JP4019557B2 - 投射型表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、投射型表示装置に関し、例えば反射型液晶パネルにより空間変調した映像光をスクリーン上に投射するプロジェクタ装置に適用することができる。本発明は、色分解合成手段の照明光が入射する側に位相差板を配置することにより、全体形状の大型化を防止して、簡易かつ確実に黒浮きによるコントラストの低下を改善することができるようにする。
【0002】
【従来の技術】
従来、投射型表示装置においては、反射型液晶パネルを用いて空間変調した映像光を生成し、この映像光をスクリーンに投射することにより、所望のカラー画像を形成できるようになされたものが提案されている。
【0003】
このような投射型表示装置においては、光源より得られる照明光を赤色、青色、緑色用の照明光に分解して対応する反射型液晶パネルにそれぞれ供給すると共に、各反射型液晶パネルより得られる赤色、青色、緑色用の映像光を合成する手段として、ダイクロイックミラーを用いるものが提案されている。
【0004】
すなわち図10に示すように、この種の投射型表示装置1においては、例えば放電ランプ3とリフレクター4により光源2が構成され、この光源2より白色光による照明光を出射する。投射型表示装置1は、フライアイレンズ5A及び5Bによりこの照明光の光量分布を均一化した後、続いて偏光変換素子6に入射する。ここで偏光変換素子6は、S偏光成分を主に選択的に透過すると共に、これと直交するP偏光成分をS偏光成分に変換する光学素子である。
【0005】
これにより光源2は、放電ランプ3から種々の偏光面により出射される照明光について、画像表示に有効な偏光成分を増大させると共に、これと直交する偏光成分を低減して照明光を出射し、その分照明光の利用効率を向上し、表示画像のコントラストを向上する。
【0006】
凸レンズ8は、偏光変換素子6より出射される照明光の光路上にて、この照明光を集光して出射し、コールドミラー9は、この凸レンズ8より出射される照明光より赤外線領域を除く成分の光路を90度折り曲げて出射する。凸レンズ10は、このコールドミラー9で反射された照明光を集光して出射する。
【0007】
偏光ビームスプリッタ11は、2つの直角プリズムの斜面を貼り合わせて形成され、この貼り合わせ面に検光面11Aが形成される。偏光ビームスプリッタ11は、この検光面11Aにより凸レンズ10より出射されるS偏光による照明光を選択的に反射して出射し、このS偏光による照明光の光路を逆に辿って入射する合成映像光のうち、P偏光成分を選択的に透過すると共に、S偏光成分を光源2に戻す。
【0008】
ダイクロイックミラー12、13は、偏光ビームスプリッタ11より出射される照明光の光路を横切るように配置される。ダイクロイックミラー12、13は、誘電体膜の積層によるダイクロイック膜MB、MRが形成され、照明光のうち青色、赤色の照明光を各ダイクロイック膜MB、MRにおいて順次選択的に反射する。これによりダイクロイックミラー12、13は、偏光ビームスプリッタ11より出射される照明光を青色、赤色、緑色の照明光に分解し、青色用、赤色用、緑色用の反射型液晶パネル14B、14R、14Gにそれぞれ青色、赤色、緑色の照明光を供給する。
【0009】
各反射型液晶パネル14B、14R、14Gは、それぞれ対応する色信号により駆動され、各画素毎に、S偏光による入射する照明光の偏光面を回転させて反射し、これにより各色信号に応じて偏光面が変化してなる映像光を出射する。
【0010】
ダイクロイックミラー12、13は、照明光の場合とは逆に、このようにして各反射型液晶パネル14B、14R、14Gより得られる青色、赤色、緑色の映像光を合成して合成映像光を生成し、この合成映像光を偏光ビームスプリッタ11に射出する。これにより合成映像光は、各色信号に応じたP偏光及びS偏光の合成光により照明光の光路を逆に辿って偏光ビームスプリッタ11に出射され、このうちP偏光成分だけが偏光ビームスプリッタ11を透過して投射レンズ15に出射されることになる。
【0011】
投射レンズ15は、このようにして偏光ビームスプリッタ11を透過する合成映像光をスクリーン16に投射し、これにより反射型液晶パネル14B、14R、14Gで生成された映像をスクリーンに拡大投影してなるカラー画像を表示する。
【0012】
このようにしてカラー画像を表示する投射型表示装置1においては、ダイクロイックミラー12、13により反射される照明光の出射方向が光源2側となるようにダイクロイックミラー12、13の向きが設定され、これにより反射型液晶パネル14B、14Rを光源2側に配置して全体形状を小型化できるようになされている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ところがこの種の投射型表示装置においては、本来黒く表示される部分にも光が照射されていわゆる黒浮きが発生し、この黒浮きにより投影画像のコントラストが低下する問題点があった。
【0014】
すなわち投射型表示装置1においては、本来黒く表示される部分においては、各反射型液晶パネルにおいて対応する照明光が何ら偏光面が回転することなく反射される。その結果、投射型表示装置1においては、偏光ビームスプリッタ11によって対応する映像光が光源2側に戻され、これによりスクリーン16上では対応する部分が黒く表示されるはずである。しかしながら投射型表示装置1においては、本来S偏光により偏光ビームスプリッタ11で検光されるはずのこの種の映像光がS偏光とP偏光の合成光により検光され、これによりこの種の黒浮きが発生する。
【0015】
すなわちこのように偏光ビームスプリッタ11、ダイクロイックミラー12等を配置した光学系においては、偏光ビームスプリッタ11の入射面及び出射面、検光面、ダイクロイック膜等の境界面を基準にして、各境界面と平行なP偏光とこのP偏光成分に垂直なS偏光とに対して光の振動方向に位相差が与えられる。これによりこの種の投射型表示装置においては、光学系全体として見たとき偏光ビームスプリッタ11により当初分離されたP偏光成分の方向が各境界面で変化することになる。これらにより投射型表示装置1においては、光学系を伝搬する照明光、映像光において偏光状態が変化し、これにより本来S偏光により黒く表示される部分に光が混入して黒浮きが発生する。
【0016】
図11は、この偏光状態の変化の説明に供する原理図であり、図10について上述した構成に対応して、凸レンズ10より入射する照明光が偏光ビームスプリッタ11で反射した後、ダイクロイック膜MB、MRを順次透過して反射型液晶パネル14Gに入射し、ここで無変調により反射する場合である。なお以下においては、各符号に符号Bを付加してベクトルである旨記述する。
【0017】
この場合に、入射する照明光の方向を示す単位ベクトルを方向余弦BC0とし、偏光ビームスプリッタ11の検光面11A、ダイクロイック膜MB、ダイクロイック膜MRである各境界面における照明光の方向を示す方向余弦をそれぞれBC1、BC2、BC3とする。また反射型液晶パネル14Gで反射した後、対応する境界面における映像光の方向を示す方向余弦をそれぞれBC4、BC5、BC6とする。またこれらの方向余弦に対応して境界面の配置を示す単位ベクトルを法線ベクトルとし、符号BD1、BD2、BD3、BD4、BD5、BD6により示す。
【0018】
各境界面である入射面に垂直なS偏光成分BESnは、方向余弦と法線ベクトルとの外積により進行方向が規定され、次式により表される。
【0019】
【数1】
【0020】
また各境界面である入射面に平行なP偏光成分の方向余弦は、このS偏光成分BESnの進行方向に直交し、次式のベクトル積により表される。
【0021】
【数2】
【0022】
このとき法線ベクトルは、内積BD1・BD2≒0、BD2≒BD3、内積BD5・BD6≒0とする。
【0023】
これら(1)式、(2)式と方向余弦BCn及び法線ベクトルBDnとの関係から、次式の関係式を得ることができる。なお直交するP偏光成分BEPnも同様の関係となる。
【0024】
【数3】
【0025】
これにより投射型表示装置1においては、各境界面の前後で図12に示すように照明光の偏光状態が変化することになる。なおこの図12は、反射型液晶パネル14G側より見た絶対座標系x−yにより各境界面の前後における偏光状態を示すものであり、符号A〜Jを用いて図11との対比により各境界面との関係を示す。
【0026】
ここで投射型表示装置1においては、反射型液晶パネル14Gに照明光を集光させる形式であることにより、照明光は、反射型液晶パネル14Gに対して所定の入射角をもって入射し、光束として捕らえるとコーン状の光束により反射型液晶パネル14Gに入射することになる。
【0027】
偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aの反射側においては(符号Aにより示す)、偏光ビームスプリッタ11に方向余弦BC0による照明光が入射し、この検光面11Aで決まるP偏光成分及びS偏光成分の方向に従って、S偏光成分のみが選択的に反射されることにより、直線偏光となる。
【0028】
これに対して符号B及びCにより示すダイクロイック膜MBの境界面前後においては、P偏光成分及びS偏光成分の方向が偏光ビームスプリッタ11における反射時とで大きく異なり(ダイクロイック膜におけるP偏光成分及びS偏光成分を破線の矩形により示す)、これにより照明光は、このダイクロイック膜MBにおいてP偏光成分及びS偏光成分に大きく分解されて位相差が与えられることになる。その結果符号Cにより示すダイクロイック膜MBの境界面後において、照明光は、短径側が大きく膨らんだ楕円偏光となる。
【0029】
また符号D及びEにより示すダイクロイック膜MRの境界面前後においても、P偏光成分及びS偏光成分の方向が僅かに異なることにより、照明光は、このダイクロイック膜MRにおいても、P偏光成分及びS偏光成分に分解されて僅かではあるが位相差が与えられることになる。
【0030】
その結果、反射型液晶パネル14Gで何ら偏光されることなく反射されると、符号Fによりダイクロイック膜MRの境界面前を示すように、反射型液晶パネル14Gの反射光は短径側が大きく膨らんだ楕円偏光となる。
【0031】
このようにして楕円偏光として反射型液晶パネル14Gより出射される映像光は、照明光の場合と同様に、ダイクロイック膜MR、MBにより順次対応するP偏光成分及びS偏光成分に分解されて位相差が与えられ(符号F〜I)、符号Jにより示すように、偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aに入射する際には、破線の矩形形状により検光面11AにおけるP偏光及びS偏光の向きを示すように、検光面11Aに対して、S偏光成分が発生していることとなる。この場合、P偏光成分の量が多い為、投射レンズ15へ漏れ出す光量が増大し、黒浮きの状態が形成される。
【0032】
この問題を解決する1つの方法として、図13に示すように、上述した構成において、各反射型液晶パネル14B、14G、14Gと対応するダイクロイック膜MB、MRとの間に、それぞれ常光線及び異常光源に所定位相差を与える位相差板17R、17G、17Bを挿入する方法が考えられる。
【0033】
この方法は、図11及び図12との対比により図14及び図15に偏光状態の変化を示すように、反射型液晶パネル14Gの入射光と反射光との間で、楕円偏光による長軸がY軸対称になるように位相差を与えることにより、ダイクロイック膜MR、MBを透過する往路と復路とで位相差を打ち消すようにしたものである。
【0034】
この方法による投射型表示装置21においては、偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aに入射する際に、映像光においては、P偏光成分が抑圧されていることにより、その分図10について上述した構成に比して黒浮きを低減することができる。
【0035】
しかしながらこの方法にあっても、符号B及びCにより示すダイクロイック膜MBの境界面前後においては、偏光ビームスプリッタ11における反射時とでP偏光成分及びS偏光成分の方向が大きく異なり、これにより照明光は、このダイクロイック膜MBにおいてP偏光成分及びS偏光成分に大きく分解されて結局楕円偏光となる。また映像光においても、ダイクロイック膜MBの境界面後において、P偏光成分及びS偏光成分に大きく分解されて位相差が発生し、結局、S偏光方向に対して長軸が傾いた楕円偏光のまま偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aに入射することになる。
【0036】
これによりこの方法によっては、十分にP偏光成分を抑圧することが困難で、これにより実用上未だ不十分な問題があった。
【0037】
これに対して図16に示すように、偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aとダイクロイック膜MB、MRの各境界面とが平行になるように配置すると共に、各反射型液晶パネル14B、14R、14Gに位相差板32B、32R、32Gを配置する方法も提案されている。
【0038】
この方法の場合、図11及び図12との対比により図17及び図18に偏光状態の変化を示すように、上述した構成に比してダイクロイック膜MR、MBの前後における楕円偏光を直線偏光に近づけることができ、その分P偏光成分の発生を更に抑圧することができると考えられる。
【0039】
しかしながらこの方法の場合、ダイクロイック膜により反射される照明光が光源2とは逆方向に出射されることにより、反射型液晶パネル14B、14Rを光源2とは逆側に配置せざるを得ず、これにより全体構成が大型化する問題がある。
【0040】
なお以上において、反射型液晶パネル14Gへ入射する系について、偏光状態の変化を説明をしたが、反射型液晶パネル14B、14Rへ入射する系についても、同様に偏光状態が変化することになる。
【0041】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、全体形状の大型化を防止して、簡易かつ確実に黒浮きによるコントラストの低下を改善することができる投射型表示装置を提案しようとするものである。
【0042】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため請求項1に係る発明においては、偏光ビームスプリッタ及び色分解合成手段との間の光路上に、偏光ビームスプリッタの検光面を含む仮想面と、色分解合成手段における色分解合成面を含む仮想面とが交差する直線方向を基準軸として、入射光及び出射光の偏光方向が基準軸に対して略軸対称となるように位相差を与える位相差発生手段を配置する。
【0043】
請求項1に係る構成によれば、偏光ビームスプリッタ及び色分解合成手段との間の光路上に、検光面を含む仮想面と色分解合成面を含む仮想面とが交差する直線方向を基準軸にして、入射光及び出射光の偏光方向が基準軸に対して略軸対称となるように位相差を与える位相差発生手段を配置することにより、検光面に対する色分解合成面の傾きによる位相差の発生を防止することができ、その分P偏光成分の発生を抑圧して黒浮きを防止することができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。
【0045】
(1)第1の実施の形態
(1−1)第1の実施の形態の構成
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。この投射型表示装置41においては、ダイクロイックミラー12の光源側であるダイクロイックミラー12及び偏光ビームスプリッタ11間に位相差板42が配置され、また各反射型液晶パネル14B、14R、14Gのダイクロイックミラー側に位相差板43B、43R、43Gがそれぞれ配置される。
【0046】
ここでこれら各位相差板43B、43R、43Gは、それぞれダイクロイック膜MB、MRを透過する際に、照明光及び映像光に与えられる位相差を打ち消すように配置される。すなわち緑色用の位相差板43Gを例に取って説明すると、この位相差板43Gにあっては、緑色波長帯域の中心波長(約550〔μm〕)において、反射型液晶パネル14Gに入射するS偏光とP偏光とに対して、ダイクロイック膜MR及びMBを透過する際に発生する位相差に1/4波長分を加えた位相差を打ち消すように配置される。
【0047】
ここで投射型表示装置41において、ダイクロイックミラー12及び13は、偏光ビームスプリッタの検光面11Aの法線をBD1、ダイクロイックミラー12の法線をBD2、ダイクロイックミラー13の法線をBD3とすると、次式の関係式が成立し、色分解合成面であるダイクロイック膜MR、MBで反射される照明光の出射方向が光源2側となるように配置される。
【0048】
【数4】
【0049】
このダイクロイックミラー12、13の配置に対応して、各位相差板43B、43R、43Gは、偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aを含む仮想面と、ダイクロイック面MR又はMBを含む仮想面とが交差する直線を基準にして(すなわち図11との対比により示すy軸方向である)、異常光線及び常光線に位相差を与え、この位相差により各反射型液晶パネル14B、14R、14Gにおいて、入射光と無偏光による反射光との間で、楕円偏光による長軸が軸対称になるようにし、すなわちこれら入射光及び反射光で偏光方向が軸対称となるようにし、これによりダイクロイック膜MR、MBを透過する際に発生する位相差を打ち消す。
【0050】
これに対して位相差板42は、所定の波長において、偏光ビームスプリッタ11より出射される照明光のP偏光成分及びS偏光成分にほぼ1/2波長の位相差を与えるように、光学軸がY軸方向又はX軸方向に向くように配置される。これにより位相差板42は、照明光及び映像光について、入射光及び出射光の偏光方向がY軸対称となるように位相差を与えるようになされている。なおこの1/2波長の位相差は、最も視感度が高い緑色波長帯域のほぼ中心波長(550〔nm〕)に設定するとが望ましい。
【0051】
(1−2)第1の実施の形態の動作
以上の構成において、光源2より出射された照明光は(図1)、コールドミラー9で赤外線を除く成分が光路を90度折り曲げられ、偏光ビームスプリッタ11に出射される。この偏光ビームスプリッタ11において、照明光は、S偏光成分が選択的に反射されて第1のダイクロイックミラー12に向けて出射され、この第1のダイクロイックミラー12により青色の照明光が選択的に反射されて青色用の反射型液晶パネル14Bに向けて出射され、残る緑色、赤色の照明光が第1のダイクロイックミラー12を透過して続く第2のダイクロイックミラー13に入射する。
【0052】
この第2のダイクロイックミラー13に入射した照明光は、赤色の照明光と緑色の照明光に分解され、それぞれ第2のダイクロイックミラー13による反射及び透過により赤色の照明光と緑色の照明光とが赤色の反射型液晶パネル14Rと緑色の反射型液晶パネル14Gとに出射される。これらにより青色、赤色及び緑色の反射型液晶パネル14B、14R、14Gにそれぞれ対応する波長の照明光が供給され、各反射型液晶パネル14B、14R、14Gにおいて対応する色信号により偏光面が回転し、P偏光及びS偏光による青色、赤色、緑色の映像光が生成される。
【0053】
このようなP偏光及びS偏光による青色、赤色、緑色の映像光は、各反射型液晶パネル14B、14R、14Gに入射した照明光の光路を逆に辿り、第1及び第2のダイクロイックミラー12及び13により合成され、その結果得られる合成映像光のうち、P偏光成分が偏光ビームスプリッタ11を透過して投射レンズ15によりスクリーン16に投射される。これにより各反射型液晶パネル14B、14R、14Gで作成された青色、赤色、緑色の映像がスクリーン16に拡大投影され、カラーによる表示画像が形成される。
【0054】
このようにしてスクリーン16に投射される映像光においては、本来反射型液晶パネル14B、14R、14Gにおいて偏光されないで単に反射された無変調の成分が混入し、これによりスクリーン16に投射された表示画像において、黒浮きによるコントラストの低下が観察される。
【0055】
これは最終的に偏光ビームスプリッタ11に入射する映像光が楕円偏光により入射するためである。
【0056】
各反射型液晶パネル14B、14R、14Gから見て光学系を観察すれば、この楕円偏光は、偏光ビームスプリッタ11において、斜めに傾いた検光面11Aにより照明光が検光されてS偏光成分が生成されることにより、反射型液晶パネル14B、14R、14Gより見た振動面間にほぼ各色の4分の1波長に対応する位相差が与えられ、さらにこのS偏光成分がダイクロイックミラー12、13における位相特性により同様の位相差が与えられることにより発生する。
【0057】
この実施の形態においては、各反射型液晶パネル14B、14R、14Gの入射面に、位相差板43B、43R、43Gが配置され、各位相差板43B、43R、43Gにおける常光線と異常光線との間の位相差の設定により、偏光ビームスプリッタ11による入射光の4分の1波長に相当する位相差に、色分解合成手段であるダイクロイックミラー12、13による位相差を加算した位相差が打ち消され、これにより黒レベルの部分で偏光ビームスプリッタ11より投射レンズ15に漏れ出す無変調の映像光を極めて小さくすることが可能となる。
【0058】
すなわち投射型表示装置41においては、各反射型液晶パネル14B、14R、14Gにおける入射光と無偏光による反射光とで偏光方向がY軸対称となるように位相差板43B、43R、43Gにより位相差が与えられることにより、各反射型液晶パネル14B、14R、14Gに到達するまでの往路で発生する位相差が復路で打ち消され、これにより黒浮きが低減される。
【0059】
ところがこのように抑圧されるP偏光成分については、各反射型液晶パネル14B、14R、14Gより見た検光面11Aの傾きに由来するものであり、実際上、図16〜図18について上述したように、検光面11Aに対してダイクロイック膜MR、MBがほぼ平行な場合には、実用上充分な程度により黒浮きを防止することができるものの、投射型表示装置41のように、検光面11Aに対してダイクロイック膜MR、MBが傾いている場合には、この傾きによる振動面の相違による位相差の発生については充分に防止することが困難で、結局黒浮きが発生することになる(図16参照)。
【0060】
ところがこの実施の形態においては、このダイクロイック膜MBと偏光ビームスプリッタ11との間にも、位相差板42が配置され、照明光及び映像光について、この位相差板42における入射光及び出射光の偏光方向がY軸対称となるように設定されることにより、このような振動面の相違による位相差の発生についても、往路及び復路で打ち消すようにすることができ、これにより黒浮きを充分に低減することができる。
【0061】
すなわち図2及び図3は、図14及び図15との対比により投射型表示装置41における偏光状態を示すものであり、偏光ビームスプリッタ11に入射した照明光においては、検光面11Aにより検光され、S偏光による直線偏光成分が選択的に反射されて位相差板42に入射する(図3(A))。ここで照明光は、Y軸を基準にして、偏光方向が軸対称となるように位相差が与えられ(図3(B))、続くダイクロイックミラー12で与えられる位相差により楕円偏光となる。
【0062】
このときこの実施の形態では、検光面11Aに対してダイクロイック膜MBが傾いているにもかかわらず(すなわちBDl≠BD2である)、位相差板42により偏光方向がY軸対称となるように位相差が与えられることにより、照明光においては、ダイクロイック膜MBによってはP偏光成分が僅かに発生するのみであり(図3(C))、続くダイクロイック膜MRがダイクロイック膜MBとほぼ平行であることにより(すなわちBD2≒BD3である)、ほぼ同様の偏光によりダイクロイック膜MRを透過することになる(図3(D)及び(E))。
【0063】
かくして照明光は、このようにしてP偏光成分が充分に抑圧された状態で位相差板43GによりY軸対称となるように位相差が与えられ、反射型液晶パネル14Gにより反射され、このとき映像信号により変調されて偏光を受け、投射型表示装置41では映像光が生成される。
【0064】
このようにして生成される映像光のうち、無偏光である黒に対応する成分については(図3(F))、照明光とは逆に光路を辿る際に、ダイクロイック膜MR、MBにより照明光に与えられたと同一の位相差が与えられ(図3(G)〜(H))、この照明光に与えられた位相差と映像光に与えられる位相差とが位相差板43Gにより与えられた位相差により打ち消されることになる。これにより映像光は、ダイクロイックミラー12より出射される際に、このダイクロイックミラー12に入射する照明光をY軸対称としたとほぼ同様な偏光により位相差板42に出射される(図3(I))。
【0065】
映像光は、この位相差板42において、さらにY軸対称となるように位相差が与えられ、これにより位相差板42に入射する際の偏光とほぼ同様の極めて直線偏光に近い楕円偏光により検光面11Aに入射し(図3(J))、これにより投射型表示装置41では、無偏光の成分が投射レンズ15側へ漏れ出さないようにすることができ、黒浮きによるコントラストの低下を充分に低減することができる。
【0066】
なおこれらの関係は、偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aよりダイクロイック膜MBを反射して反射型液晶パネル14Bに照明光を供給する系、また偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aよりダイクロイック膜MB及びMRを透過及び反射して反射型液晶パネル14Rに照明光を供給する系についても、同様である。
【0067】
図4〜図6は、従来例との対比により位相差板42を配置したことによるコントラストの改善効果を示す特性曲線図である。なおこれらは、位相差板42の位相差による黒レベルの変化を実験的に確認したものであり、反射型液晶パネル14Gに代えて、鏡面ミラーに波長板を張り合わせたパネルを用いた緑色波長における測定結果である。測定結果の横軸がこの波長板の位相差を示し(単位は〔nmである)、測定結果の縦軸がスクリーン上における黒レベルの輝度を正規化して示すものである。後述するコントラスト比は、測定結果において黒レベルの輝度が最小となる位相差でも白レベル(ピーク輝度)と黒レベルとの比を表すものである。なお実験は単色で行ったが、他の2色のパネルも同様に測定することにより、最適な位相条件が得られることは言うまでもない。
【0068】
図4は、図16のついて上述した構成による場合の測定結果であり、検光面11A、ダイクロイック膜MB、MRをほぼ平行に配置した場合である。測定した結果によれば、この場合、約300:1のコントラスト比を確保することができる。
【0069】
これに対して図5は、図13について上述した構成による場合の測定結果であり、この場合約80:1のコントラスト比しか確保することができなかった。
【0070】
図6は、この実施の形態に係る構成による場合であり、約250:1のコントラストを確保することができた。
【0071】
(1−3)第1の実施の形態の効果
以上の構成によれば、ダイクロイック膜の光源側に位相差板を配置し、この位相差板によりY軸を基準にして位相差板の入射光及び出射光の偏光方向が略軸対称となるように位相差を与えることにより、偏光ビームスプリッタの検光面に対してダイクロイックミラーを傾けて配置して反射型液晶パネルを光源側に配置する場合でも、黒浮きを低減することができる。これにより全体形状の大型化を防止して、簡易かつ確実に黒浮きによるコントラストの低下を改善することができる。
【0072】
(2)第2の実施の形態
図7は、図1との対比により本発明の第2の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。この投射型表示装置51においては、偏光ビームスプリッタ11、投射レンズ15を間に挟んで光源2と反射型液晶パネル14B、14R、14Gとが対向するように配置する。さらにこれらの配置に対応するように、偏光ビームスプリッタ11の検光面11Aに対してダイクロイックミラー12、13を傾けて配置し、ダイクロイックミラー12及び13により反射する照明光を投射レンズ15側に出射する。なおこの図7に示す構成において、図1について上述した投射型表示装置41と同一の構成は、対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0073】
この図7に示す構成によれば、ダイクロイックミラー12及び13により反射する照明光を投射レンズ15側に出射するように、検光面11Aに対してダイクロイックミラー12、13を傾けて配置して全体形状を小型化する場合でも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(3)第3の実施の形態
図8は、図1との対比により本発明の第3の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。この投射型表示装置61においては、検光面11Aに対して赤色のダイクロイックミラー13だけ傾けて配置し、これにより反射型液晶パネル14Rだけ光源2側に配置する。さらにこの配置に対応して、ダイクロイックミラー13の光源側に位相差板42を配置する。なおこの図8に示す構成において、図1について上述した投射型表示装置41と同一の構成は、対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0075】
この図8に示す構成によれば、ダイクロイックミラー13により反射する照明光だけを光源2に出射するように、検光面11Aに対してダイクロイックミラー13だけを傾けて配置して全体形状を小型化する場合でも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
(4)第4の実施の形態
図9は、図1との対比により本発明の第4の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。この投射型表示装置71においては、ダイクロイックミラー12、13に代えて、ダイクロイックプリズム72により照明光を分解し、また映像光を合成する。なおこの図9に示す構成において、図1について上述した投射型表示装置41と同一の構成は、対応する符号を付して示し、重複した説明は省略する。
【0077】
ここでダイクロイックプリズム72においては、偏光ビームスプリッタ11側より、第1〜第3のプリズムが順次貼り合わされて形成され、この第1及び第2のプリズムの貼り合わせ面に青色用のダイクロイック膜MBが形成される。また第2及び第3のプリズムの貼り合わせ面に赤色用のダイクロイック膜MRが形成される。
【0078】
ダイクロイックプリズム72においては、検光面11Aの法線をBD1、ダイクロイック膜MB及びMRの法線をそれぞれBD2及びBD3と置くと、次式により示すように、ダイクロイック膜MRが検光面11Aに対して大きく傾くように形成される。
【0079】
【数5】
【0080】
投射型表示装置71においては、各反射型液晶パネル14R、14G、14Bの前面にそれぞれ位相差板43R、43G、43Bが配置され、さらにこのダイクロイック膜MRの偏光ビームスプリッタ11側に位相差板42が配置される。
【0081】
図9に示す構成によれば、ダイクロイックミラーに代えてダイクロイックプリズムにより色分解合成手段を構成する場合でも、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、各反射型液晶パネルにそれぞれ位相差板43R、43G、43Bを配置する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、実用上充分な範囲においては各反射型液晶パネルにおける位相差板の配置を省略してもよい。
【0083】
また上述の実施の形態においては、各反射型液晶パネルにより映像光を生成する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、反射型液晶パネルに代えて、入力信号に基づいて各々独立に駆動される2次元アレイ構造の多数の微小ミラーにより入射光を反射させて映像光を出射制御するディジタルマイクロミラーデバイスを使用する場合にも広く適用することができる。
【0084】
また上述の実施の形態においては、位相差生成手段として位相差板42を配置する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばビームスプリッタに別途形成した蒸着膜、蒸着フイィルム等により位相差生成手段を構成してもよい。また同様に、反射型液晶パネルの前面に配置する位相差板43R、43G、43Bに代えて、例えば反射型液晶パネルの前面に形成した蒸着膜、蒸着フィルム等により位相差を与えるようにしてもよい。
【0085】
また上述の実施の形態においては、偏光ビームスプリッタより反射型液晶パネル間においては、単に色分解合成手段だけを配置する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば非点収差補正用のレンズ等を介挿する場合にも広く適用することができる。
【0086】
【発明の効果】
上述のように本発明によれば、色分解合成手段の照明光が入射する側に位相差板を配置することにより、全体形状の大型化を防止して、簡易かつ確実に黒浮きによるコントラストの低下を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。
【図2】図1の投射型表示装置について、各境界面を示す略線図である。
【図3】図1の投射型表示装置について、偏光状態の変化を示す略線図である。
【図4】図1の投射型表示装置との対比により従来例の係投射型表示装置によるコントラスト比を示す特性曲線図である。
【図5】図1の投射型表示装置との対比により位相差板を省略した場合のコントラスト比を示す特性曲線図である。
【図6】図1の投射型表示装置のコントラスト比を示す特性曲線図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。
【図9】本発明の第4の実施の形態に係る投射型表示装置を示す略線図である。
【図10】従来の投射型表示装置を示す略線図である。
【図11】図10の投射型表示装置について、各境界面を示す略線図である。
【図12】図10の投射型表示装置について、偏光状態の変化を示す略線図である。
【図13】図10の投射型表示装置において、各反射型液晶パネルに位相差板を配置した構成を示す略線図である。
【図14】図13の投射型表示装置について、各境界面を示す略線図である。
【図15】図13の投射型表示装置について、偏光状態の変化を示す略線図である。
【図16】検光面とダイクロイック膜とを平行に配置した従来構成による投射型表示装置を示す略線図である。
【図17】図16の投射型表示装置について、各境界面を示す略線図である。
【図18】図16の投射型表示装置について、偏光状態の変化を示す略線図である。
【符号の説明】
1、21、31、41、51、61、71……投射型表示装置、2……光源、11……偏光ビームスプリッタ、11A……検光面、12、13……ダイクロイックミラー、14B、14G、14R……反射型液晶パネル、17B、17G、17R、32B、32G、32R、42、43B、43G、43R……位相差板、72……ダイクロイックプリズム
Claims (5)
- それぞれ入射光を空間変調すると共に反射して映像光を出射する複数の反射型画像形成手段と、
照明光を前記反射型画像形成手段に対応する波長により分解して、前記各反射型画像形成手段に出射すると共に、前記各反射型画像形成手段より得られる映像光を合成して合成映像光を出射する色分解合成手段と、
前記合成映像光を所定の投射対象に投射する投射光学系と、
所定の光源より出射される照明光より所定の偏光面成分を前記色分解合成手段に向けて出射すると共に、前記色分解合成手段より得られる前記合成映像光を前記投射光学系に出射する偏光ビームスプリッタとを少なくとも備え、
前記偏光ビームスプリッタ及び前記色分解合成手段の間の光路上に、
前記偏光ビームスプリッタの検光面を含む仮想面と、前記色分解合成手段における色分解合成面を含む仮想面とが交差する直線方向を基準軸として、入射光及び出射光の偏光方向が前記基準軸に対して略軸対称となるように位相差を与える位相差生成手段が配置された
ことを特徴とする投射型表示装置。 - 前記反射型画像形成手段は、
入力信号に基づいて入射光の偏光面を回転させる液晶により前記映像光を生成する
ことを特徴とする請求光1に記載の投射型表示装置。 - 前記位相差生成手段は、
1/2波長板である
ことを特徴とする請求光1に記載の投射型表示装置。 - 前記反射型画像形成手段と前記色分解合成手段との間の光路上に、
前記直線方向を基準軸として、前記反射型画像形成手段における入射光の偏光方向と、無変調における反射光の偏光方向とが前記基準軸に対して略軸対称となるように位相差を与える位相差板が配置された
ことを特徴とする請求項2に記載の投射型表示装置。 - 前記偏光ビームスプリッタより出射し、前記色分解合成手段の色分解合成面により反射される前記照明光の出射方向が、前記光源側又は前記投射光学系側となるように、前記偏光ビームスプリッタの検光面に対して、前記色分解合成面に向きが設定された
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
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