JP4016443B2 - 複合化用予備成形体並びにこれが複合化された複合アルミニウム系金属部品及びこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム系金属母材に複合化材料が複合化された複合アルミニウム系金属部品を製造するための複合化用予備成形体並びにこれが複合化された複合アルミニウム系金属部品及びこれらの製造方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、エンジンに組み込まれるピストンのリング溝部、車両制動系のブレーキディスクロータやエンジン動弁系のバルブリフタ等、他の部材との摺動部分に耐摩耗性が要求される部品をアルミニウム系金属で製造する場合、アルミニウム系金属を母材として耐摩耗性等を有する複合化材料(強化材)をいわゆる溶湯攪拌法によって複合化する方法が知られている。
【0003】
しかし、この方法では、耐摩耗性等が要求される特定の部分だけでなく部品全体が複合化材料で複合化されるため、複合化材料の使用量が非常に多く、コストが高くなってしまう。また、複合化材料が溶湯中で浮遊等して遍在しないように溶湯粘度等を設定する必要があり、工程が複雑化してしまう。
【0004】
そこで、例えば特開平3−151158号公報に示されているように、SiCウィスカとアルミニウム合金粉末との混合物を所定の形状に焼結して予備成形体を作製し、この予備成形体を鋳型の所定箇所にセットした後、その鋳型内に高圧でアルミニウムの溶湯を注入し、この溶湯で上記予備成形体を複合化することにより、複合化材料を部品の所定箇所に形成する方法が提案されている。
【0005】
この提案方法によると、複合化材料を部品の一部分に複合化することはできる。ところが、その反面、SiCウィスカの含有量が過多となる傾向にあり、複合化に際して、アルミニウム溶湯の圧力を高くする必要があり、さらに、実用上必要とされている低体積率のものを製造することが困難である。よって、コストが高くなると共に、摺動する相手部材を損傷させる虞れもある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、複合化材料としては、ウィスカや短繊維等よりもコストが低くかつ耐摩耗性等が優れている二酸化チタンやSiC等のセラミック粒子を使用することが望ましい。このような複合化材料で予備成形体を作製して、上記提案例のように高圧アルミニウム鋳造を行なう場合、セラミック粒子を圧粉焼結によって予備成形体を作製すると、セラミック粒子が微粒子であるためにその体積率が高くなり、ウィスカの場合と同様にその体積率の制御が困難であり、体積率を低くするには限界があった。このため、高圧アルミニウム鋳造を行なう際、アルミニウム溶湯を予備成形体内に含浸させることができず、その高圧力によって予備成形体が割れたり変形したりしてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、セラミック粒子にアルミニウム合金粉末と結晶化温度の低いアルミナゾル等の無機バインダーとを混合してそれらを焼結させることが考えられる。このようにすれば、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子が無機バインダーにより互いに結合されると共に、隣設するアルミニウム合金粉末同士が溶着されてネットワークを形成するので、予備成形体を高強度にすることができる。しかも、アルミニウム合金粉末はアルミニウム溶湯に溶けてその溶湯と入れ替わるので、セラミック粒子とアルミニウム合金粉末との配合比率を調整することでセラミック粒子の体積率を低くすることができる。
【0008】
しかし、この場合、焼結温度を高く(580〜900℃)して予備成形体を作製すると、この予備成形体とアルミニウム溶湯とを複合化した複合アルミニウム系金属部品は、溶体化処理することでその硬さや強度を向上させることができるようになるが、焼結温度が低い(540℃程度)と、そのような溶体化処理効果が得られなくなる。すなわち、焼結温度が高いと、焼結時に無機バインダーが、アルミニウム溶湯中に含まれるマグネシウム等の溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素と反応し難い安定物質に変化する(アルミナゾルの場合はγ−Al2 O3 となる)ので、複合化時に無機バインダーと溶体化促進元素との反応が抑制され、残された溶体化促進元素により溶体化処理効果を十分に得ることができるものの、焼結温度が低いと、複合化時に溶体化促進元素が無機バインダーと反応して少なくなり、溶体化処理効果が得られなくなってしまう。
【0009】
一方、焼結温度が高いと、焼結時にアルミニウム合金粉末が酸化され易くなって表面に強固な酸化膜が生じ、その酸化膜によって複合化が妨げられるので、部分的に未複合化領域が生じ易いという弊害がある。このため、焼結温度を高くすることによって溶体化処理効果が得られたとしても、その複合アルミニウム系金属部品は部分的に強度が低い等の欠陥が生じている可能性がある。
【0010】
また、セラミック粒子としてSiCを使用すれば、溶体化促進元素がセラミック粒子と反応することは殆どないが、二酸化チタンや酸化アルミニウム等のような溶体化促進元素と反応し易い材料を使用すると、焼結温度に関係なく、溶体化促進元素がセラミック粒子に奪われて複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果が十分に得られなくなる。
【0011】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、セラミック粒子とアルミニウム合金粉末と無機バインダーとを焼結させることによって予備成形体を製造し、この予備成形体とアルミニウム溶湯とを複合化して複合アルミニウム系金属部品を製造する場合に、そのアルミニウム合金粉末に対して工夫を凝らすことによって、焼結温度やセラミック粒子の材料に関係なく、その複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果が十分に得られるようにすることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明では、アルミニウム合金粉末に、複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素であるマグネシウムをアルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有させるようにした。
【0013】
具体的には、請求項1の発明では、アルミニウム系金属母材に複合化材料が複合化された複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体の製造方法として、上記複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素であるマグネシウムを上記アルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有させたアルミニウム合金粉末と、セラミック粒子を含有してなる複合化材料と、無機バインダーと、液体とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、上記スラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、上記アルミニウム合金粉末、セラミック粒子及び無機バインダーを焼結する焼結工程とを備える。
【0014】
このことにより、アルミニウム合金粉末、セラミック粒子及び無機バインダーを液体と混合してスラリー(懸濁液)を調製することで、それらがスラリー中で均一に混ぜられる。このスラリー中の液体成分を除去することにより、アルミニウム合金粉末、セラミック粒子及び無機バインダーが完全に均一に混ざり合った状態で固められた脱液体部材からなる固体物が得られる。この固体物が乾燥後に焼結工程にて焼結されると、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子が無機バインダーにより互いに結合されると共に、隣設するアルミニウム合金粉末同士は溶着されてネットワークを形成し、強度の高い予備成形体が得られる。また、この予備成形体と母材であるアルミニウム系金属の溶湯とが複合化されるとき、予備成形体内に侵入した溶湯の熱によりアルミニウム合金粉末が溶解して溶湯と入れ替わるので、アルミニウム合金粉末とセラミック粒子との配合比率を変えることでセラミック粒子の体積率を低くかつ任意の値に調整することができる。
【0015】
そして、アルミニウム合金粉末が溶解すると同時にそのアルミニウム合金粉末内の溶体化促進元素であるマグネシウムが溶湯内のものよりも優先的にセラミック粒子や無機バインダーと反応する。このとき、アルミニウム合金粉末内には、溶体化促進元素(マグネシウム)がアルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有されているので、アルミニウム合金粉末内の溶体化促進元素(マグネシウム)のみが反応し、アルミニウム溶湯中の溶体化促進元素(マグネシウム)のセラミック粒子や無機バインダーとの反応は抑制される。したがって、焼結温度やセラミック粒子の材料に関係なく、予備成形体とアルミニウム溶湯とを複合化した複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理による効果を確保することができる。また、低温焼結を行うことによりアルミニウム合金粉末表面の酸化を防止することができ、硬さや強度が全体に均一である健全な複合アルミニウム系金属部品を得ることができる。
【0016】
また、マグネシウムは、二酸化チタンや酸化アルミニウム等のセラミック粒子及びアルミナゾルやシリカゾル等の無機バインダーと反応し易い反面、溶体化処理後に常温時効させるT4熱処理や溶体化処理後に人工時効させるT6熱処理によりMg 2 Siが時効析出するので、それが複合アルミニウム系金属部品の硬さ及び強度を向上させる。また、アルミニウム合金粉末内にマグネシウムがセラミック粒子等と反応する以上に多く含有されていても、他の特性に殆ど影響はない。よって、高含有率で含有させる溶体化促進元素と して最適な元素を得ることができる。
【0017】
請求項2の発明は、セラミック粒子を含有してなる複合化材料がアルミニウム系金属母材に複合化された複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体の発明である。
【0018】
そして、この複合化用予備成形体は、上記複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素であるマグネシウムが上記アルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有されたアルミニウム合金粉末と、上記セラミック粒子と、無機バインダーとが焼結されてなるものとする。このことで、請求項1の発明と同様の作用効果が得られる。
【0019】
請求項3の発明では、複合アルミニウム系金属部品の製造方法として、請求項1記載の複合化用予備成形体の製造方法により得られた予備成形体にアルミニウム系金属の溶湯を注入し、上記溶湯と複合化用予備成形体とを複合化する複合化工程を備える。
【0020】
こうすることで、予備成形体内にアルミニウム系金属溶湯が含浸されて予備成形体とアルミニウム系金属とが複合化されると共に、予備成形体以外の箇所はアルミニウム系金属のみで鋳造される。よって、セラミック粒子の複合化材料で部品の一部が複合化された複合アルミニウム系金属部品を容易に得ることができる。
【0021】
請求項4の発明では、請求項3の発明において、複合化工程終了後に、溶体化処理後に時効させる熱処理を施す。
【0022】
この発明により、アルミニウム系金属母材内には、溶体化促進元素であるマグネシウムがセラミック粒子や無機バインダーと反応せずに残されているので、T4熱処理やT6熱処理を施すことにより、簡単にかつ確実に複合アルミニウム系金属部品の硬さや強度を向上させることができる。よって、容易に溶体化処理の効果を得ることができる。
【0023】
請求項5の発明は、複合アルミニウム系金属部品の発明であり、この複合アルミニウム系金属部品は、請求項2記載の複合化用予備成形体とアルミニウム系金属とが複合化されてなるものとする。このことで、請求項3の発明と同様の作用効果が得られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複合アルミニウム系金属部品Aを示す。この金属部品Aは、アルミニウム系金属を母材とし、その一部が複合化材料(強化材)で複合化されている。すなわち、この金属部品Aは、例えば、エンジンに組み込まれるピストンのリング溝部、車両制動系のブレーキディスクロータやエンジン動弁系のバルブリフタ等、他の部材との摺動部分に耐摩耗性等が要求される部品に使用されるもので、耐摩耗性等を必要とする箇所のみが複合化材料で複合化されている。
【0025】
上記アルミニウム系金属母材としては、JIS規格H5202に規定されているAC8A等が使用されている。上記複合化材料はセラミック粒子を含むものからなり、そのセラミック粒子としては炭化ケイ素(SiC)、二酸化チタン(TiO2 )又は酸化アルミニウム(Al2 O3 )等が使用されている。
【0026】
上記金属部品Aにおける複合化材料で複合化された部分は、複合化される前において複合化用予備成形体5とされており、この予備成形体5は、複合アルミニウム系金属部品Aの溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素としてのマグネシウムが上記アルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有されたアルミニウム合金粉末と、上記セラミック粒子と、アルミナゾルやシリカゾル等の無機バインダーとが焼結されてなる。この予備成形体5に対して、後述の如く、上記アルミニウム系金属の溶湯が注入されることで、この予備成形体5とアルミニウム系金属とが複合化されている。
【0027】
以上の構成からなる複合化用予備成形体5及びこの予備成形体5とアルミニウム系金属の溶湯とを複合化した複合アルミニウム系金属部品Aを製造する方法を説明する。
【0028】
最初に、複合化用予備成形体5を製造するには、先ず、スラリーを調製する。すなわち、図2に示すように、有底状の容器11内に、後述の如く複合化する際に注入するアルミニウム系金属母材よりもマグネシウムを高含有率で含有したアルミニウム合金粉末とセラミック粒子と無機バインダーと水等の液体とを投入して攪拌翼12で攪拌混合してスラリー13を調製する。
【0029】
次に、図3に示すように、濾過装置14で上記スラリー13を濾過してスラリー13中の水等の液体成分を除去(吸引脱水)する。この濾過装置14は、有底状の容器15の底部に吸引口16を連通形成すると共に、多数の脱水用スリット17,17,…が形成された台部材18を容器15内の上下方向略中央部に水平状に張架し、この台部材18の上面に濾紙19を配設したもので、上記スラリー13を容器15内の濾紙19上に投入した後、吸引口16に負圧吸引力を作用させることにより、スラリー13中の水等の液体を濾紙19及び台部材18の各スリット17より除去することができるようになっている。
【0030】
そして、図4に示すように、スラリー13中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材21を圧縮する。すなわち、上記濾過装置14を脱液体部材21を入れたままその底部を固定台20上に載せ、脱液体部材21をその上方からパンチ22により加圧して予備成形体5の形状となるように圧縮成形する。尚、上述の如くスラリー13中の液体成分を除去する際にその負圧吸引力を調整し、脱液体部材21の体積率が10%以上となるようにすれば、実質的に脱液体部材21に対して圧縮を行ったのと同様の効果が得られ、後述の如く焼結を有効に行うことができるので、そのようにする場合には、この圧縮工程を省略してもよい。
【0031】
その後、上記脱液体部材21を乾燥させた後、アルミニウム合金粉末とセラミック粒子と無機バインダーとを焼結することで複合化用予備成形体5が完成する。このとき、焼結温度は、アルミニウム合金粉末表面に酸化膜が生じ難い温度(540℃程度)とすることが望ましい。
【0032】
したがって、このようにして得られた予備成形体5は、アルミニウム合金粉末、セラミック粒子及び無機バインダーが完全に均一に混ざり合った状態で焼結され、アルミニウム合金粉末及びセラミック粒子が無機バインダーにより互いに結合されていると共に、隣設するアルミニウム合金粉末同士は溶着されてネットワークを形成しているので、強度が高くなる。
【0033】
次に、上記予備成形体5より複合アルミニウム系金属部品Aを製造する方法を説明する。先ず、図5に示すように、底部に金型26を、側部に金型27をそれぞれ備え、該金型27の周囲に加熱用ヒータ28が配置されているアルミニウム鋳造装置24内の所定部に上記予備成形体5を配置し、金型26,27及び予備成形体5をヒータ28により所定温度に加熱保持しておく。そして、金型26,27で囲まれた内部に、アルミニウム系金属溶湯25を注入し、この溶湯25の上方からパンチ29により溶湯25を加圧する。この鋳造圧力は100MPa 程度となるようにする。このとき、予備成形体5が100MPa 程度の圧力に十分耐えることができる強度とされているので、予備成形体5に割れや圧縮変形を生じさせることなく鋳造を行うことができる。
【0034】
上記溶湯25を加圧することにより、予備成形体5内に溶湯25が含浸され、溶湯25と予備成形体5とが複合化されると共に、予備成形体5以外の箇所はアルミニウム系金属のみで鋳造される。このことで、部分的にセラミック粒子で複合化された複合アルミニウム系金属部品Aが容易に得られる。また、この複合化時に、予備成形体内に侵入した溶湯25の熱によりアルミニウム合金粉末が溶解して溶湯25と入れ替わるので、アルミニウム合金粉末とセラミック粒子との配合比率を変えることでセラミック粒子の体積率を低くかつ任意の値に調整することができる。さらに、アルミニウム合金粉末が溶解すると同時にそのアルミニウム合金粉末内のマグネシウムが溶湯25内のものよりも優先的にセラミック粒子や無機バインダーと反応する。このとき、アルミニウム合金粉末内には、マグネシウムが溶湯25内よりも高含有率で含有されているので、アルミニウム合金粉末内のマグネシウムのみが反応し、母材のアルミニウム溶湯中のマグネシウムのセラミック粒子や無機バインダーとの反応は抑制される。
【0035】
そして、この金属部品Aに対して、溶体化処理後に常温時効させるT4熱処理又は溶体化処理後に人工時効させるT6熱処理を施すことにより、その硬さや強度を向上させることができる。すなわち、上述の如く、母材のアルミニウム系金属中にはマグネシウムが十分に残されているので、上記熱処理によりMg2 Siが時効析出して金属部品Aの硬さ及び強度を向上させる。
【0036】
また、低温焼結を行うことによりアルミニウム合金粉末表面の酸化を防止することができ、複合アルミニウム系金属部品Aを、硬さや強度が全体に均一である健全なものとすることができる。
【0037】
したがって、上記実施形態では、アルミニウム合金粉末に、溶体化処理効果を促進するマグネシウムが母材のアルミニウム系金属よりも高含有率で含有されているので、低温焼結を行うことで無機バインダーがマグネシウムと反応し難い安定物質に変化していなくても、また、セラミック粒子がマグネシウムと反応し易い材料であっても、予備成形体とアルミニウム溶湯とを複合化した複合アルミニウム系金属部品Aの溶体化処理による効果を確実に得ることができる。
【0038】
さらに、アルミニウム合金粉末内にマグネシウムがセラミック粒子等と反応する以上に多く含有されていても、他の特性に殆ど影響はないので、その含有量を細かく調整する必要はない。よって、マグネシウムは、高含有率で含有させる溶体化促進元素として最適なものとなる。
【0039】
尚、アルミニウム合金粉末内のマグネシウムの含有率は、母材のアルミニウム系金属のマグネシウムの含有率が、通常約1%であるので、それよりも多ければよいが、望ましくは、セラミック粒子がマグネシウムと反応しないSiCである場合には、混合する無機バインダーと同程度(約3%)以上がよく、セラミック粒子がマグネシウムと反応するTiO2 やAl2 O3 である場合には、5%程度以上がよい。
【0040】
【実施例】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。先ず、上記実施形態と同様にして、複合化用予備成形体を作製した。但し、圧縮工程は省略し、スラリー中の液体成分を除去する際の負圧吸引力のみで脱液体部材を所定の形状とした。このとき、セラミック粒子には平均粒径が15μmであるSiC粒子を使用した。また、アルミニウム合金粉末には、上記JIS規格のAC8AをベースとしてマグネシウムのみをAC8Aよりも高含有率にしたものを使用した。つまり、このアルミニウム合金粉末は、平均粒径が65μmであり、鉄が0.42%、銅が1.0%、ケイ素が12.68%、マグネシウムが5.8%(AC8Aでは1.0%)、ニッケルが1.2%、マンガンが0.2%それぞれ含有されて残りがアルミニウムであるものとした。このSiC粒子及びアルミニウム合金粉末の光学顕微鏡写真を図6及び図7にそれぞれ示す。この各顕微鏡写真の倍率は、それぞれ850倍及び160倍である。さらに、無機バインダーには、アルミナゾルを使用した。そして、脱液体部材の乾燥は、120℃で2時間とし、その後の焼結は、540℃(813K)で1時間とした。尚、得られた予備成形体の大きさは、62×36×15mmであり、SiC粒子及びアルミニウム合金粉末の予備成形体全体に対する体積率は、それぞれ12%及び30%となるようにした。
【0041】
次に、上記予備成形体に対して、上記実施形態と同様にして、アルミニウム鋳造を行うことにより予備成形体をアルミニウム系金属と複合化して直径50mmの複合アルミニウム系金属部品を得た。このとき使用した母材のアルミニウム系金属はAC8Aであり、溶湯温度1033K、金型温度533K、予備成形体の予熱温度573K、加圧力100MPa の条件下で鋳造を行った。
【0042】
さらに、複合化後、複合アルミニウム系金属部品に対してT6熱処理を行った。すなわち、783Kの温度下で約4時間保持した後、水冷し、443Kの温度下で約10時間保持し、その後、空冷した。
【0043】
また、比較のために、アルミニウム合金粉末を母材と全く同じAC8Aとし、上記実施例のものと同様にして、予備成形体を作製した後、その予備成形体より複合アルミニウム系金属部品を作製し、その金属部品にT6熱処理を行った。
【0044】
上記実施例及び比較例の複合アルミニウム系金属部品の複合化された部分(複合材)のビッカース硬さ(加重10Kgf)を、T6熱処理の前後でそれぞれ調べて比較した。この結果、比較例のものは、熱処理前の鋳放し材がHv138であり、熱処理後のT6材がHv143となり、殆ど向上していない。これに対し
て、実施例のものは、熱処理前の鋳放し材がHv138で比較例のものと同じであるが、熱処理後のT6材がHv180と向上し、アルミニウム合金粉末のマグネシウムを高含有率とすることによる効果が判る。
【0045】
さらに、比較のために、アルミニウム合金粉末を母材と全く同じAC8Aとし、焼結温度を913K、1013K及び1113Kとさらに高くした3種類の予備成形体を作製し、この各予備成形体より複合アルミニウム系金属部品を作製し、各複合材についてT6熱処理の前後でビッカース硬さをそれぞれ調べた。
【0046】
以上の結果をまとめて図8に示す。すなわち、焼結温度が913K〜1113Kと高い場合は、焼結時にアルミナゾルが、アルミニウム溶湯中に含まれるマグネシウムと反応し難い安定なγ−Al2 O3 に変化するので、アルミニウム合金粉末を母材と全く同じAC8Aとしても、T6熱処理によってMg2 Siが時効析出して硬さが向上するが、焼結温度が813Kと低い場合は、アルミニウム溶湯中のマグネシウムがアルミナゾルと反応して少なくなるので、硬さが向上しない。しかし、本実施例のT6熱処理したもの(黒丸で示す)は、アルミニウム合金粉末にマグネシウムが多く含有されていて、そのマグネシウムがアルミナゾルと優先的に反応し、アルミニウム溶湯中のマグネシウムは反応せずに残されているので、焼結温度が813Kと低くても、硬さを向上させ得ることが判る。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1又は2の発明によると、複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素であるマグネシウムをアルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有させたアルミニウム合金粉末と、セラミック粒子を含有してなる複合化材料と、無機バインダーと、液体とを混合してスラリーを調製し、そのスラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、上記アルミニウム合金粉末、セラミック粒子及び無機バインダーを焼結することによって複合化予備成形体を製造したことにより、焼結温度やセラミック粒子の材料に関係なく、この予備成形体より得られる複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理による効果を確保することができると共に、低温焼結を行うことにより硬さや強度を全体に均一なものとすることができる。
【0048】
請求項3の発明では、請求項1記載の複合化用予備成形体の製造方法により得られた予備成形体にアルミニウム系金属の溶湯を注入し、その溶湯と複合化用予備成形体とを複合化するようにした。また、請求項5の発明では、複合アルミニウム系金属部品は、請求項2記載の複合化用予備成形体とアルミニウム系金属とが複合化されてなるものとした。したがって、これらの発明によると、セラミック粒子の複合化材料で部品の一部が複合化された複合アルミニウム系金属部品の製造を容易に行うことができる。
【0049】
請求項4の発明によると、複合化工程終了後に、溶体化処理後に時効させる熱処理を施すようにしたことにより、溶体化処理の効果を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る複合アルミニウム系金属部品を示す断面図である。
【図2】 複合化用予備成形体を製造するためにスラリー調製を行っている状態を示す容器の断面図である。
【図3】 スラリー中の液体成分を除去している状態を示す濾過装置の断面図である。
【図4】 スラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を圧縮している状態を示す図3相当図である。
【図5】 複合化用予備成形体に対してアルミニウム鋳造を行ってその予備成形体とアルミニウム系金属とを複合化している状態を示すアルミニウム鋳造装置の断面図である。
【図6】 SiC粒子を示す光学顕微鏡写真である。
【図7】 アルミニウム合金粉末を示す光学顕微鏡写真である。
【図8】 複合材の硬さと焼結温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
A 複合アルミニウム系金属部品
5 複合化用予備成形体
13 スラリー
14 濾過装置
21 脱液体部材
24 アルミニウム鋳造装置
Claims (5)
- アルミニウム系金属母材に複合化材料が複合化された複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体の製造方法であって、
上記複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素であるマグネシウムを上記アルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有させたアルミニウム合金粉末と、セラミック粒子を含有してなる複合化材料と、無機バインダーと、液体とを混合してスラリーを調製するスラリー調製工程と、
上記スラリー中の液体成分を除去することにより得られた脱液体部材を乾燥させた後、上記アルミニウム合金粉末、セラミック粒子及び無機バインダーを焼結する焼結工程とを備えたことを特徴とする複合化用予備成形体の製造方法。 - セラミック粒子を含有してなる複合化材料がアルミニウム系金属母材に複合化された複合アルミニウム系金属部品を形成するための複合化用予備成形体であって、
上記複合アルミニウム系金属部品の溶体化処理効果を促進する溶体化促進元素であるマグネシウムが上記アルミニウム系金属母材よりも高含有率で含有されたアルミニウム合金粉末と、上記セラミック粒子と、無機バインダーとが焼結されてなることを特徴とする複合化用予備成形体。 - 請求項1記載の複合化用予備成形体の製造方法により得られた予備成形体にアルミニウム系金属の溶湯を注入し、上記溶湯と複合化用予備成形体とを複合化する複合化工程を備えたことを特徴とする複合アルミニウム系金属部品の製造方法。
- 請求項3記載の複合アルミニウム系金属部品の製造方法において、
複合化工程終了後に、溶体化処理後に時効させる熱処理を施すことを特徴とする複合アルミニウム系金属部品の製造方法。 - 請求項2記載の複合化用予備成形体とアルミニウム系金属とが複合化されてなることを特徴とする複合アルミニウム系金属部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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