JP4010691B2 - 表面改質層を形成した鉄鋼材の作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具、金型、機械部品に応用し得る表面改質層を形成した鉄鋼材を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、窒化処理とTiNやTiC膜被覆などの硬質膜被覆処理とを組合せた複合処理を行なった鉄鋼材は、窒化処理と硬質膜被覆処理との両者の効果により、窒化処理だけの単独の処理の場合や、硬質膜被覆処理だけの単独の処理の場合よりも、耐摩耗性に優れた性能が得られるとされてきた(特開昭58−64377号公報、特公平6−2937号公報等参照)。また、複合処理を行なう場合、窒化処理により作成される窒化層には、Fe2N、Fe3Nからなるε相(白層)がなく、拡散層のみであることが必要とされてきた。
【0003】
しかし、従来は、拡散層のみの窒化層の表面硬さに関する認識はなく、窒化処理工程で得られる拡散層のみの窒化層の表面硬さのまま、次の硬質膜被覆処理を行なっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の方法で得られる表面改質層を形成した鉄鋼材は、無潤滑の3元アブレシブ摩擦摩耗試験によれば、窒化層の表面の硬さにより性能が大きく変わることが判明した。そこで本発明では、窒化層表面硬さの最適範囲を見出して、従来の複合処理された鉄鋼材よりも優れた耐摩耗性等の特性を有する鉄鋼材を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材の鉄鋼材料表面に窒化処理を施し、これを還元雰囲気下で400〜600℃の温度で熱処理し、表面硬さ(Hns)が下記式(I)に示す窒化層を形成し、ついで、該窒化層の表面に硬質膜被覆層を形成することを特徴とする表面改質層を形成した鉄鋼材の作製方法である。
【0006】
Hns=Hb+k(Hnmax−Hb)……(I)
ただし、k=0.8〜0.35
Hnmax…ε相(白層)を形成させずに窒化できる表面ビッカース
硬さの最高値
Hb…基材となる鉄鋼材料のビッカース硬さ
ビッカース硬さの測定荷重は100gfから1000gfとする。
【0008】
本発明において基材となる鉄鋼材料は、熱間ダイス鋼、冷間ダイス鋼、高速度工具鋼、マルエージング鋼等が用いられる。
【0009】
窒化層の形成は、公知の熔融塩を用いる方法、ガスを用いる方法、あるいはプラズマを用いる方法のどれでもよいが、代表的にはプラズマを用いる方法が用いられる。
【0010】
鉄鋼材料は表面窒化処置によりε相や黒化膜のような化合物類が生じると、このような表面に硬質膜を形成しても剥離を生じやすくなる。黒化膜は空気を遮断することによって生成を防止できるが、ε相の除去は難しい。そこで本発明では基材となる鉄鋼材料のビッカース硬さと、ε相を形成させずに窒化できる窒化層の最高の表面のビッカース硬さを基に、優れた物性値を発揮する最適な範囲を見出したのである。
【0011】
代表的な鉄鋼材料について、そのビッカース硬さ(Hb)とε相を形成させずに窒化できる窒化層の最高の表面のビッカース硬さ(Hnmax)を表1に示す。
【0012】
【表1】
【0013】
本発明において、窒化層の表面硬さを式(I)に示される範囲とすることにより、耐摩耗性が向上する理由は下記のことが考えられる。
【0014】
▲1▼拡散層のみの窒化層が最大硬さを示す状態では、大きな圧縮応力が表面に働いており、この表面に硬質膜を被覆することは、硬質膜には大きな応力が作用することになる。このため硬質膜が剥離しやすい状態となっていると考えられる。式(I)に示した表面硬さにすることにより、応力を緩和でき、硬質膜が剥離し難くなる。
【0015】
▲2▼拡散層のみの窒化層が最大硬さを示す状態では、窒化層表面に窒素が最も多く存在している状態であり、硬質膜を被覆する次の工程中に、表面から窒素がガス化していくため、硬質膜と窒化層表面との密着性を低下させてしまうと考えられる。窒化した表面をあらかじめ脱窒素しておくことにより、窒化層表面の窒素のガス化を防ぐことができる。
【0016】
▲3▼窒化処理後の表面には、X線回折などの通常の分析方法では検出できない若干のFe2N、Fe3Nからなるε相が存在しており、この相が硬質膜との密着性を悪くしていることが考えられるが、この相の生成を抑さえることで、特性の改善がはかられる。
【0017】
一般式(I)において、kの値が0.8より大きい場合、あるいは0.35より小さい場合には、拡散層のみの窒化層が最大硬さを示す状態で作成した複合処理を行なった鉄鋼材と耐摩耗性の性能はあまり変わらないため、さらに、kが0.35より小さい場合には、窒化処理した効果が得られず、複合処理を行なった鉄鋼材の耐摩耗性は硬質膜被覆した鉄鋼材とあまり変わらなくなるためである。
【0018】
このような窒化層表面硬さの調整は、窒化処理後の還元雰囲気による熱処理により行なう。還元雰囲気は、水素ガスの他、水素ガスと不活性ガスの混合ガスあるいは雰囲気として水素プラズマ雰囲気、水素ガスと不活性ガスの混合ガスのプラズマ雰囲気が代表的に用いられる。
【0019】
熱処理の温度は、400℃〜600℃の範囲で行なうが、400℃より温度が低い場合、窒化層の表面から窒素が脱窒素しにくくなり、さらに表面から基材内部への窒素の拡散が進行しにくくなり、また、600℃より温度が高い場合は、基材である鉄鋼材料の焼戻し温度以上となり、基材自体の軟化、寸法変化が起こるので、上記範囲とした。
【0020】
窒化層の表面に形成する硬質膜被覆層は、TiNやTiC膜などのチタン系硬質膜、炭素を主体とする硬質膜などがある。被覆層の形成手段としては、アルゴンイオンでボンバード処理を行ったものに対してイオンプレーティング法、その他通常用いられる手段を適宜適用する。代表的にはHCDC(中空陰極放電)イオンプレーティング法が用いられる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例並びに比較例に基づいて説明する。
【0022】
実施例に先立って、従来の複合処理試験片Aの作成について述べる。
【0023】
ビッカース硬さ470の熱間ダイス鋼(SKD61)製の試験片を窒化処理炉によりプラズマ窒化処理した後、大気中に取り出した。このときの窒化層の表面硬さは、基材ビッカース硬さ470のSKD61の窒化層表面の最高ビッカース硬さである1200であった。次にイオンプレーティング処理装置にセットし、Arボンバード処理した後、HCDイオンプレーティング法により、厚さ2μmのTiN膜を被覆し、複合処理試験片Aを作成した。
【0024】
次に本発明の複合処理試験片Bの作成について説明する。上記複合処理試験片Aと同様に、ビッカース硬さ470の熱間ダイス鋼(SKD61)製の試験片を窒化処理炉によりプラズマ窒化処理した後、大気中に取り出した。このときの窒化層の表面硬さは、基材ビッカース硬さ470のSKD61の窒化層表面の最高ビッカース硬さである1200であった。
【0025】
次に熱処理炉にセットし、水素ガス雰囲気下で550℃で2時間熱処理を行なった。熱処理炉を室温まで冷却し、試験片を取り出して窒化層表面の硬さを測定したところ、ビッカース硬さは870であった。次にイオンプレーティング処理装置にセットし、Arボンバード処理した後、HCDイオンプレーティング法により、厚さ2μmのTiN膜を被覆し、複合処理試験片Bを作成した。
【0026】
上記により作成した複合処理試験片A、Bともにプラズマ窒化処理した後には、表面には光輝性があり、ε相の生成は確認できなかった。
【0027】
これらの複合処理試験片A、Bをアルミニウム合金(A6063)を相手材として、図1に示すように無潤滑下での摺動試験を行なったところ、摩耗粉として硬質のアルミニウム酸化物摩耗粉が発生し、3元アブレシブ摩耗の状態となった。
【0028】
このときのすべり距離と摩耗量の関係を見ると、図2に示すように複合処理試験片Bでは、摩耗量が増加し始めるまでのすべり距離は750mであり、複合処理試験片Aの摩耗量が増加し始めるすべり距離100mに比較して長く、耐摩耗性が向上しているのがわかる。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、鉄鋼材表面に優れた耐摩耗性を有する複合表面改質層を得ることができる。このものは工具、金型、機械部品などに応用して有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】無潤滑下での摺動試験の試験部の説明図である。
【図2】複合処理試験片A、Bの摺動試験におけるすべり距離と摩耗量の関係を示すグラフである。
Claims (1)
- 基材の鉄鋼材料表面に窒化処理を施し、これを還元雰囲気下で400〜600℃の温度で熱処理し、表面硬さ(Hns)が下記式(I)に示す窒化層を形成し、ついで、該窒化層の表面に硬質膜被覆層を形成することを特徴とする表面改質層を形成した鉄鋼材の作製方法。
Hns=Hb+k(Hnmax−Hb)……(I)
ただし、k=0.8〜0.35
Hnmax…ε相(白層)を形成させずに窒化できる表面ビッカース
硬さの最高値
Hb…基材となる鉄鋼材料のビッカース硬さ
ビッカース硬さの測定荷重は100gfから1000gfとする。
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JP2000234162A JP2000234162A (ja) | 2000-08-29 |
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1999
- 1999-02-12 JP JP03428399A patent/JP4010691B2/ja not_active Expired - Fee Related
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