JP4012455B2 - ポリマーフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリマーフィルム及びその製造方法に関するものであり、特に偏光板等を構成する偏光膜保護フィルムや写真感光材料などに用いられるポリマーフィルムとその製造方法としての溶液製膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学分野に使用されるポリマーフィルムには、溶液製膜方法によって製造されているものが多くある。中でも、セルロースアシレートフィルムは、透明性、適度な透湿性を有し、機械的強度が大きく、かつ、寸法安定性の湿度及び温度に対する依存性が低いことから、広く用いられているもののひとつである。溶液製膜方法はセルロースアシレート等のポリマー及び各種添加剤を溶媒によってドープにしたあと、このドープをダイから支持体へ流延し、自己支持性をもったところで剥ぎ取って、乾燥工程を経てフィルムを得るものである。支持体は連続して回転走行するドラムあるいはバンドとされている。
【0003】
ポリマーや添加剤を溶媒に単純に溶解しただけのドープには、不純物やゲル状物が溶解しないまま混在していることが多い。したがって、この状態で流延して製膜すると、これらの不溶物がフィルム中に異物として混入し、フィルムの面状故障等を引き起こし、商品価値が下がったり、あるいは使用に耐えないものになってしまうこともある。そのため、流延前には濾過を実施し、必要に応じてこれを複数回実施することが一般的となっている。
【0004】
フィルタとしては、ドープの性状やその要求特性に応じて様々なものが用いられており、濾布や濾紙、金属メッシュ、金属繊維、不織布等が一般的となっている。また、液晶表示装置等のように異物の混入に対してきわめて厳しい基準が設けられる用途とされるドープにおいては、複数の濾過装置を直列に設置して、複段濾過により濾液性状を向上させることが多い。
【0005】
濾過装置は、通常製膜工程と接続され、連続した一環工程の一部とされている。したがって、その機構上、フィルタはふつう連続製膜中に閉塞しはじめ、その閉塞がある程度まで進むと濾過装置における圧力損失が過大になってしまい、工程内のいずれかの装置にその負荷がかかり支障をきたすことがある。これを防止するために、フィルタの交換を実施するが、連続製膜を行うために、濾過装置を並列に複数設置しておき、使用に供する装置とフィルタ交換を行う装置とを交互に切り替えることが多い。
【0006】
閉塞したフィルタは、廃棄される場合と、洗浄または再生等により再使用される場合がある。濾紙や濾布の場合は、洗浄による再使用が困難であるので、付着したドープを除去するか、あるいは、除去せずに乾燥させてから、廃棄されることが一般的である。しかし、近年の環境問題対策の一環として産業廃棄物の削減が求められており、上記のような使い捨ては好ましくないとされ、再生使用が可能な金属製フィルタが好ましく使われるようになってきた。
【0007】
金属製フィルタは、各種金属を繊維状等にして、これを各種の形状に整えたものであって、焼結処理によりその強度を高められたものが広く流通している。濾過使用により閉塞した金属製フィルタは、洗浄を施されるか、あるいは、洗浄後に焙焼処理を施されることにより、再使用が可能となる。焙焼処理とは、処理対象物を数百℃の雰囲気化で熱処理し、付着している異物等を燃焼除去する操作をいう。再生処理方法としては、上記焙焼処理と併せて、アルカリ洗浄や超音波洗浄等を実施する方法もある。
【0008】
金属製フィルタの洗浄は、一般に、汚染されたフィルタが濾過装置に組み込まれた状態で、この装置に溶剤を循環させて、異物等の固形分を溶解させることにより除去されている。使用された溶剤は、フィルタを洗浄した濾過装置とは別の濾過装置により濾過され、取り込んだ固形分が常に除去されるので、洗浄されるべきフィルタの、溶剤による汚染を防ぐことができる方式とされている。溶剤の循環方向は、フィルタに関して濾過とは逆方向であって、二次側から一次側とされることが異物除去効果の点で好ましい方法とされている。また、このときの単位時間あたりの流量は大きいほど、効果が高い。
【0009】
また、洗浄する濾過装置内にはドープが残留している。そのため、ドープのロスが生じるとともに、濾過装置から抜き出したドープの溶媒成分の気化により、作業環境の点でも好ましくない。これに対応するため、残留したドープを、再度ドープ調製工程に戻して利用する方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
【特許文献1】
特開2000−273199号公報(第2−5頁)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、濾過装置の逆流洗浄に際しては、単位時間あたりの溶剤流量が大きすぎると、フィルタに対する逆流圧力が高すぎて、破損を招くことがある。これは、一般的なフィルタにおける逆流圧力の限界(以降、逆圧限界と称する。)が濾圧限界に対して極めて低いからである。そのため、逆流洗浄においては、用いるフィルタの逆圧限界を超えない範囲で、単位時間あたりの流量を大きくすることが好ましいものの、単位時間あたりの流量を保っても洗浄を継続している間にフィルタ孔の閉塞状態が変化することにより、逆流圧力が経時的に変化してしまうという問題がある。フィルタ孔の閉塞状態の変化には、洗浄による閉塞物除去の他、溶剤による希釈による粘度低下のものもある。
【0012】
また、特許文献1の方法によると、濾過装置に残留したドープのロスに対しては効果的であるが、濾過装置のフィルタ洗浄に関しては提案されていないという問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ドープを溶液製膜方法にて製膜する際に、製膜工程を連続で実施しながら、ドープを濾過するフィルタの閉塞を抑制、またはその再生度を高めることができるとともに、フィルタの破損を防止することが可能なポリマーフィルムの製造方法とその製造方法によるポリマーフィルムを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、互いに並列に接続された複数の濾過装置の少なくともひとつによってドープを濾過し、前記濾過装置に接続する送液路を循環させる溶剤で使用した前記濾過装置のフィルタを逆流洗浄し、濾過後の前記ドープを連続的に製膜するポリマーフィルム製造方法において、前記送液路を第一送液路とするとき、前記第一送液路の分岐路であって、前記濾過装置をバイパスする第二送液路に設けられた流量調節手段を用いて、前記濾過装置へ送液される前記溶剤の流量を調節することにより、前記フィルタに対する逆流の圧力をそのフィルタの逆圧限界以下に調節しながら前記フィルタを洗浄することを特徴として構成されている。
【0015】
また、前記フィルタを金属製フィルタとし、前記フィルタをオフラインにて焙焼処理することが好ましい。前記溶剤の流量については、これを、前記フィルタにてドープを濾過する際の流量の10倍以上とし、さらに、前記溶剤の総体積を、前記逆流洗浄前の前記濾過装置の内部に残留する前記ドープの体積の50倍以上とすることが好ましい。前記溶剤は、これを少なくとも1回交換して前記逆流洗浄を実施することがさらに好ましい。
【0016】
本発明においては、前記ドープが微細粒子を含有するポリマーフィルムの製造方法において、前記ドープの固形成分に対する前記微細粒子の重量比率を0.001%以上5%以下とすることを特徴としており、前記微細粒子の成分の少なくともひとつを、二酸化珪素を含むケイ素誘導体とすることが好ましい。さらに、前記ポリマーフィルムをセルロースアシレートフィルムとすることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態としての溶液製膜設備の概略図である。ドープ11aは第一供給元12から送られ、第一ストックタンク13に一時的に溜められる。このドープ11aは、第一定量ポンプP1により濾過装置F1に送られると、ここで濾過され、その後、連続走行する支持体としてのベルト14にダイ15から流延される。本実施形態においては、紫外線吸収剤液を第二供給元20から第二定量ポンプP2によりスタティックミキサ21に送ってドープ11aとインライン混合した。ドープ11aはベルト14の上で自己支持性をもったところで剥ぎ取られ、剥ぎ取りローラ24にてフィルム11bとして剥ぎ取られ、乾燥設備25によって乾燥される。乾燥設備25では、複数のローラ26により搬送されながら乾燥される。
【0019】
フィルム11bは、巻き取り直前の2つの搬送ローラ27,28の間に配置されたオンライン欠陥検出装置31により、混入した異物の数を数えられて、巻き取り軸32に巻き取られる。オンライン欠陥検出装置31の検出感度については、概ね30μm以上の異物を検出することができるものとしたが、目的とするドープの性状や製膜するフィルムの用途等に応じて適宜設定するとよい。
【0020】
また、支持体としては、ドラムを使用することもあるが、本実施形態において図示は省略する。さらに、乾燥設備25においては、テンター装置(図示なし)を設けて、フィルム11bの幅を規制または延伸して乾燥を施すこともある。なお、本発明は上記の製膜工程に依存するものではない。
【0021】
図2は、本発明を実施した溶液製膜における流延前の濾過工程を示す概略図である。この工程は、図1における第一供給元12に対応する。図2に示すように、本発明においては、ドープを攪拌するミキシングタンク41と、ミキシングタンク41からの送液を担う移送ポンプP3と、液を一時的に溜めておく第二及び第三のストックタンクT2,T3と、流量を調整しながら送液を担う4台の第4〜第7の定量ポンプP4〜P7と、第2〜第5の4台の濾過装置F2〜F5と、送液の経路となる管と、濾過装置を選択するためのバルブV1〜V4と、製膜工程へ接続する送液路を選択するためのバルブV11〜V14と、上流部にドープを戻す(以下、逆送と称する。)送液路を選択するためのバルブV21〜V24と、送液路を選択するためのバルブV31,V32、V41〜V46とを備えている。
【0022】
さらに、洗浄液となる溶剤のストックタンクT4と、前記溶剤を送液するための第一送液路L1と、ポンプP10と、溶剤の濾過装置F10と、濾過装置F4,F5をバイパスする第二送液路L2における送液量調整バルブV51と、ドープを抜くためのポンプP11と、濾過装置F4,5に対する圧縮空気の送入弁V52と、空気圧縮設備44と、圧力計G1〜G4とから構成されている。
【0023】
濾過装置F2,F3と濾過装置F4,F5とはドープ11aの送液方向に関して直列に設置されており、本実施形態においてはドープを2段階で濾過する方法となっている。また、濾過装置F2,F3は並列に設置されており、濾過に際しては、そのいずれか一方を用いるものとされている。なお、濾過装置F2,F3における濾過処理を第一段濾過処理と称するものとする。
【0024】
ミキシングタンク41と第二ストックタンクT2と第一段濾過処理工程の濾過装置F2,F3と第三ストックタンクは順次直列に配置されており、濾過装置F2,F3からの各送液路は、その合流点の上流位置に分岐路をそれぞれ有し、その分岐路によってドープを第二ストックタンクT2の上流位置に逆送することができる。なお、濾過装置F2,F3からの送液路に関し、第三ストックタンクT3に接続する側の送液路にはそれぞれバルブV11,V12を配し、逆送路である分岐路にはバルブV21,V22が配されてあって、これらの開閉によりドープの送液路を独立して切り替えることができる。
【0025】
また、第二ストックタンクT2からの送液路は分岐しており、一方の分岐路にはバルブV1と定量ポンプP4と濾過装置F2が,他方の分岐路にはバルブV2と定量ポンプP5と濾過装置F3が、それぞれ直列に接続されている。したがって、一方の濾過装置からはドープを逆送し、他方の濾過装置からのドープについては第三ストックタンクT3へ送ることができる。
【0026】
濾過装置F4,F5についても、同様に並列ラインとされ、いずれか一方を濾過使用対象とし、他方を逆送対象とすることができる。また、濾過装置F4,F5における濾過処理を、第二段濾過処理と称するものとする。
【0027】
第三ストックタンクT3と濾過装置F4,F5とは直列に接続されており、ここで濾過されたドープは図1に示す製膜工程へと送られる。第三ストックタンクT3からの送液路は分岐しており、一方の送液路ではバルブV3と定量ポンプP6とバルブV43と濾過装置F4が,他方の送液路ではバルブV4と定量ポンプP7とバルブV41と濾過装置F5が、それぞれ直列に接続されている。濾過装置F4,F5からの送液路は、それらの合流点の上流位置にそれぞれの分岐路をもち、その分岐路によってドープを第三ストックタンクT3に逆送させることができる。濾過装置F4,F5からの送液路に関し、製膜工程へ接続する送液路にはそれぞれバルブV13,V14を配し、逆送させる送液路にはバルブV23,V24が配されてあって、これらの開閉により送液を独立して切り替えることができる。逆送させるための2本の送液路は合流し、バルブV31を介して第三ストックタンクT3へ接続する。
【0028】
バルブV43と濾過装置F4の間、及びバルブV41と濾過装置F5の間の送液路は分岐しており、それぞれの送液路には経路を切り替えるためのバルブV44,V42と、これら分岐した送液路の合流点とバルブV46と、第四ストックタンクT4とが直列に接続されている。さらに、上記の分岐した送液路の合流点とバルブV46との間に分岐点を設けて、経路を選択するためのバルブV45と、濾過装置F4,F5の内部に残留したドープを抜き取るためのポンプP11と、第3ストックタンクT3とが直列に接続されている。
【0029】
第四ストックタンクT4からの送液路L1は、上記逆送路における逆送方向に関して、バルブV31の上流位置に接続されており溶媒の第一送液路となる。この送液路にはポンプP10と濾過装置F10とバルブV32が直列に配されている。また、濾過装置F10の出口側送液路には第四ストックタンクT4の上流側送液路に接続し、濾過装置をバイパスする第二送液路としての分岐路L2があって、ここには流量を調節するバルブV51が設けられている。なお、バルブV32とバルブV31の間に接続するラインは、空気圧縮設備44より圧縮空気を送り込むものであって、その送入量を調節するバルブV52がこれに備えられている。
【0030】
ここで、濾過装置F5をドープの濾過に使用し、濾過装置F4を濾材交換の対象とする。また、第一段の濾過処理については濾過装置F2を用いるものとする。
【0031】
ミキシングタンク41には攪拌羽(図示なし)が備えられており、ドープはここで攪拌された後、移送ポンプP3により第二ストックタンクT2に送られる。バルブV1を開状態とし、バルブV2を閉状態とすることによって、ドープは濾過装置F2にて濾過される。このときドープの送液量は定量ポンプP4によって調整することができる。したがって、単なる送液速度の調節のみならず、濾過装置F2のフィルタ孔の閉塞が進むにつれ高まる圧力負荷を調節することもできる。続いて、濾過装置F2で濾過されたドープは、バルブV11を開状態とし、バルブV12,V21を閉状態とすることにより、濾過装置F3の二次側に流入することなく第三ストックタンクT3に送られる。
【0032】
なお、濾過装置F3にて第一段濾過を実施する場合には、バルブV1を閉状態とし、バルブV2を開状態とすればよい。ドープの送液量は定量ポンプP5によって調整することができる。また、このとき、バルブV12を開状態とし、バルブV11,V22を閉状態とすることにより、ドープは、濾過装置F2の二次側に流入することなく第三ストックタンクT3に送られる。
【0033】
ストックタンクT3に一時的に滞留したドープを、濾過装置F5へ送るために、バルブV4,V41を開とし,バルブV3,V43は閉とする。さらに、バルブV14を開とし、バルブV24を閉とすることにより、この送液路を第一供給元(図1参照)として製膜工程に直接接続するか、または、オフラインとしてドープを貯蔵する。濾過装置F5のフィルタに対する圧力は、下流側及び上流側に配置された圧力計G1,G2により計測している。フィルタ孔の閉塞の進行により、圧力計G1,G2の指示値の差、すなわち濾圧が上昇するため、系の適正な濾圧範囲を超えない範囲で濾過装置F4,F5は交互に切り替えられて使用される。また、フィルタに送られる流量は、圧力計を、送液路の経路において設置箇所を適宜決定し、設置してこれで測定する方法や、ポンプの特性と回転数、及び、例えば概ね圧力計G2が示す値となるポンプ吐出圧とから求める方法等があるが、これらに限られるものではない。一般に、ポンプP6の型式としては、高精度ギアポンプ等の極めて定量性の高いものが選定され、使用されるが、この場合には、ポンプの回転数を一定に保つことでほぼ一定の流量を得ていると考えて実用上は問題ない場合が多い。
【0034】
一方、濾過装置F4では、溶剤の逆流によるフィルタの洗浄が実施される。フィルタは、濾過装置F5のフィルタと同じ仕様であって、金属製としている。濾圧が所定の圧力に上昇するまで使用を継続し、これを溶剤で洗浄する。溶剤は、第四ストックタンクT4からバルブV32,V23を開とし、バルブV31,V24,V13を閉として濾過装置F4を逆流洗浄する。洗浄に使用された溶剤は、バルブV44,V46を開とし、バルブV42,V43,V45を閉とすることにより、第四ストックタンクT4に戻される。以上の送液経路により溶剤は循環されるが、このときポンプP10によって送液されており、濾過装置F4に至る過程で、濾過装置F10により濾過される。この方法により、循環させて再び洗浄に使用する際に、洗浄に使用されて混入した異物を濾別しておくことができる。
【0035】
ポンプP10を運転開始するにあたり、バルブV51を予め開としておく。これにより、洗浄溶剤の大半はバイパス用送液路L2を通過して第四ストックタンクT4に戻る。これは、一般に、バイパス用送液路L2の流動抵抗は、フィルタにおける流動抵抗よりはるかに小さいためである。この操作を行うことにより、ポンプP10の運転開始に伴い濾過装置F4のフィルタに過大な逆圧をかけて破損させるということを防止することができる。この状態でバルブV51を徐々に閉状態とするように操作し、濾過装置F4のフィルタにかかる逆圧が所定の圧力となるようにバルブV51の開度を調節する。なお、ここで濾過装置F4のフィルタに対する逆圧は、圧力計G3,G4の指示値の差として認めることができる。
【0036】
洗浄が進むにつれ、濾過装置F4のフィルタにおける流動抵抗が下がることが通例であるので、このフィルタにかかる逆圧が常に所定の値となるように制御することが好ましい。また、所定の圧力とは、濾過装置F4に使用されるフィルタの逆圧限界を超えない範囲で任意に設定されうるが、洗浄効率を上げるためには、この範囲内のできるだけ大きな値とすることが好ましい。一方、一般に、洗浄は長時間にわたって実施されるために、バルブ開度操作による圧力制御は自動制御とされることが好ましく、そのためには制御誤差を考慮した余裕が必要である。以上のことを考慮すると、圧力制御設定値については、これを、濾過装置F4に使用しているフィルタの逆圧限界の0.5倍以上1.0倍以上とすることが好ましく、0.7倍以上0.9倍以下とすることがさらに好ましく、0.8倍以上0.9倍以下とすることが最も好ましい。
【0037】
このとき第四ストックタンクT4からポンプP10によって排出され、洗浄に供される溶剤の流量は、濾過装置F4を使用する際に通過するドープの濾過流量の10倍以上としている。これを15倍以上とすることがより好ましく、20倍以上とすることが最も好ましい。ここで、第四ストックタンクT4からポンプP10によって排出され、洗浄に供される溶剤の流量は、溶剤の送液路において流量計の設置位置を適宜決定して設置することにより、これを測定することができるが、ポンプの特性と吐出圧の値から求めることも可能である。
【0038】
第四ストックタンクT4には、図示は省略するが内部の溶剤を交換するための流入口及び流出口が設けられており、溶剤を交換したあと、再び同様の逆流洗浄を行う。溶剤交換及び逆流洗浄の実施回数は、特に限定されるものではないが、少なくとも1回は行うことが好ましい。2回以上5回以下とすることがさらに好ましく、3回以上5回以下とすることが最も好ましい。溶剤交換が5回を超えても、溶剤交換による洗浄性の向上効果に関して意義を見いだせないことが多い。
【0039】
洗浄に使用した溶媒の総体積が、洗浄前の濾過装置F4の内部に残留していたドープの残留体積に対し50倍以上200倍以下となることが好ましい。これにより、濾過装置F4の内部を、工業的に十分な程度にまで洗浄することができる。残留したドープの体積に対する洗浄溶媒の総体積は、さらに好ましくは100倍以上200倍以下である。200倍を超える体積を使用しても洗浄効率は上がらず、第四ストックタンクT4のサイズを大きくしなければならなかったり、大量の洗浄後溶剤を処理しなければならないことなどの不都合が生じる。
【0040】
濾過装置F10のフィルタの孔径は、洗浄されるフィルタの孔径よりも小さいことが好ましい。これにより、濾過装置F4の洗浄効果を高めることが可能となる。
【0041】
洗浄を終了した後、フィルタを濾過装置から取り外し、オフラインで再生処理を行うことができる。なお、この再生処理方法は、焙焼処理が一般的であり、これと併せて、アルカリ洗浄や超音波洗浄、水洗及び乾燥を実施してもよく、また、これらの方法に限定されない。本発明においては、オフラインでのこの再生処理を実施せず、溶剤洗浄したフィルタをそのまま再度使用に供することも可能である。この場合、完全に洗浄のみで除去することができない閉塞物があるため洗浄後のフィルタの初期圧は新品、もしくはオフラインで再生処理したフィルタに比べて高くなり、それにつれてフィルタの閉塞も早まる傾向となる。一般には、オフラインでの再生処理にかかる時間及びコストとのかねあいから、オフラインでの再生処理を実施せずに洗浄のみで数回使用に供し、しかる後にフィルタを取り外してオフラインでの再生処理を実施する場合が多いが、本発明は、オフラインでの再生処理に関して、その有無に依存するものではない。
【0042】
オフラインでの再生処理によって高温で酸化されても除去され得ない異物がある。この種の異物は、再生処理前の洗浄において除去することが必要であり、あるいは、オフライン再生処理で焙焼以外の水洗やアルカリ洗浄、超音波洗浄等により除去することが必要であるものである。このような異物には、例えば、ドープに含まれる微細粒子がある。これは、一般には、完成したフィルムの表面に適度な粗さをもたせ、滑り性を確保するために含有されるものであって、二酸化ケイ素や、酸化チタン、その他の各種公知のものが用いられるが、最も一般的に用いられているものは、二酸化ケイ素を代表とするケイ素化合物である。これらの含有量は、ドープの固形成分に対し0.001重量%以上5重量%以下の割合であることが一般的であって、微細粒子の含有量が、フィルムの5重量%を超えると、一般にはフィルムの透明性やヘイズ等が低下する。また、0.001重量%未満とすると、微細粒子の添加による滑り性の発現が不十分となる。これらの含有物が含有される系においては、焙焼前の洗浄が十分行われていることが必須であるために、特に本発明により、良好な洗浄が行われていることが有効である。
【0043】
ところで、本発明においては、濾過装置F4の洗浄に先だち、濾過装置F4に残存するドープをストックタンクT3に戻している。これにより、ドープの廃棄量を最小限に押さえるとともに、洗浄の効率化を図ることができる。具体的なドープの流出方法及びその経路は、以下の通りである。まず、送入バルブV52を開とし、濾過装置F4に至る送液路に設けられたバルブV23を開けて、圧縮空気を送り、濾過装置F4の二次側の圧力を高め、バルブV44,V45を開とし、バルブV46を閉とした状態で、濾過装置F4と第四ストックタンクT4との間の送液路から分岐して第三ストックタンクT3に至る送液路に設けたポンプP11により、残流ドープは第三ストックタンクT3に送られる。
【0044】
濾過装置F4の内部に残留したドープの大半が排出された後に、ポンプP11を停止し、バルブV45を閉とすることでドープの排出は終了する。内部に残留したドープの大半が排出されたことを検知する手段としてはいかなる方法を用いてもよく、例えば、濾過装置F4とポンプP11との間の任意の位置にガラス配管等の内部が見える部分を設けて目視で確認する方法や、圧力計G3,G4の圧力変化にて確認する方法などがあるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、予めテストを実施しておき、それによって、定められた排出時間を経過させることによって大半が排出されたとみなすことが可能である。
【0045】
排出されたドープの送液先は第三ストックタンクT3となっているが、原理的には、濾過装置F4の上流であればその任意の位置に戻してもよく、例えば第二ストックタンクT2やミキシングタンク41でもよい。特に、第一段濾過の上流に戻すことは、排出の際に発生したゲル状物等の異物を除去することができるので効果的である。
【0046】
また、濾過装置F4の内部を加圧する方法は、凝縮等が起こらない高圧気体であれば特に制限はなく、空気圧縮設備44から供給される圧縮空気の代わりに、ボンベ等から供給される高圧気体を用いることも可能である。例えば、ボンベから供給される窒素やヘリウム等の不活性ガスや、液体窒素タンクから供給される窒素ガス等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの高圧気体の供給路には、気体内に存在する塵埃等の異物や、オイルなどの混入を防止するために、フィルタの型式や設置位置を適宜選定し設置することが好ましい。
【0047】
以上の方法で、濾過装置F4のフィルタを逆流洗浄した後、再びこれを使用に供することができる。濾過装置F5での濾過処理の継続は、その濾圧が所定の値に達するまでとし、この圧力に達した時点で、濾過対象を濾下装置F4に切り替える。濾過装置F4のフィルタを逆流洗浄した後、使用に供するまでの間にこのフィルタを取り外して、焙焼等によるオフラインでの再生処理を実施することもできるし、オフラインでの再生処理を実施せずにそのまま使用に供することもできる。
【0048】
ストックタンクT3に一時的に滞留したドープを、濾過装置F5から濾過装置F4へ切り替えるために、バルブV3,V43を開とし、バルブV4,V41は閉とする。さらに、バルブV13を開とし、バルブV23を閉とすることにより、製膜工程に直接接続するか、または、オフラインとしてドープを貯蔵する。濾過装置F4のフィルタに対する圧力は、下流側及び上流側に配置された圧力計G3,G4により計測するが、前述のとおり、この計測方法に限られるものではない。
【0049】
一方、濾過装置F5の洗浄処理においては、溶剤は、第四ストックタンクT4からバルブV32,V24を開とし、バルブV31,V23,V14を閉として濾過装置F5の内部に送り込まれる。この洗浄に使用された溶剤は、バルブV42,V46を開とし、バルブV41,V45を閉とすることにより、第四ストックタンクT4に戻される。第四ストックタンクT4からはポンプP10によって送液されており、濾過装置F5に至る過程で、濾過装置F10により濾過される。
【0050】
溶剤洗浄を実施するための操作は、上記の濾過装置F4の洗浄の場合と基本的に同様である。つまり、ポンプP10を運転開始するにあたり、バルブV51を予め開とし、洗浄溶剤の大半をバイパス用送液路L2を通過させて第四ストックタンクT4に戻す。この操作を行うことにより、ポンプP10の運転開始に伴い濾過装置F5のフィルタに過大な逆圧をかけて破損させるということを防止することができる。この状態でバルブV51を徐々に閉状態とするように操作し、濾過装置F5のフィルタにかかる逆圧が所定の圧力となるようにバルブV51の開度を調節する。なお、ここで濾過装置F5のフィルタに対する逆圧は、圧力計G1,G2の指示値の差として認めることができる。
【0051】
濾過装置F5に対する洗浄における圧力設定については、濾過装置F4の場合と同様としてよい。さらに、洗浄のために供する溶剤についても、濾過装置F4の洗浄する場合と同様としてよい。つまり、溶剤は、濾過装置F5において濾過したドープの濾過流量の10倍以上の流量とするが、15倍以上とすることがより好ましく、20倍以上とすることが最も好ましい。また、溶剤を交換し、同様の洗浄を実施することが好ましく、溶剤交換及び逆流洗浄の実施回数は、特に限定されるものではないが、少なくとも1回は行うことが好ましい。2回以上5回以下とすることがさらに好ましく、3回以上5回以下とすることが最も好ましい。洗浄に使用する溶媒の体積についても同様であり、洗浄前の濾過装置F5の内部に残留していたドープの残留体積に対し50倍以上200倍以下の体積となることが好ましい。残留したドープの体積に対する洗浄溶媒の総体積は、さらに好ましくは100倍以上200倍以下である。また、濾過装置F5の逆流洗浄の流圧は、フィルタの逆圧限界の0.5倍以上1.0倍以上とすることが好ましく、0.7倍以上0.9倍以下とすることがさらに好ましく、0.8倍以上0.9倍以下とすることが最も好ましい。
【0052】
なお、濾過装置F5の洗浄の場合でも、洗浄処理に先だち、残留するドープをストックタンクT3に戻している。具体的には、送入バルブV52及びバルブV24を開けて圧縮空気を送り、濾過装置F5の二次側の圧力を高め、ポンプP11により、残留していたドープを第三ストックタンクT3に送る。このとき、バルブV45とバルブV42,V46については、圧縮空気がチャージされると同時に閉としている。また、濾過装置F5の内部に残留したドープが排出された後にポンプP11を停止し、バルブV45を閉とすることで、ドープの排出を終了する。
【0053】
洗浄を終了した後、フィルタを濾過装置から取り外し、オフラインで再生処理を行う。再生処理方法は、前記の濾過装置F4の場合と同様であるので説明を省略する。再生処理を行った後、これを濾過装置F5に組み入れ、濾過装置F4については初期圧の約3倍になるまで濾過を継続する。以上の送液路の切り替え及び洗浄、再生処理を繰り替えすことによって、濾過装置F4,F5のフィルタを破損することなく、安定的に濾過及び洗浄を繰り返すことができる。
【0054】
本発明の実施形態においては、フィルタの再生度を評価するために、バブリングポイント評価を実施している。バブリングポイント評価は、カートリッジタイプ(キャンドルタイプ)と称される型式のフィルタについてのバブリングポイント評価方法について、以下にこれを図3を用い説明する。図3は、バブリングポイント評価装置61を示しており、濾過装置F4,F5(図2参照)から取り外されたフィルタは、検査されるべき被検カートリッジフィルタ62として、その一次側入り口にあたる口金部でプラグ63を用いてチューブ65と接続される。チューブ65の上流側は、減圧弁66を介して圧縮空気源67に接続されている。また、プラグ63と減圧弁66の間には、圧力計G11が設置してあり、チューブ65を介して被検カートリッジフィルタ62の内部に加えられている圧力を測定することができる。
【0055】
被検カートリッジフィルタ62を浸積槽71の中に満たされた検査流体72に浸積して、被検カートリッジフィルタ62の内部に検査流体72が十分入るようにする。なお、被検カートリッジフィルタ62の最上部と検査流体72の液面との距離D1は、適宜設定された一定の値となるようにする。
【0056】
この状態で減圧弁66を徐々に操作し、被検カートリッジフィルタ62の内部に圧力を加えていく。はじめは、被検カートリッジフィルタ62のメディア内部に入っている液の表面張力により、空気はフィルタを通過しないが、ある圧力を超えると通過するようになり、被検カートリッジフィルタ62の表面のいずれかの位置から気泡の発生が観察される。最初に気泡が発生したときの圧力計G11の指示値をバブリングポイントとする。
【0057】
検査流体としては、水やメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等が一般に用いられるが、これらに限られるものではない。また、圧力計G11としては、ブルドン管やマノメータ、差圧伝送器等の公知のものをいずれも好ましく使用することができる。
【0058】
一般に、フィルタ孔が小さいほど空気はフィルタ孔を通過しにくいのでバブリングポイントの値は高くなる。フィルタの型式によって、定められた所定のバブリングポイントよりも低いバブリングポイントを示す被検カートリッジフィルタ62は、何らかの理由で破損し、濾過性能が確保することができないことを意味するので不合格となる。不合格の原因としては、フィルタにかけられた逆圧が高すぎるために機械的破損を招く場合や、あるいは不十分な洗浄によりフィルタに残留した異物が焙焼処理により発火して、部分的に高温になり破損する場合等が考えられる。以上のように、カートリッジタイプのフィルタについてそのバブリングポイント評価方法を示したが、他の型式のフィルタに対しても類似の方法で評価を実施することができる。
【0059】
ドープまたは洗浄に使用する溶媒としては、ジクロロメタンやジクロロメチレン等のハロゲン含有有機化合物の他に、メチルアルコールやエチルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコールや酢酸メチル、酢酸エチル等の各種エステル系化合物やアセトンなど非塩素系有機化合物や、水を使用することができる。
【0060】
本発明の製造方法におけるポリマー成分としては、セルロースアシレートが好ましく、中でもセルロースアセテートが特に好ましい。セルロースアシレート以外のポリマーであっても、ポリマー及びその前駆体が溶媒によってドープとなり、溶液製膜をすることができるものであれば本発明は適用される。例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、塩素化ポリエーテル、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等を例示することができる。さらに、以上のような各種ポリマーをそれぞれ単独で使用しても、あるいは複数を混合して使用しても本発明に適用可能である。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
以下の配合からなる分散液を、体積平均粒子径が0.5μmになるようにアトライタ(型番;60SE、三井鉱山(株)製)にて精密分散を行い、微粒子分散液を得た。体積平均粒子径は、堀場製作所製粒度分布測定装置LA920で測定した。なお以下に記したシリカ微粒子は、シリカ微粒子の表面をメチル化して疎水化処理を施されたものである。
・シリカ微粒子 2.00重量%
(アエロジルR972、日本アエロジル(株)製)
・セルローストリアセテート(酢化度61.0%) 2.00重量%
・トリフェニルフォスフェート 0.16重量%
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.08重量%
・ジクロロメタン 88.10重量%
・メチルアルコール 7.66重量%
【0063】
下記の配合の固形分に、ジクロロメタンとメチルアルコールの重量比率が92:8の混合溶媒を添加し、攪拌溶解して、固形分濃度が18.5重量%のドープ基材を調製した。このドープ基材100重量部に対して上記微粒子分散液を6.5重量部添加した。これをミキシングタンク41に入れて攪拌混合し、ドープ11aを得た。
・セルローストリアセテート(酢化度61.0%) 89.3重量%
・トリフェニルフォスフェート 7.1重量%
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 3.6重量%
【0064】
ドープ11aを、濾過装置F2あるいはF3で第一段の濾過処理した後、濾過装置F4での第二段濾過処理を経て、これを製膜工程へ連続で送った。濾過装置F2,F3のフィルタは濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)であって、また、濾過装置F4,F5では焼結金属フィルタ(型番06N、公称孔径10μm、逆圧限界0.1×106 Pa、日本精線(株)製)を用いている。
【0065】
第二濾過処理工程は、濾過装置F4を用いて開始している。この開始時における濾過装置F4での濾圧、つまり初期圧Aは0.30×106 Paであった。ここで、濾過装置F4にセットしたフィルタは、以前に本第二段濾過処理工程において濾過に使用したものであり、その使用の際に、初期圧が0.30×106 Paの約3倍に上昇するまで目詰まりしたものを、溶剤を逆流させて循環洗浄した後取り外して、オフラインで再生処理したものである。この溶剤洗浄は、溶剤流量を濾過に使用した際の濾過流量の約20倍として、約10時間継続し、この操作を、溶剤を交換して合計3回実施した。また、再生処理は焙焼処理にて実施し、これを洗浄し乾燥させた。溶剤洗浄は、ジクロロメタンとメチルアルコールの重量比率が92:8の混合物を溶剤として用いて、これを第四ストックタンクT4にストックし、ポンプP10によって濾過装置F10を通過させながら循環させることにより実施した。なお、濾過装置F10のフィルタとしては、富士写真フイルム(株)製のアストロポアフィルタ(孔径3μm)を用いた。
【0066】
この溶剤洗浄において、開始時にはバイパス用送液路L2のバルブV51を全開とし、その後、ポンプP10を運転開始させてから、バルブV51の開度を調整して圧力計G3,G4の指示値の差によって表される洗浄差圧が、常時ほぼ0.08×106 Paを超えないように制御した。なお、洗浄に先立って、バルブV52を開くことにより、濾過装置F4の下流側にあたる部分を加圧し、ポンプP11を運転することで、濾過装置F4に残留するドープのほとんどを抜き取った。第四ストックタンクT4にストックした溶剤の量は、濾過装置F4の容積及び抜き取ったドープの量から求めた残留ドープ量の約100倍である。この洗浄終了時には、バイパス用送液路L2のバルブV51は全閉であって、このときの洗浄差圧は0.06×106 Paであった。
【0067】
紫外線吸収剤液を、スタティックミキサを用いて上記の濾過処理工程を経たドープ11aにインライン混合した。混合量は、ドープ11a中の固形分に対する紫外線吸収剤の重量比率が1.04%になるようにした。なお、紫外線吸収剤液は、下記配合によるものであって、これを富士写真フイルム(株)製アストロポア10フィルタにて濾過して得たものである。
・2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール 5.83重量%
・2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール 11.66重量%
・セルローストリアセテート(酢化度61.0%) 1.48重量%
・トリフェニルフォスフェート 0.12重量%
・ビフェニルジフェニルフォスフェート 0.06重量%
・ジクロロメタン 74.38重量%
・メチルアルコール 6.47重量%
【0068】
紫外線吸収剤液を混合されたドープ11aは濾過装置F1にて濾過されており、ここではメッシュフィルタ(型番RM、公称孔径45μm、日本ポール(株)製)を用いている。上記の手順で得られたドープ11aをステンレス製のベルト14に流延し、熱風乾燥を経て、幅が1330mmのフィルムを巻き取った。このフィルム11bについて、巻き取り直前にオンライン欠陥検出装置31にて、異物数を数え、フィルム長1000mごとに集計した。
【0069】
上記の状態で正常に製造がなされている状態において、上記の濾過装置F4の場合と同様に、洗浄及び再生処理したフィルタを濾過装置F5にセットして、バルブ操作により、濾過処理対象の装置を濾過装置F4から濾過装置F5に切り替えた。切り替えによって使用を終了した濾過装置F4のフィルタを、上記と同様の方法で溶剤洗浄を行った。ただし、このとき、フィルタの取り外しとオフラインでの再生処理は実施せず、溶剤洗浄後、直ちに濾過装置F4にドープを充填し、逆送を実施した。濾過を開始し、濾過装置F5の濾圧が初期圧である0.30×106 Paの約3倍となるまで目詰まりしたときにバルブ操作を実施し、再度フィルタを交換した濾過装置F4に濾過処理対象を切り替えた。なお、この切り替え時の濾過装置F4の初期圧Bを記録した。また、この切り替え直前のドープ11bが製膜されて得られたフィルム11bの部位の異物数をオンライン欠陥検出装置31を用いて数え、フィルム長1000mごとに集計した。
【0070】
濾過装置F4にて濾過処理を実施し、初期圧Aであった0.30×106 Paの約3倍に濾圧が上昇したところで、濾過処理対象を濾過装置F5に切り替えた。この濾過装置F5のフィルタは、インラインでの溶剤洗浄のみを行ったものであって、オフラインによる再生処理は実施していない。この切り替えを実施した後、濾過装置F4のフィルタを前溶剤洗浄と同様に洗浄し、これを取り外して前述のオフライン再生処理を再び実施した。さらに、再生処理を完了したフィルタについて、バブリングポイント評価を行った。バブリングポイント評価における検査流体72としては、イソプロピルアルコールを用いた。
【0071】
本実施例の結果については表1に示す。表1において、上記のように、初期圧Aとは濾過装置F4を用いた1度目の濾過における初期圧を意味しており、また、初期圧Bとは濾過装置F4を用いた二度目の濾過における初期圧を意味している。さらに、異物数Aと異物数Bとは、濾過装置F4における最初と二度目の濾過処理にて濾過された各ドープ11aが、フィルム11bとされたそれぞれの部分について、オンライン欠陥検出装置31を用いてカウントされた異物数を示している。さらに、バブリングポイント評価を実施した際の不合格品の発生率を表1中では不合格率としている。
【0072】
【表1】
Figure 0004012455
【0073】
〔比較例1〕
濾過装置F4に最初に取り付けたフィルタを濾過に使用した後の溶剤洗浄と、2回目の使用後の洗浄及びオフライン再生処理の際の溶剤洗浄とにおいて、洗浄溶剤の流量を、濾過に使用した際の濾過流量の8倍となるように調整したほかは実施例1と同様に実施した。本比較例の結果については、表1に示す。
【0074】
〔比較例2〕
濾過装置F4に最初に取り付けたフィルタを濾過に使用した後の溶剤洗浄と、2回目の使用後の洗浄及びオフライン再生処理の際の溶剤洗浄とにおいて、洗浄溶剤の使用体積を、濾過装置F4に残留したドープaの体積の40倍とした他は実施例1と同様に実施した。
【0075】
〔比較例3〕
濾過装置F4に最初に取り付けたフィルタを濾過に使用した後の溶剤洗浄と、2回目の使用後の洗浄及びオフライン再生処理の際の溶剤洗浄とにおいて、洗浄溶剤の交換を行わなかった他は実施例1と同様に実施した。
【0076】
〔比較例4〕
濾過装置F4に最初に取り付けたフィルタを濾過に使用した後の溶剤洗浄において、バルブV51を洗浄開始時より全閉とした他は実施例1と同様に実施した。洗浄開始時には、洗浄差圧は最大で0.60×106 Paまで上昇したが、次第に低下し、最終的は0.05×106 Paまで低下した。2回目の使用後の洗浄及びオフライン再生処理の際の溶剤洗浄に関しては実施例1と同様に実施した。本比較例の結果については、表1に示す。
【0077】
表1の結果によると、実施例の結果は比較的良好である。初期圧Bについてみてみると、いずれの比較例とも初期圧の復帰が実施例に及ばない。これは、比較例1は洗浄溶剤の流量が小さかったためであり、また、比較例2の場合には洗浄溶剤の使用総体積が少なかったためであって、比較例3では洗浄溶剤の交換を実施しなかったためである。これにより、初期圧が上がることは、フィルタの寿命をそれだけ短くしてしまうことを示している。また、異物数については、比較例4を除いて大きな差はない。
【0078】
オフライン再生処理後のバブリングポイント評価による不合格率は、実施例では0%であるが、比較例1,2,4については不合格品が発生している。ここで、不合格であるということは、より低い圧力で気泡がフィルタを通過したことであり、これは所定のフィルタ孔径を上回る大きな穴があいてしまったこと、すなわちフィルタの破損を意味する。
【0079】
比較例1及び3においては、2回目の洗浄後の使用時における異物数Bが、1回目に比べてそれほど増えておらず、オフライン再生処理時に破損したと推定することができる。すなわち、フィルタの洗浄が不十分であったために、フィルタに残留していた異物が、焙焼処理時に発火し、フィルタを破損させたと考えることができる。また、比較例4については、異物数Bがおおいことから、溶剤洗浄時に逆圧をかけすぎて破損させたと考えられる。比較例2では、フィルタの破損はなかったが、洗浄不十分が続くといずれ破損をきたすと推定することができる。これらの結果より、本発明は、フィルタの洗浄効果を向上させて、フィルタの破損の防止に非常に有効であることがわかる。
【0080】
【発明の効果】
以上のように、本発明のポリマーフィルム及びその製造方法により、ドープの濾過に使用するフィルタの洗浄不足、及び過剰な洗浄によるフィルタの破損を防止し、異物数の少ない良好なフィルムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である溶液製膜の工程図である。
【図2】実施形態である流延前の濾過処理の工程図である。
【図3】実施形態であるバブリングポイント評価装置の一部断面を含む概略図である。
【符号の説明】
11a ドープ
11b フィルム
V51 調整弁
F4 濾過装置
F5 濾過装置
F10 洗浄溶剤用濾過装置
G1〜4 圧力計
L1 第一送液路
L2 第二送液路
T4 第四ストックタンク

Claims (9)

  1. 互いに並列に接続された複数の濾過装置の少なくともひとつによってドープを濾過し、使用した前記濾過装置のフィルタを、前記濾過装置に接続する送液路を循環させる溶剤で逆流洗浄し、濾過後の前記ドープを連続的に製膜するポリマーフィルムの製造方法において、
    前記送液路を第一送液路とするとき、前記第一送液路の分岐路であって、前記濾過装置をバイパスする第二送液路に設けられた流量調節手段を用いて、前記濾過装置へ送液される前記溶剤の流量を調節することにより、前記フィルタに対する逆流の圧力をそのフィルタの逆圧限界以下に調節しながら前記フィルタを洗浄することを特徴とするポリマーフィルムの製造方法。
  2. 前記フィルタを金属製フィルタとすることを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルムの製造方法。
  3. 前記フィルタをオフラインにて焙焼処理することを特徴とする請求項1または2記載のポリマーフィルムの製造方法。
  4. 前記溶剤の流量を、前記フィルタによる濾過流量の10倍以上とすることを特徴とする請求項1ないし3記載のポリマーフィルムの製造方法。
  5. 前記溶剤の総体積を、前記逆流洗浄前の前記濾過装置の内部に残留する前記ドープの体積の50倍以上とすることを特徴とする請求項1ないし4いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
  6. 前記溶剤を少なくとも1回交換して前記逆流洗浄を実施することを特徴とする請求項1ないし5いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
  7. 前記ドープに微細粒子を含有させ、前記ドープの固形成分に対する前記微細粒子の重量比率を0.001%以上5%以下とすることを特徴とする請求項1ないし6いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
  8. 前記微細粒子の成分の少なくともひとつを、二酸化珪素を含むケイ素誘導体とすることを特徴とする請求項7記載のポリマーフィルムの製造方法。
  9. 前記ポリマーフィルムをセルロースアシレートフィルムとすることを特徴とする請求項1ないし8いずれかひとつ記載のポリマーフィルムの製造方法。
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