JP4011774B2 - 不定形耐火物を用いた二次精錬取鍋の内張り耐火物 - Google Patents

不定形耐火物を用いた二次精錬取鍋の内張り耐火物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、VOD鍋、AOD鍋等の溶鋼の二次精錬用取鍋のライニング構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
この二次精錬用取鍋の内張りライニングは、従来から、定形耐火物であるれんがが一般的に使用されているが、スラグライン部の損耗が大きい。
【0003】
スラグラインれんがの損耗の形態としては、一つに耐火物の溶損、二つ目に目地溶損、三つ目に応力割れ等である。一つ目の対策としてスラグラインれんがの材質変更及び緻密化等をほどこしているが逆に耐スポーリング性が劣化する傾向を示す。また、二つ目の目地溶損対策として上下拘束を施し、れんが目地を極力小さくする、即ち、目地厚を小さくしたり、目地なしでの築造を行っている。しかし、目地厚を小さくするとスラグラインれんがの応力を吸収できず、スポーリングによる割れが顕著となり、低ライフであがる場合が多々見られた。また、もう一つの応力割れについては、応力緩和を目的に膨張代等をとっているが、れんがの脱落があり、問題を残している。
【0004】
例えば、特開平8−81256号公報には、耐食性に優れたMgO−Cれんがの使用が開示されているが、これを実炉に供した場合、耐スポーリング性に問題がある。また、特公昭59−10867号公報には上下拘束を施すことによりれんがの抜け落ちを防止することが開示されているが、れんがの応力吸収が十分ではなく、スポーリング現象を完全に改善するには至っていない。
【0005】
このように、二次精錬取鍋の使用条件は高い溶鋼温度、長い滞湯時間、ガス吹き込みによる撹拌など極めて厳しく、スラグラインれんがは特に溶損が大きくなる。スラグラインれんがの耐溶損性を向上させるためには、材料の緻密化、上下拘束、れんが目地の極小化等の手法が考えられるが、これらの手法は応力の吸収能に乏しく耐スポーリング性の低下が問題となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、二次精錬取鍋スラグライン部の寿命延長と耐スポーリング性と耐食性の向上を図るものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外壁部が鉄皮により拘束されているパーマれんがを除く内張り耐火物が、下方部の不定形耐火物と上方部の定形耐火物とからなり、その内張りの高さ方向の不定形耐火物:定型耐火物の比率が1:0.5〜1:3である不定形耐火物を用いた二次精錬取鍋の内張り耐火物である。
【0008】
下方部、すなわち、メタルライン部に使用される不定形耐火物の材質としては、珪石−ジルコン質、高アルミナ質、アルミナ−スピネル質、アルミナ−マグネシア質、マグネシア質、マグネシア−カルシア質、マグネシア−カーボン質、マグネシア−ジルコン質等が使用できる。また、ボンド形態についてはセメントボンド、中セメントボンド、低セメントボンド、極低セメントボンド、ノンセメントボンド、凝集ボンド等が適用できる。
【0009】
また、上方部、すなわち、スラグライン部に使用する定形耐火物の材質としてはマグネシア質、マグネシア−クロム質、マグネシア−カーボン質、マグネシア−カルシア質等が使用できる。
【0010】
ここで、不定形耐火物と定形耐火物の高さ方向での比率については、不定形耐火物:定形耐火物の比率が、1:0.5よりも不定形耐火物の割合が多くなると、スラグライン部に不定形耐火物が接することなる。スラグライン部に不定形耐火物が接することによる耐食性の劣化が大きくなり、好ましくない。また、不定形耐火物:定形耐火物の比率が、1:3よりも定形耐火物の範囲の割合が多くなると、れんがの応力吸収能が充分でなく、耐スポーリング性の改善が不十分となる。
【0011】
また、不定形耐火物の破壊に至るまでの圧縮変位比率は、金属アルミニウムを0.01〜0.1重量%及び/または塩基性有機酸多価金属塩粉末を0.1〜0.5重量%含有することによって、0.5〜1.0%に調整する。圧縮変位比率が0.5%よりも小さいと応力吸収が充分ではなく、耐スポーリング性の改善が充分ではない。また、圧縮変位比率が1.0%よりも大きくなると内張りに対する拘束力が小さくなり、れんが部の抜け落ち等の問題が起こる。金属アルミニウム及び塩基性有機酸多価金属塩粉末による圧縮変位効果は、混練後、微細な欠陥を生じさせて材料の組成変形能を付与させることによって得られる。金属アルミニウムが0.01重量%、また、塩基性有機酸多価金属塩粉末が0.1重量%よりも少ないと材料の組成変形能が付与できず、各々0.1重量%および0.5重量%よりも多いと材料の軟化性が付加され圧縮変位比率が大きくなることから好ましくない。
【0012】
圧縮変位率の調整は、添加水分量、有機繊維量、有機分散剤添加量等により可能ではあるが、不定形耐火物の強度を劣化させることから好ましくない。
【0013】
塩基性有機酸多価金属塩粉末としては、塩基性乳酸アルミニウム粉末を初めとして塩基性ギ酸アルミニウム粉末、塩基性酒石酸アルミニウム粉末、塩基性酢酸アルミニウム粉末、塩基性グリコール酸アルミニウム粉末等のアルミニウム塩を挙げることができる。
【0014】
本発明における不定形耐火物は、常法通り配合組成に施工水を添加、混合し型枠を用いて流し込み施工される。施工の際には充填性を向上させる為、一般には型枠にバイブレーターを取り付けるか、あるいは耐火物中に棒状バイブレーターを挿入する。また、不定形耐火物を溶鋼容器に直接施工するだけでなく、予め任意の形状に施工したブロックを内張り材として使用しても良い。
【0015】
【発明の実施の形態】
各例の特性評価で、圧縮変位比率は、JIS規格(R2553−75)の不定形耐火物の圧縮強度測定において、破壊に至るまでの荷重方向(高さ方向)変位量を測定前の量(高さ)で割った値で示す。
【0016】
スラグライン耐用(ch)数は、残厚40mmまでのチャージ回数で示した。
溶損速度は、溶損寸法をチャージ数で割った値を示す。
【0017】
スポーリングの程度は、目視によって行い、剥離が見受けられなかったのものは殆ど無し、50mm以上剥離したとみられるものは大剥離、途中れんがが剥離したものはレンガ抜け落ちとして示した。
【0018】
以下、実施例及び比較例によって本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
表1に、本発明の実施例1〜11を示す。
【0020】
【表1】
Figure 0004011774
何れもスラグラインれんがの耐食性、内張り材の耐スポーリング性に優れ、耐用も44〜60chまでと高耐用を示している。実施例2,3,4は同一材質、同一ライニングで横方向の目地厚を変化させた例であるが、目地厚に関係なく良好な結果を示している。また、実施例10,11は各々施工高さ4m、5mの鍋に適用した例であるが同様に良好な結果を示している。
【0021】
表2には比較例1〜11を示す。
【0022】
【表2】
Figure 0004011774
比較例1はメタルライン部にマグクロれんがを使用した例である。マグクロれんがの応力を吸収できず稼働途中で大きな剥離を誘発した。
【0023】
比較例2は比較例1と同一材質、同一ライニングで横方向の目地厚を大きくした例である。目地厚を大きくしても材料の応力を吸収できず、稼働途中で大きな剥離を誘発した。
【0024】
比較例3は不定形耐火物:定型耐火物の比率が1:0.2となった例である。不定形耐火物の範囲が広すぎてスラグライン部の溶損大によりライフも16chと短命に終わった。
【0025】
比較例4は不定形耐火物:定形耐火物=1:3.3の例である。応力を吸収できる不定形耐火物の範囲が狭いため、稼働中の剥離現象が顕著であった。
【0026】
比較例5は塩基性乳酸アルミニウム0.02重量%使用し、不定形耐火物の圧縮変化率が0.4%と小さい例である。不定形耐火物の応力吸収能が小さいため、稼働中の剥離が顕著であった。
【0027】
比較例6,7,8は使用する不定形耐火物の材質をマグネシア・ジルコン、アルマグ、珪石・ジルコンを適用し金属アルミニウム及び塩基性乳酸アルミニウムが特許請求範囲内から外れた系である。これらは材料の圧縮変化率が各々1.05%、1.1%、1.2%と大きい例である。材料の軟化性が大きすぎるため、稼働中にれんがの抜け落ち現象が現れ、短命に終わった。
【0028】
比較例9は施工高さ4mの鍋に実施した例であり、不定形耐火物:定形耐火物の比率が1:0.3となった例である。不定形耐火物の施工範囲が広くスラグライン部の溶損大で22chの短命で終わった。
【0029】
比較例10は施工高さ4mの鍋に実施した例であり、塩基性乳酸アルミニウムを0.02重量%使用し圧縮変化率が0.4%と小さい例である。材料の応力を吸収できず稼働中に大きな剥離を誘発した。
【0030】
比較例11は施工高さ5mの鍋に適用した例であり、不定形耐火物:定型耐火物=1:4となった例である。れんがの応力を充分に吸収できず、稼働中の大きな剥離により25chの短命に終わった。
【0031】
【発明の効果】
本発明の内張りは、スラグライン部の緻密化及び目地厚の極小化を可能とするものであり、内張り耐火物の耐スポーリング性の向上とスラグライン部の耐食性の向上が達成できる。

Claims (2)

  1. 外壁部が鉄皮により拘束されているパーマれんがを除く内張り耐火物が、下方部の不定形耐火物と上方部の定形耐火物とからなり、その内張りの高さ方向の不定形耐火物:定型耐火物の比率が1:0.5〜1:3である不定形耐火物を用いた二次精錬取鍋の内張り耐火物。
  2. 不定形耐火物が金属アルミニウムを0.01〜0.1重量%及び/又は塩基性有機酸多価金属塩粉末を0.1〜0.5重量%含有し、その不定形耐火物の破壊に至るまでの圧縮変位比率が0.5〜1.0%である請求項1に記載の不定形耐火物を用いた二次精錬取鍋の内張り耐火物。
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