JP4017212B2 - 巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池 - Google Patents

巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル−水素吸蔵合金電池やニッケル−カドミウム電池などのアルカリ二次電池に代表される巻回構造の電極体を有する電池に関し、さらに詳しくは、その電極体の巻回構造を改良することより、電池内容積の有効利用による容量増加、特に生産工程における電池短絡の発生防止、生産性の向上、コストの低減、電池缶の内壁のキズ付きの防止などを達成した巻回構造の電極体を有する電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ニッケル−水素吸蔵合金電池やニッケル−カドミウム電池などに使用されている巻回構造の電極体は、図12に示すように、1枚の正極1と1枚の負極2とをセパレータ3を介して渦巻状に巻回していた。すなわち、正極1、負極2とも、一定の厚みに形成して、図12に示すような巻回構造の電極体4を作製していた。
【0003】
また、ニッケル−水素吸蔵合金電池やニッケル−カドミウム電池などに代表されるアルカリ二次電池では、電池特性を正常に保つための重要な事項として、〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比を1.0以上、好ましくは1.2以上に保つことが必要であるが、これは、電池内の全量の比ではなく、巻回した電極体の負極と正極との対向部で常にこの関係が保たれていることが必要である。
【0004】
そのため、従来の巻回構造の電極体では、負極の両面に正極が対向している部分(つまり、負極の2周目)の〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比を基準に電池の設計を行っており、その結果、負極の最内周部と最外周部は必要以上の電気容量となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来の巻回構造の電極体では、負極の最内周部と最外周部は、片面しか正極と対向していないにもかかわらず、支持体の両面に活物質層が形成されているために、片面の活物質層が有効に利用されず、その結果、電池の内容積が充分に活用されないという問題があった。
【0006】
また、小形の電池では、通常、巻回構造の電極体の最外周部を負極にし、その負極の最外周部を電池缶の内壁に接触させることによって電気的な導通をとっている。そのため、活物質層の凹凸で電池缶の内壁をキズ(傷)付ける場合があり、そのキズのため、アルカリ電池では電解液の漏液が生じるという致命的な欠陥を招くことがあった。
【0007】
また、従来の負極は、その両面からの反応を行うために、ニッケル製のパンチングメタルなどにニッケル粉末を含むペーストを塗布して焼結したニッケル焼結板を支持体に用いたり、ウレタンフォームや不織布にニッケルメッキを施したものを焼成して作製した発泡メタルや繊維状メタルなどの多孔質の支持体を用いていた。そのため、電極そのものやその支持体の製造設備のコストアップが生じ、また安定して均一なものを生産するためには非常な労力を必要としていた。
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するものであって、電池内容積の有効利用による容量増加や、特に生産工程における電池短絡の発生防止、生産性の向上、コストの低減をはかり、さらには、電池缶の内壁のキズ付きを防止して信頼性を高めることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2枚の負極の支持体の片面のみに活物質層を設け、それらの負極を正極の両面にセパレータを介して活物質層が対向するように配置し、かつ負極の支持体同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分が正極と対向する位置において、上記境界部分、上記境界部分と対向する正極およびセパレータのいずれか一つ以上に補強材を固定して巻回することにより巻回構造の電極体として、上記課題を解決したものである。上記のようにして作製される巻回構造の電極体では、その負極はほぼ最内周部とほぼ最外周部を除き、2枚が互いに支持体面で接触した構造になる。
【0010】
また、本発明は、負極の支持体の両面に活物質層を設けるが、巻回構造の電極体のほぼ最内周部とほぼ最外周部の少なくとも一方に相当する部分、好適にはほぼ最内周部とほぼ最外周部の両方に相当する部分に、支持体の片面のみに活物質層を形成するかまたは両面に活物質層を形成した後、片面の活物質層を除去することによって、支持体の片面にしか活物質層が無い状態にし、その負極をセパレータを介して活物質層が正極と対向するように配置し、かつ上記負極の支持体の片面のみに活物質層を有する部分と両面に活物質層を有する部分との境界部分が正極と対向する位置において、上記境界部分、上記境界部分と対向する正極およびセパレータのいずれか1つ以上に補強材を固定して巻回することにより巻回構造の電極体として、上記課題を解決したのである。なお、本発明においては、最内周部または最外周部とせず、ほぼ最内周部またはほぼ最外周部としているが、これは電極体を巻回する方法や巻回機によって多少のずれが生じるためであり、理論上は真正に最内周部または最外周部であることの方が好ましいが、多少ずれが生じて、ほぼ最内周部またはほぼ最外周部になっていても、実質上さしつかえないからである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明では、負極活物質層と正極活物質層との対向する部分において、〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比を、1.0以上1.63以下とする。特に、1.2〜1.6であることが好ましい。これは、活物質層の組成などを一定にしておくと、その厚さで制御することができる。なお、本発明において、活物質層とは、活物質のみで構成する場合のみならず、活物質以外にバインダーなどを含有している場合をもいい、むしろ後者の方が多い。
【0012】
負極および電極体の巻回構造を上記のようにすることにより、電極体のほぼ最外周部は負極の支持体が露出することになる。そして、その支持体を電池缶の内壁に接触させることにより、たとえば水素吸蔵合金のような硬い粉体で電池缶の内壁をキズ付けたり、発泡メタルのようなメッキ方法で形成した硬い支持体で電池缶の内壁をキズ付けることが防止されるようになる。
【0013】
そして、何にもまして重要なことは、上記の構造とすることによって、負極のほぼ最内周部とほぼ最外周部の活物質層の過剰分の無駄がなくなり、さらに、支持体として薄い支持体、たとえば、厚さ10μm〜50μmの金属板や、厚さ40μm〜70μmのパンチングメタル板などを用いることによって、約30%程度の容量増加が達成できるようになった。
【0014】
なお、本発明において、負極の支持体にパンチングメタルなどの穿孔のある支持体を用いた場合には、その穿孔された孔の中にも活物質が充填されるので、その場合における支持体の片面のみに活物質層を有するということには、その支持体の孔の中に充填された活物質層も含まれている。
【0015】
巻回構造の電極体を有する電池の電池特性に必要な〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比を、本発明では、電池内の総量ではなく、各対向部分で所定の値以上とすることによって、反応に寄与しない過剰分をなくしたことが、上記のような容量増加につながっている。
【0016】
また、本発明は、前記支持体の片面のみに活物質層を有する部分と両面に活物質層を有する部分との境界部分が正極と対向する位置において、上記境界部分、上記境界部分と対向する正極およびセパレータのいずれか一つ以上に補強材を固定することにより、特に生産工程における電池短絡の発生を防止し、生産性の向上、コストの低減を図っている。
【0017】
すなわち、支持体の片面のみに活物質層を有する部分と両面に活物質層を有する部分との境界部分は、負極の厚みに相違があるため巻回構造の電極体を電池缶に挿入する際、この部分に局部的に強い力が働き、また最内周部の負極は巻回径が小さく大きな応力がかかりやすい上に、本発明のように部分的に厚みに相違がある負極ではその厚みの差により巻回時の負極の伸びに差が生じるため、活物質の脱落が生じやすくなる。このような活物質の脱落が生じた場合、その脱落した活物質により短絡が生じ、その後の電池化成工程などで電池の漏液を招き、装置のトラブルを引き起こすという問題がある。
【0018】
これを防止するためには、最内周の巻き始め部分のセパレータを二重にして補強する方法も考えられるが、そのセパレータ分だけ巻回構造の電極体が大きくなり、本発明で目的とする高容量化や生産性の向上という観点からは不適当なものになってしまう。
【0019】
そのため、本発明は、前記のように支持体の片面のみに活物質層を有する部分と両面に活物質層を有する部分との境界部分が正極と対向する位置において、上記境界部分、上記境界部分と対向する正極およびセパレータのいずれか一つ以上に補強材を固定することにより、巻回時に伸びの差が出ないようにして、生産工程における電池短絡の発生を防止し、生産性を向上させるとともに、製品の歩留まりを向上させてコストの低減を達成したものである。また、本発明においては、負極の支持体の片面にのみ活物質層を設け、その負極の活物質層を正極の両面にセパレータを介して対向するように配置して巻回する場合にも、負極同士が直接接触する部分とそうでない部分とでは負極に厚みの相違が生じ、同様に生産工程において電池短絡が発生しやすくなるので、上記の負極同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分が正極と対向する位置において、上記境界部分、上記境界部分と対向する正極およびセパレータのいずれか一つ以上に補強材を設けることによって、巻回時に伸びの差が出ないようにして、生産工程における電池短絡の発生を防止し、生産性を向上させるとともに、製品の歩留まりを向上させてコストの低減を達成する。
【0020】
本発明に用いる補強材としては、巻回時の正極、負極の挿入精度を考慮すると、幅は3mm以上6mm以下が好ましい。補強材の幅を3mm以上とすることにより、片面活物質層の部分と両面活物質層の部分との境界部分の保護が容易になり、補強材の幅を6mm以下とすることにより、正極、負極の対向部分を充分に確保することができ、良好な電気化学反応を行わせることが可能になる。
【0021】
また、本発明において用いる補強材の厚みは0.03mm以上0.1mm以下が好ましい。補強材の厚みを0.03mm以上とすることにより、補強効果をより確実に発現させることが可能になり、巻回時の破断も確実に防止することが可能となる。一方、補強材の厚みを0.1mm以下とすることにより、巻回体を小さくすることができる。
【0022】
また、補強材の引張強さは、JIS−C−2107に規定の試験方法で、0.5kg/6mm以上2kg/6mm以下で、伸びは90%以上150%以下であることが好ましい。補強材の引張強さを0.5kg/6mm以上とすることにより、巻回時に補強材の破断を抑制できるとともに、2kg/6mm以下とすることにより、最内周部分における小さな巻回径でも補強材に柔軟性を確保することができる。また、補強材の伸びも同様に、90%以上とすることにより、巻回時の負極の伸びに充分追従できるとともに、150%以下とすることより、補強材の破断を防止することができる。
【0023】
また、補強材は、正極、負極、セパレータのいずれか一つ以上に設ければよいが、少なくとも活物質層の厚さの相違により巻回時の応力がかかりやすい負極に設けておくことが好ましい。
【0024】
補強材の設け方としては、正極、負極、セパレータの幅方向に対して一部分に設けても、本発明の補強効果を得ることができるが、巻回時の負極の伸びに追従するためにも、幅方向全面に設けることが好ましい。なお、補強材の形状としては、テープ形状、円盤形状など、いずれの形状でも構わないが、補強効果、生産性の点からテープ形状が好ましい。
【0025】
この補強材の材質は、耐アルカリ性を有するものであれば特に限定されることがないが、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなどが好ましく、また、この補強材を正極、負極、セパレータなどに設けるにあたっては、接着剤または粘着剤などにより接着または粘着して固定しておくことが好ましい。
【0026】
【実施例】
つぎに、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例などにおいて、濃度を示す%は重量%である。
【0027】
実施例1
MmNi5 を主体とする水素吸蔵合金粉末100重量部に、ポリビニリデンフルオライドを濃度12%でN−メチル−ピロリドンに溶解させたバインダー溶液28重量部を混合し、充分に攪拌して均一なペーストを調製し、このペーストを支持体としての厚さ20μmのニッケル板にスキージ法で総厚が500μmになるように塗布した。これをホットプレート上で乾燥した後、ロールプレスで圧縮し、総厚200μmの負極シートを作製した。そして、この総厚200μmの負極シートを35mm×38mmのサイズに切断し、これを負極シートAとした。なお、上記のMmはミッシュメタルである。
【0028】
上記とは別に、塗布厚みを調整した以外は上記と同様の方法で、総厚145μmの負極シートを作製した。そして、この総厚145μmの負極シートを35mm×55.5mmのサイズに切断し、これを負極シートBとした。
【0029】
正極には、活物質として水酸化ニッケル(ただし、放電状態時)を含有するペーストを発泡ニッケルに充填し、通常の方法で作製し、所定のサイズに切断した厚さ660μmでサイズが35mm×46mmのニッケル電極を用いた。そして、その末端部に正極の集電体(タブ)としてニッケルリボンをスポット溶接した。
【0030】
セパレータには、親水処理した厚さ0.15mmでサイズが102mm×38mmのポリプロピレン不織布を用い、このセパレータを前記負極と正極との間に介在させ、正極と負極をセパレータを介して渦巻状に巻回して図1に示す巻回構造の電極体を作製した。
【0031】
上記巻回構造の電極体の作製にあたって、あらかじめ、巻回構造の電極体における内周側と外周側で負極同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分(この部分は負極の厚みが変化する部分に当たる)に相当する位置の正極、負極、セパレータの幅方向全面にテープ状の補強材を取り付けておいた。使用した補強材はポリプロピレン製で、その内周側で負極同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分に相当する位置の正極には幅4mm、厚みが0.050mm、引張強が1.0kg/6mm、伸びが120%のものを用い、セパレータには幅が6mm、厚みが0.04mm、引張強さが0.7kg/6mm、伸びが115%のものを用い、負極には幅が5mm、厚みが0.080mm、引張強さが1.8kg/6mm、伸びが140%のものを用い、外周側で負極同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分に相当する位置の正極には幅が4mm、厚みが0.050mm、引張強さが1.0kg/6mm、伸びが120%のものを用い、セパレータには幅が6mm、厚みが0.040mm、引張強さが0.7kg/6mm、伸びが115%のものを用い、負極には幅が5mm、厚みが0.080mm、引張強さが1.8kg/6mm、伸びが140%のものを用い、それぞれテープ状の補強材に塗着されている粘着剤を利用して、それぞれの部分に貼り付けることによって取り付けた。
【0032】
ここで、図1に示す電極体について説明すると、正極1の両面には負極2がセパレータ3を介して対向しているが、ほぼ最外周部を除きほぼ2周目以後は負極2同士が直接接触している。その詳細は図2(図1のX部の拡大図)に示すように、負極2は支持体(本実施例ではニッケル板が用いられている)2aに活物質層2bを形成したものからなり、その負極2の活物質層2bが正極1の両面にセパレータ3を介して対向し、負極2の支持体2a同士が接触している。なお、セパレータ3は巻回構造の電極体の作製にあたって、そのほぼ中央部を巻回の中心部としており、それが図1のほぼ中央部に図示されている。そして、20は正極1の集電体(タブ)であり、正極1の最外周部に設けられている。この集電部20は、後にも再度説明するが、正極1の支持体である発泡ニッケルの空隙をつぶして水酸化ニッケルを含有するペーストが空隙に入り込まないようにして金属体のみにし、そこに正極リード体となるニッケルリボンの一端を溶接して構成されるものである。なお、この集電部20の構成に関しては図7などにおいても同様である。
【0033】
そして、負極2の内周部には、まず前記の負極シートAを使用し、途中から前記の負極シートBが加わり(負極シートBが負極シートAの内周側に加わる)、正極1が2周目になったところでは、正極1の両面にセパレータ3を介して対向する負極2はその支持体2a同士が直接接触し、負極2のほぼ最外周部は前記の負極シートBのみで構成されている。そして、詳細な図示はしていないが、負極2のほぼ最外周部の外面側には支持体が露出していて、その支持体が電池缶5の内壁に接触し、それによって、電池缶5は負極端子として作用する。なお、図1では、電池缶5は内周面のみ細線で示している。これらは図7、図10、図12などにおいても同様である。
【0034】
また、この図1は模式的に図示したものであり、この図1では、電極体4と電池缶5との間に大きな空隙があるように図示されているが、これは、実際には厚みの薄い部材(正極1は660μm、負極2は200μmと145μm、セパレータ3は0.15mm)を一定の厚みを持たせて図示しているからであり、現実には図示のような大きな空隙はできない。
【0035】
つぎに、図3および図4について説明する。図3は、図1に示す巻回構造の電極体の最内周部近傍を模式的に示すもので、図1のY部にほぼ相当する部分の拡大図である。図3に示すように、巻回構造の電極体の内周側で負極同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分に相当する位置の正極1には補強材31が逆L字状に取り付けられ、負極2には補強材32がL字状に取り付けられ、セパレータ3には補強材33が取り付けられている。この図3にはその詳細を示していないが、これらの補強材31、32、33は、前記のように、それぞれテープ状であって、正極1、負極2、セパレータ3の幅方向全面に取り付けられている。
【0036】
図4は、図1に示す巻回構造の電極体の最外周部近傍を模式的に示すもので、図1のZ部にほぼ相当する部分の拡大図である。図4に示すように、巻回構造の電極体の外周側で負極同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分に相当する位置の正極1には補強材41が取り付けられ、負極2には補強材42が取り付けられ、セパレータ3に補強材43が取り付けられている。この図4にはその詳細を示していないが、これらの補強材41、42、43は、前記のように、それぞれテープ状であって、正極1、負極2、セパレータ3の幅方向全面に取り付けられている。
【0037】
電解液には30%水酸化カリウム水溶液を用い、上記巻回構造の電極体を電池缶に挿入し、上記電解液を0.85ml注入し、それら以外は常法に従って単4形でニッケル−水素吸蔵合金系のアルカリ二次電池を作製した。この電池の構造を図5に模式的に示す。
【0038】
ここで、図5に示す電池について説明すると、正極1は前記のペースト式ニッケル電極からなるものであり、負極2には前記のように作製した2枚の負極シートA、Bが前記した態様で使用されているが、この図5ではその詳細について示しておらず、単一のものとして示している。そして、この負極2の活物質は水素吸蔵合金からなるものである。セパレータ3は前記のように親水処理されたポリプロピレン不織布からなるものであり、上記正極1と負極2はこのセパレータ3を介して前記特定の態様になるように重ね合わせられ、渦巻状に巻回して巻回構造の電極体4として電池缶5内に挿入され、その上部には絶縁体14が配置されている。また、電池缶5には、上記巻回構造の電極体4などの挿入に先立ってその底部に絶縁体13が配置されている。
【0039】
環状ガスケット6はナイロン66で作製され、電池蓋7は端子板8と封口板9とそれらで形成される空間内に配置された金属バネ10と弁体11とで構成され、電池缶5の開口部はこの電池蓋7などで封口されている。つまり、電池缶5内に巻回構造の電極体4や絶縁体13、14などを挿入した後、電池缶5の開口端近傍部分に底部が内周側に突出した環状の溝5aを形成し、その溝5aの内周側突出部で環状ガスケット6の下部を支えさせて環状ガスケット6と電池蓋7とを電池缶5の開口部に配置し、電池缶5の溝5aから先の部分を内方に締め付けて電池缶5の開口部を電池蓋7などで封口している。
【0040】
上記端子板8にはガス排出孔8aが設けられ、封口板9にはガス検知孔9aが設けられ、端子板8と封口板9との間には金属バネ10と弁体11とが配置されている。そして、封口板9の外周部を折り曲げて端子板8の外周部を挟み込んで端子板8と封口板9とを固定している。
【0041】
この電池は、通常の状況下では金属バネ10の押圧力により弁体11がガス検知孔9aを閉鎖しているので、電池内部は密閉状態に保たれているが、電池内部にガスが発生して電池内部の圧力が異常に上昇した場合には、金属バネ10が収縮して弁体11とガス検知孔9aとの間に隙間が生じ、電池内部のガスはガス検知孔9aおよびガス排出孔8aを通過して電池外部に放出され、電池破裂が防止できるように構成され、かつ、電池内部の圧力が一定圧力以下に低下した場合には、金属バネ10が元の状態に復帰し、弁体11がガス検知孔9aを閉鎖して、再び電池内部を密閉状態に保つように構成されている。
【0042】
正極リード体12の一方の端部は正極1の末端部にスポット溶接されたニッケルリボンからなる集電体(タブ)(図1の20)にスポット溶接され、その他方の端部は封口板9の下端にスポット溶接され、端子板8は上記封口板9との接触により正極端子として作用する。
【0043】
そして、前記したように、負極2のほぼ最外周部の外面側は支持体が露出していて、その支持体が電池缶5の内壁に接触し、それによって、電池缶5は負極端子として作用する。なお、この図5も、模式的に示したものであり、正極1、負極2、セパレータ3などの詳細を示しておらず、また図1とは若干位置を異ならせ、正極リード体12も切断面に配置しているかのようにして図示しているし、負極2の断面も図1や図2とは異なった態様で示している。
【0044】
この電池を60℃で17時間保存して活性化し、ついで充電を0.2C(20mAh)で7時間、放電を0.2Cで1.0Vまで行う、充放電サイクルを5回繰り返して化成した。上記充放電ができなかった電池を短絡が発生したものとし、また、上記充放電後に電圧を測定し、電圧が1V未満の電池も短絡が発生したものとして短絡発生率を算出した。
【0045】
この実施例1の電池の充填電気容量は正極規制で600mAhであり、この電池を20℃、0.1A放電で放電させたときの放電特性を図11に示す。なお、負極の充填電気容量は977mAhであり、この電池における〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比は1.63である。
【0046】
実施例2
負極として図6に示すように活物質層を設けていない部分を作製したものを用いた。この図6に示す負極について詳しく説明すると、図6の(a)は負極の一方の側面図で、図6の(b)は負極の他方の側面図であり、図6の(c)は上記(a)のV−V線における切断面図である。なお、図6の(a)および(b)においては、活物質層2bおよび2cを設けた部分をわかりやすくするため、活物質層2bおよび2cには十字状に斜線を入れている。
【0047】
負極2の支持体2aとしては厚さ20μmのニッケル板が用いられ、一方の面には活物質層2bが厚さ200μmに形成され、他方の面には活物質層2cが厚さ145μmに形成されていて、負極2の総厚は365μmである。ただし、負極2の一部には支持体の片面にしか活物質層の形成されていない部分があり、具体的には、負極2の全長は67mmであるが、支持体2aの一方の面には、その一方の端部Eから他方の端部Fに向かって26mmのところまでは活物質層が形成されておらず、それ以後は他方の端部Fまで連続的に活物質層2bが形成され、支持体2aの他方の面には、一方の端部Eから他方の端部Fに向かって63.2mmのところまで活物質層2cが形成され、残り3.8mmについては活物質層が形成されていない。そして、この負極2の横幅は35mmである。
【0048】
この負極2と正極1とをセパレータ3を介在させて、渦巻状に巻回して図7に示す巻回構造の電極体を作製した。ただし、この場合においても、実施例1の場合と同様に巻回構造の電極体の内周側と外周側で負極の厚みが変化する部分(この負極の厚みが変化する部分は、支持体の片面にのみ活物質層を有する部分と両面に活物質層を有する部分との境界部分に当たる)に相当する位置の正極、負極、セパレータの幅方向全面にあらかじめテープ状の補強材を取り付けておいた。補強材は、実施例1の場合と同様のポリプロピレン製のもので、内周側の負極の厚みが変化する部分に相当する位置の正極には幅が4mm、厚みが0.050mm、引張強さが1.0kg/6mm、伸びが120%のものを用い、セパレータには幅が6mm、厚みが0.040mm、引張強さが0.7kg/6mm、伸びが115%のものを用い、負極には幅が5mm、厚みが0.080mm、引張強さが1.8kg/6mm、伸びが140%のものを用い、外周側で負極の厚みが変化する部分に相当する位置の正極には幅が4mm、厚みが0.050mm、引張強さが1.0kg/6mm、伸びが120%のものを用い、セパレータには幅が6mm、厚みが0.040mm、引張強さが0.7kg/6mm、伸びが115%のものを用い、負極には幅が5mm、厚みが0.080mm、引張強さが1.8kg/6mm、伸びが140%のものを用いた。
【0049】
上記巻回構造の電極体の作製にあたっては、セパレータ3をその中央部で折返し、負極2の両面を覆うように配置し、端部F(図6参照)側を渦巻の中心側になるようにして渦巻状に巻回した。そして、この場合においても、負極2は少なくともその活物質層2bまたは2cがセパレータ3を介して正極1と対向している。なお、これらの図6、図7とも、模式的に示したものであり、たとえば、負極2の長さに対して支持体2aの厚みや活物質層2bおよび2cの厚みを大きく図示したり、また、負極2の活物質層の形成されていない部分の位置やその幅などを必ずしも寸法通りには図示していない。また、この図7に示す巻回構造の電極体に関し、図7に図示されていない部分について説明すると、負極2のほぼ最内周部では活物質層2bのみがセパレータ3を介して正極1と対向し、負極2のほぼ最外周部では活物質層2cのみがセパレータ3を介して正極1と対向し、ほぼ最内周部とほぼ最外周部以外の部分では、活物質層2bと活物質層2cがセパレータを介して正極1と対向している。また、同様に図7には示されていないが、負極2の最外周部の外面側には支持体が露出していて、その支持体が電池缶5の内壁に接触している。
【0050】
つぎに、図8および図9について説明する。図8は、図7に示す巻回構造の電極体の最内周部近傍を模式的に示すもので、図7のT部にほぼ相当する部分の拡大図である。図8に示すように、巻回構造の電極体の内周側で負極2の厚みが変化する部分に相当する位置の正極1には補強材51が逆L字状に取り付けられ、負極2には補強材52がL字状に取り付けられ、セパレータ3には補強材53が取り付けられている。この図8にはその詳細を示していないが、これらの補強材51、52、53は、前記のように、それぞれテープ状であって、正極1、負極2、セパレータ3の幅方向全面に取り付けられている。
【0051】
図9は、図7に示す巻回構造の電極体の最外周部近傍を模式的に示すもので、図7のS部にほぼ相当する部分の拡大図である。図9に示すように、巻回構造の電極体の外周側で負極2の厚みが変化する部分に相当する位置の正極1には補強材61が取り付けられ、負極2には補強材62が取り付けられ、セパレータ3には補強材63が取り付けられている。この図9にはその詳細を示していないが、これらの補強材61、62、63は、前記のように、それぞれテープ状であって、正極1、負極2、セパレータ3の幅方向全面に取り付けられている。
【0052】
上記正極1は前記実施例1と同様のペースト式ニッケル電極からなり、この正極1は厚さ660μmで、そのサイズは35mm×46mmである。そして、セパレータ3は前記実施例1と同様の厚さ0.15mmのポリプロピレン不織布からなり、サイズは102mm×38mmである。
【0053】
そして、上記正極1、負極2およびセパレータ3を用いて作製した巻回構造の電極体4を用い、以後実施例1と同様にして、単4形でニッケル−水素吸蔵合金系のアルカリ二次電池を作製し、実施例1と同様に短絡発生率を求めた。
【0054】
この電池の充填電気容量は正極規制で600mAhであり、この電池を20℃で0.1A放電で放電させたときの放電特性を図11に示す。なお、負極の充填電気容量は977mAhであり、この電池における〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比は1.63である。
【0055】
比較例1
MmNi5 を主体とする水素吸蔵合金粉末100重量部に、ポリビニルアルコールを濃度2.6%で水に溶解させたバインダー溶液23重量部を混合し、充分に攪拌して均一なペーストを調製し、このペーストを厚さ600μmの発泡ニッケル板に充填し、乾燥後、ロールプレスで圧縮して、負極シートを作製した。ただし、この負極シートは、後述の正極との対向部の〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比を1.3にするために、厚さは250μmとし、サイズは35mm×67mmにした。
【0056】
正極は、実施例1と同様にペースト式ニッケル電極からなるが、負極との対向部の〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比を1.3にするために、厚みを430μmとし、サイズは35mm×51mmにした。
【0057】
セパレータは実施例1と同様のポリプロピレン不織布を用い、それを上記負極と正極との間に介在させ、かつ巻き始め部分のセパレータを2重にして渦巻状に巻回して図10に示す巻回構造の電極体を作製し、以後実施例1と同様にして、単4形でニッケル−水素吸蔵合金系のアルカリ二次電池を作製し、実施例1と同様に短絡発生率を求めた。なお、この図10における12は、正極リード体の一方の端部に該当し、この部分は正極の支持体の露出部分に溶接され、それら全体で正極の集電部を構成している。これは先に述べた従来の巻回構造の電極体を示す図12においても同様である。
【0058】
この電池の充填電気容量は、正極規制で410mAhであり、この電池を20℃で0.1A放電で放電させたときの放電特性を図11に示す。なお、負極の充填電気容量は680mAhである。ただし、正極と対向している負極としては530mAhであり、この電池の〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比は前述のように1.3である。
【0059】
参考例1
実施例1の電池において、補強材をなにも取り付けていない電池を参考例1とした。
【0060】
参考例2
実施例2の電池において、補強材をなにも取り付けていない電池を参考例2とした。
【0061】
表1に上記実施例1〜2、比較例1および参考例1〜2の電池のそれぞれ1000個中の短絡数および短絡発生率を示す。なお、表1への表示あたっては構造が近い実施例1と参考例1との対比および実施例2と参考例2との対比がしやすいように配置して表示した。
【0062】
【表1】
Figure 0004017212
【0063】
表1に示すように、実施例1〜2の短絡発生率は、補強材を設けていない参考例1〜2より改善されており、負極の厚みが変化しない比較例1とほぼ同等であって、負極の厚みを部分的に変えていることによる短絡発生が低く抑えられていた。
【0064】
また、図11に示すように、実施例1〜2は、比較例1に比べて、放電容量が大きく、約30%程度の放電容量の増加を達成することができることがわかる。なお、上記実施例では支持体としてニッケル板を使用したが、パンチングメタル板を用いた場合にも、同等の効果が得られることが確認された。
【0065】
上記実施例では、ニッケル−水素吸蔵合金系のアルカリ二次電池について説明したが、本発明は、巻回構造を有する各種電池、たとえばニッケル−カドミウム電池、ニッケル−鉄電池、ニッケル−亜鉛電池に代表されるアルカリ電池、リチウム−マンガン電池、リチウムイオン電池などにも適用することができる。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、生産工程における短絡発生が少なく、かつ、高容量とすることができた。また、本発明によれば、簡単な塗布方式で負極を作製することができるので、生産性の向上を達成でき、しかも支持体として高価な発泡メタルや焼結板を使用しないので、コストの低減を達成することができる。さらに、本発明によれば、電池缶の内壁と接触する面が支持体であるため、水素吸蔵合金などにより、電池缶の内壁をキズ付けることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の電池に使用する巻回構造の電極体を模式的に示す断面図である。
【図2】図1のX部の拡大図である。
【図3】図1のY部にほぼ相当する部分を模式的に示す拡大図である。
【図4】図1のZ部にほぼ相当する部分を模式的に示す拡大図である。
【図5】実施例1のアルカリ二次電池を模式的に示す断面図である。
【図6】実施例2の電池に使用する負極を模式的に示すもので、その(a)は負極の一方の側面図で、その(b)は負極の他方の側面図であり、その(c)は上記(a)のV−V線における切断面図である。
【図7】実施例2の電池に使用する巻回構造の電極体を模式的に示す断面図である。
【図8】図7のT部にほぼ相当する部分を模式的に示す拡大図である。
【図9】図7のS部にほぼ相当する部分を模式的に示す拡大図である。
【図10】比較例1の電池に使用する巻回構造の電極体を模式的に示す断面図である。
【図11】実施例1〜2の電池および比較例1の電池の放電特性図である。
【図12】従来の巻回構造の電極体を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 正極
2 負極
2a 支持体
2b 活物質層
2c 活物質層
3 セパレータ
4 巻回構造の電極体
5 電池缶
31 補強材
32 補強材
33 補強材
41 補強材
42 補強材
43 補強材
51 補強材
52 補強材
53 補強材
61 補強材
62 補強材
63 補強材

Claims (8)

  1. 正極と負極をセパレータを介して巻回した巻回構造の電極体を電池缶に挿入して作製するアルカリ二次電池であって、
    上記巻回構造の電極体は、支持体の片面のみに活物質層が設けられた負極を2枚有しており、
    正極の両面に負極がセパレータを介して対向し、最内周部分から見て負極のほぼ2周目以後は、上記2枚の負極の支持体同士が直接接触しており、
    負極活物質層と正極活物質層との対向部における〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比が1.0以上1.63以下であり、
    かつ上記負極の支持体同士が直接接触する部分とそうでない部分との境界部分が正極と対向する位置において、上記境界部分、上記境界部分と対向する正極およびセパレータのいずれか一つ以上に、引張強さが0.5kg/6mm以上2kg/6mm以下、伸びが110%以上150%以下である補強材が固定されていることを特徴とする巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
  2. 正極と負極をセパレータを介して巻回した巻回構造の電極体を電池缶に挿入して作製するアルカリ二次電池であって、
    上記負極は、支持体の両面に活物質層が設けられているが、巻回構造の電極体のほぼ最内周部とほぼ最外周部の少なくとも一方に相当する部分には支持体の片面にしか活物質層が無いものであり、
    上記巻回構造の電極体は、上記負極の活物質層がセパレータを介して正極と対向しており、
    負極活物質層と正極活物質層との対向部における〔負極の電気容量〕/〔正極の電気容量〕の比が1.0以上1.63以下であり、
    かつ上記負極の支持体の片面のみに活物質層を有する部分と両面に活物質層を有する部分との境界部分が正極と対向する位置において、上記境界部分、上記境界部分と対向する正極およびセパレータのいずれか一つ以上に、引張強さが0.5kg/6mm以上2kg/6mm以下、伸びが110%以上150%以下である補強材が固定されていることを特徴とする巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
  3. 補強材の幅が3mm以上6mm以下であり、厚みが0.03mm以上0.1mm以下であることを特徴とする請求項1または2記載の巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
  4. 巻回構造の電極体の最外周部分が負極であってその支持体が外側に存在して、電池缶の内壁と接触していることを特徴とする請求項1または2記載の巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
  5. 負極の支持体が厚さ10μm〜50μmの金属板からなることを特徴とする請求項1または2記載の巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
  6. 負極の支持体が厚さ40μm〜70μmのパンチングメタル板からなることを特徴とする請求項1または2記載の巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
  7. 正極の最外周部に集電部を設け、その集電部から正極の集電を取ることを特徴とする請求項1または2記載の巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
  8. 電池が水素化物二次電池であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の巻回構造の電極体を有するアルカリ二次電池。
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