JP4020669B2 - 鋳造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属溶湯を金型のキャビティに注湯して鋳造品を得るための鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、単にアルミニウムという)の溶湯を鋳造成形用金型内のキャビティに注湯することにより、種々のアルミニウム部品を鋳造する作業が広く行われている。
【0003】
ところで、アルミニウム部品の鋳造工程では、キャビティに注湯されるアルミニウムの溶湯表面に酸化被膜が生成され易い。このため、アルミニウムの溶湯の表面張力が大きくなり、前記溶湯の流動性等が低下し、種々の鋳造欠陥が発生するという問題が指摘されている。
【0004】
そこで、例えば、特開2001−321920号公報に開示されている還元鋳造用成形型が使用されている。具体的には、図8に示すように、金型1は、成形用キャビティ1aを設けるとともに、このキャビティ1aには、注湯槽2に貯留されているアルミニウム溶湯3が孔部4を介して注湯自在である。
【0005】
金型1には、配管5を介して窒素ガスボンベ6が接続される一方、アルゴンガスボンベ7は、配管8を介して加熱炉9に接続されている。アルゴンガスボンベ7は、配管10を介してマグネシウム粉末が使用されているタンク11に接続され、このタンク11は、配管12を介して配管8に接続されている。
【0006】
加熱炉9は、ヒータ13を介して炉内温度を所定の温度に加熱可能に構成されており、この加熱炉9は、配管14およびパイプ15を介してキャビティ1aに連通している。
【0007】
このような構成において、まず、窒素ガスボンベ6から配管5を介して金型1のキャビティ1aに窒素ガスが注入され、このキャビティ1a内の空気を前記窒素ガスによってパージする。このため、キャビティ1a内は、実質的に非酸素雰囲気となっている。一方、アルゴンガスボンベ7から配管8を介して加熱炉9内にアルゴンガスが注入される。従って、この加熱炉9内は、無酸素状態となっている。
【0008】
次いで、アルゴンガスボンベ7から配管10を介してタンク11内にアルゴンガスが供給され、このタンク11内のマグネシウム粉末を配管8から加熱炉9内に送り込む。その際、加熱炉9では、ヒータ13によりマグネシウム粉末が昇華する温度以上の炉内温度に加熱されている。これにより、加熱炉9に送り込まれたマグネシウム粉末は、昇華してマグネシウムガスとなり、このマグネシウムガスが配管14からパイプ15を介してキャビティ1a内に注入される。さらに、キャビティ1aには、窒素ガスボンベ6から窒素ガスが注入される。
【0009】
このため、キャビティ1aでは、マグネシウムガスと窒素ガスとが反応して窒化マグネシウム(Mg3N2)が生成される。この窒化マグネシウムは、キャビティ1aの内壁面に粉体として析出される。
【0010】
そこで、注湯槽2内のアルミニウム溶湯3が、孔部4からキャビティ1a内に注湯される。窒化マグネシウムは活性物質であり、アルミニウム溶湯3がキャビティ1a内でこの窒化マグネシウムと接触することによって、前記アルミニウム溶湯3の表面の酸化被膜から酸素が除去される。これにより、アルミニウム溶湯3の表面が純粋なアルミニウムに還元される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、ヒータ13が設けられた加熱炉9を備えており、装置全体が相当に大型であるという問題がある。従って、マグネシウムガスの反応に必要な熱量が増大するおそれがある。しかも、加熱炉9内で生成されたマグネシウムガスをキャビティ1aに注入するために、比較的長尺な配管14が必要である。さらに、金型1には、配管5、14およびパイプ15等が接続されている。これにより、金型1の交換時の段取り換え工程が多く、作業が繁雑であるという問題がある。
【0012】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、装置全体を有効に小型化するとともに、所望の鋳造作業を効率的に遂行することができ、しかも金型の段取り換えが容易な鋳造装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る鋳造装置では、アルミニウム溶湯をキャビティに供給して鋳造品を得る金型に、加熱されたアルゴンガスをマグネシウムに吹き付けることにより、少なくともマグネシウムガスまたは前記マグネシウムガスが凝集したマグネシウム微粒子を発生させるとともに、少なくとも前記マグネシウムガスまたは前記マグネシウム微粒子を前記アルゴンガスの流れに沿って前記キャビティ内に導入する微粒子発生機構と、少なくとも前記マグネシウムガスまたは前記マグネシウム微粒子と反応して前記アルミニウム溶湯よりも酸素に対して活性な活性物質(以下、酸化し易い物質ともいう)を生成するための反応性ガスを、前記キャビティに供給する反応性ガス供給機構とが、それぞれ異なる供給部位に対応して直結されている。
【0014】
このため、まず、キャビティには、微粒子発生機構から生成直後のマグネシウム微粒子が導入されるとともに、反応性ガス供給機構から反応性ガスが供給され、前記マグネシウム微粒子と前記反応性ガスとが反応して活性物質が生成される。次いで、キャビティにアルミニウム溶湯が注湯されると、活性物質が前記キャビティ内の酸素と優先的に結合しアルミニウム溶湯表面の酸化を有効に抑制することができる。従って、アルミニウム溶湯の流動性等を維持することが可能になり、良好な鋳造作業を円滑に行うことができる。
【0015】
しかも、微粒子発生機構が金型に直結されており、マグネシウム微粒子用の配管路が不要になるとともに、従来の大型な加熱炉が不要になる。これにより、装置全体の小型化および簡素化が容易に図られるとともに、反応に必要な熱量が削減される。さらにまた、微粒子発生機構および反応性ガス供給機構を金型に対して着脱することにより、例えば、金型交換時の段取り換え工程が有効に削減され、作業の効率化が図られる。
【0016】
ここで、例えば、反応性ガスが窒素ガスであり、活性物質が窒化マグネシウム(Mg3N2)であるとともに、この窒化マグネシウムは、反応によってMg3N2微粒子となっている。このMg3N2微粒子は、酸化し易い物質であり、アルミニウム鋳造に使用されるアルミニウム溶湯よりも酸素と優先的に結合し、前記アルミニウム溶湯の酸化を有効に抑制することができる。
【0017】
また、アルミニウム溶湯をキャビティに供給して鋳造品を得る金型に、反応ユニットが直結されるとともに、前記反応ユニットには、マグネシウム微粒子を生成する微粒子発生機構と、前記マグネシウム微粒子と反応して前記アルミニウム溶湯よりも酸素に対して活性な活性物質を生成する反応性ガスを供給する反応性ガス供給機構とが連結されている。
【0018】
そこで、まず、反応ユニットには、微粒子発生機構から生成直後のマグネシウム微粒子が導入されるとともに、反応性ガス供給機構から反応性ガスが供給され、前記マグネシウム微粒子と前記反応性ガスとが反応して活性物質が生成される。次いで、反応ユニットからキャビティに活性物質が供給される一方、前記キャビティにアルミニウム溶湯が注湯される。このため、活性物質がキャビティ内の酸素と優先的に結合し、アルミニウム溶湯表面の酸化を有効に抑制してアルミニウム溶湯の流動性等を維持することが可能になり、良好な鋳造作業を円滑に行うことができる。
【0019】
さらにまた、金属溶湯をキャビティに供給して鋳造品を得る金型に、加熱されたアルゴンガスを固体金属に吹き付けることにより、前記金属溶湯よりも酸素に対して活性な、少なくとも金属ガスまたは前記金属ガスが凝集した金属微粒子を発生させるとともに、少なくとも前記金属ガスまたは前記金属微粒子を前記アルゴンガスの流れに沿って前記キャビティ内に導入する活性物質発生機構が直結されている。その際、金属溶湯がアルミニウム溶湯であり、活性物質が窒化マグネシウムまたはマグネシウム微粒子の少なくともいずれかである。
【0020】
このマグネシウム微粒子は、アルミニウム溶湯に比べて酸化し易い物質であり、前記アルミニウム溶湯の酸化を有効に阻止することが可能になる。従って、アルミニウム溶湯が使用される際に、良好な鋳造作業が確実かつ効率的に遂行される。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る鋳造装置20の要部概略構成説明図である。
【0022】
鋳造装置20は、鋳造成形用金型21と、それぞれ前記金型21に個別に着脱自在に直結される金属微粒子発生機構22および高温ガス発生機構(反応性ガス供給機構)24とを備える。金属微粒子発生機構22は、粉末状の金属、例えば、マグネシウム26が、例えば、SUS材(ステンレス鋼)製のフィルタ(多孔質体)28a、28bを介して収容される金属保持部30と、前記金属保持部30に設けられ、前記フィルタ28aを透過して前記マグネシウム26に不活性ガス、例えば、アルゴンガスを供給する筒状部32と、前記筒状部32に供給される前記アルゴンガスの流量を制御するアルゴンガス流量制御部34と、前記筒状部32に設けられ、前記マグネシウム26に供給される前記アルゴンガスを所定の温度に加熱するアルゴンガス加熱制御部36とを備える。
【0023】
金属保持部30は、金型21に対して着脱可能であるとともに、前記金型21内のキャビティ40に連通する。金属保持部30は、貫通する略箱状に構成されており、金型21の孔部40a側には、必要に応じて溶湯逆流防止機構42が装着される。
【0024】
図1および図2に示すように、溶湯逆流防止機構42は、金型38に固定されるステイ43と、前記ステイ43に対してスライド可能なスライドキー44とを備える。ステイ43には、孔部40aと同軸的に孔部43aが形成されるとともに、スライドキー44には、前記孔部40aと前記孔部43aとを開閉自在な孔部44aが形成されている。なお、金属微粒子発生機構22が、溶湯の逆流を発生するおそれのない部位に配設されている際には、溶湯逆流防止機構42を採用しなくてもよい。
【0025】
金属保持部30内には、例えば、カートリッジ46が交換可能に収容される。図2に示すように、カートリッジ46は、略円筒状のケース48を備えており、このケース48内には、一端部側の底部48aに着座してフィルタ28aが挿入されている。ケース48内では、フィルタ28aとフィルタ28bとの間に、粉末状のマグネシウム26が封入される。ケース48の他端部側の内周には、ねじ溝50が形成されており、このねじ溝50に止めねじ51が螺合している。
【0026】
金属保持部30には、カートリッジ46を着脱するために開閉自在な蓋体30aが設けられている。この蓋体30aは、例えば、金属保持部30に対して図示しない蝶番を介し揺動自在に構成されていてもよく、また、前記金属保持部30に対してスライド可能に構成されていてもよい。
【0027】
金属保持部30には、筒状部32の一端が装着される。この筒状部32内には、発熱体、例えば、電熱線54が配置されており、この電熱線54が前記筒状部32の外部で電流/電圧制御器56を介して電源58に接続され、アルゴンガス加熱制御部36を構成している(図3参照)。
【0028】
筒状部32の端部に管路60が接続されており、この管路60には、アルゴンガス流量制御部34を構成するアルゴンガスボンベ62が接続される。アルゴンガスボンベ62は、開閉弁64および流量制御弁65を介して筒状部32に連通自在である。
【0029】
高温ガス発生機構24は、金属微粒子発生機構22と略同様に構成されており、金型21に着脱自在な筒状部66と、窒素ガス流量制御部68と、窒素ガス加熱制御部70とを備えている。窒素ガス加熱制御部70は、筒状部66内に配置される電熱線74と、電流/電圧制御器76と、電源78とを備える。窒素ガス流量制御部68は、筒状部66の他端部に連通する管路80を備え、この管路80は、窒素ガスボンベ82に開閉弁84および流量制御弁86を介して接続される。
【0030】
このように構成される鋳造装置20の動作について、以下に説明する。
【0031】
まず、金属保持部30には、カートリッジ46に保持されて粉末状のマグネシウム26が収容されている。具体的には、金属保持部30の外部において、カートリッジ46を構成するケース48は、底部48aを下方にして配置されており、この底部48aに着座してフィルタ28aが挿入される。次いで、フィルタ28a上に粉末状のマグネシウム26が適宜投入された後、フィルタ28bが挿入される。さらに、ケース48のねじ溝50に止めねじ51が螺合して、カートリッジ46内にマグネシウム26が封入される(図2参照)。
【0032】
金属保持部30では、蓋体30aが開放方向に揺動またはスライドされ、この金属保持部30内にカートリッジ46が挿入された後、この蓋体30aが閉塞方向に揺動またはスライドされる。これにより、金属保持部30内にカートリッジ46が装填される。
【0033】
そこで、溶湯逆流防止機構42を構成するスライドキー44の孔部44aを介してステイ43の孔部43aと孔部40aとが開放された状態で、アルゴンガス流量制御部34に先立ってアルゴンガス加熱制御部36が駆動される(図1参照)。このアルゴンガス加熱制御部36では、制御器56により電流/電圧の制御が行われ、電熱線54が発熱して筒状部32の内部が加温される。筒状部32内が所定の温度に至ると、アルゴンガス流量制御部34が駆動される。
【0034】
このアルゴンガス流量制御部34では、アルゴンガスボンベ62から導出されるアルゴンガスが、流量制御弁65により流量を制御されて管路60から筒状部32に導入される。アルゴンガスは、筒状部32を通過する際に電熱線54を介して所定の温度に加熱され、この加熱されたアルゴンガスが金属保持部30を構成するフィルタ28bを透過してマグネシウム26に吹き付けられる。
【0035】
このため、マグネシウム26が蒸発してマグネシウムガスが発生し、このマグネシウムガスは、アルゴンガスの流れに沿って金型21のキャビティ40内に供給される。その際、キャビティ40には、高温ガス発生機構24を介して高温の窒素ガスが供給されている。
【0036】
この高温ガス発生機構24では、金属微粒子発生機構22と略同様に、まず、窒素ガス加熱制御部70が駆動されて筒状部66内が所定の温度に加温された後、窒素ガス流量制御部68が駆動される。従って、窒素ガスボンベ82から筒状部66に供給された所定量の窒素ガスは、所望の温度に加熱された後に前記筒状部66からキャビティ40内に供給される。
【0037】
これにより、キャビティ40内では、マグネシウムガスの一部が凝集してマグネシウム微粒子に変化するとともに、未凝集のマグネシウムガスと高温の窒素ガスとが反応し(3Mg+N2→Mg3N2)、窒化マグネシウム(Mg3N2)の微粒子が生成される。また、マグネシウム微粒子が高温の窒素ガスと反応することによっても、Mg3N2微粒子が生成される。
【0038】
次いで、各溶湯逆流防止機構42を構成するスライドキー44がスライドし、孔部44aが移動してステイ43の孔部43aと孔部40a、40bとが閉塞される。この状態で、金型38のキャビティ40内には、例えば、アルミニウムの溶湯(図示せず)が注湯される。その際、キャビティ40内には、Mg3N2微粒子とマグネシウム微粒子とが存在しており、このMg3N2微粒子が前記キャビティ40内の酸素と優先的に結合し、アルミニウム溶湯の酸化を有効に抑制する。このため、アルミニウム溶湯の流動性等を維持することができ、良好な鋳造作業を行うことが可能になる。
【0039】
一方、マグネシウム微粒子は、アルミニウムに比べて酸化し易い物質(活性物質)である。従って、マグネシウム微粒子は、キャビティ40内の酸素と結びついて、アルミニウム溶湯の酸化を有効に阻止することができる。
【0040】
この場合、第1の実施形態では、金属微粒子発生機構22を構成する金属保持部30が、金型21に直接装着されるとともに、この金属保持部30内に粉末状のマグネシウム26が収容されている。そして、アルゴンガス加熱制御部36を介して所定の温度に維持されている筒状部32内に、アルゴンガス流量制御部34を介して所定量のアルゴンガスが導入されている。
【0041】
これにより、金属保持部30に保持されているマグネシウム26は、所定量および所定温度に制御されたアルゴンガスにより加熱され、所望のマグネシウム微粒子(およびマグネシウムガス)を確実に発生させることができる。しかも、金属保持部30で生成されたマグネシウム微粒子は、金型21内のキャビティ40に直接供給される。
【0042】
従って、従来のような比較的大型な加熱炉や長尺な金属微粒子用の配管路が不要になり、鋳造装置20全体が有効に小型化かつ簡素化されるとともに、マグネシウム微粒子(およびマグネシウムガス)の反応制御が容易にかつ低熱量で経済的に遂行されるという効果が得られる。
【0043】
さらに、高温ガス発生機構24を介して、キャビティ40内に所定量および所定温度に制御された反応性ガスである窒素ガスが供給されている。このため、キャビティ40内でマグネシウムガスと窒素ガスとが良好に反応し、Mg3N2微粒子を良好に生成することが可能になる。
【0044】
さらにまた、金属微粒子発生機構22および高温ガス発生機構24は、金型21に対して着脱可能である。これにより、金型交換時の段取り換え工程が有効に削減されて作業の効率化が図られ、鋳造装置20は、上記の金型21の他、種々の金型に容易に適用することが可能になり、汎用性に優れるという利点がある。
【0045】
なお、第1の実施形態では、粉末状のマグネシウム26をカートリッジ46で保持して金属保持部30内に対して着脱可能に構成しているが、これに限定されるものではない。例えば、マグネシウム26を、直接、金属保持部30内に充填してもよく、あるいは、図3に示すように、例えば、線状や帯状等の長尺状のマグネシウム26aを、カートリッジ46で保持して前記金属保持部30内に配置してもよい。
【0046】
図4は、本発明に関連する鋳造装置100の要部概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る鋳造装置20と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第2乃至第4の実施形態においても同様である。
【0047】
鋳造装置100は、金型21と、前記金型21に着脱自在に直結される活性物質発生機構102とを備える。活性物質発生機構102は、金属保持部30と、前記金属保持部30に装着される筒状部32と、前記筒状部32に所定量の窒素ガスを供給する窒素ガス流量制御部68と、前記筒状部32に設けられ、前記窒素ガスを所定温度に加熱する窒素ガス加熱制御部70とを備えている。
【0048】
このように構成される鋳造装置100では、金属保持部30に粉末状のマグネシウム26(または長尺状のマグネシウム)が収容されており、まず、窒素ガス加熱制御部70が駆動された後、窒素ガス流量制御部68が駆動される。このため、筒状部32内が所定の温度に加温されており、窒素ガスボンベ82から筒状部32内に供給された所定量の窒素ガスが所望の温度に加熱される。
【0049】
従って、金属保持部30に収容されているマグネシウム26(または長尺状のマグネシウム)は、所定量および所望温度の窒素ガスがフィルタ28bを透過して供給されることにより蒸発し、少なくとも一部が窒素ガスと反応してMg3N2微粒子が生成される。これにより、金型21のキャビティ40内には、Mg3N2微粒子とマグネシウム微粒子とが導入され、前記キャビティ40内の酸素と優先的に結合し、アルミニウム溶湯の酸化を有効に抑制することが可能になる。
【0051】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る鋳造装置120の要部概略構成説明図である。
【0052】
この鋳造装置120は、金型21と、前記金型21に着脱自在に直結される活性物質発生機構122とを備える。活性物質発生機構122は、金属保持部30と、前記金属保持部30に装着される筒状部32と、前記筒状部32に所定量のアルゴンガスを供給するアルゴンガス流量制御部34と、前記筒状部32に設けられ、前記アルゴンガスを所定温度に加熱するアルゴンガス加熱制御部36とを備えている。
【0053】
このように構成される鋳造装置120では、アルゴンガス加熱制御部36を介して筒状部32内を加温した状態で、アルゴンガス流量制御部34を介してこの筒状部32に所定量のアルゴンガスが供給される。
【0054】
このため、金属保持部30に収容されているマグネシウム26には、所定量および所定温度のアルゴンガスが供給され、このマグネシウム26が蒸発してマグネシウムガスが発生する。そして、このマグネシウムガスがマグネシウム微粒子に変化し、キャビティ40内に供給される。
【0055】
これにより、キャビティ40内では、マグネシウム微粒子が酸素と結合し、このキャビティ40内を低酸素化状態にしてアルミニウム溶湯の酸化を有効に阻止することが可能になるという効果が得られる。しかも、装置全体の構成が、一挙に簡素化かつ小型化されるとともに、種々の金型21に適用することができるという利点がある。
【0056】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る鋳造装置140の要部概略構成説明図である。
【0057】
鋳造装置140は、鋳造成形用金型142と、金属微粒子発生機構22と、高温ガス発生機構24と、前記金属微粒子発生機構22および前記高温ガス発生機構24が装着されるとともに、前記金型142に直結される反応ユニット144とを備える。
【0058】
反応ユニット144は、金属微粒子発生機構22を構成する金属保持部30が装着される孔部146aと、高温ガス発生機構24を構成する筒状部66が装着される孔部146bとを設ける。孔部146a、146bは、互いに比較的近接して設けられており、反応ユニット144は、反応室148内でマグネシウムガスおよび/またはマグネシウム微粒子と窒素ガスとを反応させてMg3N2微粒子を発生させる機能を有する。
【0059】
この反応ユニット144は、金型142の孔部150側に溶湯逆流防止機構42を介して着脱可能であるとともに、前記金型142内のキャビティ152に連通自在である。なお、反応ユニット144に金属保持部30を一体的に構成してもよい。
【0060】
このように構成される鋳造装置140の動作について、以下に概略的に説明する。
【0061】
金属微粒子発生機構22では、アルゴンガス加熱制御部36を介して筒状部32内を加温した状態で、アルゴンガス流量制御部34を介してこの筒状部32に所定量のアルゴンガスが供給される。このため、金属保持部30に収容されているマグネシウム26が反応してマグネシウムガスが発生し、このマグネシウムガスがマグネシウム微粒子に変化して反応ユニット144の反応室148内に供給される。
【0062】
一方、高温ガス発生機構24では、マグネシウム微粒子発生機構22と略同様に、まず、窒素ガス加熱制御部70が駆動されて筒状部66内が所定の温度に加温された後、窒素ガス流量制御部68が駆動される。従って、窒素ガスボンベ82から筒状部66に供給された所定量の窒素ガスは、所望の温度に加熱された後に反応室148に供給される。
【0063】
これにより、反応室148では、マグネシウムガスの一部が凝集してマグネシウム微粒子に変化するとともに、このマグネシウム微粒子および/または未反応のマグネシウムガスと高温の窒素ガスとが反応し(3Mg+N2→Mg3N2)、Mg3N2微粒子が生成される。反応室148で生成されたMg3N2微粒子は、溶湯逆流防止機構42を通って反応ユニット144が装着されている金型142のキャビティ152内に直接導入される。
【0064】
次いで、溶湯逆流防止機構42が閉じられた後、金型142のキャビティ152には、例えば、アルミニウムの溶湯(図示せず)が注湯される。その際、キャビティ152内には、Mg3N2微粒子が存在しており、このMg3N2微粒子が前記キャビティ152内の酸素と優先的に結合し、アルミニウム溶湯の酸化を有効に抑制する。このため、アルミニウム溶湯の流動性等を維持することができ、良好な鋳造作業を行うことが可能になる。
【0065】
この場合、第3の実施形態では、予め反応ユニット144の反応室148内でマグネシウムガスおよび/またはマグネシウム微粒子と窒素ガスとが反応してMg3N2微粒子が生成されており、所望のMg3N2微粒子を金型142のキャビティ152に確実に供給することができる。従って、キャビティ152に注湯されるアルミニウム溶湯の酸化を有効に抑制することができ、前記アルミニウム溶湯の流動性等を維持して良好な鋳造作業を行うことが可能になるという効果がある。
【0066】
図7は、本発明の第4の実施形態に係る鋳造装置160の要部概略構成説明図である。なお、第3の実施形態に係る鋳造装置140と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0067】
鋳造装置160は、反応ユニット162を備え、この反応ユニット162には、金属微粒子発生機構22と高温ガス発生機構24とが互いの軸線を所定の角度θ°(θ°<90°)だけ傾斜して装着されている。
【0068】
これにより、反応ユニット162の反応室164内では、マグネシウムガスおよび/またはマグネシウム微粒子と窒素ガスとが良好に反応し、所望のMg3N2微粒子が容易かつ確実に生成されるという効果が得られる。
【0069】
なお、第1乃至第4の実施形態では、不活性ガスとしてアルゴンガスを使用するとともに、反応性ガスとして窒素ガスを用いて説明したが、その他の不活性ガスおよび反応性ガスを用いることが可能である。
【0070】
【発明の効果】
本発明に係る鋳造装置では、キャビティに生成直後のマグネシウム微粒子とアルゴンガスとが供給されて、酸化し易い物質である活性物質が生成される。このため、活性物質は、キャビティ内の酸素と優先的に結合し、前記キャビティに注湯されるアルミニウム溶湯表面の酸化を有効に抑制することができる。従って、アルミニウム溶湯の流動性等を維持することが可能になり、良好な鋳造作業を円滑に行うことができる。
【0071】
しかも、微粒子発生機構が金型に直結されており、マグネシウム微粒子用の配管路が不要になるとともに、従来の大型な加熱炉が不要になる。これにより、装置全体の小型化および簡素化が容易に図られるとともに、反応に必要な熱量が削減される。さらに、微粒子発生機構および反応性ガス供給機構を金型に対して着脱することにより、例えば、金型交換時の段取り換え工程が有効に削減され、作業の効率化が図られる。
【0072】
また、金型に反応ユニットが直結されており、この反応ユニットに生成直後のマグネシウム微粒子とアルゴンガスとが供給されて活性物質が生成された後、前記活性物質が前記金型のキャビティに直接導入される。従って、キャビティに所望の活性物質を確実に供給することができ、前記キャビティに注湯されるアルミニウム溶湯表面の酸化を良好に抑制することが可能になる。
【0073】
さらにまた、アルミニウム溶湯よりも酸素に対して活性な活性物質を生成した直後に、前記活性物質をキャビティに直接導入している。これにより、キャビティに注湯されるアルミニウム溶湯表面の酸化抑制が効率的に遂行されるとともに、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係る鋳造装置の要部概略構成説明図である。
【図2】 前記微粒子発生装置の要部分解斜視説明図である。
【図3】 長尺状のマグネシウムが装填された状態の前記鋳造装置の要部概略構成説明図である。
【図4】 本発明に関連する鋳造装置の要部概略構成説明図である。
【図5】 本発明の第2の実施形態に係る鋳造装置の要部概略構成説明図である。
【図6】 本発明の第3の実施形態に係る鋳造装置の要部概略構成説明図である。
【図7】 本発明の第4の実施形態に係る鋳造装置の要部概略構成説明図である。
【図8】 従来技術に係る還元鋳造用成形型の概略構成説明図である。
【符号の説明】
20、100、120、140、160…鋳造装置
21、142…金型 22…金属微粒子発生機構
24…高温ガス発生機構 26、26a…マグネシウム
28a、28b…フィルタ 30…金属保持部
32…筒状部 34…アルゴンガス流量制御部
36…アルゴンガス加熱制御部 40、152…キャビティ
42…溶湯逆流防止機構 43…ステイ
43a、44a…孔部 44…スライドキー
46…カートリッジ 54、74…電熱線
56、76…制御器 58、78…電源
62…アルゴンガスボンベ 66…筒状部
68…窒素ガス流量制御部 70…窒素ガス加熱制御部
102、122…活性物質発生機構 144、162…反応ユニット
148、164…反応室
Claims (3)
- アルミニウム溶湯をキャビティに供給して鋳造品を得る金型と、
前記金型に直結され、加熱されたアルゴンガスをマグネシウムに吹き付けることにより、少なくともマグネシウムガスまたは前記マグネシウムガスが凝集したマグネシウム微粒子を発生させるとともに、少なくとも前記マグネシウムガスまたは前記マグネシウム微粒子を前記アルゴンガスの流れに沿って前記キャビティ内に導入する微粒子発生機構と、
前記金型に前記微粒子発生機構とは異なる部位に対応して直結され、少なくとも前記マグネシウムガスまたは前記マグネシウム微粒子と反応して前記アルミニウム溶湯よりも酸素に対して活性な活性物質を生成するための反応性ガスを、前記キャビティに供給する反応性ガス供給機構と、
を備えることを特徴とする鋳造装置。 - アルミニウム溶湯をキャビティに供給して鋳造品を得る金型と、
加熱されたアルゴンガスをマグネシウムに吹き付けることにより、少なくともマグネシウムガスまたは前記マグネシウムガスが凝集したマグネシウム微粒子を発生させる微粒子発生機構と、
少なくとも前記マグネシウムガスまたは前記マグネシウム微粒子と反応して前記アルミニウム溶湯よりも酸素に対して活性な活性物質を生成する反応性ガスを供給する反応性ガス供給機構と、
前記金型に直結されるとともに、前記微粒子発生機構および前記反応性ガス供給機構が連結され、前記活性物質を生成した直後に前記活性物質を前記キャビティに直接導入する反応ユニットと、
を備えることを特徴とする鋳造装置。 - 請求項1または2記載の鋳造装置において、前記反応性ガスが窒素ガスであり、前記活性物質が窒化マグネシウムであることを特徴とする鋳造装置。
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