本発明は、例えば健康保険被保険者証、従業者証、社員証、会員証、学生証、キャッシュカード、有価証券、商品、外国人登録証および各種免許証等の偽造を防止することができる偽造防止印刷物および偽造防止フィルムに関するものである。
近年、カラーコピー機の発達に伴って、本物と区別し難い精巧なコピーが可能になり、例えば証券、小切手、銀行券等の偽造が発生してきている。これらの偽造された印刷物は熟練した鑑定者や特殊な鑑定装置によれば容易に贋物と鑑定し得るが、有価証券等は種類も多くかつ広範囲に流通し、一般の人が取り扱う機会が多い。そのため、全ての有価証券等の真偽判別を熟練鑑定者や特殊鑑定装置に依存することは、実用的な手段ではなく、一般の人も容易且つ瞬時に判定し得ることが望まれている。
そこで、任意の視認性画像を、観察角度を変えることにより、少なくとも視認性画像の一部を現出・消去する印刷物が提案されている(例えば、下記の特許文献1参照。)。この特許文献1に示されるような印刷物は、観察角度によって画像の有無を一見して判断でき、特別な装置及び熟練鑑定者でなくとも容易に瞬時に真偽判別できるようになっている。
特開2000−37941号公報
しかしながら、上記のような印刷物は、基材上に、任意の階調を有する2つ以上の視認性画像と背景画像を配置し、任意の階調を有する視認性画像のうち少なくとも1つの視認性画像は、少なくとも1色以上の光輝性インキからなる画像の組み合わせと、色彩の観察角度依存性の小さいインキとからなる画像との組み合わせで構成し、残りの任意の階調を有する視認性画像と上記背景画像は、少なくとも1色以上の光輝性インキからなる画像の組み合わせであり、上記任意の階調を有する2つ以上の視認性画像と背景画像とは異なる色彩の画像で構成されている。
すなわち、視認性画像と背景画像は、基材上で剥き出し状態であるため、これらの画像が他の物と擦れ合うことで消えたり、汚損する可能性がある。また、上記視認性画像と背景画像は、有価証券等の偽造防止対象物とデザインが調和しているものが好ましいが、上記視認性画像と背景画像は、視認性画像を可視光により視認することができるようになっているため、印刷物のデザインに応じて視認性画像と背景画像をデザインする必要がある。
また、上記のような印刷物では、視認性画像や背景画像は、印刷物に印刷された内容が視認性画像や背景画像により隠蔽されないよう印刷が施されていないスペース(例えば、印刷物の無地の部分や端部)に視認性画像や背景画像を配置する必要がある。このため、上記のようなスペースが狭ければ上記視認性画像や背景画像が小さくなり、視認され難くなり不便である。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐久性とデザインを向上させるとともに、偽造を防止することができる偽造防止印刷物および偽造防止フィルムの提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の偽造防止印刷物は、印刷物の被印刷面に透明の保護フィルムがラミネートされたものであって、上記保護フィルムは、透明シートに対し、所定の波長に反応して可視範囲の蛍光を発する蛍光インクにより所定の識別情報が印刷記録された蛍光印刷層と、少なくとも上記蛍光印刷層による印刷領域の全体を覆うように形成され、透過する光を乱反射させることにより自然光の下で上記蛍光印刷層を隠蔽する隠蔽層とが形成されるとともに、上記蛍光印刷層および隠蔽層が形成された側が印刷物の被印刷面に対して貼着されていることを要旨とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の偽造防止フィルムは、透明シートに対し、所定の波長に反応して可視範囲の蛍光を発する蛍光インクにより所定の識別情報が印刷記録された蛍光印刷層と、少なくとも上記蛍光印刷層による印刷領域の全体を覆うように形成され、透過する光を乱反射させることにより自然光の下で上記蛍光印刷層を隠蔽する隠蔽層と、当該透明シートの蛍光印刷層および隠蔽層が形成された側を偽造防止対象物に対して貼着しうる粘着層とが形成されていることを要旨とする。
すなわち、本発明の偽造防止印刷物によれば、印刷物の被印刷面に透明の保護フィルムがラミネートされているため、例えば定期入れや財布等の入れ物に入れて携帯しても、しわになったり傷んだりし難く、非常に耐久性に優れる。また、印刷物、蛍光印刷層、隠蔽層が透明シートによりラミネートされているため、これらが汚損することが防止される。
また、上記隠蔽層は、少なくとも上記蛍光印刷層による印刷領域の全体を覆うように形成され、自然光の下で上記蛍光印刷層を隠蔽する。したがって、自然光の下で上記所定の識別情報を隠蔽することができるため、上記所定の識別情報を使用者に意識させないようにすることができる。また、上記蛍光印刷層は、透過する光を乱反射させるため、使用者に対して印刷物にセキュリティ処理が施されていることを認識させるとともに、デザイン性に優れる。
また、上記のように、蛍光印刷層の蛍光インクは、上記隠蔽層により自然光の下では視認することができないが、例えば光や電磁波等を所定の波長で照射することで所定の識別情報を視認することができる。例えば、使用者は、印刷物が偽造されたものであるか否かを確認する場合には光や電磁波等を所定の波長で照射し、所定の識別情報が可視範囲の蛍光を発しなければ、偽造されたものであると容易に判別することができる。
また、透明シートが透明であり、自然光の元で所定の識別情報が見えないため、所定の識別情報がどのような文字、色、模様等の形態であっても上記印刷物とデザインが調和し易くなるとともに、保護フィルムを印刷物に貼着しても使用者が保護フィルムを透して印刷物(特に印刷内容)を見ることができる。これにより、上記保護フィルムを印刷物に貼着するスペースを気にする必要もなくなる。
また、上記保護フィルムは、蛍光印刷層と隠蔽層とが形成されているとともに、上記蛍光印刷層および隠蔽層が形成された側が印刷物の被印刷面に対して貼着される。したがって、偽造防止印刷物は、分解すると蛍光印刷層や隠蔽層が剥がれ、再び元の状態に戻すことが困難であるため、印刷物の真偽を容易に判別することができる。
本発明の偽造防止印刷物において、上記隠蔽層は、見る角度により反射光の色が変化する角度依存性を有する角度依存性インクにより形成され、上記保護フィルムは、少なくとも上記隠蔽層が印刷物の被印刷領域を覆うように貼着されている場合には、印刷物の印刷の色が見る角度によって変わるので、セキュリティ確認に有効である。また、上記隠蔽層に対する反射光の色が見る角度により変化するため、上記保護フィルムが使用者にとってキラキラと輝いて見えるため、印刷物のデザイン性を向上させることもできる。
また、本発明の偽造防止フィルムによれば、偽造防止対象物をラミネートすることができるため、偽造防止対象物が、例えばカード状のものである場合、それを定期入れや財布等に入れて携帯しても、しわになったり傷んだりし難く、非常に耐久性に優れる。また、透明シートにより偽造防止対象物、蛍光印刷層、隠蔽層がラミネートされているため、これらが汚損することが防止される。
また、上記蛍光印刷層は、上記隠蔽層は、少なくとも上記蛍光印刷層による印刷領域の全体を覆うように形成され、自然光の下で上記蛍光印刷層を隠蔽する。したがって、自然光の下で上記所定の識別情報を隠蔽することができるため、上記所定の識別情報を使用者に意識させないようにすることができる。また、上記蛍光印刷層は、透過する光を乱反射させるため、使用者に対して印刷物にセキュリティ処理が施されていることを認識させるとともに、デザイン性に優れる。
また、上記のように、蛍光印刷層の蛍光インクは、上記隠蔽層により自然光の下では視認することができないが、例えば光や電磁波等を所定の波長で照射することで所定の識別情報を視認することができる。例えば、使用者は、印刷物が偽造されたものであるか否かを確認する場合には光や電磁波等を所定の波長で照射し、所定の識別情報が可視範囲の蛍光を発しなければ、偽造されたものであると容易に判別することができる。
また、透明シートが透明であり、自然光の元で所定の識別情報が見えないため、所定の識別情報がどのような文字、色、模様等であっても上記偽造防止対象物とデザインが調和し易くなるとともに、偽造防止フィルムを偽造防止対象物に貼着しても使用者が偽造防止フィルムを透して偽造防止対象物を見ることができる。これにより、上記偽造防止フィルムを偽造防止対象物に貼着するスペースを気にする必要もなくなる。
また、上記偽造防止フィルムは、透明シートの蛍光印刷層および隠蔽層が形成された側を偽造防止対象物に貼着することができる。したがって、偽造防止フィルムを分解すると蛍光印刷層や隠蔽層が剥がれ、再び元の状態に戻すことが困難であるため、印刷物の真偽を容易に判別することができる。
また、上記偽造防止フィルムは、粘着層が形成されているため、予め用意された偽造防止対象物に貼着するだけで、その偽造防止対象物に容易にセキュリティ処理を施すことができる。すなわち、任意の物に対して手軽に偽造を防止することができる。また、上記偽造防止フィルムは、上記のように実質的に透明であるため、どのような偽造防止対象物ともデザインが調和し易くなり、汎用性が高くなる。
また、本発明の偽造防止フィルムにおいて、上記隠蔽層は、見る角度により反射光の色が変化する角度依存性を有する角度依存性インクにより形成され、上記透明シートのほぼ全面にわたって形成されている場合には、偽造防止対象物の色が見る角度によって変わるので、セキュリティ確認に有効である。また、上記隠蔽層に対する反射光の色が見る角度により変化するため、上記偽造防止フィルムが使用者にとってキラキラと輝いて見えるため、偽造防止印刷物のデザイン性を向上させることもできる。
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1〜図3は、本発明の第1の実施例の偽造防止印刷物の外観を示す。
図1および図2に示すように、偽造防止印刷物1は、印刷物3の被印刷面に透明の保護フィルム5がラミネートされている。本実施例の偽造防止印刷物1は、カード状の会員カードとして使用される。
上記保護フィルム5は、ポリエステル(特にPET)で形成された透明シート7に対し、所定の波長に反応して可視範囲の蛍光を発する蛍光インクにより所定の識別情報(図3に示す蛍光文字9a)が印刷記録された蛍光印刷層9と、少なくとも上記蛍光印刷層9による印刷領域の全体を覆うように形成され、透過する光を乱反射させることにより自然光(太陽の光、白熱電球の光、蛍光灯の光等の通常光)の下で上記蛍光印刷層9を隠蔽する隠蔽層11とが形成されている。
保護フィルム5における透明シート7の蛍光印刷層9および隠蔽層11が形成された側に粘着層17が設けられている。
上記印刷物3の被印刷面は、会員カードの注意事項等の印刷内容が印刷された被印刷層15が形成されている。上記保護フィルム5は、上記蛍光印刷層9および隠蔽層11が形成された側が印刷物3の被印刷面に対し粘着層17を介して貼着され、使用者は、透明シート7を透して印刷物3の被印刷面に印刷された印刷内容を視認することができる。
このように、印刷物3の被印刷面に透明の保護フィルム5がラミネートされているため、例えば定期入れや財布等の入れ物に入れて携帯しても、しわになったり傷んだりし難く、非常に耐久性に優れる。また、印刷物3、蛍光印刷層9、隠蔽層11が透明シート7によりラミネートされているため、これらが汚損することが防止される。
また、上記隠蔽層11は、少なくとも上記蛍光印刷層9による印刷領域の全体を覆うように形成され、自然光の下で上記蛍光印刷層9を隠蔽するようになっているため、自然光の下で上記所定の識別情報を隠蔽することができるため、上記所定の識別情報を使用者に意識させないようにすることができる。また、上記蛍光印刷層9は、透過する光を乱反射させるため、使用者に対して印刷物3にセキュリティ処理が施されていることを認識させるとともに、デザイン性に優れる。
また、保護フィルム5に、透明シート7の蛍光印刷層9および隠蔽層11が形成された側を偽造防止対象物(図示では、印刷物3およびその被印刷層15)12に対して貼着しうる粘着層17が形成されることにより、保護フィルム5が偽造防止対象物12の偽造を防止する偽造防止フィルムとして機能し、予め用意された偽造防止対象物12に貼着するだけで、その偽造防止対象物に容易にセキュリティ処理を施すことができる。すなわち、任意の物に対して手軽に偽造を防止することができる。また、上記保護フィルム5(偽造防止フィルム)は、上記のように実質的に透明であるため、どのような偽造防止対象物ともデザインが調和し易くなり、汎用性が高くなる。
なお、上記透明シート7としては、いわゆるPETを採用しているが、これに限定するものではなく、各種のものを用いることができる。例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,塩化ビニル樹脂,塩化ビニリデン樹脂等からなる単層のプラスチックフィルムや、複数のプラスチックフィルムのラミネートフィルム等があげられる。これらの中でも、ポリエステル、特にPETは、透明性,強靭性,電気絶縁性,寸法安定性に優れているため、好適に用いることができる。
上記のように、透明シート7として、無色で透明性のあるPETを用いているため、使用者は透明シート7を透して印刷物に書き込まれた内容をはっきり視認することができる。また、本実施例のように無色透明な透明シート7に限られず、適度に着色されたものや半透明なものを採用することもできる。
上記隠蔽層11は、本実施例では、見る角度により反射光の色が変化する角度依存性を有する角度依存性インクにより形成され、上記保護フィルム5は、少なくとも隠蔽層11が印刷物3の被印刷領域を覆うように貼着されている。
上記角度依存性インクとしては、メタリック顔料やパール顔料等を採用することができるが、本実施例では、パール顔料を用いている。パール顔料としては、雲母に反射性(高虹彩反射)を与える金属酸化物として、可視域に透明で屈折性が2.0以上ある金属酸化物を被覆したもので、例えば、Sb2S3、Fe2O3、PbO、ZnSe、CdS、Bi2O3、TiO2、PbCl2、CeO2、Ta2O5、ZnS、ZnO、CdO、Nd2O3、Sb2O3、SiOおよびInO3の単層の被覆もしくは2層に被覆することにより形成される。
雲母と金属酸化膜が組み合わされた時、その屈折率の差が0.4より大きいことから、入射した白色光の反射量が多く、また、同時に雲母と金属酸化膜の界面で副屈折を起こすことから、高虹彩反射性となり、変色効果をより効果的に助長する働きをする。この時、雲母を被覆する金属酸化膜の膜厚を制御することで任意の色調の高虹反射性を持ったパール顔料とすることができる膜厚は10〜10000オングストローム、望ましくは200〜2000オングストロームの範囲の膜厚が可視域に対して高虹彩反射性となるので望ましい。このようなパール顔料の市販のものとしては「Iriodin」(商品名、MERCK社製)等がある。「Iriodin」は、天然マイカの表面を酸化チタンおよび酸化鉄等の高屈折率の金属酸化物で被覆した安定した無機パール顔料であり、屈折率の高い酸化チタンの層と屈折率の低いマイカおよび周りの媒体との境界で反射した光が真珠光沢をもたらすものである。この「Iriodin」には、被覆された酸化チタンの膜厚を変えることによって虹彩色の特定な色を強調させることができ、このようなパール顔料は有色色料との混合物にビヒクル、添加剤を加えインキ化して用いる。
上記パール顔料は、その他にゴールドタイプやシルバータイプであってもよい。
このように、上記隠蔽層11が角度依存性インクにより形成されていると、印刷物3の印刷(印刷された文字等)の色が見る角度によって変わるので、セキュリティ確認に有効である。また、上記隠蔽層11に対する反射光の色が見る角度により変化するため、上記保護フィルム5が使用者にとってキラキラと輝いて見えるため、印刷物3全体としてデザイン性を向上させることもできる。
なお、上記隠蔽層11は、微小な凹凸を形成された層であってもよい。例えば、マット(つや消し)仕上げ、シボ状の凹凸を形成するシボ仕上げ等の加工により実現される。また、上記隠蔽層11は、上記マット仕上げ等の加工により表面が凹凸に形成され透明性のあるPET,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,塩化ビニル樹脂,塩化ビニリデン樹脂等からなる単層のプラスチックフィルムや、複数のプラスチックフィルムのラミネートフィルム等の透明シート7と同様なものであってもよい。
上記蛍光インクとしては、紫外線や赤外線等のブラックライト(不可視光線)や電磁波等が照射されることにより蛍光を発する蛍光染料、蛍光顔料等を採用することができる。本実施例では、紫外線が照射されることにより蛍光を発する蛍光顔料(ブラックライト顔料)を採用している。
図3に示すように、上記蛍光印刷層9に対してブラックライトを照射することで、蛍光印刷層9に蛍光インクで印刷された蛍光文字9aが蛍光を発する。
このように、蛍光印刷層9の蛍光インクは、上記隠蔽層11により自然光の下では視認することができないが、上記のように光や電磁波等を所定の波長で照射することで所定の識別情報を視認することができる。例えば、使用者は、印刷物3が偽造されたものであるか否かを確認する場合には光や電磁波等を所定の波長で照射し、所定の識別情報が可視範囲の蛍光を発しなければ、偽造されたものであると容易に判別することができる。
また、透明シート7が透明であり、自然光の下で所定の識別情報が見えないため、所定の識別情報がどのような文字、色、模様等の形態であっても上記印刷物3とデザインが調和し易くなるとともに、保護フィルム5を印刷物3に貼着しても使用者が保護フィルム5を透して印刷物3(特に印刷内容)を見ることができる。これにより、上記保護フィルム5を印刷物3に貼着するスペースを気にする必要もなくなる。
また、上記保護フィルム5は、蛍光印刷層9と隠蔽層11とが形成されているとともに、上記蛍光印刷層9および隠蔽層11が形成された側が印刷物3の被印刷面に対して貼着される。したがって、偽造防止印刷物1は、各層に分解すると蛍光印刷層9や隠蔽層11が剥がれ、再び元の状態に戻すことが困難であるため、印刷物3の真偽を容易に判別することができる。また、各層をもろく形成することで、再び元の状態に戻すことが一層困難となり、セキュリティ性が強化される。
図4〜図7は、本発明の第2の実施例を示す。
図4〜図6に示すように、本実施例の偽造防止印刷物1は、台紙21により保持されている。具体的には、上記台紙21は、上記印刷物3を含む偽造防止対象物12と、保護フィルム5とを含んで構成されている。上記印刷物3と上記保護フィルム5との積層部には、切り取り線(切れ込み)23で囲まれた切り離し可能なカード部61が設けられている。そして、カード部61は、切り取り線23に沿って切り取ることで台紙21から切り離すことができるようになっている。
本実施例では、台紙21から切り離されたカード部(偽造防止印刷物1)61は、カード状の健康保険被保険者証として使用される。それ以外は、上記第1の実施例と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、上記第1の実施例と同様の作用効果を奏する。
上記保護フィルム5のカード部61を形成する切り取り線23は、断続的な切れ込み(いわゆるミシン目)からなるものである。このため、カード部61を切り離す前は、カード部61が台紙21から容易に切り離されないように保持するとともに、カード部61の切り離しが必要になったときには、切り取り線23から保護フィルム5のカード部61を容易に切り離すことができる。
このように、予め被印刷層15に印刷記録された印刷物3に対して保護フィルム5を貼着し、その保護フィルム5を貼着した領域内に上記のような切り取り線23を設け、台紙21からカード部61を切り離すことにより、印刷物3の片面全域がラミネートされた偽造防止印刷物1を容易に作成することができる。また、偽造防止印刷物1が台紙21に保持されているため、その台紙21の余白部分に偽造防止印刷物1に関する情報を書き込むことができる。この偽造防止印刷物1に関する情報としては、例えばカード番号やカードの発行先の情報(申し込み者に関する情報等)である。これにより、カードの発行元において、発行先の情報を一元的に管理することができる。
図7(A)に示すように、使用者は、偽造防止印刷物1を自然光の下で見ると、蛍光文字9aが視認できないが、図7(B)に示すように、蛍光印刷層9に対して紫外線を照射すると、蛍光文字9aが蛍光を発し、蛍光文字9aを視認できる。
図8〜図11は、本発明の第3の実施例を示す。
図8および図9に示すように、本実施例の偽造防止印刷物1は、印刷物3の透明シート7に対して反対側の面に貼着用粘着層33が形成され、さらに、その貼着用粘着層33に剥離シート35が積層され、偽造防止用のセキュリティシールとして使用することができる。
上記剥離シート35の貼着用粘着層33側の面には、図示していないシリコーン被覆層が形成されている。上記易剥離加工としては、貼着用粘着層33から容易に剥離できるものであれば特に限定するものではなく、例えば、フッ素樹脂コーティング、シリコーンフッ素樹脂コーティング、エンボス加工、ブラスト加工等が採用される。
図10(A)に示すように、印刷物3の被印刷面には「SECURITY」と印刷文字15aが印刷記録され、偽造防止印刷物1の表面(透明シート7側の面)から保護フィルム5を透して「SECURITY」と印刷された印刷文字15aを視認することができる。図10(B)に示すように、偽造防止印刷物1の裏面(印刷物3側の面)には、上述のように、貼着用粘着層33、剥離シート35の順に積層されている。このため、剥離シート35を剥がし、保護フィルム5の貼着用粘着層33側の面を偽造防止対象物に対して貼着することができる。
図11に示すように、偽造防止印刷物1を偽造防止対象物としての会員カード39に貼着することで会員カード39の偽造を防止することができる。使用者は、図11(A)に示すように、偽造防止印刷物1を自然光の下で見ると、蛍光文字9aが視認できないが、図11(B)に示すように、紫外線を照射すると、蛍光文字9aが蛍光を発し、蛍光文字9aを視認できる。
このように、貼着用粘着層33が形成されているため、予め用意された会員カード39等の偽造防止対象物に貼着するだけで、その偽造防止対象物に容易にセキュリティ処理を施すことができる。すなわち、任意の物に対して手軽に偽造を防止することができる。
図12〜図22は、本発明の第4の実施例を示す。
図12〜図14に示すように、本実施例では、上記第2の実施例と同様に、偽造防止印刷物1は、台紙40により保持されている。この台紙40は、第1接着層41(図14)を有する印刷物である印刷用シート43と、一面が印刷用シート43の第1接着層41に対して剥離可能に積層された剥離シート45と、第2接着層47(図14)を有し、第2接着層47が剥離シート45の他面に対して剥離可能に積層された保護フィルム5とを備える。印刷用シート43と剥離シート45と保護フィルム5との積層部には、切り取り線(切れ込み)51,53で囲まれた切り離し可能なカード状の偽造防止印刷物1が設けられている。そして、カード状の偽造防止印刷物1のうち印刷用シート43と剥離シート45とが第1接着層41を介して積層された状態で保護フィルム5と第2接着層47を残して剥離しうるようになっている。それ以外は、上記第1の実施例と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。また、上記第1の実施例と同様の作用効果を奏する。
上記切り取り線51は、断続的な切れ込み(いわゆるミシン目)からなるものである。このため、偽造防止印刷物1を切り離す前は、偽造防止印刷物1が台紙40から容易に切り離されないように保持するとともに、透明シート7の切り離しが必要になったときには、切り取り線51から透明シート7のカード部61を容易に切り離すことができる。
上記切り取り線53は、上記印刷用シート43から剥離シート45にわたり、実質的に連続する切れ込みからなるものである。このため、カード部61のうち剥離シート45と印刷用シート43を透明シート7から容易に剥離することができる。
つぎに、図15〜図22を参照して、本実施例の偽造防止印刷物1の作成手順の一例について説明する。なお、図15では、それぞれ台紙40の一部を省略して示している。
まず、図15(1)に示す印刷用シート43の印刷面は、図16に示すように、印刷用シート43の印刷面に、偽造防止印刷物1(図20参照)の表および裏となる面に手書き,ゴム版,捺印,印刷などの自由な書き込みが行なわれた状態である。この後、図15(2)および図17に示すように、カード部61のうち印刷用シート43と剥離シート45とが積層された状態で保護フィルム5から剥離する。このとき、切り取り線53は、実質的に連続する切れ込みからなるものであるため、保護フィルム5から印刷用シート43と剥離シート45とが積層されたカード部61を容易に剥離することができる。また、保護フィルム5のカード部61が断続的な切れ込み51で囲まれているため、保護フィルム5のカード部61が不用意に切り離されてしまうことが防止される。
また、上記第2接着層47の接着力は第1接着層41の接着力より弱いものが使用されているため、印刷用シート43と剥離シート45とが剥離してしまうことを防止され、カード部61のうち印刷用シート43と剥離シート45とが積層された状態で保護フィルム5から剥離し易くなっている。
ついで、図15(3)に示すように、保護フィルム5から剥離した印刷用シート43と剥離シート45とが積層されたカード部61を裏返す。この後、図15(4)および図18に示すように、印刷用シート43と剥離シート45とが積層されたカード部61の印刷用シート43の印刷面が台紙40に残された保護フィルム5のカード部61に対面するように、上記第1接着層41を介して保護フィルム5と接着させる。
このようにすることで、図15(5)および図18に示すように、印刷用シート43の印刷面が保護フィルム5によってラミネート(ラミネート加工)される。すなわち、カード部61が上記第3の実施例と同様の構成となる。
つぎに、図15(6)および図19に示すように、台紙40からカード部61を構成する剥離シート45と印刷用シート43と保護フィルム5との積層体を、切り取り線51,53から切り離す。このようにすることで、図15(7)に示すように、剥離シート45と接着した印刷用シート43の印刷面が保護フィルム5によってラミネートされたカード部61が台紙40から分離する。
ついで、図15(8)および図20に示すように、剥離シート45と印刷用シート43と保護フィルム5からなるカード部61から剥離シート45を剥離する。これにより、上記第1接着層41が剥き出しになる。この後、図21(A)に示すように、上記第1接着層41を剥き出しにした状態のカード部61を2つ用意し、図15(9)および図21(B)に示すように、そのカード部61とカード部61とを第1接着層41を介して貼り合わせる(接着させる)。ここで、カード部61とカード部61とを貼り合わせない場合、1つのカード部61を上記第3の実施例と同様に用いることもできる。
上記のようにカード部61とカード部61を貼り合わせることで、図15(10)および図21に示すように、両面に自由な書き込みがされ、保護フィルム5によってラミネートされたカード(カード部61とカード部61が貼り合わされた積層カード)ができる。
したがって、使用者は、印刷面に自由な書き込みを行ない、その面にラミネート加工を手軽に施すことができるため、自分の趣向に応じ、耐久性に優れたカードを気軽に作成することができる。このように、使用者は、台紙40から手軽に耐久性に優れ、用途に応じたカードを得ることができるため、カードをさまざまな用途に使用することができる。
なお、上記各実施例において、磁気記録層を設けてもよい。この場合、例えば、前述の透明シートと印刷物の間に磁気テープや磁気フィルムを挟み込んでもよい。こうすることにより、診察券や会員証等だけでなく、情報が記録できる磁気記録カード等として銀行カードや住民カード,クレジットカード,プリペイドカード等、各種の用途に用いることができ、便利である。
また、上記磁気記録層と同じようにICチップや読み書き用のアンテナを設けてもよい。これにより、例えば、高密度情報が記録できるICカードやメモリカード等として利用でき、プリペイドカードやゲームカード等各種の用途に用いることができる。
また、上記各実施例において、前述の透明シートにいわゆるホログラムを設けてもよい。ホログラムを設けることにより、カードの信憑性やデザインを一層向上させることができる。また、前述の印刷用シート、剥離シート、透明シートの厚み,素材,硬さ,形状,色彩,模様等は、任意に設定することができる。これにより、使用者にバラエティーに富んだカードを提供することができる。
上記各実施例では、切り離し可能なカード部が略長方形であるものを例示したが、これに限定するものではなく、ハート型や星型等各種の形状にすることもできる。
本発明の第1の実施例の偽造防止印刷物を示す図である。
偽造防止印刷物を示す断面図である。
紫外線が照射されている偽造防止印刷物を示す図である。
第2の実施例の偽造防止印刷物を示す斜視図である。
偽造防止印刷物を示す展開図である。
偽造防止印刷物を示す断面図である。
偽造防止印刷物に対して紫外線が照射されていない状態と紫外線が照射されている状態を示す図である。
第3の実施例の偽造防止印刷物を示す図である。
偽造防止印刷物を示す断面図である。
偽造防止印刷物の表面と裏面を示す図である。
偽造防止印刷物に対して紫外線が照射されていない状態と紫外線が照射されている状態を示す図である。
第4の実施例の偽造防止印刷物を示す斜視図である。
偽造防止印刷物を示す展開図である。
偽造防止印刷物を示す断面図である。
カードの作成手順を示す断面図である。
台紙の印刷用シート側を示す平面図である。
台紙の印刷用シート側の拡大図である。
偽造防止印刷物を示す断面図である。
台紙から切り離されたカード部の拡大図である。
剥離シートが剥がされている偽造防止印刷物を示す図である。
カード部の貼り合わせを示す図である。
カードの表面と裏面を示す図である。
符号の説明
1 偽造防止印刷物
3 印刷物
5 保護フィルム
7 透明シート
9 蛍光印刷層
9a 蛍光文字
11 隠蔽層
12 偽造防止対象物
15 被印刷層
15a 印刷文字
17 粘着層
21 台紙
23 切り取り線
33 貼着用粘着層
35 剥離シート
39 会員カード
40 台紙
41 第1接着層
43 印刷用シート
45 剥離シート
47 第2接着層
51 切り取り線
53 切り取り線
61 カード部