JP4018600B2 - 光ファイバ配線装置及び配線方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、光ファイバの配線装置及び配線方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【0003】
【特許文献1】
特許第2735464号公報。
【特許文献2】
特開平11−119034号公報。
【特許文献3】
特開2001−59910号公報。
【特許文献4】
特表2001−511910号公報。
【0004】
光回路パッケージ内の複数の光素子の接続や、複数の光回路パッケージ相互間、或いは光回路パッケージを搭載する光回路装置の光学接続では、一般的に光素子や光回路パッケージ、光回路装置等の端部に光コネクタを配置して、光ファイバによって相互に接続している。その場合、光ファイバは余長を持って配置する必要があるために、例えば、光回路パッケージ上や光回路装置等の内部および/または背面では、光ファイバによる複雑な配線が鳥の巣状に、または輻輳して張り巡らされ、そのために大きな空間を占めているのが現状である。このような複雑な配線のために多大な場所と接続の労力を必要とする光学接続方法に対して、光ファイバを二次元平面上に任意に配線することにより、これらの問題を解決する簡便な光学接続部品が提案されている。そして、光ファイバの配線に用いる配線方法及び配線装置については、例えば、特許文献1には、マニピュレータ端部に回転輪を取り付け、回転輪の周辺部が光ファイバの一端部を基材に設けた粘着材に粘着させる光ファイバ接続装置及び方法が開示されている。この光ファイバ配線方法では、回転輪が回転することで光ファイバに過大な張力を与えない点では、光ファイバの破損を抑えることができるが、回転輪にある光ファイバを所定位置に保持するための溝に縁があるために、光ファイバを隙間無く並列して整列させることができなかった。
【0005】
また、特許文献2には、布線ヘッド先端に貫通孔を設けて、その貫通孔に挿入された光ファイバを曲げて、その曲げ応力により光ファイバを粘着層または接着層に押し付けて配線する方法を開示されている。この方法は、機構は簡単であるが、光ファイバを貫通孔の周縁端部で曲げているため、光ファイバが貫通孔内壁に局部的に押し付けられ、摩擦が増大する。その結果、光ファイバに張力が作用し、過大な張力が作用したまま光ファイバを粘着層または接着層に貼り付けると、その張力を緩和させるために基板が変形する恐れがあった。また、張力が作用することにより、光ファイバの光学特性を悪化させる恐れがあった。さらにまた、貫通孔中心と光ファイバと粘着層または接着層の接触点が異なり、貫通孔を配線パターン軌道に応じて移動させ、光ファイバを配線する場合、配線パターン通りに光ファイバを配線することができなかった。
【0006】
特許文献3には、布線ヘッドが光ファイバを基板の面に対して一定程度曲げた状態で保持する押さえ溝と押さえ溝に光ファイバを導入するガイド溝を備え、ヘッド先端に向けて浅くかつ狭くなるように形成されている押さえ溝で粘着剤上に押し付ける光ファイバの配線方法が提案されている。この方法は、配線パターン通りに光ファイバを配線可能にしているが、光ファイバが長い距離を有するガイド溝及び押え溝の大部分に接触するため、抵抗が大きくなり、その結果、張力が大きくなって、光ファイバを破損させることがあり、また、大きな張力を残したまま光ファイバを固定するので、基板または粘着層または接着層の物理的変化により、光ファイバの光学特性に大きな影響を与える可能性があった。
【0007】
特許文献4には、光ファイバが、リールから緩やかなループを経てコレットまたはノズルに供給され、更にその先にある押さえ手段によって、接着剤の表面に押し付けられて配線される方法が開示されている。なお、リール、ループ、コレットは光ファイバの配線パターンに沿って移動する。この方法では、押さえ手段に光ファイバを規制する溝が設けられていないために、配線パターン通りに光ファイバを配線するには、光ファイバの出口部分(コレットまたはノズル)から、押圧面までの光ファイバの方向を一定にし、押圧時に確実に光ファイバを一定位置で基板に接触させ、また、出口部分と押圧面間の光ファイバの張力を一定に制御する等の必要があり、機構が大変難しくなるという問題がある。また、光ファイバが交差する配線パターンでは、交差する際に押圧面が光ファイバを基板上に接触できず、かつ押圧面に溝等の光ファイバを規制する手段がないため、配線パターンから光ファイバがずれ、そのために、光ファイバが押圧面から外れ、配線不可能になる場合があった。
【0008】
また、従来の光ファイバ配線装置及び配線方法おいて、光ファイバの配線位置精度を高く保つ為には、光ファイバの径に合わせて、溝形状または貫通孔形状を固有のものに設定する必要があり、同一工程で、2種類の径の光ファイバを配線する際には、配線ヘッドまたは布線ヘッドを交換するか、または交換不可能な場合もあった。
【0009】
以上のように、従来提案されている配線装置及び配線方法は、光ファイバの配線に際して、(1)隙間のない並列整列が困難である、(2)所定のパターン通りに配線できない、(3)張力が大きく、破損または光学特性が悪い、(4)異なる径の光ファイバに対応できないという問題点があり、その解決が望まれている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記のような問題点を解決することを目的としてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、光ファイバを基材に設けられた接着剤層に配線する場合において、光ファイバを並列整列でき、設計パターン通りに配線でき、光ファイバの交換が可能であり、作業者が接続作業を負担なく行うことができ、光ファイバに働く張力を過度に増加させずに光ファイバの光学特性への影響が少なく、光ファイバを損傷させず、また、光ファイバ配線ヘッド等の構造が簡単で、生産性が良く、低コストで配線を行うことができる光ファイバ配線装置及び配線方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ファイバ配線装置は、光ファイバ配線ヘッドと、該光ファイバ配線ヘッドを移動させる制動装置とを備え、該光ファイバ配線ヘッドによって光ファイバを基材に設けた接着剤層上に位置合わせして配線、固定する光ファイバの配線装置において、上記光ファイバ配線ヘッドの底面部に、上記基材を載置する平面に対して傾斜した角度で直線状ガイドが設けられるとともに、該直線状ガイドに光ファイバを導入するための光ファイバ支持部材が設けられており、前記光ファイバ配線ヘッドと結合されていない該光ファイバ支持部材が、光ファイバ配線ヘッドを中心に公転移動することで、前記光ファイバ配線ヘッドは回転力が付与されることを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の配線装置の概略の構成を示す斜視図である。配線装置は、接着剤層を設けた基材5を支持するテーブル(吸着台)1と、XYZ軸方向への移動を制御するXYZ制動装置4とを備え、そして制動装置4には光ファイバ配線ヘッド2を装着した配線ヘッド保持部材が取り付けられている。テーブル1の上には、テーブルを横断する方向(Y軸方向)に掛け渡され、X軸方向に移動するYバー6が設けられており、XYZ制動装置4がこのYバーにY軸方向に移動可能に載置されている。また、光ファイバ配線ヘッド2は、X軸方向に移動可能になっている。この配線装置において、上記Yバー、XYZ制動装置4および、光ファイバ配線ヘッド2の移動は、図示されていない制動手段によって、XYZ軸方向に制御可能になっている。なお、制動手段はそれ自体公知のものであって、本発明においては、公知の如何なるものでも適用可能であるので、その詳細は省略する。上記配線装置において、光ファイバ送り出し手段7により繰り出された光ファイバ3は、光ファイバ配線ヘッド2により接着剤層上に配線されるが、光ファイバ配線ヘッドは制動手段によってXYZ軸方向の任意の位置に移動可能であるので、光ファイバは適宜の位置に位置決めすることができ、また、直線及び曲線の軌跡を連続的に描くことが可能である。
【0015】
本発明の上記配線装置において、配線ヘッド保持部材に取り付けられる光ファイバ配線ヘッド2は、その底面部に、基材を載置する平面に対して傾斜した角度で直線状ガイドが設けられている。
【0016】
図2は、本発明の光ファイバ配線装置に用いる光ファイバ配線ヘッドを示すものであって、図2(a)は斜視図、図2(b)は縦断面図である。また、図3は図2の光ファイバ配線ヘッドを用いて光ファイバを配線する方法を説明する図である。図2に示すように、光ファイバ配線ヘッド2には、その底面部に、基材を載置する平面、したがって、接着剤層の表面に対して傾斜した角度で直線状ガイド10が設けられている。この光ファイバ配線ヘッドを使用して光ファイバを配線すると、図3に示すように、直線状ガイド10が、横方向に位置がずれない様に光ファイバ3をガイドしながら、光ファイバ配線ヘッド2の高さを保持して、接着剤層5a上に位置合わせを行うことになる。本発明の光ファイバ配線ヘッドは、光ファイバを案内するガイドが直線状であるため、光ファイバ自身に最も応力がかかり難い直線形状の状態を保って接着剤層に接触させることができる。したがって、従来の技術において問題となる、曲げ応力により光ファイバが光ファイバ配線ヘッドに押し付けられるために生じる摩擦力の増大を抑えることが可能となる。また、接着剤層表面に対する光ファイバの角度が小さいため、光ファイバには曲げ応力がほとんどかからず、接着剤層上に配置できる。したがって、曲げ応力による光ファイバと光ファイバ配線ヘッド間の摩擦力をさらに小さくすることができ、光ファイバに大きな張力が働いたまま接着剤で固定されるという問題は発生しない。したがって、本発明の配線装置によれば、光ファイバの光学特性に影響を与えることなく、光ファイバの配線が可能になる。
【0017】
本発明に使用される光ファイバ配線ヘッドの材料及び形状は特に限定されるものではない。具体的な材料としては、プラスチック、セラミック、金属等が好ましく使用される。また、光ファイバ配線ヘッドは、その直線状ガイド部とその他の部分とで、構成する材料が異なっていてもよく、例えば、直線状ガイド部は、フッ素系樹脂やポリアセタール等の光ファイバとの摩擦が少ない材料で作製されたものが好ましい。
【0018】
本発明において、光ファイバ配線ヘッドの底面部に設ける直線状ガイドと基材を設置する平面との角度は、配線する光ファイバの弾性または光ファイバ径によって異なるが、弾性が小さく、また径が細い光ファイバの場合は、角度を大きくすることができ、また、弾性が大きく、径が太い光ファイバの場合は角度を小さくする必要がある。また、直線状ガイドは、光ファイバが安定的に保持できれば、基本的に如何なる断面形状を有していてもよいが、光ファイバの径または材質により適宣選択される。例えば、直線状ガイドは、溝状であっても貫通孔であってもかまわない。直線状ガイドが溝形状である場合、例えば、断面が四角形、半円形、V字状のものが好ましく使用される。また、直線状ガイドは、光ファイバ配線ヘッド底面全体にわたって形成されていても、底面の一部に形成されていてもかまわない。図4及び図5は、種々の形状の直線状ガイドを備えた光ファイバ配線ヘッドの底面部を示す図であって、図中、2は光ファイバ配線ヘッド、10a〜10hは直線状ガイドである。
【0019】
図4(a)に示すように、ガイド10aが底部全面にわたって形成されている場合は、光ファイバのガイド性がよくなり、図4(b)に示すように、底面の一部にガイド10bが形成されている場合は、光ファイバと接着剤層の接触点を光ファイバ配線ヘッドの中心近傍にすることが可能になり、光ファイバの配線ずれを小さくすることができる。また、図4(c)に示すように、直線状ガイド10cの溝の深さを終始一定とし、光ファイバ配線ヘッドのエッジ部を取り去った場合には、既に配線された光ファイバの近傍に光ファイバを配線したり、または交差させる場合に、光ファイバ同士が引っ掛かって、配線パターンを崩すという問題がなくなる。
【0020】
光ファイバ径が小さい場合、図5(a)に示すように、光ファイバの位置が一義的に決まる断面V字形の溝よりなる直線状ガイド10dを用いた方が好ましく、また、光ファイバ径が大きい場合、溝の加工精度が光ファイバ配線精度への影響が小さいため、図5(b)に示すように、断面矩形の溝よりなる直線状ガイド10e、または、図5(c)に示すように、断面半円状の溝よりなる直線状ガイド10fであってもかまわない。溝の深さが最も深い箇所は、光ファイバ径の2倍以上であることが好ましく、例えば0.25mmφの光ファイバであれば、0.5mm以上、0.5mmφの光ファイバであれば、1mm以上、0.9mmφの光ファイバであれば2mm以上であることが好ましい。また、同一の基材に異なる径の光ファイバを配線する場合があるが、その場合は、最大径の光ファイバに合わせた溝の深さにすることが好ましい。例えば、250μmφ石英光ファイバ心線と750μmφプラスチック光ファイバを同一基材上に配線する場合には、溝の最大深さは1.5mm以上であることが好ましい。その際、溝の断面形状は、小径ファイバが配線し易くするために、V字状にするのが好ましい。したがって、本願発明では、異なる径の光ファイバの配線にも簡単に対応できる。また、光ファイバ径が小さく、光ファイバ形状の自己保持性が乏しい場合、光ファイバの拘束力をより強くするのが好ましく、例えば、図5(d)及び(e)に示すように、光ファイバ配線ヘッド2の底面部に貫通孔よりなる直線状ガイド10gまたは10hを設けたものが好ましい。この貫通孔に光ファイバを通すことにより、光ファイバが形状の自己保持性を有していなくても、光ファイバが光ファイバ配線ヘッドから脱落することなく、精度良く配線することが可能になる。
【0021】
本発明の配線装置には、光ファイバ配線ヘッドの直線状ガイドに光ファイバを導入する際に光ファイバを支持するための光ファイバ支持部材を設けることが好ましい。また、その場合、光ファイバ支持部材を直線状ガイドの延長線上に設けることがより好ましい。図6は、本発明において、光ファイバ支持部材を用いて光ファイバ配線ヘッドに光ファイバを導入する場合を概略的に説明する図である。光ファイバ送り出し手段により繰り出された光ファイバ3は、光ファイバ支持部材8に支持された状態で光ファイバ配線ヘッド2の直線状ガイド10に導かれる。したがって、光ファイバ3は、予め平面に対する角度が所定の角度になるように規制され、また、直線状態を維持することが困難な光ファイバの場合でも、光ファイバ配線ヘッドに容易に導入することが可能になる。
【0022】
直線状ガイドは光ファイバ径に合わせて作製するのが好ましいので、光ファイバを光ファイバ配線ヘッドに導入する際に挿入することが困難な場合があるが、そのような場合、上記図6に示すように、光ファイバ支持部材8上に光ファイバ3を予め支持させることにより、接着剤層表面に対する光ファイバの角度が規定されるので、光ファイバを光ファイバ配線ヘッドに装着し易くすることができる。また、光ファイバを拘束する直線状ガイドのガイド長が短かったり、光ファイバに剛直性が乏しい場合には、光ファイバを直線的に保持することが困難であるが、そのような場合、光ファイバ支持部材上に光ファイバを予め置くことにより、形状自己支持性に乏しい光ファイバでも光ファイバ配線ヘッドに容易に装着可能となる。
【0023】
本発明に使用される光ファイバ支持部材8の材料及び形状は特に限定されるものではなく、例えば、材料としては、プラスチック、セラミック、金属等が好ましく使用される。また、光ファイバ支持部材は、光ファイバを保持して安定して通過させることができればよく、例えば図7に示されるように、種々の形態をとることができる。例えば、図7(a)に示すように、貫通孔8aを有する光ファイバ支持部材8、図7(b)に示すように、溝を有する滑車8bよりなる光ファイバ支持部材8、図7(c)に示すように、溝8cを設けた光ファイバ支持部材8等、種々の形態のものがあげられる。図7(a)に示すように、貫通孔を設けた場合、貫通孔の光ファイバ挿入端の開口部形状がコーン状であることが好ましい。図7(b)に示すように、溝を有する滑車を用いた場合は、光ファイバと光ファイバ支持部材との摩擦力により生じる光ファイバへの張力を抑えることができるという効果を生じる。また、図7(c)に示すように、溝を設けた光ファイバ支持部材の場合、溝の断面形状は、光ファイバが安定的に収納できればよく、四角、半円、V字状のものが好ましく使用される。また、溝の開口部を上方にして設置することにより、光ファイバを溝に簡単に導入することができ、光ファイバ配線ヘッドへの装着が容易となる。
【0024】
本発明において、光ファイバ支持部材は、配線装置に、図示しない適当な手段によって光ファイバ配線ヘッドを中心に公転移動可能に取り付けられている。後記するように、光ファイバ支持部材は光ファイバ配線ヘッドに結合部材によって取り付けられていてもよい。その場合には、光ファイバ支持部材が光ファイバの公転に伴って、光ファイバ配線を回転させることが可能になる。
【0025】
図8は、本発明の光ファイバ配線方法における光ファイバ配線ヘッドの動作を説明する図であって、図8(a)は、光ファイバを直線状に配線する場合、図8(b)は、曲線状に配線する場合を示す。図8(a)に示すように、光ファイバを直線状に配線する場合、光ファイバ配線ヘッド2に設けられている直線状ガイド10の延長線上に光ファイバ支持部材8を配置することが好ましい。また、図8(b)に示すように、光ファイバを曲線状に配線する場合、光ファイバと接着剤層との接触点における配線パターン軌道12の接線13上に光ファイバ支持部材8を配置することが好ましい。したがって、光ファイバ配線の向きを変える場合には、光ファイバ配線ヘッド2を回転させると共に、光ファイバ支持部材8を光ファイバ配線ヘッドを中心に公転移動させて、光ファイバ支持部材8と直線状ガイド10とが同一方向となるようにすればよい。
【0026】
光ファイバの配線方向を簡単に変えるための構造として、光ファイバ支持部材と光ファイバ配線ヘッドとが結合部材によって結合し、そして光ファイバ支持部材を光ファイバ配線ヘッドを中心に公転移動させる駆動装置を備えた構造のものをあげることができる。図9は、その場合の動作の状態を説明するもので、図9(a)は回転開始時点、図9(b)は回転の途中、図9(c)は回転終了時点の状態を示す。図9に示す場合、光ファイバ支持部材8と光ファイバ配線ヘッド2とは接合部材11によって結合されており、そして光ファイバ支持部材を公転軌道14上を移動させるための図示しない駆動装置が備えられ、光ファイバ配線ヘッド2には、それを直接回転させるための駆動装置を備えていない。この構造の場合、光ファイバ支持部材8を光ファイバ配線ヘッド2を中心に公転させることにより(図9(a)(b)の矢印)、光ファイバ配線ヘッド2に回転力が与えられる。この構造は、Z軸方向に移動する光ファイバ配線ヘッド2またはそれが取り付けられる配線ヘッド保持部材に、光ファイバ配線ヘッドの回転のための駆動機構を設ける必要がなくなり、光ファイバを交差配線させる場合などのZ軸移動性能を向上させることができるという利点がある。
【0027】
また、図10は、光ファイバ支持部材に導入された光ファイバによって光ファイバ配線ヘッドに回転力が与えられる場合を説明する図である。図10に示す場合、光ファイバ支持部材と光ファイバ配線ヘッドとは直接結合されていない。しかしながら、光ファイバ支持部材8を光ファイバ配線ヘッド2を中心に公転移動させることにより、光ファイバ支持部材に導入された光ファイバ3によって光ファイバ配線ヘッド2に回転力が与えられる。したがって、上記図9に示した結合部材を用いる場合と同様に、Z軸方向に移動する光ファイバ配線ヘッド2または、それが取り付けられる光ファイバ配線ヘッド保持部材に、光ファイバ配線ヘッドの回転のための駆動機構を設ける必要がなくなり、光ファイバを交差配線させる場合などのZ軸垂直移動性能を向上させることができる。なお、他の符号は上記図9の場合と同意義である。
【0028】
次に、図1の配線装置のXYZ制動装置(XYZロボット)4の具体的な一例を図11によって説明する。図11において、XY可動装置20の上部には、配線ヘッド保持部材21をZ軸方向に移動可能に支持するスライド治具22が設けられており、スライド治具22には、下端に光ファイバ配線ヘッド2を取り付け上端にラック25を設けた配線ヘッド保持部材21がZ軸方向に移動可能に支持されている。XY可動装置20の上にはモーター23、モーターに取り付けられた歯車24とよりなるZ軸移動用駆動装置が設けられている。Z軸移動用駆動装置の歯車24は、配線ヘッド保持部材21に備えられているラックと螺合しており、モーター23の駆動により、配線ヘッド保持部材21がZ軸方向に移動可能になっている。また、XY可動装置20には、歯車装着治具26が設けられており、その歯車装着治具に光ファイバ支持部材公転用の歯車27が、その回転軸が光ファイバ配線ヘッド2の中心軸線19と一致するように装着されている。この歯車は、XY可動装置20に固定されたモーター28に連結されて回転する歯車29と螺合しており、モーター28を駆動することによって回転する構造になっている。また、この歯車27には、光ファイバ支持部材8を支持する支持部材30が固定されており、それによって歯車27の回転と共に光ファイバ支持部材8が、光ファイバ配線ヘッド2の中心軸線19を中心に公転するようになっている。また、この光ファイバ支持部材8は、結合部材11によって光ファイバ配線ヘッド2に接合されており、光ファイバ支持部材8の公転に伴って光ファイバ配線ヘッドも中心軸線19を中心に回転するようになっている。
【0029】
上記の制動装置を備えた配線装置において、光ファイバ配線ヘッド2をZ軸方向に移動させるには、モーター23を駆動すればよい。すなわち、モーター23の駆動によりモーターに連結した歯車24を回転させ、螺合するラック25をZ軸方向に移動させて配線ヘッド保持部材21に装着された光ファイバ配線ヘッド2をZ軸方向に移動させることができる。また、光ファイバ3を配線する場合、配線パターンの曲線部において、光ファイバの配線方向を変更するためには、モーター28を駆動すればよい。すなわち、モーター28を駆動すると、歯車29を介して歯車27を回転させる。歯車27には、支持部材30が固定されているので、支持部材によって支持されている光ファイバ支持部材8も同時に中心軸線を中心に公転する。その場合、光ファイバ支持部材8と光ファイバ配線ヘッド2は、結合部材11によって結合しているので、前記図9に示したように、光ファイバ配線ヘッドも回転して光ファイバ支持部材と同一の配線方向に向くようになる。
【0030】
なお、光ファイバ支持部材8は、光ファイバ配線ヘッド2がZ軸方向に移動した場合、光ファイバ支持部材との相対的距離が変化しない方が好ましいため、例えば、図12に示すような構造の支持部材(光ファイバ支持部材横位置規制用治具)30に装着するのが好ましい。上記のような構成にすることにより、光ファイバ配線ヘッド保持部材のZ軸移動と、光ファイバ支持部材の公転運動は独立して駆動させることができる。すなわち、光ファイバ配線ヘッドのZ軸移動と回転運動とを独立した駆動装置により実行することができ、低出力の駆動装置に適用できるため、各可動部にかかる重量が軽減され、配線速度を向上することができ、かつ、荷重制限を小さくでき、コストの低減をはかることができる。
【0031】
本発明の配線方法に用いる基材に設けた接着剤層を構成する接着剤としては、配線される光ファイバの曲げで生じる張力に対して光ファイバの形状を維持し、かつ接着により光ファイバが応力ひずみを受けない程度の接着力を有するものであれば、如何なるものでも使用でき、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ナイロン系、フェノール系、ポリイミド系、ビニル系、シリコーン系、ゴム系、フッ素化エポキシ系、フッ素化アクリル系等各種の感圧接着剤(粘着剤)、熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤を使用することができる。光ファイバの配線の容易さからは、感圧接着剤および熱可塑性接着剤が好ましく使用される。
【0032】
【実施例】
以下、本発明について実施例によって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
外径10mmφ、高さ10mmのポリアセタール樹脂成形体に、頂点角60度、最大深さ0.75mmの断面V字状の溝よりなるガイド10を底面に対し30度の角度で切削加工して設け、図5(a)に示す構造の光ファイバ配線ヘッド2を作製した。作製した光ファイバ配線ヘッドを、図13に示すように、ベアリング内輪16にはめ込み、ベアリング外輪17を光ファイバ保持部材21に光ファイバ配線ヘッドが自由に回転できるように取り付けた。上記光ファイバ保持部材21をXYZ制動装置(XYZロボット)のZ軸駆動装置に取り付けた。
【0033】
一方、n−ブチルアクリレート/メチルアクリレート/アクリル酸/2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(=82/15/2.7/0.3)からなるアクリル系樹脂の30%酢酸エチル溶液100部に、コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)1.0部を添加して混合し、アクリル系粘着剤塗布液を得た。次いで、この塗布液を、厚さ125μmのポリイミドフィルムの一面に、乾燥後の膜厚が100μmになるように塗工して、粘着剤層が形成されたシート基材(サイズ70mm×50mm)を用意した。そのシート基材の粘着剤層上に、光ファイバ心線(古河電工社製、250μm径)2本を配線して光学接続部品を作製した。すなわち、図14に示すような配線パターンを設計し、図15に示す工程を経て配線した。まず、上記作製したシート基材15を配線装置の吸着台に固定し、XYZロボットを駆動させ、光ファイバ配線ヘッド2を配線を開始するシート基材端部に移動させた(図15(a))。次いで、光ファイバ配線ヘッドの直線溝ガイド10を配線方向に合わせ、長さ300mmにカットした光ファイバ心線3を光ファイバ端部から100mmの距離の部分を直線状ガイド10に挿入し、光ファイバ配線ヘッド2をシート基材との距離が0.3mmになるまで下方に移動させた(図15(b))。その後、光ファイバ配線ヘッド2とシート基材15との距離を一定に保ちながらシート基材15が置かれている平面に対して約30度の角度を保つように手で保持し、光ファイバ配線ヘッド2が配線パターン軌道上を通るようにXYZロボットを駆動させた(図15(c))。シート基材の他方の端部に光ファイバ配線ヘッドが到着した時点でXYZロボットを停止した。次いで、光ファイバ配線ヘッド2を上方向に移動させて光ファイバ3を光ファイバ配線ヘッド2の直線状ガイド10から開放し、最初の光ファイバの配線を終了した(図15(d))。上記の作業を、他の光ファイバの配線パターンに対して繰り返して実施し、配線作業を終了した。それにより、光ファイバが、配線パターンの通りに配線されたシート基材が得られた。
【0034】
本発明の光ファイバ配線方法を用いることにより、光ファイバ配線ヘッドへの光ファイバの装着作業が負担なく実施でき、また、光ファイバ配線ヘッドと光ファイバ間に働く摩擦力を抑えることができた。したがって、光ファイバ配線時に光ファイバにかかる張力が小さくなり、配線後にシート基材が変形し、めくれ上がることはなかった。さらに、光ファイバを損傷させずに配線可能であった。
【0035】
また、作製された光ファイバが配線されたシート基材において、光ファイバの配線位置精度は±0.05mmであり、XYZロボットによる位置合わせ精度と同等の位置合わせ精度が得られた。また、直線配線部分において、光ファイバと粘着剤層間に応力が残存しているときに発生するシート基材のカールは確認されなかった。したがって、本発明の光ファイバ配線方法は、光ファイバ配線シート基材への配線に十分使用可能であった。
【0036】
実施例2
図16のように、5mm×20mm、高さ10mmのポリアセタール樹脂の角材に、幅0.55mm、最大深さ1.5mmの矩形溝よりなるガイド10を長手方向に底面に対し15度の角度で切削加工して、光ファイバ配線ヘッド2を作製した。作製した光ファイバ配線ヘッド2をベアリング内輪にはめ込み、ベアリング外輪を光ファイバ保持部材に光ファイバ配線ヘッドが自由に回転できるように取り付けた。上記光ファイバ保持部材をXYZ制動装置(XYZロボット)のZ軸駆動装置に取り付けた。
【0037】
厚さ125μmのポリイミドフィルムの一面に、実施例1において用いたものと同様のアクリル系粘着剤塗布液を、乾燥後の膜厚が200μmになるように塗工して、粘着剤層が形成されたシート基材(サイズ70mm×50mm)を用意した。得られたシート基材の粘着剤層上に、プラスチック光ファイバ心線31(三菱レイヨン製、500μm径)2本を配線して光学接続部品を作製した。すなわち、光ファイバ配線ヘッドをシート基材との距離が0.6mmになるまで下方に移動させる以外は、実施例1と同様に配線して、実施例1と同様の配線パターンで配線されたシート基材を作製した。
【0038】
本発明の光ファイバ配線方法を用いることにより、光ファイバ配線ヘッドへの光ファイバの装着作業が負担なく実施できた。使用したプラスチック光ファイバは、剛性が強く、曲げ応力を働かせる配線方法では、光ファイバ配線ヘッドと光ファイバ間に働く摩擦力が極端に大きくなるが、本発明の上記方法では、光ファイバとガイドを平行に接触させることによって摩擦力を最低限に抑え、それによって光ファイバ配線時に光ファイバにかかる張力が小さくなり、配線後にシート基材が変形し、めくれ上がることはなかった。さらに、使用したプラスチック光ファイバは、折れ易いものであるが、本発明の上記方法によれば、光ファイバを損傷させずに配線することが可能であった。
【0039】
また、作製された光ファイバが配線されたシート基材において、光ファイバの配線位置精度は±0.05mmであり、XYZロボットによる位置合わせ精度と同等の位置合わせ精度が得られた。また、直線配線部分において、光ファイバと粘着剤層間に応力が残存しているときに発生するシート基材のカールは確認されなかった。したがって、本発明の光ファイバ配線方法は、光ファイバ配線シート基材への配線に十分使用可能であった。
【0040】
実施例3
実施例1に用いた光ファイバ配線ヘッドを、図11に示す構造のXYZ制動装置を備えた光ファイバ配線装置に装着した。
実施例1において用いたものと同様のアクリル系粘着剤塗布液を、厚さ125μmのポリイミドフィルムの一面に、乾燥後の膜厚が100μmになるように塗工して、粘着剤層が形成されたシート基材(サイズ70mm×50mm)を用意した。そのシート基材の粘着剤層上に、光ファイバ心線31(古河電工社製、250μm径)を配線し、各ポート(光学接続部品からの光ファイバ取り出し部分)当りの光ファイバ4本で構成し、入力ポートおよび出力ポートを各2個で構成した2×2の光学接続部品を作製した。すなわち、図17に示すような配線パターンを設計し、そして光ファイバの交差部において、光ファイバ配線ヘッドをZ軸方向に移動させ、配線する光ファイバと既に配線された光ファイバの距離を0.3mmに保って配線させる以外は、実施例1と同様に配線し、図18に示されるパターンに光ファイバ心線31が配線されたシート基材を作製した。
【0041】
本発明の光ファイバ配線方法を用いることにより、光ファイバ配線ヘッドへの光ファイバの装着作業が負担なく実施でき、また、光ファイバ配線ヘッドと光ファイバ間に働く摩擦力を抑えることができた。したがって、光ファイバ配線時に光ファイバにかかる張力が小さくなり、配線後にシート基材が変形し、めくれ上がることはなかった。さらに、光ファイバを損傷させずに配線可能であった。さらに、光ファイバ配線ヘッドのZ軸移動と回転運動が異なる駆動装置により行われるため、光ファイバ配線ヘッドがスムーズに稼動し、光ファイバの交差部においても、既に配線されている光ファイバと配線する光ファイバとの接触による破損が生じることなく配線可能であり、生産高を向上させることができた。
【0042】
また、作製された光ファイバ配線シート基材において、光ファイバの配線位置精度は±0.05mmであり、XYZロボットによる位置合わせ精度と同等の位置合わせ精度が得られた。また、直線配線部分において、光ファイバと粘着剤間に応力が残存しているときに発生するシート基材のカールは確認されなかった。したがって、本発明の光ファイバ配線方法は、精度光ファイバを配線パターン崩れなく配線でき、光ファイバ配線シート基材への配線に十分使用可能であった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の光ファイバ配線装置は、光ファイバ配線ヘッドに直線状ガイドを設けたものであるから、この配線装置を用いて、光ファイバを基材に設けられた接着剤層に配線する場合において、光ファイバに過大な張力を与えることなく接着剤層上に配線可能となる。また、光ファイバを光ファイバ配線ヘッドに簡単に装着でき、容易に光ファイバの交換が可能となるので、作業者の配線時における作業が負担なく実施できるようになる。また、ガイドが直線状で光ファイバとの接触が短いために、光ファイバ配線ヘッドと光ファイバ間に働く摩擦力を極力抑えて、光ファイバに働く張力を過度に増加させずに配線することができ、したがって、光ファイバの光学特性への影響が少なく、かつ、光ファイバを損傷させないで光ファイバを配線することが可能である。また、光ファイバ支持部材を設けた場合には、光ファイバ配線ヘッドに回転用制動装置を設けなくてもよいため、生産性の向上がはかられ、さらに、装置のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバ配線装置の概略の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の光ファイバ配線装置に用いる光ファイバ配線ヘッドの一例を示す斜視図及び縦断面図である。
【図3】図2の光ファイバ配線ヘッドを用いて光ファイバを配線する方法を説明する図である。
【図4】本発明の光ファイバ配線装置に用いる種々の光ファイバ配線ヘッドの側面図である。
【図5】本発明の光ファイバ配線装置に用いる種々の光ファイバ配線ヘッドの斜視図である。
【図6】本発明の光ファイバ配線方法の一例を説明する図である。
【図7】種々の光ファイバ支持部材を用いて配線する場合を説明する図である。
【図8】本発明の光ファイバ配線装置における光ファイバ配線ヘッドの動作を説明する図である。
【図9】本発明の光ファイバ配線装置における光ファイバ配線ヘッドの回転動作の一例を説明する図である。
【図10】本発明の光ファイバ配線装置における光ファイバ配線ヘッドの回転動作の他の一例を説明する図である。
【図11】本発明の光ファイバ配線装置のXYZ制動装置の一例の概略の側面図である。
【図12】光ファイバ支持部材の装着状態を説明する側面図である。
【図13】実施例1における光ファイバ配線ヘッドの装着状態を説明する側面図である。
【図14】実施例1における光ファイバ配線パターンを説明する図である。
【図15】実施例1における光ファイバ配線方法を説明する工程図である。
【図16】実施例2における光ファイバ配線ヘッドの斜視図である。
【図17】実施例3における光ファイバ配線パターンを説明する図である。
【図18】実施例3における配線された光ファイバを説明する図である。
【符号の説明】
1…テーブル(吸着台)、2…光ファイバ配線ヘッド、3…光ファイバ、4…XYZ制動装置、5…基材、5a…接着剤層、6…Yバー、7…光ファイバ送り出し手段、8…光ファイバ支持部材、8a…貫通孔、8b…滑車、8c…溝、10、10a〜10h…直線状ガイド、11…接合部材、12…配線パターン軌道、13…接線、14…光ファイバ支持部材の公転軌道、15…シート基材、16…ベアリング内輪、17…ベアリング外輪、19…中心軸線、20…XY可動装置、21…配線ヘッド保持部材、22…スライド治具、23…モーター、24…歯車、25…ラック、26…歯車装着治具、27…光ファイバ支持部材公転用の歯車、28…モーター、29…歯車、30…支持部材(光ファイバ支持部材横位置規制用治具)、31…光ファイバ心線。
Claims (1)
- 光ファイバ配線ヘッドと、該光ファイバ配線ヘッドを移動させる制動装置とを備え、該光ファイバ配線ヘッドによって光ファイバを基材に設けた接着剤層上に位置合わせして配線、固定する光ファイバの配線装置において、
上記光ファイバ配線ヘッドの底面部に、上記基材を載置する平面に対して傾斜した角度で直線状ガイドが設けられるとともに、
該直線状ガイドに光ファイバを導入するための光ファイバ支持部材が設けられており、
前記光ファイバ配線ヘッドと結合されていない該光ファイバ支持部材が、光ファイバ配線ヘッドを中心に公転移動することで、前記光ファイバ配線ヘッドは回転力が付与されることを特徴とする光ファイバ配線装置。
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