JP4012288B2 - 摩擦ディスク組立体 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦板フェーシング、より具体的には、複数の部分に分割された摩擦板フェーシングの改良に関する。複数の部分に分割されたフェーシングを含む摩擦板フェーシングは、当該技術分野にて周知であり、従来、かかる摩擦板フェーシングは金属板又はコア板に接着され、その後に、その金属板又はコア板が重ね合わせたクラッチパック内に組み込まれる。
【０００２】
【従来の技術】
クラッチ板は、例えば、クラッチ組立体の内側ハブ、及び外側ドラムと相互に接続され、通常、液圧、又はばね作動式のピストンを使用して、係合及び係合解除が為される。
【０００３】
かかるクラッチパック内にて使用される１つの典型的な摩擦ディスクは、環状の密封リング、又はコア板と、そのコアの両側部に接着された、分割された一対の摩擦フェーシングとを内蔵している。
【０００４】
分割された摩擦フェーシングは、例えば、米国特許第４，２６０号、同第４，４，４４９６２１号、同第４，６７４，６１６号、及び同第５，３３２，０７５号の明細書に開示されている。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
複数の部分に区分けされたフェーシングのセグメントは、通常、そのセグメントの一端に設けられたタブと、隣接するセグメントに形成された収容切欠き又は相補的な開口部とを備えている。タブを有するセグメントを有するフェーシングが作用し得なくなるのは、摩擦力を発生させるフェーシングが金属製の分離板と係合することに起因する磨耗、疲労、及び熱劣化の結果であると考えられる。この熱及び圧力は、その材料の表面を破損させることも多い。切断され且つほつれた端縁によりその材料が弱体化するに伴い、タブの接続部からかかる破断が開始する。この分割された摩擦ライニングの製造に使用される繊維の型式は、切断し難く、磨耗、熱及び圧力下にて優れた耐久性のある、例えば、丈夫なアラミド繊維である。ダイカッティング工程によって繊維材料がほつれたり、又は垂れ下がることがないように、かかる繊維状材料をカットするとき、ダイカットの刃部分がタブ及び接続部にて完全に整合していることが望ましい。このダイカッティング工程のとき、切断した端縁部分から望ましくない程度に分離した繊維が伸長する場合がある。かかるすり切れ或いはほつれた切断端縁は、タブ接続部にてその対応するセグメントに合わされたとき、その分割されたフェーシングをタブ接続部にて早期に破断させることが確認されている。分離した繊維が伸長した表面の露出、関連する圧力、熱及びタブ接続部の幾何学的形態が、接続領域にてかかる早期の破断が生じると考えられる。
【０００６】
本発明の主たる目的は、分割された摩擦フェーシングを有する、改良に係る摩擦ディスク組立体を製造することである。
【０００７】
本発明は、一対の環状の摩擦フェーシング（１２、３０）と、前記摩擦フェーシングの間に配置された環状コア板（１１）とを備える摩擦ディスク組立体（１０）にして、前記摩擦フェーシング（１２、３０）の各々が繊維を含みかつ隣接する複数のフェーシング部分（１４、３１）を有し、前記部分の各々が、両端を有し、前記両端の一方に、ヘッド部分（１７）及びくびれ部分を有するタブ（１６、３２）が設けられ、前記両端の他方に、第１及び第２の部分を有する切欠き（１５、３３）が設けられ、リザーバ（２１、３５）が前記タブの前端に隣接して前記切欠きの前記第２の部分により画成されるように一方のフェーシング部分（１４、３１）の前記タブ（１６、３２）が隣接するフェーシング部分の前記切欠き（１５、３３）内に配置され、前記リザーバ（２１、３５）が冷却流体及びほつれた繊維を受け入れるようにして構成されている。
【０００８】
本発明は、改良されたセグメント式摩擦フェーシングを含む、改良に係る摩擦ディスク組立体に関する。分割された部分の各々は、一端に設けられたタブと、他端に設けられた切欠きとを備えている。タブに隣接する部分の各々により、液ためすなわちリザーバが形成される。このリザーバがタブ及び切欠きの接続部の中間点にて発生された熱を発散させ且つ分配することが判明している。また、このリザーバの開放面積は係合中、及び係合解除後に、その領域をより低温に保つのに有用であるオイルを保持することもできる。この開放したリザーバ領域は、繊維が表面に押し出されるのを防止する働きをする。
【０００９】
本発明の１つの好適な実施の形態において、該タブは、本明細書において、ガータ形状と称する細長い形状をしている。
【００１０】
【発明の実施の形態】
図１、図２及び図４を参照すると、本発明による改良に係るセグメントすなわち分節部分から成る摩擦ディスク組立体は、全体として、参照符号１０で示されている。この摩擦ディスク組立体１０は、環状の金属製コア板１１を備えている。環状の摩擦フェーシング１２が環状コア板１１の一側部、又はその両側部に接着されている。この実施の形態において、環状のフェーシング１２の各々は、隣接した３つの個々のフェーシングセグメントすなわち部分１４から成っているが、その他の実施の形態において、更なる数のフェーシング部分を使用することも可能である。
【００１１】
隣接したフェーシング部分１４の各々は、所定の形状の切欠き１５を画成する第一の端部と、所定の形状のタブ１６を画成する他端とを備えている。図４を参照すると、好適な実施の形態において、タブ１６は、ヘッド部分１７と、より狭小なくびれ部分１８とを有する細長い形態とされている。このヘッド部分１７及びくびれ部分１８は、ワニ形をしたタブ１６を画成する。
【００１２】
この切欠き又は開口部１５は、ワニ形タブ（ｇａｔｏｒ ｔａｂ）１６と相補的であり且つワニ形タブ１６を受け入れる第一の部分２０を有している。この切欠き１５は、ワニ形タブ１６のヘッド部分１７の前端に隣接するリザーバを画成する第二の開口部分２１を有する。
【００１３】
図４を参照すると、ヘッド部分１７の側端縁がその交差部分まで伸長するとき、これらの側端縁は角度Ａを画成する。この角度Ａは８０°以下であることが好ましい。図４に図示した好適な実施の形態において、この角度Ａは６０°以下である。移動方向の中心線に沿うタブの角度を小さくすれば、フェーシング部分１４におけるタブ−切欠きの接続部における破断が軽減されることが分かった。
【００１４】
図７には、ワニ形のタブ１６の部分の好適な寸法の関係が図示されている。のど部の幅Ｂは、側部の幅Ｃ、Ｄの合計値に等しいことが好ましい。ワニ形タブ１６の中心からのワニ形タブ１６の端部までの距離は、側部の幅Ｄの２倍に等しいことが好ましい。
【００１５】
角度Ａの場合と同様に、タブ１６の端縁により画成される角度Ｆは、８０°以下であることが好ましい。図４の実施の形態において、この角度Ａは約３５°である。これらの側部の幅Ｃ、Ｄの合計値は、全幅Ｗの１／２であることが好ましい。
【００１６】
図３は、概略図で図示した従来技術のフェーシングセグメントすなわち部分の接続部の概略図である。接続部２４は、第一のフェーシング部分２５と第二のフェーシング部分２６との間に画成される。上述したように、サイクルの反復の結果として、切断端縁に沿って工具が鋭利でなくなると、その丈夫な繊維の一部分は完全に切断されず、切断領域から引き出されて、すり切れ或いはほつれた一群の繊維２７を形成することがある。繊維２７がすり切れ或いはほつれる摩擦材料はタブ接続部２４にて早期に破断すると考えられる。これらのほつれた繊維２７は、例えば、相手の分離板の表面にさらされ、また、クラッチの係合に起因するクラッチパックの関連する熱及び圧力にさらされる。
【００１７】
ヘッド部分１７及びリザーバ２１のワニ形は、破損の可能性を軽減することが確認されている。熱は開放したリザーバ領域に発散され且つ分配され、その結果、繊維が表面まで引き出される可能性が軽減される。また、リザーバ領域は、熱を発散して冷却する流体を保持するのにも有用である。また、この開放したリザーバ領域は、開放領域が全く提供されない従来技術のタブ開口部構造体と異なり、係合中、すり切れ或いはほつれた繊維がリザーバ領域内まで自由に伸長することを可能にする。
【００１８】
図５を参照すると、環状摩擦フェーシングの別の実施の形態が参照符号３０で示してある。摩擦フェーシング３０は、複数のフェーシングセグメントすなわち部分３１を有する。フェーシング部分３１の各々は、一端に設けられたタブ３２を有し、このタブ３２は、典型的な従来技術のボール形状としたタブである。フェーシング部分３１の他端は、第一の部分３４と、第二の部分３５とを有する切欠き３３を画成する。切欠き３３の第一の部分３４は、隣接するフェーシング部分３１の隣接するボール形状のタブ３２と相補的であり且つそのタブ３２を受け入れる。該切欠き３３の第二の部分３５は、流体を受け入れ且つほつれた繊維を受け入れるリザーバを画成する。従来技術のボール形状のタブ３２は、図４の好適な実施の形態に示したワニ形のタブ１６と等しい程度に優れた結果は得られないが、ボール形状のタブ３２に隣接するリザーバ３５を利用する結果、従来技術にて公知のものよりも優れた摩擦ディスク組立体及び摩擦フェーシング３０が製造される。
【００１９】
図６を参照すると、環状の摩擦フェーシングの別の実施の形態が参照符号４０で示してある。この摩擦フェーシング４０は、複数のフェーシングセグメントすなわち部分４１、４２を有している。この実施の形態は、隣接した一対のワニ形タブ４３、４４を有する。切欠き４５、４６がタブ４３、４４を受け入れる。これらの切欠き４５、４６は、ワニ形タブ４３、４４の端部に隣接するリザーバ４７、４８を画成する。図６の実施の形態は、より幅の広いコア板に使用するのに適している。
【００２０】
本発明の範囲、又は特許請求の範囲から逸脱せずに、上記に開示した実施の形態の多数の改変例が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明による、摩擦ディスク組立体の平面図である。
【図２】図１に図示した摩擦ディスク組立体の斜視図である。
【図３】従来技術の分節状に形成した接続部を示す、分節部分から成る従来技術のフェーシングの部分断面図である。
【図４】本発明による分節部分から成る好適な摩擦フェーシング接続構造体の拡大した部分平面図である。
【図５】本発明による摩擦フェーシング接続構造体の別の実施の形態を示す、図４と同様の図である。
【図６】本発明による摩擦フェーシング接続構造体の更に別の実施の形態を示す、図４と同様の図である。
【図７】図４の実施の形態の概略図的な平面図である。
【符号の説明】
１０ 摩擦ディスク組立体 １１ 金属製コア板
１２ 環状の摩擦フェーシング １４ フェーシング部分
１５ 切欠き １６ ワニ形タブ
１７ ヘッド部分 １８ くびれ部分
２０ 第一の部分 ２１ リザーバ
２４ 接続部 ２５ 第一のフェーシング部分
２６ 第二のフェーシング部分 ２７ ほつれた繊維
３０ 摩擦フェーシング ３１ フェーシング部分
３２ タブ ３３ 切欠き
３４ 第一の部分 ３５ リザーバ
４０ 摩擦フェーシング ４１、４２ フェーシング部分
４３、４４ ワニ形タブ ４５、４６ 切欠き
４７、４８ リザーバ
Ａ、Ｆ 角度 Ｂ のど部の幅
Ｃ、Ｄ 側部の幅 Ｗ 全幅

Claims (6)

1. 一対の環状の摩擦フェーシング（１２、３０）と、前記摩擦フェーシングの間に配置された環状コア板（１１）とを備える摩擦ディスク組立体（１０）にして、前記摩擦フェーシング（１２、３０）の各々が繊維を含みかつ隣接する複数のフェーシング部分（１４、３１）を有し、前記部分の各々が、両端を有し、前記両端の一方に、ヘッド部分（１７）及びくびれ部分を有するタブ（１６、３２）が設けられ、前記両端の他方に、第１及び第２の部分を有する切欠き（１５、３３）が設けられ、リザーバ（２１、３５）が前記タブの前端に隣接して前記切欠きの前記第２の部分により画成されるように一方のフェーシング部分（１４、３１）の前記タブ（１６、３２）が隣接するフェーシング部分の前記切欠き（１５、３３）内に配置され、前記リザーバ（２１、３５）が冷却流体及びほつれた繊維を受け入れるようにした、摩擦ディスク組立体。
2. 請求項１に記載の摩擦ディスク組立体にして、前記ヘッド部分が先細形状を有しかつ延長線が８０°以下の角度（Ａ）で交叉する側縁を有する、摩擦ディスク組立体。
3. 請求項１に記載の摩擦ディスク組立体にして、前記タブ（３２）がボール形状である、摩擦ディスク組立体。
4. 請求項１ないし３のいずれかに記載の摩擦ディスク組立体にして、前記切欠き（１５）が、前記ヘッド部分の前端に隣接して前記リザーバ（２１）を画成する、摩擦ディスク組立体。
5. 請求項１に記載の摩擦ディスク組立体にして、一対のタブ（４３、４４）を受け入れる一対の切欠き（４５、４６）と、前記タブ（４３、４４）に隣接して前記切欠き（４５、４６）により画成された一対のリザーバ（４７、４８）とを備える、摩擦ディスク組立体。
6. 請求項５に記載の摩擦ディスク組立体にして、前記タブ（４３、４４）の各々がヘッド部分（１７）及びくびれ部分を有する長細い形状を有する、摩擦ディスク組立体。

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