JP2024006559A - 原子力プラント - Google Patents

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Abstract

【課題】原子炉格納容器の過温破損のリスクと、原子炉格納容器上蓋部の高温化によるフランジのシール材の劣化による大量の水素および放射性物質の漏洩のリスクと、圧力抑制プール水の温度の成層化による原子炉格納容器の早期過圧破損のリスクと、を削除し原子炉格納容器の破損と放射性物質の漏洩をフィルターベントを使用することなく防止する。【解決手段】原子炉格納容器3と、原子炉格納容器3の上部に設けられた冷却水プール13と、一部が冷却水14に水没した熱交換器16と、熱交換器16で生成された凝縮水を圧力抑制プール6に戻す凝縮水戻り配管21と、凝縮水戻り配管21から分岐して凝縮水を原子炉圧力容器2の内部に注水する原子炉圧力容器注水配管51と、熱交換器16内で生成されるガスを圧力抑制プール6にベントするガスベント配管22と、ガスベント配管22に設けられたガスベントファン22aと、を有する静的格納容器冷却系とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、静的格納容器冷却系を用いた原子力プラントに関するものである。
従来の原子力プラントおよび従来の静的格納容器冷却系について図15から図25によりその概要を説明する。
(図15:従来の第1の原子力プラントの説明)
図15は、従来の第1の原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成の例を示す立断面図である。図15において、炉心1は原子炉圧力容器2の内部に収納されている。炉心1はさらにシュラウド2aおよびシュラウドヘッド2bの内部に収納されている(図19を参照)。原子炉圧力容器2は、原子炉格納容器3内に収納されている。原子炉格納容器3は円筒形状をしている(図16を参照。)。原子炉格納容器3の内径は約29mである。この構成は新型BWR(ABWR)で採用されているものである。
原子炉格納容器3の内部は、原子炉圧力容器2を収納するドライウェル4と、ウェットウェル5とに区分けされており、ドライウェル4とウェットウェル5とは原子炉格納容器3の一部を構成する。ウェットウェル5は内部に圧力抑制プール6を形成している。圧力抑制プール6の上方にはウェットウェル気相部7が形成されている。ドライウェル4とウェットウェル5の外壁部は一体化して原子炉格納容器3の円筒状の外壁部を構成している。ドライウェル4の天井部は平板になっておりこの部分をドライウェル4のトップスラブ4aと呼ぶ。トップスラブ4aの厚さは約2.4mである。
原子炉格納容器3の雰囲気は、沸騰水型軽水炉の場合には、窒素により置換され酸素濃度を低く制限されている。また、沸騰水型軽水炉の場合には、原子炉格納容器3は原子炉建屋100の内部に収納されている。
原子炉格納容器3は、一般にその材質により、鋼製原子炉格納容器、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)、プレストレスコンクリート製原子炉格納容器(PCCV)、スチール・コンクリート複合構造(SC造)原子炉格納容器(SCCV)など様々のものがある。RCCVとPCCVの場合には内面に鋼製ライナーが張られている。図15ではRCCVの例を示している。図16に示すように、RCCVは外壁部分は円筒形状をしている。
原子炉圧力容器2は、RPVスカート62およびRPVサポート63を介して、円筒状のペデスタル61により支持されている。ペデスタル61は、鋼製、コンクリート製、両者の複合構造等がある。ドライウェル4のうち原子炉圧力容器2およびRPVスカート62の下方であって、ペデスタル61の円筒状の壁により囲まれるペデスタル61の内側の空間を、ペデスタルキャビティ61aという。ABWRのRCCVの場合はペデスタル61の円筒状の壁はウェットウェル5とドライウェル4の境界の壁を形成していて特にこの空間を下部ドライウェル61aと呼んでいる。
ABWRのRCCVの場合はドライウェル4のRPVサポート62よりも上の空間を上部ドライウェル4cと呼んでいる。ウェットウェル5の天井は平板になっていて上部ドライウェル4cとの境界を形成している。この部分は上部ドライウェル4cの床を形成しておりダイアフラム床5bと呼んでいる。ダイアフラム床5bの上端からトップスラブ4aの下端までの高さは約9mである。原子炉格納容器3のダイアフラム床5bよりも下の領域を下部領域90と呼んでいる。原子炉格納容器3のダイアフラム床5bよりも上でトップスラブ4aよりも下の領域を上部領域91と呼んでいる。下部領域90および上部領域91は、それぞれの領域に設けられている空間、プール、機器を含む(図18を参照)。
原子炉圧力容器2の上方に原子炉格納容器上蓋10が配置され、その上方に水遮蔽11が配置されている。
原子炉圧力容器2からは主蒸気配管71がドライウェル4の外部に延びている。主蒸気配管71には、逃がし安全弁(Safety Relief Valve、「SRV」)72が設けられており、逃がし安全弁72が動作したときに圧力抑制プール6内に原子炉圧力容器2の蒸気が放出されるように、逃がし配管73が圧力抑制プール6内に水没するように設けられている。
ドライウェル4と圧力抑制プール6はLOCAベント管8により連結されている。LOCAベント管8はたとえば10本など複数個設置されるが図15では2本のみを表示している(図16を参照)。LOCAベント管8は圧力抑制プール6のプール水に水没している部分に水平ベント管8aがありプール水中に開口している。RCCVの場合は、水平ベント管8aは一つのLOCAベント管8に縦方向に3本設置されている。また、RCCVの場合はLOCAベント管8はペデスタル61の円筒状の壁の内部を通って設置されている。そのためRCCVの場合は、このペデスタル61の円筒状の壁をベント壁とも言う。ベント壁は厚さが約1.7mの鉄筋コンクリート製で内側と外側の表面は鋼製である。LOCAベント管8とペデスタル61は原子炉格納容器3の一部を構成する。
ウェットウェル気相部7内のガスをドライウェル4内に還流する目的で、真空破壊弁9が設けられている。真空破壊弁9はたとえば8個など複数個設置されるが、図15では1個のみを表示している。
真空破壊弁9は、ウェットウェル5の壁面に設ける方法、ウェットウェル5の天井に設ける方法、LOCAベント管8に設ける方法がある。真空破壊弁9は、ウェットウェル5内の圧力がドライウェル4内の圧力よりも高くなり、その差圧が設定圧力を超えると作動して開く。真空破壊弁9の設定圧は、たとえば約2psi(約13.79kPa)である。真空破壊弁9は、原子炉格納容器3の一部を構成する。
(図17:原子炉格納容器トップヘッド部の構成の説明)
図17に基づき原子炉格納容器トップヘッド部10aの構成について説明する。ドライウェル4のトップスラブ4aの中心部に原子炉格納容器3の上蓋10が設けられている。上蓋10の上部には水遮蔽11が配置されている。なお、建設済みのプラントではこの水遮蔽11が配置されているものはMark III型格納容器に限定され、それ以外のBWRプラントではコンクリート遮蔽ブロックが配置されている。ESBWRでは水遮蔽が採用されているが本発明出願時においてまだ建設されていない。
原子炉格納容器3の上蓋10は鋼製で燃料交換時にフランジ74部分から取り外しが可能な構造になっている。該フランジ74は上蓋10の開口部に沿って円形をしているが図17では左右に2カ所の断面みを示している。フランジ74の接合部には気密性を維持するためのシール材(図示せず)が挿入されている。該シール材は試験により200℃の高温に少なくとも168hまでは気密性を維持できる性能を有していることが確認されている。フランジ74は通常時はボルト(図示せず)で締められていて原子炉格納容器3の上蓋10は閉じている。
原子炉圧力容器2の頭部2cを含む原子炉圧力容器2の上部は原子炉格納容器3の上蓋10の内部に収納されている。原子炉圧力容器2の上部と原子炉格納容器3の間にはプラットフォーム75が設けられている。原子炉格納容器2とプラットフォーム75との接合部にはベローズ(図示せず)が設けられていて水密性を維持しつつ熱膨張や地震時の変位があってもフレキシブルに接合を維持できるようになっている。原子炉格納容器3の上蓋10とプラットフォーム75と原子炉圧力容器2のプラットフォーム75よりも上の部分により囲まれた空間を原子炉格納容器3の上蓋部10aと呼んでいる。プラットフォーム75にはマンホール76が数個あり通常時は開口している。図17では1個のみを示している。該マンホール76の開口面積は限られているため原子炉格納容器3の上蓋部10aは比較的密閉性の高い空間になっている。
原子炉圧力容器2の周囲には通常運転中の放熱を抑えるため断熱材(図示せず)が設置されている。それでも一定量の放熱が断熱材を通して発生する。通常運転中には原子炉圧力容器2の頭部2cから上蓋部10aに放熱がある。通常運転中に上蓋部10a内の温度が高くなることを防止するため送風ダクト77がプラットフォーム75を貫通して数個設けられている。図17では1個のみを示している。該送風ダクト77にはドライウェルクーラー(図示せず)から低温のガス(主に窒素)が供給され上蓋部10a内の温度を低く維持することができる。高温化したガスは前記マンホール76からドライウェル4に排気されドライウェルクーラーに還流する。このように通常運転時は上蓋部10a内のガスは強制循環されていて温度が低く維持されている。燃料交換時には該マンホール76と前記送風ダクト77を閉鎖することによって水密性が確保され原子炉格納容器3の上蓋10を開けて上蓋部10a内に遮蔽用の水を貯めることができる。
(図18:原子炉格納容器3内の領域の説明)
図18に基づき原子炉格納容器3内の領域について説明する。原子炉格納容器3の内部であってダイアフラム床5bよりも下の領域が原子炉格納容器3の下部領域90である。下部領域90にはウェットウェル5、ウェットウェル気相部7、圧力抑制プール6、LOCAベント管8、下部ドライウェル61a、コアキャッチャー(図示せず)が含まれる。
原子炉格納容器3の内部であってダイアフラム床5bよりも上でトップスラブ4aよりも下の領域が原子炉格納容器3の上部領域91である。上部領域91には上部ドライウェル4cの一部、原子炉圧力容器2の一部および原子炉圧力容器2内の機器の一部が含まれる。
原子炉格納容器3の内部であって上蓋10、プラットフォーム75、原子炉圧力容器2の頭部2cおよび原子炉圧力容器2の一部によって囲まれた空間が原子炉格納容器3の上蓋部10aである。上蓋部10aは空間であって原子炉格納容器2の頭部2は含まない。
(図19:原子炉圧力容器2および炉内構造物の説明)
図19に基づいて原子炉圧力容器2および炉内構造物について説明する。図19は新型沸騰水型炉(ABWR)の原子炉圧力容器2および炉内構造物の例を示している。沸騰水型炉(BWR)の起源は加圧水型炉(PWR)である。ABWRはPWRから蒸気発生器(SG)と加圧器とアキュムレーターとホットレグ配管とコールドレグ配管を削除して究極の単純化と大出力化を達成している。今や4ループの大型PWRには蒸気発生器(SG)4基、加圧器1基、アキュムレーター4基、コールドレグ配管4本、ホットレグ配管4本があるが、ABWRではこれらは全て削除されている。大型PWRの場合は原子炉格納容器内に1次系の高圧容器が10個あるが、ABWRでは原子炉格納容器3内にあるのは原子炉圧力容器2が1個あるだけである。しかもSG1基の値段は内部に精密機器であるSG細管があるためABWRの原子炉圧力容器2の値段よりも高額である。もはや大型PWRのプラントコストは約1兆6千億円と膨大で限界に達している。技術革新を行わないままループ数を増やすだけで大出力化を推し進めてきた結果である。それで、近年ではPWRを単純化した小型モジュラー炉(SMR)の開発が盛んに行われている。PWRを単純化する際に外部SGを削除して内部SGを採用すると内部SGは原子炉圧力容器内に設置するため小型化する必要があり原子炉出力は小型化しなければならない。小型化はSMRの問題の一つである。そのため、大出力化のためにはモジュラー化が必要になってしまっている。ABWRの出力は約1315MWeネットであるが、77MWeネットのSMRでABWRと同等の出力を得るためには約17基ものモジュラー化が必要になってしまう。しかし、ABWRはSGそのものを削除したので小型化の制約がなく究極の単純化と大出力化を同時に達成することができている。ABWRの原子炉圧力容器2の内部には内部SGがないのでSMRのリアクター・モジュールよりも単純化されている。しかもモジュラー化は全く必要としない。1基の原子炉圧力容器2だけで1315MWeネットもの大出力を得ることができる。
原子炉圧力容器2の内部にはシュラウド2aとシュラウドヘッド2bが設けられている。シュラウド2aとシュラウドヘッド2bは一体化して水密性の容器を構成している。炉心1はこのシュラウド2aおよびシュラウドヘッド2bの内部に設けられている。シュラウド2aとシュラウドヘッド2bは原子炉圧力容器2の内部を2つに分割している。原子炉圧力容器2のシュラウド2aとシュラウドヘッド2bの側壁の外側の部分をダウンカマー2dと呼んでいる。ダウンカマー2dの上方に給水スパージャー50が設けられている。給水スパージャー50は円環状をしているが簡単のため片側の断面だけを示している。給水スパージャーには給水配管(図示せず)から給水が供給されている。このように給水はダウンカマー2dに供給され炉心1には直接は供給されていない。
シュラウド2aの下部にはインターナルポンプ40が設けられている。インターナルポンプ40は同一のポンプモジュールを複数個設けるモジュラー構成になっている。例えば、1350MWeクラスのABWRの場合は10個のインターナルポンプ40が設けられている。図ではインターナルポンプ40は簡単のため2個だけを示している。因みに、ABWRはインターナルポンプ40のモジュール数を変えることによって定格出力を変えることができる。そのためABWRでは原子炉格納容器2および原子炉格納容器3をモジュラー構成にして複数個設けるようなプラント全体をモジュラー構成にする設計は不要になっている。
給水スパージャー50からダウンカマー2dに供給された給水はインターナルポンプ40によってシュラウド2aの下部から炉心1に供給される。シュラウド2aの下部と原子炉圧力容器2の側壁の間にはポンプデッキ41が設けられている。ポンプデッキ41を貫通してインターナルポンプ40のディフューザー42が設けられている。該ディフューザー42の内部には羽根車(図示せず)が設けられている。ダンカマー2d内の給水はこの羽根車とディフューザー42によってシュラウド2a内に強制的に押し込まれる。
シュラウドヘッド2bの上部には多数の気水分離器43が設けられている。図19では簡単のため2個のみを示している。気水分離器43の内部にはシュラウドヘッド2bから水と蒸気の二相流が流入する構造になっている。さらに、気水分離器43の上には蒸気乾燥器44と蒸気乾燥器スカート45が設けられている。蒸気乾燥器43は多数設置されているが簡単のため4基のみを示している。
インターナルポンプ40によりシュラウド2a内に押し込まれた水は上昇して炉心1に到達し炉心1の核燃料の発熱によって一部が沸騰して蒸気を発生する。水と蒸気の二相流が炉心1およびシュラウドヘッド2bの内部を上昇し気水分離器43に流入する。気水分離器43によって蒸気と水が分離され、蒸気はさらに蒸気乾燥器44に流入する。分離された水は気水分離器43の外部に流出して炉水になる。その結果、通常運転時の炉水位は気水分離器43のほぼ中間位置に形成される。炉水は蒸気乾燥器スカート45の内部と外部に連通して同じ炉水位を形成する。炉水位よりも上の空間には蒸気が存在し蒸気相2sを形成している。蒸気乾燥器44に流入した蒸気はさらに水滴を除去されて乾燥蒸気になる。この乾燥蒸気が蒸気ドーム2eおよび蒸気相2sに移行し主蒸気管71(図15を参照)からタービン(図示せず)に供給される。蒸気ドーム2eの蒸気の圧力はダウンカマー2dの炉水にも作用する。即ち、原子炉圧力容器2内の炉水位よりも上の蒸気相2sの圧力は蒸気の圧力で均圧化している。このためダンカマー2d内の水をインターナルポンプ40によって炉内に注入する場合に、炉心1内の蒸気の圧力は、蒸気相2sの蒸気圧力で相殺されるので抵抗圧力とはならない。
このようにABWRでは炉内で発生した蒸気だけがタービンに供給され大部分の炉水は気水分離器43で分離されて再び給水と混合して原子炉圧力容器2内を再循環する。また、炉心燃料の冷却には冷却材の相変化による蒸発潜熱を利用しているため冷却材の流量を大幅に少なくすることができる。そのため炉水をすべて水のままSGに送りだすPWRに比べて原子炉冷却材ポンプの容量を大幅に小さくすることができる。そのためABWRの所内負荷率はわずか3%でありPWRの約7%~10%に比べて大幅に小さくなっている。PWRの場合には約7%~10%もの電力が冷却材を強制循環するためなどに消費されているわけである。
原子炉格納容器2内には低圧注水系(LPFL)のスパージャー46がある。LPFLのスパージャー46はダウンカマー2dに冷却水を注入する。また、シュラウドヘッド2b内には高圧炉心注水系(HPCF)のスパージャー47がある。スパージャー46、47は円環状であるが簡単のため断面のみを表示している。
(図15:高圧炉心注水系の説明)
図15に基づいて高圧炉心注水系(HPCF)92の構成について説明する。高圧炉心注水系92は吸込み配管94により圧力抑制プール6の水を吸込み高圧炉心注水系ポンプ93により昇圧し注入配管95によりシュラウドヘッド2b内のスパージャー47から炉心に直接散水できる構成になっている。この冷却材喪失事故時に高圧炉心注水系92の冷却水を炉心1に直接散水する設計は冷却材喪失事故時の炉水の沸騰停止を意図したもので本発明の発明者によってなされたものである。この設計に当初日立とGEは反対したが議論の末、GEがこの設計に別の理由で賛成し採用された。日立は最後まで反対していたが最終的に了解した。また、発明者は当時沸騰停止以外にもLOCA時炉心露出なしを根拠にABWRから炉心スプレー系が削除されたことについて懸念を持ち炉心スプレー系が必要になった事態に備えてHPCFの配管はシュラウド内に維持しておくべきと考えた。ABWRであってもまだ明確にはわかっていない理由によって炉心燃料に直接冷却水を散布する必要性のある事態、つまり、炉心露出が起こる事態が発生するかもしれないと考えたのである。また、高圧炉心注水系92はABWRでは2系統設けられているが図15では簡単のため1系統のみを表示している。これはBWR/6までは電動駆動の高圧注水系は1系統しかなかったものを2系統に増やしたものである。これは自動減圧系(ADS)(図示せず)の作動頻度を低減することと、TQUXと呼ばれる確率論的安全評価(PRA)上の高圧シナリオの発生頻度を低下してABWRの炉心溶融頻度(CDF)を低減することを意図して実施したものである。ADSの作動頻度低減の効果はCDF値しか評価しないPRAでは認識できない安全上の価値がある。過渡変化時の運転員のストレスを低減しヒューマンエラーの発生を防止することに効果があるのである。これも本発明の発明者が実施したものである。注入配管95のドライウェル4の貫通部分に外側隔離弁96と内側隔離弁97が設けられている。外側隔離弁96は電動弁であり、内側隔離弁97は逆止弁である。
(図15:PCCSの構成の説明。従来の第1の原子力プラントの場合)
図15および図20に基づいて従来の第1の原子力プラントにおける静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。原子炉格納容器3の上部に冷却水プール13が設けられ、内部に冷却水14を蓄えている。冷却水プール13はプール型とタンク型の例がある。図15ではタンク型のものを表示している。プール型の場合は上部は上蓋で覆われている(図21を参照)。図15では、冷却水プール13等は原子炉建屋100の内部に設置されている例を示しているが、隣接する補助建屋等の内部に設置される場合もある。
冷却水プール13の水面の上方の気相部から、環境に蒸気を放出する排気口15が設けられている。排気口15の出口には虫よけのスクリーンが設けられることがある。冷却水プール13の位置は、一般に原子炉格納容器3の上部に設けられているが、原子炉格納容器3の横に設けることもできる。
冷却水プール13内には、冷却水14に少なくとも一部が水没するように、熱交換器16が設置されている。熱交換器16は複数個設置される場合が多いが、図15では1基のみを表示してある。熱交換器16は入口プレナム17、出口プレナム18および伝熱管19を有する(図20を参照)。熱交換器16は全体で少なくとも崩壊熱相当の蒸気を凝縮する冷却容量を有している。
図15では、伝熱管19のみが冷却水プール13の内部に設置され、入口プレナム17と出口プレナム18は冷却水プール13の外部に突出して設置される例を示しているが、この例には限定されない。たとえば、熱交換器16全体が、入口プレナム17と出口プレナム18を含めて冷却水プール13の内部に設置される例もある(図21を参照)。
熱交換器16の入口プレナム17には、ドライウェル4内のガスを供給するドライウェル・ガス供給配管20が接続されている。ドライウェル・ガス供給配管20の一端はドライウェル4に接続されている。
また、熱交換器16の出口プレナム18の下部に凝縮水戻り配管21が接続されている(図20を参照)。凝縮水戻り配管21の一端は、一例としてLOCAベント管8の内部に導かれているが、この例には限定されない。下部ドライウェル61aの下部のコアキャッチャー(図示せず)に導かれている例もある。LOCAベント管8の内部に導かれる場合も凝縮水は最終的に溶融弁64から下部ドライウェル61aの下部のコアキャッチャー(図示せず)に戻される。
このように凝縮水戻り配管21の凝縮水は、過酷事故時に下部D/W61aの床もしくはコアキャッチャー(図示せず)上に落下した炉心デブリの冷却に使用することを意図したものである。これは過酷事故時には下部ドライウェル61aの床もしくはコアキャッチャー(図示せず)に落下してきたデブリを冷却し下部ドライウェル61aのコンクリートマットの溶融貫通を防止することが最重要であり、かつ、それだけで十分であるというコアキャッチャー至上主義者達の誤った考えに基づいていた(特許文献2及び3を参照)。しかし、福島第一の事故の教訓は、過酷事故時にはペデスタルキャビティ61aの床が溶融貫通することはなく、むしろ、原子炉格納容器3が過温破損したり原子炉格納容器3の上蓋11にあるフランジ74のシール材が劣化して大量の水素とともに放射性物質が漏洩したりすることの方にこそ対策を行うことが重要であることを明らかにした。
また、熱交換器16の出口プレナム18(図20を参照)の上部にガスベント管22が接続されている。ガスベント配管22の一端は、ウェットウェル5の内部に導かれ、圧力抑制プール6内に水没するように設置されている。ガスベント配管22の圧力抑制プール6内の水没水深は、LOCAベント管8の圧力抑制プール6内の開口部の最上端の水没水深よりも浅くなるように設置される。
(図15:冠水配管の説明)
また、本従来例では、全交流電源喪失(SBO)等の過渡事象発生時に炉心溶融に至った場合に備えて、下部ドライウェル61aの内部に、溶融弁64とLOCAベント管8からペデスタル61の壁を貫通し溶融弁64に接続する下部ドライウェル冠水配管65が設けられている。この溶融弁64と下部ドライウェル冠水配管65はLOCAベント管8の全てに設置されている(図16を参照)。溶融弁64は、下部ドライウェル61aの温度が約260℃に達すると、低融点のプラグ部分が溶融して開になる。炉心溶融事故時には、炉心溶融物が原子炉圧力容器2の底部を溶融貫通してペデスタルキャビティ61a内に落下する。これによりペデスタルキャビティ61a内の温度が急激に上昇すると、溶融弁64が開になり、LOCAベント管8内の冷却水が下部ドライウェル冠水配管65を通りペデスタルキャビティ61a内に流入して炉心溶融物を冠水して冷却する。この溶融弁64の設計はUS-ABWRにおいて採用されている。
(図20:PCCS熱交換器の説明)
図20は、従来の第1の原子力プラントにおける静的格納容器冷却系内の熱交換器の例を示す立断面図である。図20により、従来の第1の原子力プラントにおける静的格納容器冷却系12の熱交換器16の構造について横型熱交換器の例で説明する。
図20おいて、出口プレナム18は、入口プレナム17の下方に設けられている。多数のU字型の伝熱管19が管板23に接続し、伝熱管19の直管部が水平に設置されている。図20では簡略化して2本のみを表示している。伝熱管19の外部には冷却水14(図15を参照)が満たされている。伝熱管19の入口は、入口プレナム17に開口している。また、伝熱管19の出口は出口プレナム18に開口している。
入口プレナム17にはドライウェル・ガス供給配管20が接続し、ドライウェル4内の窒素、水素、水蒸気等の混合ガスを入口プレナム17に供給する。この混合ガスは伝熱管19内に導かれ、水蒸気は凝縮して凝縮水となり、伝熱管19の出口から出口プレナム18内に流出し、出口プレナム18内の下部に溜まる。
出口プレナム18の下部には、凝縮水戻り配管21が接続されていて、出口プレナム18内の凝縮水を、重力により原子炉格納容器3内のLOCAベント管8に還流する。また、出口プレナム18の上部には、ガスベント配管22が接続されている。伝熱管19内で凝縮しない窒素、水素、酸素等の非凝縮性ガスは、伝熱管19から排出され出口プレナム18の上部に溜まる。
ガスベント配管22の先端は、圧力抑制プール6に導かれていて、出口プレナム18内の非凝縮性ガスは、ガスベント配管22を通り圧力抑制プール6内のプール水を押し下げてプール水中にベントされた後、ウェットウェル気相部7に移行する。
なお、伝熱管19の形状はU字型に限定されない。鉛直方向に直管部のある伝熱管19を、縦型に設置する構造のものもある(図25を参照)。入口プレナム17は、必ず出口プレナム18よりも上に位置する。これにより伝熱管19内で凝縮した凝縮水を重力により出口プレナム18に導く。横型の利点は耐震性に優れていることと、冷却水14の有効活用ができることである。一方、縦型の利点は凝縮水の排出性が良いことである。
(PCCSの機能の説明)
次に、このように構成された従来の静的格納容器冷却系12の過酷事故時の機能について説明する。
過酷事故が発生して原子炉圧力容器2内で炉心1の損傷が始まると高温化した炉心燃料の被覆管と冷却水が金属-水反応を起こし大量の水素が発生する。この水素は逃がし安全弁72により圧力抑制プール6に放出されウェットウェル気相部7に移行する。ウェットウェル気相部7は窒素で置換されて酸素濃度を低く抑えてあるため水素の爆轟は発生しない。最初から存在していた窒素に水素が加わりウェットウェル気相部7の圧力が増加する。
さらに、炉心燃料の溶融が進展すると原子炉圧力容器2の底部を溶融してデブリ(溶融した炉心1の残骸で崩壊熱によって発熱し高温化した物質)がペデスタルキャビティ―(下部ドライウェル)61aの下部に落下する。デブリの熱で溶融弁64が開になりLOCAベント管8内の水が下部ドライウェル冠水配管65をとおり下部ドライウェル61aに流入しデブリを冠水する。その際に発生する大量の蒸気は、自らの圧力によってLOCAベント管8の開口部66から上部ドライウェル4cに流入し、さらにドライウェル・ガス供給配管20を通り、静的格納容器冷却系12の熱交換器16に導かれて凝縮する。この際熱交換器16内に滞留する非凝縮性ガスは、ガスベント配管22でウェットウェル5内にベントされる。この状態ではドライウェル4内の圧力の方がウェットウェル5内の圧力よりも高いため、非凝縮性ガスは効率よくウェットウェル気相部7にベントされる。凝縮水は、凝縮水戻り配管21で原子炉格納容器3のLOCAベント管8に戻され溶融弁64を通り再び下部ドライウェル61aの底部に落下したデブリの冷却に使用される。
下部ドライウェル61aの底部に落下したデブリには崩壊熱があり下部ドライウェル61aの下部に溜まった水を加熱して蒸気を発生し続ける。この蒸気は自らの圧力によって継続的にドライウェル・ガス供給配管20により静的格納容器冷却系12の熱交換器16内に流入し伝熱管19で冷却される。これによって下部D/Wに落下したデブリの冷却が行われ原子炉格納容器3の冷却が行われるはずであった。
(炉内残存デブリによる加熱の説明)
しかし、福島第一の事故の結果により、炉内のデブリは100%下部D/Wに落下するのではなく、20%程度のデブリが炉内に残存することがわかってきた。つまり、従来の静的格納容器冷却系12では下部ドライウェル61aに落下した約80%のデブリの冷却しかできないことを意味している。一方、炉内に残存する約20%のデブリは冠水しておらず空焚き状態のまま崩壊熱を放出し続けて高温化している。そのため原子炉圧力容器2内部の温度は1000℃程度まで上昇する。原子炉圧力容器2が高温化して放熱を継続するためドライウェル4内の温度は長期にわたり200℃を超える場合がある。つまり、原子炉格納容器3の冷却が十分に行われない場合があることがわかってきた。
特に原子炉格納容器3の上蓋部10aはプラットフォーム75により仕切られて狭隘かつ通気性が少ない領域となっている。通常運転中は送風ダクト77から低温ガスが送風されるため上蓋部10aの温度は低く維持されている。しかし、全交流電源喪失(SBO)で過酷事故が発生した場合にはドライウェルクーラー(図示せず)が電源喪失により停止するため、原子炉圧力容器2の頭部2cからの放熱によって上蓋部10a内の温度が長期にわたり300℃を超える場合がある。PCVトップヘッド10にはフランジ74がある。フランジ74の接合部には気密性を維持するためのシール材(図示せず)が挿入されている。フランジ74のシール材は200℃を超えると劣化して水素などの原子炉格納容器3内のガスが大量に漏洩する恐れがある。PCVトップヘッド10は水遮蔽11によって冷却され外部表面の温度は100℃を大きく超えることはない。しかし、PCVトップヘッド部10aの内部温度が300℃を超える状況が継続することは好ましくない。
福島第一の事故の場合には、水遮蔽11がなくPCVトップヘッド10はコンクリートブロックの遮蔽で覆われていたのでPCVトップヘッド部10aが異常高温化してフランジ74のシール材が劣化して水素ガスや放射性物質などが運転床に大量に漏洩したものと考えられる。
その後、日本の原子力規制委員会(NRA)の要求ではなく、自主的対策として可搬式設備でPCV上蓋10の上部へ外部から散水することが検討されているが、外部から冷却するだけでは十分ではない可能性がある。PCV上蓋部10aのガス温度も低下させる必要がある。PCV上蓋部10aの温度を低下させるためには放熱源である原子炉圧力容器2内に残存するデブリを冷却することが必要である。そのためかどうかは不明であるが、NRAは新規制基準第42条の解釈において原子炉圧力容器2内の溶融炉心の冷却機能(おそらくPWR救済のため低圧注水設備でよいとしている)を設けることを要求している。これはSBO時の炉心溶融防止手段として代替の炉内高圧注水設備を本来追加設置するべきところ、炉圧が低いBWRではその対応が可能であったが、PWRでは炉圧が高くそのような代替高圧注水設備の追加設置が困難であったことから、規制要求を緩和して、炉心溶融後の代替低圧注水設備の追加設置で妥協したPWR救済策であったと考えられる。しかし、この救済策は、原子炉圧力容器2内に残存するデブリの冷却手段としては非常に有効である。NRAがもしこのことを理解していたとすれば非常に素晴らしいことであった。
また、コアキャッチャーを採用せずにIn-vessel Retention(IVR)(原子炉圧力容器の底部を外部から冷却し原子炉圧力容器の溶融破損は防止するが、原子炉圧力容器内のデブリは直接は冷却せず空焚き状態にする方法)を採用しているプラントでは炉心溶融後の原子炉圧力容器内の溶融炉心の冷却機能を有していないので日本のNRAの新規制基準を満たしていない。このことは単にNRAの規制要求を満たしていないだけではなく、過酷事故時にIVRによって原子炉圧力容器の溶融貫通は防止可能なものの、原子炉圧力容器内で空焚きになっている溶融炉心からの発熱により原子炉格納容器が過温破損するおそれがあることを示している。IVRの場合には約20%の炉内残存デブリからの発熱ではなく、完全な100%の炉内残存デブリからの発熱が継続するため原子炉格納容器内の温度が局所的に上昇し機器ハッチのシール材が劣化して大量の水素と放射性物質が外部に放出される虞がある。それが福島第一の事故の重要な教訓の一つである。福島第一の事故の教訓は溶融貫通だけではなく過温破損対策がより重要であることを示している。該教訓はIVRをしていると原子炉格納容器が過温破損する可能性があることを示している。しかし、まだ、SA時の物理現象解析コードにおいてPWRの炉内残存デブリの存在を正しく扱える解析モデルが開発されていない。そのため、本特許の出願時点においても、PWRの革新炉の開発においては、炉内残存デブリによる原子炉格納容器の過温破損のリスクが見落とされたままになっている虞がある。
AP1000やEPRとは異なり、従来の日本の既設PWRの場合は、SBO時に原子炉圧力容器を減圧する手段がない。それで代替低圧注水設備を設けても炉心溶融が起こり原子炉圧力容器の底部が破損して原子炉圧力が減圧してからでないと代替注水設備で炉内に注水することができない。それでNRAの要求は炉心溶融の防止ではなく炉内の溶融炉心の冷却機能となっているものと思われる。
しかし、BWRの場合は、代替高圧注水設備を設けることが可能であり、また、SBO時に自動減圧系(ADS)で原子炉圧力容器2を減圧して代替低圧注水設備で注水することができる。そのためこれらの代替注水設備を設けると炉心溶融を防止できてしまう。しかし、NRAの要求はPWR救済を目的としているため、炉心溶融後の炉内の溶融炉心の冷却機能となっている。そのため、BWRの場合は、代替注水設備を設けても、それで炉心溶融を防止できるにもかかわらず、わざわざ炉心溶融が発生するのを待ってその後にしかこれらの代替注水設備を使用することができない。そのため、BWRではこれらの代替注水設備は炉心溶融が発生して原子炉格納容器3内の放射線レベルが異常高となってからでないと起動できないように起動信号を設定するような愚かなことを行う必要に迫られている。代替注水設備を設けても炉心溶融を防止できないPWRに合わせて代替注水設備で炉心溶融を防止できるBWRが炉心溶融が起きるまで代替注水設備にインターロックをかけて起動できないようにしてわざわざ炉心溶融を起こさせるというわけである。なんと愚かな結末であることか。しかし、これは実はNRAやPWRが悪いわけではない。原子炉圧力容器2内の残存デブリの冷却に動的な代替注水設備を使うという固定概念化した発想が悪いのである。NRAは炉内の溶融炉心の冷却機能を要求しているのであって、必ずしも、動的代替注水設備を要求しているわけではない。何らかの方法で炉内の溶融炉心の冷却機能を設けることを要求しているのである。本発明は、この要求に対する理想的な解決策を教示するものである。
(圧力抑制プール水温の成層化の説明)
福島第一事故の結果からわかってきたもう一つの現象は、圧力抑制プール水温の成層化である。以下では福島第一の事故当時の静的格納容器冷却系12が設置されていないプラントの場合で説明する。炉心溶融事故が起きると炉心燃料の金属―水反応で大量の水素が逃がし安全弁72から圧力抑制プール6に放出されウェットウェル気相部に移行してウェットウェル気相部の圧力が上昇する。さらに、デブリが原子炉圧力容器2の底部に落下すると原子炉圧力容器2の底部が破損してデブリが下部ドライウェル61aの床に落下する。デブリの熱で溶融弁64が作動してLOCAベント管8から水が下部ドライウェル61a内に流入する。そうするとデブリの熱で水から大量の高圧蒸気が発生する。その蒸気は開口部66から上部ドライウェル4cに移行するとともにLOCAベント管8内の水位を押し下げて水平ベント管8aから圧力抑制プール6内に移行してプール水で冷却されて凝縮する。この際にドライウェル4内に存在していた窒素と炉心燃料の金属―水反応で発生した残りの水素が蒸気ともに圧力抑制プール6内にベントされウェットウェル気相部7に移行してウェットウェル気相部7の圧力はさらに限界近くまで上昇する。
この過程によって下部ドライウェル61aの床に落下したデブリの崩壊熱は圧力抑制プール6のプール水に伝達されてプール水が高温化していく。その際、圧力抑制プール6のプール水は水深が約7mと深いため高温水ほど上部に移行して冷温水は下部に沈降し下層から上層に向けて水温の成層化が起きることがわかってきた。実際に福島第一の事故の際に圧力抑制プール水温の成層化が確認されている。
圧力抑制プール水温の成層化が起こると水面部分のプール水が短期間で飽和状態になり高圧蒸気を発生する。その結果、プール水全体の平均温度としてはまだ飽和水に達していないにもかかわらずウェットウェル気相部7には高圧の飽和蒸気が発生してしまう。既に、ウェットウェル気相部7には大量の水素とドライウェル4内の窒素が移行していてこれらの非凝縮性ガスの圧力によって限界近くまで高圧化している。そこに圧力抑制プール6の水面部分のプール水から高圧の飽和蒸気が発生することによってウェットウェル気相部7の圧力が異常高圧化する。さらに、ウェットウェル気相部7の圧力上昇に連動してドライウェル4の圧力も高圧化して限界値を超えてしまう(ドライウェル4の圧力はウェットウェル5の圧力よりも水平ベント管8aをベントクリアする水頭分だけ高くなる)。この状態では、原子炉格納容器3の過圧破損が発生する恐れがあるのでNRAはフィルターベントシステムを設けることを要求している。フィルターベントシステムは原子炉格納容器3内に発生した放射性の有機ヨウ素と放射性の希ガスを直接環境に放出する危険な設備である。その危険を回避するため地元の住民はフィルターベントシステムが作動する前に避難する必要がある。しかし、圧力抑制プール水温の成層化によってフィルターベントシステムを作動させなければならないタイミングが異常に早くなり地元住民が完全には避難しきれていない状態でフィルターベントシステムが作動もしくは原子炉格納容器3が過圧破損してしまう可能性があることがわかってきた。本発明はこの問題に対する良好な改善策を教示するものである。
(FP加熱による温度上昇に関する説明)
例えば、主蒸気配管(MSL)71がドライウェル4内で破断する主蒸気配管破断事故(MSLBA)が起こったのちに炉心溶融事故に進展した場合を想定すると、溶融炉心から発生した核分裂生成物の放射性物質が主蒸気配管の破断口からドライウェル4の内部に大量に放出される。大半の粒子状の放射性物質はドライウェル4の壁面や床面にプレートアウトもしくはフォールアウトして沈着する。ガス状の放射性物質と浮遊性の放射性物質は蒸気とともにLOCAベント管8から圧力抑制プール6にベントされる。しかし、ドライウェル4の壁面と床面に付着した大量の核分裂生成物の崩壊熱によってドライウェル4の雰囲気温度は400℃程度まで上昇することがわかってきた。ドライウェル4には機器ハッチ(図示せず)があり雰囲気温度が長時間高温化するとシール材が劣化してドライウェル4内の大量の水素や放射性物質が外部に漏れ出すおそれがある。本発明はこの問題に対する良好な解決策を教示するものである。
(図21:従来の第2の原子力プラントの説明)
図21および図22に基づき従来の第2の原子力プラントの説明を行う。
図21は、従来の第2の原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成の例を示す立断面図である。本従来例については特許文献1の図9および図2に掲載されている。図21において、炉心1は原子炉圧力容器2の内部に収納されている。原子炉圧力容器2は、原子炉格納容器3内に収納されている。原子炉格納容器3は円筒形状をしている(図22を参照。)。図21において炉心1、原子炉圧力容器2および原子炉格納容器3の構成は図15に示す従来の第1の原子力プラントの構成と同じである。以下では、重複を避けるため、従来の第2の原子力プラントが従来の第1の原子力プラントと異なる構成についてのみ説明する。
(外部ウェルの説明)
従来の第2の原子力プラントにおいては、さらに、ドライウェル4とウェットウェル5の外部に外部ウェル32が設けられている。この構成はSevere Accident Tolerant Reactor (SATOR)において採用されているものである。外部ウェル32はドライウェル共通部壁4bを介してドライウェル4と隣接し、ウェットウェル共通部壁5aを介してウェットウェル5と隣接している。外部ウェル32の天井部は平板でこの部分を外部ウェル32のトップスラブ32aと呼ぶ。外部ウェル32内の雰囲気は窒素により置換され酸素濃度を低く制限されている。外部ウェル32はドライウェル4およびウェットウェル5と同等の耐圧性と気密性を有している。
外部ウェル32の材質は、鉄筋コンクリート製(RC)、SC造、鋼製など原子炉格納容器3と同じもの全てが使用可能である。鉄筋コンクリート製の場合は、原子炉格納容器3と同様に内面にライナーが敷設される。図22に示すように、本従来例における外部ウェル32の平面形状は矩形でドライウェル4およびウェットウェル5の外壁の一部を囲むように構成されているが、外部ウェル32の平面形状はこれに限定されない。ドライウェル4およびウェットウェル5の外壁の少なくとも一部を囲むように隣接していれば任意の形状で良い。たとえば、台形、多角形、三日月型、部分的な円環形、完全な円環形などがある。
(スクラビングプールの説明)
図23に基づいてスクラビングプールの構成を説明する。外部ウェル32内に内部に水を貯えたスクラビングプール33が設けられ、上部は上蓋33aで覆われている上蓋33aとプール水の間には空間33bがある。上蓋33aの上部に空間33bに開口した第1の出口配管33cが設けられている。第1の出口配管33cの一端に金属ファイバーフィルター34が接続して設けられている。さらに、金属ファイバーフィルター34に接続して他端が外部ウェル32の内部に開口する第2の出口配管34aがある。
空間33bはガスベント配管22から原子炉格納容器3内のガスがベントされる際に水位上昇が発生した場合に必要となる。また、上蓋33aは地震時のスロッシングで水が流出することを防止するために必要である。通常時だけではなく事故時に地震が発生してスロッシングで水が流出することを防止する必要がある。本従来例では、スクラビングプール33の形状は矩形としているが、この例には限定されない。例えば、多角形、楕円、円形など任意の形状のものが使用される。また、スクラビングプール33、上蓋33a、空間33bは一体化したタンクとした例もある。
(図21:PCCSの構成の説明。従来の第2の原子力プラントの場合)
次に、図21および24に基づいて従来の第2の原子力プラントの静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。原子炉格納容器3および外部ウェル32の上部に冷却水プール13が設けられ、内部に冷却水14を蓄えている。冷却水プール13はプール型とタンク型の例がある。図21ではプール型のものを表示している。プール型の場合は上部は上蓋で覆われている。
冷却水プール13の水面の上方の気相部から、環境に蒸気を放出する排気口15が設けられている。排気口15の出口には虫よけのスクリーンが設けられることがある。冷却水プール13の位置は、一般に原子炉格納容器3および外部ウェル32の上部に設けられているが、原子炉格納容器3および外部ウェル32の横に設けることもできる。
冷却水プール13内には熱交換器16が設置されている。熱交換器16の少なくとも一部は冷却水14に水没するように設置される。本従来例では、熱交換器16は冷却水14に完全に水没するように設置される例を示している。
熱交換器16は複数個設置される場合が多いが、図21では1基のみを表示してある。熱交換器16は入口プレナム17、出口プレナム18および伝熱管19を有する(図24を参照)。熱交換器16は全体で少なくとも崩壊熱相当の蒸気を凝縮する冷却容量を有している。
図21では、熱交換器16全体が、入口プレナム17と出口プレナム18を含めて冷却水プール13の内部に設置例を示しているが、この例には限定されない。たとえば、伝熱管19のみが冷却水プール13の内部に設置され、入口プレナム17と出口プレナム18は冷却水プール13の外部に突出して設置される例もある。
熱交換器16の入口プレナム17にはウェットウェル・ガス供給配管48が接続されている。ウェットウェル・ガス供給配管48は一端がウェットウェル気相部7に開口しウェットウェル5の側壁を貫通しアウターウェル32の内部をとおりアウターウェル32のトップスラブ32aを貫通してもう一端が入口プレナム17に接続している。本従来例では、さらにドライウェル・ガス供給配管20が設けられている。ドライウェル・ガス供給配管20の一端はドライウェル4の内部に開口しドライウェル4の側壁を貫通しアウターウェル32の内部をとおりアウターウェル32のトップスラブ32aを貫通しもう一端はウェットウェル・ガス供給配管48に接続している。ドライウェル・ガス供給配管20には隔離弁20aが設けられ通常運転中は閉鎖している。
また、熱交換器16の出口プレナム18の下部に凝縮水戻り配管21が接続されている。凝縮水戻り配管21は、外部ウェル32のトップスラブ32aを貫通して外部ウェル32の内部を通り、先端がウェットウェル5の内部の圧力抑制プール6に浸漬するように設置されている。このように凝縮水戻り配管21は外部ウェル32の内部を通るように設置されるので、凝縮水が漏洩してCsI等の放射性物質が直接環境に放出されない構造となっている。
原子炉格納容器3内の雰囲気には炉心溶融事故が発生した場合には、CsI等の粒子状放射性物質が大量に含まれているが、熱交換器16で蒸気が凝縮する際にCsI等の粒子状放射性物質は凝縮水にほとんど移行する。そのCsIを大量に含んだ凝縮水は凝縮水戻り配管21により圧力抑制プール6のプール水に還流し保持されるので、本従来例の静的格納容器冷却12は、原子炉格納容器3内に浮遊する粒子状放射性物質を静的に除去するように構成されている。
したがって、本従来例では、全交流電源喪失(SBO)により炉心溶融事故に至った場合であっても、あたかも動的な格納容器スプレーにより粒子状放射性物資を除去して圧力抑制プール6のプール水に還流しているのと同等の効果が得られる。また、凝縮水戻り配管21はLOCAベント管8の内部に設置しないのでLOCA時にLOCAベント管の圧損を増大させることがない構造となっている。
さらに、熱交換器16の出口プレナム18の上部にはガスベント配管22が接続されている。ガスベント配管22は外部ウェル32のトップスラブ32aを貫通して外部ウェル32の内部を通り、先端はさらにスクラビングプール33の水の中に浸漬して設置されている。このようにガスベント配管22は外部ウェル32の内部を通るように設置されるので、ガスが漏洩して放射性希ガス、有機ヨウ素、CsI等の放射性物質が直接環境に放出されない構造となっている。この内、CsI等の粒子状放射性物質は、スクラビングプール33のプール水で除去され、さらに、金属ファイバーフィルター34により水滴等にキャリーオーバーされたものも除去される構成になっている。
これにより、CsI等の粒子状放射性物質が環境に放出されて土地が汚染され周辺住民の方達に長期間の移住をしていただく必要性を削除することが可能となっている。また、放射性希ガスと有機ヨウ素は第2の出口配管34aから外部ウェル32の内部に放出され外部ウェル32の内部に保持される。これにより従来のフィルタ-ベントシステムが作動時に放射性希ガスと有機ヨウ素を環境に直接放出するため、事前に周辺住民の方達に緊急避難をしていただいたりヨウ素剤を服用していただいたりする必要性を削除することが可能になっている。
また、本従来例では、過酷事故時に燃料被覆管の金属-水反応で大量に発生する水素についても、ガスベント配管22により外部ウェル32の内部に放出されるため、ドライウェル4およびウェットウェル5の過酷事故時の圧力を十分低く保つことが可能である。外部ウェル32の内部の雰囲気は窒素で置換されているので、大量の水素が閉じ込められても爆轟することがない。
また、本従来例では、ウェットウェル・ガス供給配管48からウェットウェル気相部7に発生した蒸気を吸引して静的格納容器冷却系12によって冷却できるので、過酷事故時に圧力抑制プール6の水温が成層化して水面部分の水から高圧蒸気が発生しても原子炉格納容器3の圧力を低く維持して過圧破損を防止することができる。これは原子炉格納容器3内の非凝縮性ガスをウェットウェル・ガス供給配管48から吸引しガスベント配管22によってスクラビングプール33内にベントしさらにアウターウェル32内にベントすることができるためである。ガスベント管22が圧力抑制プール6内に導かれている従来の第1の原子力プラント(ABWR)の静的格納容器冷却系12の場合(図15および図20を参照)では、仮に、ウェットウェル・ガス供給配管48を設けてもガスベント配管22によってガスをウェットウェル5にベントすることができず、ウェットウェル気相部7内の非凝縮性ガスが静的格納容器冷却系12の熱交換器16の内部に滞留してしまい静的格納容器冷却系12は機能喪失してしまう。従来の第2の原子力プラント(SATOR)の静的格納容器冷却系12の場合(図21および図24を参照)では、ガスベント管22のベント先としてアウターウェル32を設けているため熱交換器16内に非凝縮性ガスが滞留することがなくウェットウェル・ガス供給配管48によってウェットウェル気相部7内の高圧蒸気を冷却でき原子炉格納容器3の過圧破損を防止できる。ウェットウェル気相部7とアウターウェル32の間には常に差圧があるため熱交換器16内の非凝縮性ガスはガスベント管22によって効率よくアウターウェル32の内部にベントされる。そのため従来の第2の原子力プラントの静的格納容器冷却系12にあっては、ガスベント管22にベントファンを設ける必要がない。
(図21:冠水配管の説明)
また、本従来例では、下部ドライウェルを冠水するためにペデスタル61の壁を貫通し一端が下部ドライウェル(ペデスタルキャビティ)61a内に導かれ他端が圧力抑制プール6内に開口する冠水配管68が設けられている。冠水配管68の下部ドライウェル61a内の部分には冠水弁67が設けられている。また、冠水配管68には逆止弁69が設けられている。逆止弁69を設けたことでドライウェル4内の圧力が上昇した場合でも下部ドライウェル61a内の高温水が圧力抑制プール6に逆流することを防止できる。冠水配管68の設置位置はLOCAベント管8と重ならないようにたとえば、LOCAベント管とLOCAベント管の中間の位置として全体で10個設置されている(図22を参照)。
冠水弁67は溶融弁を使用することが可能である。溶融弁はデブリの熱で溶融して開になる。しかし、溶融弁以外にもSBO時に作動用電源を必要としないものは全て使用可能である。たとえば、爆破弁は作動に火薬を使用するので採用可能である。作動にはデブリの熱を検知する温度高の信号を使用する。また、バネ式弁も作動にバネの力を使用するので採用可能である。バネを抑えているワイヤーがデブリの熱で溶融することにより開になる。さらに、信頼性を向上させるため、たとえば、10個の冠水弁の内5個を爆破弁として残りの5個をバネ式弁にすることがある。また、5個を溶融弁として残りの5個を爆破弁とすることがある。あるいは、溶融弁、爆破弁、バネ式弁の少なくとも2種類以上を混在して使用することがある。
(図24:PCCS熱交の説明。従来の第2の原子力プラントの場合)
図24は、従来の第2の原子力プラントにおける静的格納容器冷却系内の熱交換器の例を示す立断面図である。図24により、従来の第2の原子力プラントにおける静的格納容器冷却系12の熱交換器16の構造について横型熱交換器の例で説明する。
図24において、出口プレナム18は、入口プレナム17の下方に設けられている。多数のU字型の伝熱管19が管板23に接続し、伝熱管19の直管部が水平に設置されている。図24では簡略化して2本のみを表示している。伝熱管19の外部には冷却水14(図21参照)が満たされている。伝熱管19の入口は、入口プレナム17に開口している。また、伝熱管19の出口は出口プレナム18に開口している。
入口プレナム17にはウェットウェル・ガス供給配管48が接続し、ウェットウェル気相部7内の窒素、水素、酸素、水蒸気等の混合ガスを入口プレナム17に供給する。この混合ガスは伝熱管19内に導かれ、水蒸気は凝縮して凝縮水となり、伝熱管19の出口から出口プレナム18内に流出し、出口プレナム18内の下部に溜まる。
出口プレナム18の下部には、凝縮水戻り配管21が接続されていて、出口プレナム18内の凝縮水を、重力により圧力抑制プール6の内部に還流する。また、出口プレナム18の上部には、ガスベント配管22が接続されている。伝熱管19内で凝縮しない窒素、水素、酸素等の非凝縮性ガスは、伝熱管19から排出され出口プレナム18の上部に溜まる。
ガスベント配管22の先端は、外部ウェル32内のスクラビングプール33のプール水の中に浸漬して設置されている。出口プレナム18内の非凝縮性ガスは、ガスベント配管22を通りスクラビングプール33のプール水を押し下げて水中にベントされた後、上蓋33aとスクラビング水33cの間の空間33bに移行する(図23を参照)。その後、第1の出口配管33d、金属ファイバーフィルター34、第2の出口配管34a(図23を参照)を通り外部ウェル32の内部に移行する。
なお、伝熱管19の形状はU字型に限定されない。鉛直方向に直管部のある伝熱管19を、縦型に設置する構造のものもある(図25を参照)。入口プレナム17は、必ず出口プレナム18よりも上に位置する。これにより伝熱管19内で凝縮した凝縮水を重力により出口プレナム18に導く。横型の利点は耐震性に優れていることと、冷却水14の有効活用ができることである。一方、縦型の利点は凝縮水の排出性が良いことである。
(図25:従来の第三の原子力プラントのPCCSの説明)
図25に基づき従来の第三の原子力プラントのPCCSの構成について説明する。従来の第三の原子力プラントは上部ドライウェル4cの内部に重力落下式冷却系(GDCS)プール28が設置されている。また、トップスラブ4aとダイアフラム床5b上端まで高さは約6mである。原子炉格納容器3の内径は約36mである。この構成はESBWRで採用されているものである(特許文献2の図1を参照)。
原子炉格納容器3の上部に冷却水プール13が設けられ、内部に冷却水14を蓄えている。冷却水プール13はプール型である。冷却水プール13内には熱交換器16が設置されている。熱交換器16は縦型である。熱交換器16は通常運転時は冷却水14に完全に水没するように設置される。
熱交換器16は入口プレナム17、出口プレナム18および伝熱管19を有する。伝熱管19は直管部が垂直に設置される縦型である。入口プレナム17、出口プレナム18および伝熱管19は2個あり一対で熱交換器16の1基を構成している。熱交換器16は複数個設置される場合が多いが、図25では1基のみを表示してある。熱交換器16は全体で少なくとも崩壊熱相当の蒸気を凝縮する冷却容量を有している。
熱交換器16の入口プレナム17にはドライウェル・ガス供給配管20が接続されている。ドライウェル・ガス供給配管20は2個の入口プレナム17に接続された2本の配管が途中で結合して1本になりトップスラブ4aを貫通し他端が上部ドライウェル4cに開口している。ドライウェル・ガス供給配管20には隔離弁はなく常時上部ドライウェル4cに開口している。
また、熱交換器16の出口プレナム18の下部に凝縮水戻り配管21が接続されている。凝縮水戻り配管21は2個の出口プレナム18に接続された2本の配管がそれぞれトップスラブ4aを貫通し上部ドライウェル4cに入ったのちに結合して1本になっている。凝縮水戻り配管21は1本になった後PCCSドレンタンク24に接続している。
PCCSドレンタンク24はダイアフラム床5bの上に設置されている。PCCSドレンタンク24の内部には上部ドライウェル4c内のガスと同じ成分のガス(主に窒素ガス)が存在するが水は蓄えられていない。また、PCCSドレンタンク24の上部にはデブリ防護蓋25が設けられている。デブリ防護蓋25は冷却材喪失事故が発生した際に飛散した断熱材などのデブリがPCCSドレンタンク24内に侵入することをできるだけ防止することが目的である。
PCCSドレンタンク24の下部にRPV注水配管26接続されている。RPV注水配管26はダイアフラム床5bよりも下に下降して下部領域(図18を参照)で他端がRPV2に接続されている。RPV注水配管26にはRPV注水隔離弁27が設けられている。RPV注水隔離弁27は通常時は閉鎖している。RPV注水隔離弁27は冷却材喪失事故が発生して炉水位が低下して炉水位低信号が発生した場合に開になる。そのためRPV注水隔離弁27は冷却材喪失事故が発生しても直ちには開にはならず炉水位低の信号が発生するまでの時間遅れをもって開になる。一方、冷却材喪失事故が発生したとほぼ同時に破断流から発生した大量の蒸気がドライウェル蒸気供給配管20からPCCS熱交換器16の内部に流入し大量の凝縮水が出口プレナム18内に蓄積する。この凝縮水を排出しないとPCCSは機能喪失してしまう。これを避けるためにPCCSドレンタンク24が必要になっている。PCCSドレンタンク24がないと凝縮水を排出できなくなり凝縮水がPCCS熱交換器16の内部に滞留してPCCS熱交換器は上部ドライウェル4c内の蒸気を吸引できなくなり機能喪失してしまう。
デブリ防護蓋25がPCCSドレンタンク24を密閉しないようにデブリ防護蓋25とPCCSドレンタンク24の間には一定の隙間が設けられている。この隙間は冷却材喪失事故時に上部ドライウェル4c内に発生した大量の蒸気がPCCS熱交換器16内で凝縮し凝縮水戻り配管21によってPCCSドレンタンク24内に流入する際にPCCSドレンタンク24内のガスを前記隙間から排出するために必要である。もし、この隙間がなくPCCSドレンタンク24が密閉されていると凝縮水のPCCSドレンタンク24内への流入が阻害される。PCCSドレンタンク24内のガスは行き場がなくなり凝縮水戻り配管21内を逆流してPCCS熱交換器16の内部に移行してPCCS熱交換器の蒸気凝縮機能を阻害してしまう。これを避けるためにデブリ防護蓋25がPCCSドレンタンク24を密閉しないようにデブリ防護蓋25とPCCSドレンタンク24の間には一定の隙間が必要になる。また、冷却材喪失事故直後には炉水位低の信号が発生するまでRPV注水隔離弁27が閉鎖されているために必要になる。デブリ防護蓋25とPCCSドレンタンク24の間には一定の隙間が設けられるため、PCCSドレンタンク24内に流入した凝縮水の水面にはこの隙間から上部ドライウェル4c内の圧力が作用する。また、凝縮水が増えてPCCSドレンタンク24内の水位が上昇すると上記隙間から凝縮水が上部ドライウェル4cの内部にあふれ出す。その結果、PCCSドレンタンク24内の凝縮水は上記隙間の高さ以上に上昇することはできない。
PCCSドレンタンク24内の水位は前記隙間の高さが上限となるため、水頭は3m程度に制限される。わずか3mの水頭圧ではPCCSドレンタンク24内の水をRPV2内の圧力に逆らってRPV2内に注水することは困難である。この状態でRPV注水隔離弁27を開にしてRPV2内にPCCSドレンタンク24内の凝縮水を注入するためには、より多くの水頭圧を確保するためRPV注水配管26をダイアフラム床5bよりも低い下部領域90(図18を参照)まで十分に下降させてからRPV2に接続する必要がある。RPV注水配管26をダイアフラム床5bよりも下降させるためには、LOCAベント管8とRPV2の間にかなりの配管スペース29を確保する必要がある。そのため原子炉格納容器3の外径を増加する必要がある。さらにペデスタル61の内径も大きくなるため非常に特殊な構造のRPVサポート63を設ける必要がある。RPVサポート63はペデスタル壁面から大きく張り出す必要があり耐震強度を確保するのが難しい構造になっている。GDCSプール28のRPV注水配管(図示せず)も同様に上記配管スペース29を下降してからでないとRPV2内に注水することはできない。従って、GDCSプール28を使用するESBWRでは配管スペース29が必須となっている。これは落差による重力によって上部ドライウェル4c内の水を同じく上部ドライウェル4c内に設置されているほぼ同じ高さにあるRPV2内に注水を行うESBWRにとっては避けては通れない問題である。これはESBWR問題の一つである。
また、上部ドライウェル4cの内部にはGDCSプール28が設置されていてPCCSドレンタンク24を設置する十分な空間がなくLOCAベント管8の開口部を塞いでしまっている。左側の凝縮水戻り配管21はGDCSプール28と干渉してしまっている。そのため、ESBWRの最終設計では、PCCSドレンタンク24は削除され、凝縮水戻り配管21はGDCSプール28内に接続される構成が採用された。また、RPV注水配管26とRPV注水隔離弁27は削除された。
このようにPCCS熱交換器16から凝縮水戻り配管21によってRPV2内に凝縮水を注入するためには、PCCSドレンタンク24を狭隘な上部ドライウェル4cの内部に設置し、さらに、RPV注水配管26をダイアフラム床5bの下の下部領域90(図18を参照)まで十分に下降させるための配管スペース29を設け、原子炉格納容器3の内径を拡大し、ペデスタル61の内径を拡大し、特殊構造のRPVサポート63を設ける必要があった。
特開2016-14640号公報(US 2017/0162281 Al) 特開2004-333357号公報。(JP2004-333357A) 特開2007-232529号公報(JP2007-232529A) 特開2008-139023号公報(JP2008-139023A)
解決しようとする問題点は、過酷事故時に従来の原子力プラントの静的格納容器冷却系12では、原子炉圧力容器2内の残存デブリを冷却できず、原子炉格納容器3の上蓋部11aが高温化しフランジ74のシール材が劣化して大量の水素と放射性物質が原子炉格納容器3の外部に漏洩することを防止できない点である。また、上部ドライウェル4cが高温化し原子炉格納容器3が過温破損することを防止できない点である。さらに、ABWR以前のBWRでは、圧力抑制プールの水温が成層化して水面部分の水から高圧の蒸気が発生して原子炉格納容器3が早期に過圧破損することを防止できない点である。
本発明は、静的格納容器冷却系12の凝縮水を原子炉格納容器3の下部領域90に戻すことに加えて上部領域91にも注水する構成とし、過酷事故時に原子炉圧力容器2内に凝縮水を注水し原子炉圧力容器2内に残存するデブリの冷却を行い原子炉格納容器3の上蓋部11aの温度上昇を抑制しフランジ74のシール材の劣化を防止するとともに原子炉格納容器3の過温破損を防止することを最も主要な特徴とする。また、圧力抑制プールの水温の成層化によって水面部分の水から発生する高圧水蒸気による原子炉格納容器3の早期過圧破損を防止することを特徴とする。
本発明の実施形態によれば、全交流電源喪失(SBO)等により炉心溶融を伴う過酷事故が発生した場合であっても、原子炉格納容器3の過温破損を防止するとともに早期過圧破損を防止することができる。福島第一の事故の教訓から得られた過酷事故時に原子炉格納容器の破損が生じるおそれのある現象を抑制し原子炉格納容器の健全性を維持することができる。
図1は本発明の第1の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図2は本発明の第2の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図3は本発明の第3の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図4は本発明の第4の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図5は本発明の第5の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図6は本発明の第6の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図7は本発明の第7の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図8は本発明の第8の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図9は本発明の第9の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図10は本発明の第10の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図11本発明の第11の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図12は本発明の第12の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図13は本発明の第13の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図14は本発明の第14の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図15は従来の第1の原子力プラント(ABWR)の原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図16は従来の第1の原子力プラント(ABWR)の原子炉格納容器まわりの構成を示す平面図である。 図17は従来の第1の原子力プラント(ABWR)の原子炉格納容器の上蓋部まわりの構成を示す立断面図である。 図18は従来の第1の原子力プラント(ABWR)の原子炉格納容器の内部領域を示す立断面図である。 図19は従来の第1の原子力プラント(ABWR)の原子炉圧力容器および炉内構造物を示す立断面図である。 図20は従来の第1の原子力プラント(ABWR)の静的格納容器冷却系の熱交換器の例を示す立断面図である。 図21は従来の第2の原子力プラント(SATOR)の原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。 図22は従来の第2の原子力プラント(SATOR)の原子炉格納容器まわりの構成を示す平面図である。 図23は従来の第2の原子力プラント(SATOR)のスクラビングプールの構成を示す立断面図である。 図24は従来の第2の原子力プラント(SATOR)の静的格納容器冷却系の熱交換器の例を示す立断面図である。 図25は従来の第3の原子力プラント(ESBWR)の静的格納容器冷却系の熱交換器の例を示す立断面図である。 図26は本発明の原子力プラントの実施形態に共通する構成を示す原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。
以下、図1~図14を参照して本発明の実施形態に係る静的格納容器冷却系を有する原子力プラントについて説明する。ここで、前述の従来技術と同一または類似の部分について、また下記の実施形態どうしで同一または類似の部分については、共通の符号を付して、重複説明は省略し要部のみを説明する。
(ABWRをベースにした実施形態の説明)
図1から図7に基づきABWRをベースにした実施形態について以下に説明する。以下に説明する実施形態1から実施形態7については、炉心1、原子炉圧力容器2、原子炉格納容器3の構成は図15および図16に示す従来の第1の原子力プラント(ABWR)の構成と同じである。また、静的格納容器冷却系12の基本構成も図15および図20に示す従来の第1の原子力プラント(ABWR)の静的格納容器冷却系12の基本構成と同じである。以下の説明では重複を避けて実施形態1から実施形態7についてABWRと異なる点について要点のみを説明する。
図1から図7に示す実施形態は、RCCVと呼ばれる原子炉格納容器を使用しているが、原子炉格納容器の型式はRCCVに限定されない。圧力抑制プールによる圧力抑制機能を持つ全ての圧力抑制型の原子炉格納容器に普遍的に適用される。また、材質もSC造や鋼製など他のものも使用可能である。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。以下、第1の実施形態が従来のABWRと異なる点について説明する。
(図1:第1の実施形態のPCCSの構成の説明)
図1に基づいて第1の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。第1の実施形態においては、凝縮水戻り配管21の一端は、一例として圧力抑制プール6内に水に浸漬して設置されている。凝縮水戻り配管21には凝縮水戻り配管隔離弁21aが設けられている。凝縮水戻り配管隔離弁21aは通常運転中は開になっている。本実施形態では、凝縮水戻り配管21の一端は、一例として圧力抑制プール6に導かれているが、この例には限定されない。下部ドライウェル61aの下部のコアキャッチャー(図示せず)に導く例やLOCAベント管8の内部に導かれている例もある。圧力抑制プール6に導かれる場合も、また、LOCAベント管8に内部に導かれる場合も凝縮水は最終的に溶融弁64から下部ドライウェル61aに戻される。このように凝縮水戻り配管21の一端は、いずれも原子炉格納容器3のダアイフラム床5bよりも下の下部領域90(図18を参照)に凝縮水を戻すように構成されている。
さらに、本実施形態においては、原子炉圧力容器注水配管51が設けられている。原子炉圧力容器注水配管51の一端は凝縮水戻り配管21の出口プレナム18と凝縮水戻り配管隔離弁21aの間に接続している。原子炉圧力容器注水配管51の他端は原子炉圧力容器2に接続している。本実施形態では、原子炉圧力容器注水配管51の他端は原子炉圧力容器2内の給水スパージャー50に接続している例を示しているが、この例には限定されない。例えば、低圧注水系スパージャー46(図19を参照)に接続することもできる。原子炉圧力容器注水配管51には原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aが設けられている。原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aは通常運転中は閉鎖している。
さらに、ガスベント配管22にはガスベントファン22aと逆流防止弁22bが設けられている。図1ではガスベントファン22aはガスベント配管22から分岐配管を設けて設置する例が示されているが、この例には限定されない。ガスベントファン22aはガスベント配管22に直接設けることもできる。この場合は、逆流防止弁22bは設けなくてもよい。また、図1では、逆流防止弁22bは逆止弁の例を示しているが、この例には限定されない。逆流防止弁22bは電動弁などを使用することもできる。ガスベントファン22aおよび電動弁の作動には過酷事故専用の電源(図示せず)を使用する。過酷事故専用の電源はガスタービン発電機やバッテリーなどで設計基準事故用の非常用電源(ディーゼル発電機)とは異なる多様性をもった電源を使用する。
本実施形態の第1の特徴は、凝縮水戻り配管21が圧力抑制プール6内に導かれていることと凝縮水戻り配管21の途中から分岐して原子炉圧力容器注水配管51が設けられていることである。このように構成される本実施形態の作用を説明する。冷却材喪失事故が発生した場合は、破断流から上部ドライウェル4cの内部に大量の蒸気が発生する。その蒸気は、自らの圧力でドライウェル・ガス供給配管20から静的格納容器冷却系12の熱交換器16内に流入し、伝熱管19によって冷却され凝縮する。凝縮水は出口プレナム18内に流入する。さらに、凝縮水は凝縮水戻り配管21により圧力抑制プール6に戻される。そのため熱交換器16内に凝縮水が滞留して静的格納容器冷却系12が機能喪失することが防止される。このように圧力抑制プール6がPCCSドレンタンクとして機能するため、ESBWRのように狭隘な上部ドライウェル4c内にPCCSドレンタンク24を設ける必要がない(図25を参照)。このように圧力抑制プール6内に浸漬した凝縮水戻り配管21の凝縮水戻り配管隔離弁21aを開にし、原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aを閉鎖した静的格納容器冷却系12の運転方法を圧力抑制プール・ドレン・モードと呼ぶ。
一方、SBOなどによって炉心溶融事故が発生した場合は、デブリが原子炉圧力容器2の底部を溶融貫通して下部ドライウェル61aの床に落下する。デブリの熱で下部ドライウェル61a内の温度が高くなると溶融弁64が開になりLOCAベント管8内の水が下部ドライウェル61aに流入してデブリを冠水する。デブリが下部ドライウェル61a内の水を加熱することによって大量の蒸気が発生する。その蒸気は下部ドライウェルの開口部66から上部ドライウェル4cに移行して自らの圧力でドライウェル・ガス供給配管20から静的格納容器冷却系12の熱交換器16内に流入して伝熱管19によって冷却されて凝縮する。この凝縮水は出口プレナム18内に流入する。さらに、凝縮水は凝縮水戻り配管21により圧力抑制プール6に戻される。圧力抑制プールの水はLOCAベント管8を介して再び溶融弁64をとおり下部ドライウェル61aに流入し下部ドライウェル61aの床に落下したデブリの冷却に使用される。これによって下部D/W61aに落下したデブリの冷却は静的格納容器冷却系12によって完全に行われる。
しかし、福島第一の事故の結果から、過酷事故時には原子炉圧力容器2内には約20%のデブリが残存していることがわかってきた。この炉内残存デブリは冠水していない。この状態を放置すると原子炉圧力容器2内の温度は1000℃程度まで上昇し原子炉圧力容器2からの放熱によって、上部ドライウェル4cの温度は200℃を超え、原子炉格納容器3の上蓋部10aの温度は300℃を超え、原子炉格納容器3の過温破損が発生してしまう。原子炉圧力容器2は底部が破損しているので圧力はドライウェル4の圧力程度まで減圧している。この状態になったら原子炉圧力容器圧力低や原子炉格納容器内放射線高の信号が検出される。その信号を確認したら凝縮水戻り配管隔離弁21aを閉鎖して原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aを開にする。この隔離弁の切替は手動で実施しても良いし、信号によって自動で実施してもよい。この隔離弁の切替動作が完了すると、出口プレナム18内の凝縮水は原子炉圧力容器注水配管51によって原子炉圧力容器2内の給水スパージャー50から原子炉圧力容器2内に散水される。出口プレナム18と給水スパージャー50の高低差は約10mあるため出口プレナム18内の凝縮水は約10mの水頭の重力によって減圧した原子炉圧力容器2内に流入することができる。このように凝縮水戻り配管隔離弁21aを閉鎖して原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aを開にして凝縮水を原子炉圧力容器2内に注水する運転方法を静的格納容器冷却系12の原子炉圧力容器注水モードと呼ぶ。凝縮水が給水スパージャー50から原子炉圧力容器2内に散水されると原子炉圧力容器2内の温度は約600℃以下に低下する。凝縮水は給水スパージャー50から散水されるとダウンカマー2d(図19を参照)を下降してインターナルポンプ40のディユーザー42から原子炉圧力容器2の底部の下部プレナムに2fに流れる。原子炉圧力容器2の溶融貫通の位置が計装配管(図示せず)などの場合には破断個所が原子炉格納容器2の下鏡2gよりも高くなることがあり凝縮水はその高さまで貯まり下部プレナム2f内に水位を形成する。下部プレナム2fに貯まった凝縮水は原子炉圧力容器2の溶融貫通個所から下部ドライウェル61aの底部に落下して下部ドライウェル61の床に落下したデブリの冷却に使用される。もし、この凝縮水の散水が行われない場合には、炉内に残存するデブリの熱で原子炉圧力容器2内の温度は約1000℃の高温を維持する。高温化した原子炉圧力容器2からの放熱で事故後7日間にわたり上部ドライウェル4cの温度は200℃を超え、原子炉格納容器上蓋部11aの温度は300℃を超えてしまう虞があった。これによって上部ドライウェル4cは過温破損し、原子炉格納容器上蓋11のフランジ74のシール材が劣化して大量の水素と放射性物質が運転床に漏洩する虞があった。漏洩した大量の水素の爆轟が運転床で発生することが福島第一の事故によって実証されている。しかし、本実施形態では、凝縮水が給水スパージャー50から原子炉圧力容器2内に散水され原子炉圧力容器2内の温度が事故後7日間にわたり約600℃以下に制限されるため、上部ドライウェル4cの温度は約170℃以下に維持され、原子炉格納容器上蓋部11aの温度は約200℃以下に維持される。これによって、上部ドライウェル4cが過温破損することが防止されるとともに、原子炉圧力容器上蓋11のフランジ74のシール材の健全性が維持されフランジ74から大量の水素と放射性物質が漏洩することが防止される。このように静的格納容器冷却系12の原子炉圧力容器注水モードは原子炉格納容器3の過温破損防止に極めて有効である。
このように構成された本実施形態は、日本の原子力規制委員会(NRA)が新規制基準第42条の解説で要求する『炉内の溶融炉心の冷却機能(例えば、原子炉内への低圧注水設備)』の構成要件を満たすことができる。しかも、ポンプやその動力電源などを使用しない静的格納容器冷却系12で満たすことができる。この要件はアイソレーションコンデンサー(IC)によっても満たすことができるが、アイソレーションコンデンサーは炉心溶融防止設備であるため、深層防護上、炉心溶融発生後に使用することは許容されない。アイソレーションコンデンサーが機能していると炉心溶融は発生しない。炉心溶融事故が発生しているということは、アイソレーションコンデンサーが何らかの理由で故障して使用できないことを意味している。これは福島第一の事故で実際に起きたことである。従って、炉心溶融事故が発生した後にアイソレーションコンデンサーで炉内の溶融炉心を冷却することはできない。福島第一の事故の場合も炉心溶融が発生した後は、アイソレーションコンデンサーは全く機能していない。
本実施形態の第2の特徴は、ガスベント管22にガスベントファン22aが設けられていることである。本実施形態の場合は、ガスベント管22は圧力抑制プール6に導かれている。過酷事故時には大量の放射性物質が逃がし安全弁72(図15を参照)、ガスベント管22及びLOCAベント管8から圧力抑制プール6の水中に移行してスクラビングされて存在する。その量は炉心燃料中に存在していた全放射性物質の約25%である。つまり、実質的にデブリの約25%が圧力抑制プール6内に存在していることと同等である。そのため放射性物質の放出する崩壊熱によって圧力抑制プール6の水が沸騰を開始する。圧力抑制プール6の水が沸騰して高圧蒸気がウェットウェル気相部7に流入してウェットウェル気相部7の圧力が上昇する。ドライウェル4の圧力は静的格納容器冷却系12によって冷却されているため比較的低い。そのためウェットウェル気相部7の圧力がドライウェル4の圧力よりも高くなってウェットウェル気相部7内の窒素、水素、蒸気が混合ガスとなって真空破壊弁9をとおりドライウェル4内に流入する。この混合ガスは自らの圧力でドライウェル・ガス供給配管20をとおり静的格納容器冷却系12の熱交換器16内に流入する。蒸気は伝熱管19によって凝縮する。しかし、窒素と水素は非凝縮性ガスなので凝縮せずに伝熱管19の内部に滞留する。伝熱管19内の非凝縮性ガスは本来は出口プレナム18からガスベント管22をとおって圧力抑制プール6内にベント可能なように構成されている。しかし、圧力抑制プール6の水が沸騰している状態では、ウェットウェル気相部7の圧力がドライウェル4の圧力よりも高いため、伝熱管19内の非凝縮性ガスを圧力抑制プール6内にベントすることはできなくなる。そのため静的格納容器冷却系12はドライウェル4内のガスを吸引できなくなり冷却機能を喪失する。つまり、圧力抑制プール6の水が沸騰開始すると静的格納容器冷却系12は機能喪失する。この現象は圧力抑制プール6の水が沸騰開始するとほぼ同時に発生する。しかし、本実施形態では、ガスベント管22にガスベントファン22aを設けて強制的に伝熱管19内の非凝縮性ガスをベントできるようになっている。これによって熱交換器16内の非凝縮性ガスが圧力抑制プール6内にベントされ静的格納容器冷却系12は冷却機能を維持することが可能になっている。このように構成された本実施形態の静的格納容器冷却系12では冷却水14を補給するだけで長期にわたり原子炉格納容器3の過圧破損を防止可能となる。このようにガスベントファン22aを作動させた運転方法を静的格納容器冷却系12のガスベントファン・モードと呼ぶ。ガスベントファン・モードは他の運転モードとの併用が可能である。
図2は、本発明の第2の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。以下、第2の実施形態が従来のABWRと異なる点について説明する。
(図2:第2の実施形態のPCCSの構成の説明)
図2に基づいて第2の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。第2の実施形態においては、さらに、凝縮水戻り配管21の途中に逆流防止装置52が設けられ、凝縮水戻り配管21の先端はウェットウェル気相部7のウェットウェル・スパージャー53に接続されている。第2の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12のその他の構成は第1の実施形態と同じである。ウェットウェル・スパージャー53は、残留熱除去系(RHR)(図示せず)のスパージャーを使用することもできる。
図2においては、逆流防止装置52は水封タンクの例を示しているが、この例には限定されない。逆流防止装置52はU字水封シールや逆止弁を使用することができる。水封タンク52の場合は、内部に水が貯えられていて凝縮水戻り配管21は途中でこの水の中に浸漬され開口している。また、水封タンク52の水面より上の部分に凝縮水戻り配管21の続きの部分が再び接続され先端はウェットウェル気相部7のウェットウェル・スパージャー53に接続されている。U字水封シールの場合も内部に水を蓄えている。逆流装置装置52の目的はウェットウェル気相部7のガスが凝縮水戻り配管21を逆流して静的格納容器冷却系12の熱交換器16の内部に流入し静的格納容器冷却系12の冷却機能が喪失することを防止することである。SBOの際に逃がし安全弁72(図15を参照)から炉蒸気が圧力抑制プール6に放出され、長時間が経過すると圧力抑制プール6の水面近くの水から高圧の水蒸気が発生してウェットウェル気相部7内の非凝縮性ガスとともに凝縮水戻り配管21を逆流して静的格納容器冷却系12の熱交換器16の内部に流入する虞がある。逆流防止装置52はこの逆流を防止することができる。また、過酷事故時にも炉内で発生した水素が逃がし安全弁72によって圧力抑制プール6に放出されウェットウェル気相部7に移行する。これによってウェットウェル気相部は最初からあった窒素に水素が追加されて圧力上昇する。この窒素と水素の混合ガスが凝縮水戻り配管21を逆流して静的格納容器冷却系12の熱交換器16の内部に流入する虞がある。逆流防止装置52はこの逆流を防止することができる。この逆流防止のための水封タンクおよびU字水封シールの内部水の水深は0.25m程度でよいとされている。
また、水封タンクとU字水封シールの場合には、冷却材喪失事故および過酷事故の際に、ドライウェル4内の放射性物質を含むガスがガスベント管22をバイパスして凝縮水戻り配管21からウェットウェル気相部7に直接流入することを防止できる。特に、冷却材喪失事故直後のドライウェル4内の大量の蒸気は熱交換器16の冷却能力を超えているので凝縮しきれなかった蒸気が凝縮水戻り配管21から直接ウェットウェル気相部7に大量に流入する虞がある。そうするとウェットウェル5の圧力抑制機能を阻害することになる。水封タンクとU字水封シールの場合には内部の水の水深を深くすることによってこのようなバイパスを防止することができる。この場合には、水封タンクおよびU字水封シールの内部水の水深はガスベント管22の圧力抑制プール6内の水没水深よりも深くする(図1を参照)。これによって、蒸気やガスは凝縮水戻り配管21ではなくガスベント管22の方を流れるようになる。
このように構成された第2の実施形態においては、過酷事故時に静的格納容器冷却系12の熱交換器16によって凝縮された凝縮水を凝縮水戻り配管21によってウェットウェル・スパージャー53からウェットウェル気相部7の内部に散水することができる。過酷事故時には原子炉圧力容器2から逃がし安全弁72(図15を参照)によって大量の蒸気と高温の水素が圧力抑制プール6内に放出される。これによって圧力抑制プール6のプール水の温度が上昇する。その際、プール水の温度が成層化して水面近くの水の温度がより早く高温化して高圧の蒸気を発生することが福島第一の事故の教訓から明らかになった。原子炉圧力容器2の底部をデブリが溶融貫通して下部ドライウェル61aの下部に落下すると溶融弁64が開になってLOCAベント管8から水が下部ドライウェル61a内に流入してデブリを冠水する。そうするとデブリの熱で大量の蒸気が発生してドライウェル4が高圧化する。その蒸気とドライウェル4内の窒素ガスはLOCAベント管8と静的格納容器冷却系12のガスベント管22によって圧力抑制プール6内に放出される。蒸気は圧力抑制プール6の水によって凝縮しプール水の温度をさらに上昇させる。窒素は凝縮せずにウェットウェル気相部7に移行する。このようにして過酷事故時にはウェットウェル気相部7にはドライウェル4内の窒素ガスと逃がし安全弁73(図15を参照)から移行した金属-水反応で発生した大量の水素が存在しているため既にウェットウェル気相部7の圧力は非常に高圧化していて過圧破損ぎりぎりの状態になる。そこに圧力抑制プール6の水が成層化するとより早いタイミングで水面近くの水から高圧の蒸気が発生する。これによってウェットウェル気相部7の圧力がより早く高圧化して原子炉格納容器3の過圧破損のタイミングがより早くなる。過圧破損を防止するために日本の原子力規制委員会(NRA)はフィルターベントシステムを使用することを要求している。フィルターベントシステムは放射性希ガスと有機ヨウ素をそのまま環境に放出する危険な装置である。原子炉格納容器3の破損防止と土地汚染防止を優先させた危険な装置である。そのため、フィルターベントを作動する前に周辺の住民をすべて避難させる必要がある。住民の避難には時間が必要である。しかし、圧力抑制プール6の成層化によってフィルターベントを作動させるタイミングが早くなってしまい住民の避難が完了する前に放射性希ガスと有機ヨウ素が環境に放出されて住民が被ばくする虞があった。SBOの際には、SBO発生時点で住民は予防的避難の準備を開始しさらに冷却機能が喪失すると住民の避難を開始する緊急時防災計画が地方自治体により策定されている。しかし、最悪のシナリオの場合には、SBO発生から炉心溶融開始までは2時間程度で、原子炉圧力容器2の溶融貫通までは5時間程度で、さらに、圧力抑制プール6の水の成層化が起こると原子炉格納容器3が過圧破損するまでのタイミングはABWRの場合は約20時~約55時間程度になる。夜間に巨大地震によってSBOが発生した場合に倒壊した家屋に取り残された住民の避難が破壊された道路と点灯していない信号機を使用して約20時間~約55時間程度で完了できるかは緊急時防災計画の内容にかかっている。約20時間は炉内に約20%の残存デブリがある場合である。約55時間は炉内には残存デブリの存在はないとした場合である。
しかし、本実施形態によれば、静的格納容器冷却系12の熱交換器16で生じた凝縮水をウェットウェル気相部7に散布することが可能になる。散布水の温度は事故当初は静的格納容器冷却系12のプール水14の温度が低いため60℃程度である。その後プール水14の温度が100℃程度に達すると散布水の温度は約130℃で一定になる。一方、圧力抑制プールが成層化した場合には水面近くの水温は約180℃にも達してしまう。しかし、本実施形態にあっては、圧力抑制プール6の水から発生した高温蒸気を散布水によって凝縮することができる。また、散布水が圧力抑制プール6の最も高温化している水面に落下するため圧力抑制プール6の水の成層化を防止して散布水の温度と同じ約130℃に維持することが可能になる。また、デブリから発生する崩壊熱は、炉内に残存するデブリによるものの崩壊熱も、また、下部ドライウェル61aの床に落下したデブリの崩壊熱も静的格納容器冷却系12によって冷却することができる。このため、原子炉格納容器3の過圧破損のタイミングを3日以降に伸ばすことが可能になる。プール水14を補給すれば原子炉格納容器3の過圧破損のタイミングをさらに伸ばし、過圧破損そのものを防止することが可能になる。
このように原子炉圧力容器注水隔離弁51aを閉鎖して凝縮水戻り配管隔離弁21aを開にして凝縮水をウェットウェル気相部7に散布する運転方法を静的格納容器冷却系12のウェットウェル・スプレー・モードと呼ぶ。静的格納容器冷却系12の熱交換器16は複数個設置される。例えば、4基の熱交換器16が設置されている場合は、2基の熱交換器16をウェットウェル・スプレー・モードで運転し、残りの2基の熱交換器16を原子炉圧力容器注水モードで運転することが考えられる。そうすることによって原子炉格納容器3の過圧破損も過温破損も防止することができるようになる。
図3は、本発明の第3の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。以下、第3の実施形態が従来のABWRと異なる点について説明する。
(第3の実施形態のPCCSの構成の説明)
図3に基づいて第3の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。第3の実施形態においては、原子炉圧力容器注水配管51は原子炉圧力容器2内のシュラウドヘッド2b内の高圧炉心注水系スパージャー47(図19を参照)に接続されている。第3の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12のその他の構成は第2の実施形態と同じである。
このように構成された第3の実施形態においては、静的格納容器冷却系12の凝縮水を原子炉圧力容器2内のシュラウドヘッド2b(図19を参照)内に散布することが可能になる。これによって散布水をシュラウド2aの内部にある炉心1に直接散布することが可能になる。これによって炉内に残存するデブリに直接散水することが可能になりさらに原子炉圧力容器2内の温度を低減することが可能になる。
さらに、もし、過酷事故時に原子炉圧力容器2の下鏡2gが大きく溶融貫通している場合には、第2の実施形態の場合には、給水スパージャー50から散水された凝縮水はダウンカマー2dを下降してインターナルポンプ40のディユーザー42を通って原子炉圧力容器2の下部プレナム2fに落下した後、原子炉圧力容器下鏡2gの破断個所から下部ドライウェル61aに落下してしまう(図19を参照)。このように第2の実施形態の場合には、凝縮水は炉内に残存するデブリを冷却することなく原子炉圧力容器2の外部に流出してしまう。そのため、原子炉圧力容器2の下鏡2gが大きく溶融貫通している場合には十分な冷却効果が得られない虞がある。
しかし、第3の実施形態にあっては、原子炉圧力容器2の下鏡2gが大きく溶融貫通している場合であっても、高圧炉心注水系スパージャー47から炉内の残存デブリに直接散水して冷却できるため十分な冷却効果をえることが可能になる。
図4は、本発明の第4の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。以下、第4の実施形態が従来のABWRと異なる点について説明する。
(第4の実施形態のPCCSの構成の説明)
図4に基づいて第4の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。第4の実施形態においては、原子炉圧力容器注水配管51は高圧炉心注水系92の高圧炉心注水系注水配管95に接続している。接続位置は高圧炉心注水系外側隔離弁96と原子炉圧力容器2の間である。図4では、高圧炉心注水系内側隔離弁97と原子炉圧力容器2の間で接続される例を示しているが、この例には限定されない。例えば、高圧炉心注水系外側隔離弁96と原子炉圧力容器3の間で接続してもよい。この場合には原子炉圧力容器注水配管51は原子炉格納容器3を貫通する必要がなくなる。本実施形態では、既に存在している高圧炉心注水系92の高圧炉心注水系注水配管95を利用して凝縮水を原子炉圧力容器2内のシュラウドヘッド2b内の高圧炉心注水系スパージャー47(図19を参照)から散水することができる。第4の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12のその他の構成は第2の実施形態と同じである。
ABWRには高圧炉心冷却系92は2系統設けられている。これは本発明の発明者が自動減圧系(ADS)(図示せず)の発生頻度低減と確率論的安全評価(PRA)におけるTQUXシーケンスと呼ばれる高圧シナリオの発生頻度を低減するために実施したものである。一方、静的格納容器冷却系12の熱交換器16は例えば4基などの複数個が設けられる。その場合は、第4の実施形態により、2基の熱交換器16の原子炉圧力容器注水配管51を高圧炉心注水系92の高圧炉心注水系注水配管95に接続することが考えられる。残りの2基の熱交換器16については、第2の実施形態において原子炉圧力容器注水配管51と原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aを削除した構成とすることが考えられえる。前者の2基の熱交換器16は原子炉圧力容器注水モードで運転し原子炉格納容器3の過温破損を防止することができる。一方、後者の2基の熱交換器16はウェットウェル・スプレー・モードで運転し原子炉格納容器3の過圧破損を防止することができる。このようにして原子炉圧力容器3の過温破損も過圧破損も静的格納容器冷却系12によって防止することが可能になる。
図5は、本発明の第5の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。以下、第5の実施形態が従来のABWRと異なる点について説明する。
(第5の実施形態のPCCSの構成の説明)
図5に基づいて第5の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。第5の実施形態においては、ドライウェル・ガス供給配管20にドライウェル・ガス供給配管隔離弁20aが設けられている。ドライウェル・ガス供給配管隔離弁20aは図5では閉鎖されている状態を示しているが通常運転時は開になっている。但し、ドライウェル・ガス供給配管20aは通常運転時は閉鎖されていて事故後に開にしてもよい。
本実施形態にあっては、さらに、原子炉圧力容器(RPV)ガス供給配管54がドライウェル・ガス供給配管20に接続して設けられている。原子炉圧力容器(RPV)ガス供給配管54の一端は熱交換器16の入口ヘッダー17とドライウェル・ガス供給配管隔離弁20aの間のドライウェル・ガス供給配管20に接続されている。原子炉圧力容器(RPV)ガス供給配管54は原子炉格納容器3を貫通した後、他端が原子炉圧力容器2の蒸気相2s(図19を参照)に接続している。原子炉圧力容器ガス供給配管54には原子炉圧力容器ガス供給配管隔離弁54aが設けられている。原子炉圧力容器ガス供給配管隔離弁54aは図では開の状態を示しているが通常運転時は閉鎖している。原子炉圧力容器ガス供給配管隔離弁54aには電動弁、空気作動弁、爆破弁などが使用できる。本実施形態では原子炉圧力容器ガス供給配管54の一端はドライウェル・ガス供給配管20に接続している例を示しているが、この例には限定されない。原子炉圧力容器ガス供給配管54の一端は熱交換器16の入口プレナム17に直接接続することもできる。
本実施形態にあっては、さらに、均圧弁55が設けられている。均圧弁55はスタブ配管55aによって原子炉圧力容器2の蒸気相2s(図19を参照)に接続している。均圧弁55は図5では開の状態を示しているが通常運転中は閉鎖している。図5ではスタブ配管55aは原子炉圧力容器2に直接接続している構成を示しているが、これに限定されない。例えば、主蒸気配管71(図15を参照)に接続していてもよい。スタブ配管55aは原子炉圧力容器2の蒸気相2sのガスを均圧弁55から上部ドライウェル4cに放出して原子炉圧力容器2とドライウェル4cの圧力が均圧化されるように構成されている。均圧弁55は電動弁、空気作動弁、爆破弁などを使用することができる。均圧弁55の構成は、ESBWRの減圧弁と類似している。しかし、均圧弁55は原子炉圧力容器2が低圧状態になってからだけ作動するように構成される。一方、ESBWRの減圧弁は原子炉圧力容器2が高圧状態にあるときに作動する。過酷事故時に減圧弁が高圧状態から作動すると大量の放射性物質がドライウェル4内に放出されてドライウェル4の壁面や床面などに沈着して崩壊熱を放出し続けるためドライウェル4が過温破損する虞がある。これは減圧弁を使用しているESBWRの問題の一つである。一方、均圧弁44は原子炉圧力容器2が高圧状態では作動しないため、原子炉圧力容器2内の大量の放射性物質は逃がし安全弁72(図15を参照)から圧力抑制プール6に放出される。そのため原子炉圧力容器2が減圧した後に均圧弁55を開にしても大量の放射性物質がドライウェル4に放出されてドライウェル4が過温破損することはない。この点が均圧弁55とESBWRの減圧弁との違いである。第5の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12のその他の構成は第4の実施形態と同じである。
このように構成される第5の実施形態の過酷事故時の作用について以下に説明する。SBOなどによって炉心溶融が発生して原子炉圧力容器2の底部が破損してデブリが下部ドライウェル61aの下部に落下する。デブリの熱で溶融弁64が開になりLOCAベント管8から圧力抑制プール6の水が下部D/W61aに流入し下部ドライウェル61aの下部に落下したデブリを冠水する。デブリの熱で冠水した水から大量の蒸気が発生する。蒸気は開口部66から上部ドライウェル4cに移行し窒素および水素などと混合ガスを形成する。この混合ガスは自らの圧力でドライウェル・ガス供給配管20をとおり熱交換器16内に流入する。蒸気は伝熱管19によって凝縮され出口プレナムに流入しさらに凝縮水戻り配管21をとおりウェットウェル・スパージャー53からウェットウェル気相部7に散布される(図3を参照)。即ち、熱交換器16はウェットウェル・スプレー・モードで運転される。窒素および水素は非凝縮性ガスなので凝縮せずにガスベント管22から圧力抑制プール6内にベントされる。この状態がしばらく継続するとドライウェル4内の窒素と水素はほぼ全量圧力抑制プール6内にベントされウェットウェル気相部7に移行する。その結果、約1時間もするとドライウェル4内は蒸気だけで占められるようになる。
この状態では既に原子炉圧力容器2の底部が破損しているため原子炉圧力容器2の圧力は低下していて原子炉圧力低および原子炉格納容器内放射線高の信号が発生する。この状態になったら凝縮水戻り配管隔離弁21aを閉鎖して原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aを開にして静的格納容器冷却系12は原子炉圧力容器注水モードの運転を開始する(図3を参照)。図5に示す本実施形態では、さらに、均圧弁55および原子炉圧力容器ガス供給配管隔離弁54aを開にしてドライウェル・ガス供給配管隔離弁20aを閉鎖する。これらの弁の切替は手動で行っても良いし、原子炉圧力容器圧力低および原子炉格納容器内放射線高の信号によって自動で行ってもよい。
このように弁の切替を行うと、ドライウェル4内のガスはドライウェル・ガス供給配管隔離弁20aが閉鎖したため、原子炉圧力容器2の底部の破断口および均圧弁55をとおり原子炉圧力容器2の内部に流入し自らの圧力によって原子炉圧力容器ガス供給配管54をとおり熱交換器16の内部に流入する。蒸気は伝熱管19によって凝縮され出口プレナム18に流入する。既に、静的格納容器冷却系12は原子炉圧力容器注入モードの運転を開始しているため出口プレナム18内の凝縮水は原子炉圧力容器注水配管51から原子炉圧力容器2の内部に散布される(図3を参照)。
本実施形態では、このように、ドライウェル4内の蒸気は一旦原子炉圧力容器2の内部をとおってから静的格納容器冷却系12の熱交換器16の内部に流入する。その流量は約1万m3/hと非常に大きい。下部ドライウェル61aのデブリを冠水した水から発生した蒸気は約130℃の飽和蒸気である。その蒸気が原子炉圧力容器2の内部に厖大な流量で流入し静的格納容器冷却系12に流出して行く。その過程で原子炉圧力容器2内に残存するデブリは蒸気の厖大な空冷効果で冷却される。巨大な扇風機で冷却されているのと同じ空冷効果が得られる。その結果、原子炉圧力容器2内の温度はさらに低下して約250℃~約350℃にまで低下する効果が得られる。本実施形態にあっては、低温の蒸気が原子炉圧力容器2の蒸気ドーム2e内を厖大な流量で流れるため原子炉圧力容器頭部2cの温度が低下し原子炉格納容器3の上蓋部11aの温度をさらに低下し200℃を十分に下回ることが可能になり原子炉格納容器3の上蓋11のフランジ74のシール材が劣化して大量の水素と放射性物質が運転床に漏洩することをより確実に防止することが可能になる。このように均圧弁55を開にして、原子炉圧力容器蒸気供給配管隔離弁54aを開にして、ドライウェル・ガス供給配管隔離弁20aを閉鎖してドライウェル4内の蒸気を原子炉圧力容器2内に導いて厖大な蒸気流量の空冷効果で原子炉圧力容器2内を冷却する運転方法を静的格納容器冷却系12の原子炉圧力容器内蒸気冷却モードと呼ぶ。原子炉圧力容器内蒸気冷却モードは他の運転モードと併用が可能である。
このように構成される本実施形態は、日本の原子力規制委員会(NRA)が新規制基準第42条の解説で要求する『炉内の溶融炉心の冷却機能(例えば、原子炉内への低圧注水設備)』の構成要件を満たすことができる。しかも、ポンプやその動力電源などを使用しない静的格納容器冷却系12で満たすことができる。NRAは炉内の溶融炉心の冷却機能と言っていて、その方法は低圧注水設備が例示されているだけで、これに限定していない。従って、本実施形態による蒸気の空冷効果による炉内の溶融炉心の冷却機能はNRAの要求を満たしている。本発明は、NRAが想到しえなかった革新的な方法で静的格納容器冷却系12の静的な空冷機能によって低圧注水設備の動的ポンプも動力電源も使用することなく炉内の溶融炉心の冷却機能を低コストかつ高信頼度で提供するものである。その作動のエネルギー源はデブリが発する崩壊熱である。過酷事故用の低圧注水設備と過酷事故用の動力電源を設ける必要がなくなるためコスト削減と信頼性向上を同時に達成することができる。このようにコスト削減と性能向上を同時に達成する設計の考え方を発明者はPositive Cost down Philosophyと呼んでいる。また、それを既に存在する技術である静的格納容器冷却系12で達成する設計の考え方をOff the Shelf Philosophyと呼んでいる。これらを可能にするのは、設計者の発明によって新たに創造された価値によるものである。
なお、過酷事故時にドライウェル4内の蒸気がLOCAベント管8の内部の水を押し下げて圧力抑制プール6の内部に流入する(ベントクリアと呼んでいる)ためにはドライウェル4内の蒸気の圧力が高くなる必要がある。圧力抑制プール6の水深が十分に深い場合は、ベントクリアのための必要圧力が大きくなり、原子炉圧力容器2とドライウェル4の圧力差よりも大きくなり均圧弁55を設けなくてもドライウェル4内の蒸気は原子炉圧力容器2の底部の破断個所から原子炉圧力容器2の内部に流入することが可能になる。つまり、圧力抑制プールの水深が十分深い場合には均圧弁55は必須ではない。逆に、圧力抑制プール6の水深が十分に深くない場合は、ベントクリアのための必要圧力が小さくなるためドライウェル4内の蒸気はLOCAベント管8をベントクリアして圧力抑制プール6内に流入してしまう。そうするとドライウェル4内の蒸気は原子炉圧力容器2内に流入せずに圧力抑制プール6内に流入してしまう。これを避けるために均圧弁55が有効になる。
図6は、本発明の第6の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。以下、第6の実施形態が従来のABWRと異なる点について説明する。
(第6の実施形態のPCCSの構成の説明)
図6に基づいて第6の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。第6の実施形態においては、凝縮水戻り配管21に接続してドライウェル・スプレー配管56が設けられている。ドライウェル・スプレー配管56の凝縮水戻り配管21との接続個所は、熱交換器16の出口プレナム18より下で、原子炉圧力容器注水配管51と凝縮水戻り配管21の接続個所よりも上に位置している。ドライウェル・スプレー配管56にはドライウェル・スプレー配管隔離弁56aが設けられている。ドライウェル・スプレー配管56の他端は原子炉格納容器3を貫通してドライウェル・スプレー・スパージャー56bに接続している。ドライウェル・スプレー・スパージャー56bは残留熱除去系(RHR)(図示せず)の原子炉格納容器スプレー・スパージャーを使用することができる。第6の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12のその他の構成は第5の実施形態と同じである。
このように構成される本実施形態にあっては、過酷事故時に凝縮水戻り配管隔離弁21aを閉鎖して、原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aを閉鎖して、ドライウェル・スプレー配管隔離弁56aを開にすると熱交換器16の出口プレナム18内の凝縮水をドライウェル・スプレー配管56によってドライウェル・スプレー・スパージャー56bから上部ドライウェル4c内に散布することが可能になる。このような静的格納容器冷却系12の運転方法をドライウェル・スプレー・モードと言う。出口プレナム18とドライウェル・スプレー・スパージャー56bまでの高低差は約5m以上あるため凝縮水をドライウェル4内に散布することが可能である。ドライウェル・スプレー・モードは同一の静的格納容器冷却系12内では原子炉圧力容器注水モードおよびウェットウェル・スプレー・モードとは併用することはできない。原子炉圧力容器内蒸気冷却モードおよびガスベントモードとは併用できる。ただし、別の静的格納容器冷却系12との間では他のすべての運転モードと併用することができる。
本実施形態の作用と効果について以下に説明する。主蒸気配管71(図15を参照)が原子炉格納容器3の内部で破断しその後炉心溶融事故になった場合を想定する。巨大地震が発生して主蒸気配管71が破断し、同時にSBOになると主蒸気配管破断後の炉心溶融事故になる虞がある。その場合には炉心溶融進展時に発生する大量の水素と放射性物質は主蒸気配管71の破断個所から上部ドライウェル4cの内部に放出される。水素はLOCAベント管8およびガスベント管20によって圧力抑制プール6内にベントされウェットウェル気相部7に移行する。一方、上部ドライウェル4cに放出された大量の放射性物質は一部は圧力抑制プール6に移行するもののほとんどは上部ドライウェル4cの壁面や床面に付着して崩壊熱を出し続ける。ドライウェル4cに放出された放射性物質の量は炉心燃料内部に存在していた核分裂生成物の約25%にもなる。通常の過酷事故の場合には、この約25%の核分裂生成物は逃がし安全弁72(図15を参照)によって圧力抑制プール6に移行しプール水によって冷却される。しかし、主蒸気管破断事故の場合には約25%もの核分裂生成物が主蒸気配管71の破断個所から放出されてほとんどが上部ドライウェル4cの内部に付着して気相中に存在して冷却されていない。これは福島第一事故の状況を超える恐ろしい状況である。この状態を放置すると上部ドライウェル4c内の温度は400℃を超えてしまい原子炉格納容器3は過温破損してしまう。
一方、原子炉圧力容器2内には30%を超える大量のデブリが下部ドライウェル61aに落下せずに残存している。主蒸気配管71の破断個所から放熱され冷却されるため通常の過酷事故よりも多くのデブリが炉内に残存する。しかし、原子炉圧力容器2の底部が溶融貫通して破断した後は、主蒸気配管71は大口径のため主蒸気配管71の破断口が均圧弁55と同等以上の効果を発揮してドライウェル4内の蒸気が原子炉圧力容器2の下部の破断口から流入し主蒸気配管71の破断口から流出する蒸気の流れが生じる。この蒸気の流れによって炉内に残存するデブリが冷却される空冷効果によって原子炉圧力容器2内の温度は約400℃を下回る。この状態では、炉内に残存するデブリの冷却を原子炉圧力容器注入モードによって実施することの効果と必要性はあまりない。一方、上部ドライウェル4c内の温度は付着した放射性物質の崩壊熱によって放置すれば400℃を超えてしまう。これは恐ろしい状態である。
この状況は、PWRの冷却材喪失事故の場合でも同様に発生する。コールドレグ配管破断個所から大量の核分裂生成物が原子炉格納容器の内部に放出されて壁面や床面に付着して冷却されないまま崩壊熱を放出し続ける。コアキャッチャーを設けてデブリを冷却しても、あるいは、In Vessel Retentionを実施して原子炉圧力容器の下部の溶融破損を防止してもそれだけではほとんど何の意味もないのである。原子炉格納容器の内部に付着した放射性物質の崩壊熱で原子炉格納容器は過温破損してしまうのである。特に、In Vessel Retentionを実施した場合には、原子炉圧力容器内に残存する100%のデブリからの崩壊熱で原子炉格納容器が過温破損してしまうのである。勿論、この現象に対してPWRでは原子炉格納容器の外面を直接水と空冷で冷却したり、過酷事故専用の格納容器スプレーを散布することができるようにしたり対応した設計のものがある。しかし、一部のPWRでは、過酷事故後にコアキャッチャーさえあれば良く、原子炉格納容器の気相部に付着した放射性物質の冷却を実施しない設計のものもある。これは、過酷事故時の物理現象解析コードがPWRの炉心については炉内残存デブリからの放熱を扱えるモデルがまだ開発されていないため、福島第一事故の教訓が十分に認識されていないことによっている。そのため、過酷事故時には炉内のすべてのデブリがコアキャッチャーに落下してコアキャッチャーを冠水すればあとは過圧破損に対処すればそれで済むという認識で設計が実施されているPWRもある。これは恐ろしいことである。福島第一の事故の教訓は、過酷事故時には原子炉格納容器は溶融貫通ではなくむしろ過温破損で破損するというものであったがその対策が十分には実施されていないのである。
前述のとおり、主蒸気配管破断後の過酷事故の場合は、炉内に約30%以上のデブリが残存するが、RPVの底部の破断口から主蒸気配管71の破断個所へと蒸気の流れが生じて炉内に残存するデブリは蒸気の空冷効果で冷却される。一方、主蒸気配管71の破断口から大量の放射性物質が上部ドライウェル4c内に放出され壁面や床面などに付着して冷却されないまま崩壊熱を放出し続ける。この状態を放置すると上部ドライウェル4c内の温度は400℃を超えてしまう。しかし、本実施形態にあっては、静的格納容器冷却系12をドライウェル・スプレー・モードに切り替えることによって約130℃の凝縮水を上部ドライウェル4cの内部に散布することができる。これによって上部ドライウェル4c内の温度を十分低くすることが可能になる。
図7は、本発明の第7の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。以下、第7の実施形態が従来のABWRと異なる点について説明する。
(第7の実施形態のPCCSの構成の説明)
図7に基づいて第7の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12の構成を説明する。第7の実施形態においては、逆流防止装置(水封タンク)52は、熱交換器16の出口プレナム18の下であって、ドライウェル・スプレー配管56と凝縮水戻り配管21の接続個所よりも上の凝縮水戻り配管21の部分に設けられている。第7の実施形態における静的格納容器冷却系(PCCS)12のその他の構成は第6の実施形態と同じである。
本実施形態にあっては、ドライウェル・スプレー配管56の逆流を防止できるため、通常運転時にドライウェル・スプレー配管隔離弁56aを開にしておくことができる。この状態で冷却材喪失事故が起きても上部ドライウェル4c内のガスはドライウェル・スプレー配管56を逆流しない。上部ドライウェル4c内の蒸気のほとんどはLOCA直後のブローダウン過程では大量のため上部ドライウェル4c内の窒素と混合してLOCAベント管8をとおり圧力抑制プール6内にベントされる。一部は静的格納容器冷却系12内にも流入し窒素はガスベント管22から圧力抑制プール6内にベントされる。この過程でドライウェル4内の窒素はほぼ全量がウェットウェル気相部に移行する。ブローダウン過程が終了して蒸気の発生量が静定すると上部ドライウェル4c内の蒸気はLOCAベント管8ではなく全てドライウェル・ガス供給配管20を通って熱交換器16の内部に流入するようになる。これはガスベント管22の圧力抑制プール6内の水没水深が水平ベント管8aの最上段の水没水深よりも浅いためである(図1を参照)。ドライウェル4内のガスはより水没水深の浅い経路をとおって圧力抑制プール6に移行するためである。蒸気は伝熱管19によって凝縮し凝縮水が出口プレナム18に流入する。凝縮しきれなかった蒸気と非凝縮性ガスはガスベント管22によって圧力抑制プール6にベントされる。蒸気は圧力抑制プール6内で凝縮する。非凝縮性ガスはウェットウェル気相部7に移行する。出口プレナム18に流入した凝縮水は重力によって凝縮水戻り配管21とドライウェル・スプレー配管56をとおりドライウェル・スプレー・スパージャー56bから上部ドライウェル4c内に散布される。事故発生直後の凝縮水の温度は冷却水14の温度が低いため約60℃と低温である。低温の凝縮水が上部ドライウェル4c内に散布されることによって上部ドライウェル4c内の蒸気が凝縮し原子炉格納容器3内の圧力が急速に低下する効果が得られる。従来のABWRにあっては、冷却材喪失事故が発生すると低圧注水系(LPFL)として使用していた残留熱除去系(RHR)(図示せず)を15分後に手動で切り替えて格納容器スプレーを作動させて散布するまでは原子炉格納容器3の圧力は高いままに維持されていた。また、この格納容器スプレーの手動切替に失敗すれば原子炉格納容器3の圧力はその後も高いままになってしまう虞があった。巨大地震で冷却材喪失事故が発生した場合を考えると混乱した状態で15分以内にECCSとして炉内に注水しているLPFLを格納容器スプレーに切り替えるのは容易なこととは言えない。そもそも15分ではどのような事故が発生しているかを正確に特定することも容易なことではない。しかし、本実施形態にあっては、ドライウェル・スプレー配管隔離弁56bが通常時から開になっているため、冷却材喪失事故が起こると静的格納容器冷却系12のドライウェル・スプレー・モードによって静的に、かつ、自動的に上部ドライウェル4c内に冷温水が散布されるので原子炉格納容器3の圧力が自然に低下する効果が得られる。運転員が混乱して何を行えばよいかに迷っているさなかに原子炉格納容器3の圧力は自然に低下する。冷却材喪失事故が起きると、本実施形態の静的格納容器冷却系12は発生した蒸気を低温の凝縮水に戻して上部ドライウェル4c内にスプレーとして散布することができる。
(SATORをベースにした実施形態の説明)
以下、図8から図14に基づきSever Accident Tolerant and Optimized Rector (SATOR)をベースにした実施形態について説明する。以下に説明する実施形態8から実施形態14については、炉心1、原子炉圧力容器2、原子炉格納容器3、外部ウェル32の構成は図21および図22に示す従来の第2の原子力プラント(SATOR)の構成と同じである。また、静的格納容器冷却系12の基本構成も図21および図24に示す従来の第2の原子力プラント(SATOR)の静的格納容器冷却系12の基本構成と同じである。以下の説明では重複を避けて実施形態8から実施形態14についてSATORと異なる点について要点のみを説明する。
図8から図14に示す実施形態は、RCCVと呼ばれる原子炉格納容器を使用しているが、原子炉格納容器の型式はRCCVに限定されない。圧力抑制プールによる圧力抑制機能を持つ全ての圧力抑制型の原子炉格納容器に普遍的に適用される。また、材質もSC造や鋼製など他のものも使用可能である。
また、図8から図14に示す実施形態には外部ウェル32が設けられている。外部ウェル32の材質は、鉄筋コンクリート製(RC)、SC造、鋼製など原子炉格納容器3と同じもの全てが使用可能である。鉄筋コンクリート製の場合は、原子炉格納容器3と同様に内面にライナーが敷設される。図8から図14に示す実施形態において、外部ウェル32の平面形状は矩形でドライウェル4およびウェットウェル5の外壁の一部を囲むように構成されているが、外部ウェル32の平面形状はこれに限定されない。ドライウェル4およびウェットウェル5の外壁の少なくとも一部を囲むように隣接していれば任意の形状で良い。たとえば、台形、多角形、三日月型、部分的な円環形、完全な円環形などがある。
図8は、本発明の第8の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。第8の実施形態が従来のSATOR(図21を参照)と異なる点は、第1の実施形態と同様に、原子炉圧力容器注水配管51と原子炉圧力容器注水配管隔離弁51aと凝縮水戻り配管隔離弁21aが追加されていることである。これによって過酷事故時に静的格納容器冷却系12を原子炉圧力容器注水モードで使用することができる。
SATORはABWRに比べてさらにウェットウェル・ガス供給配管48とアウターウェル32とスクラビングプール33を有し過酷事故時の原子炉格納容器3の圧力低下と放射性物質の漏洩抑制に格段の進歩を達成した原子力プラントである。ウェットウェル気相部7内に高圧の蒸気と水素と放射性物質が発生しても静的格納容器冷却系12によって蒸気を凝縮し粒子状放射性物質をスクラビングプール33で除去し水素と放射性希ガスと有機ヨウ素をアウターウェル32内に閉じ込めることができる。このため過酷事故時の原子炉格納容器3の圧力を設計圧力程度以下に抑制し原子炉格納容器3の過圧破損の可能性を排除し、かつ、周辺住民の緊急避難も不要にすることができる。また、静的格納容器冷却系12の配管のほとんどの部分がアウターウェル32の内部に設置されているため系統から放射性物質が漏洩してもアウターウェル32の内部に保持することが可能である。また、ウェットウェル気相部7とアウターウェル32の間に常に圧力差があるためガスベントファンは不要である。第8の実施形態によって過酷事故時の過温破損の防止をさらに確実に実施できるようになった。
図9は、本発明の第9の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。第9の実施形態が従来のSATORと異なる点は、第2の実施形態と同様にさらに逆流防止装置(水封タンク)52とウェットウェル・スプレー・スパージャー53が追加されていることである。これによって過酷事故時に静的格納容器冷却系12をウェットウェル・スプレー・モードで使用することができる。これによって過酷事故時に圧力抑制プールの温度成層化を防止できるようになった。第9の実施形態の静的格納容器冷却系12のその他の構成は第8の実施形態の構成と同じである。
図10は、本発明の第10の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。第10の実施形態が従来のSATORと異なる点は、第3の実施形態と同様にさらに原子炉圧力容器注水配管51の先端はシュラウドヘッド2b(図19を参照)内の高圧炉心冷却系スパージャー47に接続されていることである。これによって過酷事故時に静的格納容器冷却系12の凝縮水を炉内のデブリに直接散布することが可能になった。第10の実施形態の静的格納容器冷却系12のその他の構成は第9の実施形態の構成と同じである。
図11は、本発明の第11の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。第11の実施形態が従来のSATORと異なる点は、第4の実施形態と同様にさらに原子炉圧力容器注水配管51が高圧炉心冷却系注水配管95に接続し配管を共有して高圧炉心注水系スパージャー47に接続されていることである。これによって原子炉圧力容器2に原子炉圧力容器注水配管51のノズルを設ける必要がなくなった。第11の実施形態の静的格納容器冷却系12のその他の構成は第10の実施形態の構成と同じである。
図12は、本発明の第12の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。第12の実施形態が従来のSATORと異なる点は、第5の実施形態と同様にさらに原子炉圧力容器ガス供給配管54と原子炉圧力容器ガス供給配管隔離弁54aと均圧弁55を追加していることである。SATORの場合は圧力抑制プールの水深が深いため均圧弁55は必須ではない。これによって過酷事故時に静的格納容器冷却系12を原子炉圧力容器蒸気冷却モードで使用することが可能になった。蒸気の空冷効果によって炉内残存デブリの十分な冷却が可能になった。第12の実施形態の静的格納容器冷却系12のその他の構成は第11の実施形態の構成と同じである。
図13は、本発明の第13の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。第13の実施形態が従来のSATORと異なる点は、第6の実施形態と同様にさらにドライウェル・スプレー配管56とドライウェル・スプレー配管隔離弁56aとドライウェル・スプレー・スパージャー56bを追加していることである。ドライウェル・スプレー・スパージャー56bはRHR(図示せず)用の原子炉格納容器スプレーのスパージャーを使用することができる。これによって主蒸気配管破断の後で炉心溶融事故になった場合に静的格納容器冷却系12をドライウェル・スプレー・モードで使用することができ上部ドライウェル4c壁面や床面に付着した放射性物質の崩壊熱を冷却し上部ドライウェル4cの温度を十分に低くすることができる。第13の実施形態の静的格納容器冷却系12のその他の構成は第12の実施形態の構成と同じである。
図14は、本発明の第14の実施形態に係わる原子力プラントの原子炉格納容器まわりの構成を示す立断面図である。第14の実施形態が従来のSATORと異なる点は、第7の実施形態と同様にさらに逆流防止装置(水封タンク)52をドライウェル・スプレー配管56と凝縮水戻り配管21との接続個所よりも上流に設けたことである。これによってドライウェル・スプレー配管56からドライウェル4内のガスが逆流して静的格納容器冷却系12の熱交換器16内に流入することを防止することができるようになった。これによって通常運転時にドライウェル・スプレー配管隔離弁56aを開にしておくことによって冷却材喪失事故時に静的格納容器冷却系12をドライウェル・スプレー・モードで運転し事故発生直後からドライウェル4の減圧を行うことが可能になった。第14の実施形態の静的格納容器冷却系12のその他の構成は第13の実施形態の構成と同じである。
(その他の実施形態)
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
(図26:実施形態に共通する特徴の説明)
以下、実施形態1から実施形態14の静的格納容器冷却系12に共通する構成の特徴を図26に基づいて説明する。本発明の実施形態においては、熱交換器16の入口プレナム17に一端が接続されもう一端が原子炉格納容器3の内部に接続され原子炉格納容器3の内部のガスを熱交換器16に導く少なくとも一つのガス供給配管29が設けられている。図26では、ガス供給配管29の一端は上部ドライウェル4cの内部に接続しているが、この例には限定されない。原子炉格納容器3の内部のガスには原子炉圧力容器2の内部のガスおよびウェットウェル気相部7のガスが含まれる。また、一端が熱交換器16の出口プレナム18に接続されもう一端が前記原子炉格納容器3内の下部領域90に接続されて熱交換器16内の凝縮水を原子炉格納容器3内の下部領域90内に導く凝縮水戻り配管21が設けられている。図26では、凝縮水戻り配管21は圧力抑制プール6に導かれているが、この例には限定されない。下部領域90にはウェットウェル気相部7および下部ドライウェル61aが含まれる。さらに、本発明の実施例においては、凝縮水戻り配管21から分岐して凝縮水を原子炉格納容器3の上部領域91に注水する少なくとも一つの上部領域注水配管91aが設けられている。図26では、上部領域注水配管91aは上部ドライウェル4cに接続されているが、この例には限定されない。上部領域91は上部領域91内にある機器を含む。例えば、上部領域91は原子炉圧力容器2を含む。さらに、一端が熱交換器16の出口プレナム18に接続され出口プレナム内のガスを熱交換器16の外部に放出するガスベント管22が設けられている。ここで熱交換器16の外部には圧力抑制プール6およびスクラビングタンク33が含まれる。なお、図1から図14において、炉心1、原子炉圧力容器2および原子炉格納容器3の構成はABWRと同じものを示しているが、これに限定されない。本発明による静的格納容器冷却系12は圧力抑制型の原子炉格納容器を使用するすべての原子力プラントに使用可能である。
1…炉心、2…原子炉圧力容器(RPV)、2a…シュラウド、2b…シュラウドヘッド、2c…原子炉圧力容器頭部、2d…ダウンカマー、2e…蒸気ドーム、2f…下部プレナム、2g…原子炉圧力容器下鏡(下部ヘッド)、2s…蒸気相、3…原子炉格納容器、4…ドライウェル、4a…トップスラブ、4b…ドライウェル共通部壁、4c…上部ドライウェル、5…ウェットウェル、5a…ウェットウェル共通部壁、5b…ダイアフラム床、6…圧力抑制プール、7…ウェットウェル気相部、8…LOCAベント管、8a…水平ベント管、9…真空破壊弁、10…原子炉格納容器上蓋(PCVトップヘッド)、10a…原子炉格納容器上蓋(PCVトップヘッド)部、11…水遮蔽、12…静的格納容器冷却系(PCCS)、13…冷却水プール、14…冷却水、15…排気口、16…熱交換器、17…入口プレナム、18…出口プレナム、19…伝熱管、20…ドライウェル・ガス供給配管、20a…ドライウェル・ガス供給配管隔離弁、21…凝縮水戻り配管、21a…凝縮水戻り配管隔離弁、22…ガスベント配管、22a…ガスベントファン、22b…逆流防止弁、23…管板、24…PCCSドレンタンク、25…デブリ防護蓋、26…RPV注水配管、27…RPV注水隔離弁、28…GDCSプール、29…ガス供給配管、32…外部(アウター)ウェル、32a…トップスラブ、33…スクラビングプール、33a…上蓋、33b…空間、33c…第1の出口配管、34…金属ファイバーフィルター、34a…第2の出口配管、40…インターナルポンプ、41…ポンプデッキ、42…ディフューザー、43…気水分離器、44…蒸気乾燥器、45…蒸気乾燥器スカート、46…低圧注水系スパージャー、47…高圧炉心注水系スパージャー、48…ウェットウェル・ガス供給配管、50…給水スパージャー、51…原子炉圧力容器(RPV)注水配管、51a…原子炉圧力容器(RPV)注水配管隔離弁、52…逆流防止装置(水封タンク)、53…ウェットウェル・スパージャー、54…原子炉圧力容器(RPV)ガス供給配管、54a…原子炉圧力容器(RPV)ガス供給配管隔離弁、55…均圧弁、56…ドライウェル・スプレー配管、56a…ドライウェル・スプレー配管隔離弁、56b…ドライウェル・スプレー・スパージャー、61…ペデスタル、61a…ペデスタルキャビティ(下部ドライウェル)、62…RPVスカート(ベッセル・スカート)、63…RPVサポート(ベッセル・サポート)、64…溶融弁、65…下部ドライウェル冠水配管、66…開口部、67…冠水弁、68…冠水配管、69…逆止弁、71…主蒸気配管、72…逃がし安全弁、73…逃がし配管、74…フランジ、75…プラットフォーム、76…マンホール、77…送風ダクト、90…下部領域、91…上部領域、91a…上部領域注水配管、91b…上部領域注水配管隔離弁、92…高圧炉心注水系(HPCF)、93…高圧炉心注水系ポンプ、94…高圧炉心注水系吸込み配管、95…高圧炉心注水系注水配管、96…高圧炉心注水系外側隔離弁、97…高圧炉心注水系内側隔離弁、100…原子炉建屋

Claims (11)

  1. 炉心と、
    前記炉心を収容する原子炉圧力容器と、
    前記原子炉圧力容器内で前記炉心を取り囲むシュラウドと、
    前記シュラウドの上部に設けられたシュラウドヘッドと、
    前記原子炉圧力容器を収納するドライウェルと、前記ドライウェルとLOCAベント管を介して連結された圧力抑制プールを下部に収納し上部にウェットウェル気相部を有するウェットウェルと、前記ウェットウェル気相部内のガスを前記ドライウェルに環流する真空破壊弁と、を有する原子炉格納容器と、
    前記原子炉格納容器内で前記原子炉圧力容器をRPVスカートとRPVサポートを介して支えてその内部にペデスタルキャビティを形成するペデスタルと、
    前記ドライウェルの前記RPVスカートよりも上の空間である上部ドライウェルと、
    前記上部ドライウェルの天井を構成するトップスラブと、
    前記ウェットウェルの天井を構成し前記上部ドライウェルの床を構成するダイアフラム床と、
    前記上部ドライウェルの前記ダイアフラム床よりも上で前記トップスラブよりも下の前記原子炉格納容器の上部領域と、
    前記ダイアフラム床よりも下の前記原子炉格納容器の下部領域と、
    前記ドライウェルの上部に設置されて冷却水を貯留する冷却水プールと、
    入口プレナムと出口プレナムと伝熱管とを有し少なくとも一部が前記冷却水に水没した熱交換器と、
    一端が前記熱交換器の前記入口プレナムに接続されもう一端が前記原子炉格納容器の内部に接続され前記原子炉格納容器の内部のガスを前記熱交換器に導く少なくとも一つのガス供給配管と、
    前記ガス供給配管に設けられたガス供給配管隔離弁と、
    一端が前記熱交換器の前記出口プレナムに接続されもう一端が前記原子炉格納容器内の下部領域に接続されて前記熱交換器内の凝縮水を前記原子炉格納容器内の下部領域に導く凝縮水戻り配管と、
    上記凝縮水戻り配管に設けられた凝縮水戻り配管隔離弁と、
    前記凝縮水戻り配管から分岐して凝縮水を前記原子炉格納容器の上部領域に注水する少なくとの一つの上部領域注水配管と、
    前記上部領域注水配管に設けられた上部領域注水配管隔離弁と、
    一端が前記熱交換器の前記出口プレナムに接続され前記出口プレナム内のガスを前記熱交換器の外部に放出するガスベント配管と、
    を有する静的格納容器冷却系と、
    を備えたことを特徴とする原子力プラント。
  2. 前記上部領域注水配管の一端は原子炉圧力容器に接続され凝縮水を原子炉圧力容器に注水する原子炉圧力容器注水配管であることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項1に記載の原子力プラント。
  3. 前記ガスベント配管の一端は前記圧力抑制プールに浸漬して接続され前記ガスベント配管にガスベントファンが設けられたことを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項1に記載の原子力プラント。
  4. 前記凝縮水戻り配管の途中に逆流防止装置が設けられ前記凝縮水戻り配管の先端は前記ウェットウェル気相部に接続され前記凝縮水戻り配管は前記熱交換器内の凝縮水をウェットウェル気相部に散布できることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項1に記載の原子力プラント。
  5. 前記上部領域注水配管の一端は前記原子炉圧力容器内のシュラウドヘッドに接続され凝縮水を前記シュラウドヘッド内に注水できる原子炉圧力容器注水配管であることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項1に記載の原子力プラント。
  6. 前記上部領域注水配管の一端は高圧炉心注水系の高圧炉心注水系注水配管に接続されていることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項1に記載の原子力プラント。
  7. 前記ガス供給配管の一端は前記原子炉圧力容器に接続され前記原子炉圧力容器内のガスを前記熱交換器に供給する原子炉圧力容器ガス供給配管であることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項1に記載の原子力プラント。
  8. さらに、前記原子炉圧力容器の蒸気相に配管を介して接続された均圧弁が前記ドライウェル内に設けられ前記原子炉圧力容器の破損が生じて前記原子炉圧力容器内の圧力が低下した状態で前記原子炉圧力容器内の圧力をさらにドライウェル内の圧力と均圧化できることを特徴とする特許請求1に記載の原子力プラント。
  9. 前記上部領域注水配管は前記上部ドライウェル内のドライウェル・スプレー・スパージャーに接続され凝縮水を前記上部ドライウェル内に散水するドライウェル・スプレー配管であることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項1に記載の原子力プラント。
  10. 前記凝縮水戻り配管の途中に前記ドライウェル・スプレー配管の分岐個所よりも上流に逆流防止装置が設けられ前記ドライウェル・スプレー配管から前記ドライウェル内のガスが逆流することを防止でき通常運転時に前記ドライウェル・スプレー配管隔離弁を開にすることができることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する特許請求項8に記載の原子力プラント。
  11. さらに、前記ドライウェルと前記ウェットウェルの外部に設けられ前記ドライウェルとドライウェル共通部壁を介して隣接し前記ウェットウェルとウェットウェル共通部壁を介して隣接し前記ドライウェル共通部壁とウェットウェル共通部壁の周囲を完全に取り囲み前記ドライウェルおよび前記ウェットウェルと同等の耐圧性と気密性を有する外部ウェルと、
    前記外部ウェル内に設けられ内部に水を蓄えたスクラビングプールと、
    前記ドライウェルおよび前記外部ウェルの上部に設置されて冷却水を貯留する冷却水プールと、
    入口プレナムと出口プレナムと伝熱管とを有し少なくとも一部が前記冷却水に水没した熱交換器と、
    一端が前記熱交換器の前記入口プレナムに接続され前記外部ウェル内を通りもう一端が前記ウェットウェル気相部に接続されて前記ウェットウェル気相部内のガスを前記熱交換器に導くウェットウェル・ガス供給配管と、
    一端が前記熱交換器の前記出口プレナムに接続され前記外部ウェル内を通りもう一端が前記外部ウェル内の前記スクラビングプール内の水に浸漬して設置され前記熱交換器内のガスを前記外部ウェルに放出するガスベント配管と、を備え、
    前記ガス供給配管と前記凝縮水戻り配管と前記上部領域注水配管は少なくとも一部が前記外部ウェルの内部を通ることを特徴とする静的格納容器冷却系を有する請求項1、2、4、5、6、7、8、9、10に記載の原子力プラント。
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