JP4013407B2 - シート状電池用ゲル状ポリマー電解質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、正極シート及び負極シートを積層してなるシート状電池のその正極及び負極の間に介在するシート状電池用ゲル状ポリマー電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年のビデオカメラやノート型パソコン等のポータブル機器の普及により薄型の電池に対する需要が高まっている。この薄型の電池として、活物質を含む正極シート及び負極シートを両シートの間に電解質を挟んで積層したものが知られている。このように積層された積層体をパッケージシートで密閉することによりシート状の電池が形成され、このシート状電池ではパーケージシートから引出されかつ正極シート又は負極シートに電気的に接続する正極及び負極端子を介して所望の電気が得られるようになっている。
このようなシート状電池に使用される電解質として、イオン伝導性高分子を用いて電解液の漏洩を防ぐようにした高分子固体電解質が知られている。この高分子固体電解質は、通常は高分子中に電解質が均一固溶した形態をとり、加工柔軟性を有するなどのシート状電池の電解質として好ましい性質を有する。しかし、高分子固体電解質のイオン伝導度は電解液に比較して著しく低く、これを用いて構成した電池は充電電流密度が限定され、電池抵抗が高い問題点があった。
この点を解消するために、表及び裏に連通する孔を膜状の電解質に形成し、その孔に比較的イオン伝導度の高い電解液を含浸させた非水系電池用隔壁が提案されている(特開平10−321210)。この非水系電池用隔壁では孔に含浸された電解液によりイオン伝導度が向上し、高い電流密度において高い電池性能を示すようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した非水系電池用隔壁は表面又は裏面に孔が開口するため、この非水系電池用隔壁が正極シート及び負極シートに対して十分に密着しないと、その孔に含浸された電解液が漏洩するおそれがある。また、電極のイオン吸蔵放出による体積変化により、その非水系電池用隔壁と正極又は負極シートとの間に隙間が生じて電解液が漏洩するおそれもある。特に、シート状電池は時として物品の形状に沿って湾曲させる場合もあり、シート状電池を湾曲させると、発生する応力を緩和しきれずにその非水系電池用隔壁と正極又は負極シートとの間に隙間が生じ、その隙間から電解液が漏洩する不具合がある。更に、シート状電池の充放電に伴って電池内部で発生するガスが孔の正極又は負極の界面上に溜ると、そのガスがイオンの移動を妨げるため、電極と電解質界面の有効表面積を減少させ、内部抵抗が増大して放電容量のサイクル特性が悪化する問題点もある。
本発明の目的は、電解液の漏洩を確実に防止し、放電容量のサイクル特性を向上し、かつイオン伝導度を向上させ得るシート状電池用ゲル状ポリマー電解質を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、電解液21とその電解液21を含ませるフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなるゲル状ポリマーマトリックスとを有し、シート状電池10の正極シート12及び負極シート14の間に介在するゲル状ポリマー電解質13であって、ゲル状ポリマーマトリックスに閉じ込められ独立した多数の孔22がマトリックスの全体にわたって略均一に形成され、その孔22の内部に電解液21が0〜30体積%と気体23が70〜100体積%満たされたことを特徴とする。
この請求項1に係る発明では、孔22に満たされた気体23は、電極のイオンの充放電に伴う体積変化に伴う内圧変化や、シート電池を湾曲させたとき等の外部から圧力を受けたときに発生する応力を緩和させ、ポリマー電解質と正極又は負極シートの剥離を防ぐので、従来の高分子固体電解質に比較して、充放電サイクル特性を向上することができる。
また、孔22に気体23とともに満たされた電解液21は、その孔22から漏れ出すことなくイオンを伝導させるので、従来の固体高分子固体電解質に比較してイオン伝導度が向上し、内部抵抗を減ずることができる。電解液21が孔22に含まれなくても電池としての機能は十分である。また、電解液21が孔22の体積に対して30体積%を越えると電池が高温下にさらされたときに、ゲル状ポリマー電解質が溶解し、短絡などが生じやすくなる不具合がある。なお、電解液21の孔22に対する好ましい割合は0.1〜30体積%であり、更に好ましい値は3〜30体積%である。
【0005】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、孔22の径が5〜20μmであり、その孔22がゲル状ポリマーマトリックスに0.1〜30体積%の割合で分布するシート状電池用ゲル状ポリマー電解質である。
この請求項2に係る発明では、孔22の特性を上記のようにすることにより、充放電サイクル特性を向上させることができる。孔22の孔径が5μm未満であって、孔22が0.1体積%未満であると、ゲル状ポリマー電解質の体積変化率に限界を生じさせてシート状電池の内部に生じる内圧を十分に緩和でいない不具合がある。また、孔22の孔径が20μmを越え、かつ孔22が30体積%を越えるゲル状ポリマー電解質の強度が不十分となり、短絡等を生じさせる不具合がある。
【0007】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1に示すように、シート状電池10は、Al箔12aに活物質12bを塗布した正極シート12と、ゲル状ポリマー電解質13と、Cu箔14aに活物質14bを塗布した負極シート14とをこの順序で積層し、このように積層したものをパッケージシート18で密封することにより作られる。正極シート12の活物質12bには例えばLiCoO2が使用され、負極シート14の活物質14bにはグラファイト系の活物質が使用される。正極シート12及び負極シート14は、活物質12b,14bと導電用のカーボンを含むスラリーをAl箔12a及びCu箔14aの上にそれぞれ厚さが約100μmになるように塗布し、80〜120℃で乾燥させることによりそれぞれ作られる。
【0008】
正極及び負極シート12,14のいずれか一方又は双方には、後にシート状であってゲル状のポリマー電解質13になる電解液が混合された所定の電解質スラリーが全面にわたって所定の厚さで塗布され、60〜100℃でその電解質スラリーを乾燥させることにより、正極及び負極シート12,14の間にゲル状ポリマー電解質13が形成される。その後、この正極及び負極シート12,14は、電解質13の膜厚が20〜200μmになるように電解質13を介して90〜120℃で熱圧着され、正極シート12と、ゲル状ポリマー電解質13と、負極シート14とがこの順で積層された積層体が形成される。この積層体はパッケージシート18で密封されるが、この実施の形態におけるパッケージシート18はポリプロピレン18aがラミネートされたアルミニウム箔18bが使用される。パッケージシート18での密封は、一対のパッケージシート18でその積層体を挟み、真空雰囲気中でパッケージシート18の周囲を熱圧着することにより行われる。このようにしてシート状電池10は作られる。
【0009】
本発明のシート状電池用ゲル状ポリマー電解質は上述した電解質13であって、その特徴ある点は、ゲル状ポリマーマトリックスに閉じ込められ独立した多数の孔22がマトリックスの全体にわたって略均一に形成され、その孔22の内部に気体23又は気体23と電解液21が満たされたところにある。適切な粘度を有する電解質スラリーを活物質12,14bの表面に塗布すると、活物質12,14b中の気体が電解質スラリー中に移行し、そのスラリー中に気泡となって滞留する。この時のスラリー粘度が高すぎると、気泡は活物質と電解質スラリーの界面に留まり、スラリー粘度が低すぎると気泡は電解質スラリー層を通って大気中に放出される。スラリー中に気泡が形成されると、スラリー中の電解液21はその気泡内に集合し、この電解質スラリーを乾燥すると、その電解液21が集合して気体とともに閉じ込められた多数の孔22が全体にわたって略均一に形成されたゲル状ポリマー電解質13が得られる。
【0010】
ポリマー電解質13の全体に閉じ込められ独立した孔を形成し、かつその孔22に閉じ込められる電解液21及び空気23の割合を調整するには、電解質スラリーの粘度及び塗布時若しくはスラリーの乾燥時の温度を適切に設定する必要がある。このための電解質スラリーの粘度は10〜300cPであり、乾燥時の温度は25〜100℃である。これらの条件を適切に設定すると、孔22の孔径は10〜20μmになり、その孔22がゲル状ポリマーマトリックスに0.1〜30体積%の割合で分布するようになる。また、孔22には0〜30体積%の電解液21と70〜100体積%の空気からなる気体23とにより満たされる。
【0011】
このように構成されたシート状電池用ゲル状ポリマー電解質13では、孔22に封入された空気からなる気体23は、自らが膨張又は収縮することによりゲル状ポリマー電解質13の体積変化を許容させ、電極のイオン吸蔵放出による電極シートの体積変化にそのゲル状ポリマー電解質13を追従させて、シート状電池の内部に生じる内圧を緩和させる。孔22に気体23とともに満たされた電解液21は、その孔22から漏れ出すことなくイオンを伝導させるので、従来の固体高分子固体電解質に比較してイオン伝導度が向上し、内部抵抗は減ぜられる。電解液21が孔22に含まれなくても電池としての機能は十分であるが、電解液21が孔22の体積に対して0.1%未満であると電解液21の割合が減少して孔22とポリマー電解質18との界面が乾燥してそのポリマー電解質18に亀裂が生じるおそれがあるため、電解液21は0.1%以上であることが好ましい。また、電解液21が孔22の体積に対して3%以上であればイオン伝導度が向上し、電池の内部抵抗を減じる効果を得ることができる。一方、電解液21が孔22の体積に対して30体積%を越えると電池が高温下にさらされたときに、ゲル状ポリマー電解質が溶解し、短絡などが生じやすくなる不具合がある。特に孔22の孔径が10〜20μmであって、孔22がゲル状ポリマーマトリックスに0.1〜30体積%の割合で分布することにより、その効果を有効に発揮することができる。
【0012】
【実施例】
次に本発明の実施例を説明する。
先ず正極シートを作製した。即ち、LiCoO2粉末70gと黒鉛粉末(商品名;ケッチェンブラック)4gを、ポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリドン溶液に分散混合してスラリーを作製した。なお、スラリー中の固形分重量組成はLiCoO2が89%、黒鉛粉末が5%、ポリフッ化ビニリデンが6%とした。このスラリーをAl箔の上面にドクターブレード法により塗布及び乾燥した後、ロール圧延して活物質膜厚80μmの正極シートを作製した。
【0013】
次に負極シートを作製した。即ち、燐片状天然黒鉛粉末50gを、ポリフッ化ビニリデンのN−メチルピロリドン溶液に分散混合してスラリーを作製した。なお、スラリー中の固形分重量組成は黒鉛粉末が90%、ポリフッ化ビニリデンが10%とした。このスラリーをCu箔の上面にドクターブレード法により塗布及び乾燥した後、ロール圧延して活物質膜厚50μmの負極シートを作製した。
更に、電解質スラリーを調製した。即ち、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(エルフアトケム製、Kynar2810;ヘキサフルオロプロピレン12wt%含有品)40gをジメチルカーボネート200gに60℃で溶解した後、電解液80gを撹拌混合して粘度が約250cPの電解質スラリーを得た。ここで、電解液には、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの等容積の混合溶媒に六フッ化リン酸リチウムを1mol/リットルとなるように溶解したものを使用した。
【0014】
<実施例1>
上述のように調製した電解質スラリーを60℃で剥離紙上にドクターブレード法により塗布し、80℃で3分間乾燥させ、電解液がそれぞれ封入された多数の孔が全体にわたって略均一に形成されたゲル状ポリマー電解質を作製した。このように得られたゲル状ポリマー電解質をその後剥離紙から剥離して正極シート及び負極シートにより挟んでシート状電池を得た。このゲル状ポリマー電解質を挟んだシート状電池を実施例1とした。
<実施例2>
上述のように調製した電解質スラリーを50℃で上述した負極シート上にドクターブレード法により塗布し、80℃で3分間乾燥させ、電解液がそれぞれ封入された多数の孔が全体にわたって略均一に形成されたゲル状ポリマー電解質を作製した。このように得られたゲル状ポリマー電解質にその後正極シートを積層することにより、ゲル状ポリマー電解質が正極シート及び負極シートで挟まれたシート状電池を得た。このゲル状ポリマー電解質を挟んだシート状電池を実施例2とした。
【0015】
<実施例3>
上述のように調製した電解質スラリーを50℃で上述した正極シート上にドクターブレード法により塗布し、80℃で3分間乾燥させ、電解液がそれぞれ封入された多数の孔が全体にわたって略均一に形成されたゲル状ポリマー電解質を作製した。このように得られたゲル状ポリマー電解質にその後負極シートを積層することにより、ゲル状ポリマー電解質が正極シート及び負極シートで挟まれたシート状電池を得た。このゲル状ポリマー電解質を挟んだシート状電池を実施例3とした。
<比較例1>
上述のように調製した電解質スラリーを80℃で剥離紙上にドクターブレード法により塗布し、60℃で3分間乾燥させ、孔を有しないゲル状ポリマー電解質を作製した。このように得られたゲル状ポリマー電解質をその後剥離紙から剥離して正極シート及び負極シートにより挟んでシート状電池を得た。このゲル状ポリマー電解質を挟んだシート状電池を比較例1とした。
【0016】
<比較例2>
上述のように調成した電解質スラリーを40℃で剥離紙上にドクターブレード法により塗布し、90℃で3分間乾燥させ、電解液がそれぞれ封入されシート表面に開口する開気孔が全体にわたって略均一に形成されたゲル状ポリマー電解質を作製した。このように得られたゲル状ポリマー電解質をその後剥離紙から剥離して正極シート及び負極シートにより挟んでシート状電池を得た。このゲル状ポリマー電解質を挟んだシート状電池を比較例2とした。
<比較試験>
実施例1〜3及び比較例1及び2のシート状電池の25℃及び70℃の双方における放電容量のサイクル特性を充放電試験機により測定した。この25℃における結果を図2に、70℃における結果を図3に示す。
【0017】
<評価>
実施例1、比較例1及び2の孔の径を顕微鏡で観察した結果、実施例1では平均径15μmの孔が形成され、比較例1では孔が形成されず、比較例2では平均径30μmのシート表面に開口する孔が形成されたことから、電解質スラリーの乾燥時の温度及び乾燥時間を調整することにより、乾燥後形成される孔の孔径を調整することができることが判る。
また、図2の結果から明らかなように、実施例1〜3におけるシート状電池のサイクル特性における勾配は、比較例1及び2における勾配に比較して緩やかであり、本発明では放電容量のサイクル特性を向上させることが判る。
更に、図3の結果から明らかなように、実施例1〜3におけるシート状電池は、比較例1で見られたポリマー電解質と電極間の剥離による容量劣化や比較例2で見られる電解質ポリマーの溶解に起因する短絡が起きていないため、高温下でのサイクル特性が良好であることがわかる。
【0018】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ゲル状ポリマーマトリックスに閉じ込められ独立した多数の孔がマトリックスの全体にわたって略均一に形成され、その孔の内部に気体又は気体と電解液を満たしたので、孔に満たされた気体は、電極のイオンの充放電に伴う体積変化に伴う内圧変化や、シート電池を湾曲させたとき等の外部から圧力を受けたときに発生する応力を緩和させ、ポリマー電解質と正極又は負極シートの剥離を防ぐので、従来の高分子固体電解質に比較して、充放電サイクル特性を向上することができる。
また、径が5〜20μmの孔をゲル状ポリマーマトリックスに0.1〜30体積%の割合で分布させれば、充放電サイクル特性を向上させることができ、孔に0〜30体積%の電解液21と70〜100体積%の気体で満たせば、その電解液は、その孔から漏れ出すことなくイオンを伝導させるので、従来の固体高分子固体電解質に比較してイオン伝導度が向上し、内部抵抗を減ずることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電解質を用いたシート状電池の縦断面図。
【図2】実施例におけるシート状電池の25℃における放電容量のサイクル特性を示す図。
【図3】実施例におけるシート状電池の70℃における放電容量のサイクル特性を示す図。
【符号の説明】
10 シート状電池
12 正極シート
13 ゲル状ポリマー電解質
14 負極シート
21 電解液
22 孔
23 気体
Claims (2)
- 電解液 (21) と前記電解液 (21) を含ませるフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなるゲル状ポリマーマトリックスとを有し、シート状電池(10)の正極シート(12)及び負極シート(14)の間に介在するゲル状ポリマー電解質(13)であって、
前記ゲル状ポリマーマトリックスに閉じ込められ独立した多数の孔(22)が前記マトリックスの全体にわたって略均一に形成され
前記孔(22)の内部に前記電解液 (21) が0〜30体積%と気体 (23) が70〜100体積%満たされた
ことを特徴とするシート状電池用ゲル状ポリマー電解質。 - 孔(22)の径が5〜20μmであり、前記孔(22)がゲル状ポリマーマトリックスに0.1〜30体積%の割合で分布する請求項1記載のシート状電池用ゲル状ポリマー電解質。
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