JP4019890B2 - 重合触媒供給方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オレフィン重合触媒の供給方法に関するものである。更に詳しくは、オレフィン重合用触媒を気相重合反応器に供給する場合、触媒、予備重合触媒、又は生成したオレフィン重合体の塊化物及び飛散の低減に優れる重合触媒供給方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、オレフィン重合用触媒の改良が進み、非常に高活性な重合触媒が見出され、生成したオレフィン重合体に含まれる触媒残さを除去する工程、即ち、脱灰工程が省略されるようになってきた。そして、そのような高活性な触媒を用いて気相重合法により、オレフィン重合体が製造されるようになってきた。
【0003】
オレフィン重合用触媒を気相重合反応器へ供給する方法として、オレフィン、または、飽和炭化水素を媒体に用いて供給する方法が知られていた。例えば、特開平10−87729号公報には、固体触媒成分と飽和脂肪族炭化水素等の液状不活性媒体とを接触させたスラリーを、接触後10分以内に流動層反応器に供給して、触媒供給ノズルを閉塞することなく、オレフィンの重合反応を行うことが記載されている。そして、10分以内の接触時間で供給することができれば、予めスラリーを調整しておいて触媒供給ラインに該スラリーを供給してもよく、またたとえば触媒供給ラインに液状不活性媒体を供給してライン内で固体触媒成分と液状不活性媒体とを接触させてもよいこと、及び不活性媒体として、飽和脂肪族炭化水素を組み合せて用いてもよいことが記載されている。
【0004】
しかし、高活性な触媒を用いた場合や触媒の供給量を増した場合、揮発性の低い飽和炭化水素を媒体に用いて重合触媒を気相重合反応器へ供給すると、気相重合反応器中の流動層に触媒が充分に分散されないため、すぐに重合触媒が凝集し塊化物が発生していた。この塊化物は重合体の排出を妨げ、やがて重合反応及びオレフィン重合体の製造の停止をもたらすものである。
【0005】
一方、揮発性の高い飽和炭化水素を媒体に用いて重合触媒を気相重合反応器へ供給すると、気相重合反応器中の流動層外まで触媒が分散し、気相重合反応器から飛散し、重合触媒が使用されることなく気相重合反応器外へ排出されていた。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−87729号公報
【特許文献2】
特開平10−176004号公報
【特許文献3】
特公平3−29803号公報
【特許文献4】
特公平64−1483号公報
【特許文献5】
特開昭49−51178号公報
【特許文献6】
特開昭48−43083号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、オレフィン重合用触媒を気相重合反応器に供給する場合、触媒、予備重合触媒、又は生成したオレフィン重合体の塊化物及び飛散の低減に優れる重合触媒供給方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる実状に鑑み、鋭意検討した結果、オレフィン重合用触媒を気相重合反応器に供給するに際し、特定の飽和蒸気圧を有する少なくとも2種類以上の飽和炭化水素が特定の割合で混合されてなる媒体の共存下に、前記のオレフィン重合用触媒を供給する方法によって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、オレフィン重合用触媒を気相重合反応器に供給するに際し、オレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPa以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)及びオレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPaを超える少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(B)が混合されてなり、その混合割合((A)と(B)のモル比、(A)/(B))が15/85〜75/25である媒体の共存下に、当該オレフィン重合用触媒を供給し、オレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MP a 以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)及びオレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MP a を超える少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(B)からなる媒体の混合時間が30秒間以上であることを特徴とする重合触媒供給方法に係るものである。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるオレフィンとは、炭素数が2以上のオレフィンであり、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1等が挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、ブテン−1である。
【0011】
本発明で用いるオレフィンの重合温度とは、オレフィンが重合する温度であればよく、特に制限はない。通常、0〜100℃、好ましくは60〜90℃である。また、重合温度は気相重合が行われる流動層内であれば、どの場所の温度でもよい。
【0012】
本発明で用いる飽和蒸気圧とは、飽和炭化水素の飽和蒸気圧であり、飽和炭化水素がオレフィンの重合温度において飽和炭化水素の液体と気体が平衡にある時の、その飽和炭化水素の気体の圧力である。
【0013】
本発明で用いる飽和炭化水素(A)とは、オレフィンの重合温度において、その飽和蒸気圧が0.5MPa以下である飽和炭化水素またはそれらの混合物である。例えば、炭素数5〜8の飽和炭化水素が挙げられる。好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンであり、さらに好ましくはヘキサン、ペンタンである。また、これらの飽和炭化水素を任意の組合せで混合物として用いてもよい。
【0014】
本発明で用いる飽和炭化水素(B)とは、オレフィンの重合温度において、その飽和蒸気圧が0.5MPaを超える飽和炭化水素またはそれらの混合物である。例えば、炭素数1〜4の飽和炭化水素が挙げられる。好ましくはメタン、エタン、プロパン、ブタンである。さらに好ましくは、プロパン、ブタンである。また、これらの飽和炭化水素を任意の組合せで混合物として用いてもよい。
【0015】
本発明で用いる飽和炭化水素(A)と飽和炭化水素(B)の混合割合((A)と(B)のモル比、(A)/(B))は、15/85〜75/25であり、好ましくは35/65〜65/35である。
【0016】
飽和炭化水素(A)と飽和炭化水素(B)の混合割合において、飽和炭化水素(A)が15モル%未満(即ち、飽和炭化水素(B)が85モル%以上)の場合、重合触媒が気相重合反応器の流動層の外へ飛散することがある。また、飽和炭化水素(A)が75モル%を超えた(即ち、飽和炭化水素(B)が25モル%未満の)場合、重合触媒または生成したオレフィン重合体の凝集または塊化物が発生することがある。
【0017】
飽和炭化水素(A)と飽和炭化水素(B)の混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、飽和炭化水素(A)と飽和炭化水素(B)を配管内で混合する方法や貯蔵タンク内で混合する方法が挙げられる。また、貯蔵タンク内で混合する場合、撹拌器等で撹拌してもよい。
【0018】
飽和炭化水素(A)と飽和炭化水素(B)の混合時間は、30秒以上である。好ましくは1分間以上である。
【0019】
本発明で用いるオレフィン重合用触媒とは、特に制限はなく、オレフィンを重合させオレフィン重合体を生成することができるものであればよい。例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
【0020】
チーグラー・ナッタ触媒としては、マグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含む固体触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる触媒が挙げられる。ハロゲンとしては塩素原子や臭素原子が挙げらる。
【0021】
電子供与体とは、酸素原子を含む有機化合物であり、例えば、エーテル類やエステル類が挙げられる。好ましくはエステル類である。
【0022】
有機アルミニウム化合物とは、少なくとも1種以上のAl−炭素結合を有する化合物であり、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等が挙げられる。
【0023】
また、必要に応じて少なくとも1種以上のSi−酸素結合を有するケイ素化合物を用いてもよい。例えば、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、n−プロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0024】
メタロセン触媒とは、シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基を持つ第4族遷移金属原子の錯体とアルミノキサンからなる触媒を挙げることができる。
【0025】
シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基としては、例えば、シクロペンタジエニル基、n−ブチルシクロペンタジエニル基、インデニル基等が挙げられ、好ましくはn−ブチルシクロペンタジエニル基、インデニル基である。また、これらをアルキレン基、シリレン基等で架橋したもの、例えばジメチルシリレンビスインデニル基、エチレンビスインデニル基等が挙げられる。
【0026】
第4族遷移金属原子としては、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子等が挙げられ、好ましくはジルコニウム原子である。
【0027】
シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基を持つ第4族遷移金属原子の錯体としては、例えば、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ジn−ブチルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビスインデニルジルコニウムジクロリド、エチレンビスインデニルジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
【0028】
アルミノキサンとは、−(Al(R)−O)n−の構造を有する化合物であり、Rは炭素数1〜4のアルキル基であり、アルキル基は同じであってもよく、異なっていてもよい。nは2〜50の数である。
【0029】
アルミノキサンのアルキル基(R)としては、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。nとしては、好ましくは10〜30である。
【0030】
アルミノキサンとしては、例えば、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0031】
また、メタロセン触媒としては、上記のシクロペンタジエン型アニオン骨格を有する基を持つ第4族遷移金属原子の錯体とアルミノキサンを担体等に担持したものも挙げられる。担体としては、シリカ、モンモリロナイト、スチレンとジビニルベンゼン等からなるポリマービーズ等が挙げられる。
【0032】
本発明で用いる気相重合とは、気相中で流動層の手段によってオレフィンを重合するために用いられる重合方法であり、気相重合反応器に触媒およびオレフィンを連続的に供給し流動床においてオレフィンを重合させ、得られた粒子状のポリマーを連続的に抜き出すことにより、連続的にオレフィンの重合を行う方法である。
【0033】
本発明で用いる予備重合とは、触媒成分とオレフィンを接触させて、触媒成分上で少量のオレフィンを重合させる方法であり、それにより得られたものが予備重合触媒である。
【0034】
本発明の予備重合において用いられるオレフィンとしては、前述したオレフィンが挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、ブテン−1である。また、1種類のオレフィンを単独で用いてもよく、2種類以上のオレフィンを併用してもよい。
【0035】
予備重合方法としては、特に制限はないが、懸濁重合、気相重合等が挙げられる。また、回分式、連続式のどちらを用いて製造してもよい。
【0036】
予備重合触媒を懸濁重合で製造する場合、溶媒としては、炭素数20以下の炭化水素が挙げられる。例えば、プロパン、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。好ましくはオレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPa以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)であり、より好ましくはヘキサン、ヘプタンである。
【0037】
予備重合触媒を懸濁重合で製造した場合、予備重合触媒は溶媒を濾過等の方法で除去し、乾燥させてもよく、乾燥させることなく予備重合触媒と溶媒からなる予備重合触媒スラリーとしてもよい。
【0038】
本発明のオレフィン重合用触媒の供給方法に係る具体的な実施形態としては、特に制限されるものではなく、例えば、
(1)飽和炭化水素(A)と(B)が予め混合された媒体に触媒成分または予備重合触媒を加えた後、気相重合反応器へ供給する方法、
(2)飽和炭化水素(A)に触媒成分または予備重合触媒を加え、それを気相重合反応器へ供給する配管の途中で飽和炭化水素(B)を加えて混合した後、気相重合反応器へ供給する方法、
(3)飽和炭化水素(A)を溶媒として用いて得られた予備重合触媒スラリーを気相重合反応器へ供給する配管の途中で飽和炭化水素(B)を加えて混合した後、気相重合反応器へ供給する方法等が挙げられ、
好ましくは(3)の飽和炭化水素(A)を溶媒として用いて得られた予備重合触媒スラリーを気相重合反応器へ供給する配管の途中で飽和炭化水素(B)を加えて混合した後、気相重合反応器へ供給する方法である。
【0039】
上述の(3)の供給方法は、飽和蒸気圧が0.5MPa以下である飽和炭化水素(A)を溶媒に用いて予備重合を行うことから、予備重合反応中の圧力を比較的容易に低く抑えることができ、予備重合反応器の耐圧を低く設定することができるという利点がある。また、予備重合触媒スラリーを飽和蒸気圧が0.5MPaを超える飽和炭化水素(B)と混合することにより、予備重合触媒の乾燥工程を簡略化できるという利点がある。
【0040】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
[実施設備の概要]
実施した設備は、固体触媒成分の予備活性化槽、予備活性化された固体触媒成分のスラリー濃度調整槽、予備活性化された固体触媒成分スラリーの気相重合槽への供給ポンプ及び攪拌機付き気相流動床反応器及び生成重合体の回収設備より構成される。気相流動床反応器のガス循環ラインには循環ガス中の微粉の除去を目的にサイクロンを設置した。
【0041】
[固体触媒の合成]
[固体触媒成分の予備活性化とスラリー濃度の調整]
固体触媒の予備活性化槽(内容積3リットルのSUS製、攪拌機付きオートクレーブ)と予備活性化触媒のスラリー濃度調整槽(内容積120リットルのSUS製、攪拌機付きオートクレーブ)が連結された装置を用い下記の手順により実施した。
(1)スラリー濃度調整槽は不活性ガスで充分に置換した後n−ヘキサン30Kg(45リットル)を投入し、攪拌しながら温度を0℃〜5℃に保持した状態で待機した。次いで、
【0042】
(2)不活性ガスで充分に置換された予備活性化槽に充分に脱水、脱気されたn―ヘキサン 2リットル、トリエチルアルミニウム50ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン5ミリモルと固体触媒成分40グラムを添加し、槽内温度を5〜15℃の範囲に保ちながらプロピレン100gを約1時間かけて連続的に供給し予備活性化を行った。予備活性化された固体触媒成分スラリーの全量を前記状態に保持されたスラリー濃度調整槽へ移送した。更に(2)の固体触媒成分の予備活性化操作を3回繰り返し実施した。その結果、スラリー濃度調整槽は予備活性化された固体触媒成分160g、n−ヘキサン53リットル(35Kg)で固体触媒成分の濃度3.0g/Lのスラリーが得られた。
【0043】
[気相重合]
内容積1m3の攪拌機付き流動床反応器において、重合温度75℃、重合圧力1.8MPaゲージ圧、循環ガス線速18cm/sにて気相部の水素濃度1.5vol%を保持するようにプロピレン及び水素を供給し、トリエチルアルミニウム 75ミリモル/h、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン7.5ミリモル/hを連続的に供給された条件下に予備活性化された固体触媒成分スラリーを内径2mmφの配管を通して連続的に供給し、流動床反応器内の重合パウダーレベルを60Kgに保持しながらプロピレンの重合を行った。予備活性化された固体触媒成分はポンプにより4.2g/h(スラリー1.4L/h)で連続的に供給し、更に供給配管の途中(気相重合槽入り口より9.5mの位置)に液状ブタン1.5L/hを供給し混合して気相流動床反応器へ供給した。従って、気相流動床反応器入り口での固体触媒成分のスラリー濃度は1.45g/L、分散媒の組成はn−ヘキサン/ブタン比で43/57(モル比)であり、固体触媒成分スラリーと液状ブタンの接触後のスラリーの配管内流速は25.7cm/秒であり、固体触媒成分スラリーと液状ブタンの接触時間は37秒であった。上記条件で重合を10時間安定して継続した結果、極限粘度[η]が1.29(dl/g)、冷キシレン可溶部(CXS)1.5%のポリマー粒子が42.5Kg/hの速度で生成した。得られたポリマー粒子を目開き2mmの金網にて篩い分けした結果篩上の割合(2mm-on)は0.13%であった。又、重合期間中に循環ガスラインのサイクロンで72g/h(生成ポリマーに対する割合で0.17wt%)の微粉が回収された。
【0044】
実施例2
予備活性化された固体触媒成分スラリーの供給配管途中(気相重合槽入り口より9.5mの位置)への液状ブタンの添加速度を2.1リットル/hとした以外は実施例1と同様の方法で行った結果、気相流動床反応器入り口での固体触媒成分のスラリー濃度は1.2g/L、分散媒の組成はn−ヘキサン/ブタン比で35/65(モル比)であり、固体触媒成分スラリーと液状ブタンの接触後のスラリーの配管内流速は31.0cm/秒であり、固体触媒成分スラリーと液状ブタンの接触時間は30秒であった。上記条件で重合を10時間安定して継続した結果、極限粘度[η]が1.39、冷キシレン可溶部(CXS)1.4%のポリマー粒子が41.0Kg/hの速度で生成した。得られたポリマー粒子を目開き2mmの金網にて篩い分けした結果篩上の割合(2mm-on)は0.14%であった。又、重合期間中に循環ガスラインのサイクロンで105g/h(生成ポリマーに対する割合で0.26wt%)の微粉が回収された。
【0045】
実施例3
[固体触媒成分の予備活性化とスラリー濃度の調整]
実施例1と同様の装置を用い下記の手順により実施した。
(1)スラリー濃度調整槽は不活性ガスで充分に置換した後n−ヘキサン33Kg(50リットル)及び液状ブタン16.5Kg(30リットル)を投入し、攪拌しながら温度を0℃〜5℃に保持した状態で待機する。次いで、
【0046】
(2)不活性ガスで充分に置換された予備活性化槽に充分に脱水、脱気されたn―ヘキサン 2リットル、トリエチルアルミニウム50ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン5ミリモルと固体触媒成分40グラムを添加し、槽内温度を5〜15℃の範囲に保ちながらプロピレン100gを約1時間かけて連続的に供給し予備活性化を行った。予備活性化された固体触媒成分スラリーの全量を前記状態に保持されたスラリー濃度調整槽へ移送した。更に(2)の固体触媒成分の予備活性化操作を2回繰り返し実施した後、30分間混合した。その結果、スラリー濃度調整槽は予備活性化された固体触媒成分120g、n−ヘキサン56リットル(37Kg)、液状ブタン30リットル(16.5Kg)で固体触媒成分の濃度1.45g/Lのスラリーが得られた。分散媒体の組成はn-ヘキサン/ブタン比60/40(モル比)であった。
【0047】
[気相重合]
実施例1と同様の条件下に予備活性化された固体触媒成分スラリーを2.7L/h(予備活性化した固体触媒成分3.9g/h)で連続的に供給し流動床反応器内の重合パウダーレベルを60Kgに保持しながらプロピレンの重合を行った。上記条件で重合を10時間安定して継続した結果、極限粘度[η]が1.33(dl/g)、冷キシレン可溶部(CXS)1.4%のポリマー粒子が39.5Kg/hの速度で生成した。得られたポリマー粒子を目開き2mmの金網にて篩い分けした結果篩上の割合(2mm-on)は0.20%であった。又、重合期間中に循環ガスラインのサイクロンで65g/h(生成ポリマーに対する割合で0.17wt%)の微粉が回収された。
【0048】
比較例1
[固体触媒成分の予備活性化とスラリー濃度の調整]
実施例1と同様の装置を用い下記の手順により実施した。
(1)スラリー濃度調整槽は不活性ガスで充分に置換した後液状ブタン44Kg(80リットル)を投入し、攪拌しながら温度を0℃〜5℃に保持した状態で待機する。次いで、
【0049】
(2)不活性ガスで充分に置換された予備活性化槽に充分に脱水、脱気されたn―ヘキサン 2リットル、トリエチルアルミニウム50ミリモル、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン5ミリモルと固体触媒成分40グラムを添加し、槽内温度を5〜15℃の範囲に保ちながらプロピレン100gを約1時間かけて連続的に供給し予備活性化を行った。予備活性化された固体触媒成分スラリーの全量を前記状態に保持されたスラリー濃度調整槽へ移送した。更に(2)の固体触媒成分の予備活性化操作を2回繰り返し実施した後、30分間混合した。その結果、スラリー濃度調整槽は予備活性化された固体触媒成分120g、n−ヘキサン6リットル(4Kg)、液状ブタン80リットル(44Kg)で固体触媒成分の濃度1.4g/Lのスラリーが得られた。分散媒体の組成はn-ヘキサン/ブタン比4/96(モル比)であった。
【0050】
[気相重合]
実施例1と同様の条件下に予備活性化された固体触媒成分スラリーを3L/h(予備活性化した固体触媒成分4.2g/h)で連続的に供給し流動床反応器内の重合パウダーレベルを60Kgに保持しながらプロピレンの重合を行った。上記条件で重合を10時間継続した結果、極限粘度[η]が1.32、冷キシレン可溶部(CXS)1.5%のポリマー粒子が38Kg/hの速度で生成した。得られたポリマー粒子を目開き2mmの金網にて篩い分けした結果篩上の割合(2mm-on)は0.16%であったものの循環ガスラインのサイクロンでの微粉回収量が312g/h(生成ポリマーに対する割合で0.8wt%)と大幅に増加し長期運転での循環ガスラインでのファウリング等のトラブルが懸念される状態であった。
【0051】
比較例2
[固体触媒成分の予備活性化とスラリー濃度の調整]
(1)スラリー濃度調整槽は不活性ガスで充分に置換した後n−ヘキサン53Kg(80リットル)を投入し、攪拌しながら温度を0℃〜5℃に保持した状態で待機するとした以外は比較例1と同様の方法で実施した。スラリー濃度調整槽は予備活性化された固体触媒成分120g、n−ヘキサン86リットル(57Kg)で固体触媒成分の濃度1.4g/Lのスラリーが得られた。
【0052】
[気相重合]
実施例1と同様の条件下に予備活性化された固体触媒成分スラリーを2.8L/h(予備活性化した固体触媒成分3.9g/h)で連続的に供給し流動床反応器内の重合パウダーレベルを60Kgに保持しながらプロピレンの重合を行った。上記条件で重合を10時間継続した結果、極限粘度[η]が1.36(dl/g)、冷キシレン可溶部(CXS)1.5%のポリマー粒子が41Kg/hの速度で生成した。得られたポリマー粒子を目開き2mmの金網にて篩い分けした結果篩上の割合(2mm-on)は2.4%であり重合体粒子の凝集体が大幅に増加し、長期運転での抜き出し配管の閉塞等のトラブルが懸念される状態であった。循環ガスラインのサイクロンでの微粉回収量は42g/h(生成ポリマーに対する割合で0.1wt%)であったが粒子破壊により生成したと見られる繊維状のポリマーが含まれていた。
【0053】
比較例3
予備活性化された固体触媒成分スラリーの供給配管への液状ブタンの添加位置を気相重合槽入り口より1mの位置へ変更した以外は実施例2と同様の方法で行った。気相流動床反応器入り口での固体触媒成分のスラリー濃度は1.2g/L、分散媒の組成はn−ヘキサン/ブタン比で35/65(モル比)であり、固体触媒成分スラリーと液状ブタンの接触後のスラリーの配管内流速は31.0cm/秒であり、固体触媒成分スラリーと液状ブタンの接触時間は3秒であった。上記条件で重合を10時間継続した結果、極限粘度[η]が1.37(dl/g)、冷キシレン可溶部(CXS)1.4%のポリマー粒子が40.5Kg/hの速度で生成した。得られたポリマー粒子を目開き2mmの金網にて篩い分けした結果篩上の割合(2mm-on)は1.4%であり粗粒生成量が多く長期運転での抜き出しトラブルが懸念される状態であった。又、重合期間中に循環ガスラインのサイクロンで65g/h(生成ポリマーに対する割合で0.16wt%)の微粉が回収された。
【0054】
【発明の効果】
以上、詳述したとおり、本発明のオレフィン重合用触媒の供給方法によれば、オレフィン重合用触媒を気相重合反応器に供給するに際し、触媒、予備重合触媒、又は生成したオレフィン重合体の塊化物及び飛散を低減させて、オレフィン重合体を製造することができる。
Claims (5)
- オレフィン重合用触媒を気相重合反応器に供給するに際し、オレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPa以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)及びオレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPaを超える少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(B)が混合されてなり、その混合割合((A)と(B)のモル比、(A)/(B))が15/85〜75/25である媒体の共存下に、当該オレフィン重合用触媒を供給し、オレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MP a 以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)及びオレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MP a を超える少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(B)からなる媒体の混合時間が30秒間以上であることを特徴とする重合触媒供給方法。
- オレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPa以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)及びオレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPaを超える少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(B)からなる媒体が、オレフィン重合用触媒の供給配管内で混合されることを特徴とする請求項1記載の重合触媒供給方法。
- オレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPa以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)及びオレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPaを超える少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(B)からなる媒体の混合割合((A)と(B)のモル比、(A)/(B))が35/65〜65/35であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の重合触媒供給方法。
- オレフィン重合用触媒が、飽和炭化水素溶媒の存在下でオレフィンを予備重合して得られる予備重合触媒スラリーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の重合触媒供給方法。
- 予備重合触媒スラリーが、オレフィンの重合温度における飽和蒸気圧が0.5MPa以下である少なくとも1種類以上の飽和炭化水素(A)の存在下でオレフィンを予備重合して得られることを特徴とする請求項4記載の重合触媒供給方法。
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