JP4253865B2 - 金型の製造方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は,例えば薄肉のハニカム構造体成形用金型等の極狭い幅のスリット溝を有する金型を製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
例えば自動車等の排気ガス浄化用コンバータにおける触媒担体としては,後述する図9に示すごときハニカム構造体8が用いられている。このハニカム構造体8は,図10に示すごとく,格子状に形成されたセル壁81によって多数のセル82を有している。
【0003】
かかるハニカム構造体8の製造は押出成形により行う。このとき用いる成形ダイスは,後述する図5,図6に示すごとく,ハニカム構造体成形用の金型1を主体として,これにガイドリング19等を組み合わせて構成される。
ハニカム構造体成形用の金型1は,後述する図5〜図8に示すごとく,材料を受ける側の面に材料供給用の供給穴4を有するとともに,その反対側面の押出し面18には格子状のスリット溝2を有している。またスリット溝2はその格子点において各供給穴4と連通するよう配置されている。
【0004】
そして,押出成形時には,図6に示すごとく,金型1の供給穴4側から材料88を供給し,スリット溝2からハニカム構造体8を連続的に押出す。押出されたハニカム構造体8は,適当な長さに順次切断され,その後乾燥することにより製品化される。
【0005】
次に,上記押出成形に用いる金型1の従来の製造方法につき説明する。
まず,図11(a)に示すごとく,金型1の材料となる金型素材10を準備する。この金型素材10は,同図に示すごとく,スリット溝を形成すべき溝形成面11を突出させた状態で予め設けてある。この溝形成面11は,この段階では四角い外形形状を有している。
【0006】
次いで,図11(b)に示すごとく,金型素材10における溝形成面11と反対側の面(穴加工面)14から供給穴4をドリル又は,放電加工,電解加工等により設ける。
次いで,図11(c)に示すごとく,金型素材10の溝形成面11にスリット溝2を設ける。
次いで,溝形成面11の四角い外形形状を円形状に削って,図5に示すごとく円形状の押出し面18を有するハニカム構造体成形用金型1を得る。
【0007】
ここで,上記スリット溝2を形成するに当たっては,図12に示すごとく,円形薄刃砥石7を用い,これを回転させながら溝形成面11に対して平行に相対移動させて溝形成面11を研削することにより行う。そして,その作業を,スリット溝の数だけ縦横に複数回繰り返すことにより,格子状のスリット溝2を得ることができる。
【0008】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来のハニカム構造体成形用金型1の製造方法においては次の問題がある。
即ち,従来の製造方法においては,予め所定の深さまで供給穴4を設けた後,所定深さのスリット溝2を設けることにより,供給穴4とスリット溝2とを連通させていた。また,このスリット溝2の形成は,上記のごとく円形薄刃砥石7を用いて行い,この円形薄刃砥石7によって供給穴4の先端部を切り分けながら行う。
【0009】
一方,円形薄刃砥石7はその厚みが例えば150μm以下であり,非常に薄い。そのため,上記供給穴4の先端部を切り分ける際に左右からの抵抗のバランスが狂った場合には,円形薄刃砥石7自身が一方に反って蛇行しながら研削が行われる。
【0010】
この場合には,円形薄刃砥石7が破損したり,さらに金型素材10に損傷が与えられるという問題が生じる。また,スリット溝2の蛇行が激しい場合には,隣り合うスリット溝2との間隔にばらつきが生じ,成形するハニカム構造体の精度に悪影響を及ぼす。
【0011】
これに対し,スリット溝2を先に設けて後から供給穴4を形成する方法をとることも考えられる。しかしながら,この場合には,供給穴4の先端部のスリット溝との連通部分において,スリット溝2の内側に突出する加工ダレ,バリ等が生じてしまう。また,これらのダレ,バリ等は,その後に取り除くことが困難である。それ故,このような単なる加工順序の入れ替えでは上記問題に対する十分な対策とすることはできない。
【0012】
また,例えば特開昭58−217308号公報に示されているごとく,スリット溝形成部分と供給穴形成部分をそれぞれ別体の金属プレートから作製し,その後両者を接合する方法により対策することも考えられる。しかしながら,この場合には,加工工数が倍増し,製造コストの大幅な上昇を招いてしまう。
【0013】
このような問題は,上記のハニカム構造体成形用金型だけに限られず,薄壁を有する種々の成形体(セラミック成形体,樹脂成形体等)を成形するための金型についても同様に生ずる。
【0014】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,得られる供給穴とスリット溝との連通部分の健全性を維持しつつ,スリット溝の蛇行を確実に防止することができる,金型の製造方法を提供しようとするものである。
【0015】
【課題の解決手段】
請求項1の発明は,材料供給用の供給穴と,該供給穴に連通して設けられたスリット溝とを1枚の金型素材に設けて形成してなる金型を製造する方法において,
上記スリット溝を形成する溝形成面と上記供給穴を設ける穴加工面とを表裏に有する金型素材を準備し,
該金型素材の上記溝形成面に厚みが150μm以下の円形薄刃砥石を回転させながら当接させて移動させることにより上記スリット溝を設けると共に,
上記穴加工面にドリル加工を施して上記供給穴よりも短い浅穴を設け,
上記スリット溝と上記浅穴を形成した後に,該浅穴の先端部を除去する非接触加工を行うことにより上記浅穴を長くして上記供給穴を形成することを特徴とする金型の製造方法にある。
【0016】
本発明において最も注目すべきことは,該金型素材に上記スリット溝と上記浅穴を設け,次いで,該浅穴の先端部を除去する非接触加工を行うことである。即ち,上記供給穴は,2段階の工程により形成し,かつ第2段階の上記非接触加工によってスリット溝と十分に連通した供給穴を完成させることである。
【0017】
上記金型素材への浅穴の加工は,例えばドリル加工により行うことができる。このとき,浅穴は,その長さを供給穴の所望長さより若干短く設ける。即ち,上記浅穴は供給穴の穴深さを若干浅くしたものである。
【0018】
一方,金型素材に対しては,その溝形成面にスリット溝を設ける。このスリット溝の形成は,従来と同様に例えば円形薄刃砥石を用いた研削により行う。
なお,浅穴の形成とスリット溝の形成の順序は特に問わない。ただし,スリット溝形成前に金型素材の焼入れ硬化処理等を施す場合には,浅穴形成後スリット溝を形成する方が好ましい。
【0019】
また,上記非接触加工は,上記浅穴とスリット溝の形成が完了した後に行う。ここでいう非接触加工は,研削加工や切削加工のように工具を直接金型素材に接触させて行う加工方法を除いた加工方法を指す。具体的には,後述する電解加工,放電加工等のように,化学反応,熱的作用等によって加工部分を除去する種々の方法がある。
【0020】
次に,本発明の作用効果につき説明する。
本発明においては,まず上記金型素材に対して上記浅穴及びスリット溝を設け,その後に上記非接触加工を施して供給穴を完成させる。そのため,スリット溝は,従来のような蛇行を発生させることなく,精度良く設けることができる。
【0021】
即ち,浅穴よりも先にスリット溝を設ける場合には,無垢の状態の金型素材を研削するため,研削時に従来のように供給穴の先端部を切り分けるという作業がない。そのため,円形薄刃砥石等の研削工具が偏った抵抗を受けることがなく,ほとんど蛇行せず真っ直ぐにスリット溝を形成することができる。
【0022】
また,浅穴を先に設けてその後スリット溝を設ける場合においては,上記浅穴が供給穴よりも短く設けられている。そのため,浅穴を後から設ける場合と同様に,円形薄刃砥石等の工具が一方向に偏った抵抗を受けるということがなく,ほとんど蛇行のない真っ直ぐなスリット溝を設けることができる。
このように,スリット溝形成時には従来のような蛇行が生じないので,その研削加工を行う円形薄刃砥石等の工具が破損したり,金型素材に損傷が与えられるということがない。
【0023】
また,上記供給穴は,上記非接触加工を行うことにより仕上げられる。この非接触加工は,上記のごとく,加工工具を金型素材に直接接触させずに,化学反応,熱的作用等を利用して行う。そのため,従来のドリル加工のように,供給穴とスリット溝とのラップ部分にダレやバリを発生させることなく浅穴の先端を除去加工することができる。
そのため,スリット溝と供給穴とのラップ部分,即ち連通部分は,非常に健全な状態で仕上げられる。
【0024】
したがって,本発明によれば,得られる供給穴とスリット溝との連通部分の健全性を維持しつつ,スリット溝の蛇行を確実に防止することができる,金型の製造方法を提供することができる。
【0025】
次に,請求項2の発明のように,上記非接触加工は,電解加工,放電加工,レーザー加工のいずれかにより行うことができる。このうち,特に電解加工によれば,準備した電極の数だけ一度に複数の浅穴に対して加工を施すことができるため,効率的に非接触加工を行うことができる。
【0026】
また,請求項3の発明のように,上記浅穴の長さは,上記供給穴の長さよりも0.05〜2.0mm短いことが好ましい。この長さの差が0.05mm未満の場合には,スリット加工時に浅穴とスリット溝とが比較的広い範囲でラップしてしまい,上記浅穴形成による効果が減少するという問題がある。一方,2.0mmを超える場合には,上記非接触加工の加工量が多くなり,生産効率が低下するという問題がある。
【0027】
また,上記製造方法により作製する金型としては,種々の成形品成形用の金型を適用できる。
そして,請求項4の発明のように,上記金型としては,材料供給用の供給穴と,該供給穴に連通して格子状に設けられ材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とを有するハニカム構造体成形用金型を適用することができる。この場合には,多数のスリット溝を上記のごとくスムーズに加工することができ,ハニカム構造体成形用金型の製造を従来よりも効率的に行うことができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
実施形態例
本発明の実施形態例にかかる金型の製造方法につき,図1〜図10を用いて説明する。
本例の製造方法は,図5〜図8に示すごとく,材料供給用の供給穴4と,該供給穴4に連通して格子状に設けられ材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝2とを有するハニカム構造体成形用金型1を製造する方法である。
【0029】
まずスリット溝2を形成する溝形成面11と供給穴4を設ける穴加工面14とを表裏に有する金型素材10を準備する。そして,金型素材10にスリット溝2を設けると共に,供給穴4よりも短い浅穴40を設ける。
次いで,浅穴40の先端部41を除去する非接触加工を行うことにより浅穴40を長くして供給穴7を形成する。
【0030】
また,本例において製造する金型1は,図9,図10に示すごとく,セル82を構成するセル壁81の厚みKが例えば100μmという非常に薄肉化されたハニカム構造体8を押出成形するためのものである。したがって,スリット溝2の溝幅は,105〜110μmにする必要がある。このため,上記円形薄刃砥石7としては,100μmの厚みのものを用いる。
【0031】
以下,ハニカム構造体成形用金型1の製造方法を詳説する。
まず,前述した図11(a)に示すごとく,金型素材10としては,SKD61よりなる鋼板を準備する。この金型素材10には,突出した溝形成面11を予め切削加工により設けてある。溝形成面11は,その外形形状を正方形に仕上げてあると共に,本体部から2.7mm厚みTだけ突出した状態で設けてある。
【0032】
次に,図2に示すごとく,上記金型素材10の上記溝形成面11に対して直径1mmの浅穴40を設ける。これは,図11(b)と同様に,溝形成面11の反対面の穴加工面14からドリル加工を行うことにより設ける。また浅穴40は,後に設けるスリット溝2の格子点に位置するよう設けると共に,その深さは最終的に得ようとする供給穴4よりも例えば1.0mm浅く設ける。
【0033】
次に,図3及び図11(c)に示すごとく,溝形成面11にスリット溝2を設ける。
各スリット溝2を形成するに当たっては,前述した図12に示すごとく,工作台上にセットした金型素材10の溝形成面11に円形薄刃砥石7を回転させながら当接させ,これをスリット溝形成方向に移動させる。
【0034】
なお,円形薄刃砥石7の当接深さは,溝深さが約2.4mmとなるように調整した。そのため,スリット溝2形成後においては,図3に示すごとくスリット溝2と浅穴40とが連通することなく互い独立した状態で設けられる。
それ故,上記スリット溝2は,浅穴40の存在に影響されることなく,蛇行せずに直線的に設けられる。
また,スリット溝2は,図11(c)に示すごとく,溝形成面11に対して矢印A方向,B方向に順次形成して格子状とした。
【0035】
次に,図1に示すごとく,浅穴40の先端部に対して非接触加工としての電解加工を施した。
具体的には,まず図1に示すごとく,浅穴40よりも小さい径を有するパイプ電極61を準備する。このパイプ電極61は,タングステン製のパイプにテフロンコートしたものであり,その内部に電解液59を噴出するための内孔を有している。
【0036】
次いで,パイプ電極61を浅穴40内に挿入する。このとき,パイプ電極61の先端611と浅穴40の先端部401との間には一定の距離をおく。次いで,パイプ電極61と金型素材10との間に電圧をかけると共に,電解液69をパイプ電極61から浅穴40の先端部401に向けて吹き出させる。その結果,浅穴40の先端部401には徐々に溶解除去されていき。その先端部401の位置は徐々に前進していく。また,パイプ電極61は,浅穴40の先端部401の溶解の進行に伴って徐々に前進させる。
【0037】
なお,このときの電解液69としてはNaCl水溶液(NaNO3 水溶液に代えてもよい)を用いているため,金型素材10との反応は次のように行われる。
【0038】
そして,図1に示すごとく,浅穴40の先端位置がSからFに移動した時点で電解加工を終了する。
これにより,浅穴40は,スリット溝2と十分に連通した状態の供給穴4に仕上げられる。また,この供給穴4とスリット溝2との連通部分は,ダレやバリのない健全な状態で仕上げることができる。
それ故,本例によれば,上記浅穴40とスリット溝2を設けた後上記電解加工を施すことにより,供給穴とスリット溝との連通部分の健全性を維持しつつ,スリット溝の蛇行を確実に防止することができる。
【0039】
なお,上記の浅穴40とスリット溝2の加工順序は,これを入れ替えてスリット溝2の加工を先に行ってもよい。
即ち,図4に示すごとく,まず金型素材に対して実施形態例1と同様にしてスリット溝2を格子状に設け,その後,浅穴40を設けてもよい。この場合にも,図3に示すごとく,浅穴40とスリット溝2とを未貫通の状態で形成され,その後の非接触加工によって供給穴4を完成させることができる。それ故,この場合においても,上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
なお,上記実施形態例においては,浅穴40とスリット溝2とが全くオーバーラップしない状態に設けた。しかし,必ずしもこれに限定する必要はなく,加工ダレや,バリの発生がない程度であれば,浅穴40とスリット溝2とは,多少オーバーラップさせて設けてもよい。具体的には,0.2mm以下程度のオーバーラップならば問題は生じない。
【0041】
また,上記の実施形態例においてはハニカム構造体成形用金型の製造方法に本発明を適用した例を示したが,一般のセラミック成形品や樹脂成形品を成形するための金型を製造する場合においても,同様に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例における,非接触加工を示す説明図。
【図2】実施形態例における,浅穴を設けた状態を示す斜視図。
【図3】実施形態例における,スリット溝を設けた状態を示す説明図。
【図4】実施形態例における,スリット溝を先に設ける例を示す説明図。
【図5】実施形態例における,金型の平面図。
【図6】実施形態例における,金型の正面図。
【図7】図5における,金型の押出し面におけるD部の拡大図。
【図8】図7のC−C線矢視断面図。
【図9】実施形態例における,ハニカム構造体の斜視図。
【図10】図9における,M部の拡大図。
【図11】従来例における,金型の製造工程を示す説明図。
【図12】従来例における,スリット溝形成方法を示す説明図。
【符号の説明】
1...金型,
10...金型素材,
11...溝形成面,
2...スリット溝,
4...供給穴,
40...浅穴,
401...先端部,
61...パイプ電極,
69...電解液,
Claims (5)
- 材料供給用の供給穴と,該供給穴に連通して設けられたスリット溝とを1枚の金型素材に設けて形成してなる金型を製造する方法において,
上記スリット溝を形成する溝形成面と上記供給穴を設ける穴加工面とを表裏に有する金型素材を準備し,
該金型素材の上記溝形成面に厚みが150μm以下の円形薄刃砥石を回転させながら当接させて移動させることにより上記スリット溝を設けると共に,
上記穴加工面にドリル加工を施して上記供給穴よりも短い浅穴を設け,
上記スリット溝と上記浅穴を形成した後に,該浅穴の先端部を除去する非接触加工を行うことにより上記浅穴を長くして上記供給穴を形成することを特徴とする金型の製造方法。 - 請求項1において,上記非接触加工は,電解加工,放電加工,レーザー加工のいずれかにより行うことを特徴とする金型の製造方法。
- 請求項1又は2において,上記浅穴の長さは,上記供給穴の長さよりも0.05〜2.0mm短いことを特徴とする金型の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項において,上記金型は,材料供給用の供給穴と,該供給穴に連通して格子状に設けられ材料をハニカム形状に成形するためのスリット溝とを有するハニカム構造体成形用金型であることを特徴とする金型の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項において,上記スリット溝形成前に上記浅穴形成を行い,次いで上記金型素材の硬化処理を行った後に上記スリット溝の形成を行うことを特徴とする金型の製造方法。
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