JP4033032B2 - 蒸気圧縮式冷凍機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1台の圧縮機にて第1、2蒸発器から冷媒を吸引して冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷凍機に関するもので、前席用の蒸発器と後席用の蒸発器とを備える車両用デュアルエアコンに適用して有効である。
【0002】
【従来の技術】
従来の蒸気圧縮式冷凍機では、圧縮機の吸入側と蒸発器とを繋ぐ吸入回路途中に気液分離器を設けて圧縮機に液相冷媒が吸引されることを防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−146038号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両用空調装置では、通常、圧縮機は走行用のエンジンから動力を得て稼動するので、圧縮機は車両前方側のエンジンルームに搭載される。このため、車両用デュアルエアコンでは、圧縮機の吸入側と後席用の蒸発器の冷媒流出口とは比較的に長い冷媒配管を介して接続され、かつ、この吸入回路をなす冷媒配管は車両床下等のエンジンルーム内に比べて冷え易い部位に設置される。
【0005】
このため、圧縮機が停止すると、後席用の蒸発器及び冷媒配管に残存する気相冷媒が冷却凝縮して、液相冷媒が温度が最も低くなる床下配管部等に集まってきてしまう。
【0006】
また、蒸気圧縮式冷凍機では、通常、圧縮機内の摺動部を潤滑する潤滑油(冷凍機油)を冷媒中に混合して、冷媒と共に圧縮機に供給することにより摺動部を潤滑しているが、前述のごとく、吸入回路が冷却されて液相冷媒のみが吸入回路に集まってくると、吸入回路内に残存する潤滑油の濃度が低下してしまう。
【0007】
なお、潤滑油の冷媒への溶け込み量は、冷媒及び潤滑油の種類、潤滑油と冷媒との質量比、並びに圧力によって相違するものの、通常、圧縮機が停止した状態の吸入回路では、冷媒と潤滑油とは分離している可能性が高い。
【0008】
したがって、潤滑油の濃度が低下した状態で圧縮機が起動すると、吸入回路内に滞留した潤滑油を殆ど含まない冷媒を圧縮機が吸引してしまうので、圧縮機内の摺動部に残存する潤滑油が液相冷媒により洗い流されるように、冷媒に溶け込んでいくため、摺動部の潤滑油が不足してしまい、摺動部が焼き付いてしまうおそれがある。
【0009】
なお、前席用の蒸発器に接続される冷媒配管は、エンジンルーム等の床下に比べて冷え難い、又は日中においては床下に比べて温度が高くなる部位に設置されているので、上記した問題は発生し難い。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、第1には、従来と異なる新規な蒸気圧縮式冷凍機を提供し、第2には、圧縮機の起動直後における潤滑油不足を未然に防止することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、1台の圧縮機(100)にて第1、2蒸発器(17、27)から冷媒を吸引して冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷凍機であって、第2蒸発器(27)の冷媒出口と圧縮機(100)の吸入側とを繋ぐ第2吸入回路(27a)は、第1蒸発器(17)の冷媒出口と圧縮機(100)の吸入側とを繋ぐ第1吸入回路(17a)に比べて温度が低くなる雰囲気中を経由しており、さらに、圧縮機(100)の起動時には、第2吸入回路(27a)を開閉する開閉弁(27b)を閉じることを特徴とする。
【0012】
これにより、圧縮機(100)の起動時に、第2吸入回路(27a)に滞留した潤滑油が少ない液相冷媒、又は第2吸入回路(27a)に滞留した液相冷媒のみが圧縮機(100)に入り込んでしまうことを未然に防止できる。したがって、圧縮機(100)内の摺動部が液相冷媒にて洗われて摺動部の潤滑油が不足してしまうことを確実に防止できる。
【0013】
請求項2に記載の発明では、圧縮機(100)の起動後、所定時間が経過した時に開閉弁(27b)を開くことを特徴とする。
【0014】
これにより、第2蒸発器(27)及び第2吸入回路(27a)に流れ込んでしまった冷媒及び潤滑油を循環させることができるので、第1蒸発器(17)側において冷媒及び潤滑油が不足してしまうことを防止でき得る。
【0015】
請求項3に記載の発明では、開閉弁(27b)は、第2吸入回路(27a)のうち第1吸入回路(17a)と第2吸入回路(27a)との合流部近傍に設けられていることを特徴とする。
【0016】
これにより、圧縮機(100)を起動した際に第2吸入回路(27a)から吸引される液相冷媒量を最小限に止めることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、所定時間は、10秒以上であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項5に記載の発明では、所定時間は、圧縮機(100)の回転数が高くなるほど、短くなるように選定されることを特徴とする。
【0019】
これにより、第2蒸発器(27)の停止時間を短くしながら、圧縮機(100)の焼き付き確実に防止できる。
【0020】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の蒸気圧縮式冷凍機を備える車両用空調装置であって、圧縮機(100)はエンジンルーム内に搭載され、第1蒸発器(17)は車室内前方側に搭載され、第2蒸発器(27)は第1蒸発器(17)より車両後方側に搭載されていることを特徴とするものである。
【0021】
請求項7に記載の発明では、開閉弁(27b)は、エンジンルーム内に配置されていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項8に記載の発明では、第2吸入回路(27a)は、車両の床下に設置されていることを特徴とするものである。
【0023】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0024】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、発明に係る蒸気圧縮式冷凍機を車両用空調装置に適用したものであって、
図1は本実施形態に係る車両用空調装置の模式図であり、図2は本実施形態に係る車両用空調装置の車両への搭載状態を示す模式図であり、図3は本実施形態に係る圧縮機100の模式断面図であり、図4は本実施形態に係る車両用空調装置の制御作動を示すフローチャートである。なお、図1〜3は模式的な図であり、実際の形状及び構造を示すものではないことは言うまでもない。
【0025】
本実施形態に係る車両用空調装置は、車室内前方側に搭載された前席側空調ユニット10、車両後方側のトランクルームに搭載された後席側空調ユニット20、及びエンジンルームに搭載された室外ユニット30等から構成されたものである。以下、前席側空調ユニット10、後席側空調ユニット20、室外ユニット30の順にその概略構成を述べる。
【0026】
1.前席側空調ユニット10
空調ケーシング11は、主に前席側に吹き出される空気が流れるダクト手段でであり、その空気流れ上流側には、空調ケーシング11内に導入する室内空気量と室外空気量とを調節する内外気導入ユニット12、空調ケーシング11内に導入された空気中の塵埃等を除去するフィルタ13、及び送風用の送風機14等が設けられている。
【0027】
また、空調ケーシング11の最下流側には、窓ガラスに向けて吹き出される空気をデフロスタ吹出口に供給するデフ供給口15a、前席側車室内上方側に向けて吹き出される空気をフェイス吹出口に供給するフェイス供給口15b、前席側車室内下方側に向けて吹き出される空気をフット吹出口に供給するフット供給口15c、前席側の乗員着座用のシートから乗員側に吹き出される空気をシート41に供給するシート供給口15d、及び前席側の天井から室内に吹き出される空気を供給する天井供給口15eが設けられている。
【0028】
そして、各供給口15a〜15eの空気流れ上流側には、各供給口15a〜15eに供給される空気量をを調節するとともに、室内に吹き出す空気の吹出モードを切り替える吹出モードドア16a〜16eが設けられている。なお、各供給口15a〜15e毎に独立して吹出モードドア16a〜16eが設けられているが、本発明はこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0029】
また、送風機14の空気流れ下流側であって、吹出モードドア16a〜16eの空気流れ上流側には、空調ケーシング11内を流れる空気を冷却する前席用クーラ17、前席用クーラ17の空気流れ下流側に配置されて空気を加熱する前席用ヒータ18、及び前席用ヒータ18を通過した温風と前席用ヒータ18を迂回して流れる冷風量とを調節することにより室内に吹き出す空気の温度を調節するエアミックスドア19等が収納されている。
【0030】
なお、前席用クーラ17は、冷媒を蒸発させることより吸熱能力を発揮する冷却用熱交換器であり、周知の蒸気圧縮式冷凍機の低圧側熱交換器である。また、前席用ヒータ18は、エンジン冷却水等の車両で発生した廃熱を熱源として空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0031】
また、シート供給口15dから吹き出す空気は、床に配設されたダクトを介してシートに供給され、天井供給口15eから吹き出す空気は、フロント窓ガラスの左右端に位置する、いわゆるAピラー内に配置されたダクトを介して天井に設けられ多数個の吹出口に導かれる。
【0032】
2.後席側空調ユニット20
後席側空調ユニット20の構成は、内外気導入ユニット、デフ供給口、フェイス供給口、及びフット供給口が設けられていない点を除けば、前席側空調ユニット10の構成と略同一である。
【0033】
すなわち、空調ケーシング21の空気流れ上流側から順に、フィルタ23、送風機24、後席用クーラ27、エアミックスドア29、後席用ヒータ28、並びに後席側の乗員着座用のシート(図示せず。)から乗員側に吹き出される空気をシートに供給するシート供給口25d、後席側の天井から室内に吹き出される空気を供給する天井供給口25e、及び各供給口25d、25eに供給される空気量をを調節するとともに、室内に吹き出す空気の吹出モードを切り替える吹出モードドア26d、26e等からなるものである。
【0034】
なお、後席用クーラ27も前席用クーラ17と同様に蒸気圧縮式冷凍機の低圧側熱交換器であり、後席用ヒータ28も前席用ヒータ18と同様に廃熱を熱源として空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0035】
また、シート供給口25dから吹き出す空気は、後席シートのシートバック側からシート42に供給され、天井供給口25eから吹き出す空気は、リア窓ガラスの左右端に位置する、いわゆるCピラー内に配置されたダクトを介して天井に設けられ多数個の吹出口に導かれる。
【0036】
3.室外ユニット30等
圧縮機100は冷媒を吸入圧縮するもので、本実施形態では、走行用エンジンから駆動力を得て稼動するとともに、その稼働率(吐出流量)は、走行用エンジンの動力を圧縮機100に伝達する電磁クラッチの断続することにより制御される。なお、圧縮機100の詳細構造は後述する。
【0037】
凝縮器32は圧縮機100から吐出した冷媒と室外空気とを熱交換して冷媒を冷却する高圧側熱交換器であり、本実施形態では、冷媒をフロンとして圧縮機100の吐出圧、つまり高圧側冷媒圧力を冷媒の臨界圧力以下としているので、冷媒は凝縮器32内で凝縮しながらそのエンタルピを低下させる。
【0038】
レシーバ33は蒸気圧縮式冷凍機内を循環する冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して余剰冷媒を液相冷媒として蓄える気液分離器であり、本実施形態では、凝縮器32の冷媒流出口側の冷媒回路に設けられて分離された液相冷媒を両クーラ17、27に供給する。
【0039】
減圧器34a、34bは、クーラ17、27に流入する冷媒を減圧する減圧手段であり、本実施形態では、圧縮機100に吸入される冷媒の過熱度が所定値となるようにその絞り開度が制御される、いわゆる機械式の温度式膨脹弁が採用されている。
【0040】
なお、本実施形態では、送風機14又は送風機24を稼動させるか否かによって前席側空調ユニット10又は後席側空調ユニット20を稼動させるかを制御している。つまり例えば圧縮機100を稼動て送風機14のみを稼動させれば前席側空調ユニット10にみで冷風が発生し、また、圧縮機100を稼動て送風機14、24のみを稼動させれば前席側空調ユニット10及び後席側空調ユニット20の両ユニットで冷風が発生する。
【0041】
ところで、送風機14、24、エアミックスドア19、29、吹出モードドア16a〜16e、26d、26e等は、電子制御装置(図示せず。)により制御されており、この電子制御装置には、車室内空気温度、車室外空気温度、車室内に降り注がれる日射量、ヒータ18、28に供給されるエンジン冷却水の温度等の空調制御に必要なパラメータを検出する空調センサの検出値、前席用コントロールユニットに入力された前席側で希望する空調温度、後席用コントロールユニットに入力された後席側で希望する空調温度、及び室内に吹き出す空気の風量を手動操作にて調節するための風量ボリューム、つまり風量調節手段の設定値等が入力されている。
【0042】
また、後席用クーラ27の冷媒出口と圧縮機100の吸入側とを繋ぐ第2吸入回路27aは、図2に示すように、前席用クーラ17の冷媒出口と圧縮機100の吸入側とを繋ぐ第1吸入回路17aに比べて温度が低くなる雰囲気(本実施形態では、車両の床下)に配設されている。
【0043】
なお、第1吸入回路17aは、床下に比べて冷え難い、又は日中においては床下に比べて温度が高くなるエンジンルーム内に配設されている。
【0044】
そして、第1吸入回路17aと第2吸入回路27aとの合流部aは、圧縮機100の吸入口近傍(本実施形態では、つまりエンジンルーム内)に設けられており、この合流部aの近傍であって、第2吸入回路27a側には、第2吸入回路27aを開閉する電磁弁27bが設けられている。なお、電磁弁27bの開閉は電子制御装置により制御されている。
【0045】
ここで、合流部aの近傍とは、第2吸入回路27aから圧縮機100までの冷媒通路長がなるべく短くなる位置であって、エンジンルーム内や電磁弁27bから圧縮機100までの冷媒通路体積が圧縮機100の理論吐出量以下となる部位等である。
【0046】
次、圧縮機100について述べる。
【0047】
符号101a、101bは、複数本の円柱状空間(以下、この空間をシリンダボアと呼ぶ。)102a、102bが形成された第1、2シリンダブロック(第1、2ハウジング)であり、両シリンダブロック102a、102bは、各シリンダボア102a、102bの軸線が一致するように連結されている。
【0048】
なお、各シリンダボア102a、102bは、各シリンダブロック101a、101bに対して、後述するシャフト105周りに複数本(本実施形態では5本)形成されている。
【0049】
また、符号103aは第1シリンダブロック101aのシリンダボア102aのうち第2シリンダブロック101bと反対側を閉塞するフロントプレートであり、符号104aは第2シリンダブロック101bのシリンダボア102bのうち第1シリンダブロック101aと反対側を閉塞するリアプレートである。
【0050】
なお、フロントプレート103aは、フロントハウジング103と第1シリンダブロック101aとの間に挟まれた状態で固定され、リアプレート104aは、リアハウジング104と第2シリンダブロック101bとの間に挟まれた状態で固定されている。
【0051】
そして、両シリンダブロック101a、102b内には、車両走行用エンジン(図示せず。)等の外部駆動源から駆動力を得て回転するシャフト105がラジアル軸受106a、106bを介して回転可能に配設されており、このシャフト105には、シャフト長手方向に対して傾いた状態でシャフト105と一体的に回転する斜板107が圧入固定されている。
【0052】
なお、シャフト105は、電磁クラッチ105a等の動力を断続することができる動力伝達装置を介して回転駆動されており、その稼働率は電磁クラッチ105aをON−OFFすることにより制御される。
【0053】
また、斜板107の外径側には、一対のシュー108を介して複数本(本実施形態では、5本)の双頭ピストン109が連結されており、この双頭ピストン109は、その長手方向両端側にピストン部109aが設けられたもので、双頭ピストン109、両シリンダブロック101a、101b及び両ハウジング103、104により、冷媒(流体)が吸入圧縮される第1、2作動室110a、110bが構成されている。
【0054】
因みに、本実施形態では、5本の双頭ピストン109を有しているので、本実施形態に係る圧縮機100では、第1作動室110aが5個、第2作動室110bが5個、計10個の作動室を有していることとなる。
【0055】
ところで、シュー108は、斜板107と摺動可能に接触するとともに、その球面部において双頭ピストン109と揺動可能に接触している。このため、シャフト105が回転し、斜板107がシャフト105と共に回転しながら径外方側を揺動すると、一対のシュー108を介して連結されたピストン109は、シャフト105の長手方向に往復運動して両作動室110a、110bの体積を拡大縮小させる。
【0056】
つまり、斜板型圧縮機において、斜板107は、シャフト105の回転運動を往復運動に変換してピストン109を可動させる、一種のクランク機構を構成するものである。
【0057】
因みに、符号107a、107bは、ピストン109を介して斜板107に作用する圧縮反力のうち、シャフト105の長手方向と平行な方向の力(スラスト力)を受けるスラスト軸受である。
【0058】
また、各ハウジング103、104には、各作動室110a、110bに冷媒を分配供給する吸入室111a、111b、及び各作動室110a、110bから吐出された冷媒を集合回収する吐出室112a、112bが形成されている。
【0059】
なお、両プレート103a、104aには、各作動室110a、110bと各吸入室111a、111bとを連通させる吸入ポート113a、113b、及び各作動室110a、110bと各吐出室112a、112bとを連通させる吐出ポート114a、114bが形成されている。
【0060】
そして、吸入ポート113a、113bには、冷媒が作動室110a、110bから吸入室111a、111bに逆流することを防止するリード弁状の吸入弁(図示せず)が設けられ、吐出ポート114a、114bには、冷媒が吐出室112a、112bから作動室110a、110bに逆流することを防止するリード弁状の吐出弁(図示せず)が設けられている。
【0061】
また、圧縮機100の吸入口、つまり前席用クーラ17及び後席用クーラ27の冷媒流出口側に接続される部位は、斜板107が収納された斜板室107cに連通しており、圧縮機100に吸引された吸入冷媒は、斜板室107cにて分配されて2つの吸入室111a、111b、つまり2つのシリンダボア102a、102b内に供給される。
【0062】
次に、本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍機、つまり車両用空調装置の特徴的作動を述べる。
【0063】
本実施形態に係る蒸気圧縮式冷凍機の特徴的作動は、前席側空調ユニット10の始動及び後席側空調ユニット20の始動を問わず、圧縮機100が停止した状態から起動したときには、圧縮機100の起動時から少なくとも10秒間は電磁弁27bを閉じて第2吸入回路27a内の液相冷媒が圧縮機100に吸引されることを防止するものであり、以下にその詳細を図4に基づいて述べる。
【0064】
前席用空調ユニット10及び後席用空調ユニット20が起動されたとき、又は前席用空調ユニット10のみが起動されたときには、電磁弁27bを閉じ、かつ、後席用の送風機24を停止させて後席用減圧器34bの閉状態を維持させた状態を所定時間(例えば、30秒)維持する(S1〜S10)。
【0065】
そして、電磁弁27bを閉じ、かつ、送風機24を停止させた状態で所定時間が経過した時には、電磁弁27bを開く(S11〜S13)。
【0066】
なお、後席用空調ユニット20を始動させるときには、電磁弁27bを開くと同時、又は電磁弁27bを開いた後に後席用の送風機24を稼動させる。
【0067】
次に、本実施形態の作用効果を述べる。
【0068】
長時間圧縮機100を停止して圧縮機100等の室外ユニット30が外気温度まで低下すると、圧縮機100の近傍に設置された前席側空調ユニット10の冷媒通路に残存する気相冷媒が凝縮して潤滑油が溶け込んだ液相冷媒が圧縮機100、つまり斜板室107c内に集まってくる。
【0069】
そして、圧縮機100が起動すると、斜板室107cの圧力が低下して斜板室107cの液相冷媒が急激に沸騰して泡立って各摺動部、つまりスラスト軸受107a、107bやシュー108に泡状の潤滑油が供給されて潤滑される。
【0070】
このとき、電磁弁27bが閉じられているので、斜板室107c内に第2吸入回路27aに滞留した潤滑油が少ない液相冷媒、又は第2吸入回路27aに滞留した液相冷媒のみが斜板室107cに入り込んでしまうことが防止される。
【0071】
したがって、圧縮機100内の摺動部が液相冷媒にて洗われて摺動部の潤滑油が不足してしまうことを確実に防止できる。
【0072】
ところで、本実施形態では、後席用の送風機24を稼動させるか否かによって後席用空調ユニット20を稼動させるか否かを切り換えているが、これは、後席用クーラ27内外の温度が略同一の際には減圧器34bが閉じた状態となることを利用したものである。
【0073】
しかし、減圧器34bを閉じる力を発生させる弾性手段をなすバネは、通常、2deg〜3deg程度の過熱度に相当する力であるので、圧縮機100が稼動すると、減圧弁34bが僅かに開き、後席用クーラ27及び第2吸入回路27aに冷媒が流れ込んでしまう。
【0074】
このため、電磁弁27bを閉じたままとすると、後席用クーラ27及び第2吸入回路27aに冷媒及び潤滑油が溜まってしまうので、前席用空調ユニット10側で冷媒及び潤滑油が不足してしまう。
【0075】
そこで、本実施形態では、圧縮機100の起動した時から所定時間が経過した後は、電磁弁27bを開いて後席用クーラ27及び第2吸入回路27aに流れ込んでしまった冷媒及び潤滑油を吸引して回収している。
【0076】
また、電磁弁27bを圧縮機100の吸入側近傍、つまり合流部a近傍に設けているので、圧縮機100を起動した際に第2吸入回路27aから吸引される液相冷媒量を最小限に止めることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、圧縮機100を起動すると同時に電磁弁27bを閉じた後、電磁弁27bを閉じる時間を計測し始めるが、本実施形態は、これに限定されるものではなく、圧縮機100を停止すると同時に電磁弁27bを閉じ、その後、圧縮機100を起動した時を基準として電磁弁27bを閉じる時間を計測してもよいことは言うまでもない。
【0078】
(第2実施形態)
第1実施形態では、圧縮機100の起動後、電磁弁27bを閉じる時間を固定値としたが、本実施形態は、図5に示すように、圧縮機100の回転数が高くなるほど、電磁弁27bを閉じる時間を短くなるように選定するものである。
【0079】
ところで、本発明では、圧縮機100の起動した時に第2吸入回路27aを閉じるものであるが、後席用空調ユニット20の始動スイッチ(エアコンスイッチ)が投入されているときには、電磁弁27bを閉じる時間は短いほどよい。
【0080】
一方、圧縮機100の回転数が高いほど、潤滑油が早く前席用クーラ17等から圧縮機100に戻ってくるので、圧縮機100の回転数が高いほど、電磁弁27bを閉じる時間を短くすることができる。
【0081】
したがって、本実施形態のごとく、圧縮機100の回転数が高くなるほど、電磁弁27bを閉じる時間を短くなるように選定すれば、後席側空調ユニット20の停止時間を短くしながら、圧縮機100の焼き付き確実に防止できる。
【0082】
なお、通常の車両では、圧縮機100の回転数が1500rpm(アイドリング回転数相当)、外気温度20℃の場合、電磁弁27bを約10秒程度閉じれば、必要にして十分な焼き付き防止効果を得ることができる。
【0083】
因みに、本実施形態では、圧縮機100の回転数、つまりエンジンの回転数は圧縮機100を起動させた時のエンジン回転数に基づいて決定しているが、本実施形態は、これに限定されるもではない。
【0084】
また、本実施形態では、圧縮機100の回転数のみに基づいて電磁弁27bを閉じる時間を選定したが、図5から明らかなように、圧縮機100の回転数及び送風機14の送風量に基づいて電磁弁27bを閉じる時間を選定してもよいことは言うまでもない。
【0085】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、圧縮機100の起動した時から所定時間が経過した後は電磁弁27bを開いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば後席用の減圧器34bの冷媒流れ上流側に開閉弁を設け、この開閉弁により後席用空調ユニット20の運転を制御する場合には、後席用クーラ27及び第2吸入回路27aに冷媒及び潤滑油が流れ込んでしまうことを開閉弁により防止できるので、電磁弁27bを閉じたままとしてもよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、前席用クーラ17と後席用クーラ27とを備える車両用デュアルエアコンに本発明を適用したが、クーラと圧縮機の吸入側とを繋ぐ吸入回路が冷え易い部位に配置されていれば、シングルシングルエアコンにおいても上記問題は発生し得る。なお、シングルシングルエアコンにおいては、吸入回路を完全に閉じることができないので、圧縮機100が起動した時から所定時間は吸入回路を絞り、所定時間が経過した後は、この絞りを全開とすることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用空調装置の車両への搭載状態を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る圧縮機の模式断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の制御作動を示すフローチャートである。
【図5】電磁弁の閉時間と圧縮機の回転数との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10…前席用空調ニット、20…後席用空調ニット、
17a…第1吸入回路、27a…第2吸入回路、
27b…電磁弁、32…凝縮器、100…圧縮機。
Claims (8)
- 1台の圧縮機(100)にて第1、2蒸発器(17、27)から冷媒を吸引して冷媒を循環させる蒸気圧縮式冷凍機であって、
前記第2蒸発器(27)の冷媒出口と前記圧縮機(100)の吸入側とを繋ぐ第2吸入回路(27a)は、前記第1蒸発器(17)の冷媒出口と前記圧縮機(100)の吸入側とを繋ぐ第1吸入回路(17a)に比べて温度が低くなる雰囲気中を経由しており、
さらに、前記圧縮機(100)の起動時には、前記第2吸入回路(27a)を開閉する開閉弁(27b)を閉じることを特徴とする蒸気圧縮式冷凍機。 - 前記圧縮機(100)の起動後、所定時間が経過した時に前記開閉弁(27b)を開くことを特徴とする請求項1に記載の蒸気圧縮式冷凍機。
- 前記開閉弁(27b)は、前記第2吸入回路(27a)のうち前記第1吸入回路(17a)と前記第2吸入回路(27a)との合流部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸気圧縮式冷凍機。
- 前記所定時間は、10秒以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の蒸気圧縮式冷凍機。
- 前記所定時間は、前記圧縮機(100)の回転数が高くなるほど、短くなるように選定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の蒸気圧縮式冷凍機。
- 請求項1ないし5のいずれか1つに記載の蒸気圧縮式冷凍機を備える車両用空調装置であって、
前記圧縮機(100)はエンジンルーム内に搭載され、
前記第1蒸発器(17)は車室内前方側に搭載され、
前記第2蒸発器(27)は前記第1蒸発器(17)より車両後方側に搭載されていることを特徴とする車両用空調装置。 - 前記開閉弁(27b)は、前記エンジンルーム内に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
- 前記第2吸入回路(27a)は、車両の床下に設置されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の車両用空調装置。
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