JP4008769B2 - 展示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、美術館や博物館等において美術品や文化財等の展示品を収容する展示ケースのような展示装置の構成に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ガラス板等からなる下向き開口状のケース本体で基台上の展示空間の周囲を覆うように構成した展示装置は、ケース本体内の展示品を出し入れするために、ケース本体を基台に対して昇降させる機能を備えていることが多い。
【0003】
例えば、米国特許第5820233号公報には、基台の四隅部に立設した駆動モータ付きねじジャッキ体でケース本体の下端側の四隅部を支持し、四隅のねじジャッキ体を、各駆動モータで同期させて上下駆動させることにより、ケース本体を基台に対して昇降動させることが記載されている。
【0004】
他方、特開2002−17521号公報には、略箱状の基台の四隅部に立設したねじジャッキ体でケース本体の下端側の四隅部を支持し、基台内に配置した1つの駆動モータから、水平配置された回転軸とベベルギヤ等からなる伝動機構を介して四隅のねじジャッキ体に対して動力伝達するように構成し、これらねじジャッキ体群を同期させて上下駆動させることにより、ケース本体を基台に対して昇降動させるというものが記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記米国特許第5820233号公報の場合は、ケース本体を基台に対して昇降させる機構として、ねじジャッキ体を4本も必要とするばかりか、1つのねじジャッキ体ごとに駆動モータを設けているので、部品点数が多くて製造コストが嵩む。また、4つの駆動モータを同期作動させるための制御を精密に行わないと4本のねじジャッキ体の昇降動作に食い違いが発生し易いという問題があった。
【0006】
他方、前記特開2002−17521号公報の場合は、基台内の1つの駆動モータからの動力が四隅のねじジャッキ体全てに配分されるので、前記米国特許の場合よりも駆動モータの数が少なくなっているものの、ねじジャッキ体を4本も必要とすることは前記米国特許の場合と変わらないので、製造コストの点からみて改良の余地があった。
【0007】
また、この種の展示装置では、ケース本体で囲われた基台上の展示空間に配置された展示物品に上方から照明を当てたい場合、前記ケース本体の天井部位に照明装置を配置することが通常行われている。その場合、基台側に電源部等のコントローラ部を有し、それからケース本体の照明装置に配線する必要がある。その配線個所は展示効果が損なわれないケース本体の片隅(平面視で2枚のガラス板が略直交する隅部)に上下方向に配線用管体を配置し、この配線用管体の下端側はケース本体が上昇した位置でも基台の上部に上下摺動自在に嵌まっていることが望ましい。
【0008】
しかしながら、前記両先行技術では、いずれもケース本体の下端側の四隅部をねじジャッキ体にて支持しており、前記配線用管体の配置と干渉してしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題を解消した展示装置を提供することを技術的課題とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この技術的課題を解決するため、請求項1の発明は、基台と、該基台の上方に設定した展示空間を包囲する位置に配置されたガラス板等からなるケース本体と、前記基台に対してケース本体を昇降させる昇降機構とを備えた展示装置において、前記昇降機構は、同期して鉛直軸線回りに回転する左右一対のねじ軸と、該一対のねじ軸にそれぞれ螺合する横梁部材と、該横梁部材に前記ねじ軸を挟んで立設し、且つ前記ケース本体の下端部を支持するための少なくとも一対の昇降支柱とを備え、前記一対のねじ軸は前記基台に回転のみ可能に支持され、前記一対の昇降支柱は基台に設けた軸受部材を介して鉛直方向にのみ移動可能に軸支されているというものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載した展示装置において、前記昇降機構は、1つの駆動モータにより同期して互いに同一方向または逆方向に回転する一対の横伝動軸を介して前記一対のねじ軸に動力伝達するように構成されているというものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した展示装置において、前記昇降支柱は、平面視で少なくとも四隅部を有するケース本体における前記各隅部以外の箇所を支持するように構成したというものである。
【0013】
請求項4の発明は、基台と、該基台の上方に設定した展示空間を包囲する位置に配置されたガラス板等からなるケース本体と、前記基台に対してケース本体を選択的に昇降させる昇降機構とを備えた展示装置において、前記昇降機構は、前記ケース本体の下端部を支持するための少なくとも左右一対の昇降支柱を同期して昇降するように構成し、前記一対の昇降支柱は、平面視で少なくとも四隅部を有するケース本体における前記四隅部を除いた側辺部近傍を支持するように構成したというものである。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちいずれかに記載した展示装置において、前記ケース本体の上部側に配置した照明装置に対する配線用管体を、ケース本体の隅部に略鉛直状に配置し、前記基台には前記配線用管体を上下案内する案内部を有するというものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1〜図7は本発明を適用した第1実施形態を示している。ここで、図1は展示装置の全体構成を示す斜視図、図2は展示装置の側断面図、図3は基台の正断面図、図4は基台の側断面図、図5は昇降機構の作用を示す説明図、図6は配線用管体を示す側断面図、図7は開閉扉を開放した場合のヒンジ体を示す平面図である。
【0016】
展示装置1は、略箱型の基台2と、この基台2よりも上方の展示空間Sを取り囲む硬化ガラス板や高透過率ガラス板等からなる下向き開口状のケース本体3とを備えている。
【0017】
図1及び図2に示すように、基台2は、鋼材やアルミ材製等の4本の支柱4及び多数本の上下水平フレーム5a,5bによって枠状の骨組が構成されている。基台2の外周面のうち背面及び左右両側面には、化粧板6が張設されている。開口状の前面には、この開口を開閉可能に塞ぐ左右回動式の開閉扉7が上下一対のヒンジ体8,8を介して取付けられている。
【0018】
これら各ヒンジ体8は、基台2の前面開口部の上下位置に設けた前向き開口コ字状の上枠9及び下枠10に挿入固定した支持ブラケット部11、開閉扉7の基端側のプレート(図示せず)及びガイドレール12を介して装着した第1リンク13、第2上リンク14及び第2下リンク15等により構成されている(図7に上側のヒンジ体8のみ示す)。
【0019】
開閉扉7を平面視で略90°まで開放した場合は、第1リンク13の中途部が開閉扉7の基端側に設けた固定軸16に当接して、開閉扉7がこれ以上の角度で開くことを阻止するようになっている(図1及び図7参照)。
【0020】
基台2の内部には、その上方のケース本体3を基台2に対して昇降させる昇降機構20のほか、昇降機構20を駆動操作するための操作スイッチ21、基台2の上面に上向き突設した光ファイバー等の照明具22(実施形態では4つ)の光量を調節する調光器23、ケース本体3の天蓋体32(詳細は後述する)に設けた照明装置としての照明灯24の光量を調節する調光ボックス25等の各種操作部や、図示しない制御盤等が内装されている(図1〜図3等参照)。
【0021】
この実施形態では、基台2内の上部側に上向き開口略箱型の収納部27が設けられており、この収納部27内に、展示空間S内の湿度を一定に保持するための調湿材26が配置されている(図2参照)。操作スイッチ21や調光器23等の各種操作部は収納部27の下方に配置されている(図1参照)。各種操作部の下方(基台2内の下部側)には、昇降機構20を構成する駆動モータ40等が配置されている(詳細は後述する)。
【0022】
通常、基台2の前面開口部は、前述した開閉扉7で閉止されているので、基台2内の収納部27や各種操作部等は、展示装置1の前方から見えなくなっている(隠されている)。
【0023】
一方、基台2における下面の四隅部には、据付に際しての水平を出すため、高さ調節用のアジャスタ28(実施形態では4つ)が取付けられており、前記四隅部よりも内側の部位には複数のキャスタ29が取付けられている(実施形態では4つ、図1及び図3等参照)。
【0024】
また、基台2における開口状の上面には、この開口を覆うパンチングメタル板18が張設されており、このパンチングメタル板18に穿設した空気穴(図示せず)を介して、展示品Tを収容する展示空間Sが基台2内の上部側に位置する収納部27に連通している(図6参照)。これにより、調湿材26で湿度を調整した調和空気が、パンチングメタル板18の空気穴から展示空間S内に送り込まれる。
【0025】
前述した光ファイバー等の照明具24は、このパンチングメタル板18の適宜位置に上向き突設されている。パンチングメタル板18上には、美術品や文化財等の展示品Tを載置するための展示台19が取付けられている。
【0026】
図1及び図2に示すように、ケース本体3は、基台2の上方に位置する展示空間Sの四周を取り囲む硬化ガラス板等の4枚の透明板31と、4枚の透明板31における下端部を支持する平面視矩形状または正方形状の枠部材33と、これら4枚の透明板31の上端側の開口を塞ぐ天蓋体32とにより構成されている。
【0027】
各透明板31の下端部は、シリコン樹脂製等のコーキング剤35を介して枠部材33の外周部に接着固定されている(図6参照)。そして、各透明板31の上端部も、コーキング作用を有するシリコン樹脂製等の接着剤(コーキング剤)35を介して天蓋体32の下面側の周縁部に接着固定されている。
【0028】
天蓋体32は金属板製等のものであり、上面が略日字状に開口した略箱型に形成されている。天蓋体32における上面の前後両開口には、上下回動式の扉36,36が蝶番(図示せず)を介して装着されており、これら各扉36の内面(下面)に照明灯24が2つずつ(計4つ)取付けられている。また、天蓋体32の下面(ケース本体3の天井面)には、アルミ等の帯板を平面視で縦横に格子状に噛み合わせてなるルーバー37が配設されている。
【0029】
次に、図3〜図5を参照しながら、第1実施形態における昇降機構20の構造について説明する。
【0030】
図3に示すように、基台2内の各種操作部よりも下方位置には、正逆回転可能な駆動モータ40と第1ギアボックス41とが、駆動モータ40を上側に第1ギアボックス41を下側にして配設されている。
【0031】
駆動モータ40の出力軸42に固定したプーリと、第1ギアボックス41から後ろ向きに突出した入力軸43(図5参照)のプーリとには、動力伝達用のタイミングベルト等の無端帯44を巻き掛けてベルト伝動するように構成されている。
【0032】
第1ギアボックス41は、傘歯車機構を用いて駆動モータ40からの動力を分岐させるためのものである。第1ギアボックス41の内部には、1つの入力ベベル歯車46と1つの従動ベベル歯車47aとが互いに直交して噛合うように配置され、入力ベベル歯車46に入力軸43を連結する。前記従動ベベル歯車47aを支持する回転軸41aの両端が第1ギアボックス41の左右両側に突出しており、この回転軸41aの両端に、カップリング(軸継手)75を介して左右両横伝動軸45、45を連結し、各横伝動軸45、45の中途部等を軸受76にて軸支している(図3参照)。入力歯車46が回転すると、左右の横伝達軸45,45は同方向に回転することとなる。
【0033】
左右の下水平フレーム5bの長手(前後)方向中央部に配置した左右一対の第2ギアボックス48、48には、各横伝達軸45の他端に連結するベベルギヤ47bと、基台2内にて鉛直状に延びる左右一対のねじ軸49、49にそれぞれ動力伝達するためのベベルギヤ50とを備え、両ベベルギヤ47b、50は互いに90度の関係で噛合う(図3、図5参照)。
【0034】
前記左右一対のねじ軸49、49の下端部は前記ベベルギヤ50に連結する軸とカップリング75を介して回転のみ可能に連結されている。また、前記第1ギヤボックス41及び第2ギヤボックス48のベベルギヤによる動力伝達から理解できるように、駆動モータ40の正回転により、左側のねじ軸49が時計回りに回転し、右側のねじ軸49は反時計回りに回転することになる。従って、左右のねじ軸49の外周面には、螺旋状の転動溝(図示せず)が互いに逆ネジの関係で形成されており、これらのネジ軸49を通常ボールねじ軸と称している。各ねじ軸49の上端は左右の上水平フレーム5aの下面側に固定した軸受部材51にて回転のみ自在に軸支されている(図3及び図4参照)。
【0035】
また、各ねじ軸49には、前後に長い横梁部材52の長手方向中途部に設けたボール軸受体(ボールナット)53を螺合させ、左右の横梁部材52には、ねじ軸49を挟んだ両端部に、上方に延びる一対の昇降支柱54,54が取付けられている。前記ボール軸受体53における軸穴の内周面には、前記ねじ軸49の転動溝に対向する転動溝が形成されており、これら両転動溝で形成される螺旋通路には多数個のボールが介挿されている。そして、ボール軸受体53内には螺旋通路の始端と終端とをつなぐ循環通路が形成されている。このボール軸受体53により、前記ねじ軸49の回転と軸線方向の荷重(つまりラジアル荷重とスラスト荷重)の両方を軽い抵抗力にて支持できるものである。
【0036】
なお、前記一対のねじ軸49の外周に通常のらせんネジ(雄ネジ)を形成し、前記ボール軸受体(ボールナット)53に代えて、通常の雌ネジが形成されたナット体とした組み合わせでも良い。
【0037】
これら各昇降支柱54の上端部は、左右の上水平フレーム5aの下面等に固定したスライド軸受55(図4参照)と、このスライド軸受55の軸穴に臨むように上水平フレーム5aに穿設した貫通穴とを貫通して、ケース本体3の枠部材33に固定されている。
【0038】
従って、駆動モータ40の正回転により、前記左右両ねじ軸49、49が互いに逆回転し、このそれぞれに螺合された左右一対の横梁部材52、52が一斉に上昇し、これらに立設された4本の昇降支柱54により、枠部材33と共にケース本体3を基台2の上端から離れるように上昇する。逆に、駆動モータ40が逆回転すると、左右一対の横梁部材52、52が一斉に下降し、これらに立設された4本の昇降支柱54に支持された枠部材3と共にケース本体3が基台2の上端に当接するように下降できるのである。
【0039】
図3及び図5に示すように、ねじ軸49と横梁部材52とは側面視で略十字状に交差しており、各横梁部材52の長手方向の長さは、これと対応する左または右側の2つの支柱4,4の間で支障なく昇降動できるように配置するため、水平フレーム5よりも短くなっている。
【0040】
この実施形態では、各横梁部材52の長手方向の長さが水平フレーム5よりも短くなっていることから、一対の昇降支柱54,54は、枠部材33における左または右の枠辺部34のうち隅部(支柱4の上端面に対応する位置)よりも長手方向中央寄りの部位を支持している(図4及び図5参照)。一対の昇降支柱54,54自身は、両スライド軸受55,55により基台2に対して昇降動のみ可能に軸支されている。
【0041】
したがって、この実施形態では、ケース本体3を昇降動可能に支持するための機構が、左右一対のねじ軸49,49と、これら一対のねじ軸49,49にそれぞれ螺合する横梁部材52と、各横梁部材52のうちねじ軸49を挟んだ両端部に立設し、かつケース本体3の枠部材33を支持するための一対の昇降支柱54,54とで構成されている。
【0042】
なお、図6に示すように、左右の上水平フレーム5aの下面には、横梁部材52が昇降可能範囲の最上位置にあるか否かを検知する上リミットスイッチ56と、最上位置まで上昇した横梁部材52に当接して、さらなる上昇を阻止する上ストッパー部材57(実施形態では2つ)とが設けられている。
【0043】
また、同様に、左右の下水平フレーム5bの上面には、横梁部材52が昇降可能範囲の最下位置にあるか否かを検知する下リミットスイッチ58と、最下位置まで下降した横梁部材52に当接して、さらなる下降を阻止する下ストッパー部材59(実施形態では2つ)とが設けられている。
【0044】
次に、展示品Tの入替え等のために、ケース本体3を昇降動させる際の操作手順及びその動作の態様について説明する。
【0045】
まず、ケース本体3が基台2上に載置された状態(ケース本体3が下降した状態)において、基台2前面側の開閉扉7を開放して(図1参照)、各種操作部が現れるようにし、操作スイッチ21のうち上昇スイッチ21aを押下して駆動モータ40を所定方向に回転駆動させる。
【0046】
そうすると、駆動モータ40の動力(回転力)がベルト44を介して入力軸43に伝わり、この入力軸43が正回転(例えば図5のA方向)に回転するので、ベベルギヤ46、47aを介して横伝達軸45が正回転する(例えば図5のB方向)。
【0047】
次いで、横伝達軸45に伝わった動力がベベルギヤ47b、50を介して左右両のねじ軸49、49は互いに逆回転するが(例えば図5のC及びD方向)、ねじ軸49、49のらせん溝は右ねじと左ねじとに形成されているので、ボール軸受体53、53を介して螺合されている左右両側の横梁部材52、52が上昇し、計4本の昇降支柱54がそれぞれに対応する上水平フレーム5aの貫通穴から上向きに突出する。その結果、計4本の昇降支柱54で支持されたケース本体3が上昇動する(図5の実線状態参照)。
【0048】
他方、例えば入替え作業が終了した後等に、操作スイッチ21のうち下降スイッチ21bを押下すると、駆動モータ40が上昇時とは反対方向に回転して、入力軸43、横伝達軸45、及び左右両ねじ軸49,49もそれぞれ各々上昇時とは反対方向に回転するので、各ねじ軸49に螺合された横梁部材52が下方にねじ送りされて、計4本の昇降支柱54がそれぞれに対応する上水平フレーム5aの貫通穴に入るように沈むことになる。その結果、ケース本体3は下降して再び基台2上に載置される(図1及び図5の2点鎖線状態参照)。
【0049】
ここで、平面視矩形状に囲んだ上水平フレーム5aのうち昇降支柱54が通過する貫通穴や、配線用管体62(詳細は後述する)が通過する貫通穴60よりも内周側を囲むように、軟質ゴム等のパッキン61が配設されており(図6参照)、ケース本体3が基台2上に載置された状態では、このパッキン61に枠部材33の下面が平面視枠状に密接するので、展示空間S内の気密性を確実に保持できる。
【0050】
なお、ケース本体3が昇降動している途中で、操作スイッチ21のうち停止スイッチ21cを押下すると、その時点でケース本体3は停止する。
【0051】
したがって、この実施形態の展示装置1によると、ケース本体3を昇降動可能に支持するための機構を、左右一対のねじ軸49,49と、これら一対のねじ軸49,49にそれぞれ螺合する横梁部材52と、各横梁部材52のうちねじ軸49を挟んだ両端部に立設し、かつケース本体3の枠部材33を支持するための一対の昇降支柱54,54とで構成しているから、前述した従来技術と比べて、製造に手間のかかるねじ軸49や長いねじ筒体のようなねじ部材の個数が少なく、昇降機構20全体の構造が簡単且つ軽量であるにもかかわらず、ケース本体3をスムーズかつ確実に昇降動させることができる。しかも、昇降機構20全体の構造を簡単化しているので、製造コストの低減にも寄与できる。
【0052】
従来のものはねじ軸に対して雌ねじ筒体を被嵌螺合させたねじジャッキ体であったから、雌ねじ筒体とねじ軸との螺合範囲が長く被嵌している状態、つまりケース本体が下降している時と、雌ねじ筒体とねじ軸との螺合範囲が短く、従って、ケース本体が上昇しいる状態とで、その螺合の摩擦抵抗力が大きく異なる(ケース本体下降時のほうが抵抗力が大きい)から、ケース本体の上昇開始時に駆動モータ40に大きな負担がかかり、そのため、駆動モータの容量を大きくする必要があり、コストが高くなる。
【0053】
また、昇降機構20は、1つの駆動モータ40により横伝動軸45,45を介して左右両ねじ軸49,49に同期して互いに同一方向に回転するように構成されているので、左右両ねじ軸49,49の回転のタイミング、ひいては左右の両横梁部材52,52に取付けた昇降支柱54(計4本)の昇降動のタイミングを確実に一致させることができる。
【0054】
これにより、昇降時にケース本体3が傾いたり歪んだりすることがなく、このような傾斜や歪みによるケース本体3の破損等のおそれを回避できる。
【0055】
さらに、ねじ軸49を使用すると、ねじ軸49が回転しない限り横梁部材52は昇降動しないため、持ち上げたケース本体3が自身の重量で下降するような不測の事態が生じることがないのである。
【0056】
ところで、前述した従来技術の場合、ケース本体を上昇させると、四つのねじジャッキ体は、基台の上面から上方に突出して、平面視でケース本体の四隅部にそれぞれ露出することになるから、作業者が展示品を出し入れするには、作業者から見て手前側に位置する二つのねじジャッキ体の間に手を出し入れしなければならない。
【0057】
このため、比較的小型の展示装置においては、出し入れ作業時に作業者の手がねじジャッキ体に当たって展示品を落としたりするおそれがあり、平面視でケース本体の四隅部において露出しているねじジャッキ体は、出し入れ作業をする上で邪魔になるという問題があった。
【0058】
この問題に対して、第1実施形態の展示装置1では、各横梁部材52の長手方向の長さを水平フレーム5よりも短く設定して、この横梁部材52に取付けた一対の昇降支柱54,54は、これに対応する上水平フレーム5aのうち隅部(支柱4の上端面に対応する位置)よりも長手方向中央寄りの部位に穿設された貫通穴から上方に突出するように構成されている。
【0059】
したがって、展示装置1の前後方向(昇降支柱54が突出しない方向)から展示品Tを出し入れするようにすると、作業者から見て昇降支柱54は隅部よりも奥側に位置することになるので、その方向からの出し入れの空間を広くでき、出し入れ作業時に作業者の手が昇降支柱54に当たるおそれが少なくなり、誤って展示品Tを落としたりする不測の事態は起こり難いし、昇降支柱54の位置を気にすることなく、展示品Tの出し入れをスムーズに行うことが可能である。
【0060】
一方、平面視でケース本体3の四隅部(平面視で2枚のガラス板が略直交する隅部)は、展示品Tに目を向けた鑑賞者からあまり目立たない位置である。そして、本発明では、前記ケース本体3の四隅部の下方には、昇降支柱が存在しないから、展示効果が損なわれないケース本体3の片隅(平面視で2枚のガラス板が略直交する隅部)に上下方向に長い配線用管体62を配置し、この配線用管体62の中途部を基台2における枠状の上水平フレーム5aの1つの角部に穿設された貫通孔60を介して基台2の下方に導く(図1、図2及び図6参照)。
【0061】
この配線用管体62は、天蓋体32内の照明灯24等に接続される配線コード69を通すためのものである。配線用管体62の上端外周部にはねじ山63が形成されており、天蓋体32の下面のうち右奥側の隅部に設けた取付け穴64に配線用管体62の上端外周部を貫通させ、この上端外周部を、コーキング(シール)のためのパッキン65を介してナット66で締結している(図6参照)。
【0062】
また、枠部材33の隅部と、上水平フレーム5aの隅部(右奥支柱4の上端面に対応する位置)とには、平面視で天蓋体32の取付け穴64と合致するように貫通穴67,60が穿設されている。配線用管体62の長手方向中途部が枠部材33を下方に貫通する個所を塞ぐように平面視環状のパッキン68が被嵌されており、ケース本体3が基台2上に載置された状態において、展示装置1の外部の空気が枠部材33の右奥側隅部の貫通穴67を介して展示空間S内に侵入することを阻止している。
【0063】
配線用管体62の上下方向の長さは、ケース本体3が最も高い位置まで上昇した状態でも、配線用管体62が上水平フレーム5aの右奥側隅部の貫通穴60から外れない程度の長さに設定されている。上水平フレーム5aの右奥側隅部の貫通穴60が請求項に記載した案内部に相当する。
【0064】
前記右奥の支柱4の内面側には、配線コード69を配線用管体62の下端部から基台2の内部に引き出すための長穴70が穿設されている。詳細は図示していないが、長穴70から基台2内に引き出された配線コード69には、例えばばね手段や重り等により下向きの軽いテンションをかけるようにしても良い。このように配線コード69に下向きのテンションをかけるようにすると、ケース本体3の昇降動によって、配線コード69が弛んで前記中空状の支柱4の内部で絡まったりすることがない。
【0065】
以上のように構成すると、配線用コード69を配線用管体62で隠すことができるし、配線用管体62自体もあまり目立たない位置にあるので、展示装置1の美観を向上させることができる。
【0066】
また、上下に十分に長い配線用管体62の下端部が上水平フレーム5aの右奥側隅部(右奥支柱4の上端面に対応する位置)の貫通穴60に挿通されているので、ケース本体3が昇降動した場合に、配線用管体62をこの貫通穴60に沿わせてスムーズに抜き差しすることができる。
【0067】
さらに、配線コード69を、天蓋体32側から配線用管体62を介して基台2の内部に導くことができるので、天蓋体32から直接外部に配線コード69を引き出して商用電源装置等に接続する必要がなく、大変見栄えがよいのである。
【0068】
図8(a)〜(c)は、展示装置1の平面視の外形と昇降機構20の配置態様との組合せの別例を示している。本発明に係る横梁部材52は各ねじ軸49に螺合させているだけであるから、左右両横梁部材52,52は、第1実施形態のように、平面視で略平行状に配置する以外に、図8(a)(b)に示すような平面視ハ字状等、任意の方向に向けて配置できる。
【0069】
したがって、左右両横梁部材52,52の配置状態に合せて、展示装置1の平面視の外形を図8(a)に示す平面視略扇状にしたり、図8(b)に示す平面視台形状にしたりすることができるので、展示装置1の外形のバリエーションが豊富になるのである。
【0070】
また、図8(c)に示すように、入力軸43の入力ベベル歯車46′に左右両側のベベル従動歯車47′、47′を噛み合いさせ、左右一対の横伝達軸45,45を前記各ベベル従動歯車47′、47′に連結すべく分断し、該左右両横伝達軸45,45を平面視く字状に折れるように配置すれば、展示装置1の外形を平面視台形状等の任意の形状にすることも可能である。なお、図8(c)のように、入力ベベル歯車46′左右両側2つのベベル従動歯車47′、47′を噛み合させると、前記一対の横伝達軸45,45は互いに逆回転し、その後のねじ軸49、49に対するベベルギヤの動力伝達で、当該両ねじ軸49、49は同方向に回転することになる。
【0071】
図9及び図10に示す第2実施形態は昇降機構の配置態様の別例である。
【0072】
この実施形態では、正逆回転可能な駆動モータ80、及び駆動モータ80からの動力を左右両ねじ軸49に伝達するための回転軸81等が基台2の上部側に配置されている。
【0073】
駆動モータ80の出力軸82に固定したウォームホィール83は、回転軸81の長手方向中途部に同心状に配置したウォーム84に噛み合わされており、駆動モータ80から回転軸81に伝わった動力は、回転軸81の両端部に取付けたギアボックス85,85を介して左右各ねじ軸49に伝達される。その他の構成は第1実施形態と同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0074】
このように、駆動モータ80や回転軸81等を基台2の上部側に配置した場合は、基台2内の下方に大きな空間を形成することができる他、第1実施形態の場合と同様の作用効果を奏することはいうまでもない。
【0075】
本発明は、前述の各実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えばケース本体3を昇降動可能に支持する機構として、油圧または空圧等のシリンダを使用したり、ラックとピニオンとからなる機構を使用したりしてもよい。シリンダを使用した場合は、当該シリンダのピストンロッドが請求項4に記載した昇降支柱に相当する。ラックとピニオンとからなる機構を使用した場合は、ラックが請求項4に記載した昇降支柱に相当する。
【0076】
昇降支柱のケース本体に対する支持位置は、昇降支柱の態様に規制されるものではなく、ケース本体の四隅部以外の箇所であれば、ケース本体の昇降動の安定性やスムーズさを損なわない範囲で任意に設定してよい。
【0077】
また、請求項に記載したねじ軸は、第1実施形態のねじ軸49に限らず、通常のねじ山を有するねじ軸でも差し支えない。
【0078】
ケース本体3は、展示空間Sの四周全てを透明板31で囲む構成に限らず、一部を不透明な板材としてもよいし、天蓋体32の部分を透明板31に代えてもよい。
【0079】
図示は省略するが、駆動モータ40に代えて、例えば入力軸43にクランク状のハンドルを取付け、このハンドルを手動で回すことによって、ケース本体3を昇降動させるように構成してもよい。
【0080】
【発明の効果】
請求項1の発明によると、基台と、該基台の上方に設定した展示空間を包囲する位置に配置されたガラス板等からなるケース本体と、前記基台に対してケース本体を昇降させる昇降機構とを備えた展示装置において、前記昇降機構は、同期して鉛直軸線回りに回転する左右一対のねじ軸と、該一対のねじ軸にそれぞれ螺合する横梁部材と、該横梁部材に前記ねじ軸を挟んで立設し、且つ前記ケース本体の下端部を支持するための少なくとも一対の昇降支柱とを備え、前記一対のねじ軸は前記基台に回転のみ可能に支持され、前記一対の昇降支柱は基台に設けた軸受部材を介して鉛直方向にのみ移動可能に軸支されているものであるから、前述した従来技術と比べて、製造に手間のかかるねじ軸や長いねじ筒体のようなねじ部材が少なく、昇降機構全体の構造が簡単になる。これにより、製造コストを低減できるという効果を奏する。
【0081】
また、横梁部材は各ねじ軸に螺合させているだけであるから、一対の横梁部材は、平面視で略平行状に配置する以外に、例えば平面視ハ字状等、任意の方向に向けて配置できる。
【0082】
したがって、展示装置1の平面視の外形に合わせて、左右両横梁部材の配置(向き)を任意に設定することができるので、昇降機構の要素を変えることなく、種々の平面視外形の展示装置に適用でき、バリエーションが豊富になるという効果を奏する。
【0083】
請求項2のように構成すると、昇降機構は、1つの駆動モータにより同期して互いに同一方向または逆方向に回転する一対の横伝動軸を介して一対のねじ軸に動力伝達するように構成されているので、一対のねじ軸の回転のタイミング、ひいては一対の横梁部材に取付けた昇降支柱の昇降動のタイミングを確実に一致させることができる。
【0084】
これにより、昇降時にケース本体が傾いたり歪んだりすることがなく、このような傾斜や歪みによるケース本体の破損等のおそれを回避できるという効果を奏する。
【0085】
請求項3のように構成すると、横梁部材に取付けた一対の昇降支柱は、基台の隅部以外の箇所から上方に突出することになるので、これにより、展示品の出し入れ作業時に、基台の隅部よりも奥側に位置する昇降支柱に作業者の手が当たるおそれは少なく、展示品の出し入れをスムーズに行えるという効果を奏する。
【0086】
請求項4のように構成した場合、ケース本体を基台の上面から大きく上昇させて展示を交換するとき、一対の昇降支柱は、基台の隅部以外の箇所から上方に突出することになるので、一対の昇降支柱が突出していない側方の空間(特に横幅方向)が大きく空くので、展示品の出し入れをスムーズに行えるという効果を奏する。
【0087】
請求項5のように構成すると、照明装置に対する配線用管体を、ケース本体の隅部に略鉛直状に配置するので、照明装置に接続されるコード等を配線用管体で隠すことができるし、ケース本体の隅部に配線用管体自体を上下に長く配置することで、目立たなくすることができ、展示装置の展示効果を妨げることを少なくできるという効果を奏する。
【0088】
また、基台には配線用管体を上下案内する案内部を有するので、ケース本体をを昇降動させた場合に、配線用管体を基台の案内部に沿わせてスムーズに抜き差しすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の展示装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】 展示装置の側断面図である。
【図3】 基台の正断面図である。
【図4】 基台の側断面図である。
【図5】 昇降機構の作用を示す説明図である。
【図6】 配線用管体を示す側断面図である。
【図7】 開閉扉を開放した場合のヒンジ体を示す平面図である。
【図8】 (a)〜(c)のいずれも展示装置の外形と昇降機構の配置態様との組合せの別例を示す概略平面図である。
【図9】 第2実施形態の昇降機構を示す正断面図である。
【図10】 昇降機構を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 展示装置
2 基台
3 ケース本体
5a 上水平フレーム
5b 下水平フレーム
20 昇降機構
40 駆動モータ
41 第1ギアボックス
43 入力軸
45 横伝達軸
48 第2ギアボックス
49 ねじ軸
52 横梁部材
54 昇降支柱
62 配線用管体
69 配線用コード
Claims (5)
- 基台と、該基台の上方に設定した展示空間を包囲する位置に配置されたガラス板等からなるケース本体と、前記基台に対してケース本体を昇降させる昇降機構とを備えた展示装置において、
前記昇降機構は、同期して鉛直軸線回りに回転する左右一対のねじ軸と、該一対のねじ軸にそれぞれ螺合する横梁部材と、該横梁部材に前記ねじ軸を挟んで立設し、且つ前記ケース本体の下端部を支持するための少なくとも一対の昇降支柱とを備え、前記一対のねじ軸は前記基台に回転のみ可能に支持され、前記一対の昇降支柱は基台に設けた軸受部材を介して鉛直方向にのみ移動可能に軸支されていることを特徴とする展示装置。 - 前記昇降機構は、1つの駆動モータにより同期して互いに同一方向または逆方向に回転する一対の横伝動軸を介して前記一対のねじ軸に動力伝達するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載した展示装置。
- 前記昇降支柱は、平面視で少なくとも四隅部を有するケース本体における前記各隅部以外の箇所を支持するように構成したことを特徴とする請求項1または2に記載した展示装置。
- 基台と、該基台の上方に設定した展示空間を包囲する位置に配置されたガラス板等からなるケース本体と、前記基台に対してケース本体を選択的に昇降させる昇降機構とを備えた展示装置において、
前記昇降機構は、前記ケース本体の下端部を支持するための少なくとも左右一対の昇降支柱を同期して昇降するように構成し、前記一対の昇降支柱は、平面視で少なくとも四隅部を有するケース本体における前記四隅部を除いた側辺部近傍を支持するように構成したことを特徴とする展示装置。 - 前記ケース本体の上部側に配置した照明装置に対する配線用管体を、ケース本体の隅部に略鉛直状に配置し、前記基台には前記配線用管体を上下案内する案内部を有することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれかに記載した展示装置。
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