JP4029141B2 - ダイアフラム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨構造物を構成する柱部材と梁部材との接合部分に使用されるダイアフラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄骨構造物の柱部材に用いられる角形鋼管と、梁部材に用いられるH形鋼との接合部分においては、従来、ダイアフラムと呼ばれる部材が使用されている。このようなダイアフラムとして、柱部材の外周に装着する方式のもの(例えば、特許文献1,2参照。)がある。
【0003】
特許文献1に記載のダイアフラムは、図4に示すように、角形鋼管柱91が貫通可能な可能なリング状の接合部材92と、この接合部材92の外周に連接された複数の梁連結用部材93とを備えている。角形鋼管柱91の外周にダイアフラム90を装着し、角形鋼管柱91の外周と、接合部材92の内周部分とを溶接によって接合し、梁連結用部材93の先端部に梁部材のフランジ(図示せず)を接合することによって、角形鋼管柱91と梁部材とを固定する。
【0004】
特許文献2に記載のダイアフラムは、図5に示すように、角形鋼管柱が貫通可能なリング状の接合部94と、この接合部94の外周に連接された複数の板部96とからなり、板部96にはそれぞれ梁部材との接合用ボルト孔95が設けられている。接合部94は板部96よりも嵩高の鋳鋼製または鍛鋼製であり、板部96は鋼板製である。
【0005】
このようなダイアフラム90,97を使用することにより、角形鋼管柱を切断することなく、角形鋼管柱と梁部材との接合を行うことができ、これによって、耐震性、信頼性に優れた接合構造を構築することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−65053号公報(第2−4頁、第1図)
【特許文献2】
特開2000−240150号公報(第3−5頁、第1図)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載されているダイアフラム90は全体が鋳鋼で形成され、一般的な鋳造工程を経て製作されている。すなわち、溶解した鋼を砂の鋳型に注入して凝固させることによって所定の形状、寸法のダイアフラムが作られている。このため、ダイアフラムの様々なサイズ、形状ごとに鋳型を製作する必要があるため、製造工程が煩雑となり、多品種、少量生産の要請には不向きである。
【0008】
さらに、鋳鋼製のダイアフラムの場合、鋳型に鋳込んだ後、製品全体を均等に冷却することが困難であるため、冷却速度の違いに起因する歪や変形が発生しやすい。このため、歪や変形を除去することを考慮しなければならない。
【0009】
一方、特許文献2に記載のダイアフラムは、鋳鋼製または鍛鋼製の接合部と、鋼板製の板部とが直交状態に溶接接合された構造であるため、接合部分に応力が集中しやすく、設計通りの強度あるいは信頼性が得られないことがある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、強度、信頼性に優れた柱梁接合構造を構築することのできるダイアフラムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明のダイアフラムは、角形鋼管柱と、H形鋼梁部材との接合部分に使用されるダイアフラムであって、角形鋼管柱が貫通可能な角形接合孔を有する接合部と、接合部の外周に形成された突出部と、H形鋼梁部材のフランジと接合するため突出部の先端に溶接接合されたボルト孔付きの平板部とを備え、接合部および突出部を鋳鋼または鍛鋼で一体的に形成し、平板部を鋼板で形成し、突出部の厚さを接合部の厚さより小さく且つ平板部の厚さより大きくしたことを特徴とする。
【0012】
鋳鋼または鍛鋼で形成した接合部および突出部に、鋼板で形成した平板部を接合した構造であり、鋳造などで形成されるのは接合部および突出部だけであるため、鋳造工程における冷却速度の違いに起因する歪や変形が大幅に減少する。
【0013】
また、接合部の外周に突出部を形成するとともに、この突出部の厚さを接合部の厚さより小さく且つ平板部の厚さより大きくしたことにより、鋳鋼製または鍛鋼製の接合部と、鋼板製の平板部との間に、両者の中間的な厚さの突出部が介在した状態となる。これにより、突出部と平板部との接合部分への応力集中が緩和されるため、強度、信頼性に優れた柱梁接合構造を構築することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施の形態であるダイアフラムを示す平面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図1に示すダイアフラムを用いて形成した柱梁接合構造を示す垂直断面図である。
【0015】
図1〜図3に示すように、本実施形態のダイアフラム1は、角形鋼管柱10と、H形鋼梁部材11との接合部分に使用されるものである。角形鋼管柱10が貫通可能な角形接合孔2を有する接合部3と、接合部3の外周に形成された複数の突出部4と、各突出部4の先端に接合された平板部5とを備えている。突出部4と平板部5とは当て金6付きの溶接7によって接合され、各平板部5には、H形鋼梁部材11のフランジ11fと接合するためのボルト孔13が複数個ずつ設けられている。
【0016】
接合部3および突出部4は鍛鋼で形成され、平板部5は鋼板で形成され、突出部4の厚さ4tは、接合部3の厚さ3tより小さく、且つ平板部5の厚さ5tより大きく形成されている。
【0017】
ダイアフラム1において、鋳造で形成されるのは接合部3および突出部4だけであるため、鋳造工程における冷却速度の違いに起因する歪や変形は、従来の鋳鋼製ダイアフラムに比べ、極めて小さくなっている。
【0018】
角形接合孔2を構成する接合部3の内周面3aは、接合部3の表面3bおよび裏面3dと垂直をなすように形成されている。また、内周面3aのコーナー部3cはそれぞれ滑らかな凹曲面をなしている。なお、コーナー部3cの曲率半径Rは10〜20mm程度とすることが望ましい。
【0019】
図3に示すように、ダイアフラム1の接合部3の角形接合孔2に角形鋼管柱10を挿通させ、角形鋼管柱10の外周面と、接合部3の内周面3aとの間に溶接8を施すことにより、角形鋼管柱10の外周にダイアフラム1が固定される。この場合、角形鋼管柱10の外周の平面部10aと、接合部3の内周面3aの平面部(コーナー部3cを除く部分)とが対向する部分のみを溶接し、角形鋼管柱10のコーナー部分と、接合部3の内周面3aのコーナー部3cとの間には隙間を設ける。
【0020】
これにより、製造工程に起因する残留応力が比較的多く存在し、溶接を行うと材質が劣化して強度低下が発生しやすかった角形鋼管柱コーナー部分における溶接をなくすことができる。このため、角形鋼管柱10とダイアフラム1との接合部分の信頼性が高めることができる。
【0021】
図3に示すように、H形鋼梁部材11の2つのフランジ11fの間隔に適合する距離だけ隔てて角形鋼管柱10に2つのダイアフラム1を接合した後、各ダイアフラム1の平板部5の先端面にフランジ11fの端面を当接させ、両面から固定板9で挟持するとともにボルトナット12で締結する。これによって、角形鋼管柱10にダイアフラム1を介してH形鋼梁部材11が接合された柱梁接合構造が構築される。
【0022】
このように、ダイアフラム1を使用することにより、角形鋼管柱10とH形鋼梁部材11とを直接溶接することなく接合することができるため、溶接欠陥や脆性破壊に起因する破断のおそれのない柱梁接合構造を得ることができる。
【0023】
また、図2で示したように、ダイアフラム1では、接合部3の外周に形成した突出部4の厚さ4tを、接合部3の厚さ3tより小さく、且つ平板部5の厚さ5tより大きくしているため、鋳鋼製の接合部3と、鋼板製の平板部5との間に、両者の中間的な厚さ4tの突出部4が介在した状態となっている。これにより、突出部4と平板部5との接合部分への応力集中が緩和されるため、強度、信頼性に優れた柱梁接合構造を構築することができる。
【0024】
なお、ダイアフラム1においては、接合部3の外周に互いに90度をなす4つの突出部4およびこれら突出部4に接合した平板部5を設けて4本のH形鋼梁部材11と接合できるようにしているが、これに限定するものではないので、接合すべきH形鋼梁部材の本数に応じて、接合部3の外周に1〜3つの突出部4および平板部5を設けた構造とすることもできる。
【0025】
【発明の効果】
角形鋼管柱が貫通可能な角形接合孔を有する接合部と、接合部の外周に形成された突出部と、H形鋼梁部材のフランジと接合するため突出部の先端に溶接接合されたボルト孔付きの平板部とを備え、接合部および突出部を鋳鋼または鍛鋼で一体的に形成し、平板部を鋼板で形成し、突出部の厚さを接合部の厚さより小さく且つ平板部の厚さより大きくしたことにより、鋳造工程における冷却速度の違いに起因する歪や変形が大幅に減少し、強度、信頼性に優れた柱梁接合構造を構築することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態であるダイアフラムを示す平面図である。
【図2】 図1におけるA−A線断面図である。
【図3】 図1に示すダイアフラムを用いて形成した柱梁接合構造を示す垂直断面図である。
【図4】 従来のダイアフラムを示す平面図である。
【図5】 従来のダイアフラムを示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ダイアフラム
2 角形接合孔
3 接合部
3a 内周面
3b 表面
3c コーナー部
3d 裏面
3t,4t,5t 厚さ
4 突出部
5 平板部
6 当て金
7,8 溶接
9 固定板
10 角形鋼管柱
10a 平面部
11 H形鋼梁部材
11f フランジ
12 ボルトナット
13 ボルト孔

Claims (1)

  1. 角形鋼管柱と、H形鋼梁部材との接合部分に使用されるダイアフラムであって、角形鋼管柱が貫通可能な角形接合孔を有する接合部と、前記接合部の外周に形成された突出部と、H形鋼梁部材のフランジと接合するため前記突出部の先端に溶接接合されたボルト孔付きの平板部とを備え、前記接合部および前記突出部を鋳鋼または鍛鋼で一体的に形成し、前記平板部を鋼板で形成し、前記突出部の厚さを前記接合部の厚さより小さく且つ前記平板部の厚さより大きくしたことを特徴とするダイアフラム。
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