JP4028200B2 - 垂直磁気記録ヘッドおよび磁気ディスク装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、垂直磁気記録ヘッドとこれを用いた磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
垂直磁気記録方式は記録媒体を膜厚方向に磁化することでデータを記録する方式であり、長手記録方式に比べて高密度化が可能であるとして、近年研究・開発が盛んに行われている。
【0003】
図10に、この垂直記録方式の磁気ヘッド(以下「ヘッド」と称す)の記録磁極と垂直磁気記録媒体(以下「記録媒体」と称す)の磁化の様子を示す。同図に示すように、ヘッドの記録磁極101のトレーリング端103の端点とリーディング端105の端点とを繋ぐ2つの辺107,109はヘッド中心線Cに対して所定の角度θ1をもたせてあり、この角度θ1は、ヘッド中心線Cとヘッド走行方向との最大スキュー角θmax に依存して決められる。
【0004】
このため記録磁極101の形状は、結果的にトレーリング端103の幅Wtがリーディング端105の幅Wrより長い四角形状(台形)をなしたものとなっている。なお、リーディング端105の幅Wrについての規定は特にない。
【0005】
このような記録磁極101による記録媒体の磁化は以下のように行われる。図10において、111は記録媒体における磁化反転単位である磁気クラスタとその磁化の方向を示したものであり、記録媒体面に対して垂直上向きに残留する磁化を+、垂直下向きに残留する磁化を−で表している。
【0006】
記録磁極101の直下の記録媒体では、記録磁極101のトレーリング端103から発生する漏洩磁界によって記録媒体の磁化状態に変化が起こる。最終的に記録媒体の残留磁化はトレーリング端103で決定されるが、記録媒体の残留磁化の初期状態は記録磁極101のリーディング端105での磁化状態にも依存する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の垂直磁気記録ヘッドの記録磁極の形状によると、リーディング端105で記録媒体の広い幅にわたって同方向磁界が加わるため、この磁界が加えられた部分の磁化はエネルギー的に不安定である。したがって、磁極通過後に磁化のエネルギー安定化のために逆磁区ができやすい。このため隣接する磁化転移間の距離が長い低密度周波数記録において、図11に示すように顕著な減磁が起こりやすく、S/Nが劣化するおそれがあった。
【0008】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、低密度周波数記録での減磁を抑制でき、S/Nの良好な記録信号の形成が可能な垂直磁気記録ヘッドおよび磁気ディスク装置の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、第1の発明の磁気ディスク装置は、ディスク状の記録媒体と、この記録媒体を磁化する記録磁極を有する垂直磁気記録ヘッドを備え、前記垂直磁気記録ヘッドの前記記録磁極が、ヘッド走行時かつ記録時に前記記録媒体に単一の平面から磁界を加えると共に、前記記録磁極の平面形状が、トレーリング端とリーディング端との間の部分の幅が前記トレーリング端から前記リーディング端に向けて減少する形状をなし、かつ前記リーディング端の幅が、このリーディング側の端で同時に磁化反転される前記記録媒体の磁気クラスタの数が1ないし2となるように設定されてなるものである。
【0010】
この発明によれば、記録磁極が記録媒体上を通過するとき、記録磁極のリーディング端で同時に記録媒体の1ないし2の磁気クラスタの磁化反転が起き、以降徐々にトラック幅方向に磁化反転が伝播するので、エネルギー的に安定した磁化転移形成が起こり、隣接する磁化転移間の距離が長い低密度周波数記録における減磁を抑制することができ、S/Nの良好な記録信号形成が可能になる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態にかかる垂直磁気記録ヘッドを採用した磁気ヘッドの構成を示す斜視図、図2はこの磁気ヘッドをABS(Air Mearing Surface)面から見た図である。
【0013】
この実施形態は記録再生分離型の磁気ヘッドであり、記録ヘッドには単磁極型薄膜ヘッドが用いられ、再生ヘッドにはMR(Magnetoresistive:磁気抵抗効果)ヘッドが用いられている。
【0014】
記録ヘッドは、高飽和磁束密度合金からなる記録磁極31とコイル33とで構成される。再生ヘッドは、シールド膜35,37とMR膜39とで構成される。これらは、トレーリング側からリーディング側に向けて、記録ヘッドの記録磁極31、再生ヘッドのシールド膜35、MR膜39、シールド膜37の順で配置されている。
【0015】
垂直磁気記録媒体(以下「記録媒体」と称す)21には、基板23上に軟磁性層25と媒体面に対して垂直方向に異方性を示す強磁性層27を順に積層してなる二層膜媒体が用いられている。
【0016】
図3に、本実施形態の垂直磁気記録ヘッドにおける記録磁極31の形状の詳細を示す。同図に示すように、記録磁極31のトレーリング端43の幅Wtはトラック幅に依存して決められており、例えば0.3μm程度である。一方、記録磁極31のリーディング端45の幅Wrは0.01〜0.03μm程度である。すなわち、この記録磁極31は、全体として、トレーリング端43とリーディング端45との間の部分の幅が連続的に変化する台形もしくは四角形の平面形状をなしている。そして記録磁極31のリーディング端45の幅Wrは記録媒体41における磁化反転単位である磁気クラスタ47の径をRとして、次式を満足するように設定されている。
【0017】
Wr≦2R ・・・(1)
【0018】
以下に、その理由を説明する。図4に、本実施形態の記録磁極31による記録媒体41の磁化の様子を示す。同図において、47および47a〜47eは記録媒体41における磁化反転単位である磁気クラスタとその磁化の方向を示しており、記録媒体面に対して垂直上向きに残留する磁化を+、垂直下向きに残留する磁化を−で表している。
【0019】
この垂直磁気記録ヘッドはWr<Rの場合の例である。記録磁極31が記録媒体41上を通過するとき、記録磁極31のリーディング端45で1つの磁気クラスタ47の磁化反転が起こり、徐々にトラック幅方向に磁化反転が伝播する。例えば、47a〜47eのクラスタ列において、磁気クラスタ47aとこれに隣接する磁気クラスタ47b,47cの磁化反転は時間がずれて起こり、同様に磁気クラスタ47b,47cとこれに隣接する磁気クラスタ47d,47eの磁化反転も時間がずれて起こる。したがって、エネルギー的に安定した磁化転移形成が起こり、図5に示すように、隣接する磁化転移間の距離が長い低密度周波数記録における隣接磁化転移間の減磁を抑制できる。よって、S/Nの良好な記録信号の形成が可能になる。
【0020】
また、2R≧Wr>Rの場合、図6に示すように、記録磁極31のリーディング端45で同時に2つまでの磁気クラスタ47f,47gが磁化反転するが、この場合、磁気クラスタ47f,47gの両側に磁化の向きが逆方向の磁気クラスタ47h,47iが両側に存在することによって、やはりエネルギー的に安定した磁化転移形成が可能である。
【0021】
以上の理由により、記録磁極31のリーディング端45の幅Wrは、記録媒体41の1ないし2の磁気クラスタを同時に磁化反転し得るような寸法に設定することが磁化エネルギー的に安定した磁化転移形成のための条件となる。
【0022】
(記録磁極の変形例)
図7に記録磁極の変形例を示す。この記録磁極51は、トレーリング端53とリーディング端55との間の部分を階段状に形成したものである。すなわち、この実施形態の記録磁極51は、トレーリング端53とリーディング端55との間の部分の幅がトレーリング端53からリーディング端55に向けて離散的に減少する多角形をなしている。リーディング端55の幅Wrと各段差部のリーディング側の幅Wr1,Wr2,Wr3は、記録媒体の1ないし2の磁気クラスタを同時に磁化反転し得る寸法に設定されるものとする。このような段差形状の記録磁極51によっても、安定した磁化反転形成が可能となり、S/Nの良好な記録信号形成が可能になる。
【0023】
図8に記録磁極の別の変形例を示す。この記録磁極61は、リーディング端55を円弧状に形成したものである。この場合も、リーディング端55の曲率半径を記録媒体の1ないし2の磁気クラスタ47を同時に磁化反転し得る寸法に設定すればよい。
【0024】
(磁気ディスク装置について)
以上説明した実施形態の垂直磁気記録ヘッドは例えば図9に示されるようなハードディスクドライブに採用される。
【0025】
このハードディスクドライブ1は、2枚のプラッター(固定ディスク)2、3を組み込んだ2.5インチ型ハードディスクアレイである。2枚のプラッター2,3は図示しないスピンドルモータの駆動軸にハブ(図示せず)とクランパ4によって取り付けられている。ヘッド・アクチュエータ15は、前記の垂直磁気記録ヘッド5を先端に支持したサスペンション6とステンレス製薄板アーム7とからなるヘッドアームアセンブリを三体積層してなる積層キャリッジとこの積層キャリッジを回動自在に支持する軸受構造とで構成されている。ヘッド・アクチュエータ15はVCM(ボイスコイルモータ)10によって駆動される。
【0026】
以上の構造体は収容ケース8内に収容され、これに上蓋9が被せられて内部が密閉される。上蓋9はネジ11によって収容ケース8に固定される。なお、上蓋9が被せられた収容ケース8の内部の密閉度を高めるために、収容ケース8と上蓋9とはガスケット(図示せず)が挟んで密接される。
【0027】
また、収容ケース8の裏側面にはDRAM、ハードディスクコントローラ(HDC)、サーボ制御回路などが実装されたメインのプリント基板がネジなどによって取り付けられている。このメインのプリント基板は収容ケース8の内部に配置された、記録・再生用プリアンプなどを実装した内部プリント基板12と電気的に接続され、さらにこの内部プリント基板12はフレキシブルプリント基板13を通じてヘッド・アクチュエータ15の積層キャリッジの部分にネジなどにより固定されている。
【0028】
以上説明したように、この実施形態によれば、記録磁極のリーディング端の幅Wrを、記録媒体41の磁気クラスタ47を同時に1ないし2個まで磁化反転し得るような寸法に設定することによって、隣接する磁化転移間の距離が長い低密度周波数記録における隣接磁化転移間の減磁を抑制でき、S/Nの良好な記録信号の形成が可能となる。より具体的には、記録磁極のリーディング端の幅WrをWr≦2R(ただし、Rは磁気クラスタの径)を満足するように選定すればよい。
【0029】
なお、本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、エネルギー的に安定した磁化転移形成が可能で、特に隣接する磁化転移間の距離が長い低密度周波数記録での減磁を抑制でき、S/Nの良好な記録信号形成が可能な垂直磁気記録ヘッドおよび磁気ディスク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態にかかる垂直磁気記録ヘッドを採用した磁気ヘッドの構成を示す斜視図である。
【図2】図1の磁気ヘッドをABS面から見た平面図である。
【図3】図2の垂直磁気記録ヘッドにおける記録磁極の形状の詳細を示す図である。
【図4】Wr<Rの条件を満たす記録磁極による記録媒体の磁化の様子を示す図である。
【図5】本実施形態の低密度周波数記録における隣接磁化転移間の減磁の抑制効果を示す図である。
【図6】2R≧Wr>Rの条件を満たす記録磁極による記録媒体の磁化の様子を示す図である。
【図7】本発明にかかる記録磁極の変形例を示す図である。
【図8】本発明にかかる記録磁極の別の変形例を示す図である。
【図9】この実施形態の垂直磁気記録ヘッドを採用したハードディスクドライブを示す斜視図である。
【図10】従来の垂直記録方式の磁気ヘッドの記録磁極と垂直磁気記録媒体の磁化の様子を示す図である。
【図11】低密度周波数記録における磁化転移間の減磁を示す図である。
【符号の説明】
1……ハードディスクドライブ
5……垂直磁気記録ヘッド
31……記録磁極
41……記録媒体
43……トレーリング端
45……リーディング端
47……磁気クラスタ
Wr……リーディング端の幅
Wt……トレーリング端の幅

Claims (2)

  1. ディスク状の記録媒体と、この記録媒体を磁化する記録磁極を有する垂直磁気記録ヘッドを備え、
    前記垂直磁気記録ヘッドの前記記録磁極が、ヘッド走行時かつ記録時に前記記録媒体に単一の平面から磁界を加えると共に、前記記録磁極の平面形状が、トレーリング端とリーディング端との間の部分の幅が前記トレーリング端から前記リーディング端に向けて減少する形状をなし、かつ前記リーディング端の幅が、このリーディング側の端で同時に磁化反転される前記記録媒体の磁気クラスタの数が1ないし2となるように設定されてなることを特徴とする磁気ディスク装置。
  2. 請求項1記載の磁気ディスク装置において、
    前記垂直磁気記録ヘッドの前記記録磁極のリーディング端の幅をWr、前記記録媒体の磁気クラスタの径をRとして、Wr≦2Rの式を満足するようになしたことを特徴とする磁気ディスク装置。
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