JP4026053B2 - 膜ライニング貯槽 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、液体や気体を貯蔵する貯槽の内壁面を、膜体にて被覆ライニング形成する膜ライニング貯槽に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
腐食性ガスを有する液体や気体を貯蔵する貯槽、例えば滅菌用塩素ガスを溶存した上水道水などの液体を貯蔵する配水池、原油や液化ガスを貯蔵する貯槽、酒類や糖蜜等の飲食材、薬剤などの液体を貯蔵する各種貯槽、腐食性を有する気体を貯蔵する貯槽などがある。
これらの貯槽は、一般に金属製或いはコンクリート製の貯槽であり、内容物に含まれる塩化水素、硫化水素、アンモニアなどの腐食性ガスや、酸、アルカリなどの腐食性を有する液体貯蔵物によって、屋根や側壁や底壁が損傷されないように、その内壁面は塗装などの重度の防食対策が採られたり、ステンレス鋼などの高価な高耐食性鋼材が使用されている。
【0003】
上記防食塗装が施された従来一般の貯槽においては、防食塗装材料の耐久性が低いため、長期間使用していると内壁面に施工された塗膜などが剥離し、金属製或いはコンクリート製の壁面が侵され損傷し劣化する心配があった。
そこで、定期的に貯槽内部を空にして、点検や補修などのメンテナンスを必要としていた。
【0004】
また、上記防食塗装に代えて、防食性及び耐久性に優れ、塗装の剥離や壁面の損傷がなく、メンテナンスも作業性良くできる防食対策として膜体を用いた、本願出願人に係る特開2002−12293号公報に開示された「横隔膜貯槽」の発明がある。
この発明は、貯蔵液体上方の気層部を上下に仕切る横隔膜を、屋根下部に張設したものである。そして、この張設する膜体は、垂れ下がったり片寄ったりしないようにするとともに、膜体を展設する際に揺れたり撓わんだりしないように施工性を配慮し、取付け易い構造にしている。
【0005】
さらに、防食性及び耐久性に優れ、作業性良く安全作業で施工でき、経済的にも優れるように配慮した膜体を用いた、本願出願人に係る特開2002−128190号公報に開示された「骨組膜貯槽」の発明がある。
この発明は、屋根内壁面を腐食性ガス雰囲気から遮断する膜体を、膜骨によって緊張状態に張られた状態となるように形成してなる、膜骨付き膜体を設けたものである。この膜骨付き膜体は、取付け取外しの施工作業性に一層優れた構造である。
【0006】
さらにまた、膜体とステンレス鋼材を組合わせてコンクリート壁面をライニング形成して、防食性及び耐久性を向上させた貯槽には、例えば本願出願人に係る特願2001−264335号の「コンクリート製貯槽」の発明がある。
この発明は、気層部から貯蔵液に浸る範囲までの屋根内壁面及び側壁内壁面を膜体で被覆ライニングし、その下方の側壁内壁面下部から底壁内壁面にわたる範囲をステンレス鋼材で被覆ライニング形成したものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記底壁内壁面に塗装が施された貯槽は、貯槽底部の清掃時に、固化し強固に付着したスラッジなどの堆積物を除去する際に、塗装面を剥離したり、底壁面本体を傷付けて損傷することがあり、塗装剥離部や損傷部分、或いは腐食部の修復に多大な手間と経費を必要とした。
殊に、危険物貯槽の場合に義務付けられている定期的な開放検査時には、溶接継手部や腐食部の検査、計測を行う前処理として、底壁表面に固化し付着している堆積物や塗膜を、ブラストなどによって剥離して除去しなければならないために、多大な手間と経費を要した。さらに貯槽底部本体に損傷を与えてしまうため、その損傷部の修復にも手間と工期を要し費用が多大にかかっていた。
【0008】
また、本願出願人に係る「コンクリート製貯槽」の発明の底壁内壁面には、塗装に代わるライニング材として、防食性能に優れ剛強度で耐久性の高いステンレス鋼が使用されているが、重量が大きく高価な材料であるうえに、依然として底部の堆積物の清掃作業や補修作業などのメンテナンスに手間がかかり大変な作業となって、経費もかかるものであった。
【0009】
さらに、上記防食塗装が施された従来一般の貯槽においては、貯槽内壁面の塗装剥離部の補修塗装や再塗装、および金属製或いはコンクリート製の壁面の腐食によって損傷された部分の補修作業は、手間と経費がかかるものであった。
そして、屋根や側壁上部の施工には、上向きの危険な高所作業が多く存在し、高い全体足場を架設しなければならない場合もあるため、点検補修の工事は大掛かりで困難性を伴うものとなっていた。
また、塗装材料には、有害な環境ホルモンなどが含まれていることがあるため、飲料水や酒類など液体の食品材料を貯蔵する場合には、さらに安全性を向上するために被覆防護対策などが必要となっていた。
【0010】
さらにまた、上記紹介した発明のように、塗装に代わって屋根内面や側壁内面に膜体を張設する場合にあっては、膜体を取付け易くし、また必要に応じて取外し可能な構造にすることが望まれていた。
【0011】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、底壁の内壁面に沈着固化して付着する堆積物を、底膜体とともに一括除去することにより、清掃の作業性の向上、検査の前処理作業や補修施工の軽減を図り、機能的で経済的にも優れた膜ライニング貯槽を提供するものである。また、貯槽の屋根、側板及び底板の内壁面を、防食性及び耐久性に優れた膜体を用いて、腐食性ガス及び腐食性液体などの雰囲気から遮断するとともに、作業性良く安全作業で施工できるようにしたものである。
【0013】
請求項1の発明に係る膜ライニング貯槽は、液体や気体を貯蔵する貯槽の内壁面をライニング形成する貯槽であって、該貯槽の屋根内面は屋根骨に可撓性で気密性の屋根膜体を吊下げ、該貯槽の側壁内面には可撓性で液密性の側膜体を接着し、上記屋根膜体と側膜体とは貯槽上部の気相部にて側壁面に気密、液密状態に固定し、該貯槽の底壁内面には可撓性で液密性の底膜体を溶着や接着又は固定することなく敷設するとともに、その底膜体周縁を底壁内面から貯槽側壁に沿って立上げ、その立上げ部を上記側膜体の下端縁の上に着脱自在、かつ液密状態に固定するものである。
【0014】
また、請求項2の発明に係る膜ライニング貯槽は、上記請求項1の発明に係る膜ライニング貯槽における上記屋根膜体と側膜体の膜体相互の固定部、および上記底膜体と側膜体の膜体相互の固定部は、該膜体相互を重ね合わせて螺着部材にて固定し、この固定する取付部を、帯状膜片にて全周にわたって被覆形成するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1乃至図6に基づいて、この発明に係る膜ライニング貯槽の実施形態例について説明する。
図1は浮屋根式貯槽、図2はドーム形状屋根付きの平底円筒形貯槽であり、貯槽の内壁面に膜ライニングを適用した事例を示す。
【0016】
図1は、原油などを貯蔵する浮屋根式貯槽の事例で、貯槽本体1は、円形平板状の底板2と円筒状の側板3と浮蓋状の浮屋根4とから形成されている。この浮蓋状の浮屋根4は、貯蔵液の上に浮んで上昇下降をするが、図1に示すように最下降させた時には、複数本の支柱5によって支えられている。
【0017】
このような浮屋根式貯槽では、屋根膜体及び側膜体は設けることなく、底板2上面に底膜体6のみを展開し敷設する。
この底膜体6は、可撓性で液密性を有する膜体で形成し、工場などで予め一体成形したものを搬入し、底板2の上で展開し、底板2の内壁面に溶着や接着又は固定することなく敷設する。そして、この底膜体6の周縁は、底板内壁面から側板3の内壁面に沿って、数10センチメートル乃至1メートル程度の高さに立上げて、その立上げ部は、マンホール7及びノズル8より下部で着脱の作業性が良い位置の壁面に、円周方向に沿って取付部9を設け、ボルトとナットなどの螺着部材によって着脱自在、かつ液密状態に固定する。
この底膜体6の立上げ高さは、スラッジなどの堆積物が堆積する高さ範囲、底板内壁面から側板内壁面に至る腐食の激しい高さ範囲に対応させる。また、定期点検時に検査を行う範囲にも対応して、底板内壁面から側板内壁面の上部にわたって立上げる。
そして、底板内壁面上のスラッジや堆積物を除去する清掃や、底板内壁面の点検、法定定期開放検査などの際に、底膜体6を取外して簡単容易に剥し撤去することができるように、底膜体6は底板2上壁面に、溶着や接着又は固定することなく載置状態に展開し敷設しておく。
【0018】
また、上記支柱5の着座部の底膜体上には、ゴム材などの弾力性を有する緩衝材10を設けるか、支柱5の下端にゴムキャップを被せて支柱下端に固定し、浮屋根4の着座時に、底膜体6を損傷しないようにする。
さらに、この緩衝材10に対応した位置の底膜体6の上面には、必要に応じて円形又は矩形の膜補強用の当て膜片11を設ける。
なお、既設の貯槽に底膜体を敷設する場合には、底膜体を複数枚に分割し、敷設箇所の支柱を上げて分割した底膜体を敷設し、この底膜体相互の端縁を溶着又は接着する。
【0019】
図2は、上水道水などを貯蔵する金属製の平底円筒形貯槽の縦断面図で、貯槽本体1は、円形平板状の底板2と、この底板2の外周縁近傍に立設した円筒状の側板3と、この側板3上方を覆うドーム形状の屋根板14とから形成されている。
この貯槽本体1の内部に、腐食性ガスを溶存した貯蔵液体が貯蔵される。
【0020】
12は屋根板14を支える屋根骨、13は屋根内面を被覆する屋根膜体、15は側板3の内面を被覆する側膜体、16は底板2の内面を被覆する底膜体、17は屋根上部に設けた通気孔、18は側板3に設けた液出入用のノズルである。
【0021】
上記貯槽本体1の屋根内面を被覆する屋根膜体13は、可撓性で気密性を有する膜体で形成し、屋根板14下部の屋根骨12に、複数箇所の係合部19にて吊り下げ状態に係合し、その外周縁を貯槽上部の気層部に位置する円周方向に沿った側上部取付部20に固定する。
このように屋根膜体13を吊設することによって、貯槽上部の気層部を上下に仕切って、屋根板14内壁面と屋根骨12、及び側板3内壁面上部を貯蔵液に含まれる腐食性ガスから遮断している。
【0022】
側膜体15は、液密性を有する膜体で形成し、特殊合成ゴム溶剤型やエポキシ樹脂系などの接着剤を用いて側板3の内壁面に接着し、その上端縁は気層部に位置する円周方向に沿った側上部取付部20にて上記屋根膜体13と重ね合わせて、ボルトとナットなどの螺着部材を用いて、この側上部取付部20に着脱自在、かつ気密、液密状態に固定する。そして、この側膜体15の下端縁は側板3下方の円周方向に沿った側下部取付部21に固定する。
【0023】
底膜体16は、可撓性で液密性を有する膜体で形成し、工場などで予め一体成形したものを搬入し底板2上で展開し、底板2の内壁面に、溶着や接着又は固定することなく敷設する。そして、この底膜体16の周縁は底壁内面から側壁に沿って上方に立上げ、その立上げ部を上記側膜体15の下端縁の上に重ね合わせて、上記側下部取付部21にボルトとナットなどの螺着部材を用いて、着脱自在、かつ液密状態に固定する。
この底膜体16の立上げ高さは、外周縁を底板2内壁面から側板3内壁面に沿って数10センチメートル乃至1メートル程度として、マンホール(図示せず)やノズル18の下部位置で、着脱の作業性が良い位置とする。
【0024】
膜体の取付構造の実施形態例について、図3乃至図6に基づいて詳細に説明する。側板3の円周方向に沿って内壁面に所定間隔をおいて、スタッド溶接や隅肉溶接によってボルト22を溶着し立設する。
図3は、図1の底膜体6の側下部取付部9の近傍を示す縦断面図である。
図3に示すように、浮屋根式貯槽などの場合には、底板2上壁面に溶着や接着又は固定することなく除去可能に展開し敷設した底膜体6の上端周縁を、底板内壁面から側板内壁面に沿って立上げ、その立上げ部をボルト22とナット23などの着脱自在な取付部材24を用いて液密に固定する。その上部に樹脂製のキャップ25を被せ、さらにその上方に、底膜体6の先端縁を延長し反転させた袋綴じ状の覆い膜26を円周方向全周にわたって取付部材全体を覆い、覆い膜26先端部を底膜体6と溶着又は接着させ液密状態に被覆形成する。なお、27は弾力性と液密性を有するシール部材、28は押え金具である。
このように、ボルト22とナット23などは樹脂製のキャップ25で被覆されており、液圧を受ける袋綴じ状の覆い膜26がボルト22等によって損傷されることなく、長期間の使用が可能となる。この点は、他の実施形態例においても同様の効果が得られる。
【0025】
図4は、図2の底膜体16の取付部21の近傍を示す縦断面図である。
図4に示すように、円筒状の側板3の内壁面に、特殊合成ゴム溶剤型やエポキシ樹脂系などの接着剤29を用いて接着した側膜体15の下端周縁部と、底板2上壁面に溶着や接着などすることなく敷設した底膜体16の上端周縁部とを重ね合せ、ボルト22とナット23などの着脱自在な取付部材24を用いて固定し、その上部に樹脂製のキャップ25を被せ、さらにその上方を帯状膜片30にて円周方向全周にわたって被覆し、その周端を液密に溶着する。
この帯状膜片30は、上下周縁のうち一方端縁を、予め工場製作にて側膜体15又は底膜体16の何れか片方の膜体の端部に接合しておき、上記取付けを行いキャップ25を被せた後にその上方を覆って、現地にて上記帯状膜片30の他方端縁を、もう片方の膜体に液密に溶着又は接着することにより被覆形成する。
このようにキャップ25を取付けることにより液圧による帯状膜片30の損傷を防止でき、また帯状膜片30で被覆形成することにより接合部の液密性が一層向上し、取付部材24が腐食などによって損傷することがない。そして、上記帯状膜片30の取付けは、一方の端縁のみを現地にて溶着又は接着で行うので簡単容易に施工することができる。
【0026】
貯槽内部の清掃時や開放点検時、定期検査時には、上記図3及び図4に示す取付部9,21の上部を被覆する覆い膜26、或いは帯状膜片30を切断し、着脱自在な取付部材24のナット23などを取外して、底膜体6,16を簡単に撤去することができる。この底膜体6,16は、接着剤を用いることなく、底板2上に載置状態に展開し敷設しているので、上記除去作業が容易となる。
そして、貯槽底部に堆積したスラッジや堆積物等は、底膜体6,16に包み込んで一緒にまとめて簡単容易に除去することが可能となる。
【0027】
この底板2の底壁上面は、底膜体6,16に被覆されているため、腐食や損傷がなく、建設当時の状態が保持され、溶接継手部や腐食部の検査のための清掃や表面研磨などの前処理も簡単にでき、補修範囲も少なくなり、工期も短縮することができ、経費を低減することが可能となる。
そして、メンテナンス終了後には、古い底膜体6,16は使い捨てにして、新規な底膜体6,16を被覆施工する。この新規な底膜体6,16の被覆施工も、工場などで予め一体成形した膜体を、前記と同様の手順と方法によって、底板上面に溶着や接着又は固定することなく、作業性良く展開し敷設して取付けることができる。
【0028】
図5は、図2の気層部に位置する側上部取付部20を示す側断面図である。
側板3の内壁面の円周方向に所定間隔をおいて、スタッド溶接や隅肉溶接によって溶着し立設したボルト22に、屋根膜体13の下端周縁を挿通し、その上に、特殊合成ゴム溶剤型やエポキシ樹脂系などの接着剤29にて接着してなる側膜体15の上端周縁を重ね合わせて挿通する。
そして、その上に帯板状の押え金具28を被せた後、孔から突出したボルト22にナット23を螺合し緊締することによって、気層部に位置する側板3上部で屋根膜体13及び側膜体15を気密に固定する。
なお、定期開放検査を行なう貯槽などで、側膜体15を剥がす必要がある場合には、側板3の内壁面に接着剤29を施工することなく、側膜体15を剥がし易くしておく。そして、必要に応じて、側上部取付部20のナット23等の螺着部材を取外して、側膜体15を取替えることができるようにしておく。
【0029】
また、ボルト22とナット23の上部には、樹脂製の保護キャップ25を被せ、その上部を帯状膜片30にて被覆し、その周縁を気密に溶着する。
この帯状膜片30は、上下周縁のうち一方端縁を、予め工場製作にて屋根膜体13又は側膜体15の何れか片方の膜体の端部に接合しておき、上記取付けを行いキャップ25を被せた後にその上方を覆って、現地にて上記帯状膜片30の他方端縁を、もう片方の膜体に気密に溶着又は接着することにより被覆形成する。
このようにキャップ25を取付けることにより圧迫による帯状膜片30の損傷を防止でき、また帯状膜片30で被覆形成することにより、接合部の気密性が一層向上し、取付部材24が腐食などによって損傷することがない。そして、上記帯状膜片30の取付けは、一方の端縁のみを現地にて溶着又は接着で行うので簡単容易に施工することができ、高所作業の安全性が得られ、能率良く取付け作業を行うことができる。
【0030】
図6は、膜体取付治具31の他の事例を説明する図である。
この膜体取付治具31は、膜体取付用のボルト22を、予めフラットバーなどの帯板材32上にスタッド溶接や隅肉溶接によって複数本立設しておき、この複数枚の帯板材32を、側板3の内壁面に沿って水平方向に隅肉溶接によって固定した場合を示す。
このように、予め帯板材32上に複数のボルト22を立設した膜体取付治具31を用いると、膜体の取付孔の位置決めが容易にできるため、既設の貯槽に膜体を取付ける場合などに適したものとなり、内壁面の状態に対応して、膜体を取付ける作業性が向上する。
【0031】
上記屋根膜体13、側膜体15、及び底膜体6,16に使用する膜材は、長期間にわたって気密性及び液密性を有し、強靭かつ高耐食性、耐薬品性、耐久性を備えた可撓性シート体を使用する。
このシート体は、例えばオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニール樹脂、塩化ビニール樹脂等の合成樹脂材で形成した膜材、若しくはポリエステル繊維やガラス繊維等の繊維にオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニール樹脂、塩化ビニール樹脂等の合成樹脂をコーティングした布膜材のシート体、各種繊維に合成ゴム材をコーティングしたシート体などを用いる。
なおこの膜材は、貯槽内部に位置して太陽の紫外線の影響を受けないので、野外設置の膜構造物などと比較して、より長期間の耐久性が得られる。
【0032】
上述のように、貯槽の全体、或いは底部の内壁面にライニング膜を設けた貯槽は、その内壁面が気密、液密な膜体によって腐食性ガスや腐食性液体から遮断されるので、塗装などの防食対策の代わりとなる。そして、強靭で高耐食性を備えたシート材よりなる膜体は、塗装などよりはるかに長期間の耐久性能を有するので、塗装を施工した場合の再塗装や補修をする必要がなくなる。
よって、剥離した塗装材や錆、劣化して剥離したコンクリート片などが貯蔵内容物に混入することなく、内容物が汚染される心配もなくなる。
また、貯蔵内容物に対応したステンレス鋼などの高価な耐食性材料を使用しなくても良く、普通鋼などの安価な一般材料を使用することができるので、貯槽本体の構築における経済性も向上する。
【0033】
また、既設の貯槽の場合には、従来のような手間と経費のかかる補修塗装に替えて、膜体は軽量な部材で安価に製作することができ、かつ作業性良く安全に施工することができるので、被覆ライニングの経済性に優れたものとなる。
そして、清掃や点検などメンテナンスの時に、スラッジや固化し膜体に付着している堆積物を、膜体を取外して一緒にまとめて容易に除去することができるため、清掃が簡単にでき、膜体の取替えを簡単に行うことが可能となり、作業性良く経済的にメンテナンスや点検、検査を行うことができる。
さらに、内壁面は貯蔵内容物と接触することがなく建設当時の状態が保持されており、検査のための清掃や表面研磨などの前処理も簡単にでき、補修範囲も少なく、工期も短縮することができ、検査のための経費を低減することが可能となる。
そして、メンテナンス終了後には、新規な底膜体を簡単に取付け被覆施工することができる。
【0034】
なお、上記図1及び図2の貯槽の実施形態例は、金属製貯槽の場合を示したが、コンクリート構造の貯槽の場合においても同様に、膜体で貯槽内壁面を被覆ライニングして保護し、底膜体は着脱自在構造に形成することによって、メンテナンス時に堆積物を底膜体と一緒に容易に除去することができ、検査も簡単にでき、壁面の補修及び底膜体の取替えも簡単にできることは勿論である。
【0036】
請求項1の発明に係る膜ライニング貯槽は、液体や気体を貯蔵する貯槽の内壁面をライニング形成する貯槽であって、該貯槽の屋根内面は屋根骨に可撓性で気密性の屋根膜体を吊下げ、該貯槽の側壁内面には可撓性で液密性の側膜体を接着し、上記屋根膜体と側膜体とは貯槽上部の気相部にて側壁面に気密、液密状態に固定し、該貯槽の底壁内面には可撓性で液密性の底膜体を溶着や接着又は固定することなく敷設するとともに、その底膜体周縁を底壁内面から貯槽側壁に沿って立上げ、その立上げ部を上記側膜体の下端縁の上に着脱自在、かつ液密状態に固定するので、屋根膜体と側膜体はしっかり固定或いは密着されて剥れることがないため、貯槽内壁面の腐食や損傷の心配がなく貯槽本体の安全性が保持されるとともに、底膜体は、清掃や点検、開放検査などのメンテナンス時に、簡単自在に取外して交換することができるため、堆積物の除去を底膜体の撤去と同時に一括して作業性良く行うことができるうえに、底部の清掃、点検、検査が簡単容易で、短い工期で経済的に施工することが可能となる。
【0037】
また、上記請求項2の発明に係る膜ライニング貯槽は、上記請求項1の発明に係る膜ライニング貯槽における上記屋根膜体と側膜体の膜体相互の固定部、および上記底膜体と側膜体の膜体相互の固定部は、該膜体相互を重ね合わせて螺着部材にて固定し、この固定する取付部を、帯状膜片にて全周にわたって被覆形成するので、固定部材は高価な耐食部材を使用する必要がなく経済的で、接合部の気密性及び液密性が向上する。
また、この被覆形成する作業は、一方端を予め工場で取付け他方端を現場にて溶着又は接着するので、簡単容易で作業性良く施工することが可能となる。
さらにまた、貯槽内部の清掃時や開放点検時、定期検査時には、帯状膜片を切断し、着脱自在な螺着部材を取外し、底膜体や側膜体、或いは屋根膜体を簡単容易に取替えることができる。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に係る膜ライニング貯槽の実施形態例で、浮屋根式貯槽の場合の縦断面説明図である。
【図2】 この発明に係る膜ライニング貯槽の他の実施形態例で、ドーム屋根を有する平底円筒形貯槽の場合の縦断面説明図である。
【図3】 図1の底膜体の取付部を示す縦断面説明図である。
【図4】 図2の底膜体の取付部を示す縦断面説明図である。
【図5】 図2の側上部の膜取付部を示す縦断面説明図である。
【図6】 膜体取付治具の事例を示す斜視説明図である。
【符号の説明】
1 貯槽本体 2 底板 3 側板
4 浮屋根 5 支柱 6 底膜体
7 マンホール 8 ノズル 9 取付部
10 緩衝材 11 当て膜片 12 屋根骨
13 屋根膜体 14 屋根板 15 側膜体
16 底膜体 17 通気孔 18 ノズル
19 係合部 20 側上部取付部 21 側下部取付部
22 ボルト 23 ナット 24 取付部材
25 キャップ 26 覆い膜 27 シール部材
28 押え金具 29 接着剤 30 帯状膜片
31 膜体取付治具 32 帯板

Claims (2)

  1. 液体や気体を貯蔵する貯槽の内壁面をライニング形成する貯槽であって、該貯槽の屋根内面は屋根骨に可撓性で気密性の屋根膜体を吊下げ、該貯槽の側壁内面には可撓性で液密性の側膜体を接着し、上記屋根膜体と側膜体とは貯槽上部の気相部にて側壁面に気密、液密状態に固定し、該貯槽の底壁内面には可撓性で液密性の底膜体を溶着や接着又は固定することなく敷設するとともに、その底膜体周縁を底壁内面から貯槽側壁に沿って立上げ、その立上げ部を上記側膜体の下端縁の上に着脱自在、かつ液密状態に固定することを特徴とする膜ライニング貯槽。
  2. 上記屋根膜体と側膜体の膜体相互の固定部、および上記底膜体と側膜体の膜体相互の固定部は、該膜体相互を重ね合わせて螺着部材にて固定し、この固定する取付部を、帯状膜片にて全周にわたって被覆形成することを特徴とする請求項記載の膜ライニング貯槽。
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