JP4016829B2 - 分析装置への試料導入ブローブとそれを備えた試料直接導入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分析装置の真空内に試料を直接挿入して分析に供するための、試料導入ブローブと、そのような試料導入ブローブを備えた試料直接導入装置に関するものである。このような、試料直接導入装置は、例えば質量分析計のイオン化室に固体試料や液体試料を直接導入する装置として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
本発明の試料直接導入装置が適用される分析装置の一例である質量分析計は、イオン化室に導入された試料を電子衝撃や化学イオン化等でイオン化したのち、分析部に送り込み、電場や磁場条件の下でイオンの走行・挙動がそれぞれの質量/電荷数(m/z)に依存して一義的に決まることを利用した分析計で、試料分子の質量測定、構造解析、微量定量測定等に広く利用されており、例えば各種元素の同位体存在比を測定する場合にも有効である(特許文献1参照)。
【0003】
従来かかる分析計への試料の導入は、固体試料の場合にはプローブの先に試料をつけ、イオン化室に入れる方法を採用している(特許文献2参照)。
【0004】
図6はそのようなプローブの一従来例を示したものである。(A)はその軸方向に沿った断面図、(B)は(A)のX−X’線位置での断面図である。このプローブ2は先端に試料瓶4を挿入する開口3が設けられている。試料瓶4には固体試料が充填され、その開口が質量分析計のイオン化室で露出し、直接又は気化した試料に電子ビームやレーザ光が照射されてイオン化がなされる。
【0005】
プローブ2の先端部には溝6が形成されており、その溝6は一部において開口3にまで到達している。溝6にはバネ8が嵌め込まれ、開口3に挿入された試料瓶4がそのバネ8により挟まれることによって試料瓶4が開口3内に固定されるようになっている。
【0006】
開口3の周囲にはヒータ10が埋め込まれており、また開口3の壁面の一部に温度を検出するための熱電対12が取り付けられている。熱電対12により検出した温度が所定の温度になるようにヒータ10への通電が制御され、試料瓶4内の固体試料が所定の温度に保たれるようになっている。
【0007】
図7はそのようなプローブの他の従来例を軸方向に沿った断面図として示したものである。このプローブ22もその先端に試料瓶4を挿入する孔23が設けられており、孔23に挿入された試料瓶4を固定するために、プローブ22の先端にキャップ24が被せられるようになっている。プローブ22の先端部には周に沿った溝25が形成され、キャップ24はバネ性の金属で構成され、その一部がプローブ先端部の溝25に嵌まり込むことにより、キャップ24がプローブの先端に着脱可能に取り付けられるようになっている。キャップ24には試料瓶4内の試料が気化し、イオン化室に導入されるように開口26が開けられている。図示は省略されているが、プローブ22の先端部にも、図6のプローブと同様にヒータが埋め込まれ、熱電対が設けられている。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−329881号公報
【特許文献2】
特許第2508934号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の試料直接導入装置のプローブでは、ヒーター部のある先端部に試料瓶を保持するに際して、バネ又はバネ性部材で試料瓶を直接押さえて固定したり、バネ性を持ったキャップで押さえたりする構造を採っている。
【0010】
このような試料直接導入装置を使った測定では、分析時に試料を加熱する。その温度は、例えば約500℃である。しかし、従来の試料直接導入装置のように、加熱される部分にバネ又はバネ性部材を使用していると、分析時の加熱や試料瓶の着脱が繰り返されるに従って、そのバネ性が緩み、試料瓶を保持できなくなってくる。最悪の場合、試料瓶が脱落破損して、分析計内の掃除に非常に手間がかかるという問題があった。
【0011】
他の分析装置では、試料瓶を固定するために、カギ穴に類する構造でキャップを引っ掛けてプローブの先端に固定する機構が使用されているが、本発明が対象とする質量分析計などの分析装置では、プローブが細くなり試料瓶を固定する機構が小さくするものでは、その機構が非常に小さい部品となるため、型加工が必要となり、質量分析計などの分析装置で用いる少量生産の製品ではコストが見合わず採用されていない。
【0012】
本発明は、使用の繰返しや加熱によっても試料瓶を良好に保持でき、製作も容易なプローブとそれを備えた試料直接導入装置を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の試料導入ブローブは、試料を充填した試料瓶を先端に保持する試料瓶保持部を有しその試料瓶保持部に試料瓶を保持して分析装置の真空内に挿入し、前記試料を分析に供するために使用されるものであり、前記試料瓶保持部は、この試料導入ブローブの先端に設けられて先端に前記試料瓶がその開口部を先端方向に向けて挿入される開口をもつ保持部本体と、前記保持部本体の先端部に着脱可能に取り付けられて前記試料瓶を前記保持部本体の前記開口に固定するとともに、前記試料瓶の開口部に通じる孔が開けられた試料瓶押さえ部材とを備え、前記試料瓶押さえ部材を前記保持部本体の先端部に取り付ける機構として、前記保持部本体はその先端の外周に回転体形状の円周面の一部が対向する位置で欠如した形状の鍔をもち、前記試料瓶押さえ部材は前記鍔がはまる中刳りと、その中刳りに通じ前記鍔の先端面形状に対応した形状の凹状部をもっている。
【0014】
この試料導入プローブでは、試料を充填した試料瓶を、その開口部を先端方向に向けて保持部本体の開口に挿入し、試料瓶押さえ部材をその凹状部を保持部本体の鍔に合わせて被せ、保持部本体の鍔が試料瓶押さえ部材の中刳りにくるまで回転させる。その回転により試料瓶押さえ部材が試料瓶を固定した状態で保持部本体の先端部に固着される。
【0015】
保持部本体にも試料瓶押さえ部材にもバネもバネ性部材も用いていないので、使用の繰返しや加熱によっても劣化することが少なく、試料瓶を良好に保持することができる。
【0016】
また、保持部本体と試料瓶押さえ部材の構造は簡単であるため、基礎的な加工機(旋盤やフライス盤)で容易に加工することができる。
【0017】
保持部本体と試料瓶押さえ部材との結合を強固にするには、保持部本体の鍔の高さを高くすればよい。そこで、試料導入ブローブの外形を小さく抑えながら鍔の高さを高くするために、保持部本体には、その先端の鍔に接してそれより基端部側に溝が形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の試料直接導入装置は、分析装置で試料導入ブローブにより大気中から真空室の内部に真空室の真空を破ることなく試料を導入するためのものであり、その試料導入ブローブとして本発明の試料導入ブローブを備えたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
まず、試料直接導入装置の一実施例として、質量分析装置で大気中から真空室の内部に、真空室の真空を破ることなく試料等を導入するためのプローブ導入機構の構造及び作用を図4により説明する。
【0020】
質量分析装置の真空室50には、内部にロッド挿入通路を設けたプローブ導入部51が設けられている。外部(大気)52から真空室50まで通じるロッド挿入通路は、プローブ導入部51のほぼ中央に回転可能に設けられている導入バルブ53により、真空室側の挿入通路54と外部側の挿入通路55とに分かれる。両ロッド挿入通路54、55(すなわち、真空室50と導入バルブ53との間、及び、導入バルブ53と外部52との間)の内側には、それぞれOリング56、57が設けられている。導入バルブ53と外部側のOリング57との間のロッド挿入通路55には予備排気通路59が開口し、予備排気バルブ60を介して予備排気ポンプ61に接続されている。また、予備排気通路59は途中で分岐し、リークバルブ62を介して外部(大気側)と連通している。
【0021】
円柱状の導入バルブ53の中央には、その回転軸(図4では上下方向の軸)に垂直に、孔64が貫通している。この貫通孔64の内径はロッド挿入通路54、55の内径とほぼ同じ大きさとなっている。導入バルブ53の側面の、貫通孔64の両側の開口から90°離れた箇所には、Oリング65を嵌め込むための溝が設けられている。また、導入バルブ53の上下の周囲にもOリング66、67が設けられ、導入バルブ53の内部(貫通孔64)と外部52を遮断している。導入バルブ53の上部には導入バルブ53を回転させるための操作レバー68が設けられている。
【0022】
この機構によるプローブ導入の手順を図5により説明する。(a)が導入バルブ53が閉位置にあるとき、(b)が開位置にあるときの図である。
【0023】
(i)まず、真空室50にプローブが入っていないときは、導入バルブ53は図5(a)のように、貫通孔64がロッド挿入通路54、55に対して90°の方向を向くような回転位置に置かれる。このとき、真空室50は導入バルブ53の側面のOリング65により外部から遮断される。
【0024】
(ii)プローブを先端に保持したロッド70を真空室50に導入する際は、まず、リークバルブ62及び予備排気バルブ60を閉じ、図5(a)に示すように、先端が導入バルブ53に当たる直前まで、ロッド70を外部側のロッド挿入通路55に挿入する。このとき、ロッド70とOリング57とのシールにより、ロッド挿入通路55は外部(大気側)52から遮断される。
【0025】
(iii)この状態で予備排気ポンプ61を作動させ、予備排気バルブ60を開けて、Oリング57よりも内側のロッド挿入通路55(これを予備排気室と呼ぶ)の圧力を下げる。
【0026】
(iv)予備排気室の圧力が十分に下がったところで導入バルブ53を90°回転し、貫通孔64を両ロッド挿入通路54、55に合致させる。そして、ロッド70を更に奥まで挿入し、ロッド70先端のプローブを真空室50の内部の所定位置まで持ってゆく(図5(b))。こうしてロッド70の先端が真空室50に入っている状態では、真空室50は2本のOリング56、57により外部52から遮断され、両Oリング56、57の間の空間(予備排気室)は予備排気ポンプ61により排気されているため、真空室50は高真空を保持することができる。
【0027】
反対に、このようにして真空室50に入っているプローブを外部に抜き出す際は、次のような手順で行なう。
(v)ロッド70先端のプローブを導入バルブ53よりも外部側まで引き抜き、導入バルブ53を90ー回転させる(図5(a))。
(vi)予備排気バルブ60を閉じ、リークバルブ62を開けて予備排気室を大気圧にする。
(vii)ロッド70をさらに引き抜いて、プローブを外部52に取り出す。
【0028】
図1から図3により一実施例の試料導入ブローブを説明する。
図1(A)はその先端部の軸方向に沿った断面図、(B)はその右側面図であり、(A)は(B)のS−S'線位置で切断した状態を示している。また図2はプローブの先端に設けられた保持部本体を表わし、図3は保持部本体に着脱可能に取り付けられる試料瓶押さえ部材であるキャップを表わしている。図2で(A)は軸方向に沿った断面図、(B)はその右側面図であり、(A)は(B)のT−T'線位置で切断した状態を示している。図3で(B)は正面図、(A)はその左側面図、(C)はその右側面図、(D)は断面図であり、(D)は(C)のU−U'線位置で切断した状態を示している。
【0029】
プローブ30の先端部に試料瓶34を固定するための試料瓶保持部が設けられ、試料瓶保持部は保持部本体32と、保持部本体32に着脱可能に取り付けられる試料瓶押さえ部材であるキャップ36とから構成されている。
【0030】
保持部本体32は先端に試料瓶34がその開口部を先端方向に向けて挿入される開口38が設けられている。保持部本体32の先端には鍔40が形成されている。図示は省略されているが、プローブ30の先端部にも、図6のプローブと同様にヒータが埋め込まれ、熱電対が設けられて、その熱電対の検出温度に基づいてヒータへの通電が制御され、測定中の試料温度が所定の温度になるように制御されるようになっている。
【0031】
鍔40は図2に詳細に示されているように、先端面は平坦で、外周形状は回転体の円周面の一部が対向する位置で欠如した切欠き42,42をもつ形状に形成されている。鍔40に隣接してそれより基端部側には溝44が形成されており、その溝44により鍔42の外形寸法が小さくなっても鍔40の高さを確保している。
【0032】
キャップ36は図3に詳細に示されるように、保持部本体32の鍔40が嵌る中刳り45と、中刳り45に通じ鍔40の先端面形状に対応した凹状部46が形成されている。キャップ36には試料瓶34の開口部に通じる孔47が開けられている。
【0033】
この実施例において、試料を充填した試料瓶34を、その開口部を先端方向に向けて保持部本体32の開口38に挿入する。試料瓶押さえ部材であるキャップ36を、その凹状部46を保持部本体32の鍔40に合わせて被せ、鍔40がキャップ36の中刳り45にくるまで回転させる。その回転によりキャップ36が試料瓶34を固定した状態で保持部本体32の先端に固着される。
【0034】
その後、試料を充填した試料瓶34を固定したこのプローブ30を図4、図5に示したプローブ導入機構と組み合わせることにより、一実施例の試料直接導入装置となり、質量分析を行なうことができる。
【0035】
実施例では適用される分析装置として質量分析装置を取り上げて説明しているが、本発明の試料直接導入装置は試料をプローブの先端部に保持して試料室に直接導入する機構をもつものであれば、同様に適用することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の試料導入プローブは、試料を充填した試料瓶を、その開口部を先端方向に向けて保持部本体の開口に挿入し、試料瓶押さえ部材をその凹状部を保持部本体の鍔に合わせて被せ、保持部本体の鍔が試料瓶押さえ部材の中刳りにくるまで回転させることにより、試料瓶押さえ部材が試料瓶を固定した状態で保持部本体の先端部に固着されるような構造に構成したので、分析時加熱、試料瓶着脱を繰り返しても保持能力が劣化することなく確実に保持できる。
また、簡単な構成であるので、少量ロットであっても容易に低コストで生産することができる。
このような試料導入プローブを備えた試料直接導入装置は、試料瓶が脱落破損して分析計内が汚れるというような事態の発生を抑えることができるので、メンテナンスが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施例の試料導入ブローブを示す図で、(A)はその先端部の軸方向に沿った断面図、(B)はその右側面図であり、(A)は(B)のS−S'線位置で切断した状態を示している。
【図2】同プローブの先端に設けられた保持部本体を示す図で、(A)は軸方向に沿った断面図、(B)はその右側面図であり、(A)は(B)のT−T'線位置で切断した状態を示している。
【図3】同保持部本体に取り付けられる試料瓶押さえ部材のキャップを示す図で、(B)は正面図、(A)はその左側面図、(C)はその右側面図、(D)は断面図であり、(D)は(C)のU−U'線位置で切断した状態を示している。
【図4】一実施例の試料直接導入装置におけるプローブ導入機構を示す断面図である。
【図5】図4のプローブ導入機構によるプローブ導入の手順を示す図で、(a)は導入バルブが閉位置にあるとき、(b)は開位置にあるときの状態を表わす。
【図6】従来のプローブを示す図で、(A)はその軸方向に沿った断面図、(B)は(A)のX−X’線位置での断面図である。
【図7】従来の他のプローブを示す軸方向に沿った断面図である。
【符号の説明】
30 プローブ
34 試料瓶
32 保持部本体
36 試料瓶押さえ部材であるキャップ
38 保持部本体の開口
40 鍔
42 切欠き
44 溝
45 中刳り
46 凹状部
47 孔
Claims (2)
- 試料を充填した試料瓶を先端に保持する試料瓶保持部を有しその試料瓶保持部に試料瓶を保持して分析装置の真空内に挿入し、前記試料を分析に供する試料導入ブローブにおいて、
前記試料瓶保持部は、前記試料導入ブローブの先端に設けられて先端に前記試料瓶がその開口部を先端方向に向けて挿入される開口をもつ保持部本体と、前記保持部本体の先端部に着脱可能に取り付けられて前記試料瓶を前記保持部本体の前記開口に固定するとともに、前記試料瓶の開口部に通じる孔が開けられた試料瓶押さえ部材とを備え、
前記試料瓶押さえ部材を前記保持部本体の先端部に取り付ける機構として、前記保持部本体はその先端の外周に回転体形状の円周面の一部が対向する位置で欠如した形状の鍔をもち、かつ前記鍔に接してそれより基端部側に前記鍔の高さを高くするための溝をもち、前記試料瓶押さえ部材は前記鍔がはまる中刳りと、その中刳りに通じ前記鍔の先端面形状に対応した形状の凹状部をもつことを特徴とする試料導入ブローブ。 - 分析装置で試料導入ブローブにより大気中から真空室の内部に真空室の真空を破ることなく試料を導入するための試料直接導入装置において、
前記試料導入ブローブとして請求項1に記載の試料導入ブローブを備えたことを特徴とする試料直接導入装置。
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JP2002366330A JP4016829B2 (ja) | 2002-12-18 | 2002-12-18 | 分析装置への試料導入ブローブとそれを備えた試料直接導入装置 |
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Publications (2)
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JP4531511B2 (ja) * | 2004-09-30 | 2010-08-25 | 大日本印刷株式会社 | カラーフィルタの製造方法 |
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2002
- 2002-12-18 JP JP2002366330A patent/JP4016829B2/ja not_active Expired - Lifetime
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