JP4034223B2 - Nmr装置用超電導マグネットおよびnmr装置 - Google Patents

Nmr装置用超電導マグネットおよびnmr装置 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は核磁気共鳴分析装置(NMR装置)に関する。
【0002】
【従来の技術】
核磁気共鳴を利用した有機物の分析方法は、近年急速な進歩を遂げつつある。特に、強力な超電導磁石技術と組み合わされることによって、複雑な分子構造をもつタンパク質などの有機化合物を原子レベルで効率よく構造解析することが可能になってきた。
【0003】
本発明は、物質の原子レベルの構造と相互作用を解析するためのNMR装置に関し、特に微量のタンパク質を溶解した水溶液中のタンパク質分子の原子レベルの構造と相互作用を解析する場合に適するものである。なお本発明のNMR装置は、いわゆるミリメートル級の画像分解能を必要とする人体の断層撮影を目的とした医療用MRI画像診断装置に比べ、磁場強度で1桁以上高く、磁場均一度は4桁、安定度についても3桁高い性能が要求され、全く異なる設計技術、装置製作技術が要求される特殊なエネルギー分光装置である。
【0004】
従来の高分解能核磁気共鳴分析装置に関する詳細は下記非特許文献1に記載されている。そしてNMR装置をタンパク質の解析に利用する場合の典型的な装置構成に関連する最近の技術のうち、超伝導磁石に関する技術としては下記特許文献1があり、信号検出技術に関連する技術としては下記特許文献2乃至4がある。これらの報告によれば、従来のタンパク質解析用の高感度な核磁気共鳴分析装置は、全て鉛直方向に主磁場を発生するソレノイドコイルの組み合わせによって構成された超電導磁石装置を用い、400〜900MHzの電磁波を試料に照射し、試料から発せられる共鳴波を鞍形または鳥籠型の検出コイルを利用して検出している。特に、下記特許文献2では、NMR信号の受信時の熱ノイズを低減すべく、低温に冷却された検出器を利用し、S/N比を改善する技術についての記載が有る。
【0005】
歴史的にみて高感度なNMR装置は、アンテナおよび磁石装置等のシステムの基本構成に改良を加えるのではなく、超電導磁石により発生する中心磁場の強度を高めることによって感度向上を果たしてきた。溶液を用いたタンパク質の解析において、中心磁場強度の向上は、感度の向上と、化学シフトの分離を明確にする効果があるためである。一方、現在迄に報告されているNMR測定の感度の最高値は900MHzのNMR装置により得られているが、その具体的な構成は図8に示されるようなものである。図8に例示したNMR装置について説明する。図8のNMR装置は、NMR装置の設置面に対して垂直な方向の軸を中心として同心に配置された複数の超電導コイルを有して構成されている。なお上記最高の感度をもつ900MHzのNMR装置は中心磁場21.1T(テスラ)の大型超電導磁石装置を利用しているが、装置の基本構成は従来の構成と何ら変わっていない。また、理解のしやすさのため超電導コイル部分のみの断面斜視図を仮想的な中心軸とともに図9に示す。図9のNMR装置において、超電導磁石装置において発生する磁場は上記仮想的な中心軸に沿った方向である。
【0006】
中心磁場の強度向上を図る一方で、検出コイルの形状によって感度を向上する技術についても検討が加えられており、下記非特許文献1の326頁に記載がある。下記非特許文献1では検出コイルとしてのソレノイドコイルが、鞍形や鳥籠型に比較して様々な利点を有していることを開示している。この利点としては、インピーダンスのコントロール容易性、フィリングファクタ、RF磁場の効率などの点が挙げられている。
【0007】
しかしながら、従来の超電導磁石の構成では、タンパク質を水溶液中に溶解させて計測する場合、磁場に対して垂直に置かれたサンプル管の周りにソレノイドコイルを巻くことは実際には不可能であり、一般には利用されない。極めて例外的に利用される場合があるが、その場合、特別にデザインしたミクロサンプル管を利用して、かつ特別のプローブを用いて計測する。なお特殊な例として、下記文献5では、高温超電導のバルク磁石を水平方向に着磁し、ソレノイドコイルでNMR信号を検出する技術が記載されており、また下記特許文献6では、装置の天井高さの制約を取り除くための一般的なNMR用途に適した超電導磁石と冷却容器の構成方法を開示している。
【0008】
【非特許文献1】
荒田洋冶著、「タンパク質のNMR」、共立出版、1996年
【特許文献1】
特開2000−147082号公報
【特許文献2】
米国特許第6121776号明細書
【特許文献3】
特開2000−266830号公報
【特許文献4】
特開平6−2637912号公報
【特許文献5】
特開平11−248810号公報
【特許文献6】
特開平7−243410号公報。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
特に近年タンパク質の研究に対するニーズの高まり、タンパク質の水への溶解度が小さい試料の分析ニーズが高まり、NMRの測定感度を向上させる必要が生じている。このようなニーズに核磁気共鳴分析装置を適合させるには、従来同等の試料空間を維持したまま、測定感度の向上をはかる必要があるとともに、長時間のデータ積分時間中での超伝導磁場の安定性の確保も必須である。測定感度の向上は、同程度の溶解度の試料であれば、測定時間の短縮ばかりでなく、サンプル量の低減が可能になる利点が特に大きく、溶解度の小さなタンパク質の解析が可能になる効果がある。従い、タンパク質の解析に用いられるNMR分析装置は、従来のNMRと比較して特段に優れた検出感度と安定性が要求されるほか、1週間以上の長時間にわたる正確で、かつ、安定的なNMRシグナルの検出が必要となる。これは計測中に磁場が変動すると、NMRシグナルのピークが移動してしまうためであり、特に相互作用の計測では、ピークの移動が、相互作用によるものか、或いは、磁場の不安定性に起因するものか、判別ができなくなるためである。
【0010】
また、磁場が不均一であれば、所望のピークが重なってしまい、相互作用の判別が困難になるなどの問題を生じる。よって、タンパク質の様々な解析を目的とした今後のNMR技術は、従来の一般的なNMR装置の単純な延長上にはない新たな技術開発が必要であることにまず留意しておく必要がある。
【0011】
ここで例をあげて説明すると、一般的なNMR装置の磁場均一度の仕様は、試料空間で0.01ppm、時間安定度で0.01ppm/hである。これを一般的な用途の600MHzのプロトンNMRで換算すると、6Hzの許容誤差になる。しかしながら、前述したタンパク質の相互作用解析の場合では、少なくとも、1.0Hz以下の空間、および、時間分解能が必要であり、望ましくは0.5Hz以下が必要である。
【0012】
従って、これらの磁場均一度と磁場の時間的安定度を実現可能な方法で、超伝導磁石や検出コイルを最適に構成する必要がある。つまり従来一般的に利用されていたNMR装置の性能では不十分であり、従来より1桁以上高い磁場の安定性と磁場均一度が要求されるのである。
【0013】
従来技術は、主として、磁場強度の向上に頼って感度向上したため、装置が大型化し、漏洩磁界の問題と床強度の問題から、専用の建物を必要とするなど、設置性の問題も新たに生じている。
【0014】
さらに、超電導磁石のコストが増大するなどの課題を生じている。また、この方法による感度向上は、超電導材料の臨界磁界による制約で概ね21Tの上限に達し、これ以上の感度向上のためには、磁場強度に頼ることのない新たな手段による検出感度向上技術が必要である。
【0015】
また、前述したように、ソレノイドコイルを利用した高感度測定の方法は、極く微量の特別のサンプル管と特別の検出プローブで利用可能であったが、およそ10cc程度の一般的なタンパク質溶液による解析には簡単に適用できなかった。更に上記特許文献5にあるように、強力な磁石によって水平方向に磁場を発生し、ソレノイドコイルでNMR信号を検出する方式では、高温超電導体の表面で10T未満の磁場を発生できるのみであって、試料部分の磁場は高々数テスラ程度であって、タンパク質の解析に必要な11テスラ以上の磁場、好ましくは14.1テスラ以上の磁場を所望の試料空間に発生することは、この方法では不可能である。
【0016】
また、この方法では、タンパク質の解析に必要な時間安定度1.0Hz/時以下を達成することは、高温超電導体の磁束クリープ現象の効果で実質的に困難であった。また、タンパク質の解析に必要な磁場均一度についても、直径10mm×長さ20mmの空間でプロトン核磁気共鳴周波数で1.0Hz以内の磁場均一度を達成することは、高温超電導バルク体材料の製造プロセスに起因した不均質性から困難であった。
【0017】
このように従来技術は、タンパク質の解析ニーズに対応するためのブレークスルー技術の開発が求められている一方で、磁場による感度向上の限界に達してしまった現在、さらなる感度向上のための新しい解決方法が求められている。
【0018】
今後、ニーズが高まると考えられる溶液中におけるタンパク質と基質、リガンド等の低分子の相互作用を効率よく、かつ、精度良く解析する場合には、経験的には、600〜900MHz、中心磁場で14〜21T程度で、適切なサンプル量で測定できることが望ましく、現状より計測感度を高め、スループットを高めることが望まれている。
【0019】
また一般に、800MHz以上の装置では、超電導特性を極限まで利用するため、4.2Kの液体ヘリウムを減圧し、1.8Kと過冷却して運転する。このため、装置運転上の煩雑さが増すほか、メンテナンスも大変となる。また、磁石装置が大型化するため、漏洩磁界大きく、通常は専用の建物を必要とする。特に、装置の設置性の観点では、従来方式では、中心磁界の増大と共に、鉛直方向に漏洩磁界が増大し、たとえば、900MHz級の装置では高さ方向に5mもの漏洩磁界を生じるため、天井高さの高い建築物を必要とする。この場合、建築コストが増大する問題もある。従来の900MHz超電導磁石の大きさは、アイ・トリプルイ−・トランザクションズ・アップライド・スーパーコンダクティビティー IEEE.Transactions on Applied Superconductivity Vol.11 No.1 p2438に記載されているように、磁石部分の大きさだけで幅直径1.86m高さは数メートルであった。
【0020】
以上、本発明の目的は、上記課題を解決する、均一な磁場を発生させることができ、特にたんぱく質等の測定に適した高感度なNMR装置を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を受け、発明者らは、主として通常の5〜10mm径のサンプル管を用い試料溶液を概ね30mm高さ充填した状態で、600MHz(14.1T)程度でNMRシグナルの計測感度を従来の少なくとも40%以上高め、かつ、タンパク質の解析に必要な超伝導磁石の時間的安定度および空間的均一度を提供可能な新規な核磁気共鳴分析装置を提供することを想定した。但し本発明の構成は、上記目的を達成する限りにおいて、上記スペックに限られるものではなく、本発明を応用して極限性能を目指すことも可能であり、用途によっては、従来の磁場限界であった21.1Tすなわち900MHz、1.8Kで運転することがあってもよく、その場合、従来の方式と比較して40%の感度向上が可能である。
【0022】
発明者らは、磁場強度向上以外によっても、従来より著しく信号強度を高める方法が無いかについて鋭意検討を重ねてきた。その結果、以下に述べる新規な方法によれば、この問題を解決できることを見いだした。
【0023】
そのポイントの一つは、試料空間として直径5〜10mm、高さ20mmの溶液NMRに適する400MHz以上の磁場、好ましくは600MHz〜900MHz程度で、検出コイルを通常のNMR研究用のサンプル管がそのまま利用できる5〜10mm、高さ20mm程度で、ソレノイド方式の検出コイルを適用することによって感度向上を図るものである。原理的には、検出コイルの形状因子の差によって少なくとも1.4(√2)倍の感度向上が期待できる筈であり、その他の因子によって更に向上が期待でき、データの積算時間は1/2以下に短縮することができる。溶液状のサンプルは直径5〜10mmサンプル管に高さ20〜30mm程度、挿入され上部から鉛直方向に挿入される。鉛直方向を巻軸としたソレノイドコイルでNMR信号を感度よく検出するには、超電導磁石で発生する磁場を水平方向に配置し、その磁界中心に、容易に着脱できる溶液サンプルを配置できるようにすることが極めて有用である。そのため、超電導磁石の構成は、従来の単純なソレノイド磁石と異なり、左右に分割された一対のスプリットマグネットで構成する必要が生じる。NMR装置用マグネットには、上述したように、サンプルを計測する空間にppbオーダーで非常に均一な磁場を発生する必要があり、従来、14.1Tクラスの高磁場スプリットマグネットでこの磁場の均一性を達成する方法が見いだされていなかった。本発明の要点は、図10に示すように、所定間隔を有して対向配置された1組の多層超電導コイルからなるスプリット型超電伝導マグネットであって、少なくとも最内層部分に、主磁場を発生する方向とは逆向きの電流を搬送するコイルを備えていることにある。
【0024】
ここで図10に示す矢印は、マグネットを構成する超電導コイル1乃至5および超電導コイル1’乃至5’の仮想的な中心軸である。超電導コイルは図10では省略してある巻き枠(ボビン)に巻き回して構成するため、その断面形状は図10に示す如く、おおむね矩形であることが多い。また同様に制作を容易にするため、コイルの巻き枠はできるだけ少なくしたい。そのため図10の超電導コイル4および5のように、ほぼ同一の内径を持つ超電導コイルは同一の巻き枠に巻き回して構成することが多い。
【0025】
本発明では、図10の超電導コイル4,5のように、その断面形状において,ほぼ同一の内径、または,ほぼ同一の中心半径、あるいは、ほぼ同一の外径をもつ超電導コイルを、同一の層にあると呼称している。
【0026】
以下に、本発明のようなスプリット型マグネットにおいて、サンプルを挿入するマグネット中心部に均一な磁場を発生するために、最内層に主磁場とは逆向きの磁場を発生するコイルが必要であることを説明する。
【0027】
図12は、軸対称2次元における電流分布の断面図である。よく知られているとおり、中心軸をz軸としたとき角度θ部分の電流I(θ)を次式のように、いわゆるコサインθ分布とすることにより、電流分布の内部空間に均一な磁場が発生する。
【0028】
【数1】
I(θ)=Acos(θ)
ここに、Aは比例常数である。有限個のコイルを用いて均一な磁場を発生することは、図12の電流分布を離散化することにほかならない。ところが、図12の同一方向の電流分布をスプリットしたコイル群で離散化しようとすると、図中2本の点線で挟まれた領域にある電流を点線で挟まれた領域の外に離散化することが困難であることが定性的に理解できる。このことは、円環電流が作る磁場の表式を検討することによって以下のように解決できる。図13に示す円環電流Iが円環に内接する球の内部領域の点P(r,θ)に作る磁場のz成分は以下のように表される。
【0029】
【数2】
Figure 0004034223
【0030】
ここでAnはn次の磁場の強度である。本発明のマグネットは中央面に関して鏡面対称を有しているので、対称性から偶数次の磁場のみ考えればよい。コイルが発生するこれら2次以上の不整磁場の合計をゼロとすることにより、均一な磁場を発生することができる。
【0031】
図14から図16に、それぞれA2、A4およびA6をαに関してプロットしたグラフを示す。但しμ0I/2/fn+1=1と置いている。
【0032】
図15および図16に示すように、高次の磁場はαに関して正負の値をとるため離散化したコイルの配置と起磁力を適正にすれば全コイルが作る値をゼロにし易い。
【0033】
一方、図14に示す2次の磁場はtanα=2の時ゼロになる。この位置はいわゆるヘルムホルツコイルとしてよく知られている。図14から分かるように、tanα=2なるα(≒63.4度)よりαが小さいときには2次の磁場は正の値しか発生しない。
【0034】
ところで、図1、図2および図10から分かるように、スプリットしたコイル配置においてはコイルのほとんどの部分が上記のα(≒63.4度)より小さい部分にあるため、主磁場を発生する電流方向と同方向(正方向)の電流を持つコイルだけでは、これらのコイルが作る2次の不整磁場の総和をゼロにできないことが分かる。
【0035】
従って、主磁場を発生する電流方向と逆方向(負方向)のコイルが必須となるが、その配置位置はその半径が他のコイルより小さいことが望ましい。以下その理由を述べる。図13に示す円環電流Iが作る不整磁場の強度は前述した式よりfn+1に反比例する。従って、A0すなわち主磁場の強度を損なわずに負の2次の不整磁場を作るには、円環電流の半径ができるだけ小さい方が有利である。原理的には、半径の大きな負電流コイルを用いても2次の不整磁場をゼロにすることはできるが、前述した理由により主磁場の強度を大きく低下させるため、特に本発明が主な対象としているような高磁場発生マグネットの構成方法として現実的でない。
【0036】
以上の理由により、その断面形状における内径、または中心半径、または外径を持つコイル群すなわち最内層を構成するコイル群に負方向のコイルが必須となる。以上により、従来の不可能であった磁場強度による検出感度限界を大きく打ち破ることが可能になる。
【0037】
なお、上記目的を達成するために、本発明は具体的に以下の手段をとる。
【0038】
第一の手段として、所定の間隔を有して対向し、かつ、ほぼ同一の中心軸で配置された第一および第二の多層超電導コイル群とを有し、該多層超電導コイル群の各層は少なくとも一つの超電導コイルを有して構成されるNMR装置用超電導マグネットであって、主磁場を発生するため前記超電導コイルに流される電流をプラス方向の電流としたとき、該第一および該第二の多層コイル群の各最内層を構成するコイルのうち、少なくとも一つのコイルの通電電流方向がマイナス方向であることとする。これにより、上記作用を達成することができ、ppbレベルの磁場の均一度を達成することができる。
【0039】
また、第二の手段として、第一の手段に加え、該第一および該第二の多層超電導コイル群における各最内層以外の層に配置される超電導コイルのうち、少なくとも一つのコイルの通電電流方向がマイナス方向であることとする。これにより、複数層においてマイナス方向の電流を流し、中心軸半径方向からも磁場の調整が容易となり、より磁場の均一度を達成させることができる。
【0040】
また、第三の手段として、第一又は第二の手段に加え、該第一および該第二の多層超電導コイル群の各最内層のみが複数のコイルから構成されていることとする。これにより、磁場の均一度を達成すると共に、NMR装置用マグネットの製作性とのバランスをとることができる。
【0041】
また、第四の手段として、第一又は第二の手段に加え、前記第一および該第二の多層超電導コイル群の各最内層とその隣接する外層のみが複数の超電導コイルから構成されていることとする。これにより、中心軸半径方向の配置によっても磁場の調整に寄与し、より磁場の均一度を達成することができ、NMR装置用マグネットの政策性とのバランスをとることができる。
【0042】
また、第五の手段として、第一乃至第四の手段のいずれかに加え、前記第1および該第2の多層コイル群は、対抗する面に関して鏡面対称に配置されていることとする。鏡面対称に配置することにより対象性を上げ、より磁場の均一性向上を図ることができる。
【0043】
また第六の手段として、第一乃至第五の手段のいずれかに加え、漏洩磁場をシールドするためのシールドコイルを備えていることとする。これにより、磁場の均一度を挙げるだけでなく、漏洩磁場をも押さえて設置性を向上させることができる。
【0044】
第七の手段として、第一乃至第五の手段のいずれかに加え、漏洩磁場をシールドするための強磁性体を備えていることとする。これにより、磁場の均一度を挙げるだけでなく、漏洩磁場をも押さえて設置性を向上させることができる。
【0045】
第八の手段として、第一ないし第五の手段のいずれかに加え、円筒状強磁性体とシールドコイルとを備えることとする。これにより、磁場の均一度を挙げるだけでなく、漏洩磁場をも押さえて設置性を向上させることができる。
【0046】
第九の手段として、第一乃至第五の手段のいずれかに加え、円盤状強磁性体とシールドコイルとを備えることとする。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明の効果を奏する限りに於いて、本発明が実施例に限定されることはない。
【0048】
〔実施例1〕
本実施例に係るNMR装置の概略図を図11に示す。図11におけるNMR装置は、水平方向(NMR装置の設置面に対して平行な方向)に中心軸をもつスプリット型超電導マグネット39を有し、スプリット型超電導マグネット39には超電導接続43が接続されている。そして超電導接続43にはスプリット型超電導マグネット39を永久電流モードに保つ永久電流スイッチ42が接続されており、磁場の時間的な変動は1時間あたり0.5Hz以下に調整されている。スプリット型超電導マグネット39、超電導接続43、永久電流スイッチ42は、液体窒素槽45の内部に設けられる液体ヘリウム槽44の内部に配置されており、液体ヘリウム槽44の内部には液体ヘリウムが充填されている。これによりスプリット型マグネット39等が浸漬され低温に保持(冷却)されている。なお液体ヘリウム槽44の外側には液体窒素槽45が配置されており、いわゆる二重構造となっている。
【0049】
このため、液体窒素槽に液体窒素を充填することで更に内部の液体ヘリウムの蒸発量を低減することができる。また装置全体は防振支持脚46によって支持されている。
【0050】
本実施例におけるスプリット型超電導マグネット39は二つの多層超電導コイル群が所定の間隔を有して対向配置された構成となっており、かつ、この多層超電導コイル群同士は同一の中心軸を有して配置されている。更に、上記の液体窒素槽45および液体ヘリウム槽44には多層超電導コイル群の間の間隔を貫く鉛直方向に第一の貫通孔が設けられており、例えばこの第一の貫通孔を通じて試料40(例えばタンパク質を水溶液に溶解した試料)を挿入、測定するのに有用である。また同様に、液体窒素槽45および液体ヘリウム槽44には多層超電導コイル群の中心軸方向に沿った第二の貫通孔も設けられており、この第二の貫通孔からは光学測定、検出プローブ挿入(試料とは別の方向から挿入する)等、他の応用が様々考えられる。
【0051】
なお、本実施例に係るNMR装置では、装置の上部から挿入した試料40に水平方向から均一な静磁場を印加することができるため、NMR信号の受信にソレノイドコイル41を適用させることができる。ソレノイドコイル41によると、従来の鞍型またはバードケージ型コイルを用いる場合に比べ、S/N感度が少なくとも40%向上することとなる。なお本実施例におけるソレノイドコイル41の巻き軸は鉛直方向である。なお本実施例では、ソレノイドコイルとして低温(10〜20K)に冷却された超電導材料(例えばY系、二ホウ化マグネシウム等)を用いているが、銅製のソレノイドコイルの適用も可能ではある。なお、本実施例に係るNMR装置の断面図を図1に示しておく。
【0052】
以上この構成により、磁場を水平方向にして鉛直方向の漏洩磁場を押さえ、設置性を向上させることができ、また、スプリット型の超電導マグネットを採用しているため、試料をNMR装置鉛直方向上部から挿入でき、かつ、鉛直方向に保持される試料に対して鉛直方向に巻き軸を有するソレノイドコイルを配置することができるため、特殊な試料管を用いることなく通常の試料管が使用可能で、容易に、高感度にNMR測定を行うことができるようになる。
【0053】
次に、複数の多層超電導コイル群を有してなる本実施例のスプリット型超電導マグネット39の構成について図10を用いて詳細に説明する。
【0054】
図10は、本実施例のスプリット型超電導マグネットの斜視断面図である(超電導コイル配置を固定するボビンについては図中省略してある)。多層超電導コイル群とは、同一の中心軸に対して同心に配置される複数層の超電導コイルの集合をいい、複数の超電導コイルが入れ子状に構成されているものを指す。ここで同一の中心軸とは、製作誤差の範囲程度までは十分含まれるものである。
【0055】
図10において、超電導コイル1,2,3,4,5は一つの多層超電導コイル群を形成しており、中心軸(図中矢印)に近い内側ほど、超電導臨界磁界の高い材料でコイルが形成されている。そして本実施例ではこの超電導コイル1、2、3、4、5と同様の配置で、かつ、この多層超電導コイル群と所定の間隔(ギャップ)を設け、他の多層超電導コイル群(超電導コイル1’,2’,3’,4’,5’からなる)を同一の中心軸を有するように構成されている。
【0056】
更にいうと、これら多層超電導マグネットはギャップに対してほぼ鏡面対象となるよう対向配置されている。なお各超電導コイルは、水平方向を巻き軸としてソレノイド状に巻かれている。測定対象となる試料は装置上部から多層超電導コイル郡の間に形成される間隔(ギャップ)に鉛直方向から挿入および保持され、静磁場が試料に水平方向から印加される。
【0057】
本実施例では、複数ある超電導コイルのなかで,最内層を構成する超伝導コイル4、5、4’、5’のうち、ギャップ側に近い超電導コイル5,5’の電流方向が他の超電導コイルに対して逆向きになっている。つまり、超電導コイル5,5‘がサンプル領域に作る磁場の方向は,他の超電導コイルが作る主磁場の方向(図10中の矢印方向)と逆向きとなっている。
【0058】
このような構成とすることで,図示したようなスプリット型マグネットにおいても,従来のNMR装置と同等以上の非常に均一な磁場を発生することが可能となる。
【0059】
〔実施例2〕
本実施例に係るNMR装置は、実施例1におけるNMR装置とほぼ同様の構成であるが、超電導コイルの構成が異なる。これについては以下説明する。
【0060】
本実施例に係るNMR装置の超電導コイルの配置断面を図2に示す。第一の多層超電導コイル群は超電導コイル11乃至16を有して構成されており、第二の多層超電導コイル群は超電導コイル11’乃至16’を有して構成されている。ここで第一の多層超電導コイル群、第二の多層超電導コイル群は所定の間隔を置いて鏡面対象となるよう対向配置され、かつ多層超電導コイル群同士が水平方向(図2では左右方向)の同一の中心軸を有するよう配置されている。
【0061】
各多層超電導コイル群における最内層は,それぞれ3つの超電導コイル14,15,16又は14’,15’,16’によって構成されており,このうち超電導コイル15,15’が他の超電導コイルによって中央部に発生する主磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。
【0062】
以上、本実施例により、スプリット型超電導マグネットの中央部にppbオーダーで均一な磁場を形成することができる。
【0063】
〔実施例3〕
本実施例に係るNMR装置は、実施例1におけるNMR装置とほぼ同様の構成であるが、超電導コイルの構成が異なる。これについては以下説明する。
【0064】
本実施例に係るNMR装置の超電導コイルの配置断面を図3に示す。第一の多層超電導コイル群は超電導コイル17乃至24を有して構成されており、第二の多層超電導コイル群は超電導コイル17’乃至24’を有して構成されている。ここで第一の多層超電導コイル群、第二の多層超電導コイル群は所定の間隔を置いて鏡面対象となるよう対向配置され、かつ多層超電導コイル群同士が水平方向(図3では左右方向)の同一の中心軸を有するように配置されている。
【0065】
各多層超電導コイル群における最内層は、それぞれ2つの超電導コイル23,24又は23’,24’によって構成されており、更にその半径側の外層(中心軸に対して垂直な方向の外側の層)は、複数の(3つの)超電導コイル20,21,22又は20’,21’,22’によって構成されている。
【0066】
そしてこのうちの超電導コイル22、23又は22’、23’、が他の超電導コイルによって中央部に発生する主磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。即ち、スプリット型超電導マグネットが中央部に発生させる磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。この様に複数層にわたり主磁場と逆の磁場を発生させる超電導コイルを有する構成とすることで、より磁場の均一性を高めることができる。
【0067】
以上、本実施例により、スプリット型超電導マグネットの中央部にppbオーダーで均一な磁場を形成することができる。
【0068】
〔実施例4〕
本実施例に係るNMR装置は、実施例1におけるNMR装置とほぼ同様の構成であるが、多層超電導コイル群の外側にアクティブシールドを有している点において主に差異がある。これについて以下説明する。
【0069】
本実施例に係るNMR装置の超電導コイルの配置断面を図4に示す。第一の多層超電導コイル群は超電導コイル26乃至30を有して構成されており、第二の多層超電導コイル群は超電導コイル26’乃至30’を有して構成されている。
【0070】
ここで第一の多層超電導コイル群、第二の多層超電導コイル群は所定の間隔を置いて鏡面対象となるよう対向配置され、かつ多層超電導コイル群同士が水平方向(図4では左右方向)の同一の中心軸を有するように配置されている。
【0071】
各多層超電導コイル群における最内層は,それぞれ複数(3つ)の超電導コイル28,29,30又は28’、29’、30’によって構成されており,このうち超電導コイル30,30’が他の超電導コイルによって中央部に発生する主磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。
【0072】
そして更に、本実施例に係るNMR装置では、第一の多層超電導コイル群、第二の多層コイル群の外側に漏洩磁場をシールドする超電導コイル25、25’をそれぞれ設けている。
【0073】
以上、本実施例により、スプリット型超電導マグネットの中央部にppbオーダーで均一な磁場を形成することができ、かつ漏洩磁場を押さえたNMRとすることができる。
【0074】
〔実施例5〕
本実施例に係るNMR装置は、実施例3におけるNMR装置とほぼ同様の構成であるが、主として漏洩磁場シールドのための強磁性体を設けた点において構成が異なる。これについて以下説明する。
【0075】
本実施例に係るNMR装置の超電導コイルの配置断面を図5に示す。第一の多層超電導コイル群は超電導コイル18乃至24を有して構成されており、第二の多層超電導コイル群は超電導コイル18’乃至24’を有して構成されている。ここで第一の多層超電導コイル群、第二の多層超電導コイル群は所定の間隔を置いて鏡面対象となるよう対向配置され、かつ多層超電導コイル群同士が水平方向(図5では左右方向)の同一の中心軸を有するように配置されている。
【0076】
各多層超電導コイル群における最内層は、それぞれ2つの超電導コイル23,24又は23’、24’によって構成されており、更にその半径側の外層(中心軸に対して垂直な方向の外側の層)は、複数の(3つの)超電導コイル20、21、22又は20’、21’、22’、によって構成されている。そしてこのうちの超電導コイル22、23又は22’、23’、が他の超電導コイルによって中央部に発生する主磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。
【0077】
即ち、スプリット型超電導マグネットが中央部に発生させる磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。この様に複数層にわたり主磁場と逆の磁場を発生させる超電導コイルを有する構成とすることで、より磁場の均一性を高めることができる。
【0078】
そして更に、本実施例に係るNMR装置では、第一の多層超電導コイル群、第二の多層コイル群の外側にスプリット型超電導マグネットを覆うよう配置され、漏洩磁場をシールドする円筒状強磁性体31、および円筒状強磁性体31の開放部分を覆うよう配置される円盤状強磁性体32をそれぞれ設けている。
【0079】
この構成により円筒状強磁性体31および円盤状強磁性体32は磁路を形成し,超電導コイル群が発生する磁場が外部に漏れるのを抑制している。なお円筒状強磁性体31においてもNMR装置上部から試料を挿入するための貫通孔が設けられている。なお、中心軸に沿った他の貫通孔を設ける場合は円盤状強磁性体32に貫通孔に対応する孔を設けることは可能である(但し図示せず)。
【0080】
以上、本実施例により、スプリット型超電導マグネットの中央部にppbオーダーで均一な磁場を形成することができ、かつ、漏洩磁場を押さえたNMR装置とすることができる。
【0081】
〔実施例6〕
本実施例に係るNMR装置は、実施例4におけるNMR装置とほぼ同様の構成であるが、漏洩磁場シールドのための強磁性体と多層超電導コイル群の外側にアクティブシールドとを併用している点において主に差異がある。これについて以下説明する。
【0082】
本実施例に係るNMR装置の超電導コイルの配置断面を図6に示す。第一の多層超電導コイル群は超電導コイル26乃至30を有して構成されており、第二の多層超電導コイル群は超電導コイル26’乃至30’を有して構成されている。ここで第一の多層超電導コイル群、第二の多層超電導コイル群は所定の間隔を置いて鏡面対象となるよう対向配置され、かつ、多層超電導コイル群同士が水平方向(図6では左右方向)の同一の中心軸を有するように配置されている。
【0083】
各多層超電導コイル群における最内層は,それぞれ複数(3つ)の超電導コイル28,29,30又は28’、29’、30’によって構成されており,このうち超電導コイル30,30’が他の超電導コイルによって中央部に発生する主磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。
【0084】
そして更に、本実施例に係るNMR装置では、第一の多層超電導コイル群、第二の多層コイル群の外側に漏洩磁場をシールドする超電導コイル34、35、34’、35’と、中心軸に対して垂直方向に平面を有する円盤状強磁性体33が設けられている。
【0085】
超電導コイル34、35、34’、35’は磁場が半径方向外側に漏れることを防止し、円盤状強磁性体33は磁場が軸方向に漏れることを抑制している。なお、円盤状強磁性体に必要に応じて孔を設けることができる点については実施例5と同様である。
【0086】
以上、本実施例により、スプリット型超電導マグネットの中央部にppbオーダーで均一な磁場を形成することができ、かつ漏洩磁場を押さえたNMRとすることができる。
【0087】
〔実施例7〕
本実施例に係るNMR装置は、実施例6におけるNMR装置とほぼ同様の構成であるが、漏洩磁場シールドのための強磁性体の配置、多層超電導コイル群の外側にアクティブシールドとを併用している点において主に差異がある。これについて以下説明する。
【0088】
本実施例に係るNMR装置の超電導コイルの配置断面を図7に示す。第一の多層超電導コイル群は超電導コイル18乃至24を有して構成されており、第二の多層超電導コイル群は超電導コイル18’乃至24’を有して構成されている。
【0089】
ここで第一の多層超電導コイル群、第二の多層超電導コイル群は所定の間隔を置いて鏡面対象となるよう対向配置され、かつ多層超電導コイル群同士が水平方向(図7では左右方向)の同一の中心軸を有するように配置されている。
【0090】
ここで第一の多層超電導コイル群、第二の多層超電導コイル群は所定の間隔を置いて鏡面対象となるよう対向配置され、かつ多層超電導コイル群同士が水平方向(図7では左右方向)の同一の中心軸を有するように配置されている。
【0091】
各多層超電導コイル群における最内層は、それぞれ2つの超電導コイル23,24又は23’、24’によって構成されており、更にその半径側の外層(中心軸に対して垂直な方向の外側の層)は、複数の(3つの)超電導コイル20、21、22又は20’、21’、22’、によって構成されている。そしてこのうちの超電導コイル22、23又は22’、23’、が他の超電導コイルによって中央部に発生する主磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。
【0092】
即ち、スプリット型超電導マグネットが中央部に発生させる磁場と逆向きの磁場を発生するように通電されている。この様に複数層にわたり主磁場と逆の磁場を発生させる超電導コイルを有する構成とすることで、より磁場の均一性を高めることができる。
【0093】
そして更に、本実施例に係るNMR装置では、第一の多層超電導コイル群、第二の多層コイル群の中心軸方向外側(図7では超電導コイル18,18’,20,20’と同層)に漏洩磁場をシールドする超電導コイル37,38,37’,38’と、第一の多層超電導コイル群、第二の多層コイル群の外側にスプリット型超電導マグネットを覆うよう配置され、漏洩磁場をシールドする円筒状強磁性体36を有している。
【0094】
超電導コイル37,38は磁場が軸方向に漏れることを抑制し,円筒状強磁性体36は磁場が半径方向に漏れることを抑制している。なお、この場合、円盤状強磁性ではなく、超電導コイルにより中心軸方向の漏洩磁場を押さえているため、中心軸方向にもNMR装置に貫通孔を設けたい場合、あえて円盤強磁性体に孔を設けておく必要がなく製作性が向上するという点において利点がある。
【0095】
以上、本実施例により、スプリット型超電導マグネットの中央部にppbオーダーで均一な磁場を形成することができ、かつ漏洩磁場を押さえ設置性のよいNMR装置とすることができる。
【0096】
以上に具体的な実施例を用いて本発明を説明してきたが、前述した各実施例ではマグネット内部のコイルは全て超電導コイルであるが、本発明の内容は超電導コイルのみに限定されるものではなく、例えば銅線などを用いたコイルであってもよく、更に電流を搬送するものであればいかなるものでも良い。また,静磁場発生源の起磁力源に永久磁石を使っても良い。
【0097】
【発明の効果】
以上、本発明NMR装置によれば、計測空間にppbオーダーで均一な磁場を発生させる高感度なNMR装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係るNMR装置の概略断面図。
【図2】実施例2係るNMR装置の超電導コイルの配置の概略断面図。
【図3】実施例3係るNMR装置の超電導コイルの配置の概略断面図。
【図4】実施例4係るNMR装置の超電導コイルの配置の概略断面図。
【図5】実施例5係るNMR装置の超電導コイルの配置の概略断面図。
【図6】実施例6係るNMR装置の超電導コイルの配置の概略断面図。
【図7】実施例7係るNMR装置の超電導コイルの配置の概略断面図。
【図8】従来のNMR装置の概略断面図。
【図9】従来のNMR装置を構成する超電導コイルの断面斜視図。
【図10】実施例に係るNMR装置の多層超電導コイル群の概略斜視図。
【図11】実施例に係るNMR装置の構成図。
【図12】本発明の作用を説明するための軸対象2次元におけるコサインθ分布電流を示す図。
【図13】本発明の作用を説明するための位置f,αで表される電流Iとγ,θの位置関係の概略図。
【図14】本発明の作用を説明するための位置f,αで表される電流Iが作る2次の不整磁場を角度αの関係図。
【図15】本発明の作用を説明するための位置f,αで表される電流Iが作る4次の不整磁場を角度αの関係図。
【図16】本発明の作用を説明するための位置f,αで表される電流Iが作る6次の不整磁場を角度αの関係図。
【符号の説明】
1〜30,1’〜30’…超電導コイル、31…円筒状強磁性体、32,33…円盤状強磁性体、34,34’,35,35’…超電導コイル、36…円筒状強磁性体、37,37’,38,38’…超電導コイル、39…スプリット型超電導マグネット、40…試料、41…ソレノイドコイル、42…超電導スイッチ、43…超電導接続、44…液体ヘリウム槽、45…液体窒素槽、46…防振支持脚。

Claims (10)

  1. 試料挿入するための所定のギャップを有して対向し、かつ、ほぼ同一の中心軸で配置された第一および第二の多層超電導コイル群を有し、該多層超電導コイル群の各層は少なくとも一つの超電導コイルを有して構成され、該多層超電導コイル群の中空部分に、ソレノイドコイルを用いた検出プローブを挿入するためのNMR装置用超電導マグネットであって、主磁場を発生するため該超電導コイルに流される電流をプラス方向の電流としたとき、主磁場を発生する該第一および該第二の多層超電導コイル群の、それぞれ最も外側の層を構成するコイル、および最も外側の層を構成するコイルの次に外側の層を構成するコイルに流される電流をプラス方向とし、該第一および該第二の多層超電導コイル群の各最内層を構成するコイルのうち、前記第一の多層超電導コイル群と前記第二の多層超電導コイル群との間に形成される前記ギャップに近い位置にある、少なくとも一つの超電導コイルの通電電流方向がマイナス方向であることを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  2. 請求項1に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、該第一および該第二の多層超電導コイル群における各最内層以外の層に配置される超電導コイルのうち、少なくとも一つの超電導コイルの通電電流方向がマイナス方向であることを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  3. 請求項1または2に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、該第一および該第二の多層超電導コイル群の各最内層のみが複数の超電導コイルを含むことを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  4. 請求項1または2に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、該第一および該第二の多層超電導コイル群の各最内層とその隣接する外層のみが複数の超電導コイルを含むことを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、該第一および該第二の多層コイル群が、対向面に関して鏡面対称に配置されていることを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、漏洩磁場をシールドするためのシールドコイルを備えていることを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  7. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、漏洩磁場をシールドするための強磁性体を備えていることを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  8. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、円筒状強磁性体とシールドコイルとを備えていることを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  9. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のNMR装置用超電導マグネットであって、円盤状強磁性体とシールドコイルとを備えていることを特徴とするNMR装置用超電導マグネット。
  10. 請求項1乃至9に記載のいずれか1項に記載のNMR装置用超電導マグネットを用いたことを特徴とするNMR装置。
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