JP4022611B2 - 好熱性アミノペプチダーゼ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、好熱性アミノペプチダーゼに関し、特にN末端が遮断(ブロック)されている、あるいは遮断されていないタンパク質またはポリペプチドに対して、N−末端よりエキソ分解活性を有し、その最適温度が90℃以上であって、タンパク質のN−末端分析及びポリペプチド分解に有効なアミノペプチダーゼに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、タンパク質及びポリペプチドのN−末端分析にはエドマン分解法が利用されてきた。しかしながら、N−末端がアシル化等によって修飾され、いわゆる遮断されているタンパク質またはポリペプチドをエドマン分解してアミノ酸配列を決定することは不可能であった。そのため、このようなN−末端を遊離できるペプチド加水分解酵素であるアミノペプチダーゼが使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の酵素は、種類が限られており、しかも90℃以上の高温下では不安定であるため、上記の反応は90℃以下で行わなければならなかった。高温下で反応を行うことにより、反応効率の向上、混入微生物の除去等、多くの利点が考えられることから、高温で使用でき、高温下で安定な酵素が渇望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、以上のような課題を解決すべく種々検討した結果、90−100℃で生育する超好熱性細菌に着目し、高温(100℃以上)で生育する好熱菌であるパイロコッカス・ホリコシ(JCM9974)のゲノム解析データから、95℃以上で N−ブロックペプチド及びN−ブロックされていないポリペプチドのN−末端から順次に(エキソ的に)アミノ酸を遊離する反応、および遮断基自身を分解する反応を触媒するアミノペプチダーゼペプチドをコードすると思われる遺伝子を同定した。本酵素が高温下で安定で、かつ、活性を保持することが予想されたことから、本発明者等はさらに、大腸菌を使ってその遺伝子の遺伝子産物を生産して検討したところ、この遺伝子産物が90℃の高温下で安定であり、かつ至適温度が95℃であるアミノペプチダーゼ活性を示し、しかもN−末端が遮断されたタンパク質及びN−末端が遮断されたポリペプチドに対しても分解活性を有することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0005】
さらに、ここで得られた遺伝子を、他の微生物に組み込み、本酵素を多量に生産することもできることを見出した。
すなわち本発明は、N−末端が遮断されているタンパク質またはペプチドに対して分解活性を有し、その最適温度が90℃以上である好熱性アミノペプチダーゼに関するものであって、以下の(A)〜(G)に示すとおりのものである。
(A)N末端が遮断されているペプチド及び遮断されていないペプチドの双方に対し分解活性を有し、N末端がホルミル基で遮断されたアラニンからなるトリペプチドに対する分解活性が、N末端がアセチル基で遮断されたアラニンからなるトリペプチドに対する分解活性よりも高く、かつ、アラニン5個までのペプチド基質に対して、アラニン残基数が多い程反応速度及び基質に対する親和性が高く、最適温度が90℃以上であるパイロコッカス・ホリコシ由来の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドであって、(1)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは(2)配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたポリペプチド。
(B)上記(A)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(C)下記の(3)又は(4)のポリヌクレオチド。
(3)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(4)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにおいて1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチドであって、請求項1に記載の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする該ポリヌクレオチド。
(D)上記(B)または(C)に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
(E)上記(D)の組換えベクターを含む形質転換体。
(F)パイロコッカス ホリコシを培地中で培養し、培養物から好熱性アミノペプチダーゼを採取することを特徴とする、上記(A)に記載の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
(G)上記(E)に記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物から好熱性アミノペプチダーゼを採取することを特徴とする、上記(A)に記載の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を具体的に説明する。
本発明で使用した超好熱性細菌は、最適成長温度が98℃である硫黄代謝好熱菌 パイロコッカス・ホリコシ(Pyrococcus horikoshii, 登録番号JCM9974、JCM微生物株カタログ第7版、1999年1月発行)である。
【0011】
パイロコッカス・ホリコシ培養後、BLAST探索法を使用して、本超好熱性細菌の遺伝子配列からAeromonas proteolyticaのアミノペプチダーゼ配列に類似し、本酵素活性を示すと思われる遺伝子(配列番号1)を、PCR反応で増幅し抽出した後、蛋白質発現プラスミドpET 11aに挿入、そのプラスミドを大腸菌に組み込み、本酵素の生産をおこなった。生産された酵素は加熱処理およびカラムクロマトグラムで単離精製した。精製された本酵素は、ゲル濾過による分子量は、約44万、SDS電気泳動で36,900のタンパク質で、 N−ブロックペプチド及びN−ブロックされていないポリペプチドのN−末端から順次にアミノ酸を遊離する反応、およびN−遮断基自身を遊離する反応を触媒するアミノペプチダーゼ活性が確認された。
【0012】
この酵素はpH7.5、20mM N−エチルモルホリン酢酸緩衝液(0.1MNaCl及び0.5mM塩化コバルトを含む)中、90℃で数時間処理しても、活性の低下がほとんど見られなかった。さらに、活性の至適pHは7.5で、至適温度はpH7.5で約95℃であった。
【0015】
本発明に係るペプチドは、パイロコッカス属に属する好熱性アミノペプチダーゼ生産菌を培地中で培養し、培養物から好熱性アミノペプチダーゼを採取することによって得ることができるが、より好ましくは、本発明に係るポリヌクレオチドを含有する組換えベクターを含む形質転換体を培地中で培養し、培養物から好熱性アミノペプチダーゼを採取する。遺伝子組換えによる製造方法については、以下の実施例で詳細に説明するが、当業者にとっては、当分野における通常の技術を使用して本発明の記載に種々の変更等を加えることが可能であり、かかる変更等も本発明に含まれる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(i)パイロコッカス・ホリコシの培養
パイロコッカス・ホリコシは公知の好熱菌であり、その培養条件なども知られているが、ここではその一例を挙げる。
【0017】
13.5gのNaCl、4gのNa2SO4、0.7 gのKCl、0.2gのNaHCO3、0.1gのKBr、30 mg のH3BO3、10gのMgCl2・6H2O、1.5gのCaCl2、25mgのSrCl2、1.0mlのレザスリン溶液(0.2g/L)、1.0gの酵母エキス、5gのバクトペプトンを蒸留水1Lに溶かし、pHを6.8に調整した後、加圧殺菌した。ついで、乾熱滅菌した元素硫黄を0.2%となるように加え、この培地を炭酸ガスで飽和して嫌気性とした後、パイロコッカス・ホリコシを植菌した。培地が嫌気性となったか否かはNa2S溶液を加えて、培養液中でNa2Sによるレザスリン溶液のピンク色が着色しないことにより確認した。この培養液を95℃で2〜4日培養した。
【0018】
(ii)染色体DNAの調製
培養後、5000rpm、10分間の遠心分離により菌体を集菌した。菌体を10mM Tris(pH 7.5)-1mM EDTA溶液で2回洗浄後、InCert Agarose(FMC社製)ブロック中に封入した。このブロックを1%N−ラウロイルサルコシン−1mg/mlプロテアーゼK溶液中で処理することにより、染色体DNAをAgaroseブロック中に分離調製した。
【0019】
(iii)遺伝子の同定
上記で決定された各BAC或いはFosmidクローンの塩基配列の大型計算機による解析を行い、ペプチド加水分解酵素をコードする遺伝子(配列番号1)を同定した。この遺伝子は、996塩基対からなり、そのコードするアミノ酸(332アミノ酸)配列(配列番号2)は、Clostridium thermocellumのエンドグルカナーゼと42%の相同性、Aeromonas proteolyticaのアミノペプチダーゼと20%の相同性を有していた。
【0020】
(iv)発現プラスミドの構築
構造遺伝子領域の前後に制限酵素(NdeIとBamHI)部位を構築する目的で次の2種のDNAプライマーを合成した。
プライマー1:
5'−TTTTGAATTCTTGCATATGATGTCAATGATAGAGAAG−3'
(上流用プライマー、下線のNdeI切断部位を有する)
プライマー2:
5'−TTTTGGTACCTTTGGATCCTTATCCCTCCTAGAGCTCAAATGCTAA−3')
(下流用プライマー、下線のBamHI切断部位を有する)
【0021】
尚、同定した遺伝子配列中にNdeI切断部位があることから(位置273-278)、遺伝子の増幅前に位置275のTをCに、overlap−extension PCR法によって置換し、コードするタンパク質のアミノ酸配列を変えずに制限部位をなくした。
次いで、PCRにより、遺伝子の前後に制限酵素部位を導入した。
PCR反応後、増幅した遺伝子を制限酵素(NdeIとBamHI)で完全分解(37℃で2時間)した後、その構造遺伝子を精製した。
【0022】
一方、プラスミドpET- 11a(Novagen社製)を制限酵素NdeIとBamHIで切断・精製した後、上記の構造遺伝子とT4リガーゼで16℃、2時間反応させて連結した。挿入された遺伝子のヌクレオチド配列をLI−CORモデルLIC−4200L(S)−2シーケンサー(Aloka社)を使用して決定し、予想された配列との同一性を確認した。
プラスミドに連結したDNAの一部をE. coli-XL2-BlueMRF'の能力細胞(コンピテント細胞)に導入し形質転換体のコロニーを得、得られたコロニーから発現プラスミドをアルカリ法で精製した。
【0023】
(v)組換え遺伝子の発現
大腸菌(E. coli BL21(DE3), Novagen社製)の能力細胞を融解して、ファルコンチューブに0.1mL移す。その中に発現プラスミド溶液0.005mLを加え、氷中に30分間放置した後、42℃でヒートショックを30秒間行った。ここにSOC培地0.9mLを加え、37℃で1時間振とう培養した。その後アンピシリン100μg/mlを含む2YT寒天培地(酵母抽出物1%、トリプトン1.6%、NaCl0.5%)に適量まき、37℃で一晩培養し、形質転換体を得た。
この形質転換体をアンピシリンを含む2YT培地で600nmにおける吸収が1に達するまで培養した後、最終濃度が1mMになるようにIPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を加え、さらに37℃で6時間培養した。培養後、遠心分離(6,000rpm,20分)で集菌した。
【0024】
(vi)酵素の精製
集菌した菌体に2倍量のアルミナを加え、菌体を粉砕した後、5倍量の10mMTris-HCl緩衝液(pH8.0)を加え懸濁液を得た。得られた懸濁液を85℃で30分間加熱後、遠心分離(11,000rpm、20分)し、0.5MのNaClを含む50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)に対して透析し、その後HiTrapQ(ファルマシア社製)カラムに吸着させた。カラムを同緩衝液で洗浄後、NaCl濃度を上昇させて(0.5から1.5M)活性画分を溶出させた。得られた活性画分溶液をセントリコン10フィルター(アミコン社製)で濃縮後、ゲル濾過カラムHiLoad Superdex200(ファルマシア社製)に通し、1.0M NaClを含む100mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で溶出させた。
【0025】
次いでPhastシステム(ファルマシア社製)を用いて4%から15%のゲル勾配上でSDS−PAGEを実施した。溶出した画分はアミノ酸配列から計算される適当な分子量(36.9kDa)に相当する単一のバンドを示し、これを酵素の性状解析のために使用した。視覚化のために、クマシーブリリアントブルーで染色したものを図1に示す。
【0026】
第1列は本発明に係る精製したアミノペプチダーゼ、第2列は精製前の粗抽出物を示す。第3列は分子量の標準のために使用したホスホリラーゼb(94kDa)、ウシ血清アルブミン(67kDa)、卵アルブミン(43kDa)、カルボニックアンヒドラーゼ(30kDa)、ダイズトリプシンインヒビター(20kDa)及びα−ラクトアルブミン(14.4kDa)を示す。
【0027】
(vii)分子量及び金属含量の測定
分子量は、SDS−PAGEと共に、Superdex200カラム(ファルマシア社製)上で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行って決定した。溶出は1.0M NaClを含む100mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で、流速1.5ml/分、室温で行った。溶出したタンパク質を280nmにおけるUV吸収で検出した。
精製した酵素はSDS−PAGEでは、36.9kDaの分子量を示したが、ゲルろ過の溶出液からは、分子量44万に相当する溶出液に活性が溶出した(HPLCで測定)ので、通常は多量体で存在していることが解った。
【0028】
酵素に結合した金属イオンの分析のためにモデルSPS1200VR(セイコー社製)を使用した原子放射分析(Inductively coupled plasma atomic emission spectrometry;ICP-AES)を実施したところ、本酵素はモノマー当たりカルシウム分子を1分子含有することが解った。しかし、50mM EDTA中で12時間透析してカルシウムイオンを除いても活性に変化はなく、アミノペプチダーゼ活性にカルシウムイオンは必要でないことが明らかになった。一方、原子放射分析ではコバルトイオンは検出されなかったが、活性にはコバルトイオンが関与しており、カルシウムイオンの存在または非存在に関わらず、0.5mMコバルトイオンの存在下で酵素活性がおよそ6倍に増大した。
【0029】
(viii)酵素の諸性質
(1)基質特異性
酵素の活性は、基質としてペプチド、アシルペプチド、およびアセチルアミノ酸−p−ニトロアニリド(Ac−アミノ酸−1p0NA)を用いて測定した。
基質として使用したAlaオリゴマーはSigma社(St. Louis, MO, USA)から購入した。(Ac−アミノ酸−pNA)はSigma社及びBachem社(Bubendorf, Switzerland)から、アシルペプチドAc−Ala−Ala−Ala及びf−Ala−Ala−AlaはBachem社から購入した。アセチル−L−ロイシル−L−グルタミル−L−ヒスチジル−L−アスパラギン酸α−(4−メチル−クマリル−7−アミド)(Ac−Leu−Glu−His−Asp−MCA)およびAla−Arg−Gly−Ile−Lys−Gly−Ile−Arg−Gly−Phe−Ser−Glyはペプチド研究所から購入した。
【0030】
各種の基質(2mM)を用い、0.1M NaCl及び0.5mM塩化コバルトを含む50mMエチルモルホリンN-酢酸緩衝液(pH7.5)中に一定量の酵素を加えて85℃で反応させ、触媒活性を調べた。活性は、ペプチド、アシル化ペプチド、アセチルアミノ酸p-ニトロアニリドを基質として、加水分解後に生じるα-アミノ酸をカドミウムニンヒドリンあるいは、p−ニトロアニリドの吸収から検出した。結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示すように、本発明のアミノペプチダーゼは、85℃の高温において、Ac-Leu-pNA、Ac-Ala-pNAなど、すなわち、ホルミル基、アシル基、アセチル基、またはピログルタミル基でN−末端が遮断されている基質に対する分解活性が見られ、特に遮断基がホルミル基の場合に分解活性が高かった。他に、遮断されていないAlaオリゴマー(2−6量体)、Ac-Phe-pNA、Ac-Arg-pNA、Ac-Lys-pNA、Leu-pNA、Ala-pNAの基質の分解活性は検出されたがAla-Pro-Alaは分解されなかった。すなわち、本発明のアミノペプチダーゼは、基質のペプチド中にプロリンが存在すると、その前(N−末端側)のペプチド結合は分解しない性質があることがわかった。
また、Alaオリゴマーに対する分解活性を検討した結果、長いペプチドの方が短いものよりも分解を受けやすいことが示された。結果を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
また、Ac−Leu−Glu−His−Asp−MCA2mMを基質として3400mMの本発明に係るアミノペプチダーゼ酵素液と反応し、その生産物をペーパークロマトグラフィーにスポットし、ブタノール−酢酸−水(12:3:5)の展開溶媒で展開し、ニンヒドリンで発色すると、グルタミン酸の濃いスポットの他、ヒスチジンのスポット、ロイシンの薄いスポットが観察された。以上の結果から、本発明のアミノペプチダーゼは基質をN−末端より順次に分解し、N−末端が遮断されている基も分解していることを示している。
【0035】
更に、Ala−Arg−Gly−Ile−Lys−Gly−Ile−Arg−Gly−Phe−Ser−Gly・3AcOH・5H2Oを基質として同様に反応させ、分解経過をアミノ酸分析で観察すると、図2に示すようにN−末端よりアミノ酸が順次に分解していることが観察された。GlyがArgより多く出ているのは、Glyが1分子中に4個存在すること、およびAlaの大きなピークがGlyの溶出位置にテイリングしているためと考えられる。
【0036】
(2)至適pH
酵素活性の至適pHの測定は、0.1M NaCl及び0.5mM塩化コバルトを含む、50mM酢酸ナトリウム緩衝液、50mMリン酸緩衝液および50mMNaH2PO4-Na2B4O7緩衝液でpH4〜9までの基質(Ala-Ala-Ala ) 2mMを含む反応液1mlを調製し、85℃で酵素の加水分解活性の初速度を測定することにより求めた。反応至適pHは、7.5付近であると認められた。結果を図3に示す。
【0037】
(3)至適温度
上記と同じ基質を用いて0.1M NaCl及び0.5mM塩化コバルトを含む50mMエチルモルホリンN-酢酸緩衝液(pH7.5)中に一定量の酵素を加えて種々の温度で反応させ、相対活性を調べた。至適温度は95℃であった。結果を図4に示す。
【0038】
(4)耐熱性
0.1M NaCl及び0.5mM塩化コバルトを含む50mMエチルモルホリンN-酢酸緩衝液(pH7.5)中に一定量の当該酵素溶液を加え、90℃で、30分、50分および120分加熱後、残存活性を調べたが、活性の低下は0、3、21%であり、90℃の高温において非常に安定であった。結果を図5に示す。
【0039】
【発明の効果】
本発明により、反応の至適温度が95℃である N−ブロックペプチド及びN−ブロックされていないポリペプチド双方に対し、そのN−末端からアミノ酸を遊離する反応を触媒する新規な好熱性アミノペプチダーゼが提供できる。さらに、酵素分子が安定であるという事から耐有機溶媒性の向上も期待できる。本発明の酵素により、高温下での、N−末端が遮断されたタンパク質やポリペプチドのアミノ末端分析が可能になる。
【0040】
【配列表】
【0041】
【配列表フリーテキスト】
配列番号3:制限部位を構築するためのPCRプライマー
配列番号4:制限部位を構築するためのPCRプライマー
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るアミノペプチダーゼをSDS−PAGEにかけた結果であり、精製度および分子量を示すものである。
【図2】図2は本発明に係るアミノペプチダーゼ酵素活性のpH依存性を示すものである。
【図3】図3は本発明に係るアミノペプチダーゼ酵素活性の温度依存性を示すものである。
【図4】図4は本発明に係るアミノペプチダーゼ酵素の耐熱性を示すものである。
【図5】図5はオリゴペプチドを分解した時に放出される生成アミノ酸の累積量を経時的に示すものである。
Claims (7)
- N末端が遮断されているペプチド及び遮断されていないペプチドの双方に対し分解活性を有し、N末端がホルミル基で遮断されたアラニンからなるトリペプチドに対する分解活性が、N末端がアセチル基で遮断されたアラニンからなるトリペプチドに対する分解活性よりも高く、かつ、アラニン5個までのペプチド基質に対して、アラニン残基数が多い程反応速度及び基質に対する親和性が高く、最適温度が90℃以上であるパイロコッカス・ホリコシ由来の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドであって、(1)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたは(2)配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたポリペプチド。
- 請求項1に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
- 下記の(3)又は(4)のポリヌクレオチド。
(3)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド
(4)配列番号1のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドにおいて1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチドであって、請求項1に記載の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする該ポリヌクレオチド。 - 請求項2または3に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
- 請求項4の組換えベクターを含む形質転換体。
- パイロコッカス ホリコシを培地中で培養し、培養物から好熱性アミノペプチダーゼを採取することを特徴とする、請求項1に記載の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
- 請求項5に記載の形質転換体を培地中で培養し、培養物から好熱性アミノペプチダーゼを採取することを特徴とする、請求項1に記載の好熱性アミノペプチダーゼ活性を有するポリペプチドの製造方法。
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