JP4030074B2 - 溶融金属における酸素量の連続測定方法及び装置 - Google Patents

溶融金属における酸素量の連続測定方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融金属、特に低酸素域における溶融金属中の酸素量を連続的に測定するための方法及び該装置を実施するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より溶融金属の精錬等において、溶融金属中の酸素量を測定することが製品の品質向上のために必要不可欠であり、一般的に、ジルコニア等の固体電解質により構成された酸素濃淡電池式の酸素センサーを用いることにより酸素量を測定する方法が実施されている。
【0003】
図5に示すように、酸素センサー1は、先端部を閉塞した管状の酸素イオン導電性固体電解質素子2の先端部の内部に基準物質又は基準ガス3(以下単に基準物質という)を充填することにより基準極4を形成し、該基準極4に電気的に接続された内部電極5を設けており、固体電解質素子2を溶融金属6に浸漬せしめることにより使用され、同様に溶融金属6に浸漬される外部電極7と前記内部電極5の間で起電力を測定する。尚、前記固体電解質素子2は、ジルコニア等を主体としたセラミックスが用いられる。前記基準物質3は、例えば、NiとNiO、MoとMoO2 、CrとCr2 3 のように、金属とその金属の酸化物との混合物、又は空気その他のガスから成り、前記内部電極5は、高温雰囲気中において安定で融点が高い金属、例えば、Mo、Mo−ZrO2 等から成る。
【0004】
従って、固体電解質素子2の両側における溶融金属と基準極4の間に形成される酸素分圧差により発生する起電力E(V)を外部電極7と内部電極5により検出することにより溶融金属6中の溶存酸素量を測定する。尚、酸素量の測定に際しては、熱電対等の測温センサー8が併用され、溶融金属6の温度T(K)を同時に測定する。
【0005】
上記により測定された起電力E(V)と温度T(K)は、換算式により換算され、溶融金属中の溶存酸素量(酸素活量)を求めることができる。例えば、基準物質3がMo−MoO2 の場合、溶融金属中の酸素量hO は、次式〔数1〕により求められる。
【0006】
【数1】
Figure 0004030074
【0007】
或いは、例えば、基準物質3がCr−Cr2 3 の場合、溶融金属中の酸素量hO は、次式〔数2〕により求められる。
【0008】
【数2】
Figure 0004030074
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来における酸素量の測定方法及び装置は、一次精錬時の溶鋼等、溶融金属が比較的に酸素量を多く含む場合において、短時間のうちにスポット的に酸素量を測定する目的には適している。換言すれば、固体電解質素子2は、管状の薄肉壁を構成しているため、外側の測定部(溶鋼側の表面)の温度と内側の基準部(基準極側の表面)の温度差がほとんど発生せず、固体電解質の内外面が等温になる。
【0010】
然しながら、本発明者らが知見したところによると、二次精錬以降の溶鋼等のように、溶融金属の酸素含有量が低下している場合において、上述のような従来の方法及び装置を用いて連続的に溶融金属中の酸素を測定すると、溶融金属6と基準極4の間の酸素分圧差が極めて大きいため、固体電解質素子2が薄肉壁であると、基準極4から溶融金属側への酸素透過が顕著に発生し、固体電解質素子2の周囲において透過酸素が溶融金属と固体電解質の界面に放出され、時間経過とともに、測定界面の酸素レベルが溶融金属の酸素レベルと大きく異なり、高い酸素値を指示するという問題がある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記問題を解決するために、本発明者らが鋭意研究したところによると、酸素含有量の低い溶融金属について、酸素量を高精度の下でしかも連続的に測定するためには、固体電解質素子における基準極から溶融金属に向けて透過する酸素透過速度を極めて遅くし、固体電解質と溶融金属の界面における酸素レベルと、溶融金属中の酸素レベルとを等価に維持することが不可欠であると知得された。
【0012】
この点に関して、固体電解質素子における基準極から溶融金属に向けて透過する酸素透過速度Jは、次式〔数3〕により表される。
【0013】
【数3】
Figure 0004030074
【0014】
従って、前式〔数3〕によれば、酸素透過速度Jを抑えるためには、▲1▼固体電解素子の厚みXを大きくする、▲2▼温度Tを低くする、▲3▼外側の測定部(溶鋼側の表面)と内側の基準部(基準極側の表面)の酸素分圧差を小さくする、のうち一つ又は複数を達成することが有効である。
【0015】
このため、本発明者らは、第一に、酸素センサーを構成する固体電解質素子の厚みXを大きくするため、これを従来のような薄肉壁の管状ではなく、長尺ロッド状に形成し、該ロッドの一端を溶融金属に接触浸漬される測定部とし、他端が溶融金属に非接触で保持されると共に基準物質に接触する基準部として構成することが有利であることを知得した。
【0016】
また、第二に、長尺ロッド状に形成した固体電解質素子の温度Tを低くするためには、溶融金属に接する測定部の温度を低下せしめることは不可能であるから、基準部の温度を測定部の温度よりも低温に維持すれば良いことを知得した。
【0017】
更に、第三に、外側の測定部と内側の基準部の酸素分圧差を小さくするためには、基準部の温度を低温に維持すれば良いことを知得した。
【0018】
そこで、このような知見に基づいて形成した本発明の長尺ロッド状の固体電解質素子によれば、前述の酸素透過速度Jが抑制され、低酸素量の溶融金属について、高精度の下に酸素量を連続的に測定することが可能になる。
【0019】
ところが、このような両端において温度差を有する長尺ロッド状の固体電解質素子においては、更に解決すべき新たな問題が知見された。即ち、従来のような薄肉壁を構成する管状の固体電解質素子の場合、外側の測定部(溶鋼側の表面)と内側の基準部(基準極側の表面)は、ほとんど等温であるから、内部電極と外部電極により検出される起電力E(V)をそのまま前記〔数1〕及び〔数2〕のような換算式に適用すれば良い。然しながら、本発明のように長尺ロッド状の固体電解質素子を構成し、基準部を低温に維持した場合、該素子が両端の温度差に起因して熱起電力を生じるため、内部電極と外部電極により計測される測定起電力Eo には、本来の測定すべき酸素分圧差に基づく目的起電力Em の他、前記温度差に基づく熱起電力Ec が含まれている。従って、測定起電力Eo を前記〔数1〕及び〔数2〕のような換算式に適用しても、酸素量hO を正しく求めることができない。
【0020】
このため本発明においては、内部電極と外部電極により測定される測定起電力Eo から前述のような温度差に基づく熱起電力Ec を減じた値Em =Eo −Ec を求め、この値Em を前記〔数1〕及び〔数2〕のような換算式に適用することにより、酸素量hO を求めることにした。
【0021】
ところで、長尺ロッド状の固体電解質素子において、両端の温度差により生じる熱起電力Ec は、溶融金属に浸漬された測定部の温度TH と、溶融金属から絶縁された基準部の温度TL に基づいて、式:Ec =(TH −TL )×ゼーベック係数により求めることができる。
【0022】
従って、これにより求められた熱起電力Ec を測定起電力Eo から減じた目的起電力の値Em =Eo −Ec を前記〔数1〕及び〔数2〕のような換算式に適用すれば、本発明が目的とする所期の酸素量hO の測定が可能になる。
【0023】
また、前記熱起電力Eを算出するに際し、式、ゼーベック係数=C+C・1n・(T/T)+C・(T−T)+C/T+C/(T −T )、但し、Cは定数、Tは溶融金属温度、Tは基準部及び/又は基準極の温度、を用いてゼーベック係数を与えれば、バラツキのない精度の高い測定が可能になる。
【0024】
而して、本発明の溶融金属における酸素量の連続測定方法が手段として構成したところは、一端の測定部を溶融金属に接触浸漬され他端の基準部が溶融金属とは非接触で保持される酸素イオン導電性を有する固体電解質素子と、該素子の基準部に設けられた基準物質から成る基準極と、基準極に電気的に接続された内部電極と、溶融金属に浸漬される外部電極とを用い、前記固体電解質素子の両端間における溶融金属と基準極の酸素分圧差により発生する起電力を外部電極と内部電極により検出することにより溶融金属中の溶存酸素を測定する方法において、ロッド状に形成された固体電解質素子の先端側の測定部を溶融金属に浸漬させ、該固体電解質素子の基端側の基準部を溶融金属の湯面よりも上位に位置させることにより、前記固体電解質素子の基準部の温度を測定部の温度よりも低温に維持すると共に、該温度差により固体電解質素子に生じる熱起電力Ec を検出し、外部電極と内部電極により計測される測定起電力Eo から前記熱起電力Ec を減じた値Em=Eo −Ec に基づいて溶融金属中の溶存酸素量を測定する点にある。
【0025】
この際、前記熱起電力Ec は、溶融金属の温度TH と固体電解質素子の基準部及び/又は基準極の温度TL を測定することにより、式:Ec =(TH −TL )×ゼーベック係数により検出される。
【0026】
そして、前記ゼーベック係数は、式、ゼーベック係数=C+C・1n・(T/T)+C・(T−T)+C/T+C/(T −T )、但し、Cは定数、Tは溶融金属温度、Tは基準部及び/又は基準極の温度、により与えられる。
【0027】
そして、前記方法を実施するために、本発明の溶融金属における酸素量の連続測定装置が手段として構成したところは、溶融金属の温度を測定する測温センサーと、一端の測定部を溶融金属に接触浸漬され他端の基準部が溶融金属とは非接触で保持される酸素イオン導電性を有する固体電解質素子と、該素子の基準部に設けられた基準物質又は基準ガスから成る基準極と、基準極に電気的に接続された内部電極と、溶融金属に浸漬される外部電極とから成り、前記固体電解質素子の両端間における溶融金属と基準極の酸素分圧差により発生する起電力を外部電極と内部電極により検出することにより溶融金属中の溶存酸素を測定する装置において、前記固体電解質素子を太さ寸法≦長さ寸法となる長尺ロッド状に形成し、基準部をハウジング部材に挿着すると共に、該ハウジング部材の内部に設けた基準物質又は基準ガスから成る基準極に接続して成り、前記ハウジング部材の内部に測温手段を設けると共に、前記固体電解質素子の基準部及び/又は基準極の近傍に測温手段の測温部を配置して成る点にある。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
【0029】
図1及び図2に示すように、溶融金属、特に、二次精錬以降の溶鋼等のような酸素含有量の低い溶融金属11について酸素量を連続的に測定するため、酸素センサー12は、太さ寸法≦長さ寸法とした長尺ロッド状の酸素イオン導電性を有する固体電解質素子13を備え、該素子13の一端に溶融金属11に接触して浸漬される測定部13aを、他端に溶融金属11から非接触で保持される基準部13bを構成している。図例の場合、固体電解質素子13は、ジルコニアから成る中実丸棒状又は中実角棒状の長尺ロッドを構成し、直径(太さ)寸法と長さ寸法の比を、1:1〜50の範囲内、好ましくは、1:7〜20の範囲内、更に好ましくは、1:8に形成している。
【0030】
図2(A)に詳細を示すように、前記固体電解質素子13は、溶融金属に浸漬した際の熱緩衝と、電解質側面全周を溶融金属から電気絶縁するために、アルミナチューブから成る保護管14に挿入被覆され、耐火セメント等によりシール接着されており、測定部13aを保護管14から僅かに突出せしめている。基準部13bは、保護管14の中途部に位置し、従って、保護管14は、基準部13bを越えて延びる筒状室14aを形成する。
【0031】
前記保護管14の筒状室14aには、基準部13bに対向するように内部電極15と測温手段16が挿入され、該基準部13bに接し且つ内部電極15及び測温手段16の挿入端を埋入せしめるように基準物質17が充填されており、該基準物質17により基準極18を構成する。尚、内部電極15及び外部電極30は、MoやMoZrO2 等の各種サーメットのような高温雰囲気中において安定で融点が高い金属棒又はサーメットから成り、図示実施例の場合、Moの棒から成る。また、基準物質17は、NiとNiO、MoとMoO2 、CrとCr2 3 のように、金属と該金属の酸化物との混合物、又は空気その他の酸素基準ガスから成り、図示実施例の場合、MoとMoO2 の混合粉末から成る。
【0032】
前記測温手段16は、図2(B)に拡大して示すように、碍子管19と該碍子管19に挿通された熱電対20とから成るシース熱電対を構成し、図示実施例の場合、熱電対20は、R熱電対(白金ロジウム合金−白金)から成り、温接点を構成する測温部20aを基準部13bの近傍で基準物質17に接触しないようにアルミナ粉末等から成る絶縁剤21に埋入せしめると共に、該絶縁剤21により碍子管19の開口端をシールしている。これにより、R熱電対の白金成分が基準物質17のMo成分に触れて反応し低融点化合物を生成することにより該熱電対20を劣化することが防止される。尚、絶縁剤21は、耐火セメント22により基準部13bに接支されている。
【0033】
更に、基準極18並びに内部電極15及び測温手段16は、筒状室14aの内部においてシール剤23により保護されており、このように、図示の実施形態では、酸素センサー12のアセンブリを容易とするため、ハウジング部材28に対して、保護管14により一体化されたユニットを挿着する構成を採用している。然しながら、本発明において、固体電解質素子13、基準極18、内部電極15、測温手段16は、図示のように保護管14を介して間接的にハウジング部材14に挿着する他、保護管14を用いないで直接にハウジング部材28に挿着し、前記と同様のシール剤23によるシールする構成としても良い。
【0034】
而して、本発明方法は、前述のような酸素センサー12を用いることにより、二次精錬以降の溶鋼等のような酸素含有量の低い溶融金属11における酸素量を次のようにして連続的に測定する。
【0035】
図1に示すように、酸素センサー12は、固体電解質素子13を溶融金属11に浸漬せしめられる。この際、溶融金属11の湯面Lは、図2(A)に示すように基準部13bよりも下位に位置する。即ち、固体電解質素子13は、測定部13aを溶融金属11に浸漬するが、基準部13bを湯面Lよりも上位に位置せしめ、基準極18も湯面Lより上位に位置せしめる。このため、固体電解質素子13の測定部13aの温度TH と基準部13bの温度TL の間には温度差があり、TH <TL である。
【0036】
〔数3〕に基づいて上述したように、固体電解質素子13は、長尺ロッド状に形成されているため測定部13aと基準部13bの寸法Xを大きく構成され、しかも、温度Tについても、基準部13bを測定部13aよりも相対的に低温に維持されるので、酸素含有量の低い溶融金属11においても、基準部13bから測定部13aに向かい透過する酸素透過速度Jを可及的に抑えられる。このため、測定部13aの周囲から溶融金属11に向けて放出される酸素量が抑制され、精度の高い酸素測定を連続的に可能にする。
【0037】
そこで、溶融金属11に接する測定部13aと、基準極18に接する基準部13bとの間に形成される酸素分圧差により発生する起電力E(V)は、従来と同様に溶融金属11に浸漬された外部電極30と、前記内部電極15との間で測定される測定起電力Eo から求めることができる。
【0038】
この際、上述したように、固体電解質素子13は、測定部13aと基準部13bの温度差による熱起電力を生じているから、外部電極30と内部電極15の間において測定される測定起電力Eo から熱起電力Ec 減じた目的起電力の値Em =Eo −Ec を求めることが必要である。
【0039】
この点について、前記熱起電力Ec は、測定部13aの温度TH と、基準部13bの温度TL を検出すれば、式:Ec =(TH −TL )×ゼーベック係数により求めることができる。
【0040】
固体電解質素子13の測定部13aは、浸漬せしめられた溶融金属11と等温化しているから、図1に示すように、溶融金属11に浸漬した熱電対等の測温センサー31により検出した溶融金属の温度は、そのまま測定部13aの温度TH とみなすことができる。一方、基準部13bの温度TL は、酸素センサー12に設けた測温手段16により検出することができる。図示実施形態の構造においては、測温手段16の測温部20aは、基準部13bの近傍及び/又は基準極18の近傍の温度を測定することになるが、構造上、基準部13bの温度TL は、そのまま基準極18の温度とみなすことができる。
【0041】
従って、測温センサー31により検出した温度TH と測温手段16により検出した温度TL から熱起電力Ec =(TH −TL )×ゼーベック係数を求め、この熱起電力Ec を前述の測定起電力Eo から減じることにより、本来の酸素分圧差から生じる目的起電力の値Em =Eo −Ec を求め、この値Em を前記〔数1〕及び〔数2〕のような換算式に適用することにより、本発明が目的とする酸素含有量の低い溶融金属において、酸素量hO を連続的に測定することができる。
【0042】
この際、ゼーベック係数が「零」の近傍となるように基準部13b及び/又は基準極18の温度TL を制御することが好ましい。前述のように熱起電力Ec は、Ec =(TH −TL )×ゼーベック係数により求められるが、ゼーベック係数を温度と酸素分圧の関数として示し、ゼーベック係数が「零」の近傍となるように基準部13b及び/又は基準極18の温度TL を制御すれば、目的起電力Em が測定起電力Eo に可及的等しくなり、熱起電力Ec による補正が必要でなくなるからである。
【0043】
本発明者らの知見によれば、固体電解質素子13の酸素透過速度Jを必要十分に抑制するためには、測定部13aと基準部13bの温度差を100〜500度C以内に制御することが好ましい。従って、基準部13bを冷却するための特別な冷却構造を有しない図示実施形態の場合、長尺ロッド状とした固体電解質素子13の長さ寸法は、このような観点から定められ、特に、湯面Lから離れる基準部13bまでの距離が考慮される。或いは、溶融金属11に浸漬された測定部13aから基準部13bに至る熱伝導と基準部13bの放熱性を考慮し、測定部13aの側と基準部13bの側において固体電解質の熱容量に差を持たせるような形状にしても良い。例えば、測定部13a側の直径Daに対して基準部13b側の直径Dbを、Da<Dbに形成する等、長尺ロッド状の固体電解質素子13を異径棒状に形成しても良い。
【0044】
更には、図示していないが、ハウジング部材28と、基準部13b及び基準極18の間に、冷媒等による強制的な冷却手段を介在せしめても良く、この場合、酸素センサー12を溶融金属11に対して、基準部13bが湯面Lの下方に位置するまで浸漬しても良い。
【0045】
ところで、前述のように熱起電力Eは、E=(T−T)×ゼーベック係数により求められるが、本発明において、ゼーベック係数を式、ゼーベック係数=C+C・1n・(T/T)+C・(T−T)+C/T+C/(T −T )、但し、C〜Cは定数、Tは溶融金属温度、Tは基準部及び/又は基準極の温度、により与えることにより、更に測定精度の高い連続測定が可能になる。
【0046】
即ち、上述のように、測定起電力Eo 、目的起電力Em 、φ(TH −TL )で求められる熱起電力Ec の関係は、式(1)、Em =Eo −Ec (=φ(TH −TL ))で示される。
【0047】
式(1)のφは、エントロピ(ΔS)、基準酸素分圧(PO2 ref )、狭義のゼーベック係数(α)を用いて書き表すと、式(2)、φ=ΔS/4F+α+R/4F・lnPO2 ref となる。
【0048】
ところが、本発明者らにおいて、前記の式(2)に基づきφを一定の値として測定実験を行うと、図3に示すように、測定部13aと基準部13bの間における温度差の実測値と、計算により求められたφの値が一致せず、バラツキのあることが判明した。
【0049】
そこで、本発明者らは、前記の式(2)における右辺のそれぞれの項を全て温度(T)の関数として書き換えることにより、温度TH 、TL だけから直ちにゼーベック係数を求めることを可能とし、これにより、温度TH 、TL を入力するだけで演算処理ができ、しかも、バラツキのない高精度の下でゼーベック係数を得ることができる換算式を創出した。
【0050】
即ち、前記の式(2)における右辺のそれぞれの項は、温度(T)の関数として、次式〔数4〕、〔数5〕、〔数6〕のように示される。
【0051】
【数4】
Figure 0004030074
【0052】
【数5】
Figure 0004030074
【0053】
【数6】
Figure 0004030074
【0054】
従って、前記の〔数4〕、〔数5〕、〔数6〕を前記の式(2)に代入して整理すると、温度(T)の関数だけからなる次式〔数7〕が得られる。
【0055】
【数7】
Figure 0004030074
【0056】
前記〔数7〕において、Co 〜C4 は定数、TH は溶融金属温度、TL は基準部及び/又は基準極の温度である。定数C1 〜C4 は、熱力学的データにより定められるが、本実施例においては、C0 =−25.543、C1 =−193.249 、C2 =0.113337、C3 =40557.46、C4 =−100458である。
【0057】
そこで、本発明者らにおいて、前記〔数7〕に基づいてφを求めつつ測定実験を行った結果、図4に示すように、測定部13aと基準部13bの間における温度差の実測値と、計算により求められたφの値の間には、大きなバラツキが見られず、ほぼ放物線上に位置し、極めて高精度であることが判明した。
【0058】
【発明の効果】
従来技術によれば、二次精錬以降の溶鋼等のような酸素含有量の低い溶融金属において、高精度の酸素量測定を長時間連続して行うことがほとんど不可能であったのに対し、本発明によれば、これが可能になるという効果がある。
【0059】
特に、本発明によれば、固体電解質素子13がロッド状に形成され、先端側に測定部13aを設け基端側に基準部13bを設けることにより、測定部13aと基準部13bの間の厚み寸法Xを大きく構成し、しかも、測定部13aを溶融金属11に浸漬させ基準部13bを溶融金属11の湯面Lよりも上位に位置させることにより、測定部13aの温度よりも基準部13bの温度を低温に維持する構成であるから、酸素含有量の低い溶融金属11について酸素量を測定するに際し、基準部13bから測定部13aに向かい透過する酸素透過速度Jを可及的に抑え、測定部13aの周囲から溶融金属11に向けて放出される酸素量を抑制することができるので、高精度の下における連続測定が可能になる。
【0060】
この際、測定部13aと基準部13bの間における温度差に基づいて固体電解質素子13に生じる熱起電力Ec を検出し、外部電極30と内部電極15により測定される測定起電力Eo から、前記熱起電力Ec を減じた目的起電力の値Em =Eo −Ec を求め、該値Em を酸素分圧差により検出された本来の起電力として換算式に適用するものであるから、溶融金属中の溶存酸素量を正確に測定することができる。
【0061】
そして、前記熱起電力Ec は、従来と同様に検出される溶融金属の温度TH と、基準部13b及び/又は基準極18の近傍に測温部20aを配置した測温手段16により検出される温度TL とにより、式:Ec =(TH −TL )×ゼーベック係数に基づいて求めるものであるから、構造簡単にして容易に実施できるという効果がある。
【0062】
更に、本発明によれば、式、ゼーベック係数=C+C・1n・(T/T)+C・(T−T)+C/T+C/(T −T )、但し、Cは定数、Tは溶融金属温度、Tは基準部及び/又は基準極の温度、を用いてゼーベック係数を与えるものであるから、温度T、Tだけから直ちにゼーベック係数を求めることが可能になり、これにより、温度T、Tを入力するだけで演算処理ができ、しかも、バラツキのない高精度の下での測定を保証できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施するための装置を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明装置に使用する酸素センサーの1実施形態を示す縦断面図であり、(A)は全体を示す縦断面図、(B)は基準部及び/又は基準極の温度測定手段を示す拡大断面図である。
【図3】本発明方法を実施するに際し、従来の換算式を用いて求めたゼーベック係数と実測値を比較して示すグラフ図である。
【図4】本発明方法を実施するに際し、本発明の換算式を用いて求めたゼーベック係数と実測値を比較して示すグラフ図である。
【図5】従来技術の装置を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
11 溶融金属
12 酸素センサー
13 固体電解質素子
13a 測定部
13b 基準部
14 保護管
15 内部電極
16 測温手段
17 基準物質
18 基準極
20a 測温部
28 ハウジング
30 外部電極
31 温度センサー

Claims (4)

  1. 一端の測定部を溶融金属に接触浸漬され他端の基準部が溶融金属とは非接触で保持される酸素イオン導電性を有する固体電解質素子と、該素子の基準部に設けられた基準物質から成る基準極と、基準極に電気的に接続された内部電極と、溶融金属に浸漬される外部電極とを用い、前記固体電解質素子の両端間における溶融金属と基準極の酸素分圧差により発生する起電力を外部電極と内部電極により検出することにより溶融金属中の溶存酸素を測定する方法において、
    ロッド状に形成された固体電解質素子の先端側の測定部を溶融金属に浸漬させ、該固体電解質素子の基端側の基準部を溶融金属の湯面よりも上位に位置させることにより、前記固体電解質素子の基準部の温度を測定部の温度よりも低温に維持すると共に、該温度差により固体電解質素子に生じる熱起電力Ec を検出し、外部電極と内部電極により計測される測定起電力Eo から前記熱起電力Ec を減じた値Em=Eo −Ec に基づいて溶融金属中の溶存酸素量を測定することを特徴とする溶融金属における酸素量の連続測定方法。
  2. 溶融金属の温度TH と固体電解質素子の基準部及び/又は基準極の温度TL を測定し、式:Ec =(TH −TL )×ゼーベック係数により、前記熱起電力Ecを検出することを特徴とする請求項1に記載の溶融金属における酸素量の連続測定方法。
  3. 式、ゼーベック係数=C+C・1n・(T/T)+C・(T−T)+C/T+C/(T −T )、但し、Cは定数、Tは溶融金属温度、Tは基準部及び/又は基準極の温度、を用いてゼーベック係数を与えることを特徴とする請求項2に記載の溶融金属における酸素量の連続測定方法。
  4. 溶融金属の温度を測定する測温センサーと、一端の測定部を溶融金属に接触浸漬され他端の基準部が溶融金属とは非接触で保持される酸素イオン導電性を有する固体電解質素子と、該素子の基準部に設けられた基準物質又は基準ガスから成る基準極と、基準極に電気的に接続された内部電極と、溶融金属に浸漬される外部電極とから成り、前記固体電解質素子の両端間における溶融金属と基準極の酸素分圧差により発生する起電力を外部電極と内部電極により検出することにより溶融金属中の溶存酸素を測定する装置において、前記固体電解質素子を太さ寸法≦長さ寸法となる長尺ロッド状に形成し、基準部をハウジング部材に挿着すると共に、該ハウジング部材の内部に設けた基準物質又は基準ガスから成る基準極に接続して成り、前記ハウジング部材の内部に測温手段を設けると共に、前記固体電解質素子の基準部及び/又は基準極の近傍に測温手段の測温部を配置して成ることを特徴とする溶融金属における酸素量の連続測定装置。
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