基準位置の偏差、および前記検出車両の横速度に基づいて、前記走行車線位置の判別を行なうことを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  9. 請求項4乃至8のいずれか記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記車線判別関数および前記前後判別関数は、
    前記検出車両の各情報を表す変数に関して一階微分可能な関数で構成することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれか記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記周囲車両挙動予測手段および前記評価関数構成手段の前記車両情報抽出関数群は、
    注目車両について予測および評価の対象となる特定の位置関係に他の検出車両が存在する場合には、該当する車両の縦方向の位置情報を出力し、
    存在しない場合には、前記注目車両の縦方向の位置にあらかじめ定められた値を加算して出力することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  11. 請求項10記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記近傍情報抽出関数は、
    二変数の最大値関数または最小値関数をすべての検出車両の縦位置情報に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  12. 請求項10記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記近傍情報抽出関数は、
    二変数の最大値関数または最小値関数を微分可能な関数で近似し、
    近似された関数をすべての検出車両の縦位置情報に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  13. 請求項10記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記近傍情報抽出関数は、
    適当な実数nをとり、検出車両の縦位置情報のn乗和のn乗根、または縦位置情報の逆数のn乗和のn乗根の逆数をとることによって近似的に実現することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  14. 請求項1乃至9のいずれか記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記周囲車両挙動予測手段および前記評価関数構成手段の前記車両情報抽出関数群は、
    注目車両について予測および評価の対象となる特定の位置関係に他の検出車両が存在する場合には、該当する車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかを出力し、
    存在しない場合には、前記注目車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかにあらかじめ定められた値を加算して出力することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  15. 請求項14記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記近傍情報抽出関数は、
    二車両の縦方向の位置を比較し、値が大きい方の車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかを出力する関数を、すべての検出車両に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  16. 請求項14記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記近傍情報抽出関数は、
    二車両の縦方向の位置を比較し、値が大きい方の車両の縦方向の速度、横方向の位置、横方向の速度のいずれかを出力する関数を微分可能な関数を用いて近似的に表現し、
    近似された関数をすべての検出車両に関して逐次的に適用することで実現することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
  17. 請求項14記載の車両用推奨操作量生成装置において、
    前記近傍情報抽出関数は、
    適当な実数nをとり、検出車両の抽出対象情報で重みづけした縦位置変数またはその逆数のn乗和を縦位置変数またはその逆数のn乗和で除算した量を計算することによって近似的に実現することを特徴とする車両用推奨操作量生成装置。
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