以下、本発明に係る車両周辺監視装置について実施の形態を挙げ、添付の図1〜図21を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るナイトビジョンシステム(車両周辺監視装置)10は、車両12に搭載されたシステムであって、主要な制御部であるECU(Electric Control Unit)14と、左右一対の赤外線カメラ(撮像手段)16L、16Rと、検出結果画像を表示するためのHUD(Head Up Display)18と、警報音等を発するスピーカ20と、走行速度を検出する車速センサ22と、走行時のヨーレートを検出するヨーレートセンサ24と、日射センサ26と、ヘッドライトスイッチ28と、システムを起動又は停止させるメインスイッチ30と、外部コンピュータシステムとの接続部32とを有する。ナイトビジョンシステム10を構成するこれらの機器間の接続には、他のシステムと兼用の車内通信網を用いてもよい。
赤外線カメラ16R及び16Lは、バンパ下部における横長グリル孔の右端部及び左端部に並行配置され、左右対称位置でそれぞれ前方を指向し、カメラ間距離(以下、基線長ともいう。)Bの間隔で設けられている。赤外線カメラ16R及び16Lは遠赤外線を検出することにより高温部ほど高輝度となる赤外線画像を撮像して、それぞれECU14に供給する。
HUD18はインスツルメントパネル上部のドライバの正面位置において前方視界を妨げないように設けられている。HUD18はシステムオフ状態ではインスツルメントパネル内に格納されており、日射センサ26の情報から夜であると判断し、且つヘッドライトスイッチ28の情報からヘッドライト(又はフォグライト)が点灯していると判断される状態でメインスイッチ30をオンにするとポップアップする。HUD18の映像表示部は凹面ミラーで構成され、インスツルメントパネル内部からの映像を反射・投影する。ナイトビジョンシステム10はメインスイッチ30の操作に拘わらず、オートライト機能に連動して自動起動させてもよい。HUD18の表示輝度は適当なスイッチ操作によって調整可能としてもよい。
ECU14は、赤外線カメラ16R、16Lから得られたステレオ赤外線画像に基づいて、両画像の視差から熱源対象物を検出してHUD18上で白いシルエットとして映し出す。さらに、熱源対象物の中から歩行者を特定すると、注意喚起のためにスピーカ20から音を発すると同時に、HUD18上に映し出された歩行者を目立つ色の枠で囲んで強調表示する。この注意喚起機能は、所定の速度域において歩行者の位置に到達するまでの時間を予測し、充分な回避操作が行えるタイミングで注意喚起を行う。
赤外線カメラ16R、16Lは、遠方の熱源対象物の位置、距離及び形状を正確に判定するため、製作所における製造時、あるいは、定期点検時等において、後述する調整処理であるエイミング設定が行われる。
図2に示すように、ECU14は、赤外線カメラ16R、16Lにより撮像された赤外線画像をA/D変換してグレースケール画像を生成する画像入力部40と、閾値に基づいてグレースケール画像から二値化画像を生成する二値化処理部42と、グレースケール画像及び二値化画像を記憶する画像記憶部44と、エイミングを行って処理結果をカメラパラメータ記憶部46に記憶するエイミングモード実行部48と、車速センサ22等のセンサ及びカメラパラメータ記憶部46を参照しながら通常の画像処理を行うとともにHUD18及びスピーカ20を制御する通常モード実行部50と、接続部32を介して外部のコンピュータシステムからの指示に基づき、エイミングモードか通常モードのいずれか一方を選択するモード選択部52とを有する。
図3に示すように、画像記憶部44には、右の赤外線カメラ16Rが撮像した赤外線画像に基づく右グレースケール画像54及び右二値化画像56と、左の赤外線カメラ16Lが撮像した赤外線画像に基づく左グレースケール画像58が記憶される。これらの各画像は、車両12の前方を撮像した横長のデジタル画像である。右グレースケール画像54及び左グレースケール画像58は各ピクセルの輝度が所定の階調(例えば、256階調)で表され、右二値化画像56は各ピクセルの輝度が0又は1で表される二値の画像である。実際上、各画像は複数枚を同時に記憶可能である。
図2に戻り、エイミングモード実行部48は、車両12を製造する製作所内において外部コンピュータシステムとしてエイミングターゲット制御装置100(図4参照)を用いてエイミングを行う製作所モード部70と、サービスエイミング設定装置120(図5参照)を用いてサービス工場等でエイミングを行うサービスモード部72を有し、これらの外部コンピュータシステムからの指示に基づいて製作所モード部70又はサービスモード部72のいずれか一方が選択実行される。
また、エイミングモード実行部48は、エイミングの開始時に外部コンピュータシステムから所定のパラメータを入力するパラメータ入力部74と、エイミングに必要な初期設定を行う初期設定部76と、画像記憶部44に記憶された左右のグレースケール画像54、58に対してテンプレートを用いたマッチングを行うテンプレートマッチング部78と、赤外線カメラ16R、16Lにより撮像して得られた画像信号の輝度を調整するための輝度調整LUTを設定する輝度調整LUT設定部80と、赤外線カメラ16R、16Lの焦点距離、画素ピッチ等の固体差に起因して発生する映像歪みを補正する左右カメラ映像歪補正部82と、赤外線カメラ16R、16Lの取付角(パン角、ピッチ角)を算出する左右カメラ取付角算出部84と、画像から演算範囲を切り出すための基準となる切り出し座標を算出する左右カメラ映像切出座標算出部86と、赤外線カメラ16R、16Lの光軸が平行に設定されていないことに起因する対象物画像の視差に含まれる誤差である視差オフセット値を算出する視差オフセット値算出部88とを有する。
なお、視差オフセット値算出部88は、赤外線カメラ16R、16Lで撮像された対象物の画像上の実視差を算出する実視差算出手段と、赤外線カメラ16R、16Lにより撮像された各画像を各パン角に従って切り出し、測距精度をさらに向上するために視差オフセット値を算出する視差補正値算出手段として機能する。
初期設定部76は、対象物までの距離に応じて用意された6つのテンプレートTP1、TP2、TP3、TP4、TP5、TP6(代表的にテンプレートTPとも示す。)から1つを選択するテンプレート設定部94を有する。また、ECU14は、対象物の位置を求めるための透視変換モデルを数式として記憶するモデル記憶部96を有し、エイミングモード実行部48及び通常モード実行部50は該透視変換モデルを用いて対象物の位置を算出する。モデル記憶部96には、対象物が近距離である場合の近距離用モデルと遠距離である場合の遠距離用モデルが記憶されている。
ECU14は、主たる制御部としてのCPU(Central Processing Unit)と、記憶部としてのRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を有しており、上記の各機能部は、CPUがプログラムを読み込み、記憶部等と協動しながらソフトウェア処理を実行することにより実現される。
図4に示すように、エイミングターゲット制御装置100は、車両12の位置決め装置102と、車両12が位置決めされた状態で赤外線カメラ16R、16Lの前方既知の距離Zfに設けられたゲート104と、前記接続部32を介してECU14と通信を行うとともにゲート104を制御する主制御装置106とを有する。ゲート104は、車幅よりやや広い間隔で設けられた2本の支柱108と、左右端を支柱108に支持された横長のターゲット板110とを有し、該ターゲット板110は、主制御装置106の作用下に支柱108に沿って昇降可能である。ターゲット板110には、撮像する対象物としての8つのエイミングターゲット112a、112b、112c、112d、112e、112f、112g及び112h(代表的にエイミングターゲット112とも示す。)が左から順に水平に配列されており、エイミングターゲット112a〜112hは熱源である。
左側のエイミングターゲット112a〜112dは比較的小さい間隔d(d<B)で並んでおり左ターゲット群114を形成する。同様に、右側のエイミングターゲット112e〜112hは間隔dで並んでおり右ターゲット群116を形成する。左ターゲット群114の右端であるエイミングターゲット112dと右ターゲット群116の左端であるエイミングターゲット112eの間隔は基線長Bに等しく、エイミングターゲット112d及び112eは、赤外線カメラ16R及び16Lの正面位置に配置される。
なお、エイミングターゲット112a〜112hは発熱体のような熱源に限らず、例えば図5に示すように、熱の反射板としての小さい金属板(アルミニウム板等)118a〜118hを用いてもよい。このような金属板をターゲットとして用いることにより車両12が発生、放射する熱(赤外線)が反射され、赤外線カメラ16R及び16Lで撮像することができる。この場合、ターゲットの点灯、消灯の切り換え操作が不要であり、しかも電力消費がなくて好適である。また、ターゲット板110として熱の反射率の低い材料を用いると、撮像された画像上で金属板118a〜118hとターゲット板110のコントラストが明りょうとなり好適である。
図6に示すように、サービスエイミング設定装置120は、エイミング設定時における車両12の車輪位置を示す位置マーク122と、該位置マーク122に基づいて車両12が位置決めされた状態で赤外線カメラ16R、16Lの前方所定距離(以下、対象物距離ともいう)Zの位置に設けられたヘッドライトテスタ124と、前記接続部32を介してECU14と通信を行う主制御装置126とを有する。ヘッドライトテスタ124は、レール128に沿って車幅方向と並行に移動可能であるとともに、昇降台130が昇降可能な構成となっている。昇降台130にはターゲット板132が設けられ、該ターゲット板132には間隔d(d<B)で水平に並んだ3つの熱源である撮像対象物としてのエイミングターゲット134a、134b及び134c(代表的にエイミングターゲット134とも示す。)が設けられている。エイミングターゲット134は前記エイミングターゲット112と同じものであり、又は略同じものを用いることができる。
次に、一般的な透視変換モデルM、及びモデル記憶部96に記憶される近距離用モデル及び遠距離用モデルについて説明する。
図7に示すように、一般的な透視変換モデルMは、高さYの対象物Wを焦点距離fのレンズ138で撮像して高さyの像を得る様子を示すモデルである。つまり、対象物Wの一端部である点Paからレンズ中心Oに入光した光は直進し、光軸Cに並行に入光した光はレンズ138の点O’で屈折し、それぞれの光は点Pbで集光する。対象物Wの他端部であり光軸C上の点Pa’からレンズ中心Oに入光した光は、光軸C上をそのまま直進して点Pb’に至る。このようにして対象物Wはレンズ138を通して反対側の結像距離Fの箇所に高さyの像wを結像する。図7から明らかなように、像wは対象物Wに対して倒立している。
ところで、三点Pa、Pa’、Oからなる三角形と三点Pb、Pb’、Oからなる三角形の相似関係、及び三点O、O’、Pcからなる三角形と三点Pb、Pb’、Pcからなる三角形の相似関係から以下の(1)式及び(2)が導き出される。ただし、点Pcは、レンズ138からみて像wの方向で、光軸C上における焦点距離fの位置の点である。
y/Y=F/Z …(1)
y/Y=(F−f)/f …(2)
この(1)式及び(2)式からy及びYを消去すると次の(3)式が求められる。
F=fZ/(Z−f) …(3)
エイミングモード時には、対象物距離Zが既知距離であることから、後述するステップS8及びS33においてはこの(3)式により結像距離Fが設定される。実際上、(3)式は後述の(7−1)〜(7−4)式に含まれるようにしてもよい。
対象物Wがレンズ138から十分遠方にある場合(Z)fである場合)には、(3)式は次の(4)式の近似式で表すことができる。
F≒f(=fZ/Z) …(4)
なお、対象物Wの幅Xについても高さYと同様の透視変換モデルMで表すことができ、幅Xに対して像wは幅xで表される。また、実際の像wは対象物Wに対してレンズ138の反対側に結像するが、モデルの単純化のために仮想の結像面Sを対象物Wと同じ側で、且つレンズ138から結像距離Fの位置に設けることができる。これにより、図8に示すように、対象物Wと像wはレンズ中心Oを基準として相似の正立像となり、対象物Wが結像面Sに透視変換される。
図8から明らかなように、結像面Sにおける像wの幅x及び高さyは次の(5)式及び(6)式で表される。
x=F/Z・X/p …(5)
y=F/Z・Y/p …(6)
ここで、パラメータpは結像面Sを実際のデジタル画像に適用する際の画素ピッチである。また、対象物Wが比較的近距離であるときは(4)式を適用すると誤差が無視できないため(3)式を(5)式及び(6)式に代入することになり、結局、対象物Wが比較的近距離であるときの透視変換モデルは、次の第1の式群である(7−1)〜(7−4)式で表される。
この第1の式群は、モデル記憶部96における近距離用モデルに含まれており、前記モード選択部52が後述のステップS3でエイミングモードを選択したときにエイミングモード実行部48により選択され、エイミングターゲット112又は134の位置を算出に供される。つまり、製作所エイミング時には既知の距離Zfとして自動設定される値が対象物距離Zとして用いられ、サービスエイミング時には主制御装置126から入力された対象物距離Zが用いられる。各エイミングターゲット112又は134は、車幅方向の座標値であるX及び高さ方向の座標値であるYが既知であることから、(7−1)式及び(7−2)式から結像面Sにおける像wの理論的な座標Pb(x、y)が求められる。なお、サービスエイミング時には、高さ座標Yは、カメラ高さH(図1参照)に基づいて補正される。
この後、理論的な座標Pb(x、y)と実際に得られたエイミングターゲット112の実画面上の座標と比較することによって、赤外線カメラ16R及び16Lの取り付け角度が求められる。また、実画面上の座標から(7−3)式及び(7−4)式を用いてエイミングターゲット112の理論的な座標を求め、既知の座標値X、Yと比較して赤外線カメラ16R及び16Lの取り付け角度を求めてもよい。
第1の式群は、結像距離Fを示す(3)式に基づいて設定されていることから、理論的な座標Pb(x、y)が正確に求められ、結果として赤外線カメラ16R及び16Lの取り付け角度を高精度に求めることができる。
一方、対象物Wが遠方であるときには近似式として(4)式を用いることができ、(5)式及び(6)式は次の第2の式群である(8−1)〜(8−4)式で表される。
この第2の式群は、前記のモデル記憶部96における遠距離用モデルに含まれており、前記モード選択部52が後述のステップS3で通常モードを選択したときに通常モード実行部50により選択され、対象物の位置を算出に供される。つまり、赤外線カメラ16R又は16Lにより得られた2つの画像の視差から対象物までの対象物距離Zを算出した後、画像上の座標から(8−3)式及び(8−4)式を用いて対象物の空間上の座標値X及びYが求められる。一般的に、通常モードにおいては対象物距離Zが焦点距離fより十分に大きいことから前記(4)式の誤差は無視できるレベルであり、対象物の座標値X及びYは(8−3)式及び(8−4)式により十分高精度に求められる。また、(8−3)式及び(8−4)式は、前記(7−3)式及び(7−4)式よりも簡便な式であることから高速計算が可能である。
なお、通常モードにおいても、求められた対象物距離Zが所定の閾値以下である場合には(7−3)式及び(7−4)式を用いるようにしてもよい。
次に、このように構成されるエイミングターゲット制御装置100又はサービスエイミング設定装置120を用いてナイトビジョンシステム10のエイミングを行う方法について説明する。
エイミングには、製作所内でエイミングターゲット制御装置100を用いる製作所エイミングモードと、サービスエイミング設定装置120を用いるサービスエイミングモードがある。
製作所エイミングモードでは、位置決め装置102により車両12の位置決めを行うとともに、主制御装置106を車両12の接続部32に接続しておく。主制御装置106はECU14に対して、エイミングターゲット制御装置100を用いた製作所エイミングを実行するように指示を送出する。また、エイミングターゲット112a〜112hは、車両12の種類に応じて規定の高さとなるように調整しておく。
サービスエイミングモードでは、位置マーク122に車両12の各車輪を合わせて位置決めを行うとともに、主制御装置126を車両12の接続部32に接続しておく。主制御装置126は、ECU14に対して、サービスエイミング設定装置120を用いたサービスエイミングを実行するように指示を送出する。エイミングターゲット134a〜134cは、規定高さとなるように調整しておく。
図9及び図11〜図14に示す処理は、ECU14において主にエイミングモード実行部48で実行される処理である。
先ず、図9のステップS1において、赤外線カメラ16R、16Lからステレオ赤外線画像入力し、画像入力部40においてA/D変換して(ステップS2)グレースケール画像54、58を得る。このグレースケール画像54及び58は、所定のクリア指示又は上書き式があるまで画像記憶部44に保持され、複数枚を記録可能である。また、グレースケール画像54及び58は、それぞれ二値化処理部42で二値化され、右二値化画像56が画像記憶部44に記憶される。
ステップS3において、モード選択部52は主制御装置106又は126からの指示に従い、エイミングモード又は通常モードのいずれを実行するのかを判断する。通常モードを実行する場合にはステップS5へ移り、エイミングモードを実行する場合にはステップS4へ移る。
ステップS5の通常モードでは、通常モード実行部50の作用下に、カメラパラメータ記憶部46に記憶されたカメラパラメータを参照し、後述するようにHUD18及びスピーカ20を制御して対象物の検出及び必要に応じた注意喚起を行う通常のモードを実行する。
ステップS5においては、モード選択部52がエイミングターゲット制御装置100又はサービスエイミング設定装置120のいずれの装置を用いるのか判断し、エイミングターゲット制御装置100を用いると判断した場合にはステップS6へ移り、製作所モード部70の作用下に製作所エイミングモードを実行する。また、サービスエイミング設定装置120を用いると判断した場合にはステップS30(12参照)へ移り、サービスモード部72の作用下にサービスエイミングモードを実行する。以下、製作所エイミングモード及びサービスエイミングモードを順に説明する。
製作所エイミングモードでは、先ず、ステップS6において、赤外線カメラ16R、16Lからターゲット板110までの距離、つまり対象物距離Zを設定する。この場合、対象物距離Zは既知の距離Zfとして自動的に設定される。
ステップS7において、テンプレート設定部94の作用下に基準テンプレートを対象物距離Zに応じて選択する。図10に示すように、テンプレートTP1、TP2、TP3、TP4、TP5、TP6は規定距離に配置された1つの仮ターゲットを撮像した小さい画像データであって、規定距離は赤外線カメラ16R及び16Lから近い順に等間隔(又は等比間隔等)のZ1、Z2、Z3、Z4、Z5及びZ6として設定されている。テンプレートTP1、TP2、TP3、TP4、TP5、TP6はECU14内のテンプレート記憶部95に記憶されている。仮ターゲットとしてはエイミングターゲット112と同じものが用いられる。製作所エイミングモードでは、例えば既知の距離ZfがZf=Z3であれば、テンプレートTP3が基準テンプレートとして選択される。
ステップS8においては、透視変換モデルM(図7参照)に基づいて結像距離Fの設定を行う。
なお、ステップS6〜S8の処理は、初期設定部76の作用下に行われ、所定の実行回数パラメータを参照しながら、エイミングが実行された最初の1回のみ実行される。
ステップS9(対象物抽出手段)において、ステップS7で選択した基準テンプレートに基づいてテンプレートマッチング処理を行う。すなわち、赤外線カメラ16R、16Lにより撮像されたエイミングターゲット112のグレースケール画像54、58と、テンプレートTPとの相関演算を行い、相関演算の結果が最小となるグレースケール画像の座標を算出して記憶する。(ステップS10、ターゲット座標算出手段)。相関演算には、例えば、ピクセル毎の絶対値誤差の総和であるSAD値(Sum of Absolute Difference)が用いられる。
ステップS11では、取得したグレースケール画像54及び58の枚数が所定の枚数N枚に達したか否かを確認し、N枚に達した場合には、ステップS12へ移り、N枚未満である場合には、ステップS1へ戻りグレースケール画像54、58の取得を継続してターゲット座標の算出記憶処理を繰り返す。
ステップS12において、算出されたN組のターゲット座標の平均値Paveを算出する処理を行い、ターゲット座標算出が正常に算出された場合にはステップS14へ移り、算出されなかった場合にはステップS3へ戻るという分岐処理(ステップS13)を行う。
図11のステップS14において、輝度調整LUT設定処理を行う。この処理では、相関演算によるテンプレートマッチングを確実に実行できるよう、例えば、赤外線カメラ16R及び16Lにより検出されたエイミングターゲット112の輝度信号同士のレベルを比較し、各輝度レベルにおいて、相関演算の基準とする赤外線カメラ16Rからの輝度信号が赤外線カメラ16Lからの輝度信号よりも常に大きくなるように調整する輝度調整LUTを設定する。該輝度調整設定LUT処理が正常に実行された場合にはステップS16へ移る(ステップS15)。
ステップS16において、赤外線カメラ16R、16Lの焦点距離、画素ピッチ等の固体差に起因して発生する映像歪みを補正する映像歪補正値の算出処理を行う。映像歪補正値が正常に算出された場合にはステップS18へ移る(ステップS17)。
ステップS18において、左右カメラ取り付け角であるパン角及びピッチ角(又はチルト角とも呼ばれる。)の算出処理を行い、該左右カメラ取り付け角が正常に算出された場合にはステップS20へ移る(ステップS19)。
ここで、パン角とは、2つの赤外線カメラ16R及び16Lの光軸は同じ高さ方向を指向していることから、赤外線カメラ16R及び16Lの両光軸を含むカメラ配列仮想面における旋回方向の角度であって視差が発生する方向ということができ、得られた画像上のx方向に相当する(図8参照)。また、ピッチ角とは、カメラ配列仮想面を基準として垂直な俯仰方向の角度ということができ、得られた画像上のy方向に相当する。
ステップS20において、赤外線カメラ16R、16Lにより撮像された各画像から各画像から画像処理に用いられる範囲を切り出す基準の切り出し座標の算出処理を行い、該切り出し座標が正常に算出された場合にはステップS22へ移る(ステップS21)。
ステップS22において、赤外線カメラ16R、16Lの光軸が平行に設定されていないことに起因する対象物画像の視差に含まれる誤差である視差オフセット値の算出処理を行う。視差オフセットが算出された場合にはステップS24へ移る(ステップS23)。
ステップS24において、ステップS14、S16、S18、S20及びS22の処理で求められた輝度調整LUT、映像歪補正値、パン角及びピッチ角、切り出し座標、視差オフセット値をカメラパラメータ記憶部46に記憶し、正しく記憶された場合には製作所エイミングモード(又はサービスエイミングモード)を終了する。このとき、ECU14は主制御装置106又は126に対してエイミングが終了した旨の信号を送出する。この後に通常モードを実行する場合には所定の再起動処理を行えばよい。なお、ステップS17、S19、S21、S23及びS25における各分岐処理において判定結果が否定的であった場合には、ステップS13の分岐処理における否定的な結果時と同様にステップS3へ戻ることになる。
次に、サービスエイミングモードの処理について説明する。サービスエイミングモードにおいては、前記の製作所エイミングと同様にステップS1〜S3の処理(図9参照)が実行され、次のステップS4からステップS30への分岐処理が行われ、サービスモード部72の作用下に図12〜図14に示す処理が実行される。
図12のステップS30において、赤外線カメラ16R、16Lからターゲット板132までの距離、つまり対象物距離Zを入力設定する。この場合、対象物距離ZはZ1〜Z7(>Z6)mまでの範囲の数値として主制御装置126から入力され、ECU14に供給される。対象物距離Zの入力は、計測しやすい箇所(例えば位置マーク122)を基準として入力し、所定のオフセット量を自動的に差し引いて求めるようにしてもよい。また、レーザ距離検出装置等を対象物距離検出手段として使用し、対象物距離Zを自動検出及び入力してもよい。
ステップS31において、赤外線カメラ16R及び16Lの高さを確認し、カメラ高さH(図1参照)を入力する。
ステップS32において、テンプレート設定部94の作用下に、対象物距離Zに応じてテンプレートTP1〜TP6のうち1つを基準テンプレートとして選択する。前記のようにテンプレートTP1〜TP6は、仮ターゲットの撮像時の規定距離がZ1〜Z6mとして設定されている。このステップS32においては、対応する規定距離が対象物距離Z以下であり、且つ対象物距離Zに最も近いテンプレートを選択する。具体的には、対象物距離ZがZ1〜Z2’、Z2〜Z3’、Z3〜Z4’、Z4〜Z5’、Z5〜Z6’、Z6〜Z7である場合に、順にテンプレートTP1〜TP6が対応して選択される。ここで、Z2’、Z3’、Z4’、Z5'及びZ6’は、それぞれZ2、Z3、Z4、Z5、Z6よりも最小入力単位だけ小さい値である。一層具体的には、対象物距離Zが、Z4〜Z5’の間あるときには、テンプレートTP4が選択される。
ステップS33において、ステップS8と同様に結像距離Fの設定処理が行われる。なお、ステップS30〜S33の処理は、初期設定部76の作用下に行われ、所定の実行回数パラメータを参照しながら、エイミングが実行された最初の1回のみ実行される。
ステップS34において、ターゲット板132の位置確認が行われる。つまり、サービスエイミングモードではターゲット板132を中心位置PC、左位置PL及び右位置PR(図6参照)の順に配置してエイミングを行うため、ステップS34が最初に実行されたときには、主制御装置126に対してターゲット板132を中心位置PCに設定するように確認指示の信号を送出する。この信号を受けた主制御装置126では、モニタ画面上に「ターゲットを中心位置PCに配置して、『Y』キーを押してください。」等のメッセージを表示する。調整員はこのメッセージに応じてヘッドライトテスタ124を手動又は所定の駆動装置によってレール128に沿って移動させ、ターゲット板132を中心位置PCに配置し、『Y』キーを押す。
また、ステップS34は繰り返し実行され、N回終了毎に、「ターゲットを左位置PLに配置して、『Y』キーを押してください。」、「ターゲットを右位置PRに配置して、『Y』キーを押してください。」等のメッセージを表示し、調整員に対してターゲット板132を左位置PL及び右位置PRに配置するように促すとともに、配置後に「Y」キーを入力させる。ターゲット板132が中心位置Pc、左位置PL及び右位置PRに配置された後の初回時に、「Y」キーが押されたことを確認してステップS35に移り、これ以外の実行回ときには実質的な処理は行わない。
ステップS35においては、その時点のターゲット板132の位置に応じて分岐処理が行われる。つまり、ターゲット板132が中心位置PCに配置されているとき(初回〜N回目)にはステップS36へ移り、左位置PLに配置されているときにはステップS41へ移り、右位置PRに配置されているときにはステップS46へ移る。
ステップS36においては、ステップS9と同様にテンプレートマッチング処理を行う。
ステップS37においては、ステップS10と同様に、エイミングターゲット134のターゲット座標を算出して記憶する。
ステップS38においては、ステップS11と同様に、取得したグレースケール画像54及び58の枚数を確認し、N枚以上である場合にはステップS39へ移り、N枚未満である場合にはステップS1へ戻る(2回目以降はS3〜S8若しくはS30〜S35はスキップする。)。
ステップS39においては、中心位置PCについて、ステップS12と同様に、ターゲット座標の平均値Paveを算出する処理を行い、ターゲット座標が正常に算出された場合にはステップS1へ移り、算出されなかった場合にはステップS3へ戻るという分岐処理(ステップS40)を行う。
同様にして、ターゲット板132を左位置PLに配置し、図13に示すステップS41〜S45が実行される。
また、ターゲット板132を右位置PRに配置し、図14に示すステップS46〜S50が実行される。
最後のステップS50において、ターゲット座標が正常に算出されたと判断されたときには、ステップS14(図11参照)へ移り、それ以降は製作所エイミングモードと同様の処理が行われ、各カメラパラメータがカメラパラメータ記憶部46に記憶される。
次に、選択された基準テンプレート(以下、テンプレートTPsという。)を用いてテンプレートマッチングを行う処理であるステップS36について図15を参照しながら説明する。
図15に示すように、選択されたテンプレートTPsは、右グレースケール画像54上において所定の順序で微少量ずつ縦方向及び横方向に動かされ、各位置においてパターンマッチングを行い、背景画像とのマッチング成立の正否を調べる。マッチングの成立判断には、前記のSAD値に基づいて判断される。
この場合、テンプレートTPsにおける仮ターゲットの像140の大きさは、画像上の各エイミングターゲット134a〜134cの像の大きさ以上である。これは前記のステップS32において、規定距離が対象物距離Z以下であり、且つ対象物距離Zに最も近いテンプレートを選択しているためである。
図15中の二点鎖線TP’で示すように、テンプレートTPsがエイミングターゲット134cの位置に移動したとき、像140とエイミングターゲット134cはほぼ一致して高輝度部及び低輝度部が重なることとなり、SAD値が十分小さい値となる。これによりマッチングが成立したと判断され、その時点のテンプレートTPsの中心点からエイミングターゲット134cのターゲット座標が特定される。つまり、二点鎖線TP’範囲の中心点座標Pb(x、y)(図8参照)を、配列形式でPt[i]として所定の記憶部に記憶する(ステップS10)。ここでパラメータiは処理回数を示すカウンタであり、右グレースケール画像54の枚数に応じてi=1からi=Nまでインクリメントされる。なお、実際上、各エイミングターゲット134a〜134cについてそれぞれターゲット座標を求めるが、説明を簡便にするため代表的に1つのターゲット座標Pt[i]として示す。
また、ステップS12における平均値Paveの算出は、次の(9)式により求められる。
このような平均化の処理を行うことにより、赤外線カメラ16R、16Lもしくは撮像環境(温度等のゆらぎ)が多少不安定であっても、平均値Paveでは誤差が相殺され、ターゲット座標を正確に求めることができる。
ところで、サービスエイミングを行う場所は一般のサービス工場の検査場等が想定され、エイミングターゲット134a〜134c以外の赤外線を放射又は反射する不要な熱源を完全に排除することは困難であって、これらの他の熱源が比較的弱いレベル又は小さい像として撮像されてしまう場合がある。例えば、右グレースケール画像54上でエイミングターゲット134cの周辺に他の熱源(例えば、遠方の照明)142が存在し、該熱源142が画像上でエイミングターゲット134cよりも小さく撮像される場合がある。このような場合であっても、テンプレートTPsの像140の大きさはエイミングターゲット134cの像の大きさ以上であることから、テンプレートTPsが熱源142の位置に移動したときには、SAD値は相当に大きい値となりエイミングターゲット134cとは明確に区別される。
なお、エイミングターゲット134a及び134bについても同様の処理によりターゲット座標Pt[i]が特定され、平均値Paveが求められる。エイミングターゲット134a〜134cは、相対的な位置関係により識別可能である。
また、図15ではヘッドライトテスタ124が中心位置PCに配置されているときの右グレースケール画像54の例について示したが、ヘッドライトテスタ124が右位置PR又は左位置PLに配置されている場合や、左グレースケール画像58についての同様の処理が行われる。また、製作所エイミングモードにおけるパターンマッチング処理であるステップS9についても同様の処理が行われる。
次に、赤外線カメラ16R及び16Lの取り付け角度算出処理であるステップS18から左右カメラ映像切り出し座標算出処理であるステップS20までの処理を、赤外線カメラ16Rについての処理を例にして、図16を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、図16においてはステップS18、S19及びS20を区別しないで示す。
先ず、図16のステップS101において、ターゲットの空間座標を示す基準座標値P0を所定の記憶部(座標基準値記憶手段)から読み出す。
ステップS102において、近距離モデルである(7−1)式及び(7−2)式用いて基準座標値P0を変換して画像上の基準座標P0’(x0、y0)を求める。エイミングモードでは予め近距離モデルが選択されており、比較的近距離のターゲットの座標を画像上に正確に透視変換することができる。
また、基準座標値P0は実空間上の値として記憶しておくことにより、例えばターゲットの位置を変更するような場合に主制御装置106、126から入力する際に実測した座標をそのまま入力することができ、好適である。入力された実測値は近距離モデルに基づいて正確に変換される。
ステップS103(取付角算出手段)において、画像上の基準座標値P0’とステップS12で求められた平均値Paveとを比較演算して、パン角方向の差Δx及びピッチ角方向の差Δyを求める。
つまり、差Δx及びΔyは、それぞれ基準座標値P0’に応じて赤外線カメラ16Rのパン角及びピッチ角の設計基準値に対する誤差としての取付角を示していることになる。具体的には、設計基準値が0°として規定されていると、差Δxが2°、差Δyが1°に相当する値であると、パン角が2°、ピッチ角が1°として求められる。
ステップS104において、図17に示すように、右グレースケール画像54上の基準領域160Rをx方向に差Δx、y方向に差Δyだけ移動させた切り出し領域162Rを求める。基準領域160Rは、基準座標値P0に基づいて設定されており、赤外線カメラ16Rが正確に前方を指向している場合に画像処理に用いられる基準となる領域である。切り出し領域162Rを画像処理に用いることにより、赤外線カメラ16Rの向きが正確に正面に指向するように機械的に調整したことと同じ効果が得られる。
切り出し領域162Rとしては、基準領域160Rの端点Q0を横方向に差Δx、縦方向に差Δyだけ移動させて得られる端点Q1の座標を代表的に記録しておけばよい。なお、詳細な説明を省略するが左の赤外線カメラ16Lから得られる左グレースケール画像58についても同様の処理が行われる。
次に、左右独立的に設定された切り出し領域162Rと切り出し領域162Lとのピッチアラインメント調整であるステップS105〜S108を行う。ピッチアラインメント調整とは、実際に撮像された対象物に基づいて、切り出し領域162R及び162Lを関連付けて、ピッチ方向の整合性を確保するための処理である。以下の説明では、右グレースケール画像54はターゲット板132が右位置PRに配置されている際の画像であり、左グレースケール画像58はターゲット板132が左位置PLに配置されている際の画像とする。また、前記の通りターゲット板132は右位置PR及び左位置PLのいずれの位置においても一定の高さに設定されている。
先ず、ステップS105において、図18に示すように、右グレースケール画像54から抽出された切り出し領域162R内におけるエイミングターゲット134a、134b、134cの各y座表値であるyr1、yr2及びyr3を求め、さらにこれらの値の平均値yra(=(yr1+yr2+yr3)/3)を求める。
ステップS106において、左グレースケール画像58から抽出された切り出し領域162L内におけるエイミングターゲット134a、134b、134cの各y座表値であるyl1、yl2及びyl3を求め、さらにこれらの値の平均値yla(=(yl1+yl2+yl3)/3)を求める。
ステップS107において、右の切り出し領域162Rにおける平均値yraに対する左の切り出し領域162Lにおける平均値ylaの差分Δyaを、Δya←yra−ylaとして求める。
ステップS108において、左の切り出し領域162Lをy方向(つまりピッチ方向)に差分Δyaだけ移動させた修正画像領域を設定する。図18に示す例では、yra<ylaであることから差分Δyaはマイナス値となり、切り出し領域162Lとしては画像下方に向かって移動して端点Q2が端点Q2’に移る。移動した切り出し領域162Lは代表的に端点Q2’の座標値が記憶される。
このようなピッチアラインメント調整によれば、実際に撮像されたエイミングターゲット134a〜134cに基づき、右の切り出し領域162Rに対してピッチ角が整合するように左の切り出し領域162Lを移動させるため、車体の歪みやカメラステーの製造誤差等を補償することができる。これにより、図19に示すように、切り出し領域162R及び162Lを横に並べて配置したとき、同一対象物を撮像した場合における該対象物の像が切り出し領域162R及び162L内において相対的なy座標値(図19ではyraの値)が一致することになる。
この結果、通常モードにおいて迅速且つ確実なパターンマッチングが可能となる。すなわち、図20に示すように、基準画像としての右の切り出し領域162R内で所定の方法によって抽出された対象物の像170を含む小画像をテンプレートTPrとして切り出し、比較画像としての左の切り出し領域162L内における同位置に配置する。次に、テンプレートTPrを切り出し領域162L内においてプラスのx方向である右方向へ向かって移動させながらSAD等の相関演算によるテンプレートマッチングを行う。この際、切り出し領域162Lにおける像170とそれに対応する同一対象物の像172はy座標が一致していることから、テンプレートTPrは視差に応じた適当な距離だけ移動し、図20の破線位置に達したときに像172にマッチングすることになる。つまり、テンプレートTPrはy方向にはほとんど移動させることなくマッチングが成立するため、検索領域をy方向に過大に広げる必要がなく、簡便且つ迅速な処理が可能となる。この際、SAD値が非常に小さくなり、マッチング成立の判断が確実に行われる。また、y座標が異なり像172に類似する他の像174に対してテンプレートTPrがマッチングすることがなく、確実なマッチングが実現される。
なお、図16に示す処理では、ターゲット板132の位置を中心位置PCに配置した状態で得られる画像に基づいて行ってもよい。ピッチアラインメント調整は、切り出し領域162R、162Lのいずれを基準としてもよく、又は所定の基準に基づいて切り出し領域162R、162Lの両方を移動させてもよい。さらに、エイミングターゲット制御装置100のエイミングターゲット112a〜112hは同じ高さに設定されていることから、製作所エイミングモードにおいてもピッチアラインメント調整を行うことができる。この場合、右グレースケール画像54における右ターゲット群116から平均値yraを求め、及び左グレースケール画像58における左ターゲット群114から平均値ylaを求めればよい。
また、ピッチアラインメント調整は、検査用の撮像対象物であるエイミングターゲット112及び134に限らず、一般の適当な熱源を撮像することによって行ってもよい。この場合、熱源の距離及び高さは未知であっても、赤外線カメラ16R及び16Lにより同一の熱源を撮像することによりピッチアライメント調整を行うことができる。
次に、エイミングが終了した後に行われる通常モードで実対象物を検出する処理の手順について説明する。この通常モードは、前記通常モード実行部50の作用下に、微小時間毎に繰り返し実行される。
先ず、図21のステップS201において、赤外線カメラ16R及び16Lからステレオ赤外線画像を入力し、画像入力部40及び二値化処理部42の作用によって右グレースケール画像54及び右二値化画像56、左グレースケール画像58が画像記憶部44に記憶される。
この後、右二値化画像56に基づいて対象物の抽出処理を行い(ステップS202)、右グレースケール画像54及び左グレースケール画像58における視差を求め、該視差から各対象物までの距離を算出する(ステップS203、対象物距離検出手段)。パターンマッチングを行う際、右グレースケール画像54における切り出し領域162R及び左グレースケール画像58における切り出し領域162L上でマッチングを行うため迅速な処理が可能であって、しかも確実なマッチングを行うことができる。
次いで、車両12を基準として対象物の相対位置を算出し(ステップS204)、車両12の挙動による所定の補正を行った後に各対象物の移動ベクトルを算出する(ステップS205)。この際、ECU14は、モデル記憶部96に記録された遠距離モデルとしての(8−1)〜(8−4)式に基づいて実対象物の位置を正確且つ迅速に検出することができる。
さらに、移動ベクトル等を参照しながら道路構造物や他の車両を識別して除外するとともに(ステップS206)、対象物の形状等から歩行者の判定を行う(ステップS207)。
この後、右グレースケール画像54をHUD18に表示させ、ステップS207で検出された歩行者が所定範囲内に存在すると判断された場合には、歩行者を示す像の周りに強調枠を表示するとともにスピーカ20から音を発して、注意喚起出力を行う(ステップS209)。
上述したように、本実施の形態に係るナイトビジョンシステム10では、テンプレート記憶部95に6つの規定距離に対応したテンプレートTP1〜TP6が設けられているため、対象物距離Zに基づいて適切なテンプレートを選択することができ、テンプレートマッチングが正確に行われ、求められたターゲット座標から、赤外線カメラ16R、16Lのパン角及びピッチ角を正確に求めることができる。
また、対象物距離Zと完全に一致する距離に対応したテンプレートTPが存在しなくても、対象物距離Zに基づく適切な1つを選択するため、テンプレート枚数が抑制され、テンプレート記憶部の容量低減を図ることができる。
本発明に係る車両周辺監視装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。