JP4017807B2 - オゾンガス供給制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、水中に含まれる汚濁物質を分離除去するために行う、オゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
被処理水中の汚濁物質を除去する方法として、膜ろ過を利用した水処理方法がよく知られている。この膜ろ過を用いた水処理においては、水処理運転の継続に伴い、膜の表面に汚濁物質の付着層が生じ、目詰まり、固形物による流路閉塞などのファウリングが起こり、ろ過性能が低下する問題がある。そのため、安定した処理水量が得られないか、もしくは安定した処理水量を得るために膜の薬品洗浄頻度を上げなければならないという問題があった。
【0003】
近年、上記の膜処理性能低下を防止するために、膜ろ過処理の前段でオゾン処理を実施し、膜面上にオゾンを残留させてろ過する水処理方法が提案されている。この方法によれば、膜面上にオゾンが残留することにより、膜および膜への付着物質をオゾンにより酸化除去することが可能となり、膜性能の低下を防止することができる。
【0004】
上記のようなオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理方法においては、オゾンの有効利用の観点からオゾン注入量をできるだけ削減する必要がある。このオゾン注入量削減を図る水処理方法として、膜ろ過水の残留オゾン濃度を連続的に測定し、その測定値に基づいて、膜ろ過処理水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるようにオゾン注入量を制御する方法が考えられ、本願と同一出願人により、特願平10-282705号により提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特願平10-282705号に記載されたオゾン注入量の制御方法においては、残留オゾン濃度を監視して連続的にオゾン注入量を制御しているため、逆洗や空気洗浄時のろ過水が残留オゾン濃度検出器に流れて来ない時間の対応や、物理洗浄による膜汚染の回復による残留オゾン濃度の急激な変化への対応がなされていないために、オゾン注入量の制御範囲幅が大きくならざるを得ず、必要最小限のオゾン注入制御は、まだ十分満足できるものではなかった。
【0006】
この発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、この発明の課題は、必要最小限のオゾン注入量により、ろ過性能が低下することなく安定した水処理が実現可能なオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、この発明は、被処理水をオゾン処理した後、膜ろ過処理を行い、さらに所定の膜ろ過処理時間(1サイクル)毎にろ過膜の逆洗を行いかつ所定のサイクル数毎にろ過膜の空気洗浄を行う水処理方法において、膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値に基づいて、膜ろ過処理水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を制御するオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法であって、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前の膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値と所定の残留オゾン濃度目標値との差,および前記空気洗浄後の膜ろ過サイクル数に基づいて、前記1サイクルの次のサイクルにおけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の増減倍率(%)を予め設定し、次のサイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前のオゾン供給量または供給オゾンガス濃度に前記増減倍率(%)を乗じた値に制御することとする(請求項1の発明)。
【0008】
上記請求項1の発明の方法によれば、対象とする水処理プラントに応じて、残留オゾン濃度の目標値とオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の基準値に対する増減倍率(%)を予め設定するので、水質変動に応じたきめ細かいオゾンガス供給のフィードバック制御が可能となる。即ち、上記のように膜ろ過水の残留オゾン濃度を一定範囲になるようにきめ細かくオゾン供給量を制御することにより、膜目詰まりの防止と安定した水処理が可能となり、さらに過剰なオゾン注入を避けることが可能となって、運転コストの低減が図れる。
【0009】
また、前記請求項1記載のオゾンガス供給制御方法において、前記1サイクルの膜ろ過処理中におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を漸増するオゾンガス供給制御を行うために、被処理水の水質および空気洗浄後の膜ろ過サイクル数に基づいて、前記1サイクルの次のサイクルにおけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の減少倍率(%)を予め設定し、次サイクルの開始時オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記請求項1における増減倍率(%)を乗じた次サイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の値に、前記減少倍率(%)を乗じた値とし、この値から前記増減倍率(%)を乗じた値まで、前記1サイクルの膜ろ過処理中におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を漸増させるようにオゾンガス供給制御を行うこととする(請求項2の発明)。
【0010】
請求項2の発明によれば、後に詳述するように、前記請求項1の発明に比較して、膜ろ過水の残留オゾン濃度の範囲をさらに狭めて制御できるので、オゾン注入の削減効果が大きい。
【0011】
さらに、被処理水の水質が一時的に急変することがあるが、このような場合には、請求項3の発明の方法が好適である。即ち請求項3の発明によれば、請求項1または2記載のオゾンガス供給制御方法において、被処理水の水質急変に伴う残留オゾン濃度の急変に対応するために、各サイクル毎に残留オゾン濃度の下限値および上限値を設定し、残留オゾン濃度の測定値が下限値以下となったときにはオゾン供給量または供給オゾンガス濃度をステップ的に増大し、上限値以上となったときにはステップ的に減少させる瞬時増減倍率(%)を予め設定し、前記下限値以下または上限値以上となった場合に、直ちに、各サイクルの任意の時点におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、当該サイクルの当該時点におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度に前記瞬時増減倍率(%)を乗じた値に制御することとする。
【0012】
なお、膜ろ過処理運転においては、前記ろ過膜の空気洗浄に加えて、被処理水によりろ過膜をフラッシングすることもよく行われる。この場合においても、前記請求項1ないし3の発明は適用できる。また、膜ろ過処理運転方式としては、後述する図1のシステム系統図で示すデッドエンド方式、および図5のシステム系統図で示すクロスフロー方式が知られているが、前記増減倍率や減少倍率等を適宜の値に選定することにより、前記請求項1ないし3の発明は、上記両方式に適用できる。
【0013】
さらにまた、膜ろ過処理運転をクロスフロー方式とする場合には、特に請求項4の発明の方法が好適である。即ち、請求項4の発明によれば、原水タンク内の被処理水をオゾン処理した後、膜ろ過装置において膜ろ過処理を行い、かつこの膜ろ過処理の運転方式を、前記膜ろ過装置内の被処理水の一部を前記原水タンク内に還流して前記原水タンク内の被処理水と合流するクロスフロー運転方式とし、さらに所定の膜ろ過処理時間(1サイクル)毎にろ過膜の逆洗を行いかつ所定のサイクル数毎にろ過膜の空気洗浄および前記被処理水を用いてフラッシングを行う水処理方法において、膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値に基づいて、膜ろ過処理水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を制御するオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法であって、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前の膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値と所定の残留オゾン濃度目標値との差に基づいて、前記1サイクルの次のサイクルにおけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の増減倍率(%)を予め設定し、次のサイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前のオゾン供給量または供給オゾンガス濃度に前記増減倍率(%)を乗じた値に制御し、さらに、各膜ろ過処理サイクルにおけるろ過開始から所定時間までのろ過初期期間においては、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度をさらに増大したオゾンガス供給制御を行うために、被処理水の水質,原水タンク容量およびフラッシング水量に基づいて、オゾン供給量の初期増加率(%)を予め設定し、次サイクルの開始時オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記増減倍率(%)を乗じた次サイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の値に、前記初期増加率(%)を乗じた値としてオゾンガス供給制御を行うこととする。
【0014】
請求項4の発明によれば、後に詳述するように、前記請求項1の発明に比較して、膜ろ過水の残留オゾン濃度の範囲をさらに狭めて制御できるので、オゾン注入の削減効果が大きい。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1ないし図6に基づき、この発明の実施の形態について以下にのべる。
【0016】
(実施の形態1)
図1に、この発明の実施の形態1に関わる概略システム系統図を示す。同図において、原水タンク1に流入した被処理水としての原水は、原水ポンプ2により、膜ろ過処理装置としての膜モジュール4に供給される。この供給ライン上で、オゾン発生器8において生成したオゾンガスを、スタティックミキサー3を介して原水中に溶解させる。オゾンが溶解した原水は、膜モジュール4において膜ろ過処理され、ろ過水タンク7に給水される。このライン上に、溶存オゾン濃度計5を設け、膜ろ過水の残留オゾン濃度を測定する。ろ過水タンク7の処理水は、活性炭処理や、必要に応じて後オゾン処理などの次工程へ給水される。
【0017】
膜ろ過処理装置の運転は、例えば、電磁流量計6からの信号により原水ポンプ2を制御して定流量ろ過とする。また、1サイクルのろ過時間を例えば20分とし、20分毎に逆洗ポンプ9を駆動して逆洗を行い、また逆洗6回毎にコンプレッサー10を駆動して空気洗浄を行う。
【0018】
膜ろ過水の残留オゾン濃度を溶存オゾン濃度計5により測定し、測定結果を供給オゾン濃度制御装置11に送り、この制御装置11からの出力信号により、オゾン発生器8からのオゾン供給量を制御する。通常、オゾン発生器8からのガス流量は一定で、この場合には供給オゾンガス濃度を変化させ、膜ろ過水の残留オゾン濃度が所定値になるように制御する。
【0019】
図2に、この発明の上記実施の形態1の実施例における制御時の残留オゾン濃度および供給オゾンガス濃度の経時変化を示す。この実施例においては、膜ろ過水の残留オゾン濃度の目標値を0.5mg/Lとして運転している。また、1サイクルのろ過時間を20分とし、20分毎に図2の白抜きの矢印で示す逆洗を行い、また逆洗6回毎、図2で120分毎に矢印で示す空気洗浄を行っている。空気洗浄は逆洗後に行う。
【0020】
図2の実施例の制御方法について以下に述べる。まず、1サイクル20分のろ過の終了直前に、供給オゾン濃度制御装置11に、溶存オゾン濃度計5により測定された残留オゾン濃度値を取り込む。この値により、次のサイクルのろ過におけるオゾン発生器8の出力値、即ち、供給オゾンガス濃度を、前回の出力値を基準にして増減する。ここで、その増減倍率(%)は、膜ろ過水の残留オゾン濃度、空気洗浄後のろ過サイクル数により、処理プラントに応じてあらかじめ設定しており、その一例を表1に示す。
【0021】
【表1】
表1によれば、残留オゾン濃度を、その目標値0.5mg/Lの前後に6段階に分け、空気洗浄後のろ過サイクル数に応じて、供給オゾンガス濃度の前回の出力値を基準とした増減倍率(%)を設定している。なお、前記請求項1における残留オゾン濃度の測定値と所定の残留オゾン濃度目標値との差は、表1の残留オゾン濃度の値から目標値0.5mg/Lを差し引いた値となる。
【0022】
表1によれば、例えば、空気洗浄後の1回目のろ過終了直前の膜ろ過水の残留オゾン濃度値が0.515mg/Lであったとすると、次回のろ過における供給オゾンガス濃度は、オゾン発生器8の出力(供給オゾンガス濃度)を前回の出力に対して108%にして、供給オゾンガス濃度を増加するように制御を行うこととなる。サイクル数が増大する程、ろ過膜の汚染の進行度合いが小となるので、残留オゾン濃度値が0.515mg/Lの場合において、サイクル数2〜6における増減倍率(%)は、105%〜88%と、順次倍率を低下させている。図2は、上記のような制御モードの一例を示している。
【0023】
なお、上記実施例では、ろ過中に膜汚染により残留オゾン濃度が低下することを前提としたので、制御に好適な過終了直前の残留オゾン濃度を制御装置に取り込んで制御したが、例えば原水水質が良好で膜汚染による残留オゾン濃度の低下があまり生じない場合には、ろ過の任意の時点の残留オゾン濃度を取り込んでも同様の制御が可能である。また、原水水質が悪い場合であっても、あらかじめ、膜汚染による残留オゾン濃度の低下を見越して、即ち目標とする残留オゾン濃度を0.5mg/Lとした場合で、通常時における1回のろ過中に残留オゾンが0.1mg/L低下する場合などは、ろ過開始数分後の時点における設定値を0.6mg/Lとすることにより同様の制御をすることが可能である。
【0024】
また、前記請求項3の発明に関わり、原水水質の急激な変化に対して、空気洗浄後のろ過サイクル数毎に、膜ろ過水の残留オゾン濃度の上限値および下限値による制御を、例えば下記のように組み入れることが望ましい。表2にその一例を示す。
【0025】
【表2】
表2によれば、下限値は目標値0.5mg/Lとし、空気洗浄後のろ過サイクル数に応じて上限値を定め、下限値以下および上限値以上となった場合の、供給オゾンガス濃度の瞬時増減倍率を、夫々110%および95%に設定している。
【0026】
空気洗浄後の1回目のろ過においては、0.50〜0.75[mg/L] の範囲を、2回目のろ過においては、0.50〜0.65[mg/L] の範囲を外れると、制御がかかるもので、下限値以下となった場合は110%に、上限値以上となった場合は95%にオゾン発生器の出力がそれぞれ直ちに変更される。ここで、各ろ過回数毎に設定値が異なるのは、膜の汚染状況が異なることに起因している。なお、この制御は、逆洗中や空気洗浄中など、膜ろ過水の残留オゾン濃度が安定しないろ過開始の一定時間、および制御の応答速度を考慮してろ過終了直前の一定時間は機能しないようにする。
【0027】
以上のような制御をすることにより、常に膜面上にオゾンが残留して膜の汚染を防止でき、過剰なオゾン注入を避けることが可能となる。
【0028】
(実施の形態2)
図3に、この発明の実施の形態2に関わる概略システム系統図を示す。図3と図1との相違点は、図3においては、原水水質測定装置12が原水供給ラインに追加され、この原水水質測定装置12の水質測定値(例えば、後述する濁度の測定値)が供給オゾン濃度制御装置11に入力され、この水質測定値と溶存オゾン濃度計5の残留オゾン濃度の測定値とに基づいて、前記請求項2の発明のように、1サイクルの膜ろ過処理中におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を漸増するオゾンガス供給制御を行えるようにした点である。
【0029】
図4に、この発明の上記実施の形態2の実施例における制御時の残留オゾン濃度および供給オゾンガス濃度の経時変化を示す。この実施例においても、前記図2の実施例と同様に、膜ろ過水の残留オゾン濃度の目標値を0.5mg/L、1サイクルのろ過時間を20分とし、20分毎に逆洗を行い、また逆洗6回毎に空気洗浄を行っている。
【0030】
図4の実施例の制御方法について以下に述べる。まず、図2の実施例と同様に、20分のろ過の終了直前に供給オゾン濃度制御装置11に、溶存オゾン濃度計5により測定した残留オゾン濃度値を取り込む。この値により、次回のろ過におけるオゾン発生器8の出力基準値を、前回の出力基準値に対する増減倍率により決定する。ここでは、ろ過終了直前の出力値を基準にした。ここで、出力基準値の増減倍率は、図2の実施例と同様に、膜ろ過水の残留オゾン濃度、空気洗浄後のろ過サイクル数により設定している。
【0031】
また、図4の実施例の制御では、20分のろ過中においても供給オゾンガス濃度を増加している。この増加割合は、出力基準値をろ過終了直前にしてあることから、図4においては、出力基準値からの減少幅として表されるが、ろ過の開始点からみれば、この減少幅が、実質的には増加幅に相当する。この減少幅に対応する減少倍率は、あらかじめ行う試験結果をベースに、原水水質(濁度レベル)、空気洗浄後のろ過サイクル数に基づいて設定する。表3に図4の実施例における1回のろ過中における減少倍率(%)を示す。
【0032】
【表3】
表3によれば、濁度レベルを6段階に分け、空気洗浄後のろ過サイクル数に応じて、減少倍率(%)を設定している。
【0033】
空気洗浄後すぐのろ過ほど膜の汚染がなく汚染速度が速いことから、減少幅を大きくし、ろ過回数が進むほど汚染が進み、1回のろ過中においてさほど汚染が進まないことから、減少幅を小さく設定した。また、原水濁度が高いほど、1回のろ過において膜がより汚染されることから減少幅は大きく設定した。例えば、空気洗浄後1回目のろ過において、原水濁度が15、出力基準値が100だった場合、表3より出力初期値は85となることから、ろ過開始よりろ過終了までの20分においてオゾナイザ出力が85から100になるように増加していく制御を行うこととなる。
【0034】
なお、この実施例では原水水質の一つとして、原水濁度により減少倍率を設定したが、これに限らず原水の汚染の指標としてTOCにより、濁度と同様に設定することが可能である。また、オゾンの溶解度を考慮して、水温・pH・色度・COD・E260などを減少倍率の設定のファクターとすることにより、過剰なオゾン注入を防止すべく制御範囲をより狭めることが可能となる。
【0035】
以上のような制御をすることにより、図2の実施例2と同様に、常に膜面上にオゾンが残留して膜の汚染を防止できることはもとより、図2の実施例に比較して図4の実施例の場合、膜ろ過水の残留オゾン濃度の制御範囲を狭めることができ、オゾン削減効果を大とすることができる。
【0036】
(実施の形態3)
図5に、この発明の実施の形態3に関わる概略システム系統図を示す。本実施例は、ろ過処理運転をクロスフロー方式(例えば、循環/ろ過流量比=1/1)とした場合の系統図で、図5と図1との相違点は、図5においては、膜モジュール4から原水タンク1へ被処理水が還流する配管が設けられ、循環ラインが構成されている点である。
【0037】
図6は、この発明の上記実施の形態3の実施例における制御時の残留オゾン濃度および供給オゾンガス濃度の経時変化を示す。この実施例においては、膜ろ過水の残留オゾン濃度の目標値を0.5mg/L、1サイクルのろ過時間を20分とし、20分毎に逆洗、空気洗浄およびフラッシングを行う例を示す。
【0038】
図6の実施例の制御方法について以下に述べる。まず、図2の実施例と同様に、20分のろ過の終了直前に供給オゾン濃度制御装置11に、溶存オゾン濃度計5により測定した残留オゾン濃度値を取り込む。この値により、次回のろ過におけるオゾン発生器8の出力基準値を、前回の出力基準値に対する増減倍率により決定する。ここでは、ろ過終了直前の出力値を基準値とした。ここで、出力基準値の増減倍率は、表4に示した膜ろ過水の残留オゾン濃度により設定した。
【0039】
【表4】
図6の実施例の制御では、各膜ろ過処理サイクルにおけるろ過開始から所定時間までのろ過初期期間におけるオゾン供給量は、表4の増減倍率(%)を乗じた値に、さらにあらかじめ設定した初期増加率(%)を乗じた値としている。この初期増加率および所定時間の設定は、原水水質、原水タンク容量およびフラッシング水量等により予め設定する。本実施例においては増加率を120%、ろ過開始からの所定時間を4分とした。
【0040】
表4によれば、残留オゾン濃度を、その目標値0.5mg/Lの前後に5段階に分け、供給オゾン濃度の前回の出力値を基準とした増減倍率を設定している。表4によれば、例えば、終了直前の膜ろ過水の残留オゾン濃度値が0.513mg/Lであったとすると、次回のろ過における供給オゾンガス濃度の出力基準値は、前回の出力に対して103%となる。そして、ろ過開始から4分間はこれに増加率120%を乗じた出力でオゾン発生器8よりオゾンガスが供給される。ろ過開始から4分間経過後は基準値の103%の出力でオゾンガスが供給される。
【0041】
表4の増減倍率が、前記表1で示す増減倍率よりも低い値としている理由は、実施の形態3がクロスフロー方式の運転を行っているためである。すなわち、クロスフロー方式では、オゾンが残留した被処理水が循環ラインに流れる。このため、オゾン供給量は、循環系内のオゾンが残留した水と原水タンク1に新たに補給されるオゾンがない状態の水に対して制御されることとなる。従って、循環ライン内の水にオゾンが残留している分、増減倍率は低い値でよいこととなる。
【0042】
一方、フラッシングにより循環系内の水が消費されることになるが、ここで、循環系内の水量に対して、フラッシング水量が大きい場合は、フラッシングにより消費された水量が原水タンク1に新たに補給されることから、系内の残留オゾン濃度が低下することとなる。基準値が膜ろ過終了直前の循環系内の残留オゾン濃度がある状態に対して設定されることから、ろ過開始直後においてはオゾン供給量が足りない状態となり、膜ろ過水中の残留オゾン濃度が低くなる。これをカバーするために、ろ過開始から例えば4分間は、ろ過終了直前に設定された供給オゾンガス濃度に120%を乗じた濃度のオゾンガスを供給する。
【0043】
以上のような制御をすることにより、常に膜面上にオゾンが残留して膜の汚染を防止できることおよび膜ろ過水の残留オゾン濃度の制御範囲を狭めることができ、オゾン削減効果を大とすることができる。
【0044】
【発明の効果】
上記のとおり、この発明によれば、被処理水をオゾン処理した後、膜ろ過処理を行い、さらに所定の膜ろ過処理時間(1サイクル)毎にろ過膜の逆洗を行いかつ所定のサイクル数毎にろ過膜の空気洗浄を行う水処理方法において、膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値に基づいて、膜ろ過処理水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を制御するオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法であって、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前の膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値と所定の残留オゾン濃度目標値との差,および前記空気洗浄後の膜ろ過サイクル数に基づいて、前記1サイクルの次のサイクルにおけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の増減倍率(%)を予め設定し、次のサイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前のオゾン供給量または供給オゾンガス濃度に前記増減倍率(%)を乗じた値に制御することとし、また、前記オゾンガス供給制御方法において、1サイクルの膜ろ過処理中におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を漸増する制御を行うようにし、さらに、被処理水の一時的急変に対して、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度をステップ的に増減する制御を行うようにしたので、必要最小限のオゾン注入量により、ろ過性能が低下することなく安定した水処理が実現でき、運転コストが低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例に関わる概略システム系統図
【図2】 図1の実施例における残留オゾン濃度および供給オゾンガス濃度の経時変化を示す図
【図3】 この発明の異なる実施例に関わる概略システム系統図
【図4】 図3の実施例における残留オゾン濃度および供給オゾンガス濃度の経時変化を示す図
【図5】 この発明のさらに異なる実施例に関わる概略システム系統図
【図6】 図5の実施例における残留オゾン濃度および供給オゾンガス濃度の経時変化を示す図
【符号の説明】
1:原水タンク、2:原水ポンプ、3:スタティックミキサー、4:膜モジュール、5:溶存オゾン濃度計、6:電磁流量計、7:ろ過水タンク、8:オゾン発生器、9:逆洗ポンプ、10:コンプレッサー、11:供給オゾン濃度制御装置、12:原水水質測定装置。
Claims (4)
- 被処理水をオゾン処理した後、膜ろ過処理を行い、さらに所定の膜ろ過処理時間(1サイクル)毎にろ過膜の逆洗を行いかつ所定のサイクル数毎にろ過膜の空気洗浄を行う水処理方法において、膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値に基づいて、膜ろ過処理水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を制御するオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法であって、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前の膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値と所定の残留オゾン濃度目標値との差,および前記空気洗浄後の膜ろ過サイクル数に基づいて、前記1サイクルの次のサイクルにおけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の増減倍率(%)を予め設定し、次のサイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前のオゾン供給量または供給オゾンガス濃度に前記増減倍率(%)を乗じた値に制御することを特徴とするオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法。
- 請求項1記載のオゾンガス供給制御方法において、前記1サイクルの膜ろ過処理中におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を漸増するオゾンガス供給制御を行うために、被処理水の水質および空気洗浄後の膜ろ過サイクル数に基づいて、前記1サイクルの次のサイクルにおけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の減少倍率(%)を予め設定し、次サイクルの開始時オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記請求項1における増減倍率(%)を乗じた次サイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の値に、前記減少倍率(%)を乗じた値とし、この値から前記増減倍率(%)を乗じた値まで、前記1サイクルの膜ろ過処理中におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を漸増させるようにオゾンガス供給制御を行うことを特徴とするオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法。
- 請求項1または2記載のオゾンガス供給制御方法において、被処理水の水質急変に伴う残留オゾン濃度の急変に対応するために、各サイクル毎に残留オゾン濃度の下限値および上限値を設定し、残留オゾン濃度の測定値が下限値以下となったときにはオゾン供給量または供給オゾンガス濃度をステップ的に増大し、上限値以上となったときにはステップ的に減少させる瞬時増減倍率(%)を予め設定し、前記下限値以下または上限値以上となった場合に、直ちに、各サイクルの任意の時点におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、当該サイクルの当該時点におけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度に前記瞬時増減倍率(%)を乗じた値に制御することを特徴とするオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法。
- 原水タンク内の被処理水をオゾン処理した後、膜ろ過装置において膜ろ過処理を行い、かつこの膜ろ過処理の運転方式を、前記膜ろ過装置内の被処理水の一部を前記原水タンク内に還流して前記原水タンク内の被処理水と合流するクロスフロー運転方式とし、さらに所定の膜ろ過処理時間(1サイクル)毎にろ過膜の逆洗を行いかつ所定のサイクル数毎にろ過膜の空気洗浄および前記被処理水を用いてフラッシングを行う水処理方法において、膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値に基づいて、膜ろ過処理水中の残留オゾン濃度が所定範囲内となるように、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を制御するオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法であって、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前の膜ろ過処理水の残留オゾン濃度を測定し、この測定値と所定の残留オゾン濃度目標値との差に基づいて、前記1サイクルの次のサイクルにおけるオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の増減倍率(%)を予め設定し、次のサイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記1サイクルの膜ろ過処理終了前のオゾン供給量または供給オゾンガス濃度に前記増減倍率(%)を乗じた値に制御し、さらに、各膜ろ過処理サイクルにおけるろ過開始から所定時間までのろ過初期期間においては、オゾン供給量または供給オゾンガス濃度をさらに増大したオゾンガス供給制御を行うために、被処理水の水質,原水タンク容量およびフラッシング水量に基づいて、オゾン供給量の初期増加率(%)を予め設定し、次サイクルの開始時オゾン供給量または供給オゾンガス濃度を、前記増減倍率(%)を乗じた次サイクルのオゾン供給量または供給オゾンガス濃度の値に、前記初期増加率(%)を乗じた値としてオゾンガス供給制御を行うことを特徴とするオゾン酸化および膜ろ過を利用した水処理におけるオゾンガス供給制御方法。
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