JP4028981B2 - 航空機氷雪除去処理方法及びその処理装置 - Google Patents

航空機氷雪除去処理方法及びその処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、寒冷地空港において航空機に付着した氷雪を低温下でも凍結しない薬剤を含んだ除氷流体の散布、吹き付けで融解除去し、該融解除去した氷雪と除氷流体とを含んだ廃水を、排水基準値以下の水と減容化された濃縮薬剤に分離処理して再利用できるようにした航空機氷雪除去処理方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
航空機の主翼、尾翼、及び他の翼面に雪または氷が溜まると、航空機の空力性能が著しく低下する。そのため、寒冷地空港における航空機に溜まった雪及び氷を取り除く様々な装置、及び方法が開発されている。例えば特開平4−212699号公報には、FAA(Federal Aviation Agency:米国連邦航空局)承認規格のエチレングリコール、プロピレングリコールなどで構成した低温下でも凍結しない除氷流体(ADF:Anti Deicing Fluid)を加熱、散布できるようにした装置をトラックなどに載せ、駐機場の航空機まで搬送して散布できるようにした装置が示されている。
【0003】
しかしながら、このようにして融解、除去した航空機の氷雪には、吹き付け、あるいは散布した前記エチレングリコール、プロピレングリコールなどの低温下でも凍結しない薬剤を含む除氷流体が排水基準値以上含まれており、このような薬剤が含まれた排水をそのまま下水に放流することは地球環境上からも好ましくない。そのため、例えば除去した氷雪と除氷流体との混合廃水の水分を蒸発させてその後焼却処分する、あるいは特開平7−166149号公報に示されているように、除去された氷雪と除氷流体の混合廃液を濾過して未溶解物質を除去し、次いで限外濾過に供して特にポリマー増粘剤を除去した後、その液をイオン交換体で処理した上でグリコール及び水から構成される溶離液を蒸留し、グリコール含有率を所望の値として再生するなどのことが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこの特開平7−166149号公報に示された方法や焼却処分する方法は、廃液の濾過装置、ポリマー増粘剤の限外濾過装置、イオン交換装置、蒸留装置などの複雑な構成を必要とし、しかも航空機に付着した氷雪の融解除去後の廃液は大量の水を含むから、そのような廃液からの蒸留、消却は大量の燃料を要することとなって多大な経費がかかる。また、このような方法で除氷流体を再生すると、蒸留に際しての加熱によってエチレングリコール、プロピレングリコールなどの薬剤が変性する可能性があり、再生処理が充分に行えないという問題が生じる。
【0005】
そのため本発明においては、簡単、安価な構成で、しかも除氷流体を変性させることなく取り出すことのできる航空機氷雪除去処理方法及び装置を提供することが課題である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そのため本発明における請求項1は方法発明であって、散布手段により航空機にプロピレングリコール系除氷流体を散布して付着した氷雪を融解・除去し、除去された氷雪と前記プロピレングリコール系除氷流体との混合廃液を凍結濃縮装置に導入して、該凍結濃縮装置によってプロピレングリコール系除氷流体を除く水分を凍結させた後、該凍結した水分を解氷した後下水に排出し、
一方凍結濃縮装置によって凍結されずに濃縮したプロピレングリコール系除氷流体のみを保存タンクに回収し、更に、前記保存タンクの出口流路に介在させた流路切換手段により、前記保存タンクに回収したプロピレングリコール系除氷流体を再生する再生装置を介して前記散布手段に送り、航空機に再生プロピレングリコール系除氷流体を散布するか、若しくはプロピレングリコール系除氷流体を再生せずに処理場に送るかを選択することを特徴とする。
【0007】
そして、この請求項1の方法発明を実施する装置に関する発明である請求項2は、散布手段により航空機に付着した氷雪を融解・除去するプロピレングリコール系除氷流体を散布する氷雪除去液送給設備と、前記プロピレングリコール系除氷流体と航空機から除去された氷雪との混合廃液を処理する廃液分離設備とからなる航空機氷雪除去処理装置において、
前記廃液分離設備を、プロピレングリコール系除氷流体を除く主として水分を凍結させることでプロピレングリコール系除氷流体を濃縮回収し、前記凍結した水分を解氷した後下水に排出する凍結濃縮装置と、
前記凍結濃縮装置で凍結されずに濃縮されたプロピレングリコール系除氷流体のみを回収する保存タンクと、
前記保存タンクに回収したプロピレングリコール系除氷流体を再生する再生装置と、
保存タンク出口流路に設けた流路切換手段とよりなり、
前記流路切換手段により前記保存タンクに回収したプロピレングリコール系除氷流体前記再生装置を介して前記散布手段に送り、航空機に再生プロピレングリコール系除氷流体を散布するか、若しくはプロピレングリコール系除氷流体を再生せずに処理場に送るかを選択可能に構成したことを特徴とする。
【0008】
このように廃液分離設備を凍結濃縮装置で構成することにより、凍結濃縮装置は廃液中の主に水分のみを凍結させて他の成分を濃縮させる装置であるから、廃液の加熱処理といった工程を必要とせず、プロピレングリコール系除氷流体を変性させることなく濃縮でき、再生使用を容易にすることができる。しかも、この濃縮は各種の濾過装置や加熱、蒸発させるための蒸留装置などを必要とせず、そのため、簡単、安価で、しかも蒸留用の燃料などの不要な経済的な装置が構築できる。
【0009】
そして本装置においては、
空機への前記プロピレングリコール系除氷流体散布位置に、前記プロピレングリコール系除氷流体と航空機から除去された氷雪との混合廃液を廃液分離設備に導く廃液回収設備を設ける。
【0010】
このように構成することにより、プロピレングリコール系除氷流体が排水基準値以上含まれた廃液を全て廃液分離設備に導くことができ、地球環境的にも優れた航空機氷雪除去処理装置を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0012】
図1は本発明の実施の形態を示した航空機氷雪除去処理装置の概略ブロック図であり、図2は航空機への除氷流体散布位置における廃液回収設備の概略を示した図である。
【0013】
図中1は航空機に付着した氷雪の除去作業を行う氷雪除去エリアで、夜間作業用の夜間照明設備などを有して空港のエプロン、または誘導路に設けられ、航空機2は自走、またはトーイングによりこの氷雪除去エリア1に移動する。3は航空機2に付着した氷雪、4はFAA(Federal Aviation Agency:米国連邦航空局)承認規格などに定められたプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1−メトキシプロピル−2−アセテートなどで構成されるタイプI、若しくはモノ・プロピレン・グリコール(50%)、水(49%)、添加物(1%)などで構成されるタイプIVなどの低温下でも凍結しないプロピレングリコール系除氷流体(ADF:Anti Deicing Fluid)を散布するための散布ノズル、5はこの散布ノズル4に加熱して温めたプロピレングリコール系除氷流体を送給する氷雪除去液送給設備であり、この氷雪除去液送給設備5にはプロピレングリコール系除氷流体の貯蔵設備、プロピレングリコール系除氷流体を加熱する温水設備(温水などの貯蔵設備を含む)、プロピレングリコール系除氷流体を散布ノズル4に送給する加圧ポンプなどを含む。
【0014】
6は氷雪除去エリア1に設置されている廃液回収設備で、これは図2に示したように氷雪除去エリア1の廃液回収溝61、62、廃液回収配管63、この廃液回収配管63に流れ込んだ廃液を回収廃液保存タンク7へ送る図示していない廃液回収ポンプなどからなる。なお廃液回収溝61、62は、例えば地表部を円形として航空機のノーズギアーの荷重に耐える網構造のフタを有し、略一定間隔に設けられるが、この形状は円形だけに限らずどのような形状であっても良い。8は凍結濃縮装置で構成され、廃液中のプロピレングリコール系除氷流体を除く主として水分を凍結させ、残ったプロピレングリコール系除氷流体を回収できるようにした廃液分離設備、9は廃液分離設備8で凍結した主として水分を解氷した後保存する下水排水タンク、10は廃液分離設備8で水と分離されて濃縮回収されたプロピレングリコール系除氷流体を保存する濃縮氷雪除去液保存タンク、11は三方弁、12は濃縮されて濃縮氷雪除去液保存タンク10に保存された氷雪除去液を再生する氷雪除去液再生装置である。
【0015】
このうち廃液分離設備8を構成する凍結濃縮装置は、例えば特開2001−162267公報に開示されているように、上部に散水ノズルを配して冷凍機より冷ブライン/温ブラインの供給を受ける製氷熱交換器を有し、冷ブラインを供給している製氷熱交換器に散水ノズルから廃水を散水することで廃水中の主として水分のみを凍結させ、水分以外の成分を濃縮、回収すると共に製氷熱交換器上の結氷面を洗浄した後温ブライン供給により脱氷するようにしたもの、或いは特開2001−47034公報に示されているように、製氷用冷媒が通る冷却コイルに廃水槽からの廃水を液膜状に流下させ、着氷した氷を自然に解氷させるか清水を散布して解氷するようにしたものなど、種々の形式のものが利用可能である。
【0016】
以下、このような構成の航空機氷雪除去処理装置における動作を説明すると、まず、氷雪の付着した航空機2を自走、またはトーイングにより氷雪除去エリア1に移動する。そして、氷雪除去液送給設備5から温められたプロピレングリコール系除氷流体を加圧ポンプなどで散布ノズル4に送給し、この散布ノズル4で航空機2に吹き付けたり散布したりして氷雪を融解、除去し、地表に落下させる。この氷雪除去エリア1における地表は、図2(A)のように中央から両側にある廃液回収溝61、62方向に傾斜が設けられ、そのため融解、除去された氷雪とプロピレングリコール系除氷流体との混合廃液はこの廃液回収溝61、62に流れ込み、さらに図2(B)に示した廃液回収配管63に流れ込む。そして、廃液回収設備6を構成する図示していない廃液回収ポンプがこの廃液を回収廃液保存タンク7に送る。
【0017】
そして、航空機2から融解、除去されて回収廃液保存タンク7に集められた氷雪とプロピレングリコール系除氷流体との混合廃液は、次に廃液分離設備(凍結濃縮装置)8に送られ、この廃液中の主として水分のみが凍結されてプロピレングリコール系除氷流体が濃縮される。すなわち前記したように凍結濃縮装置は、冷媒を供給される製氷熱交換器や冷却コイルに氷雪の融解した水とプロピレングリコール系除氷流体との混合廃液を散布することにより、廃水中の主として水分のみを凍結させ、水分以外の成分を濃縮、回収することができると共に、凍結した水分を解凍することによってプロピレングリコール系除氷流体を含まない主に水成分のみを得ることができるから、水成分は下水排水タンク9へ、濃縮回収されたプロピレングリコール系除氷流体は濃縮氷雪除去液保存タンク10へ送る。
【0018】
そして下水排水タンク9に集められた排水は下水に放流し、濃縮氷雪除去液保存タンク10に集められた濃縮回収後のプロピレングリコール系除氷流体は、さらに再生使用のために三方弁11を介して氷雪除去液再生装置12に送られ、精製、再生されて再度氷雪除去液送給設備5に戻されて使用されるか、若しくは三方弁11から運搬設備やパイプなどを介して処理場に送られ、焼却処分などの処理がなされて処理される。
【0019】
このようにすることにより、簡単、安価な構成で、しかも除氷流体を変性させることなく取り出すことのできる航空機氷雪除去処理方法及び装置を提供することができる。
【0020】
【発明の効果】
以上記載の如く請求項1、及び2に記載した本発明によれば、廃液分離設備を凍結濃縮装置で構成することにより、凍結濃縮装置は廃液中の主に水分のみを凍結させて他の成分を濃縮させる装置であるから、廃液の加熱処理といった工程を必要とせず、プロピレングリコール系除氷流体を変性させることなく濃縮でき、再生使用を容易にすることができる。しかも、この濃縮は各種の濾過装置や加熱、蒸発させるための蒸留装置などを必要とせず、そのため、簡単、安価で、しかも蒸留用の燃料などの不要な経済的な装置が構築できる。
【0021】
そして本発明によれば、プロピレングリコール系除氷流体が排水基準値以上含まれた廃液を全て廃液分離設備に導くことができ、地球環境的にも優れた航空機氷雪除去処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示した航空機氷雪除去処理装置の概略ブロック図である。
【図2】 航空機への除氷流体散布位置における廃液回収設備の概略を示した図である。
【符号の説明】
1 氷雪除去エリア
2 航空機
3 航空機に付着した氷雪
4 散布ノズル
5 氷雪除去液送給設備
6 廃液回収設備
7 回収廃液保存タンク
8 廃液分離設備(凍結濃縮装置)
9 下水排水タンク
10 濃縮氷雪除去液保存タンク
11 三方弁
12 氷雪除去液再生装置

Claims (2)

  1. 散布手段により航空機にプロピレングリコール系除氷流体を散布して付着した氷雪を融解・除去し、除去された氷雪と前記プロピレングリコール系除氷流体との混合廃液を凍結濃縮装置に導入して、該凍結濃縮装置によってプロピレングリコール系除氷流体を除く水分を凍結させた後、該凍結した水分を解氷した後下水に排出し、
    一方凍結濃縮装置によって凍結されずに濃縮したプロピレングリコール系除氷流体のみを保存タンクに回収し、更に、前記保存タンクの出口流路に介在させた流路切換手段により、前記保存タンクに回収したプロピレングリコール系除氷流体を再生する再生装置を介して前記散布手段に送り、航空機に再生プロピレングリコール系除氷流体を散布するか、若しくはプロピレングリコール系除氷流体を再生せずに処理場に送るかを選択することを特徴とする航空機氷雪除去処理方法。
  2. 散布手段により航空機に付着した氷雪を融解・除去するプロピレングリコール系除氷流体を散布する氷雪除去液送給設備と、前記プロピレングリコール系除氷流体と航空機から除去された氷雪との混合廃液を処理する廃液分離設備とからなる航空機氷雪除去処理装置において、
    前記廃液分離設備を、プロピレングリコール系除氷流体を除く主として水分を凍結させることでプロピレングリコール系除氷流体を濃縮回収し、前記凍結した水分を解氷した後下水に排出する凍結濃縮装置と、
    前記凍結濃縮装置で凍結されずに濃縮されたプロピレングリコール系除氷流体のみを回収する保存タンクと、
    前記保存タンクに回収したプロピレングリコール系除氷流体を再生する再生装置と、
    保存タンク出口流路に設けた流路切換手段とよりなり、
    前記流路切換手段により前記保存タンクに回収したプロピレングリコール系除氷流体前記再生装置を介して前記散布手段に送り、航空機に再生プロピレングリコール系除氷流体を散布するか、若しくはプロピレングリコール系除氷流体を再生せずに処理場に送るかを選択可能に構成したことを特徴とする航空機氷雪除去処理装置
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