JP4034808B2 - 改良された破断点伸びを有するセルロース繊維、及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明はセルロース誘導体からつくられた繊維及びこれらの誘導体から再生されたセルロースからつくられた繊維に関する。
“セルロース誘導体”は、知られているように、セルロースのヒドロキシル基の置換による化学反応の結果として生成された化合物を意味するものとここで理解され、これらの誘導体がまた置換誘導体として知られている。“再生セルロース”はセルロース誘導体について行われた再生処理により得られたセルロースを意味するものと理解される。
更に特別には、本発明はギ酸セルロースからつくられた繊維及びこのギ酸エステルから再生されたセルロースからつくられた繊維、並びにこのような繊維の製造方法に関する。
ギ酸セルロースからつくられた繊維及びこのギ酸エステルから再生されたセルロースからつくられた繊維が特に本件出願会社により出願された国際特許出願WO85/05115(PCT/CH85/00065)、または相当する特許EP-B-179,822及び米国特許第4,839,113号に記載されていた。これらの明細書はセルロースとギ酸及びリン酸の反応によるギ酸セルロースをベースとする紡糸液の製造を記載している。これらの液は光学的に異方性であり、即ち、それらは液晶状態を示す。また、これらの明細書は所謂乾式−ジェット−湿式(dry-jet-wet)紡糸技術に従ってこれらの液を紡糸することにより得られたギ酸セルロース繊維、及びこれらのギ酸エステル繊維の再生処理後に得られたセルロース繊維を記載している。
レーヨン繊維またはビスコース繊維の如き通常のセルロース繊維、またはナイロン繊維もしくはポリエステル繊維の如きその他の通常の非セルロース繊維(全て光学等方性液から紡糸されたもの)と比較して、出願WO 85/05115のセルロース繊維は、それらが出現する紡糸液の液晶状態のために、極めて規則的な構造を特徴としている。こうして、それらは伸長時の非常に高い機械的性質、特に非常に高いテナシティ値及びモジュラス値を示すが、一方では、破断点伸びのかなり低い値を特徴とし、これらの値は平均で3%〜4%であり、4.5%を越えない。
しかしながら、このような繊維が或る技術用途で、特にタイヤ、特にタイヤカーカスを強化するための成分として使用される時に、破断点伸びの更に大きな値が望ましいことがある。
本発明の第一の目的は、出願WO 85/05115の繊維と比較して、かなり改良された破断点伸び及び破断時の高いエネルギー特性を示すギ酸セルロースからつくられた繊維及び再生セルロースからつくられた繊維を提供することである。
本発明の第二の目的は、繊維のテナシティを低下しないで上記改良を生じることであり、これが本発明の重要な利点である。
本発明の別の目的はギ酸セルロースから再生されたセルロースからつくられた繊維を製造することであり、特にタイヤに関して、その耐疲労性が上記出願WO 85/05115の再生セルロースからつくられた繊維の耐疲労性と比較してかなり改良される。
本発明のギ酸セルロースからつくられた繊維は下記の関係を特徴とする。
−Ds≧2;
−Te>45;
−Mi>800;
−ELb>6;
−Eb>13.5
Dsはギ酸エステル基としてのセルロースの置換度(単位%)であり、Teはそのテナシティ(単位cN/テックス)であり、Miはその初期モジュラス(単位cN/テックス)であり、ELbはその破断点伸び(単位%)であり、かつEbはその破断時のエネルギー(単位J/g)である。
ギ酸セルロースから再生された本発明のセルロースからつくられた繊維は下記の関係を特徴とする。
−0<Ds<2;
−TE>60;
−MI>1000;
−ELB>6;
−EB>17.5
Dsはギ酸エステル基としてのセルロースの置換度(単位%)であり、TEはそのテナシティ(単位cN/テックス)であり、MIはその初期モジュラス(単位cN/テックス)であり、ELBはその破断点伸び(単位%)であり、かつEBはその破断時のエネルギー(単位J/g)である。
ギ酸セルロースからつくられた繊維及び上記再生セルロースからつくられた繊維は本発明のその他の主題を構成する新規かつ特定の方法により両方とも得られる。
所謂乾式−ジェット−湿式紡糸方法に従って、ギ酸セルロースの液をリン酸をベースとする溶剤中で紡糸することにある、本発明のギ酸セルロースからつくられた繊維を得るための、本発明の紡糸方法は、繊維の凝固の段階及び凝固された繊維の中性洗浄の段階が両方ともアセトン中で行われることを特徴とする。
ギ酸セルロースからつくられた繊維を再生媒体に通し、それを洗浄し、その後にそれを乾燥させることにある、本発明の再生セルロースからつくられた繊維を得るための、本発明の再生方法は、再生媒体が水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液であり、Csとして記録される水酸化ナトリウム濃度が16%(重量%)より大きいことを特徴とする。
更に、本発明は下記の製品:
−夫々が本発明の少なくとも一種の繊維を含む強化集成体、例えば、ケーブル、諸撚糸またはそれ自体が捩じられたマルチフィラメント繊維(このような強化集成体は、例えば、ハイブリッド、即ち、必要により本発明によらなくてもよい、異なる性質の成分を含む複合材料であることが可能である);
−本発明の少なくとも一種の繊維及び/または一種の集成体により強化された物品(これらの物品は、例えば、ゴム製品またはプラスチック製品、例えば、プライ、ベルト、パイプまたはタイヤ、特にタイヤカーカスに関する。
本発明は下記の説明及び非限定実施例により容易に理解されるであろう。
I.測定及び使用した試験
I-1.重合度
重合度はDPとして記録される。セルロースのDPは既知の方法で測定され、このセルロースは粉末形態であり、または前もって粉末に変換される。
溶解されたセルロースのインヘレント粘度(IV)はまず第一に1970年のスイス規格SNV 195 598に従って測定されるが、0.5g/dl〜0.05g/dlで変化する異なる濃度で測定される。インヘレント粘度は式:
IV=(I/C0)x Ln(t1/t0)
(式中、C0は乾燥セルロースの濃度を表し、t1は希薄ポリマー溶液の流動の期間を表し、t0はウッベローデ型粘度計中の純粋な溶媒の流動の期間を表し、かつLnはネイピアの対数を表す)
により定義される。これらの測定は20℃で行われる。
その後に固有粘度[η]がゼロ濃度へのインヘレント粘度IVの外挿により測定される。
重量平均分子量Mwはマルク−ホウインクの相関式:
[η]=K x Mw α
(式中、定数K及びαは夫々
K=5.31 x 10-4;α=0.78であり、これらの定数はインヘレント粘度を測定するのに使用した溶媒系に相応する)
により求められる。これらの値はL.Valtasaariにより文献Tappi 48,627(1965)に示されている。
DPは最後に式:
DP=(Mw)/162
に従って計算され、162はセルロース基本単位の分子量である。
溶液中でギ酸セルロースからのセルロースのDPを測定する場合、このギ酸エステルは最初に単離され、その後にセルロースが再生されることが必要である。
その操作は以下のとおりである。
溶液が最初に分散装置中で水で凝固される。濾過し、アセトンで洗浄した後、粉末が得られ、続いてこれが少なくとも30分間にわたって40℃でオーブン中で真空下で乾燥される。ギ酸エステルを単離した後、このギ酸エステルを還流して標準の水酸化ナトリウム液で処理することによりセルロースが再生される。得られたセルロースが水洗され、乾燥され、DPが上記のようにして測定される。
I-2.置換度
ギ酸セルロースとしてのセルロースの置換度はまたホルミル化の程度として知られている。
ここに記載された方法により測定される置換度は、エステル化され、即ち、ギ酸エステル基に変換されるセルロース中のアルコール官能基の%を示す。これは、セルロース単位中の三つのアルコール官能基が全てエステル化される場合に100%の置換度が得られることを意味し、または、例えば、三つのうちの平均0.9の官能基がエステル化される場合に30%の置換度が得られることを意味する。
置換度は、特性決定がギ酸セルロース(溶液中のギ酸エステルまたはギ酸エステルからつくられた繊維)またはギ酸セルロースから再生されたセルロースからつくられた繊維について行われるのかに応じて異なって測定される。
I-2.1.ギ酸セルロースに関する置換度
置換度が溶液中のギ酸セルロースについて測定される場合、このギ酸エステルは最初にパラグラフI-1に上記されたようにして溶液から単離される。それがギ酸エステルからつくられた繊維について測定される場合、これらの繊維が長さ2〜3cmの片に前もって切断される。
こうして調製されたギ酸セルロース200mgが正確に計量され、三角フラスコに導入される。水40ml及び標準の水酸化ナトリウム溶液(1NのNaOH)2mlが添加される。その混合物が窒素雰囲気下で還流して15分間にわたって90℃で加熱される。こうして、セルロースが再生され、ギ酸エステル基がヒドロキシル基に再度変換される。冷却後、過剰の水酸化ナトリウムが10/1の標準の塩酸溶液(0.1NのHCl)で逆滴定され、こうして置換度がそれから演繹される。
本明細書中、置換度は、それがギ酸セルロースからつくられた繊維について測定される場合にDsとして記録される。
I-2.2.再生セルロースからつくられた繊維に関する置換度
繊維約400mgが長さ2〜3cmの片に切断され、その後に正確に計量され、水50mlを含む三角フラスコ100mlに導入される。標準水酸化ナトリウム溶液(1NのNaOH)1mlが添加される。これらの成分が室温で15分間混合される。こうして、それらを紡糸後に、連続繊維について直接に行われた再生に耐えた最終のギ酸エステル基をヒドロキシル基に変換することにより、セルロースが完全に再生される。過剰の水酸化ナトリウムが10/1の標準の塩酸溶液(0.1NのHCl)で滴定され、こうして置換度がそれから演繹される。
本明細書中、置換度は、それが再生セルロースからつくられた繊維について測定される場合にDsとして記録される。
I-3.溶液の光学的性質
溶液の光学等方性または異方性は試験溶液一滴を線形直交偏光子と光学偏光顕微鏡の分析装置の間に入れ、続いてこの溶液を室温で静止状態で、即ち、動的拘束の不在下で観察することにより測定される。
知られているように、光学的に異方性の溶液は、光を偏光解消する溶液、即ち、こうして線形直交偏光子と分析装置の間に入れられると光透過(着色テキスチャー)を示す溶液である。光学的に等方性の溶液は、同じ観察条件下で、上記偏光解消特性を示さない溶液であり、顕微鏡の視野が黒色のままである。
I-4.繊維の機械的性質
“繊維”は、知られているように、小さい直径(低い番手)を有する多数の個々のフィラメントを含むマルチフィラメント繊維(また“紡績糸”として知られている)を意味するものとここでは理解される。下記の全ての機械的性質がプレコンディショニングにかけられた繊維について測定される。“プレコンディショニング”はヨーロッパ規格DIN EN 20139に従って標準の雰囲気(20±2℃の温度;65±2%の湿度)中で、測定の前に、少なくとも24時間にわたる繊維の貯蔵を意味するものと理解される。
セルロース繊維について、このようなプレコンディショニングは、知られているように、それらの水分の程度(残留含水量)を乾燥繊維の15重量%未満(平均で約11〜12%)の自然平衡レベルで安定化することを可能にする。
繊維の番手は、繊維のこの長さを計ることにより、少なくとも三つのサンプル(夫々が50mの長さに相当する)について測定される。番手はテックス(1000mの繊維の重量(グラム数))で示される。
繊維の機械的性質(テナシティ、初期モジュラス、伸び及び破断時のエネルギー)は、Zwick GmbH&Co(ドイツ)1435型または1445型の引張試験機を使用して既知の方法で測定される。わずかに事前の保護撚り(約6°のらせん角度)を受けた後の繊維が200mm/分の速度(またはそれらの破断点伸びが5%を越えない場合にのみ50mm/分の速度)で400mmの初期長さにわたって張力にかけられる。示された全ての結果は10回の測定の平均である。
テナシティ(番手により割られた破断強さ)及び初期モジュラスはcN/テックス(テックス当たりのセンチニュートン−注:1cN/テックスは約0.11g/den(デニール当たりのグラム数)に等しい)で示される。初期モジュラスは応力−伸び曲線の線状部分(これは標準の0.5cN/テックス予備引張の直後に生じる)の傾斜と定義される。破断点伸びは%として示される。破断時のエネルギーはJ/g(1グラム当たりのジュール)、即ち、繊維質量の単位当たりで示される。
II.本発明を実施するための条件
最初に、説明が紡糸液の調製、続いてギ酸セルロースからつくられた繊維を製造するためのこれらの液の紡糸についてなされる。再生セルロースからつくられた繊維を製造するための、ギ酸セルロースからつくられた繊維の再生の段階が第三パラグラフに説明される。
II-1.紡糸液の調製
ギ酸セルロース溶液は、例えば、上記出願WO 85/05115に示されるようにセルロース、ギ酸及びリン酸(またはリン酸をベースとする液体)を混合することにより調製される。
セルロースは異なる形態、特に、例えば、粗セルロースプレートを微粉砕することにより調製された粉末の形態で用意し得る。その初期含水量は10重量%未満であることが好ましく、そのDPは500〜1000であることが好ましい。
ギ酸はエステル化用の酸であり、リン酸(またはリン酸をベースとする液体)は以下の説明で“溶剤”または“紡糸溶剤”として知られているギ酸セルロース用の溶剤である。一般に、使用されるリン酸はオルトリン酸(H3PO4)であるが、その他のリン酸またはリン酸の混合物を使用することが可能である。リン酸は、状況に応じて、固体、液状で使用でき、またはギ酸に溶解されて使用し得る。
これらの2種の酸の含水量は5重量%未満であることが好ましい。それらは単独で使用でき、または必要により、小比率で、その他の有機酸及び/または無機酸、例えば、酢酸、硫酸または塩酸を含むことができる。
上記出願WO 85/05115に示された記載によれば、溶液中のセルロース濃度(以下、“C”として記録される)は大きな程度で変化し得る。例えば、10%〜30%(溶液の合計重量に対して、エステル化されなかったセルロースに基いて計算された、セルロースの重量%)の濃度Cが可能であり、例えば、これらの濃度は特にセルロースの重合度の関数である。また、(ギ酸/リン酸)重量比が広範囲内で調節し得る。
ギ酸セルロースの調製中に、ギ酸及びリン酸の使用が、セルロースの初期重合度を過度に低下しないで、一般に20%より大きい、ギ酸セルロースとしての高い置換度と、無定形領域及びギ酸セルロースの結晶領域の両方中の、これらのギ酸エステル基の均一な分布の両方を得ることを可能にする。
溶液の製造に適した混練装置が当業者に知られている。それらは、溶液が得られるまでセルロース及び酸を、好ましくは調節可能な速度で、混練し、正確に混合するのに適していなければならない。“溶液”は、知られているように、固体粒子が肉眼に見えない均一な液体組成物を意味するものとここでは理解される。混練は、例えば、Z形混合アームを有するミキサーまたは連続スクリューミキサー中で行い得る。これらの混練装置は真空下の排出用の装置及び加熱兼冷却装置(これは、例えば、溶解操作を促進し、または生成中の溶液の温度を調節するためにミキサー及びその内容物の温度を調節することを可能にする)を備えていることが好ましい。
例えば、下記の操作が使用し得る。
セルロース粉末(その含水量は空気の周囲含水量と平衡である)がZ形混合アーム及び押出スクリューを有するジャケット付きのミキサーに導入される。オルトリン酸(99%の結晶度)とギ酸の混合物、例えば、1/4(重量部)のギ酸当たり3/4(重量部)のオルトリン酸を含む混合物が続いて添加される。溶液が得られるまで、全内容物が、例えば、約1〜2時間の期間にわたって混合され、その混合物の温度が10〜20℃に保たれる。
こうして得られた紡糸液が紡糸されるように用意される。それらは、例えば、脱気段階または濾過段階の如き通常の操作以外に先に変換しないで、紡糸されるために、例えば、ミキサーの出口に置かれた押出スクリューにより紡糸機に直接移される。
本発明の実施に使用される紡糸液は光学的に異方性の溶液である。これらの紡糸液は下記の特性の少なくとも一つを示すことが好ましい。
−それらのセルロース濃度がエステル化されなかったセルロースに基いて計算して15%〜25%(重量%)である。
−それらの全ギ酸濃度(即ち、エステル化中に消費されるギ酸部分+最終溶液中に残っている遊離ギ酸部分)が10〜25%(重量%)である。
−それらのリン酸濃度(またはリン酸をベースとする液体の濃度)が50%〜75%(重量%)である。
−溶液中のギ酸エステル基としてのセルロースの置換度が25%〜50%、更に好ましくは30%〜45%である。
−溶液中のセルロースの重合度が350〜600である。
−それらが10%(重量%)未満の水を含む。
II-2.溶液の紡糸
紡糸液は所謂乾式−ジェット−湿式紡糸技術に従って紡糸される。この技術はダイと凝固装置の間のダイ出口に置かれた非凝固流体層、一般に空気を使用する。
混練兼溶解装置の出口で、紡糸液は紡糸ユニットに移され、そこではそれが紡糸ポンプに供給する。この紡糸ポンプから、溶液がフィルターにより先行された少なくとも一つのダイを通して押し出される。ダイへの途中で、溶液が、溶液の性質に応じて、所望の紡糸温度、一般に35℃〜90℃、好ましくは40℃〜70℃に徐々にされる。こうして、“紡糸温度”は、紡糸液がダイを通して押し出される瞬間の紡糸液の温度を意味するものと理解される。
夫々のダイは可変数の押出キャピラリーを含むことができ、この数は、例えば、50から1000まで変化することが可能である。キャピラリーは形状が一般に円筒形であり、それらの直径が、例えば、50μm(マイクロメートル)から80μmまで変化することが可能である。
ダイ出口で、可変数の個々の液脈(liquid vein)を含む液体押出物がこうして得られる。夫々の個々の液脈が非凝固流体層に取り出され、その後に凝固領域に入る。この非凝固流体層は一般にガス、好ましくは空気の層であり、その厚さが特定の紡糸条件に応じて数mmから数十mm(ミリメートル)、例えば、5mmから100mmまで変化し得る。知られているように、非凝固層の厚さは水平に配置されたダイの下面と、凝固領域の入口(凝固液の表面)とを分離する距離を意味するものと理解される。
非凝固層を通過した後、こうして取り出された全ての液脈が凝固領域に入り、凝固媒体と接触する。この作用のもとに、それらが、ギ酸セルロースの沈殿及び紡糸溶剤の抽出により、こうして繊維を形成するギ酸セルロースの中実フィラメントに変換される。
使用される凝固媒体はアセトンである。
Tcとして記録される、凝固媒体の温度は本発明の実施に重要なパラメーターではない。例えば、22重量%のセルロースを含む紡糸液について、-30℃から0℃までの温度範囲にわたる温度Tcの変化は得られる繊維の機械的性質に実際に影響しないことが観察された。
負の温度Tc、即ち、0℃未満のTcが選ばれることが好ましく、-10℃未満であることが更に好ましいであろう。
当業者は、簡単な最適化試験により、紡糸液の特性及び目標とされる機械的性質に応じて、凝固媒体の温度を調節する方法を知っているであろう。一般に、温度Tcは、紡糸液の濃度Cが低くなるにつれて低いように選ばれるであろう。
凝固媒体中の紡糸溶剤の程度は15%未満、更に好ましくは10%未満(凝固媒体の重量%)のレベルで安定化されることが好ましい。
使用される凝固装置は、例えば、凝固媒体を含む浴、パイプ及び/またはチャンバーを含む既知の装置であり、その中で生成過程の繊維が移動する。非凝固層の出口で、ダイの下に配置された凝固浴が使用されることが好ましい。この浴は一般に垂直の円筒形の管、所謂“紡糸管”によりその底部で延長され、その管に凝固された繊維が入り、その中で凝固媒体が循環する。
浴の入口から紡糸管の入口まで測定される、凝固浴中の凝固媒体の深さは、例えば、本発明を実施する特定の条件に応じて、特に使用される紡糸速度に応じて、数ミリメートルから数センチメートルまで変化し得る。凝固浴は、必要により、追加の凝固装置、例えば、水平の戻り位置の後の紡糸管の出口に置かれるその他の浴またはチャンバーにより延長されてもよい。
本発明の方法は、下記の特徴の少なくとも一つが確立されるように使用されることが好ましい。
a)凝固装置の出口における繊維中の残留溶剤の程度(Srとして記録される)がギ酸エステルからつくられた乾燥繊維の100重量%未満である。
b)凝固装置の出口における繊維により受けられる引張応力(δcとして記録される)が5cN/テックス未満である。
また、更に好ましい方法では、上記の二つの特徴a)及びb)が同時に確立されるようにされる。
こうして、上記の好ましい条件によれば、紡糸溶剤のかなりの部分が繊維から抽出されるまで、繊維が凝固媒体と接触して残される。更に、この凝固期中に、繊維により受けられる張力を適度のレベルに維持することが重要視される。これを監視するために、適当な張力計を使用して、これらの張力が凝固装置の出口で直ちに測定されるであろう。
一般に、とりわけ、ギ酸エステルからつくられた繊維の破断点伸びの性質に有利にすることが所望される場合、本発明は下記の二つの関係が確立されるように実施されることが好ましいであろう。
Sr<50%;δc<2cN/テックス
ギ酸エステルからつくられた凝固繊維中に存在する残留溶剤の程度Srは、例えば、下記の方法で測定される。繊維が凝固装置の出口でその凝固媒体とともに取り出される。その後、繊維周囲の表面層中に含まれ、かつそれ自体が繊維から既に抽出された紡糸溶剤(リン酸またはリン酸をベースとする液体)の或る部分を含む凝固媒体(アセトン)の殆どを除去するように、繊維が加圧しないで吸収紙で表面近くで乾燥される。続いて、繊維が含むリン酸を完全に抽出するように、繊維が実験装置中で完全に水洗され、その後にこのリン酸が水酸化ナトリウムで逆滴定される。更に正確にするために、測定が5回繰り返され、その平均が計算される。
凝固装置の出口で、繊維が駆動装置、例えば、モーター付きロールで巻き取られる。この駆動装置に関する紡糸製品の速度は“紡糸速度”(または送出もしくは巻取速度)として知られている。繊維が一旦形成されると、それは紡糸プラント中の繊維の進行の速度である。紡糸速度対ダイ中の溶液の押出速度の比は、知られているように、紡糸−伸長係数または紡糸−延伸係数(SSFまたはSDFと略称される)として知られているものを規定し、これは、例えば、2〜10である。
一旦凝固されると、繊維は中性まで洗浄される必要がある。“中性洗浄”は紡糸溶剤を繊維から全部または実質的に全部抽出することを可能にするあらゆる洗浄操作を意味するものと理解される。
当業者は、現在に至るまで、水を洗浄媒体として使用することに当然に向けられていた。公知の方法では、水は実際にセルロースまたはセルロース誘導体からつくられた繊維用の“自然”膨潤媒体であり(例えば、米国特許第4,501,886号明細書を参照のこと)、それ故、最優先に最良の洗浄効率を与えることができる媒体である。
例えば、上記出願WO 85/05115(72頁、実施例II-1以下)のような、特許または特許出願EP-B-220,642、米国特許第4,926,920号及びWO 94/17136は、ギ酸セルロースからつくられた繊維を洗浄するための、凝固装置の出口における水の使用を記載している。
それにもかかわらず、このような水による洗浄の通常の段階は本発明のギ酸セルロースからつくられた繊維を得ることを可能にしない。
全く驚くことに、本件出願人は、洗浄媒体として使用されるアセトンが、知られているように、水の洗浄力よりも著しく低い洗浄力にもかかわらず、繊維が出願WO 85/05115に記載された繊維と比較される時に、一旦完成されると(即ち、中性まで洗浄され、その後に乾燥されると)、いの一番にそれらの破断点伸びに関して非常に著しく改良された性質を示す繊維をもたらすことを見出した。
本発明の方法の実施について、繊維の凝固の段階及び凝固繊維の中性洗浄の段階の両方がアセトン中で行われる必要がある。
アセトン洗浄の温度はその方法の重要なパラメーターではない。しかしながら、洗浄の速度を促進するように、過度に低い温度が避けられることが明らかである。TWとして記録される、アセトン洗浄の温度は正(これは0℃以上の温度を意味するものと理解される)であるように選ばれることが好ましく、更に好ましい方法では、+10℃より高いように選ばれる。有利には、非冷却アセトン、即ち、室温のアセトンが使用でき、その時、洗浄操作が調節された雰囲気中で行われることが好ましい。
例えば、洗浄すべき繊維が移動する、洗浄アセトンを含む浴からなる既知の洗浄装置が使用し得る。アセトン中の洗浄時間は、本発明の実施に特別な条件に応じて、典型的には数秒から数十秒まで変化し得る。
勿論、凝固媒体のような洗浄媒体は、本発明の精神が変更されないで、アセトン以外に成分を両方含むことができる。但し、これらのその他の成分がほんのわずかの比率で存在することを条件とする。これらのその他の成分の合計比率は15%未満であることが好ましく、10%未満(凝固媒体または洗浄媒体の合計重量を基準とする%)であることが更に好ましい。更に特別には、水が凝固または洗浄アセトン中に存在する場合、その含量は5%未満であることが好ましいであろう。
洗浄後、洗浄アセトンを除去するために、ギ酸セルロースからつくられた繊維があらゆる好適な装置により乾燥される。乾燥装置の出口におけるアセトンの程度は乾燥繊維の1重量%未満の程度に調節されることが好ましい。乾燥操作は、例えば、加熱ロール上の繊維の連続進行により、または予熱窒素を吹き込む技術を主として、または付加的に使用することにより行い得る。少なくとも60℃の温度、更に好ましくは60℃〜90℃の乾燥温度が使用されることが好ましい。
本発明の方法は非常に広範囲の紡糸速度で実施でき、それは毎分数十メートルから数百メートル、例えば、せいぜい400m/分もしくは500m/分まで変化し得る。有利には、紡糸速度は少なくとも100m/分に等しく、更に好ましくは少なくとも200m/分に等しい。
ギ酸セルロースからつくられた繊維を分離し、即ち、それを直ちに再生しないことが所望される場合、特に再生操作の前にその機械的性質を監視するために、完成繊維、即ち、洗浄され、乾燥された繊維中の残留紡糸溶剤の程度が乾燥繊維の重量に対して0.1重量%〜0.2重量%を越えないように、洗浄段階が行われることが好ましいであろう。
再生セルロースからつくられた繊維を調製する目的で、こうして紡糸されたギ酸セルロースからつくられた繊維をインラインかつ連続的に再生装置に直接運ぶことがまた可能である。
II-3.ギ酸エステルからつくられた繊維の再生
知られているように、セルロース誘導体からつくられた繊維の再生方法は実際に全ての置換基を除去するようにこの繊維を再生媒体中で処理し(所謂ケン化処理)、こうして再生された繊維を洗浄し、その後にそれを乾燥させることにあり、これらの三つの操作は“再生ライン”として知られている同じ処理ラインで連続的に主として行われる。
ギ酸セルロースに関して、使用される再生媒体は一般にわずかに数%(重量%)例えば、1%から3%までの水酸化ナトリウムを含む軽く濃縮された水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液である(例えば、PCT/AU91/00151を参照のこと)。
5%(重量%)を越えない水酸化ナトリウム濃度を有する軽く濃縮された水酸化ナトリウム水溶液がまたギ酸セルロースからつくられた繊維の再生について特許または特許出願EP-B-220,642、米国特許第4,926,920号、WO 94/17136及びWO95/20629に記載されていた。それらが本発明のギ酸セルロースからつくられた繊維の再生について上記出願WO 85/05115に記載されたギ酸セルロースからつくられた繊維の再生のために本件出願人により使用された。これらの軽く濃縮された溶液は適切な再生をもたらすのに、即ち、実際に全ての置換ギ酸エステル基を除去するのに全く満足であることが判明している。それらはギ酸エステル基としての置換度が2%未満である再生繊維を難なく得ることを可能にする。
水酸化ナトリウム濃度を5%を越えて増加しようと試みて、本件出願会社は、水酸化ナトリウム濃度が約6重量%に達し、それを越えると直ぐに、ギ酸セルロースからつくられた繊維(これらは本発明のものであるか否かを問わない)のフィラメントが部分表面溶解を受け、その後に再生媒体がギ酸セルロースの真の溶剤になることを見出した。このような溶解は、部分的であっても、繊維の機械的性質に全く有害である(粘着したフィラメントの存在、侵食されたフィラメントの強度の低下、繊維を洗浄する際の難しさ、等)。
干渉する溶解のこのような問題が更に予測され、例えば、ビスコース型のセルロース繊維は10%の水酸化ナトリウム溶液に部分溶解性または完全溶解性であり(P.H.Hermans,“Physics and Chemistry of Cellulose Fibers”,パート1,Elsevier,1949)、また5%の天然セルロースが8〜10%のNaOHを含む水溶液に溶解されることが知られている(T.Yamashiki,Journal of Applied Polymer Sc-ience,44巻,691-698,1992)。
上記の異なる因子を考慮して、当業者はこうしてギ酸セルロースからつくられた繊維の再生について軽く濃縮された水酸化ナトリウム水溶液を使用したいと極めて当然に思った。
しかしながら、再生媒体中の水酸化ナトリウム濃度を上記5〜6%を充分に越えて増加し続けると、本件出願会社は或る濃度閾値を越えると干渉する溶解の現象が消失しただけでなく、特に再生繊維の或る性質、特に破断点伸び及び破断の際のエネルギーが非常に改良されることを全く驚くことに見出した。
換言すれば、通常の再生媒体(即ち、低濃度の水酸化ナトリウムを含む)はギ酸セルロースからつくられた繊維を再生するのに確かに全く充分であるが、このような媒体は本発明の再生セルロースからつくられた繊維を得ることを可能にしない。
ギ酸セルロースからつくられた繊維の再生による、本発明の再生セルロースからつくられた繊維を得るための本発明の方法は、再生媒体が高度に濃縮された水酸化ナトリウム水溶液であり、Csとして記録されるその水酸化ナトリウム濃度が16%(重量%)より大きいことを特徴とする。
18%より大きい濃度Csを使用することが好ましく、22%〜40%の濃度を使用することが更に好ましい。これは、このような濃度範囲が一般に再生繊維の破断点伸びに特に有益であることがわかったからであり、最適濃度領域は22%〜30%である。
本発明の再生方法の実施について、出発原料は特に6%より大きい破断点伸びELbを有する本発明のギ酸セルロースからつくられた繊維であることが好ましい。
再生ラインは、具体的かつ通常の用語で、再生装置、続いて洗浄装置、続いて乾燥装置からなる。これらの装置のいずれもが本発明の実施に重要ではなく、当業者はそれらを難なく特定する方法を知っているであろう。再生装置及び洗浄装置は特に浴、パイプ、タンクまたはチャンバーからなることができ、その中で再生媒体または洗浄媒体が循環している。例えば、処理すべき繊維が巻かれる二つのモーター付きロールを夫々備えたチャンバーを使用することが可能であり、その後にこの繊維が使用される液体媒体(再生媒体または洗浄媒体)とともに噴霧される。
再生装置中の滞留時間は、勿論、ギ酸エステルからつくられた繊維を実質的に再生し、こうして最終の再生繊維に関して下記の関係を確立するように調節されるべきである。
0<Ds<2
当業者は、本発明の実施に特別な条件に応じて、例えば、1〜2秒から10〜20秒まで変化し得るこれらの滞留時間を調節する方法を知っているであろう。
洗浄媒体は水であることが好ましい。これは、上記再生操作後に、セルロースからつくられた繊維がその自然膨潤媒体、即ち、水で洗浄し得るからであり、水が最善の洗浄効率を示す。水が室温で使用され、または必要により、洗浄の速度を増すために、更に高い温度で使用される。未消費の水酸化ナトリウム用中和剤、例えば、ギ酸が必要によりこの洗浄水に添加し得る。
乾燥装置は、例えば、換気トンネルオーブン(その中を洗浄された繊維が移動する)、または加熱ロール(その上に繊維が巻かれる)からなることができる。乾燥温度は重要ではなく、また本発明の実施に特別な条件の関数として、特に再生ラインにおける通過の速度に従って、広範囲、特に80℃から240℃以上まで変化し得る。200℃を越えない温度が使用されることが好ましい。
乾燥装置の出口で、繊維が受けボビンから除去され、その残留水分の程度が監視される。乾燥条件(温度及び期間)は、残留水分の程度が乾燥繊維の10重量%〜15重量%、更に好ましくは12重量%〜13重量%のオーダーであるように調節されることが好ましいであろう。
必要な洗浄時間及び乾燥時間は、使用される装置及び本発明の実施に特別な条件に応じて、典型的には数秒から数十秒まで変化する。
再生ライン中の通過中に、一方では、繊維を損傷しないようにし、他方では、水酸化ナトリウムの濃縮される再生媒体の使用により与えられる潜在的な破断点伸びのかなりの部分を失わないようにするために、過度の張力が勿論避けられるであろう。これらの張力は一般には使用される異なる装置それ自体中で利用し難い。それらは、好適な張力計を使用して、これらの異なる装置の入口で監視され、測定し得る。
こうして、再生繊維の破断点伸びに有利であることが所望される場合、再生装置、洗浄装置及び乾燥装置の入口における引張応力は10cN/テックス未満、更に好ましくは5cN/テックス未満であるように選ばれることが好ましいであろう。
実際の工業上の再生条件下で、また特に高い再生速度のために、これらの引張応力の下限は一般に約0.1cN/テックスから0.5cN/テックスにあり、それより低い値は工業上の観点から現実的ではなく、しかも望ましくない。特に、再生繊維の機械的性質はこれらの引張応力を変化することにより多少の程度まで調節し得ることが認められた。
再生(Rrとして記録される)、即ち、再生ライン中の繊維の通過の速度は毎分数十メートルから数百メートルまで、例えば、400または500m/分、または実際にはそれ以上まで変化し得る。有利には、この速度Rrは少なくとも100m/分に等しく、更に好ましくは少なくとも200m/分に等しい。
最後に、本発明の再生方法は本発明の紡糸方法とインラインかつ連続的に使用されることが好ましく、その結果、ダイ中の溶液の押出から再生繊維の乾燥までの全製造ラインが中断されない。
III.本発明の実施例
以下に記載される試験は本発明による試験または本発明によらない試験であり得る。
III-1.ギ酸セルロースからつくられた繊維
A)本発明の繊維(表1)
合計14の紡糸試験を本発明の紡糸方法に従って、また特に上記パラグラフII-1及びII-2に示された情報に従ってギ酸セルロースからつくられた繊維について行う。
凝固段階及び凝固された繊維の中性洗浄の段階の両方をアセトン中で行う。
表1は本発明の方法の実施に特別な条件及び得られた繊維の性質の両方を示す。
この表1中に使用された略号及び単位は以下のとおりである。
Test No.:試験の番号(A-1からA-14までの参照符号);
N:繊維中のフィラメントの数;
C:紡糸液中のセルロースの濃度(重量%);
DP:紡糸液中のセルロースの重合度;
Rs:紡糸速度(単位m/分);
Tc:凝固媒体の温度(単位℃);
Sr:凝固装置の出口における繊維中の残留溶剤の程度(重量%);
δc:凝固装置の出口で繊維により受けられた引張応力(単位cN/テックス);
Yc:繊維の番手(単位テックス);
Te:繊維のテナシティ(単位cN/テックス);
Mi:繊維の初期モジュラス(単位cN/テックス);
ELb:繊維の破断点伸び(単位%);
Eb:繊維の破断時のエネルギー(単位J/g);
Ds:繊維中のギ酸エステル基としてのセルロースの置換度(単位%)
これらの試験を行う際に、下記の特別な条件を更に使用する。
−全ての紡糸液を粉末セルロース(約8重量%に等しい初期含水量及び500〜600の重合度を有する)、ギ酸及びオルトリン酸(夫々が約2.5重量%の水を含む)
から調製する;
−これらの溶液は(重量%で)16〜22%のセルロース、60〜65%のリン酸及び18〜19%のギ酸(合計)を含み、その初期の(ギ酸/リン酸)重量比は約0.30に等しい;
−これらの溶液は光学的に異方性であり、かつ合計10%未満(重量%)の水を含む;
−溶液中のセルロースの置換度は16重量%のセルロースを含む溶液について40〜45%であり、その他の更に濃縮された溶液について30〜40%である;
−ダイは50または65μmの直径を有する円筒形の500〜1000のキャピラリーを含んでいた;
−紡糸温度は40〜50℃である;
−SSFまたはSDF値は2〜6(試験A-1、A-5〜A-9及びA-14について2〜4;
その他の試験について4〜6)である;
−非凝固流体層は空気の層(厚さは試験に応じて10mmから40mmまで変化する)を含む;
−凝固媒体中のリン酸の程度が10%未満(凝固媒体の重量%)のレベルで安定化される;
−洗浄アセトンの温度(Tw)は常に正であり、15〜20℃である;
−80℃に加熱された窒素を吹き込むことにより補給された、加熱ロールに通すことにより繊維を70℃で乾燥させる;乾燥装置の出口におけるアセトンの程度は0.5%未満(乾燥繊維の重量%)である;
−完成された繊維、即ち、洗浄され、乾燥された繊維に関する残留リン酸の程度は0.1%未満(乾燥繊維の重量%)である。
































Figure 0004034808
表1を読むと、試験A-13を除いて、凝固アセトンの温度Tcは常に負であり、夫々の場合の大半で-10℃未満であることが特に注目される。
溶液中のセルロースのDPは400〜450であり、これは特に可溶化後の低い重合を示す。
加えて、表1中の全ての試験について、下記のことが好ましい条件の少なくとも一つが確立されることがわかり、
Sr<100%;δc<5cN/テックス
またこれらの二つの関係が夫々の場合の大半で同時に確立されることがわかる。
更に好ましい方法では、下記の二つの関係が同時に確立される。
Sr<50%;δc<2cN/テックス
更に、紡糸速度が高い。何となれば、それらが殆どのパートについて150m/分に等しいからである。
表1に示された全ての機械的性質は、番手(3回の測定に関する平均)を除いて、10回の測定に関して計算された平均値であり、平均に関する標準偏差(この平均の%として)は一般に1〜2.5%である。
表1を読むと、全ての繊維が下記の関係を確立することがわかる。
−Ds≧2;
−Te>45;
−Mi>800;
−ELb>6;
−Eb>13.5
本発明のギ酸セルロースからつくられた繊維について、Ds値は25〜50%であることが好ましい。これらの実施例において、それらが全て30〜45%であることがわかる。実際に、それらは相当する紡糸液について測定された置換度の値と同一である。
それらの破断点伸びELbは7%より大きいことが好ましく(実施例A-4〜A-6)、8%より大きいことが更に好ましい(実施例A-5及びA-6)。
更に、表1のこれらの繊維は、殆どのパートについて、下記の好ましい関係を確立する。
Te>60;Mi>1200;Eb>20
更に好ましくは、下記の関係の少なくとも一つが確立される。
Te>70;Mi>1500;Eb>25
表1中の全ての実施例について、下記の関係が確立されることが更にわかる。
Mi<1800
しかしながら、例えば、1800〜2200cN/テックス、または更にそれ以上の特に高い初期モジュラス値がまた、本発明の紡糸方法のパラメーターを調節することにより、一般に破断点伸びを損なって、本発明のギ酸エステルからつくられた繊維に関して得られる。これは、特に、紡糸ラインにおける引張応力を、例えば、凝固装置の出口で、洗浄中または繊維の乾燥中に増加することにより達成し得る。また、比較的高い濃度C、特に24〜30%の使用が非常に高い初期モジュラス及びテナシティの発生に有利であることが観察された。
B)本発明によらない繊維(表2)
5種の紡糸試験(B-1からB-5まで参照符号を付される)を本発明によらない紡糸方法に従ってギ酸セルロースからつくられた繊維について行う。
紡糸に使用した一般条件及び特別な条件は、一つの例外は別として、上記表1中の繊維について使用した条件と同じである。凝固された繊維の中性洗浄の段階をアセトンではなく水(上記出願WO 85/05115のように)を用いて行う。この洗浄水は15℃付近の温度のプロセス水である。更に、繊維は250〜1000のフィラメントを含む。
表2は本発明の方法の実施に特別な条件及び得られた繊維の性質の両方を示す。表2に使用した略号及び単位は上記表1と同じである。
Figure 0004034808
上記出願WO 85/05115により教示された方法に従って紡糸された、表2中のこれらの繊維はテナシティ及び初期モジュラスの実に有利な特性を示し得ることが注目される。特に、従来技術の通常の再生段階(軽く濃縮されたNaOH水溶液)後に、それらは非常に高い初期モジュラス値(3000〜3500cN/テックス、または実際にはそれ以上)と組み合わせて非常に高いテナシティ(110〜120cN/テックス、またはそれ以上)を有する再生繊維に変換し得る。
それにもかかわらず、表2中のこれらの繊維のいずれもが本発明によるものではなく、下記の関係が確立されない。
ELb>6
III-2.再生セルロースからつくられた繊維
A)本発明の繊維(表3)
合計23種の再生試験を本発明の再生方法に従って、上記パラグラフII-3に示された情報に従ってギ酸セルロースからつくられた繊維について行う。
全てのこれらの試験を紡糸操作とインラインかつ連続的に行い、紡糸操作を本発明の紡糸方法に従って行う。特に、凝固段階及び凝固された繊維の中性洗浄の段階の両方をアセトン中で行う。
再生媒体は水酸化ナトリウム水溶液であり、その濃度Csは全ての場合に16%より大きい。
表3は本発明の方法の実施に特別な条件及び得られた繊維の性質の両方を示す。
この表3中に使用した略号及び単位は下記のとおりである。
Test No.:試験の番号(C-1からC-23まで参照符号を付される);
N:再生繊維中のフィラメントの数;
Cs:再生媒体中の水酸化ナトリウムの濃度(重量%);
Rr:再生の速度(単位m/分);
Yc:繊維の番手(単位テックス);
TE:繊維のテナシティ(単位cN/テックス);
MI:繊維の初期モジュラス(単位cN/テックス);
ELB:繊維の破断点伸び(単位%);
EB:繊維の破断時のエネルギー(単位J/g);
これらの試験を行う際に、下記の特別な条件を更に使用する。
−ギ酸セルロースからつくられた出発繊維(そのサンプル(数十メートル)が、それらの機械的性質を監視するために、紡糸装置の出口で系統的に除去された)
は全て本発明によるものである。特に、それらは全て6%より大きい破断点伸びを有する;
−使用した再生媒体は室温(約20℃)である;
−再生装置、洗浄装置及び乾燥装置は、処理すべき繊維が巻かれるモーター付きロールを備えたチャンバーを含む;
−再生が紡糸とインラインかつ連続的に行われるので、表3中に示された再生の速度Rr(55m/分から200m/分まで)はこうして紡糸速度Rsに等しい;
−洗浄が約15℃の温度でプロセス水で行われる;
−洗浄された繊維を下記の特別なスキームに従って80℃から240℃まで変化する異なる温度で加熱ロールで乾燥させる。試験C-2、C-3、C-5、C-10及びC-17について80℃から120℃まで;試験C-11について240℃;その他の試験について160℃から190℃まで;
−再生装置、洗浄装置及び乾燥装置の出口で測定した引張応力は常に10cN/テックス未満であり、試験C-7、C-9及びC-15(これらの場合、5cN/テックス以上の張力を上記装置の少なくとも一つの入口で測定した)を除く大半の場合には5cN/テックス未満である;これらの引張応力は多数の試験:C-2〜C-5、C-10〜C-11、C-13〜C-14及びC-16〜C-23について上記の三つの装置(再生、洗浄及び乾燥)
の夫々の入口で2cN/テックスより低い;
−再生装置における滞留時間は洗浄装置と同様に15sのオーダーであり、一方、それらは乾燥装置では10sのオーダーである;
−乾燥装置の出口で、繊維は12%〜13%(乾燥繊維の重量%)のオーダーの残留水分の程度を示す。
Figure 0004034808
パラグラフI-2.2に示されたような置換度の測定は、表3中の全ての繊維が0〜2%、大半の場合には0.1〜1%のDs値を有することを示した。
先の結果について、表3に示された全ての機械的性質は、番手(3回の測定に関する平均)を除いて、10回の測定に関して計算された平均値であり、これらの異なる平均に関する標準偏差(平均の%として)は一般に1〜2.5%である。
表3中の再生繊維は下記の全ての関係を確立することがわかる。
−TE>60;
−MI>1000;
−ELB>6;
−EB>17.5
それらの破断点伸びELBは7%より大きいことが好ましく(実施例C-4〜C-11、C-13〜C-16、C-19及びC-20)、8%より大きいことが更に好ましい(実施例C-4)。
特に、破断点伸びの最良の値(試験C-4についてELB=8.4%)が、16重量%のセルロース(それについて、DPは約420に等しい)を含む溶液のインラインの紡糸及び再生により得られた。機械的性質を測定するために紡糸出口で除去されたギ酸エステルからつくられた相当する繊維のサンプルは下記の性質を示した。
Ds=40; Te=60; Mi=1290; ELb=8.4; Eb=25.3
更に、表3中の繊維の大半が下記の関係を確立する。
TE>80;MI>1500;EB>25
それらの多数が下記の関係の少なくとも一つを確立する。
TE>100;MI>2000;EB>30
特に高いテナシティ(100cN/テックス以上)が、破断点伸び及び破断時のエネルギーの高い値と組み合わせて、試験C-1、C-7、C-18、C-21及びC-22の場合に特に記録され、実際に試験C-18、C-21及びC-22の場合に2400cN/テックスより大きい、初期モジュラスの高い値でさえも記録される。
表3中の全ての実施例について、下記の関係が確立されることが更にわかる。
MI<2600
しかしながら、例えば、2600〜3000cN/テックスの特に高い初期モジュラス値がまた、本発明の再生方法のパラメーターを調節することにより、一般に破断点伸びを損なって、再生繊維に関して得られる。これは、特に、再生ラインで引張応力を増加することにより、または、例えば、1800〜2200cN/テックスの特に高い初期モジュラス値を既に示す出発繊維(ギ酸セルロースからつくられた)を選択することにより達成し得る。
表3中の実施例の大半について、フィラメント番手(フィラメントの数Nにより割られた繊維の番手Yc)は約1.8dtex(デシテックス)(セルロース繊維について最も普通のフィラメント番手)に等しいが、これは、知られている方法で紡糸条件を調節することにより、大きな程度に、例えば、1.4dtexから4.0dtexまで、または実際にはそれ以上まで変化し得る。例えば、試験C-19及びC-20の再生繊維は夫々2.9dtex及び3.6dtexのフィラメント番手を有する。一般に、フィラメント番手が増加する時に、テナシティTE及び初期モジュラスMIの減少と合わせて、破断点伸びELBの増加が観察された。
B)本発明によらない繊維(表4)
合計9種の再生試験を本発明によらない再生方法に従ってギ酸セルロースからつくられた繊維(D-1からD-9までの参照符号を付される)について行う。
再生条件は、一つの例外は別にして、上記表3中の本発明の繊維について使用した条件と同じである。再生媒体は水酸化ナトリウム水溶液であり、その水酸化ナトリウム濃度Csはせいぜい16%に等しい。
表4は本発明の方法の実施に特別な条件及び得られた繊維の性質の両方を示す。この表4に使用した略号及び単位は上記表3と同じである。






Figure 0004034808
監視後に、置換度DEに関する値が常に2%未満、更に特別には0.1%〜1.0%である限り、全ての得られた繊維が実際に再生される。
表4中のこれらの繊維はテナシティ及び初期モジュラスの特に高い特性(特にD-7〜D-9を参照のこと)を示すことができるが、それらのいずれもが本発明によるものではなく、下記の関係が確立されないことがわかる。
ELB<6
例D-4及びD-5(Cs=6%及び12%)において、フィラメントの表面に部分溶解が観察され、結合されたフィラメントの存在及び繊維の不十分な全般の状態をもたらし、中性洗浄を行うことの非常に大きな困難をもたらした。例D-6において、同じ現象が見られたが、少ない程度であった。これは本発明の方法の限界(Cs=16%)にあり、特に6%に極めて近い破断点伸びが記録される。
例D-3及びC-12(表3)の比較は、再生操作が、厳密に同一である特別な条件下で、再生媒体中の水酸化ナトリウム濃度(試験D-3について3%、試験C-12について30%)を除いて、ギ酸セルロースからつくられた同じ繊維について行われた限り、実に重要であることを判明する。
実際に、軽く濃縮された水酸化ナトリウム溶液による通常の再生(試験D-3)に関して、本発明の方法(試験C-12)は初期モジュラス値を有意に変化しないでテナシティの値(18%の増加)、破断点伸びの値(33%の増加)及び破断時のエネルギーの値(55%の増加)をかなり改良することを可能にしたことがわかる。
ギ酸セルロースまたは再生セルロースからつくられた、上記表1〜4中の全ての繊維(それらが本発明のものであるか否かを問わない)は、特に最初の出願WO85/05115に記載されたような、液晶溶液から紡糸された製品に典型的な構造及び典型的な形態を示す。
特に、それらのフィラメントが光学顕微鏡または走査電子顕微鏡で研究される場合、夫々のフィラメントがフィラメントの軸の周囲の互いの内部でフィットされた層を少なくとも一部含むような形態が観察される。加えて、夫々の層中で、一般に、光方向及び結晶化方向がフィラメントの軸に沿って実際に周期的に変化することがわかる。このような構造または形態が“層状(banded)構造”の名称でその文献に普通に記載されている。
C)本発明の再生繊維からつくられた繊維のその他の性質−タイヤ中の使用
上記の改良された機械的性質に加えて、本発明の再生セルロースからつくられた繊維は、それらが、一方では、上記の最初の出願WO 85/05115に記載された繊維、他方では、レーヨン型の通常の繊維と比較される時に、多数のその他の利点を示す。
C-1.WO 85/05115に記載の再生セルロースからつくられた繊維との比較
最初の出願WO 85/05115に記載された繊維と比較して、本発明の繊維は特に実験室試験及びタイヤを運転する場合の両方でかなり改良された耐疲労性を示す。
圧縮に関する耐久性(実験室試験)
特に強化タイヤ構造を目的とする工業用繊維について、耐疲労性は、これらの繊維の集成体を種々の既知の実験室試験、特にディスク疲労試験の名称で知られている疲労試験(例えば、米国特許第2,595,069号及びASTM規格D 885-591、改訂67Tを参照のこと)にかけることにより分析し得る。
当業者に公知のこの試験(例えば、米国特許第4,902,774号を参照のこと)は実質的には前もって接着剤で処理された試験繊維の諸撚糸をゴムブロックに混入し、その後に、硬化した後、こうして形成されたゴム試験標本を二つの回転ディスクの間で非常に多数のサイクル(例えば、100,000〜1,000,000サイクル)で圧縮により疲労させることにある。疲労後に、諸撚糸が試験標本から抜き出され、それらの残留破断強さが未疲労試験標本から抜き出された対照諸撚糸の破断強さと比較される。
本発明の繊維は、最初の出願WO 85/05115の繊維と比較されると、ディスク疲労試験で著しく改良された耐久性を系統的に示す。
例えば、7%より大きい好ましい破断点伸びを示す本発明の繊維及び全てが5%未満の破断点伸びを有する出願WO 85/05115に記載の繊維を、同じ180 x 2(テックス)420/420(t/m)を有する諸撚糸(夫々、型“A”及び“B”のもの)を形成するために集成した。
知られているように、このような処方は、夫々の諸撚糸が二つの紡績糸(マルチフィラメント繊維)を含み、夫々が加撚の前に180テックスの番手を有し、これらが最初に第一段階中で一方向に420t/mで個々に加撚され、その後に第二段階中で逆方向に420t/mで両方とも一緒に加撚されることを意味する。このような諸撚糸について、らせん角度は約27°であり、撚り係数(または撚り因子)Kは約215であり、
K=諸撚糸の撚り数(単位t/m)x[諸撚糸の番手(単位テックス)/1520]1/2(セルロース相対密度:1.52)
“A”型(本発明による)及び“B”型(WO 85/05115による)の幾つかの諸撚糸を上記ディスク疲労試験(夫々のサイクルで約16%の試験標本の圧縮の最大程度で、2700サイクル/分で6時間)にかけた。その後の破断強さの減少を抜き出された諸撚糸について記録した(“B”型の諸撚糸について記録された最大減少について100を基準として、相対値で示される)。
−型“A”諸撚糸:25〜40;
−型“B”諸撚糸:70〜100
こうして、本発明の再生繊維の耐疲労性は、最初の出願WO 85/05115の再生繊維に対して平均で2〜3倍に著しく改良される。
タイヤの耐久性
タイヤを強化する工業用繊維の能力は、知られているように、ゴムプライを試験繊維(これらは前もって接着剤で処理されていた)の諸撚糸で強化し、こうして形成された布をタイヤ構造、例えば、カーカスプライに混入し、その後にこうして強化されたタイヤを走行試験にかけることにより分析し得る。
このような走行試験は当業者に広く知られている。それらは、例えば、オートマチック・マシンについて行うことができ、これらは走行中の多数のパラメーター(圧力、負荷、温度等)を変化することを可能にする。走行後に、諸撚糸が試験タイヤから抜き出され、それらの残留破断強さが走行にかけられなかった対照タイヤから抜き出された対照諸撚糸の破断強さと比較される。
本発明の繊維は、それらがラジアルタイヤカーカスを強化するのに使用される時に、WO 85/05115に記載の繊維に対し著しく改良される耐久性を示すことがわかった。特に、従来技術の繊維が特に苛酷な走行条件のために耐性を示さなかった場合(上記“B”型の諸撚糸の破損)に、本発明の繊維(上記“A”型の諸撚糸)は数万キロメートル後でさえも実際に減少を示さないことが観察された。
C-2.レーヨン型の通常の繊維との比較
本発明の再生繊維は、それらの著しく高い伸びの機械的性質に加えて、通常のレーヨン繊維と比較してその他の全く有利な特性を示す。
耐湿性
セルロース繊維の耐湿性は種々の既知試験を使用して分析でき、簡単な試験は、例えば、繊維を所定の時間にわたって水浴中に完全に浸軟し、その後に、それらを単に排水して乾燥させた後にそれらを水浴の出口で張力に直ちにかけることにより繊維の破断強さを湿潤状態で測定することからなる。
水中で室温で24時間貯蔵した後に、本発明の繊維に関する湿潤状態の破断強さは、場合に応じて、公称の破断強さ(即ち、乾燥状態で、パラグラフI-4に示されたようにして測定された)の80〜90%に相当することがわかる。レーヨン繊維について、それは公称の破断強さの約60%以下に相当する。
こうして、本発明の繊維は通常のレーヨン繊維よりも著しく水分に感受性ではない。それらは湿った環境中で良好な寸法安定性を示す。
諸撚糸に関する機械的性質
本発明の繊維は、上記のように、高い機械的性質または非常に高い機械的性質を有する強化集成体、特に諸撚糸を形成するために集成でき、その構造は考えられる用途に従って非常に大きな程度に適合し得る。例えば、撚り数、即ち、らせん角度の増大は一般に諸撚糸の耐久性を改良し、その破断点伸びを増大するが、そのテナシティ及びその伸びモジュラスに有害であることが知られている。
例えば、29〜30°のオーダーのらせん角度に相当する非常に高い撚り数(これらは諸撚糸に優れた耐久性を与える)についてさえも、加撚状態の本発明の繊維は、未加撚レーヨン繊維のテナシティより依然として優れているテナシティを有する。
例えば、本発明の繊維から既知の加撚方法に従って調製された、本発明の諸撚糸は、諸撚糸のらせん角度が20度から30度まで変化される時に、75-80cN/テックスから45-50cN/テックスまで変化し得るテナシティ、例えば、23-24°のらせん角度について58-66cN/テックス(K=約180)または26-27°のらせん角度について53-57cN/テックス(K=約215)のオーダーのテナシティ、並びに約10%(場合によっては、それ以下)に達し得る破断点伸びを示す。
こうして、均等の撚り数(同じらせん角度)を有する本発明の諸撚糸のテナシティは、レーヨン型の繊維から得られる諸撚糸に関するテナシティ(そのテナシティは、知られているように、加撚の前に45-50cN/テックスをかろうじて越える)よりも一般に極めて大きい。こうして、少量のそれらを通常のレーヨン繊維により普通に強化される物品中に使用することが可能であろう。
タイヤの耐久性
サイズ165/70 R 13のタイヤを装備した自家用車に使用される実際の走行条件について、本発明の繊維(それらは液晶相から生じるので、著しく硬質かつ結晶性の構造にもかかわらず)は走行試験(例えば、20,000kmから80,000kmまで5000km毎に監視する)中に同一の諸撚糸構造について通常のレーヨン繊維の耐久性と同一の耐久性を示すことが予期せずにわかった。
伸びモジュラス
本発明の繊維(その主たる特徴は改良された破断点伸びである)は全ての場合に通常のレーヨン繊維の初期モジュラス(知られているように、約1000cN/テックス)よりも著しく高い初期モジュラス(これは全く高く留まる(例えば、表3中約1500〜2600cN/テックス))を有する。
モジュラスに関する本発明の繊維のこの優れている点(これは、勿論、これらの繊維の強化集成体に関して見られる)は、通常の工業用レーヨン繊維により普通に強化される物品について、改良された寸法安定性の可能性をこのような物品に与えることにより実に有益であり得る。これは、夫々の型の集成体に加えられる負荷または力“F”の同じ変化Δ(F)について、本発明の集成体が長さまたは伸び“EL”の著しく小さい変化Δ(EL)を受けるからである。
要するに、ギ酸セルロースからつくられた繊維及び再生セルロースからつくられた繊維の両方に関する、本発明の結果と出願WO 85/05115に記載された結果の比較は、本発明が破断点伸びの値(これらは或る場合には2倍よりも大きい)をかなり増加するだけでなく、テナシティ値を非常に高いレベルに維持し、更には実際にそれらを多くの場合に改良することを可能にしたことを示す。
このような結果の利点が特に強調される必要がある。
本発明により導かれた改良は、実質的に同じに留まる破断時のエネルギー(力−伸び応力曲線の下の合計面積が実質的に一定に留まる)との所定の[テナシティ−破断点伸び]組み合わせにおける別の最適値に向かっての単なるシフトからなるものではない。それは、実際には、あらゆる[テナシティ−破断点伸び]組み合わせのかなりの改良からなり、最初の出願WO 85/05115の繊維について得られた力−伸び曲線を、いわば“延長”し、こうして著しく改良された破断時のエネルギー(力−伸び曲線の下の増加された面積)を得ることを可能にする。
勿論、本発明は上記実施例に限定されない。
こうして、例えば、異なる構成が、本発明の精神を変更しないで、上記の基本的な構成(セルロース、ギ酸、リン酸、アセトン及び水酸化ナトリウム)に必要により加えられてもよい。
こうして、この明細書に使用される“ギ酸セルロース”という用語は、セルロースのヒドロキシル基がギ酸エステルに加えてギ酸エステル基以外の基、例えば、エステル基、特に酢酸エステル基により置換されている場合を含み、これらのその他の基としてのセルロースの置換度は10%未満であることが好ましい。
好ましくは基本的な構成と化学的に非反応性の追加の構成は、例えば、可塑剤、サイズ剤、色素または溶液の調製中に必要によりエステル化し得るセルロース以外のポリマーであってもよい。また、それらは、例えば、紡糸液の紡糸性、得られる繊維の使用特性またはゴムマトリックスへのこれらの繊維の接着性を改良することを可能にする種々の添加剤であってもよい。
また、本発明は、例えば、スリットの形態の単一キャピラリーの種々の形状を有する一種以上の非円筒形キャピラリーを含むダイが使用される場合を含み、その時には明細書及び請求の範囲に使用される“繊維”という用語は、特に、ギ酸セルロースからつくられたフィルムまたは再生セルロースからつくられたフィルムの場合を含むことができる更に一般的な意味で理解される必要がある。

Claims (2)

  1. 下記の関係:
    −Ds≧2;
    −Te>45;
    −Mi>800 ;
    −ELb >6;
    −Eb>13.5
    (Dsはギ酸エステル基としてのセルロースの置換度(単位%)であり、Teはそのテナシティ(単位cN/テックス) であり、Miはその初期モジュラス(単位cN/テックス)であり、ELbはその破断点伸び(単位%)であり、かつEbはその破断時のエネルギー(単位J/g)である)
    を特徴とするギ酸セルロースからつくられた繊維であって、前記繊維は液晶相から生じるものであり、さらに、前記繊維は、所謂乾式−ジェット−湿式紡糸技術に従って、リン酸をベースとする溶剤中でギ酸セルロースの溶液を紡糸する方法において、繊維の凝固の段階及び凝固された繊維の中性洗浄の段階が両方ともアセトン中で行われることを特徴とする紡糸方法によって得られうるものである、前記繊維。
  2. 下記の関係:
    −0<Ds<2;
    −TE>60;
    −MI>1000;
    −ELB>6;
    −EB>17.5
    (Dsはギ酸エステル基としてのセルロースの置換度(単位%)であり、TEはそのテナシティ(単位cN/テックス)であり、MIはその初期モジュラス(単位cN/テックス)であり、ELBはその破断点伸び(単位%)であり、かつEBはその破断時のエネルギー(単位J/g)である)
    を特徴とするギ酸セルロース繊維から再生されたセルロースからつくられた繊維であって、前記ギ酸セルロース繊維は請求項1に記載のギ酸セルロースからつくられた繊維であり、前記繊維は液晶相から生じるものであり、さらに、前記繊維は、ギ酸セルロースからつくられた繊維を再生媒体に通し、洗浄し、その後に乾燥させることによる繊維の製造方法において、再生媒体が水酸化ナトリウム水溶液であり、Csとして記録される水酸化ナトリウム濃度が16%(重量%)より大きいことを特徴とする繊維の製造方法によって得られうるものである、前記繊維。
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