JP4013331B2 - 金型の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,例えば薄肉のハニカム構造体成形用金型等の極狭い幅のスリット溝を有する金型を製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば自動車等の排気ガス浄化用コンバータにおける触媒担体としては,後述する図9に示すごときハニカム構造体8が用いられている。このハニカム構造体8は,図10に示すごとく,格子状に形成されたセル壁81によって多数のセル82を有している。
【0003】
かかるハニカム構造体8の製造は押出成形により行う。このとき用いる成形ダイスは,後述する図5,図6に示すごとく,ハニカム構造体成形用の金型1を主体として,これにガイドリング6等を組み合わせて構成される。
また,ハニカム構造体成形用の金型1は,図5〜図8に示すごとく,材料を受ける側の面に材料供給用の供給穴4を有するとともに,その反対側面の押し出し面18には格子状のスリット溝2を有している。またスリット溝2はその格子点において各供給穴4と連通するよう配置されている。
【0004】
そして,押出成形時には,図6に示すごとく,金型1の供給穴4側から材料88を供給し,押し出し面18のスリット溝2からハニカム構造体8を連続的に押出す。押出されたハニカム構造体8は,適当な長さに順次切断され,その後乾燥することにより製品化される。
【0005】
次に,上記押出成形に用いる金型1の従来の製造方法につき説明する。
まず,図13(a)に示すごとく,金型1の材料となる金型素材90を準備する。この金型素材90は,同図に示すごとく,スリット溝を形成すべき溝形成面91を突出させた状態で予め設けてある。この溝形成面91は,この段階では四角い外形形状を有している。
【0006】
次いで,図13(b)に示すごとく,金型素材90における溝形成面91と反対側の面から供給穴4をドリル,又は放電加工,電解加工等により設ける。
次いで,図13(c)に示すごとく,金型素材90の溝形成面91にスリット溝を設ける。
次いで,溝形成面91の四角い外形形状を円形状に削って,図5に示すごとく円形状の押し出し面18を有するハニカム構造体成形用金型1を得る。
【0007】
ここで,上記スリット溝2を形成するに当たっては,図14に示すごとく,円形薄刃砥石7を用い,これを回転させながら溝形成面91に対して平行に相対移動させて溝形成面91を研削することにより行う。そして,その作業を,スリット溝の数だけ縦横に複数回繰り返すことにより,格子状のスリット溝2を得ることができる。
【0008】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来のハニカム構造体成形用金型1の製造方法においては次の問題がある。
即ち,近年のハニカム構造体8に求められている薄肉化傾向に伴い,ハニカム構造体成形用金型1のスリット溝2の溝幅は,非常に狭い幅に設ける必要が出てきた。そのため,溝幅に直接影響する研削用の円形薄刃砥石7としては,その厚みが150μm以下という非常に薄いものを選定する必要がある。
【0009】
厚みが150μm以下の円形薄刃砥石7を用いた場合には,それ以上の厚みを有する場合には発生しなかった新たな加工上の問題が生ずるようになった。即ち,上記スリット溝2を形成する工程において,円形薄刃砥石7がその交換寿命に達する前に早期に破損するということが頻発するようになった。そのため,円形薄刃砥石7の交換回数の増加等により,生産能率の大幅な低下,コストアップを招くようになった。
【0010】
この原因は,次のように考えられる。
即ち,円形薄刃砥石7を150μm以下の厚みにした場合には,その厚み方向の剛性が極めて低くなる。そのため,研削時に砥石先端に左右から作用する抵抗がわずかでもバランスを崩した場合には,研削部分における円形薄刃砥石7が一方に反ってしまい,その変形状態が維持されたまま研削が進められる。
【0011】
このとき得られるスリット溝2は,図15に示すごとく,円形薄刃砥石7の機械軸の進行軌跡79に対して,円形薄刃砥石7の変形した分だけ蛇行した状態で形成されていく。そして,円形薄刃砥石7が前進し,溝形成面91の終端部に達したときには,変形状態に拘束されていた円形薄刃砥石7が一気に解放され,変形状態から正常な状態に一気に戻ろうとする。
これにより,スリット溝2の終端部は図13に示すごとく一方にラッパ状に開いた状態で研削されると共に,円形薄刃砥石7自体には強い側面方向の応力が集中的に作用し,ついには破損してしまう。
【0012】
このような問題に対しては,円形薄刃砥石7の蛇行を防止する対策をとることが最も有効と考えられる。しかしながら,現状においては,円形薄刃砥石7の剛性の低さをカバーできる有効な蛇行対策をとることは非常に困難である。そのため,たとえ円形薄刃砥石7が蛇行しても,これが破損することを防止することができる対策方法の開発が望まれていた。
【0013】
このような問題は,上記のハニカム構造体成形用金型だけに限られず,薄壁を有する種々の成形体(セラミック成形体,樹脂成形体等)を成形するための金型についても同様に生ずる。
【0014】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,150μm以下の厚みの円形薄刃砥石を用いても,これが破損することなくスムーズにスリット溝を形成することができる,金型の製造方法を提供しようとするものである。
【0015】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,溝幅が150μm以下のスリット溝を有する金型を製造する方法において,
上記スリット溝の形成は,150μm以下の厚みを有する円形薄刃砥石を用いて該円形薄刃砥石を回転させながら金型の溝形成面を研削することにより行い,
かつ,該溝形成面における上記円形薄刃砥石の進行方向の終端部には,徐々に薄肉化した除変肉厚部を予め設けてあることを特徴とする金型の製造方法にある。
【0016】
本発明において最も注目すべきことは,上記金型の溝形成面における上記終端部には,上記除変肉厚部を設けたことである。
該除変肉厚部は,上記のごとく徐々に薄肉化した形状を有しており,後述するごとく種々の具体的形状をとることができる。
【0017】
また上記金型の溝形成面は,スリット溝の溝深さよりも大きい厚みを有する部分であり,従来のように金型本体から突出させて設けてもよいし,金型全体の表面を溝形成面としてもよい。そして,溝形成面の上記終端部に設ける上記除変肉厚部としては,上記円形薄刃砥石の進行方向に沿って徐々に厚みが小さくなるように設ける。
【0018】
また,スリット溝を形成するには,上記のごとく円形薄刃砥石を用いて行う。具体的には,円形薄刃砥石を回転させながらその外周端部を溝形成面に当て,これを回転軸に直角の方向に移動させる。これにより,溝形成面が研削されてスリット溝が得られる。
【0019】
また,上記円形薄刃砥石としては,上記のごとく150μm以下の厚みを有するものを用いる。この厚みは,得ようとするスリット溝の溝幅に応じて選定する。
【0020】
また,円形薄刃砥石は,周知のごとく,砥粒を結合材により薄い円盤状に固めて作製したものである。この砥粒としては,例えば,ダイヤモンド,CBN(カーボンボロンニトライド)等種々のものを採用することができる。
なお,金型における供給穴の形成等の他の加工工程としては,従来と同様の方法により行うことができる。また,上記除変肉厚部は,通常は,前述した従来例と同様に金型の押出し面を円形状に成形する際に除去されるため,他の加工工程に影響を与えることはほとんどない。
【0021】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明においては,スリット溝を形成すべき金型の溝形成面に上記除変肉厚部を予め設けておく。そのため,スリット溝の形成工程においては,従来のように円形薄刃砥石を破損させるというトラブルを発生させることなくスムーズにスリット溝を形成することができる。
【0022】
即ち,円形薄刃砥石はその厚みが150μm以下と非常に薄いので,剛性が非常に低い。そのため,溝加工時においては,従来と同様に微妙な抵抗バランスの狂いによってどうしても円形薄刃砥石の蛇行が生じてしまう。そして,従来であれば,溝形成面の上記終端部を円形薄刃砥石が抜け出た時点で円形薄刃砥石の破損が頻発する。
【0023】
この点において,本発明においては,上記のごとく溝形成面の終端部に除変肉厚部を設けてある。そのため,円形薄刃砥石の研削が進行して溝形成面の終端部を通過する際には,上記除変肉厚部の存在によって,円形薄刃砥石の切削軌跡が正常な中央位置に徐々に修正される。
【0024】
即ち,除変肉厚部においては,その厚みが徐々に減少する。そのため,円形薄刃砥石によって除変肉厚部に形成されるスリット溝の深さも徐々に減少する。これにより,円形薄刃砥石を蛇行方向に拘束していた拘束力は,除変肉厚部の厚みの減少に伴って徐々に減少する。それ故,円形薄刃砥石は,自ら有している剛性による復元力が上記拘束力を上回るようになり,徐々に変形状態を自己修正していく。
【0025】
そして,円形薄刃砥石が除変肉厚部を抜け出る際には,円形薄刃砥石がほぼ正常な形状に修正された状態となる。そのため,円形薄刃砥石には,従来のように上記終端部を抜け出る際に集中的な応力がかかることがない。それ故円形薄刃砥石の破損は確実に防止することができる。
【0026】
したがって,本発明によれば,150μm以下の厚みの円形薄刃砥石を用いても,これが破損することなくスムーズにスリット溝を形成することができる,金型の製造方法を提供することができる。
【0027】
次に,請求項2の発明のように,上記除変肉厚部はテーパ状の形状を有していることが好ましい。これにより,上記除変肉厚部の形成を容易に行うことができる。
また,請求項3の発明のように上記テーパ状の形状の傾斜角度は,水平面に対して18度以下であることが好ましい。18度を超える場合には,円形薄刃砥石の研削軌跡の修正効果が十分に発揮されないという問題がある。一方,あまり角度が小さすぎると除変肉厚部の必要長さが長くなって,金型自体が大きくなりすぎるという問題があるため,10度以上であることが好ましい。
【0028】
また,請求項4の発明のように,上記除変肉厚部は,階段状,円弧状,傾斜面状のいずれかの形状を有するように設けることもできる。いずれの形状を選択した場合にも,少なくとも徐々に薄肉化した形状とすることにより,上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0029】
また,上記製造方法により作製する金型としては,種々の成形品成形用の金型を適用できる。そして,請求項5の発明のように,上記金型としては,材料供給用の供給穴と,該供給穴に連通して格子状に設けられ材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とを有するハニカム構造体成形用金型を適用することができる。この場合には,多数のスリット溝を上記のごとくスムーズに加工することができ,ハニカム構造体成形用金型の製造を従来よりも効率的に行うことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
実施形態例1
本発明の実施形態例にかかる金型の製造方法につき,図1〜図10を用いて説明する。
本例の製造方法は,図5〜図8に示すごとく,材料供給用の供給穴4と,該供給穴4に連通して格子状に設けられ材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝2とを有するハニカム構造体成形用金型1を製造する方法である。
【0031】
スリット溝2の形成は,150μm以下の厚みを有する円形薄刃砥石7を用いて該円形薄刃砥石7を回転させながら金型1(金型素材10)の溝形成面11を研削することにより行う。
かつ,溝形成面11における円形薄刃砥石7の進行方向の終端部には,徐々に薄肉化した除変肉厚部15を予め設けてある。
【0032】
また,本例において製造する金型1は,図9,図10に示すごとく,セル82を構成するセル壁81の厚みKが例えば100μmという非常に薄肉化されたハニカム構造体8を押出成形するためのものである。したがって,スリット溝2の溝幅は,105〜110μmにする必要がある。このため,上記円形薄刃砥石7としては,100μmの厚みのものを用いる。
【0033】
以下,ハニカム構造体成形用金型1の製造方法を詳説する。
まず,図4に示すごとく,金型1の素材としては,SKD61鋼板よりなるなる金型素材10を準備する。この金型素材10には,突出した溝形成面11を予め切削加工により設けてある。
【0034】
溝形成面11は,図4に示すごとく,その外形形状を正方形に仕上げてあると共に,その端部2辺にはテーパ状の除変肉厚部15を設けてある。
また溝形成面11は,金型素材10の本体部から2.7mm厚みTだけ突出した状態で設けてある。そして,上記2辺におけるテーパ状の除変肉厚部15は,いずれも水平面に対して15度の傾斜角度をもって徐々に薄肉化するよう設けてある。
【0035】
次に,上記金型素材10に対して供給穴4(図8)を設ける。これは,前述した図13(b)に示すごとく,溝形成面11の反対面からドリルにより成形する供給穴4は,図7,図8に示すごとく,後に設けるスリット溝2の格子点に位置するよう設けると共に,その深さは上記溝形成面11の底部に若干侵入する程度に止める。
【0036】
次に,図1〜図3に示すごとく,溝形成面11にスリット溝2を設ける。スリット溝2は,図4(a)に示すごとく,溝形成面11に対して矢印A方向に多数設けた後,矢印B方向に多数設けて格子状に形成する。
各スリット溝2を形成するに当たっては,図1,図2に示すごとく,工作台上にセットした金型素材10の溝形成面11に円形薄刃砥石7を回転させながら当接させ,これをスリット溝形成方向に移動させる。なお,円形薄刃砥石7の当接深さは,溝深さが約2.4mmとなるように調整した。また,円形薄刃砥石7は,除変肉厚部15が加工の終端となる方向に移動させた。
【0037】
円形薄刃砥石7の移動過程においては,図3に示すごとく,直進する機械軸の移動軌跡79に対して若干蛇行した状態でスリット溝2が研削されていく。この研削途中における蛇行現象に関しては,従来と同様に発生する。これは,その原因が,円形薄刃砥石7の薄肉化に起因する剛性の低下にあるからである。
しかしながら,本例においては,上記の蛇行状態が最終的に修正された。
【0038】
即ち,図3に示すごとく,円形薄刃砥石7は,溝形成面11の除変肉厚部15に侵入した時点において徐々に蛇行修正を開始し,溝形成面11を抜け出る段階においては略中央に復帰した。また,溝形成面11を抜け出る際においては,円形薄刃砥石7に対して衝撃的な応力が作用することがなく,円形薄刃砥石7には何ら損傷が与えられなかった。
【0039】
そして,このような各スリット溝2の形成を,溝形成面11に対して矢印A方向,B方向に順次100本ずつ行った。その後においても,円形薄刃砥石7は健全な状態を維持しており,若干摩耗した程度であった。
このように,本例においては,溝形成面11に上記除変肉厚部15を予め設けることにより,150μm以下という非常に厚みが小さい低剛性の円形薄刃砥石7を用いても,円形薄刃砥石7を損傷させることなくスムーズにスリット溝2を形成することができた。
【0040】
なお,上記のごとくスリット溝2を格子状に設けた金型1には,図5に示すごとく,溝形成面11の外形を円状に成形する仕上げ加工を施す。これにより,上記溝形成面11における除変肉厚部15は完全に消失してしまい,金型1の機能その他に何ら影響を及ぼすことはない。
【0041】
実施形態例2
本例においては,図11に示すごとく,実施形態例1におけるテーパ状の除変肉厚部15に代えて,階段状の除変肉厚部25を予め金型素材10に設けた。その他は実施形態例1と同様である。
この場合においても実施形態例1と同様の効果が得られる。
また,同様に,図12に示すごとく円弧状の除変肉厚部35を適用した場合にも実施形態例1と同様の効果が得られる。
【0042】
なお,上記の実施形態例においてはハニカム構造体成形用金型の製造方法に本発明を適用した例を示したが,一般のセラミック成形品や樹脂成形品を成形するための金型を製造する場合においても,同様に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1における,スリット溝を形成している状態を示す説明図。
【図2】実施形態例1における,スリット溝形成時における円形薄刃砥石の進行方向を示す説明図。
【図3】実施形態例1における,スリット溝の研削軌跡を示す説明図。
【図4】実施形態例1における,金型素材の,(a)平面図,(b)正面図,(c)側面図。
【図5】実施形態例1における,金型の平面図。
【図6】実施形態例1における,金型の正面図。
【図7】図5における,金型の押出し面におけるC部の拡大図。
【図8】図7のD−D線矢視断面図。
【図9】実施形態例1における,ハニカム構造体の斜視図。
【図10】図9における,M部の拡大図。
【図11】実施形態例2における,階段状の除変肉厚部を示す説明図。
【図12】実施形態例2における,円弧状の除変肉厚部を示す説明図。
【図13】従来例における,金型の製造工程を示す説明図。
【図14】従来例における,スリット溝形成方法を示す説明図。
【図15】従来例における,スリット溝の研削軌跡を示す説明図。
【符号の説明】
1...金型,
10...金型素材,
11...溝形成面,
15,25,35...除変肉厚部,
2...スリット溝,
4...供給穴,
7...円形薄刃砥石,

Claims (5)

  1. 溝幅が150μm以下のスリット溝を有する金型を製造する方法において,
    上記スリット溝の形成は,150μm以下の厚みを有する円形薄刃砥石を用いて該円形薄刃砥石を回転させながら金型の溝形成面を研削することにより行い,
    かつ,該溝形成面における上記円形薄刃砥石の進行方向の終端部には,徐々に薄肉化した除変肉厚部を予め設けてあることを特徴とする金型の製造方法。
  2. 請求項1において,上記除変肉厚部はテーパ状の形状を有していることを特徴とする金型の製造方法。
  3. 請求項2において,上記テーパ状の形状の傾斜角度は,水平面に対して18度以下であることを特徴とする金型の製造方法。
  4. 請求項1において,上記除変肉厚部は,階段状,円弧状,傾斜面状のいずれかの形状を有していることを特徴とする金型の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において,上記金型は,材料供給用の供給穴と,該供給穴に連通して格子状に設けられ材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とを有するハニカム構造体成形用金型であることを特徴とする金型の製造方法。
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