JP4031259B2 - 原子炉格納容器冷却設備 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、原子炉の事故時に発生する崩壊熱を除去して原子炉の安全を確保するための原子炉格納容器冷却設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、苛酷事故対策として静的な格納容器冷却系を採用した原子力プラントとして、図7に示すような原子力プラント概念が提案されている。この内容は、" COST REDUCTION AND SAFETY DESIGN FEATURES OF ABWR-II" F. Koh, K. Moriya, T. Anegawa, IAEA Advisory Group Meeting on Optimization technology, safety and economics of water cooled reactors, Vienna, Austria, December 2000 に開示されている。
【0003】
図7において、原子炉圧力容器1を取り囲むようにして格納容器12が設けられている。格納容器12は、炉心溶融事故を含む事故時に放射性物質の大気への放出を十分に低い量に抑えるためのものである。格納容器12は、原子炉圧力容器1を含むドライウェル8と、サプレッションチェンバ(圧力抑制室)11からなる。サプレッションチェンバ11は環状の空間であって、その内部にはサプレッションプール(圧力抑制プール)10があり、ドライウェル8から下方に延びる環状の圧力抑制ベント管9がサプレッションプール10内に導かれている。
【0004】
圧力抑制ベント管9の側壁のサプレッションプール10に浸かった部分には複数のベント管開口30があって、鉛直方向に間隔をおいて配置されている。原子炉の冷却材喪失事故時に、ドライウェル8内に放出された蒸気と水の混合物が圧力抑制ベント管9とベント管開口30を介してサプレッションプール10内に導かれ、ここで冷却凝縮することによって、格納容器12の内圧の過度の上昇が抑制される。
【0005】
原子炉の事故時にポンプなどの動的機器を使わずに崩壊熱除去を行なうシステムとして、静的格納容器冷却系が設けられている。図7に示すように、静的格納容器冷却系は、格納容器12外の冷却水プール7内に収められた伝熱管束からなる熱交換器4と、ドライウェル8から蒸気を熱交換器4の入口(上方)の蒸気室3に供給する蒸気供給管2と、凝縮水のドレンおよび熱交換器4に流入した不凝縮ガスを排気するため熱交換器4の出口(下方)の水室5とサプレッションプール10を接続する凝縮水ドレンおよびガス排気管6と、を有する。
冷却水プール7は、格納容器8に接して、その上方に設置される。また、冷却水プール7の冷却水の初期温度は常温である。
【0006】
原子炉で配管破断事故が発生した場合、事故時に崩壊熱により原子炉圧力容器1内で発生した蒸気は、破断した配管を経由してドライウェル8内に放出される。また、原子炉で苛酷事故が発生し、炉心が溶融して原子炉圧力容器1が破損したような場合、溶融炉心はドライウェル8内下部に落下し、同時に原子炉圧力容器1から流出する冷却材および溶融炉心を冷却するためにドライウェル8に注水される冷却水が炉心の溶融物から熱を受けてドライウェル8内で蒸気が発生する。
【0007】
ドライウェル8に放出された蒸気およびドライウェル8で発生した蒸気は、蒸気供給管2を経由して格納容器12外の冷却プール7内に収められた熱交換器4に導かれ、蒸気が熱交換器4内を通過する間に伝熱管壁を通してプール水との間で伝熱を行ない、この蒸気が凝縮され、これによって生じた凝縮水は重力により凝縮水ドレンおよびガス排気管6を通って重力によってサプレッションプール10に流入する。
【0008】
蒸気が熱交換器4内に流入するのと同時に、ドライウェル8内に存在する不凝縮ガスが熱交換器4内に混入するが、この不凝縮ガスは伝熱性能を劣化させるため、凝縮水ドレンおよびガス排気管6を経由して、凝縮水とともにサプレッションチェンバ11へ排気される。静的格納容器冷却系は事故時にドライウェル8での蒸気発生によりドライウェル8の圧力が上昇し、この圧力上昇にともなって蒸気が熱交換器4に流入して自動的に崩壊熱除去を開始するため、弁の操作さえ不要であり、その作動に関して高い信頼性が期待できる。
【0009】
ただし、ドライウェル8で発生した蒸気が圧力抑制ベント管9を経由してサプレッションプール10に流れ込んだ場合は静的格納容器冷却系の熱交換器4による冷却が行えなくなる。これを避けるために、静的格納容器冷却系の凝縮水ドレンおよびガス排気管6の出口のサプレッションプール10内でのサブマージェンス(水深)はベント管開口30の最上端のサブマージェンスより浅くする必要がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
静的格納容器冷却系は、その作動に関して高い信頼性が期待できるため、将来の原子力プラントとして従来設計の動的なポンプなどを非常用炉心冷却系に用いた原子力ブラントへの静的格納容器冷却系の採用が考えられている。ただし、現在考えられている構成の静的格納容器冷却系では以下のような問題点が予測される。
【0011】
格納容器12内で発生した熱を静的格納容器冷却系を用いて格納容器12外に放出するためには、事故時にドライウェル8内に存在する蒸気を圧力抑制ベント管9を経由させずに静的格納容器冷却系を経由してサプレッションチェンバ11に流す必要がある。このため、上述のように凝縮水ドレンおよびガス排気管6のサプレションプール10内での水深は圧力抑制ベント管開口30の最上端のサブマージェンスより浅くする必要がある。
【0012】
一方、冷却水プール7は大気開放となっているため、水温は100℃が上限で上昇するが、静的格納容器冷却系の熱交換器4内で凝縮した水の理論上の最低温度も100℃以下にはならない。この100℃以上の温水が凝縮水ドレンおよびガス排気管6を経由してサプレションプール10の水面近傍に放出される。
【0013】
放出される凝縮水流量はサプレションプール10の水量に比べて十分小さいので、サプレションプール10内で十分な混合が起こればサプレションプール10の水温上昇は小さい。しかし、通常は凝縮水ドレンおよびガス排気管6から放出される凝縮水および不凝縮ガスの流速が小さいため、凝縮水はサプレションプール10の水面近傍に留まり、水面近傍で温度が上昇し、これに伴ってサプレッションチェンバ11の蒸気分圧およびガス分圧が上昇して格納容器12の圧力が高い状態で維持される恐れがある。静的格納容器冷却系の除熱により格納容器12外に熱は放出され、格納容器12の圧力の上昇を停止させることはできるものの、高い圧力の状態で維持される恐れがある。
【0014】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、静的格納容器冷却系作動時においてもサプレションプール表面温度の上昇を抑制し、これによって格納容器圧力の上昇を停止させるとともに、格納容器圧力を制限値に対して十分低い圧力で維持させることができる原子炉格納容器冷却設備を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するものであって、請求項1の発明は、炉心を内包する原子炉圧力容器を包囲するドライウェルおよび、サプレッションプールを内包するサプレッションチェンバを具備する原子炉格納容器と、この格納容器の外の上方に設けられた冷却水プールと、この冷却水プール内に収容されてこの冷却水プールの冷却水と熱交換する熱交換器と、この熱交換器の上部に接続された蒸気室と、前記熱交換器の下部に接続された水室と、前記ドライウェルと前記蒸気室を接続する第1の配管と、前記水室の底部と前記サプレッションプールを接続する第2の配管と、前記水室の上半部と前記サプレッションプールを接続する第3の配管と、を有する原子炉格納容器冷却設備であって、前記サプレッションチェンバ内の前記第2の配管の周囲の少なくとも一部を断熱材で覆い、または二重管として間隙部に空気層を設け、前記ドライウェルと前記サプレッションプールは圧力抑制ベント管で連絡され、その圧力抑制ベント管は、前記サプレッションプールと連絡するベント管開口を有し、前記第3の配管の前記サプレションプール内での開放口が、前記ベント管開口のうちの最も高い位置より高く、前記第2の配管の前記サプレションプール内での開放口が前記ベント管開口のうちの最も低い位置より低いこと、を特徴とする。
【0016】
請求項1の発明によれば、不凝縮ガスは、水室内で凝縮水と分離して第3の配管を経てサプレッションプール表面近傍へ放出される。一方、高温の凝縮水はサプレッションプール底部に放出されることになる。この結果、サプレッションプール底部での温度上昇がもっとも大きくなり、したがってサプレッションプール表面の温度上昇が従来例に比べて抑制される。
【0017】
これに伴って、サプレッションチェンバ空間部の温度上昇が抑制され、蒸気分圧およびガス分圧が低くなり、格納容器圧力は低く維持されることとなる。また、ドライウェルからサプレッションチェンバに流入する蒸気を圧力抑制ベント管に流さず、静的格納容器冷却系に流入させるという機構は不凝縮ガスベント管をサプレションプール表面高さ付近に放出することにより維持されている。
請求項1の発明によればさらに、凝縮水ドレン管の周囲を断熱材で覆い、または二重管として間隙部に空気層を設けることによって、凝縮水ドレン管がサプレッションプールおよびサプレッションプール上部のサプレッションチェンバ内ウェットウェルに含まれる部分で、凝縮水ドレン管の壁面を経由した熱の移行によるサプレッションプール水およびウェットウェル空間部の温度上昇を抑制することができる。これによって、サプレッションチェンバの圧力上昇がさらに抑制され、格納容器圧力は低く維持される
【0018】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の原子炉格納容器冷却設備において、前記サプレッションプールの下部と前記ドライウェルの下部とを接続する開閉可能な放水配管を有し、この放水配管は前記格納容器内の温度が上昇したときに開放するように構成されていること、を特徴とする。
【0019】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の作用・効果が得られるほか、以下の作用・効果がある。すなわち、原子炉で苛酷事故が発生し、炉心が溶融して原子炉圧力容器が破損したような場合、溶融炉心は格納容器のドライウェル内に落下することが考えられる。ドライウェル内下部に溶融炉心が落下してドライウェル雰囲気が高温になった場合に、サプレッションプール下部とドライウェル下部を接続する放水配管が開放され、この放水配管を通してサプレッションプール水がドライウェル下部に流入する。これにより、ドライウェル底部近くに落下した溶融炉心を冷却することができる。
【0021】
また請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の原子炉格納容器冷却設備において、前記サプレッションプールと前記原子炉圧力容器を接続する連通管を有し、この連通管には、前記格納容器内の温度が上昇したときに開放するように構成された開閉弁と、この開閉弁に直列に配置されて前記原子炉圧力容器から前記サプレッションプールに向かう流れを抑制する逆止弁を有し、前記連通管のサプレッションプール内での取水口高さおよび原子炉圧力容器との接続部の高さが前記炉心の上端高さよりも高いこと、を特徴とする。
【0022】
請求項3の発明によれば、請求項1の発明の作用・効果が得られるほか、原子炉圧力容器内の水位が低下した場合にサプレッションプール水を重力で原子炉圧力容器に注入することができる
【0025】
また請求項に記載の発明は、炉心を内包する原子炉圧力容器を包囲するドライウェルおよび、サプレッションプールを内包するサプレッションチェンバを具備する原子炉格納容器と、この格納容器の外の上方に設けられた冷却水プールと、この冷却水プール内に収容されてこの冷却水プールの冷却水と熱交換する熱交換器と、この熱交換器の上部に接続された蒸気室と、前記熱交換器の下部に接続された水室と、前記ドライウェルと前記蒸気室を接続する第1の配管と、前記水室の底部と前記ドライウェルの下部を接続する第2の配管と、前記水室の上半部と前記サプレッションプールを接続する第3の配管と、を有する原子炉格納容器冷却設備であって、前記ドライウェルと前記サプレッションプールは圧力抑制ベント管で連絡され、その圧力抑制ベント管は、前記サプレッションプールと連絡するベント管開口を有し、前記第3の配管の前記サプレションプール内での開放口が、前記ベント管開口のうちの最も高い位置より高く、前記第2の配管の前記ドライウェルの下部内での開放口が前記ベント管開口のうちの最も低い位置より低く、前記第2の配管の前記ドライウェルの下部での開放部近くは、下端で曲がって立ち上がり、先端が開いた立ち上がり管部を有すること、を特徴とする。
【0026】
請求項の発明によれば、静的格納容器冷却系の熱交換器で生じた高温の凝縮水をドライウェルに放出し、溶融した炉心を冷却するとともに、サプレッションチェンバの温度上昇および圧力上昇を抑制することによって、格納容器圧力は低く維持されることとなる。また、第2の配管(凝縮水ドレン管)のドライウェルの下部での開放部近くに立ち上がり管部を有することから、この部分に熱交換器の凝縮水が溜まってシールすることになる。このため、ドライウェルから、第2の配管および第3の配管を通り、熱交換器を通らずに蒸気が流れるのが抑制される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と、または相互に、共通または類似の部分には共通の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0030】
[第1の実施の形態](請求項1等に対応)
図1はこの発明の第1の実施の形態を示す。図1において、冷却水プール7内の熱交換器4の下方の水室5に、凝縮水ドレン管13と不凝縮ガスベント管14が接続され、これらの管はいずれも下方に延び、ドライウェル8を貫通してサプレッションチンバ11内のサプレッションプール10内で開放されている。
【0031】
凝縮水ドレン管13の上端は水室5の底部で開口し、下端は、サプレッションプール10内で、ベント管開口30の最下端よりも下方で開口している。一方、不凝縮ガスベント管14の上端は水室5の中間の高さ位置あるいはそれより上方の位置(中間の高さを含め上半部という。)で開口し、下端は、サプレッションプール10内で、ベント管開口30の最上端よりも上方で開口している。
【0032】
この実施の形態で、例えば原子炉圧力容器1に接続する配管の破断事故が発生した場合、原子炉圧力容器1からドライウェル8に流出する蒸気によってドライウェル8の圧力が上昇する。あるいは、苛酷事故が発生し、原子炉圧力容器1が破損し、溶融した炉心がドライウェル8の下部に落下して、これと同時に原子炉圧力容器1内の冷却材がドライウェル8内に流出する、もしくは溶融炉心冷却のためにドライウェル8内下部に注水され、この冷却水が蒸発した場合、ドライウェル圧力が上昇する。
【0033】
この結果、ドライウエル8とサプレッションチェンバ11の間の圧力差が駆動力となってドライウェル8に存在する蒸気は静的格納容器冷却系の蒸気供給管2を経由して格納容器の上部に設置された冷却水プール7内に格納されている熱交換器4に流入する。熱交換器4に流入した蒸気は冷却水プール7と熱交換を行って伝熱管内で凝縮され、その凝縮水は凝縮水ドレン管13を通ってサプレッションプール12の下部に流入する。初期にドライウェル8に封入されていた不凝縮ガスは蒸気と同時に熱交換器4に流入するが、この不凝縮ガスは静的格納容器冷却系の不凝縮ガスベント管14を経由してサプレッションチェンバ11に流入する。
【0034】
ここで、不凝縮ガスベント管14のサプレッションプール10内での開口部の水深は、圧力抑制ベント管9のベント管開口30の最上端のサプレッションプール10内での水深より浅くなっている。このため、ドライウェル8内で発生した蒸気は圧力抑制ベント管9を経由せず、静的格納容器冷却系の熱交換器4を経由してサプレッションプール10に流入し、蒸気が持つエネルギーは熱交換器4を経由して格納容器8外の冷却水プール7に移行する。
【0035】
ベント管開口30の水深と静的格納容器冷却系不凝縮ガスベント管14の下端開口部の水深の差は、圧力抑制ベント管への蒸気流入を防ぐため、水深差に相当する水頭差が静的格納容器冷却系の蒸気配管2、蒸気室3、熱交換器4、水室5および不凝縮ガスベント管14の圧力損失以上となるように設定される。
【0036】
高温の凝縮水は凝縮水ドレン管13を経由してサプレッションプール10下部に排出され、また、排出される水の流速が小さいことからサプレッションプール10の下部に滞留してサプレッションプール10の下部の温度は上昇するものの、サプレッションプール10の表面の温度上昇は抑制される。このため、図7に示した従来例に比べて、サプレッションチェンバ11の温度上昇は抑制され、この結果、サプレッションチェンバ11の蒸気分圧およびガス分圧が抑制されて、格納容器圧力も低く維持される。
【0037】
[第2の実施の形態](請求項1、2等に対応)
図2はこの発明の第2の実施の形態を示す。この実施の形態は第1の実施の形態の変形であって、ドライウェル8とサプレッションプール10を連通する放水配管15を設置する。この配管には弁16が設けられており、この弁16は非常時には所定の信号または所定の温度にて開動作するか、または、所定の温度にて溶融する構成となっている。また、放出配管15のサプレッションプ−ル10内の取水口は、凝縮水ドレン管13の開口部の近くに配置されている。
【0038】
苛酷事故時に炉心が溶融し、原子炉圧力容器1が破損して溶融物がドライウェル8に落下した場合には、放水配管15を経由してドライウェル8にサプレッションプール10の水が放出され、溶融物を冷却する。
【0039】
また、静的格納容器冷却系の凝縮水は凝縮水ドレン管13を経由して、放水配管15の取水口付近に放出されるため、放出された高温の凝縮水は放水配管15を経由してドライウェル8に流出する。この結果、サプレッションプール10の温度上昇が抑制される。これにより、第1の実施の形態と同様に、図7に示した従来例に比べて、サプレッションチェンバ11の温度上昇は抑制され、サプレッションチェンバ11の蒸気分圧およびガス分圧が抑制されて、格納容器圧力も低く維持される。
【0040】
[第3の実施の形態](請求項1、3等に対応)
図3はこの発明の第3の実施の形態を示す。この実施の形態は第1の実施の形態の変形である。図3において、サプレッションプール10と原子炉圧力容器1は連通管18を介して接続されており、連通管18は弁20および逆止弁19を有しており、弁20は非常時には所定の信号にて開放する構成となっている。連通管18のサプレッションプ−ル10内の取水口は、凝縮水ドレン管13の開口部の近くに配置されている。
【0041】
連通管18の原子炉圧力容器1との接続部の高さは炉心17の上端より高くなっており、原子炉圧力容器1に接続する配管の破断事故などで原子炉圧力容器1内の水位が炉心17の上端より低下した場合、十分、原子炉圧力容器1を減圧した後に、サプレッションプール10の水を原子炉圧力容器1に注水し、炉心17の冷却を行う。
【0042】
また、静的格納容器冷却系の凝縮水は凝縮水ドレン管13を経由して、連通管18の取水口付近に放出されるため、放出された高温の凝縮水は連通管18を経由して原子炉圧力容器1に流出する。この結果、サプレッションプール10の温度上昇が抑制されることから、第1の実施の形態と同様に、図7に示した従来例に比べて、サプレッションチェンバ11の温度上昇は抑制され、サプレッションチェンバ11の蒸気分圧およびガス分圧が抑制されて、格納容器圧力も低く維持される。
【0043】
[第4の実施の形態](請求項等に対応)
図4はこの発明の第4の実施の形態を示す。本実施の形態は第1の実施の形態
(図1)の一部を変形したものである。すなわち、凝縮水ドレン管13の外表面のサプレッションチンバ11内の部分に断熱材(保温材)21を配置する。断熱材21としては、たとえば凝縮水ドレン管13の外表面にゴムシートなどの断熱材を被覆するか、または、凝縮水ドレン管13を二重管として間隙部に空気層を設ける。
【0044】
凝縮水ドレン管13内ではサプレッションプール10の水位に相当する高さに水面が生じており、この水面上に高温の凝縮水が落下し、徐々に凝縮水ドレン管13の下部からサプレッションプール10内に流入していく。この実施の形態によれば、高温の凝縮水が凝縮水ドレン管13から排出されるまでの時間において、凝縮水ドレン管13の管壁を経由して熱がサプレッションプール10に移行するのが断熱材21によって抑制される。この結果、サプレッションプール表面の温度上昇が抑制され、格納容器12の圧力を抑制する効果を持つ。
【0045】
以上の説明では、配管系統の構成は第1の実施の形態と同様のものとしたが、変形例として、第2または第3の実施の形態の構成においても、凝縮水ドレン管13の外表面に断熱材(保温材)を被覆する構造とすることにより同様の効果を有する。
【0046】
[第5の実施の形態](請求項等に対応)
図5はこの発明の第5の実施の形態を示す。本実施の形態では、冷却水プール7内の熱交換器4の下方の水室5に、凝縮水ドレン管22と不凝縮ガスベント管14が接続されている。不凝縮ガスベント管14は、第1の実施の形態(図1)等と同様に、水室5から下方に延びてドライウェル8を貫通し、サプレッションチンバ11内のサプレッションプール10に到達している。また、不凝縮ガスベント管14の上端は水室5の中間の高さ位置で開口し、下端は、サプレッションプール10内で、ベント管開口30の最上端よりも上方で開口している。
【0047】
一方凝縮水ドレン管22は、水室5の底部からドライウェル8内を下方に延び、サプレッションチャンバ11には入らずにドライウェル8の下部の8aで開放している。この開放部には、U字状に曲がって立ち上がって先端が開いた立ち上がり管32が接続されている。
【0048】
この実施の形態で、配管破断等の原子炉事故の場合は、凝縮水ドレン管22から高温の凝縮水がドライウェル8に放出され、ドライウェル8内に溶融炉心がある場合には溶融炉心の冷却に寄与する。また、サプレッションプール10に高温の凝縮水を放出しないことにより、サプレッションプール10の温度上昇を抑制する。
【0049】
不凝縮ガスベント管14は、第1の実施の形態等と同様にサプレッションプール10に接続されることから、ドライウエル8から静的格納容器冷却系の熱交換器4を経由した蒸気の流れは維持され、格納容器は静的に冷却される。また、凝縮水ドレン管のドライウェルの下部での開放部近くに立ち上がり管32を有することから、この部分に熱交換器4の凝縮水が溜まってシールすることになる。このため、ドライウェル8から、凝縮水ドレン管22および不凝縮ガスベント管14を通り、熱交換器4を通らずに蒸気が流れるのが抑制される。
【0050】
この実施の形態によれば、サプレッションプール10の温度上昇が抑制されることから、第1の実施の形態と同様に、図7に示した従来例に比べて、サプレッションチェンバ11の温度上昇は抑制され、サプレッションチェンバ11の蒸気分圧およびガス分圧が抑制されて、格納容器圧力も低く維持される。
【0051】
[第6の実施の形態
図6はこの発明の第6の実施の形態を示す。本実施の形態では、冷却水プール7内の熱交換器4の下方の水室5に、凝縮水ドレン管23と不凝縮ガスベント管14が接続されている。不凝縮ガスベント管14は、第1の実施の形態(図1)等と同様に、水室5から下方に延びてドライウェル8を貫通し、サプレッションチンバ11内のサプレッションプール10に到達している。また、不凝縮ガスベント管14の上端は水室5の中間の高さ位置で開口し、下端は、サプレッションプール10内で、ベント管開口30の最上端よりも上方で開口している。
【0052】
一方、凝縮水ドレン管23は、水室5の底部からドライウェル8内を下方に延び、サプレッションチンバ11には入らずに、原子炉圧力容器1に接続されている。凝縮水ドレン管23の原子炉圧力容器1との接続部の高さは、第3の実施の形態(図3)の連通管18と同様に、炉心17の上端より高くなっている。
凝縮水ドレン管23は弁24および逆止弁25を有し、弁24は非常時に所定の信号にて開放する構成となっている。
【0053】
原子炉圧力容器1に接続する配管の破断事故などで原子炉圧力容器1内の水位が炉心17の上端より低下した場合、十分、原子炉圧力容器1を減圧した後に、水室5の水を原子炉圧力容器1に注水し、炉心17の冷却を行えるようになっている。熱交換器4で生じた高温の凝縮水は原子炉圧力容器1に流入するため、サプレッションプール10の温度上昇は抑制される。
【0054】
また、不凝縮ガスベント管14は、第1から第5の実施の形態と同様にサプレッションプール10に接続することから、ドライウル8から静的格納容器冷却系の熱交換器4を経由した蒸気の流れは維持され、格納容器12は静的に冷却される。この結果、サプレッションプール10の温度上昇が抑制されることから、第1の実施の形態と同様に、図7に示した従来例に比べて、サプレッションチェンバ11の温度上昇は抑制され、サプレッションチェンバ11の蒸気分圧およびガス分圧が抑制されて、格納容器12の圧力も低く維持される。
【0055】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明は原子力ブラントにおいて静的格納容器冷却系採用した場合に、従来提案されている静的格納容器冷却系に付随する問題点を解消し、最も適切な格納容器冷却系を提供するものであり、従来例に比べて、格納容器圧力を低く維持でき、かつ高い信頼性を保って事故時の格納容器冷却が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る原子炉格納容器冷却設備の第1の実施の形態の模式的立断面図。
【図2】この発明に係る原子炉格納容器冷却設備の第2の実施の形態の模式的立断面図。
【図3】この発明に係る原子炉格納容器冷却設備の第3の実施の形態の模式的立断面図。
【図4】この発明に係る原子炉格納容器冷却設備の第4の実施の形態の模式的立断面図。
【図5】この発明に係る原子炉格納容器冷却設備の第5の実施の形態の模式的立断面図。
【図6】この発明に係る原子炉格納容器冷却設備の第6の実施の形態の模式的立断面図。
【図7】従来の原子炉格納容器冷却設備の模式的立断面図。
【符号の説明】
1…原子炉圧力容器、2…蒸気供給管(第1の配管)、3…蒸気室、4…熱交換器、5…水室、6…凝縮水ドレンおよびガス排気管、7…冷却水プール、8…ドライウェル、9…圧力抑制ベント管、10…サプレッションプール(圧力抑制プール)、11…サプレッションチェンバ(圧力抑制室)、12…格納容器、13…凝縮水ドレン管(第2の配管)、14…不凝縮ガスベント管(第3の配管)、15…放水配管、16…弁、17…炉心、18…連通管、19…逆止弁、20…弁、21…保温材(断熱材)、22…凝縮水ドレン管(第2の配管)、23…凝縮水ドレン管(第2の配管)、24…弁、25…逆止弁、30…ベント管開口、32…立ち上がり管。

Claims (4)

  1. 炉心を内包する原子炉圧力容器を包囲するドライウェルおよび、サプレッションプールを内包するサプレッションチェンバを具備する原子炉格納容器と、
    この格納容器の外の上方に設けられた冷却水プールと、
    この冷却水プール内に収容されてこの冷却水プールの冷却水と熱交換する熱交換器と、
    この熱交換器の上部に接続された蒸気室と、
    前記熱交換器の下部に接続された水室と、
    前記ドライウェルと前記蒸気室を接続する第1の配管と、
    前記水室の底部と前記サプレッションプールを接続する第2の配管と、
    前記水室の上半部と前記サプレッションプールを接続する第3の配管と、
    を有する原子炉格納容器冷却設備であって、
    前記サプレッションチェンバ内の前記第2の配管の周囲の少なくとも一部を断熱材で覆い、または二重管として間隙部に空気層を設け、
    前記ドライウェルと前記サプレッションプールは圧力抑制ベント管で連絡され、その圧力抑制ベント管は、前記サプレッションプールと連絡するベント管開口を有し、
    前記第3の配管の前記サプレションプール内での開放口が、前記ベント管開口のうちの最も高い位置より高く、前記第2の配管の前記サプレションプール内での開放口が前記ベント管開口のうちの最も低い位置より低いこと、
    を特徴とする原子炉格納容器冷却設備。
  2. 請求項1に記載の原子炉格納容器冷却設備において、
    前記サプレッションプールの下部と前記ドライウェルの下部とを接続する開閉可能な放水配管を有し、この放水配管は前記格納容器内の温度が上昇したときに開放するように構成されていること、
    を特徴とする原子炉格納容器冷却設備。
  3. 請求項1に記載の原子炉格納容器冷却設備において、
    前記サプレッションプールと前記原子炉圧力容器を接続する連通管を有し、
    この連通管には、前記格納容器内の温度が上昇したときに開放するように構成された開閉弁と、この開閉弁に直列に配置されて前記原子炉圧力容器から前記サプレッションプールに向かう流れを抑制する逆止弁を有し、
    前記連通管のサプレッションプール内での取水口高さおよび原子炉圧力容器との接続部の高さが前記炉心の上端高さよりも高いこと、
    を特徴とする原子炉格納容器冷却設備。
  4. 炉心を内包する原子炉圧力容器を包囲するドライウェルおよび、サプレッションプールを内包するサプレッションチェンバを具備する原子炉格納容器と、
    この格納容器の外の上方に設けられた冷却水プールと、
    この冷却水プール内に収容されてこの冷却水プールの冷却水と熱交換する熱交換器と、
    この熱交換器の上部に接続された蒸気室と、
    前記熱交換器の下部に接続された水室と、
    前記ドライウェルと前記蒸気室を接続する第1の配管と、
    前記水室の底部と前記ドライウェルの下部を接続する第2の配管と、
    前記水室の上半部と前記サプレッションプールを接続する第3の配管と、
    を有する原子炉格納容器冷却設備であって、
    前記ドライウェルと前記サプレッションプールは圧力抑制ベント管で連絡され、その圧力抑制ベント管は、前記サプレッションプールと連絡するベント管開口を有し、
    前記第3の配管の前記サプレションプール内での開放口が、前記ベント管開口のうちの最も高い位置より高く、前記第2の配管の前記ドライウェルの下部内での開放口が前記ベント管開口のうちの最も低い位置より低く、
    前記第2の配管の前記ドライウェルの下部での開放部近くは、下端で曲がって立ち上がり、先端が開いた立ち上がり管部を有すること、
    を特徴とする原子炉格納容器冷却設備。
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