JP4034119B2 - 低炭素鋼鋳物の製造方法およびその鋳型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ステンレス等低炭素鋼鋳物の製造方法に関し、特に消失性模型を用いた低炭素鋼鋳物の製造方法およびその鋳型に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステンレスなどの低炭素合金鋼は炭素の溶け込み量が厳密に制限されており、ステンレス鋼の鋳造においては、炭素分が混入するため有機系の鋳型はほとんど使用されていない。
【0003】
一般的には鋳物重量が100kgを超える場合、炭素の溶け込みがほとんど発生しない水ガラス系の鋳型を従来用い、また鋳物重量が100kg以下の場合は、ロストワックス方法などを用いて鋳造を行なっていた。
【0004】
ロストワックス方法は、溶かしたワックスを金型内に流し込み、ワックスで形成した模型に耐火物スラリーを繰り返し付着させて耐火物の層を形成した後、加熱炉内でワックスを溶解して排出し、形成された鋳型にステンレス溶湯を注入してステンレス鋳物等を形成する方法である。
【0005】
また、発泡ポリスチレンなどの樹脂からなる消失性模型を用いたフルモールド鋳造法においては、消失性模型の外周に鋳型を形成した後、鋳型内に消失性模型を溶解させる溶剤を注入し、消失性模型を溶かした状態で鋳型の外に排出させたり、バーナーを鋳型の内部に挿入して消失性模型を焼失させたり、または溶湯の注湯時に鋳型の外部からガスを吸引し、燃焼排ガスを鋳型の外に排出させるようにして消失性模型から発生する炭素を鋳物に含有させないようにした発明が知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水ガラスを用いた鋳造方法では、鋳型をとるための木型が必要であり、木型の製作に時間がかかり、製品の納期が長くなっていた。また、水ガラス系鋳型の耐火温度が低いので、水ガラス鋳型とステンレス溶湯の間の温度差が大きくなり、引け巣、ガスブローなどの鋳造内部欠陥が発生しやすく、更に鋳物に焼き付き、湯回り不良などが生じやすいという問題があった。また鋳造した後の水ガラスは利用方法がなく、鋳物砂の再生処理が環境面から大きな問題となっていた。更に水ガラスの鋳型の多くは、複数の鋳型を組み合わせて使用するため精度があまり高くなく、このため多くの加工代が付けられるため、鋳造後の加工に手間がかかりステンレス鋳物の製造コストが高くなっていた。
【0007】
一方、ロストワックス方法による製造は、ワックス模型を作るための金型が必要であるため、金型の製造に多くの費用がかかり、また生産開始まで長い時間が必要であった。また金型を製造するため一品生産には不向きであった。また、温度を上昇させるとワックスが膨張して模型が変形してしまうため、模型表面に塗布したスラリーを乾燥させるために低い温度(約24度)で湿度を65%に保って24時間程度かけており、このような塗布を7回〜10回行なうため効率がよくなかった。また鋳型の強度が充分得られないために、製造できるのは小物に限られていた。
【0008】
さらに消失性模型を用いた鋳造の場合には、溶剤で溶融されず鋳型内に残ってしまう消失性模型があり、また注入した溶剤を鋳型から完全に排出できず、内部に残ることがあり、それらが炭素分となって溶湯に混入することがあった。またバーナで消失性模型を焼失させる場合は、バーナの火が鋳型の細かい個所まで届かず、模型を完全に燃焼できずに鋳型内に残ることがあった。更に排ガスを鋳型の外部に吸引させる方法では、充分に排ガスを排出しきれず、消失性模型から発生される排ガスが外に吸引される前に溶湯に溶け込むことがあった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するために次のような低炭素鋼鋳物の製造方法を提案するものである。
【0010】
第1の方法は、外周にセラミック基材を塗布した消失性模型を加熱炉にて加熱し、前記消失性模型を気化させて前記セラミック基材内部から排出させるとともに前記セラミック基材を焼成してセラミック鋳型を形成し、こうして形成されたセラミック鋳型内に低炭素鋼の溶湯を注入して低炭素鋼鋳物を製造することとし、前記セラミック基材は、主骨材が溶融シリカ、ジルコン、アルミナのいずれか 1 つまたはその組み合わせからなり、塗布した後のセラミック基材の厚みが10mm以上であり、かつ乾燥後の強度が50kg/cm 2 以上とすることを特徴とする。
【0012】
第1の方法で用いられる主骨材は、75μm以下の径の主骨材に対して150μm〜500μmの径の主骨材を40%以上混合したことを特徴とする。
【0013】
第1の方法において、焼成によって高い温度が保持された状態にあるセラミック鋳型内に低炭素鋼溶湯を注入して鋳造することを特徴とする。
【0015】
第1の方法におけるセラミック基材は溶融シリカを50%以下としたことを特徴とする。
【0016】
第1の方法において、セラミック鋳型に低炭素鋼の溶湯を注入し、所定時間所定温度に保持した後冷却することを特徴とする。
【0017】
第2の方法は、主骨材を溶融シリカ、ジルコン、アルミナのいずれか1つまたはその組み合わせとし、かつ75μm以下の径の前記主骨材に対して、150μm〜500μmの径の前記主骨材を40%以上混合してなるスラリーと、耐火物粒子とを交互に消失性模型の外周に付着させて該消失性模型の外部にセラミック基材を形成させ、セラミック基材が形成された消失製模型を加熱炉にて加熱して、前記消失模型を気化させて前記セラミック基材の内部から排出させるとともに前記セラミック基材を焼成させたことを特徴とする。
【0018】
これにより、精度の高い低炭素鋼鋳物を製造でき、鋳造後に行なう機械的加工を少なくでき、コストと手間を低減できる。また鋳造後鋳型が自己崩壊するので、鋳型から鋳物を容易に取り出すことができる。
【0019】
次に、セラミック鋳型の自動崩壊について説明する。
【0020】
シリカ(SiO2)はイオン性と共有性結合を兼ね備え、多くの変態が存在している。天然シリカは構造的には図6に示すようにイオン半径の小さいSi原子が、半径の大きい酸素原子4個で囲まれたSiO4四面体と呼ばれる原子群を形成する。
【0021】
シリカはこの連結の形式によって、石英、クリストバライト、トリジマイトの3種結晶構造がある他、一定の構造をもたない非結晶質シリカ(電融シリカ、溶融シリカ、石英ガラスの呼び方もある)がある。更に石英、トリジマイト、クルストバライトの3種類の結晶シリカには低温型(α型)と高温型(β型)があり、加熱すると低温型(α型)から高温型(β型)へと転移する。このとき、大きな熱膨張変化つまり体積変化を伴う。図7に線熱膨張率を示す。以下、それぞれシリカの温度変化に伴う性質は次のようである。
(1)α石英からβ石英
573℃で急激に転移し、物理的性質が変わり、大きな熱膨張を示す。
(2)αトリジマイトからβトリジマイト
加熱に際してはそれぞれ117℃と163℃で明瞭に変化する。
(3)αクリストバライトからβクリストバライト
加熱、冷却又はクリストバライトの出来型によって異なるが、大体180℃〜275℃で変化する。この変化のときには膨張、収縮が非常に大きく現れる。
【0022】
結晶質シリカの熱膨張現象を利用することにより、高温の結晶質シリカを冷却したとき発生する大きな熱収縮によって鋳型を自動的に崩壊させることができる。
【0023】
一方、溶融シリカは熱膨張係数が非常に小さく(5×10−7℃−1)、溶融シリカを主原料にしたセラミック鋳型は高温焼成時に熱膨張による型割れの心配はほとんどないが、そのままでは自動崩壊はしない。そこで、溶融シリカを骨材としたセラミックスラリーにFe2O3、Al2O3、K2O、Na2Oなど不純物を添加する。不純物は溶融シリカをクルストバライトやトリジマイトへの転移を促進する効果があるため、高温で保持することによって溶融シリカを結晶質シリカへ転移させ、これにより冷却時に鋳型を自動的に崩壊するようにしてもよい。
【0024】
このように自動崩壊することにより、鋳型が強固であっても鋳型からの鋳物の取り外しが容易になる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明にかかる消失性模型を用いたステンレス鋳物の製造方法について、ポンプ用軸流インペラをフルモールド鋳造方法で製造する例を用いて説明する。
【0026】
図1に消失性模型の製作例を示す。消失性模型の製作例としては、まず立方体や直方体の発泡材10から消失性模型を形成する。発泡材10としては、発泡ポリスチレン(EPS)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)および両者の共重体の発泡体等が使用される。また、それぞれの材料を単体で用いても、あるいは混合してもよい。発泡材10は、NC加工機2によって加工する。
【0027】
まず、ユーザーからの設計図面より3Dデータ(Solid Model)を作成する。模型が複雑であったり、大型の場合は、NC加工できる形状にSolid Modelを適宜分割する。そして、モデルの取り込み、領域の作成と軌跡計算によってNC加工機用のデータ(CAMNCデータ)を作成する。
【0028】
データが作成されたら発泡材10のブロックをNC加工機2にセットし、加工用のデータを用いて発泡材10のブロックから図2に示すような所要形状の消失性模型4、この場合ポンプ用軸流インペラの模型を削り出す。NC加工機2による加工により模型の表面に孔部欠陥等が生じた場合は、その部分にパラフィン等を塗布して補修を行なう。最後に、図面から一つ一つの寸法を測定検査してフルモールド鋳造用の消失性模型4の全体を形成する。
【0029】
図2に示すようにフルモールド鋳造用の消失性模型4が形成されたら、模型の表面にセラミック鋳型となるセラミック基材を塗布する。セラミック基材の塗布としては、まずスラリー6を消失性模型4の表面に塗布し、次にスラリー6の表面に0.3〜0.7mm程度の径の粗い耐火物粒子を付着させるサンディングを行う。耐火物粒子の一例としてムライトが利用できる。
【0030】
スラリー6は、主骨材を溶融シリカ、ジルコン、アルミナフラワー等とし、分散、増粘のために少量の界面活性剤を添加し粘度を所定値に設定する。コロイダルシリカのpHは10程度である。さらに、スラリー6は、骨材の径が75μm以下のものに加えて、150μm〜500μmの径のものを40%程度混入させてある。また溶融シリカ、ジルコン、アルミナフラワーの各成分比は、セラミック基材を焼成した後ステンレス溶鋼をセラミック鋳型内に注湯した際の温度上昇によって所定の変化をし、その後の温度低下時に収縮率が大きく、鋳型が鋳物との間の応力で自動崩壊する成分となっている。例えば溶融シリカが50%、アルミナが50%の成分割合である。コロイダルシリカはpHが10程度であり、また骨材とコロイダルシリカの比は2.5:1程度とする。なお、消失性模型4の表面に、セラミック基材の1層目としてジルコンフラワーとコロイダルシリカとを1:2で混合した塗型材を塗布してもよい。このような塗型剤を用いれば表面粗度が一層良好になる。
【0031】
図3に示すようにスラリー6を消失性模型4の表面に塗布した後、耐火物粒子を付着するサンディングを行ない、60℃程度またはそれ以下の温度で乾燥させる。サンディングは、各スラリー6の層間の結合力を増大させ、通気性を向上させる上で効果がある。かかる動作を消失性模型4つまり製造する鋳物製品の大きさに応じて5〜7回繰り返し行い、コーティングの厚みを10mm以上とする。乾燥後の強度は、50kg/cm2以上とするのが好ましい。なお、コーティングの厚みは模型の大きさ等を勘案し適宜変更してもよい。乾燥温度が60℃を越えると消失性模型の2次発泡による膨張が発生し、好ましくない。
【0032】
このようにしてセラミック基材を塗布した後、図4に示すように全体を加熱炉8に入れて所定の温度(スラリーが焼成される温度)に加熱する。加熱は、当初100℃から500℃程度まで徐々に温度を上昇させ、その温度で3時間程保持する。その後再び温度を上昇させ900℃までにする。当初加熱炉8内の温度を500℃に温度を保つことにより、その間に消失性模型4が軟化し、膨張することなく液化、気化してセラミック基材の内部から段取り工程でセラミック基材に作られた複数の孔から放出される。消失性模型を形成している発泡材は、147℃程度で気化を開始する。また、消失性模型4はすぐに軟化するため、2次発泡による膨張を防止できる。セラミック基材の焼成温度は800℃〜900℃が好ましく、900℃を越えると骨材の変態が起こるおそれがある。
【0033】
加熱炉8には、消失性模型4が気化して発生した分解物を外に排出するダクト12が設けられ、さらにダクト12の先端には分解物を捕集する集塵機(図示せず)が設けられている。また、加熱炉8の加熱方法は、ガスバーナーによる加熱より電気加熱の方が分解物に着火して燃焼することが生じにくく好ましい。
【0034】
加熱炉8にてスラリー6が、約900℃で焼成されると強固なセラミック鋳型1が形成される。それとともに加熱によりセラミック鋳型内の消失性模型4は完全に消失し、鋳型外に排気される。焼成により、1400℃での強度が100kg/cm2以上にもなる強度の高いセラミック鋳型1が得られる。
【0035】
次に、焼成されたセラミック鋳型1が焼成によって高温を保っている状態で、図5に示すように湯口14からステンレス溶湯を注入して鋳造を行なう。湯口14は注湯作業は土びん式取鍋を使った落とし込み方法を用いて、溶融ステンレス金属とセラミック鋳型との間の温度差を縮めることとする。そして、セラミック鋳型1を加熱炉8から取り出し冷却させて、ステンレス溶湯を凝固させ、鋳物を形成する。
【0036】
その際セラミック鋳型1は、鋳造による高温相移転により主骨材に収縮が起き、これによってステンレス溶湯が鋳型内で冷却して凝固した際に、セラミック鋳型1と鋳物との間の収縮率の差によって応力が発生し、セラミック鋳型1が自動崩壊する。したがって、セラミック鋳型1内で凝固したステンレス鋳物をセラミック鋳型1から容易に取り出すことができる。
【0037】
したがって、上記鋳物の製造方法によれば、鋳物製品に引け巣や、ガスブローなど内部欠陥の発生がなく、寸法精度や表面粗度の良いステンレス鋳物を製造することができ、しかも、鋳造後鋳型を自動崩壊させ鋳物製品から容易に取り出すことができ、鋳造の手間とコストを大幅に低減させることができる。
【0038】
なお、鋳造製品が大型の場合、例えば製品の重量が1000kg以上の場合には、スラリー6のコーティングと耐火物粒子を付着させるサンディングを7〜9回繰り返し行い、セラミック鋳型層の厚みを10〜15mmとなるようにする。このように設定すれば重量が大きい場合でも、充分な強度の鋳型が得られ、バックサンドの必要がなくステンレス鋳物の製造ができる。
【0039】
殊にポンプ用軸流インペラのような耐食性が要求される製品については、他の材質に比べてステンレス鋼が優れていることが知られているが、ステンレス鋼は加工性が悪く、砂型で製造した場合は従来仕上げ加工には多大の時間と労力を要したが、本発明によれば、精度のよいステンレス鋳物を製造することができるので仕上げ加工の手間を大幅に低減できる。
【0040】
この製造方法によって製造したポンプ用軸流インペラは、表面粗度が25Sとなり、従来の水ガラス砂型鋳物の表面粗度が140S前後であったのと比較して極めて細かい鋳肌が得られ、複雑な表面の研磨工程を省くことができ、仕上げ工数を大幅に低減できた。
【0041】
また従来の水ガラス砂型法では鋳型の寸法精度や湯回りの点から、多くの加工代が必要とされていたが、消失性模型で正確な形状の鋳型を一体で成形できることから精度が向上して加工代が少なくでき、鋳造後の加工の手間を減少できた。
【0042】
また、高温の状態のセラミック鋳型に溶湯を注湯しているため、ステンレス溶鋼が指向性凝固を発生させることにより、内部に引け巣、ガスブローなどの欠陥が一切ないステンレス鋳物を製造できる。
【0043】
なお、本発明は、ステンレス鋼を例にとって説明したが、本発明の鋳物の製造方法はステンレス鋼の鋳造に限るものでなく、炭素の含有が好ましくない材質、その他の低炭素合金鋼に応用できるものである。
【0044】
実験例
次に、消失性模型を用いたフルモールド鋳造によるステンレス鋳物の製造の実験例について説明する。
【0045】
まず、直方体の発泡樹脂の塊をNC加工機で加工し、サンドペーパーで表面を整え、更に表面の凹みにパラフィンを埋め、ポンプ用軸流インペラの模型を成形した。
【0046】
次にスラリーと耐火物粉末によりセラミック基材を形成した。スラリーは、溶融シリカ、ジルコン、アルミナフラワーを主骨材に用い、更に分散、増粘のために界面活性剤を添加して粘度を所定値にした。主骨材は、75μm以下の径を主成分とし、150μm〜500μmの径のものを0%から40%まで添加量を変化させて加えた。また無機バインダーとしてpH10のコロイダルシリカを加えた。
【0047】
ポンプ用軸流インペラの消失性模型に、スラリーのコーティングと耐火物粒子を付着させるサンディングを行い、その都度スラリーを60℃で1時間程度乾燥炉内で乾燥させ、かかる作業を7回繰り返し、セラミック基材の厚みを10mmとした。耐火物粒子は、0.3〜0.7mmの径の粒子を用いた。乾燥後のセラミック基材の強度は50kg/cm2であった。
【0048】
次に乾燥したセラミック基材を消失性模型とともに加熱炉に入れ焼成する。加熱炉を適切な温度にコントロールして、1400℃での高温強度が100kg/cm2以上となるセラミックに焼成する。
【0049】
温度は、まず500℃まで1時間かけて上昇させ、その温度に達して3時間保持した。その後、1時間かけて900℃まで上昇させ、900℃に達したら1時間保持した。
【0050】
これにより、消失性模型はセラミック基材の内部で軟化、液化、気化し、完全に消失された。また消失性模型から発生したガスはセラミック基材の上面に形成した小孔から加熱炉内に放出され、さらにダクト12を通して加熱炉から排出した。
【0051】
900℃の温度でセラミック基材は完全に焼成され、セラミック鋳型内には消失性模型の痕跡は全くなくなった。そして、セラミック鋳型の温度が低下しない高温(750℃〜900℃程度)の状態で溶融ステンレス金属を湯口から注入した。ステンレス鋼を鋳込んだ鋳型を加熱炉から取り出し、強制空冷または水冷により冷却した。強制空冷はたとえば空気を吹き付ける方法で行い、水冷は水を霧状にして噴霧する方法で行う。100kg以上の鋳造製品の場合、この強制空冷は約1時間でよい。この段階での強制空冷または水冷により鋳物内のCrの炭化物が分散され、これは砂鋳型によるステンレス鋼の鋳造の場合に行われる溶体化処理の効果と同じ効果であり、溶体化処理に伴う手間、設備、時間が全く不要になり、実用上極めて大きな効果である。
【0052】
実験例によれば、主骨材に径が150μm〜500μmの径のものを40%添加した場合には充分な強度が得られた。また溶融シリカを50%添加した場合には、セラミック鋳型の温度が低下したときのセラミック鋳型の収縮率が大きく、セラミック鋳型が自動崩壊して、鋳物を鋳型から取り出すことができた。
【0053】
【発明の効果】
本発明の消失性模型を用いたフルモールド鋳造による低炭素鋼鋳物の製造方法によれば、内部に引け巣、ガスブローなど欠陥が一切なく、寸法精度や表面粗度が良好で、仕上げ加工代が少ない低炭素鋼鋳物を製造できる。しかも鋳造製品の外観不良が発生せず、製造の手間とコストを大幅に低減できる。
【0054】
鋳造後鋳型が冷却されると、収縮が起こり鋳物との間の応力により鋳型が自動崩壊するので、鋳物の取出しを容易にすることができる。
【0055】
また本発明の鋳型によれば、製品の形状データから容易に製造でき、寸法精度が正確で、かつ鋳物への炭素の混入が生じない鋳型を提供できる。
【0056】
さらに本発明の鋳型で鋳込んだステンレス鋼を鋳型ごと空冷または水冷することによりCrの炭化物が分散して炭素の溶け込み量が少ないステンレス鋼が得られ、従来避けられなかった溶体化処理が不要になるのでコスト面でも極めて有利になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】NC加工機による発砲材の加工を示す図である。
【図2】加工された消失性模型を示す図である。
【図3】スラリーを塗布した消失性模型を示す図である。
【図4】スラリーを塗布した消失性模型を加熱炉で加熱している状態を示す図である。
【図5】本発明により製造したセラミック鋳型によるセラミック鋳物の鋳造を示す図である。
【図6】天然シリカの結晶構造を示す。
【図7】各種結晶構造の天然シリカの線熱膨張率を示す。
【符号の説明】
1 セラミック鋳型
2 NC加工機
4 消失性模型
6 スラリー
8 加熱炉
10 発泡材
12 ダクト
14 湯 口
Claims (7)
- 外周にセラミック基材を塗布した消失性模型を加熱炉にて加熱し、前記消失性模型を気化させて前記セラミック基材内部から排出させるとともに前記セラミック基材を焼成してセラミック鋳型を形成し、こうして形成された前記セラミック鋳型内に低炭素鋼の溶湯を注入して低炭素鋼鋳物を製造することとし、前記セラミック基材は、主骨材が溶融シリカ、ジルコン、アルミナのいずれか 1 つまたはその組み合わせからなり、塗布した後のセラミック基材の厚みが10mm以上であり、かつ乾燥後の強度が50kg/cm 2 以上とすることを特徴とした低炭素鋼鋳物の製造方法。
- 前記セラミック基材は、10〜15mmの厚さに塗布し、前記消失性模型は、60℃以下で乾燥後、100℃以上になった加熱炉にて消失性模型の着火温度以下に加熱し、前記セラミック基材は、800〜900℃で焼成することを特徴とした請求項1に記載の低炭素鋼鋳物の製造方法。
- 前記主骨材は、75μm以下の径の主骨材に対して、150μm〜500μmの径の主骨材を40%以上混合したことを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼鋳物の製造方法。
- 前記焼成によって高温状態に保持された前記セラミック鋳型内に低炭素鋼溶湯を注入して鋳造することを特徴とした請求項1に記載の低炭素鋼鋳物の製造方法。
- 前記セラミック基材は、溶融シリカを50%以下としたことを特徴とした請求項1に記載の低炭素鋼鋳物の製造方法。
- 前記セラミック鋳型に低炭素鋼の溶湯を注入した後、強制冷却することを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼鋳物の製造方法。
- 主骨材を溶融シリカ、ジルコン、アルミナのいずれか1つまたはその組み合わせとし、かつ75μm以下の径の前記主骨材に対して、150μm〜500μmの径の前記主骨材を40%以上混合してなるスラリーと、耐火物粉末とを交互に消失性模型の外周に付着させて該消失性模型の外部にセラミック基材を形成させ、セラミック基材が形成された消失製模型を加熱炉にて加熱して、前記消失模型を気化させて前記セラミック基材の内部から排出させるとともに前記セラミック基材を焼成させたことを特徴とする低炭素鋼用セラミック鋳型。
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