JP3552298B2 - ホットインペラー鋳造用の鋳型 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、ホットインペラー鋳造用の鋳型に関するものである。
【0002】
【従来技術】
機械加工が困難で、しかも高度の精密加工を必要とする製品を製造する技術として、精密鋳造技術の一種であるロストワックス法が知られている。このロストワックス法は、最終製品である鋳物と同一形状寸法の模型をワックスにより造型し(この模型を「ワックス型」という)、このワックス型の表面にインベスト材をコーティングして固めてから、該ワックス型を加熱してワックスを溶し出し、空洞状態となった該インベスト材を高温で焼成して鋳型を得るものである。この鋳型における前記空洞部(キャビティ)は、最終製品である鋳物の外部形状と一致しているので、該鋳型に所要の金属の溶湯を注ぎ込んだ後に冷却固化させ、次いで型ばらしすることにより鋳物製品が製造される。ここでワックス型の表面にコーティングされるインベスト材としては、例えばジルコンフラワーのような微細な耐火物粉末を、エチルシリケートやコロイダルシリカのようなバインダ(粘結剤)と混合したスラリ(溶液)が使用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
耐熱性と低熱膨張率とを有する特殊な耐熱合金として、鉄−シリコン−アルミ系のセンダスト合金が知られている。このセンダスト合金は、前述した特性を有する反面、変形し難いために、複雑な形状の製品を鋳造する際に割れ易い(脆い)欠点があった。例えば、図6に示す如き凹部を有するチャンネル形状の鋳物製品10をロストワックス法により鋳造する場合、鋳型のキャビティに鋳込まれたセンダスト合金は、その凝固に伴って収縮するが、このときに鋳型を構成する耐火層は変形しないために収縮が阻止されて、製品10の弱い部位(両側壁部)に割れを生ずることとなっていた。すなわち、センダスト合金により鋳造し得る鋳物製品の形状は限定され、実用的でない難点が指摘される。
【0004】
前記ロストワックス法で製造される鋳物製品として、例えば自動車におけるターボチャージャーの排気側に組込まれ、エンジンからの排気ガスを受けて高速で回転するホットインペラー12(図7参照)が挙げられる。このホットインペラー12は、その本体14の外周に、多数のベーン16が所要間隔で放射状に形成されている。このベーン16の肉厚は0.5mm程度の薄肉であり、しかも表面積が大きいため、ホットインペラー12の鋳造に際しては、キャビティのベーン部に鋳込まれた金属が他の部位よりも早く冷却されて凝固してしまう欠点があった。すなわち、ベーン部での金属の凝固によりキャビティ全体への湯回りが不良となって欠陥を生ずる問題が指摘される。
【0005】
【発明の目的】
この発明は、先に述べた従来技術に内在している欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、薄肉部の面積が大きいホットインペラーを鋳造するに際し、キャビティ全体への湯回り不良を生じることなく確実な鋳込みをなし得る断熱性を有するホットインペラー鋳造用の鋳型を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、ホットインペラー鋳造用の鋳型であって、
スラリとスタッコサンドとからなる複数の耐火層に、薄肉部を有するホットインペラーの外部形状と一致させたキャビティが画成され、
前記複数の耐火層における中間部の耐火層はスラリと熱焼失性粒とで構成され、
前記鋳型を加熱することで前記熱焼失性粒を焼失させて得た空洞部を断熱層として機能させ、
この鋳型に溶湯を吸上げ鋳造法により鋳込んだ場合に、前記ホットインペラーのベーンと対応する部位に鋳込まれた溶湯の冷却を前記空洞部の存在により遅くして、薄肉部と厚肉部との温度勾配を小さくし得るよう構成したことを特徴とする。
【0009】
【実施例】
次に本発明に係るホットインペラー鋳造用の鋳型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0010】
図1は、精密鋳造用鋳型を示すものであって、該鋳型18は、チャンネル形状の鋳型製品10を模したワックス型20の外表面に重層的に形成された複数(実施例では8層)の耐火層22と、キャビティ24を画成する第1層目(鋳型18の内側から数えた場合)の耐火層22の外側に形成された可縮性耐火層26との9層構造から基本的に構成されている。キャビティ24を画成する第1層目の耐火層22および第3層目から第9層目までの耐火層22は、耐火物粉末を粘結剤と混合したスラリと、スタッコサンド(ムライトサンド,シャモット,シリカおよびジルコンの各単体またはその何れかとの混合物)と称する粒子粉末とから構成される。また第2層目となる可縮性耐火層26は、所要温度の熱にて焼失し易い粒(以後、この粒を「熱焼失性粒」という)28と、前記スラリとから構成され、該熱焼失性粒28は、鋳型18を脱ロウ工程および焼成工程により加熱した際に焼失して空洞部30が形成されるようになっている(図2参照)。そして、多数の空洞部30が形成された可縮性耐火層26が、キャビティ24に鋳込まれたセンダスト合金の凝固収縮に際して容易に崩壊することにより該収縮を許容し、鋳物製品の割れの発生を防止するべく機能する。なお、前記熱焼失性粒28としては、発泡スチロールや軽石等が好適に使用される。
【0011】
次に、前記精密鋳造用鋳型18の造型工程につき説明する。図2(a)に示すワックス型20は、チャンネル形状を有する鋳造製品10の最終形状と同一形状寸法に形成されたものであって、該ワックス型20の外側に、耐火性混合物のスラリを塗布し、該スラリの乾燥前にスタッコサンドを付着させて乾燥させた第1層目の耐火層22を形成する(図2(b))。次に、第1層目の耐火層22の外側に、前述したスラリを塗布した後、前記スタッコサンドに代えて熱焼失性粒28を振り掛けまたは吹付け等の手段により付着させて可縮性耐火層26を形成する(図2(c))。
【0012】
前記可縮性耐火層26の外側に、第1層目の耐火層22と同一の成分による層を同様の工程を繰返して7層形成することにより、9層構造の鋳型18が造型される(図2(d))。得られた鋳型18を蒸気タンク中に入れて高温(100℃〜150℃)の蒸気により急速加熱し、該鋳型18中のワックス型20を溶融させて外部に排出させる。次いで、1000℃〜1050℃で鋳型18を焼成することにより、残留しているワックスが燃焼すると共に当該鋳型18が焼結され、内部に鋳物製品10の外部形状と一致するキャビティ24が形成された鋳型18が得られる。この脱ロウ工程および焼成工程により鋳型18が加熱されると、前記可縮性耐火層26に内在している熱焼失性粒28が焼失し、その部位に空洞部30を生ずる(図2(e))。
【0013】
前記ロストワックス法により得られた鋳型18のキャビティ24に、例えば減圧吸上げ鋳造法(CLA)や真空減圧吸上げ鋳造法(CLV)によりセンダスト合金を鋳込み、該合金が冷却されて凝固すると、合金は凹部内方に収縮する。このとき、前記空洞部30が形成されている可縮性耐火層26が崩壊することにより合金の収縮が許容され、この結果として鋳造製品10に割れが生ずるのを確実に防止することができる。
【0014】
図3は、変形例を示すものであって、鋳型18を構成する第2層目および第4層目を、スラリと熱焼失性粒28とからなる可縮性耐火層26で形成してある。すなわちこの鋳型18では、脱ロウ工程および焼成工程により加熱されると、キャビティ24の外周に空洞部30の層を有する可縮性耐火層26が2重で形成される。従って、図に示す如く、凹部が幅広で凝固収縮が大きい製品の鋳造に適している。なお、鋳物製品の寸法よっては、鋳型18を構成する第3層目および第5層目を、可縮性耐火層26で形成するようにしてもよい。
【0015】
なお、図1と図3に示す実施例と変形例では、キャビティ24の全体を囲繞するように熱焼失性粒28の層を存在させるようにしたが、鋳物製品10の凹部に対応する個所にのみ熱焼失性粒28の層を存在させるものであってもよい。すなわち、鋳物製品10の強度的に弱い個所で、かつセンダスト合金が凝固する際に収縮する方向と対応する部位に熱焼失性粒28を焼失させた空洞部30の層を形成することで、凝固収納に伴う割れの発生を確実に防止することができる。また鋳型18を構成する全ての耐火層22,26の数は、実施例のような9層でなく8層であってもよい。
【0016】
図4は、本発明の実施例に係るホットインペラー鋳造用の鋳型を示すものであって、該鋳型31は、スラリとスタッコサンドとからなる複数(実施例では8層)の耐火層22と、内側から数えて第3層目の耐火層22の外側に形成されたスラリと熱焼失性粒28とからなる断熱性耐火層32とから構成されている。そして、この鋳型31を脱ロウ工程および焼成工程により加熱することにより、前記熱焼失性粒28が焼失して空洞部30が形成され、この空洞部30の層を有する断熱性耐火層32が断熱層として機能する。なお、鋳型31の内部には、薄肉部を有する例えばホットインペラー12の外形形状に一致するキャビティ24が画成されている。
【0017】
図5は、実施例に係る精密鋳造用鋳型31を造型する工程を示すものであって、基本的な工程は図1〜図3に関して述べたところと同様である。すなわち、ホットインペラー12に模して形成された図5(a)に示すワックス型34の外側に、スラリとスタッコサンドとからなる耐火層22を3重に形成する(図5(b))。次に、第3層目の耐火層22の外側に、スラリと熱焼失性粒28とからなる断熱性耐火層32を形成する(図5(c))。
【0018】
前記断熱性耐火層32の外側に、第1層目から第3層目までの耐火層22と同一の成分による層を、同様の手順を繰返して4層形成することにより、9層構造の鋳型31が造型される(図5(d))。得られた鋳型31を、脱ロウ工程および焼成工程により加熱することで、ホットインペラー12の外形形状と一致するキャビティ24が形成されると共に、第4層目に多数の空洞部30が形成された断熱性耐火層32を有する鋳型31が焼結される。
【0019】
前記ロストワックス法により得られた第2実施例に係る鋳型31のキャビティ24に、例えば減圧吸上げ鋳造法(CLA)や真空減圧吸上げ鋳造法(CLV)により所要金属の溶湯を鋳込むと、該溶湯はキャビティ24内の各部位に侵入する。この場合に、鋳型31を構成する第4層目の断熱性耐火層32には、断熱層として機能する多数の空洞部30からなる層が存在しているから、ホットインペラー12のベーン16と対応する部位に鋳込まれた溶湯の冷却を遅くすることができる。すなわち、薄肉部と厚肉部との温度勾配に大きく差がつかないので、薄肉部での金属の凝固が早くなることによる湯回り不良を防止して、溶湯の健全な鋳込みが達成される。これにより、欠陥の無い精密な製品を鋳造することができる。なお、鋳造後の鋳型31の型ばらしに際しては、前記空洞部30の部分において鋳型31が脆くなっているので、型ばらしが容易に行ない得る利点もある。
【0020】
なお、この実施例に係る鋳型31においては、前記熱焼失性粒28に代えて、脱ロウ工程および焼成工程による加熱によっても焼失することなく中空形状を保つ中空ガラス球(例えばシラスバルーン)を使用することも可能である。この場合には、多数の中空ガラス球自体が断熱機能を果たし、溶湯の健全な鋳込みを達成して欠陥の無い鋳型製品を鋳造し得るものである。また、断熱性耐火層32は鋳型31を構成する全ての耐火層の内の略中間に形成されればよいので、実施例において第5層目を断熱性耐火層32としてもよい。更に、全体の耐火層22,32の数も9層でなく8層とすることもできる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係るホットインペラー鋳造用の鋳型によれば、熱にて焼失し易い粒を焼失させることにより得られた空洞部の層を断熱層として機能させることにより、キャビティにおける薄肉部と対応する部位での金属の冷却を遅らせることができる。すなわち、キャビティにおける製品の薄肉部と厚肉部との温度勾配を均一化することが可能で、薄肉部での金属の凝固が早くなることによる湯回り不良を防止して、溶湯の健全な鋳込みを達成し得る。これにより、薄肉部を有するホットインペラーを、欠陥を生ずることなく精密に鋳造することができる。また断熱層としての空洞部は、鋳型を構成する耐火層における一部の材料を、熱にて焼失し易い粒に変更するだけで実施可能である。更に、耐火層内に、中空ガラス球を埋設・介在させることにより、該中空ガラス球により断熱効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 可縮性を有する精密鋳造用鋳型を示す断面図である。
【図2】 可縮性を有する精密鋳造用鋳型の造型工程を示す説明図である。
【図3】 可縮性を有する精密鋳造用鋳型の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の好適な実施例に係る断熱性を有するホットインペラー鋳造用の鋳型を示す断面図である。
【図5】 断熱性を有するホットインペラー鋳造用の鋳型の造型工程を示す説明図である。
【図6】ロストワックス法により鋳造するチャンネル形状の製品を示す斜視図である。
【図7】ロストワックス法により鋳造するホットインペラーを示す斜視図である。
【産業上の利用分野】
この発明は、ホットインペラー鋳造用の鋳型に関するものである。
【0002】
【従来技術】
機械加工が困難で、しかも高度の精密加工を必要とする製品を製造する技術として、精密鋳造技術の一種であるロストワックス法が知られている。このロストワックス法は、最終製品である鋳物と同一形状寸法の模型をワックスにより造型し(この模型を「ワックス型」という)、このワックス型の表面にインベスト材をコーティングして固めてから、該ワックス型を加熱してワックスを溶し出し、空洞状態となった該インベスト材を高温で焼成して鋳型を得るものである。この鋳型における前記空洞部(キャビティ)は、最終製品である鋳物の外部形状と一致しているので、該鋳型に所要の金属の溶湯を注ぎ込んだ後に冷却固化させ、次いで型ばらしすることにより鋳物製品が製造される。ここでワックス型の表面にコーティングされるインベスト材としては、例えばジルコンフラワーのような微細な耐火物粉末を、エチルシリケートやコロイダルシリカのようなバインダ(粘結剤)と混合したスラリ(溶液)が使用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
耐熱性と低熱膨張率とを有する特殊な耐熱合金として、鉄−シリコン−アルミ系のセンダスト合金が知られている。このセンダスト合金は、前述した特性を有する反面、変形し難いために、複雑な形状の製品を鋳造する際に割れ易い(脆い)欠点があった。例えば、図6に示す如き凹部を有するチャンネル形状の鋳物製品10をロストワックス法により鋳造する場合、鋳型のキャビティに鋳込まれたセンダスト合金は、その凝固に伴って収縮するが、このときに鋳型を構成する耐火層は変形しないために収縮が阻止されて、製品10の弱い部位(両側壁部)に割れを生ずることとなっていた。すなわち、センダスト合金により鋳造し得る鋳物製品の形状は限定され、実用的でない難点が指摘される。
【0004】
前記ロストワックス法で製造される鋳物製品として、例えば自動車におけるターボチャージャーの排気側に組込まれ、エンジンからの排気ガスを受けて高速で回転するホットインペラー12(図7参照)が挙げられる。このホットインペラー12は、その本体14の外周に、多数のベーン16が所要間隔で放射状に形成されている。このベーン16の肉厚は0.5mm程度の薄肉であり、しかも表面積が大きいため、ホットインペラー12の鋳造に際しては、キャビティのベーン部に鋳込まれた金属が他の部位よりも早く冷却されて凝固してしまう欠点があった。すなわち、ベーン部での金属の凝固によりキャビティ全体への湯回りが不良となって欠陥を生ずる問題が指摘される。
【0005】
【発明の目的】
この発明は、先に述べた従来技術に内在している欠点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、薄肉部の面積が大きいホットインペラーを鋳造するに際し、キャビティ全体への湯回り不良を生じることなく確実な鋳込みをなし得る断熱性を有するホットインペラー鋳造用の鋳型を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前述した課題を解決し、所期の目的を達成するため本発明は、ホットインペラー鋳造用の鋳型であって、
スラリとスタッコサンドとからなる複数の耐火層に、薄肉部を有するホットインペラーの外部形状と一致させたキャビティが画成され、
前記複数の耐火層における中間部の耐火層はスラリと熱焼失性粒とで構成され、
前記鋳型を加熱することで前記熱焼失性粒を焼失させて得た空洞部を断熱層として機能させ、
この鋳型に溶湯を吸上げ鋳造法により鋳込んだ場合に、前記ホットインペラーのベーンと対応する部位に鋳込まれた溶湯の冷却を前記空洞部の存在により遅くして、薄肉部と厚肉部との温度勾配を小さくし得るよう構成したことを特徴とする。
【0009】
【実施例】
次に本発明に係るホットインペラー鋳造用の鋳型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。
【0010】
図1は、精密鋳造用鋳型を示すものであって、該鋳型18は、チャンネル形状の鋳型製品10を模したワックス型20の外表面に重層的に形成された複数(実施例では8層)の耐火層22と、キャビティ24を画成する第1層目(鋳型18の内側から数えた場合)の耐火層22の外側に形成された可縮性耐火層26との9層構造から基本的に構成されている。キャビティ24を画成する第1層目の耐火層22および第3層目から第9層目までの耐火層22は、耐火物粉末を粘結剤と混合したスラリと、スタッコサンド(ムライトサンド,シャモット,シリカおよびジルコンの各単体またはその何れかとの混合物)と称する粒子粉末とから構成される。また第2層目となる可縮性耐火層26は、所要温度の熱にて焼失し易い粒(以後、この粒を「熱焼失性粒」という)28と、前記スラリとから構成され、該熱焼失性粒28は、鋳型18を脱ロウ工程および焼成工程により加熱した際に焼失して空洞部30が形成されるようになっている(図2参照)。そして、多数の空洞部30が形成された可縮性耐火層26が、キャビティ24に鋳込まれたセンダスト合金の凝固収縮に際して容易に崩壊することにより該収縮を許容し、鋳物製品の割れの発生を防止するべく機能する。なお、前記熱焼失性粒28としては、発泡スチロールや軽石等が好適に使用される。
【0011】
次に、前記精密鋳造用鋳型18の造型工程につき説明する。図2(a)に示すワックス型20は、チャンネル形状を有する鋳造製品10の最終形状と同一形状寸法に形成されたものであって、該ワックス型20の外側に、耐火性混合物のスラリを塗布し、該スラリの乾燥前にスタッコサンドを付着させて乾燥させた第1層目の耐火層22を形成する(図2(b))。次に、第1層目の耐火層22の外側に、前述したスラリを塗布した後、前記スタッコサンドに代えて熱焼失性粒28を振り掛けまたは吹付け等の手段により付着させて可縮性耐火層26を形成する(図2(c))。
【0012】
前記可縮性耐火層26の外側に、第1層目の耐火層22と同一の成分による層を同様の工程を繰返して7層形成することにより、9層構造の鋳型18が造型される(図2(d))。得られた鋳型18を蒸気タンク中に入れて高温(100℃〜150℃)の蒸気により急速加熱し、該鋳型18中のワックス型20を溶融させて外部に排出させる。次いで、1000℃〜1050℃で鋳型18を焼成することにより、残留しているワックスが燃焼すると共に当該鋳型18が焼結され、内部に鋳物製品10の外部形状と一致するキャビティ24が形成された鋳型18が得られる。この脱ロウ工程および焼成工程により鋳型18が加熱されると、前記可縮性耐火層26に内在している熱焼失性粒28が焼失し、その部位に空洞部30を生ずる(図2(e))。
【0013】
前記ロストワックス法により得られた鋳型18のキャビティ24に、例えば減圧吸上げ鋳造法(CLA)や真空減圧吸上げ鋳造法(CLV)によりセンダスト合金を鋳込み、該合金が冷却されて凝固すると、合金は凹部内方に収縮する。このとき、前記空洞部30が形成されている可縮性耐火層26が崩壊することにより合金の収縮が許容され、この結果として鋳造製品10に割れが生ずるのを確実に防止することができる。
【0014】
図3は、変形例を示すものであって、鋳型18を構成する第2層目および第4層目を、スラリと熱焼失性粒28とからなる可縮性耐火層26で形成してある。すなわちこの鋳型18では、脱ロウ工程および焼成工程により加熱されると、キャビティ24の外周に空洞部30の層を有する可縮性耐火層26が2重で形成される。従って、図に示す如く、凹部が幅広で凝固収縮が大きい製品の鋳造に適している。なお、鋳物製品の寸法よっては、鋳型18を構成する第3層目および第5層目を、可縮性耐火層26で形成するようにしてもよい。
【0015】
なお、図1と図3に示す実施例と変形例では、キャビティ24の全体を囲繞するように熱焼失性粒28の層を存在させるようにしたが、鋳物製品10の凹部に対応する個所にのみ熱焼失性粒28の層を存在させるものであってもよい。すなわち、鋳物製品10の強度的に弱い個所で、かつセンダスト合金が凝固する際に収縮する方向と対応する部位に熱焼失性粒28を焼失させた空洞部30の層を形成することで、凝固収納に伴う割れの発生を確実に防止することができる。また鋳型18を構成する全ての耐火層22,26の数は、実施例のような9層でなく8層であってもよい。
【0016】
図4は、本発明の実施例に係るホットインペラー鋳造用の鋳型を示すものであって、該鋳型31は、スラリとスタッコサンドとからなる複数(実施例では8層)の耐火層22と、内側から数えて第3層目の耐火層22の外側に形成されたスラリと熱焼失性粒28とからなる断熱性耐火層32とから構成されている。そして、この鋳型31を脱ロウ工程および焼成工程により加熱することにより、前記熱焼失性粒28が焼失して空洞部30が形成され、この空洞部30の層を有する断熱性耐火層32が断熱層として機能する。なお、鋳型31の内部には、薄肉部を有する例えばホットインペラー12の外形形状に一致するキャビティ24が画成されている。
【0017】
図5は、実施例に係る精密鋳造用鋳型31を造型する工程を示すものであって、基本的な工程は図1〜図3に関して述べたところと同様である。すなわち、ホットインペラー12に模して形成された図5(a)に示すワックス型34の外側に、スラリとスタッコサンドとからなる耐火層22を3重に形成する(図5(b))。次に、第3層目の耐火層22の外側に、スラリと熱焼失性粒28とからなる断熱性耐火層32を形成する(図5(c))。
【0018】
前記断熱性耐火層32の外側に、第1層目から第3層目までの耐火層22と同一の成分による層を、同様の手順を繰返して4層形成することにより、9層構造の鋳型31が造型される(図5(d))。得られた鋳型31を、脱ロウ工程および焼成工程により加熱することで、ホットインペラー12の外形形状と一致するキャビティ24が形成されると共に、第4層目に多数の空洞部30が形成された断熱性耐火層32を有する鋳型31が焼結される。
【0019】
前記ロストワックス法により得られた第2実施例に係る鋳型31のキャビティ24に、例えば減圧吸上げ鋳造法(CLA)や真空減圧吸上げ鋳造法(CLV)により所要金属の溶湯を鋳込むと、該溶湯はキャビティ24内の各部位に侵入する。この場合に、鋳型31を構成する第4層目の断熱性耐火層32には、断熱層として機能する多数の空洞部30からなる層が存在しているから、ホットインペラー12のベーン16と対応する部位に鋳込まれた溶湯の冷却を遅くすることができる。すなわち、薄肉部と厚肉部との温度勾配に大きく差がつかないので、薄肉部での金属の凝固が早くなることによる湯回り不良を防止して、溶湯の健全な鋳込みが達成される。これにより、欠陥の無い精密な製品を鋳造することができる。なお、鋳造後の鋳型31の型ばらしに際しては、前記空洞部30の部分において鋳型31が脆くなっているので、型ばらしが容易に行ない得る利点もある。
【0020】
なお、この実施例に係る鋳型31においては、前記熱焼失性粒28に代えて、脱ロウ工程および焼成工程による加熱によっても焼失することなく中空形状を保つ中空ガラス球(例えばシラスバルーン)を使用することも可能である。この場合には、多数の中空ガラス球自体が断熱機能を果たし、溶湯の健全な鋳込みを達成して欠陥の無い鋳型製品を鋳造し得るものである。また、断熱性耐火層32は鋳型31を構成する全ての耐火層の内の略中間に形成されればよいので、実施例において第5層目を断熱性耐火層32としてもよい。更に、全体の耐火層22,32の数も9層でなく8層とすることもできる。
【0022】
【発明の効果】
以上説明した如く、本発明に係るホットインペラー鋳造用の鋳型によれば、熱にて焼失し易い粒を焼失させることにより得られた空洞部の層を断熱層として機能させることにより、キャビティにおける薄肉部と対応する部位での金属の冷却を遅らせることができる。すなわち、キャビティにおける製品の薄肉部と厚肉部との温度勾配を均一化することが可能で、薄肉部での金属の凝固が早くなることによる湯回り不良を防止して、溶湯の健全な鋳込みを達成し得る。これにより、薄肉部を有するホットインペラーを、欠陥を生ずることなく精密に鋳造することができる。また断熱層としての空洞部は、鋳型を構成する耐火層における一部の材料を、熱にて焼失し易い粒に変更するだけで実施可能である。更に、耐火層内に、中空ガラス球を埋設・介在させることにより、該中空ガラス球により断熱効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 可縮性を有する精密鋳造用鋳型を示す断面図である。
【図2】 可縮性を有する精密鋳造用鋳型の造型工程を示す説明図である。
【図3】 可縮性を有する精密鋳造用鋳型の変形例を示す断面図である。
【図4】本発明の好適な実施例に係る断熱性を有するホットインペラー鋳造用の鋳型を示す断面図である。
【図5】 断熱性を有するホットインペラー鋳造用の鋳型の造型工程を示す説明図である。
【図6】ロストワックス法により鋳造するチャンネル形状の製品を示す斜視図である。
【図7】ロストワックス法により鋳造するホットインペラーを示す斜視図である。
Claims (3)
- ロストワックス精密鋳用鋳型であって、
スラリとスタッコサンドとからなる複数の耐火層 (22) に、薄肉部を有するホットインペラー (12) の外部形状と一致させたキャビティ (24) が画成され、
前記複数の耐火層における中間部の耐火層 (32) はスラリと熱焼失性粒 (28) とで構成され、
前記鋳型を加熱することで前記熱焼失性粒 (28) を焼失させて得た空洞部 (30) を断熱層として機能させ、
この鋳型に溶湯を吸上げ鋳造法により鋳込んだ場合に、前記ホットインペラー (12) のベーン (16) と対応する部位に鋳込まれた溶湯の冷却を前記空洞部 (30) の存在により遅くして、薄肉部と厚肉部との温度勾配を小さくし得るよう構成した
ことを特徴とするホットインペラー鋳造用の鋳型。 - 前記吸上げ鋳造法は、真空減圧吸上げ鋳造法 (CLV) である請求項1記載のホットインペラー鋳造用の鋳型。
- 前記吸上げ鋳造法は、減圧吸上げ鋳造法 (CLA) である請求項1記載のホットインペラー鋳造用の鋳型。
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