JP4010840B2 - 油圧緩衝器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動二輪車等のステアリングダンパに用いて好適な油圧緩衝器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動二輪車等では、車体とハンドルの間にステアリングダンパを介装している。ステアリングダンパは、タイヤが路面から受けるキックバック等の外乱に基づく、ハンドルの操舵方向の振れを吸収する。
【0003】
従来のステアリングダンパは、ダンパー本体内を摺動するピストンに、ダンパー本体の両端を貫通して外部に延びるピストンロッドを設け、ダンパー本体内のピストンの両側の各油室を、該ダンパー本体に付帯するサブタンク内の油室に連通し、該サブタンク内の油室の一端側に、ばねにて背面支持したフリーピストンを設けている。
【0004】
ステアリングダンパに設けたフリーピストンは、ダンパー本体内油室を加圧して作動油のキャビテーションを防止すること、作動油の温度による体積変化を補償してシール部の破損を防止すること、過大入力を吸収してダンパー本体内の急激な圧力上昇を回避してシール部の破損を防止することに寄与する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来技術では、フリーピストンがダンパー本体内の一方の油室だけを加圧するものとしており、以下の問題点がある。
【0006】
▲1▼ダンパー本体内の一方の油室が過大に昇圧される左右一方の操舵方向に作用する過大入力時においてのみ、過大入力吸収作用が発揮されるに過ぎない。
【0007】
▲2▼通常のハンドル操作時にはフリーピストンを不動とするように、フリーピストンを付勢するばねのばね荷重を設定している。ところが、実際には通常操作時にも、ダンパー本体内の一方の油室が昇圧される左右一方の操舵力によりフリーピストンが変位してしまうことがある。この場合、左右一方の操舵力の抜け感を生じ、左右の操舵性能に差を生ずる。
【0008】
本発明の課題は、ステアリングダンパを構成する油圧緩衝器において、左右両方の操舵方向で過大入力吸収作用を発揮させるとともに、左右の操舵性能差を少なくすることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ダンパー本体内を摺動するピストンに、ダンパー本体の両端を貫通して外部に延びるピストンロッドを設け、ダンパー本体内のピストンの両側の各油室を、該ダンパー本体に付帯するサブタンク内の油室に連通し、該サブタンク内の油室の一端側に、ばねにて背面支持したフリーピストンを設けた油圧緩衝器において、前記フリーピストンの外周と前記サブタンクの内周との間に、該フリーピストンの移動範囲内で、前記ダンパー本体内に設けた一方の油室と常時連通する環状の油室を設け、前記サブタンク内の油室の他端側に第1の隔壁部材を固定するとともに、前記フリーピストンの先端に、前記第1の隔壁部材と摺動嵌合する第2の隔壁部を設け、該第2の隔壁部の内周側と外周側のそれぞれに油室を密封区画し、該第2の隔壁部の外周側の油室を前記ダンパー本体内に設けた他方の油室に常時連通し、該内周側の油室を、前記環状の油室を介して、前記ダンパー本体内に設けた一方の油室に常時連通したものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記フリーピストンの前記外周側の油室と前記内周側の油室の各受圧面積を略同一に形成したものである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において更に、前記第1の隔壁部材に、前記外周側の油室と前記内周側の油室を連通するオリフィス油路を設け、該オリフィス油路に前記サブタンクの外部から操作される減衰弁を臨ませたものである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において更に、前記ダンパー本体が内筒と外筒からなり、前記サブタンクを前記ダンパー本体に連設して一体に形成し、前記内筒と外筒の間の軸方向中間部に2つの油室を区画する仕切部を設け、該仕切部の両側の油室を介して、前記内筒内を摺動する前記ピストンの両側の油室の一方を前記サブタンク内に設けた第2の隔壁部の内周側の油室に連通し、前記ピストンの両側の油室の他方を前記第2の隔壁部の外周側の油室に連通したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は油圧緩衝器を示す断面図、図2は図1の要部拡大図である。
油圧緩衝器10は、自動二輪車等のステアリングダンパを構成する。油圧緩衝器10は、ダンパー本体11の内部を摺動するピストン12に、ダンパー本体11の両端に設けたロッドガイド13、14を貫通して外部に延びるピストンロッド15を設けている。油圧緩衝器10は、ダンパー本体11を内筒16と外筒17からなるものとし、外筒17の一端側にOリング13Aを備えたロッドガイド13、オイルシール18を液密に嵌合し、外筒17に螺着したキャップ19によりロッドガイド13を内筒16にOリング13Bを介して液密に嵌合してバックアップ保持するとともに、外筒17の他端側にOリング14Aを備えたロッドガイド14、オイルシール21を液密に嵌合し、外筒17に螺着したキャップ22によりロッドガイド14を内筒16にOリング14Bを介して液密に嵌合してバックアップ保持し、結果として、両キャップ19、22により内筒16、ロッドガイド13、14、オイルシール18、21を外筒17に固定化する。
【0014】
油圧緩衝器10は、ダンパー本体11を車体に連結する車体側連結部23を外筒17の外側部に設け、ピストンロッド15をハンドルの左右の一端側に連結するハンドル側連結部24をピストンロッド15の一端部に設けている。
【0015】
油圧緩衝器10は、ダンパー本体11内のピストン12の両側の各油室31、32を、ダンパー本体11に付帯するサブタンク40内の油室50に連通する。油圧緩衝器10は、サブタンク40内の油室50の一端側に、ばね41にて付勢したフリーピストン60を摺動可能に設けている。ばね41は、サブタンク40の一端側開口にストッパリング42で支持されたキャップ43により支持される。ばね41は、空気室の空気ばねによるものでも良い。
【0016】
油圧緩衝器10は、フリーピストン60の一端部と中間部に設けた大径部61、62をサブタンク40にそれぞれOリング61A、62Aを介して液密に挿入し、大径部61と大径部62に挟まれるフリーピストン60の外周と、サブタンク40の内周との間に、フリーピストン60の移動範囲内で、ダンパー本体11に設けた連通路31Aを介して該ダンパー本体11に設けた一方の油室31と常時連通する環状油室51を設けている。
【0017】
油圧緩衝器10は、サブタンク40内の油室50の他端側に第1の隔壁部材44を螺着して固定するとともに、フリーピストン60の先端に、第1の隔壁部材44とOリング63Aを介して液密に摺動嵌合する小径の第2の隔壁部63を設け、該第2の隔壁部63の内周側と外周側のそれぞれに内周側油室52と外周側油室53を密封区画している。
【0018】
第2の隔壁部63の内周側油室52は、フリーピストン60内に設けた油路64を介して前記環状油室51に常時連通し、ひいてはダンパー本体11の一方の油室31に常時連通する。
【0019】
第2の隔壁部63の外周側油室53は、ダンパー本体11に設けた連通路32Aと、サブタンク40の内周と第1の隔壁部材44の外周との環状間隙45を介して、ダンパー本体11の他方の油室32に常時連通する。
【0020】
従って、油圧緩衝器10にあっては、ダンパー本体11内の一方の油室31がフリーピストン60に設けた環状油室51と、フリーピストン60の第2の隔壁部63に設けた内周側油室52に常時連通する。フリーピストン60の環状油室51の大径部61側と大径部62側の互いに相対する受圧面は該環状油室51の軸方向の両側に設けられて互いに相殺し合う。従って、フリーピストン60は内周側油室52の受圧面を介してダンパー本体11内の一方の油室31を加圧する。
【0021】
他方、ダンパー本体11内の他方の油室32は、フリーピストン60の第2の隔壁部63に設けた外周側油室53に常時連通する。従って、フリーピストン60は外周側油室53の受圧面を介してダンパー本体11内の他方の油室32を加圧する。
【0022】
これにより、フリーピストン60は、ダンパー本体11内の両方の油室31、32をともに加圧するものになる。
【0023】
ここで、油圧緩衝器10は、フリーピストン60の内周側油室52と外周側油室53の各受圧面積を略同一に形成している。
【0024】
また、油圧緩衝器10は、減衰力調整装置70を有する。減衰力調整装置70は、サブタンク40に設けた第1の隔壁部材44に、フリーピストン60の内周側油室52と外周側油室53を連通するオリフィス油路71を設け、サブタンク40の外部から操作されるニードル状減衰弁72をオリフィス油路71に臨ませている。減衰弁72はアジャスタ73に加える回転操作により、第1の隔壁部材44に対して螺動し、オリフィス油路71の開度を調整し、オリフィス油路71を通過する作動油に該オリフィス油路71の開度に応ずる通路抵抗を及ぼす。アジャスタ73はボールとスプリングからなるクリックストップ機構部74を付帯して備え、オリフィス油路71の開度を段階的に調整可能とする。
【0025】
また、油圧緩衝器10は、サブタンク40をダンパー本体11に連設して一体に形成している。そして、内筒16と外筒17の間の軸方向中間部に、2つの油室33、34を区画する仕切部35を外筒17に設ける。35AはOリングである。ダンパー本体11の内筒16を摺動するピストン12の一方の油室31を、内筒16の油路33A、油室33、外筒17の油路33Bからなる前述の連通路31Aと、環状油室51を介して、サブタンク40内に設けた第2の隔壁部63の内周側油室52に連通する。また、ダンパー本体11の内筒16内を摺動するピストン12の他方の油室32を、内筒16の油路34A、油室34、外筒17の油路34Bからなる前述の連通路32Aと、環状間隙45を介して、サブタンク40内に設けた第2の隔壁部63の外周側油室53に連通する。
【0026】
従って、油圧緩衝器10は、以下の如くに動作する。
(A)通常のハンドル操作
ハンドル操作により、ピストンロッド15が左右に緩速で摺動する。ピストンロッド15が図1、図2の左方向に摺動するときには、ダンパー本体11内の油室31の作動油が連通路31Aからサブタンク40内の油室50を経由し、減衰力調整装置70のオリフィス油路71を通り、連通路32Aからダンパー本体11内の油室32に移送され、この間の減衰力調整装置70で生ずる減衰力がハンドル操作力に負荷される。
【0027】
ピストンロッド15が図1、図2の右方向に摺動するときには、ダンパー本体11内の油室32の作動油が連通路32Aから減衰力調整装置70のオリフィス油路71を通り、サブタンク40内の油室50を経由し、連通路31Aからダンパー本体11の油室31に移送され、この間の減衰力調整装置70で生ずる減衰力がハンドル操作力に負荷される。
【0028】
尚、フリーピストン60はばね41のばね荷重により不動となるように設定されている。
【0029】
(B)路面からの外乱の吸収
タイヤが路面から受けるキックバック等の外乱により、ハンドルが操舵方向に振れようとするときには、ピストンロッド15が左右に急速に摺動する。このとき、ダンパー本体11内の油室31又は油室32の作動油が前述(A)と同一経路で減衰力調整装置70のオリフィス油路71を通過しようとするが、オリフィス油路71を通過しようとする油の流速が大きいために該オリフィス油路71の通路抵抗は大きく、オリフィス油路71がこの油の通過を阻止しようとする。これにより、ハンドルの振れがロックされ、外乱は吸収される。
【0030】
(C)過大入力の吸収
タイヤが縁石に衝突する等により、ハンドルが操舵方向に過大衝撃力を受けるときには、ダンパー本体11内の油室31又は油室32が過大に昇圧される。このとき、ダンパー本体11内で昇圧された油室31の作動油が前述(A)と同一経路でサブタンク40内の油室50(環状油室51、内周側油室52)に及び、フリーピストン60を変位させてこの過大衝撃力を吸収する。また、ダンパー本体11内で昇圧された油室32の作動油は前述(A)と同一経路でサブタンク40内の油室50(外周側油室53)に及び、この場合にも、フリーピストン60を変位させてこの過大衝撃力を吸収する。
【0031】
本実施形態によれば以下の作用がある。
(請求項1に対応する作用)
▲1▼フリーピストン60がダンパー本体11内の両方の油室31、32を加圧するから、下記(a)、(b)を実現できる。
【0032】
(a)ダンパー本体11内の一方の油室31が過大に昇圧される左右一方の操舵方向に作用する過大入力時にも、他方の油室32が過大に昇圧される左右他方の操舵方向に作用する過大入力時にも、タイヤが縁石に衝突する等の過大入力を吸収し、ダンパー本体11内の急激な圧力上昇を回避してシール部の破損を防止する。
【0033】
(b)通常のハンドル操作時に、左右両方の操舵力に対しフリーピストン60がほぼ同等に対応するから、左右一方の操舵力だけによりフリーピストン60が変位してしまう如くがなくなり、左右の操舵性能差を少なくできる。
【0034】
(請求項2に対応する作用)
▲2▼ダンパー本体11内の一方の油室31を加圧する、フリーピストン60の内周側油室52の受圧面積と、ダンパー本体11内の他方の油室32を加圧する、フリーピストン60の外周側油室53の受圧面積を略同一に形成した。従って、左右両方の操舵力に対しフリーピストン60が同等に対応し、左右の操舵性能差をなくし、左右のハンドル操作感を同じにできる。
【0035】
(請求項3に対応する作用)
▲3▼減衰力調整装置70をサブタンク40の外部から操作可能に設けたから、減衰力調整装置70の構造を簡素にし、減衰力の調整も容易化できる。
【0036】
(請求項4に対応する作用)
▲4▼ダンパー本体11内の両方の油室31、32のそれぞれが、内筒16と外筒17の間に設けた仕切部35の両側の油室33、34のそれぞれを介して、サブタンク40内におけるフリーピストン60の第2の隔壁部63に設けた内周側油室52と外周側油室53のそれぞれに連通される。従って、サブタンク40の全長を短くしながら、サブタンク40内の内周側油室52と外周側油室53のそれぞれに、ダンパー本体11内の両方の油室31、32のそれぞれを連通でき、サブタンク40の小型、油圧緩衝器10の小型を図ることができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ステアリングダンパを構成する油圧緩衝器において、左右両方の操舵方向で過大入力吸収作用を発揮させるとともに、左右の操舵性能差を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は油圧緩衝器を示す断面図である。
【図2】図2は図1の要部拡大図である。
【符号の説明】
10 油圧緩衝器
11 ダンパー本体
12 ピストン
15 ピストンロッド
16 内筒
17 外筒
31、32 油室
33、34 油室
35 仕切部
40 サブタンク
41 ばね
44 第1の隔壁部材
50 油室
51 環状油室
52 内周側油室
53 外周側油室
60 フリーピストン
63 第2の隔壁部
70 減衰力調整装置
71 オリフィス油路
72 減衰弁
Claims (4)
- ダンパー本体内を摺動するピストンに、ダンパー本体の両端を貫通して外部に延びるピストンロッドを設け、
ダンパー本体内のピストンの両側の各油室を、該ダンパー本体に付帯するサブタンク内の油室に連通し、
該サブタンク内の油室の一端側に、ばねにて背面支持したフリーピストンを設けた油圧緩衝器において、
前記フリーピストンの外周と前記サブタンクの内周との間に、該フリーピストンの移動範囲内で、前記ダンパー本体内に設けた一方の油室と常時連通する環状の油室を設け、
前記サブタンク内の油室の他端側に第1の隔壁部材を固定するとともに、前記フリーピストンの先端に、前記第1の隔壁部材と摺動嵌合する第2の隔壁部を設け、該第2の隔壁部の内周側と外周側のそれぞれに油室を密封区画し、
該第2の隔壁部の外周側の油室を前記ダンパー本体内に設けた他方の油室に常時連通し、該内周側の油室を、前記環状の油室を介して、前記ダンパー本体内に設けた一方の油室に常時連通したことを特徴とする油圧緩衝器。 - 前記フリーピストンの前記外周側の油室と前記内周側の油室の各受圧面積を略同一に形成した請求項1に記載の油圧緩衝器。
- 前記第1の隔壁部材に、前記外周側の油室と前記内周側の油室を連通するオリフィス油路を設け、該オリフィス油路に前記サブタンクの外部から操作される減衰弁を臨ませた請求項1又は2に記載の油圧緩衝器。
- 前記ダンパー本体が内筒と外筒からなり、
前記サブタンクを前記ダンパー本体に連設して一体に形成し、前記内筒と外筒の間の軸方向中間部に2つの油室を区画する仕切部を設け、該仕切部の両側の油室を介して、前記内筒内を摺動する前記ピストンの両側の油室の一方を前記サブタンク内に設けた第2の隔壁部の内周側の油室に連通し、前記ピストンの両側の油室の他方を前記第2の隔壁部の外周側の油室に連通した請求項1〜3のいずれかに記載の油圧緩衝器。
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