JP4010847B2 - 三弗化窒素ガスの精製方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は三弗化窒素ガスの精製方法に関する。更に詳しくは、三弗化窒素ガス中の酸化二窒素を除去することを特徴とする三弗化窒素ガスの精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
三弗化窒素ガス(以下、NF3ガスと表すことがある)は、半導体のドライエッチング剤やCVD装置のクリーニングガスとして近年注目されているが、これらの用途に使用されるNF3ガスは高純度のものが要求されている。
【0003】
NF3ガスは、酸性弗化アンモニウム単独または弗化アンモニウムと弗化水素を原料とするNH4F・xHFを電気分解するいわゆる溶融塩電解法や、アンモニアと弗素を反応させる方法など、種々の方法で製造される。
【0004】
上記の方法で製造されたNF3ガス中には、N2、N2O、CO2及び弗化水素等の種々の化合物が不純物として含有されていることが知られている。本発明者等は、上記のいずれの方法で得られたNF3ガスも、ほとんどの場合、酸化二窒素(以下、N2Oと表すことがある)を比較的多量に含有しており、特に溶融塩電解法で得られたNF3ガスは、多い場合、数千ppm程度(ppmは容積基準を表す。以下同様)のN2Oを含有していることを確認した。従って、高純度のNF3ガスを得るためには、これらの不純物を除去する必要がある。
【0005】
これらの不純物の除去方法については種々の方法が提案されている。
【0006】
2Oに関しては米国特許第4,156,598号に開示されているように、合成ゼオライトなどの吸着剤にN2Oを含有するNF3ガスを通気し、N2Oを吸着させ精製する方法が一般的である。
【0007】
しかし、これらの吸着剤はN2Oの吸着量がある量に達すると、N2Oが吸着剤からリークするようになるため、吸着剤の再生作業や交換作業が必要となる。このため連続運転を行う場合、予備塔の設置、吸着剤再生装置の設置等を必要とし精製システムが複雑となるなどの問題がある。また吸着剤には高価なものもあるため、高コストとなるという問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、N2Oを選択的にかつ効率よくしかも経済的に除去することのできるNF3ガスの精製方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため、NF3ガス中のN2Oの除去方法について鋭意検討を重ねた結果、N2Oを含有するNF3ガスを硫酸水溶液と接触させると、NF3ガス中のN2Oを極めて効率よく経済的に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、次の事項により特定することができる。
(1) 三弗化窒素ガスの精製方法において、酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液とを接触させることにより酸化二窒素を除去することを特徴とする三弗化窒素ガスの精製方法。
(2) 硫酸水溶液が、0.01〜98質量%の硫酸濃度を有する硫酸水溶液である(1)記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
(3) 硫酸水溶液が、液中のCO2を予め除去したものである、(1)または(2)記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
(4) 酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液との接触時間が1〜1200sである(1)ないし(3)のいずれかに記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
(5) 酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液との接触を、バブラー装置を用いて行う(1)ないし(4)のいずれかに記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
(6) 酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液との接触を、スクラバー装置を用いて行う(1)ないし(4)のいずれかに記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
(7) バブラー装置またはスクラバー装置が、接液部または接ガス部に耐酸性の樹脂からなる部材が用いられたものである(5)または(6)記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
(8) バブラー装置またはスクラバー装置が、接液部または接ガス部に耐酸性の樹脂コーテイングもしくはライニングを施されたものである(5)または(6)記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の対象とするNF3ガスは、少なくともN2Oを含むものであるが、N2O以外の不純物を含むものであってもよい。また、キャリアーガスとして、He、ArまたはN2等の不活性ガスを混合して通気し、硫酸水溶液と接触させてもよい。
【0012】
以下、N2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液とを接触させてN2Oを除去しNF3ガスを精製する方法について述べる。
【0013】
本発明に使用する硫酸は、特に限定されないが、市販の工業用硫酸を用いるのが好ましい。
【0014】
本発明に使用する硫酸水溶液の硫酸濃度は、通常は、0.01〜98質量%であり、好ましくは、0.1〜50質量%である。
【0015】
硫酸水溶液の硫酸濃度を0.01質量%以上とするとN2Oの除去が効果的に行われるので好ましい。また、硫酸水溶液の硫酸濃度を98質量%以下にすると、硫酸水溶液を調製するのに使用する硫酸として、工業用硫酸を使用することができるので、大量に、容易に入手することができ、また亜硫酸ガスの発生などの問題を生ずる虞もない。。
【0016】
また、硫酸水溶液にはCO2が数百ppm溶解していることがあるところから、本発明に使用する硫酸水溶液は、予めCO2を除去しておくのが好ましい。硫酸水溶液からCO2を予め除去する方法としては、例えば、硫酸水溶液を20〜150℃の温度で1〜20時間予熱し除去する方法、放散塔による硫酸水溶液放水やN2などの不活性ガスをバブリングする方法等を挙げることができる。これらのうちでは、放散塔による硫酸水溶液散水がより好ましい。
【0017】
予め、CO2を除去することにより、後の工程にCO2除去装置を設ける必要がなくなり、あるいは、CO2除去装置を設けた場合においても、負荷を減少することができるので、経済的な面からも予めCO2を除去した硫酸水溶液を使用するのが好ましい。
【0018】
2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液とを接触させる時間(接触時間と表すことがある)は、一般的には1〜1200sの範囲であり、好ましくは10〜600sの範囲である。
【0019】
接触時間を1s以上にするとN2Oの硫酸水溶液への吸収効率が向上するので好ましい。接触時間を1200s以下とすると、N2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液とを接触させるために用いる装置の大型化が抑えられ経済的に好ましい。
【0020】
2Oを含有するNF3ガスを、硫酸水溶液に接触させる温度は特に限定されるものではないが、硫酸濃度の高い硫酸水溶液を用いたときには、寒冷地では固結し、気液接触が行われない場合があるので、硫酸水溶液の温度を、融点を超える温度であって沸点未満の温度とするのが好ましい。また、N2Oを含有するNF3ガスを、硫酸水溶液に接触させる圧力も特に限定されるものではないが、一般的には、−0.05〜5MPaのゲージ圧の下で行うことができる。
【0021】
次に、N2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液との接触操作について述べる。
【0022】
2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液との接触を行う装置は、特に限定されず、公知の装置を用いればよい。例えば、バブラー装置、スクラバー装置を挙げることができる。
【0023】
図1に本発明に使用することのできる、N2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液との接触を行う装置の一例である、バブラー装置の概要を示す。図1に示したバブラー装置は、硫酸水溶液を張る容器1、容器1中の硫酸水溶液にN2Oを含有するNF3ガスを吹き込むガス入口管2および硫酸水溶液と接触させたNF3ガスを系外に導出するガス出口管3を有する。図1に示したバブラー装置は構造が単純で、保守点検性に優れ安価であるという利点があるが、接触時間が比較的短くなる。
【0024】
図2に、本発明に使用することのできる他のバブラー装置の概要を示す。図2に示したバブラー装置は、硫酸水溶液を張る容器1、容器1中の硫酸水溶液にN2Oを含有するNF3を吹き込むガス入口管2、撹拌翼5を備えた撹拌機4および硫酸水溶液と接触させたNF3ガスを系外に導出するガス出口管3を有する。図2に示したバブラー装置は、図1に示したバブラー装置よりも接触時間を長くすることができるが、攪拌機のシール部のからのガス漏れを防止する機構を必要とする。
【0025】
図3に、本発明に使用することのできる、N2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液との接触を行う装置の一例である、スクラバー装置の概要を示す。図3に示したスクラバー装置は、スクラバー本体6にN2Oを含有するNF3ガスを導入するガス入口管2、スクラバー本体内に充填された充填材9、硫酸水溶液を系内に循環するための循環ポンプ8、系内に循環させる硫酸水溶液を貯留する循環容器7および硫酸水溶液と接触させたNF3ガスを系外に導出するガス出口管3を有する。ガス入口管2から導入されたN2Oを含有するNF3ガスは、スクラバー本体6において、特に、充填材が充填された層(充填層と表すことがある)において、系内を循環する硫酸水溶液と向流接触しN2Oが除去せしめられガス出口管3から系外に導出される。
【0026】
充填材としては、スクラバー内径の3〜30%のサイズを有するラシヒリング、テラレット、サドルなどを用いることができる。充填層における硫酸水溶液の流量は、通常、硫酸とNF3ガスとの重量モル比で3〜20000の範囲であり、好ましくは5〜2000の範囲である。図3に示したスクラバー装置は、高価ではあるが、上述したバブラー装置に比較し、接触時間((スクラバー容積÷単位時間当たりのガス流量)により定義する)を長く取ることができる。これにより、N2Oの除去効率を非常に高くすることができるという利点を有する。更に、硫酸水溶液の循環量やNF3ガス流量を比較的広範囲に操作できるので、生産量の変動に追従できるシシテムを構築することができるといった利点も挙げられる。
【0027】
本発明に使用することのできる、N2Oを含有するNF3ガスと硫酸水溶液との接触を行う装置としては、耐酸性の材料からなる部材を用いて構成された装置、あるいは、耐酸性の材料からなる、コーテイング若しくはライニングが施された装置が好ましい。特に、NF3ガス等のガス相と接触する接ガス部、硫酸水溶液等の液相と接触する接液部等の部材が、少なくとも、耐酸性の材料からなる部材であるもの、あるいは、金属材料からなる部材から構成された装置にあっては、耐酸性の材料からなる、コーテイング若しくはライニングが施されているものを用いるのが好ましい。
【0028】
耐酸性の材質を有する材料としては、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の耐酸性の樹脂等を挙げることができる。
【0029】
このような構成を有する装置を用いることにより、硫酸水溶液等の液状物質や、NF3ガス等による腐食が防止され、金属製の部材の場合に、腐食によっ生成する水素とNF3ガスとの反応により引き起こされる虞のある爆発等の事故を防止することができる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。これらは、発明の理解を深めることを目的とするものであり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、本実施例において、特に明記しない限り、%およびppmは容量基準を表す。
【0031】
(実施例1)
NH4F・HFの溶融塩電解を行いNF3ガスを得た。得られたNF3ガス(未精製NF3ガスと表すことがある)をTCD検出器を備えたガスクロマトグラフィーにより分析したところ、NF3:58%、N2:39%、N2O:1300ppmであった。図1に示したバブラー装置を使用して、表1に示す実験条件で、このNF3ガスを精製した。
【0032】
図1に示したバブラー装置の容器1(内径30mm、高さ500mm)に、硫酸濃度が98質量%の硫酸水溶液300mlを充たし、ガス入口管2より5ml/minの流量で未精製NF3ガスを導入しガス出口管3より精製したNF3ガスを取り出した。
【0033】
得られた精製NF3ガス中のN2O含有量は、第1表に示す通り、700ppmであった。尚、このとき、硫酸水溶液中へNF3ガスを導入してからNF3ガス気泡が液面まで到達するのに要した時間(接触時間)は、1.5sであった。
【0034】
(実施例2)
図2に示すバブラー装置を使用したこと以外は実施例1と同様にして、NF3ガスを精製した。
【0035】
図2に示すバブラー装置は、硫酸濃度が50質量%の硫酸水溶液300mlを充たした容器1(内径30mm、高さ500mm)に、外径25mm、幅6mmの十字パドル撹拌翼5を4つ備えた攪拌機4を設置したものである。硫酸水溶液は、回転数100rpmで撹拌した。
【0036】
実験条件および得られた精製NF3ガス中のN2O含有量を表1に示した。また、接触時間は4sであった。
【0037】
(実施例3)
図3に示すスクラバー装置を使用し、ガス入口管2より導入するNF3ガスの流量を20ml/minとした以外は実施例1と同様にしてNF3ガスの精製を行った。
【0038】
図3に示すスクラバー装置は、スクラバー本体6(内径25mm、高さ1000mm、充填材の充填高600mm)に、充填材9(外径3mm、内径2mm、長さ3mmのリング)を充填し、硫酸濃度が12質量%の硫酸水溶液5Lを充たした循環容器7より、循環ポンプ8を用いて32ml/minの流量で硫酸水溶液を定量的に循環するものである。
【0039】
実験条件および得られた精製NF3ガスのN2O含有量を表1に示した。また、接触時間は、280sであった。
【0040】
(実施例4)
硫酸水溶液の濃度を、0.1質量%とした以外は、実施例3と同様にしてNF3ガスの精製を行った。また、接触時間は280sであった。
【0041】
実験条件および得られた精製NF3ガスのN2O含有量を表1に示した。
【0042】
【表1】
Figure 0004010847
【0043】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明のNF3ガスの精製方法は、N2Oを含有するNF3ガスを硫酸水溶液に接触させることによりN2Oを簡単に除去することを可能としたものであり、本発明の実施によりN2O含有量の少ない精製NF3ガスを効率良く経済的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用することのできるバブラー装置の一例の概要を示す模式図である。
【図2】本発明に使用することのできるバブラー装置の他の一例の概要を示す模式図である。
【図3】本発明に使用することのできるスクラバー装置の一例の概要を示す模式図である。
【符号の説明】
1 容器
2 ガス入口管
3 ガス出口管
4 攪拌機
5 撹拌翼
6 スクラバー本体
7 循環容器
8 循環ポンプ
9 充填材

Claims (8)

  1. 三弗化窒素ガスの精製方法において、酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液とを接触させることにより酸化二窒素を除去することを特徴とする三弗化窒素ガスの精製方法。
  2. 硫酸水溶液が、0.01〜98質量%の硫酸濃度を有する硫酸水溶液である請求項1記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
  3. 硫酸水溶液が、液中のCO2を予め除去したものである、請求項1または2記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
  4. 酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液との接触時間が1〜1200sである請求項1ないし3のいずれかに記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
  5. 酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液との接触を、バブラー装置を用いて行う請求項1ないし4のいずれかに記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
  6. 酸化二窒素を含有する三弗化窒素ガスと硫酸水溶液との接触を、スクラバー装置を用いて行う請求項1ないし4のいずれかに記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
  7. バブラー装置またはスクラバー装置が、接液部または接ガス部に耐酸性の樹脂からなる部材が用いられたものである請求項5または6記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
  8. バブラー装置またはスクラバー装置が、接液部または接ガス部に耐酸性の樹脂コーテイングもしくはライニングを施されたものである請求項5または6記載の三弗化窒素ガスの精製方法。
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