JP4021682B2 - 酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法及び検出用キット - Google Patents

酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法及び検出用キット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2A型蛋白脱リン酸化酵素(PP2A:プロテインフォスファターゼ2A)を利用した酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法及び定量方法、検出用キットに関し、更に詳しくは、食用二枚貝などに含まれる貝毒、例えばオカダ酸などの下痢誘発性貝類毒素、或いは淡水産有毒藍藻類の生産するミクロシスチン類などの毒素がPP2Aなどの酵素の活性を阻害する性質を持っていることを利用し、毒素による酵素活性阻害の度合を検出し、これを指標として毒素の存在及び量を検出する方法及び毒素検出用キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
牡蠣やホタテ貝などの食用二枚貝の増・養殖事業は、飼料投与が不要で低コストであり、また環境負荷が少ないことから沿岸漁業として重要視され世界的に増加している。然しながら、これら二枚貝の餌となる植物プランクトンの中には有毒種があり、有毒種植物プランクトンが増加することによって貝が毒を蓄積することがある。蓄積された毒は一般に貝毒と呼ばれているが、これらの内、下痢誘発性貝類毒素(DSP;diarrheic shellfish poison)と呼ばれる貝毒は代表的な一種で、世界的にみても、広範な地域で毎年且つ長期に渡って出現している。
【0003】
上記事情から、出荷予定の二枚貝の貝毒検査は重要であり、貝毒が検出されたら食品としての安全性の確保のために迅速な出荷停止が必要であり、貝毒が検出されなくなれば漁業被害の軽減のために速やかな出荷再開が必要である。このため、迅速且つ適切な判断が重要となっており、その判断の前提となる適切・簡便な貝毒検出方法及び定量法並びに検出ユニットの確立が切望されている。
【0004】
現在、下痢性貝毒に対する公的検査法は、マウス致死毒性を指標にするので、検査の実施には、実験動物施設を有する検査機関に試料を送付し、毒を抽出してマウスの腹腔内に注射し、その後の24時間を観察に当てているが、実施機関が限定されていて不便なだけでなく、結果の判定に時間が掛かり、費用も高価である。加えて、マウス法は感度、精度、選択性にも乏しい難点がある。
【0005】
上記のマウス法の代替として提案された機器分析法は、高価な装置と熟練者を要する。また、酵素免疫法も提案されているが、操作の簡便性では優れているものの、使用するキットが高価であり、測定の精度と感度に問題があると指摘されている。また、単検体検査に比べ、多検体検査では長い測定時間が必要である難点がある。
【0006】
他方、貝毒がPP2Aなどの酵素の活性を阻害する性質を持っていることを利用して貝毒を検出する方法が提案されている。利用する酵素PP2Aは、ヒト赤血球やウサギ筋肉由来のものが市販されているが、性能が低いために、試料として利用するには前処理が必要であるだけでなくそれ自体高価であることに加えて、高価な蛍光検出装置を必要とし、精度も劣っている。
【0007】
特表平10−507321号公報には、ホスファターゼの阻害に基づくウズベン毛藻類からの下痢誘発性甲殻類毒素(DSP)の検出並びに定量方法が開示されている。この方法で利用されるPP2Aは、人間の赤血球、若しくは、これらの酵素が豊富な組織から、またはその部分的精製を経て得られたものである。また、PP2Aが豊富な組織として兎の筋肉が示されている。
【0008】
関連酵素ではあるがDSPに対する選択性の低いPP1は、大腸菌を利用して調整することも可能であるが、貝毒検出では、上記したように、ヒト赤血球やウサギ筋肉から精製したものが利用されている。
【0009】
本発明者らは、陸上動植物に加えて、これまで探索の行われたことのない水生生物を調べ、鯉とホタテ貝の筋肉から精製したPP2Aの活性阻害を利用した下痢性貝毒(OAs:オカダ酸群)の検出方法を、2001年4月1〜5日開催の平成13年度日本水産学会春季大会に発表した。即ち、本発明者らは、PP2Aなどの酵素の活性阻害を利用した貝毒の検出方法では、利用する酵素の性質が重要なファクタであり、特に、酵素がその由来する生物種の違いにより活性及び活性阻害の度合いが異なるとの知見を得た。そして、これまで探索の行われたことのない水生生物を調べ、鯉とホタテ貝の筋肉組織に由来する酵素PP2Aが、従来の市販酵素に比較して約2〜4倍のオカダ酸に対する感度の向上をもたらすとの知見を得て、上記学会に報告した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上記知見を基に更に研究を進めた結果、ツブ貝に由来するPP2Aの活性が、例えば下痢性貝毒の主成分であるオカダ酸群(OAs)によって特異的に阻害されるとの新たなる知見を得て本発明の完成に至った。
【0011】
上記から明らかなように、本発明は、本発明者らによって見出されたツブ貝に由来するPP2Aを利用することによって、高収量であり、簡便、迅速、高精度且つ安価に行うことが可能である酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法及び定量方法、検出用キットを明らかにすることを課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記構成を有する。
1.2A型蛋白脱リン酸化酵素(PP2A:プロテインフォスファターゼ2A)の活性阻害を測定して、試料中の貝毒或いは毒素を検出する毒素の検出方法において、前記PP2Aが、ツブ貝の組織を酵素源とし、下記精製方法によって得られたことを特徴とする酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
〔PP2Aの精製方法〕
(1)原料の採取、(2)トリス緩衝液抽出、(3)硫安沈殿、(4)エタノール沈殿、(5)透析、(6)陰イオン交換、(7)疎水クロマト、(8)限外濾過濃縮、(9)ゲル濾過、(10)陰イオン交換、(11)保存、の各工程により行われる前記PP2Aの精製方法において、前記原料がツブ貝の組織であることを特徴とするPP2Aの精製方法。
【0013】
2.前記PP2Aの活性阻害を示す発色用の基質としてパラニトロフェノールリン酸エステルを含む発色或いは蛍光基質が用いられることを特徴とする前記1に記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
【0014】
3.酵素の検出及び定量に下記オカダ酸(OA)標準溶液を使用することを特徴とする前記1又は2に記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
【化3】
Figure 0004021682
(R :H、R :H)
【0015】
4.前記試料中の貝毒が、下記オカダ酸群(OAs)の貝毒であり、このOAsのエステル誘導体群については、アルカリ加水分解後に測定することを特徴とする前記1〜3の何れかに記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
【化4】
Figure 0004021682
【0016】
5.前記PP2Aを容器に収納した酵素試薬ユニットと、貝毒或いは毒素の定濃度定量を容器に収納した標準毒素溶液ユニットと、酵素活性阻害の度合を目視ないしマイクロプレートリーダー判定するための標準となる色、蛍光、発光の程度などをカラー表示した目視ないしマイクロプレートリーダー判定ユニットとから成り、試料中の貝毒或いは毒素を検出する毒素検出用キットにおいて、前記PP2Aがツブ貝の組織を酵素源とし、下記精製方法によって得られたことを特徴とする酵素の活性阻害を指標とする毒素検出用キット。
〔PP2Aの精製方法〕
(1)原料の採取、(2)トリス緩衝液抽出、(3)硫安沈殿、(4)エタノール沈殿、(5)透析、(6)陰イオン交換、(7)疎水クロマト、(8)限外濾過濃縮、(9)ゲル濾過、(10)陰イオン交換、(11)保存、の各工程により行われる前記PP2Aの精製方法において、前記原料がツブ貝の組織であることを特徴とするPP2Aの精製方法。
【0017】
6.前記(8)限外濾過濃縮及び/又は(10)陰イオン交換の工程で、ウシ血清アルブミン及び/又は蛋白質の添加が行われることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
【0018】
7.前記(8)限外濾過濃縮及び/又は(10)陰イオン交換の工程で、ウシ血清アルブミン及び/又は蛋白質の添加が行われることを特徴とする前記に記載の酵素の活性阻害を指標とする毒素検出用キット。
【0019】
本発明の構成上の特徴は、ツブ貝由来のPP2Aを使用することであり、基本として,パラニトロフェノールリン酸エステルを基質に使用し、マイクロプレートリーダーを用いて波長405nmで発色を測定する。例えば、測定には96穴400マイクロリットル容のマイクロプレートを使用する。そして、検定にはオカダ酸標準溶液を使用する。また、OAsのエステル誘導体群については、アルカリ加水分解後に測定に供する。
【0020】
本発明の好ましい実施態様としては、PP2Aの調製の際の限外ろ過の段階で、ウシ血清アルブミンの添加が最も好ましいが、他の蛋白で代用することも可能であり、収量を無視にすれば,蛋白の添加なしでも行える。
【0021】
低コストと簡便性の点で、発色用基質としてはパラニトロフェノールリン酸エステルの使用が最も好ましいが、特殊な試料(例えば極微量の試料)について一層の高感度が必要な場合は、市販の蛍光基質を使用し、蛍光マイクロプレートリーダーの使用が可能である。そして、エステル群の加水分解にはアルカリを用いるのが最も好ましいが、加水分解酵素の使用も可能である。
【0022】
本発明者らは、ツブ貝中に従来の哺乳類組織や植物種子並びにホタテ貝やコイの水生生物の筋肉に比べてPP2Aの含量が高く、かつ、得られるPP2AのOAsに対する感度も高いことを見出し、本発明に至った。
【0023】
得られたPP2Aは、マイクロプレート測定に使用することを主目的としたが、酵素の低価格性、安定性、OAsに対する高感度性は、一般の生化学試験にも極めて有用なことを示している。水生生物由来PP2Aを試薬として販売・供給することも可能である。
【0024】
PP2Aは下痢性貝毒(OAs)のみならず、淡水産有毒藍藻類の生産するミクロシスチン類によっても強い阻害を受けるので、ミクロシスチン類の検出・定量にも使用可能である。よってミクロシスチン類検出法としての応用も可能である。
【0025】
測定の対象としては、二枚貝や藍藻以外にもOAsやミクロシスチン類を含んだ全ての試料が含まれ、例えば生化学実験での試料も含まれる。
【0026】
発色用の基質としては、パラニトロフェノールリン酸エステル以外にも多くの発色あるいは蛍光基質が市販されており、測定の原理は本法と全く同一である。よって、同一原理に基づく発色・蛍光基質の使用を、本発明は包含する。
【0027】
発色用の基質を使用した場合、精度と感度は低下するものの肉眼的な判定も可能である。したがって、マイクロプレートリーダーを用いない簡便法としての使用も、本発明は包含する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳述する。
本発明に係るPP2Aの精製について説明する。
精製は、(1)原料の採取、(2)トリス緩衝液抽出、(3)硫安沈殿、(4)エタノール沈殿、(5)透析、(6)陰イオン交換、(7)疎水クロマト、(8)限外濾過濃縮、(9)ゲル濾過、(10)陰イオン交換、(11)保存、の各工程により行われる。この工程は、定法とされている精製法(高井章、血栓止血誌8504、1997参照)を基礎として、改良が加えられている。
【0029】
上記工程について、本発明の特徴点を主に順次説明する。
(1)原料の採取(ツブ貝組織の採取)
PP2Aを精製する材料としてツブ貝が利用される。ここでツブ貝とは、エゾバイ科のエゾボラモドキやヒメエゾボラなど通称「ツブ貝」と呼ばれる貝を指称し、日本産に限定されるものではない。
【0030】
先ずツブ貝の筋肉組織が採取される。採取部位は、筋肉部である。
【0031】
尚、ツブ貝の唾液腺中にはテトラミンと呼ばれる神経性食中毒を起こす貝毒が含まれていることがあり、検出対象(試料)の貝毒の検出に誤動作を生じさせることが考えられるので、ツブ貝の筋肉組織の採取に当たっては、充分な注意が必要である。殊に大量製造の場では、筋肉組織の採取に先立ち唾液腺を含む周囲を予め切除しておくことが好ましい。
【0032】
(2)トリス緩衝液抽出
上記(1)により得られた原料を1mm×1mm程度に裁断し、トリス緩衝液(pH7.0)にて抽出を行う。
【0033】
(3)硫安沈殿(可溶画分の分離)
上記で得られた抽出液から、55%硫安を用いて可溶画分の沈殿を行う。
【0034】
(4)エタノール沈殿(PP2A活性サブユニットの分離)
可溶画分の分離された抽出液にエタノール(5倍量)を加えてPP2A活性サブユニットの分離を行う。
【0035】
(5)透析
上記により分離されたPP2A活性サブユニットにトリス緩衝液を加えて可溶化した後に透析を行う。
透析は、公知の方法を特別の制限なく採用できる。
【0036】
(6)陰イオン交換
陰イオン交換(Q−sepharose)は、公知の方法を特別の制限なく採用できる。
【0037】
(7)疎水クロマト
疎水クロマト(Phenyl−sepharose HP:PP1との分離)は、公知の方法を特別の制限なく採用できる。
【0038】
(8)限外濾過濃縮
上記により分離された組成分にウシ血清アルブミンを添加して限外濾過装置により濾過を行って濃縮する。ウシ血清アルブミンの利用が最も好ましいが、他の蛋白で代用することも可能であり、収量を犠牲にすれば、蛋白の添加なしでも行うことも可能である。
【0039】
定法とされている上記高井による精製法では、限外濾過操作などで酵素の損失が著しいことが認められた。上記のように、ウシ血清アルブミンを添加することで非特異的吸着を軽減した結果、収量の顕著な改善が達成された。
【0040】
(9)ゲル濾過
ゲル濾過(Sephacrryls200)は、公知の方法を特別の制限なく採用できる。
【0041】
(10)陰イオン交換
上記により分離された組成分にウシ血清アルブミンを添加して、陰イオン交換(Mono−Q)を行う、陰イオン交換は、公知の方法を特別の制限なく採用できる。
【0042】
(11)保存
50%グリセロール緩衝液(DTT)を用いて−20℃で保存する。
【0043】
次に、毒素の検出(分析)方法について説明する。
本発明に係る毒素の検出方法では、PP2Aの活性阻害の判定は、公知の手段により行われ、例えば、マイクロプレートリーダ法、目視判定法などの何れであってもよい。
【0044】
具体的には、PP2Aはマイクロ滴定用プレートに載置され、プレートウェル内で濃度90%のメタノールによる試料抽出物を反応させることによって、毒物の有無を決定するための分析がなされる。毒物の有無は、PP2Aの活性を、OAの各標準溶液と比較することによって決定される。
【0045】
毒素の活性は、分光光度計、蛍光計、発光計による遊離の燐酸塩の色、蛍光(蛍光基質の場合)、発光(発光基質の場合)によって各々定量されるが、これらは、異なるタイプのPP2A基質から生成されるものである。
【0046】
尚、前記マイクロプレートリーダ法については、公知の方法を特別の制限なく採用できる。
【0047】
低コストと簡便性の点で、発色用基質としてはパラニトロフェノールリン酸エステルの使用が最も好ましいが、特殊な試料(例えば極微量の試料)について一層の高感度が必要な場合は、市販の蛍光基質を使用し、蛍光マイクロプレートリーダーの使用が可能である。
【0048】
エステル群の加水分解にはアルカリを用いるのが最も好ましいが、加水分解酵素の使用も可能である。
【0049】
目視判定法は、ツブ貝の組織を精製して得られるPP2Aを容器に収納した酵素試薬ユニットと、前記OAsなどの貝毒の定濃度定量を容器に収納した標準毒素溶液ユニットと、酵素活性阻害の度合を目視ないしマイクロプレートリーダー判定するための標準となる色、蛍光、発光の程度などをカラー表示した目視ないしマイクロプレートリーダー判定ユニットとから成るキットを利用して、試料中のOAsなどの貝毒或いはミクロシスチン類などの毒素を検出するものである。貝毒の検出に特別な機器装置を必要としないので安価・軽便である。
【0050】
酵素試薬ユニットについて説明する。このユニットは、上記精製方法で得られたツブ貝由来のPP2Aであり、例えば、保存中に凍結しないようにグリセロールを添加し、容器に収納して−20℃程度に保存したものを利用する。利用に際しては、例えば室温に10分程度放置した後にそのまま利用する。検査時の適温は、15〜28℃の範囲である。
【0051】
容器としては、例えば、ガラスやプラスチックス製などのビンや袋、或いは小区画に区分されたプレートなどが利用される。
【0052】
標準毒素溶液ユニットは、OAsなどの貝毒の定濃度定量を容器に収納し、例えば2〜6℃の範囲の温度で保存したものを利用する。標準となる貝毒は、検査対象となる牡蠣或いはホタテ貝に由来するものに限定されない。各種の有害渦鞭藻類から分離し精製したものが利用されるが、これに限定されるものではない。
【0053】
標準毒素溶液ユニットは、検査対象となる牡蠣やホタテ貝の試料の温度と略等しい温度で利用する。目視判定を容易にするために、上記した酵素試薬ユニットが利用される容器と同種の容器に定量が配分して利用されるのが好ましい。
【0054】
目視判定ユニットは、上記した酵素活性阻害の度合を目視判定するための標準となる色の程度などをカラー表示したものである。pHを検出するリトマス試験紙と指標となるカラー表示を想定すれば理解が容易である。
【0055】
上記したキットは、貝毒の検出を機器装置を利用して行う検査方法の場合にも用いることができる。
【0056】
【実施例】
次に、本発明を各種の実験例で説明する。
尚、図1に、本発明を適用するOAsの構造式を示す。
【0057】
実験1:ツブ貝の筋肉組織が豊富なPP2Aを含有し、OAに対する感度が良好であることをすることを実証する実験を行った。
【0058】
ツブ貝として、日本産のヒメエゾボラガイ(原料1)を利用し、比較原料として、ホタテ貝(比較原料1)を利用した。尚、ヒト赤血球及びウサギ(兎)の組織を酵素源とするPP2Aは市販品を用いた。また、コイ(鯉)については、原料1、比較原料1と同じ下記精製法によりPP2Aを得た。
【0059】
上記した原料1、比較原料1を用いて、それぞれ同量から、図5に示す精製法により精製してPP2Aを得た。得られたPP2Aについて、動物種の違いによるPP2Aのオカダ酸による阻害率の比較を行った処、図2に示す結果が得られた。また、ホタテ貝及びツブ貝について、収量の推移を計測した処、図3の結果が得られた。本発明による精製酵素収量の増加が顕著である。
【0060】
また、原料1及び比較原料1から得られたPP2Aのオカダ酸に対する感度比較を行った処、図4に示す結果が得られた。本発明のツブ貝組織を酵素源とするPP2Aの感度は、ホタテ貝のそれと同等であることが判明した。
【0061】
次に、OAsに対する試験を図7に示す操作にて行った。PP2Aとしてツブ貝組織を酵素源とするものを用いた場合の阻害率を図6に示す。DTX3(ジノフィシストキシン−3)加水分解によるPP2A阻害率の向上が顕著であった。
【0062】
本発明に係るツブ貝由来の酵素PP2Aの貝毒(オカダ酸)に対する感度を実証するために、ホタテ貝筋肉組織由来の酵素を利用する分析と比較した。結果は、図4に示すように、略同等の感度であることが実証された。
【0063】
次に、ホタテ貝の貝毒(OA)が中腸腺に多く含まれるため、原料1から得られた本発明のPP2Aを用い、ホタテ貝中腸腺添加回収試験を行った処、表1の結果が得られた。
【0064】
【表1】
Figure 0004021682
【0065】
表中、中腸腺−1は宮城県産のホタテ貝、中腸腺−2は岩手県産ホタテ貝に由来するものを示し、回収率が70%以上であれば実用上全く問題がない。
【0066】
以上の説明から、本発明が下記の優位性を持つことは明らかである。
【0067】
迅速性で優位であること:マウス試験法が24時間のマウスの観察を必要とするのに対して、試料調製を含めて約3時間で測定を終了できる。機器分析法では、1検体の測定では大差がないものの、多検体では測定時間に大差が生じる。
【0068】
感度で優位であること:マウス試験法の20倍の感度があり、酵素免疫法に比べても4倍感度が高い。
【0069】
簡便性で優位であること:動物実験施設などの特殊な施設や、高価な機器分析装置と熟練者は不要である。従来の市販酵素を使用した分析法では、抽出試料の前処理や感度を増強するための蛍光基質と高価な蛍光マイクロプレートリーダを必要としたが、酵素の性能が向上したことで、前処理や蛍光基質を不要とした。
【0070】
多検体処理で優位であること:抽出液の精製が不要であり、マイクロプレートを使用することで多数検体が同時処理できる。
【0071】
精度で優位であること:酵素の性能が向上したことによって、市販酵素を使用した従来技術に比べて著しく精度が向上した。同じくマイクロプレートを使用する酵素免疫法に比べても精度が高い。これは、酵素免疫法(エライザ法)では、未反応の抗体や試薬を洗浄によって除去する操作が2回もあり、大きな誤差要因となっているからである。
【0072】
高特異性で優位であること:マウス法では下痢性貝毒と区別できない他の貝毒(ペクテノトキシンやイェッソトキシン)には反応しないが、酵素阻害作用のないエステル類をアルカリまたは加水分解酵素で変換して特異的に測定することができる。
【0073】
多目的使用に優位であること:下痢性貝毒以外にもミクロシスチン類に応用可能なので、環境分析にも応用できる。また、各種の生化学試験の試料にも応用できる。なお、従来法のミクロシスチン検出定量法は、PP1型酵素を使用しており、この酵素はミクロシスチンには高い結合性を示すが、オカダ酸類に対する結合能は低い。従って、下痢性貝毒検出法に転用することは困難である。一方、PP2Aのミクロシスチン類に対する結合能は低いが、ミクロシスチンに対して必要とされる検出限界は、オカダ酸に比べて数10倍も高く設定されているので、PP2Aを使用することは可能である.
【0074】
【発明の効果】
酵素源として利用するツブ貝(ヒメエゾボラガイなど)は、周年の入手が可能で安価且つ容易であること、図3に示すように、筋肉中の酵素PP2A含量がホタテ貝由来のものに比べて格段に高いこと、図4に示すように、オカダ酸などの貝毒や有害藻類に由来する毒素などに対する感度が高いことから酵素原料として非常に優れており、本発明に係る酵素精製方法によれば、ツブ貝組織から高収量でPP2Aを得ることができ、本発明に係る酵素検出用キットの利用により、短時間で容易に貝毒などの有無及び定量分析を行うことができるので、頭記した課題が解決される。
【図面の簡単な説明】
【図1】下痢性貝毒(OAs:オカダ酸群)の構造式
【図2】動物種の違いによるPP2Aのオカダ酸による阻害率の違いを比較するグラフ
【図3】ホタテ貝及びツブ貝での収量の推移を示すグラフ
【図4】精製PP2Aのオカダ酸に対する感度を比較するグラフ
【図5】PP2A精製法の概要を示すフローチャート
【図6】DTX3(ジノフィシストキシン−3)加水分解によるPP2A阻害率の変化を示すグラフ
【図7】オカダ酸群(OAs)の試験方法を示すフローチャート

Claims (7)

  1. 2A型蛋白脱リン酸化酵素(PP2A:プロテインフォスファターゼ2A)の活性阻害を測定して、試料中の貝毒或いは毒素を検出する毒素の検出方法において、前記PP2Aが、ツブ貝の組織を酵素源とし、下記精製方法によって得られたことを特徴とする酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
    〔PP2Aの精製方法〕
    (1)原料の採取、(2)トリス緩衝液抽出、(3)硫安沈殿、(4)エタノール沈殿、(5)透析、(6)陰イオン交換、(7)疎水クロマト、(8)限外濾過濃縮、(9)ゲル濾過、(10)陰イオン交換、(11)保存、の各工程により行われる前記PP2Aの精製方法において、前記原料がツブ貝の組織であることを特徴とするPP2Aの精製方法。
  2. 前記PP2Aの活性阻害を示す発色用の基質としてパラニトロフェノールリン酸エステルを含む発色或いは蛍光基質が用いられることを特徴とする請求項1に記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
  3. 酵素の検出及び定量に下記オカダ酸(OA)標準溶液を使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
    Figure 0004021682
    (R :H、R :H)
  4. 前記試料中の貝毒が、下記オカダ酸群(OAs)の貝毒であり、このOAsのエステル誘導体群については、アルカリ加水分解後に測定することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
    Figure 0004021682
  5. 前記PP2Aを容器に収納した酵素試薬ユニットと、貝毒或いは毒素の定濃度定量を容器に収納した標準毒素溶液ユニットと、酵素活性阻害の度合を目視ないしマイクロプレートリーダー判定するための標準となる色、蛍光、発光の程度などをカラー表示した目視ないしマイクロプレートリーダー判定ユニットとから成り、試料中の貝毒或いは毒素を検出する毒素検出用キットにおいて、前記PP2Aがツブ貝の組織を酵素源とし、下記精製方法によって得られたことを特徴とする酵素の活性阻害を指標とする毒素検出用キット。
    〔PP2Aの精製方法〕
    (1)原料の採取、(2)トリス緩衝液抽出、(3)硫安沈殿、(4)エタノール沈殿、(5)透析、(6)陰イオン交換、(7)疎水クロマト、(8)限外濾過濃縮、(9) ゲル濾過、(10)陰イオン交換、(11)保存、の各工程により行われる前記PP2Aの精製方法において、前記原料がツブ貝の組織であることを特徴とするPP2Aの精製方法。
  6. 前記(8)限外濾過濃縮及び/又は(10)陰イオン交換の工程で、ウシ血清アルブミン及び/又は蛋白質の添加が行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酵素活性阻害を指標とする毒素の検出方法。
  7. 前記(8)限外濾過濃縮及び/又は(10)陰イオン交換の工程で、ウシ血清アルブミン及び/又は蛋白質の添加が行われることを特徴とする請求項に記載の酵素の活性阻害を指標とする毒素検出用キット。
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