JP4007405B2 - 水素分離体及び水素製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、燃料ガスから分離精製して水素を取り出すための水素分離体及びそれを用いた水素製造装置に関する。
近年、多様な用途において、水素ガスが着目されている。この水素ガスは、環境保護の観点から注目されている燃料電池においても利用される。例えば、固体高分子形燃料電池においては、燃料極に水素等の燃料が供給されるとともに、酸素極に空気等の酸化ガスが供給される。この電池は水素の濃淡電池であり、イオン化された水素イオンが電解質膜を移動し、対極で酸素と結合して水(HO)を生成すると同時にエネルギを生成する。このような電気化学的反応を利用して、燃料の化学エネルギを電気エネルギに直接変換して取り出すことができる。低い温度において、触媒上で電気化学的な反応させ、高いエネルギを生み出すために、純度の高い水素ガスが用いられる。炭化水素から水素を得る場合は、改質反応後もシフト反応や転化反応等の多段の工程を設けて電池電極に吸着する成分を取り除いて、改質ガスから水素を高純度で取り出す水素の分離体が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
この水素分離体は、燃料の改質プロセスにおける水素生成後の分離精製工程で導入される水素分離ユニットである。エタノールやメタノールなどの燃料ガスと水蒸気等とを化学反応させて、水素を発生させる。なお、燃料に、天然ガス、プロパン、ブタン、ガソリン及びジメチルエーテルを用いる場合には、脱硫処理が改質反応の前に必要になる。更に、この水素分離体は、燃料電池だけでなく、水素タンクやプラントの水素供給ラインなどに用いられる。
一方、特許文献1では、水素分離体は、例えば、円筒形状の多孔質支持体(多孔質基体の平均細孔径が、1.2〜2.5μm)の外周面に、水素選択透過性金属膜としてのPd膜が形成されている。そして、特許文献1の図3の説明によれば、水素分離体の外側には混合ガスが導入される。この場合、燃料ガスを水素分離体から多孔質支持体の順に通過させることにより、水素ガスが分離精製される。
特開2000−317282号公報(図3)
しかし、白金系金属は、窒素酸化物ガス(NOx)、硫黄酸化物ガス(SOx)や一酸化炭素ガス(CO)等が吸着し易い。金属表面へ選択的な吸着が生じるとその吸着箇所には水素が接触できなくなり、水素の金属への溶解が阻害される。特許文献1においても低い温度で、混合ガスに一酸化炭素ガスが含まれる場合、水素を透過させるPd膜でCOの選択的な吸着が発生し、水素分離体の水素透過に有効な表面積が低下し、水素選択透過性能が低下する。従って、効率よく水素ガスを分離精製することが難しくなる。この水素ガスの透過性の低下は、混合ガスに上述の吸着しやすいガスや炭化水素ガス(CmHn)が含まれる場合も同様な問題となる。
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、一酸化炭素等の水素分離膜への吸着を抑止し、高濃度の水素を金属膜に接触させることで上流側の見かけの濃度を高くでき、効率的に水素ガスを分離精製することができる水素分離体及び水素製造装置を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、水素ガスを含む混合ガスから水素ガスを分離精製する水素分離体であって、前記水素分離体は、前記混合ガスを導入させる導入面を有する多孔質基体と、この導入面の対面上に形成され、溶解拡散機構に基づいた水素選択透過性を有する金属膜によって形成された水素選択透過性金属層とを備え、前記多孔質基体は細孔層を備え、該細孔層は、前記混合ガスに含まれるとともに前記水素選択透過性金属層の性能を低下させるガスに比べて、水素ガスを優先的に透過させるとともに前記導入面から導入されて前記細孔層を通じた水素ガスが前記水素選択透過性金属層に接触する構成であり、前記水素選択透過性金属層の性能を低下させるガスは、一酸化炭素ガス、窒素酸化物ガス、硫黄酸化物ガス、及び炭化水素ガスの少なくとも一種を含み、前記多孔質基体に、前記水素選択透過性金属層の性能を低下させるガスのシフト反応又は部分酸化反応を促進させる触媒金属を担持させたことを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1に記載の水素分離体において、前記多孔質基体は、管状構造を有しており、前記水素選択透過性金属層を、前記管状構造の内側表面に形成したことを要旨とする。
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項に記載の水素分離体を備えた水素製造装置であることを要旨とする。
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、混合ガス中に含まれる水素ガスは細孔層を優先的に透過する。すなわち、細孔層によって、水素選択透過性金属層に対する水素以外のガスの接触量が減少される。このため、前記金属層の性能を低下させるガスが混合ガス中に含有していたとしても、このような混合ガスから水素ガスを分離精製するに際し、水素選択透過性金属層の性能が維持され易い。この結果、水素ガスを効率的に分離精製することができる。また、前記金属層には水素ガスがより選択的に接触されるため、その金属層を透過する水素ガスの透過量が高められる結果、水素ガスを効率的に分離精製することができる。
また、細孔層は、一酸化炭素ガス、窒素酸化物ガス、硫黄酸化物ガス、及び炭化水素ガスの少なくとも一種を含む混合ガスから水素ガスを選択的に透過させる。このため、例えば前記金属としてパラジウムを用いる場合においても、水素選択透過性金属層の性能を低下させるガスの吸着を抑制することができるため、水素透過性金属層の性能が維持され易い。
また、多孔質基体に担持させた触媒金属によりシフト反応又は部分酸化反応が促進される。これにより、一酸化炭素ガスは二酸化炭素ガスに変換され、水素選択透過性金属層への吸着を抑制することができる。
請求項に記載の発明によれば、水素選択透過性金属層が、管状構造の多孔質基体の内面に形成される。水素ガスを分離精製する場合、水素分離体の周囲に改質触媒を配置して、水素ガスの分離精製を行なう場合がある。この改質触媒は所定の温度(例えば650℃)まで加熱されて使用される。また、水素選択透過性金属層の水素の透過率は、温度と比例関係にある。このため、改質触媒を水素分離体の周囲に接触した状態で配置すれば、改質触媒の熱が多孔質基体を介して伝導することにより、前記金属層が効率的に加熱される。一方、水素透過性金属層が多孔質基体の外周面に形成され、その金属層と改質触媒とが接触する構成を採用した場合には、改質触媒との摩擦や改質触媒から直接伝わる振動によって、金属層が破損するおそれがあった。本発明の水素分離体では、前記多孔質基体の内側表面に前記金属層を形成しているため、その金属層を多孔質基体によって適切に保護することができるとともに、その金属層を多孔質基体の外面から効率的に加熱することができる。よって、こうした水素分離体を備えた水素製造装置では、前記金属層を速やかに昇温することができるため、装置の立ち上げ時間を短縮することができる。
さらに、筒状構造の多孔質基体の内周面は、その外周面よりも熱膨張及び熱収縮が小さい。従って、前記多孔質基体の内側表面に前記金属層を形成すれば、外周面に形成した場合よりも、多孔質基体の寸法変化による影響を受けにくいため、その金属層の塑性変形が抑制される。従って、水素分離体の昇温及び冷却を伴った使用、すなわち水素分離装置の運転及び停止を繰り返した場合において、前記金属層の塑性変形が抑制されるため、劣化を抑制することができるため、その金属層の寿命を延ばすことができる。
加えて、前記多孔質基体の内側表面に前記金属層を形成しているため、前記金属層の表面(水素分離体の内側表面)を露出させて使用することができる。このため、水素分離体の内側表面から排出される水素を速やかに拡散させることができるため、前記金属層の厚さ方向における水素の濃度勾配を高めた状態に維持され易い結果、水素の透過速度を高めることが容易である。
請求項に記載の発明によれば、生成された水素ガスを効率的に分離精製することができる。
本発明によれば、水素選択透過性金属層の性能を低下させるガス等の水素分離膜への吸着を減少させて、効率的に水素ガスを分離精製することができる。
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を、図1〜図5を用いて説明する。本実施形態では、改質器に水素分離ユニットを導入し、天然ガスから直接水素ガスを高純度で供給する燃料供給プロセス例で説明する。この場合、従来、必要であったシフト反応や転化反応等により改質ガス中からCO除去工程を改質器の後に設ける必要は無い。図1は水素分離ユニットを改質触媒層に直接導入したリフォーマ10を模式的に示す。水素分離ユニットを触媒層に直接導入したリフォーマ10は、中心に燃焼加熱部を設置し、その外周に改質触媒が充填される多重管構造のシェルユニット1と、内部で発生する水素ガスを分離回収する水素分離ユニットであるチューブユニット2とから構成される。なお、図1(A)はシェルユニット1の外観を示し、図1(B)はチューブユニット2を示す。このシェルユニット1は外壁部1aにより覆われ、この外壁部1aの内側には内壁部1bにより囲まれた中空洞が設けられている。この外壁部1aと内壁部1bとに空間があり、後述するようにこの空間で改質、水素の生成が行なわれる。この空間に原料ガスと水蒸気を供給するために、外壁部1aには供給孔1cが設けられている。水蒸気と燃料は定められた比率で供給され、多重管構造による内部熱交換で500℃程度まで加熱してリフォーミング反応が行なわれる。この反応は吸熱、平衡反応である。生成する水素が水素分離ユニットにより反応系から取り出されるために、改質反応は500℃と本来の最適温度よりも低いにも関わらず効率良く進行する。そして、500℃においても高い水素反応率と収率を維持することができる。未反応の残ガス、回収できなかった水素、並びに、生成したCOは、同じく外壁部1aの排出孔1dから排出され、バーナの燃料に用いられて完全に酸化利用する。また、中空洞の内壁部1bは、原料ガスの改質用バーナでの発生熱により加熱される。このため、内壁部1bで囲まれた中空洞には、空気取込口1eと燃料ガス取込口1fとが備えられている。
更に、外壁部1aと内壁部1bとの空間には、チューブユニット2が挿入される。具体的には、下部マニフォールド2aと上部マニフォールド2bとの間に、水素分離体100が設けられている。更に下部マニフォールド2aにはスイープガス供給管2c、上部マニフォールド2bには水素ガス導出管2dが設けられている。ここでは、改質器で生成した水素の回収率を上げるためにスイープガスとして水蒸気をサイクリックに流して、透過下流側の見かけの水素分圧を下げることで膜の両界面間の濃度勾配を大きくすると同時に、金属膜内を溶解拡散した水素の下流側金属膜表面からの脱着を促進する。
この水素分離体100は、図2に示すように、外壁部1aと内壁部1bとの間に充填された改質触媒のNi充填層103の中に埋め込まれる。Ni充填層103においては、燃料ガス(メタンガスCHやプロパンガスC、ブタンガスC10)と水蒸気とを反応させて、水素リッチな改質ガスを生成する。この場合、水素ガスの他に二酸化炭素ガスや一酸化炭素ガスも発生する。そこで、後述する水素分離体100を用いて水素ガスの分離精製を行なう。
本実施形態では、供給孔1cから供給された燃料ガスは、Ni充填層103で改質され、水素分離体100を通じて高純度の水素ガスが分離精製される。次に、高純度の水素ガスに分離精製するために用いる水素分離体100の構造を説明する。図2に示すように、本実施形態においては、円筒管形状の水素分離体100を用いる。この水素分離体100には、図2に示すように、多孔質基体としての基体管101の外側を改質ガスの導入面として、その対面である内側表面に、溶解拡散機構に基づいた水素選択透過性をもつ水素透過層102が積層される。この基体管101には、例えばセラミックス多孔材料(例えばアルミナ:Al)を用いて構成する。なお、アルミナの他に、シリカ、ゼオライト、モルデナイト、ジルコニアを用いることも可能である。
そして、この基体管101は、触媒担持セラミックス層101aと細孔セラミックス層101bとから構成される。この触媒担持セラミックス層101aは比較的大きな孔径を有し、この多孔管内に、一酸化炭素ガスを除去するための触媒金属を担持させる。この触媒金属を担持させることにより、一酸化炭素ガスと水とを反応させて二酸化炭素ガスにするシフト反応や、一酸化炭素ガスの部分酸化反応を行なう。ここで、シフト反応を生じさせるためには、触媒金属としてPt、Rh、Ru、Ni又はCu/ZnOを用いる。一酸化炭素ガスの部分酸化反応を生じさせるためには、触媒金属としてPtやPt−Ru合金触媒を用いる。
改質ガスには、水素ガスの他に、水素透過層102の性能を低下させるガスを含んでいる。細孔セラミックス層101bは、そのような水素透過層102の性能を低下させるガスに比べて、水素ガスを優先的に透過させることにより、水素透過層102に対する水素以外のガスの接触量が減少される。すなわち、細孔セラミックス層101bは、改質ガスの成分ガスであって、水素選択透過性金属層を劣化させるガスの分子と同等のサイズの細孔が設けられている。この多孔質の細孔のサイズで水素ガスを優先的に通過させるフィルタリングを行ない、水素透過層102側へ供給する。この分子サイズでのふるい分けにより、問題となる成分ガスとして一酸化炭素ガスや炭化水素ガスの透過を低減する。具体的には、水素ガスの分子サイズは約0.3nmであり、一酸化炭素ガスはこれよりも大きい。メタンガスは更に大きく、0.4nmに近くなる。そして、窒素酸化物ガス、硫黄酸化物ガス、炭化水素ガスの分子サイズも大きい。そこで、多孔質管の細孔のサイズをサブナノサイズまで小さくして、一酸化炭素ガス、窒素酸化物ガス、硫黄酸化物ガス、炭化水素ガスや炭化水素ガスと水素ガスとのふるい分けを行ない、一酸化炭素ガス等のPd膜への吸着による水素選択透過性の低下を回避する。なお、上述のシフト反応や部分酸化反応のための触媒金属を、この細孔セラミックス層101bにも担持させてもよい。
水素透過層102は、水素選択透過性金属を用いて構成する。水素選択透過性金属とは、表面に吸着した水素分子の結合を溶解して原子状にして金属内を拡散させることができる金属である。本実施形態では、水素透過層102として、後述するめっき法により厚さ約1μmのPd膜を用いて構成する。
(水素分離体100の製造)
次に、このような構成を備えた水素分離体100の製造方法について説明する。
まず、最初に水素分離体100を構成する基体管101を準備する。この基体管101には、触媒担持セラミックス層101aと細孔セラミックス層101bとを設ける。本実施形態では、触媒担持セラミックス層101aとなる多孔質セラミックスに、金属アルコキシドなどの金属有機分子の加水分解反応を利用したゾルゲル法で所定の孔径の細孔セラミックス層101bを形成する。なお、ゾルゲル法の他に、金属有機ポリマー溶液を塗布して、高温熱処理により固化させる金属有機ポリマー法を用いることにより、細孔セラミックス層101bを形成することも可能である。
次に、多孔質セラミックスに触媒金属を担持させた触媒担持セラミックス層101aを形成する。本実施形態では、多孔質セラミックスに金属塩の水溶液をしみ込ませて乾燥する。更に、この多孔質セラミックスに対して水素還元処理を行なうことにより、多孔質セラミックスの孔内に触媒金属を担持させる。
そして、細孔セラミックス層101b上に、水素透過層102となるPd膜をめっき法により形成する。本実施形態では、超臨界状態のCO2を拡散流体として用いてめっきを行なう。このめっきに用いるめっき装置について、図3〜図6を用いて説明する。なお、CO2の臨界点は、31℃で7.4MPaである。本実施形態では、このめっき装置を用いて、無電解めっき及び電解めっきを行なうことにより、水素透過層102を形成する。
(めっき装置の全体構成)
図3に示すように、本実施形態に用いるめっき装置は、洗浄液タンク11、CO2タンク21、高純度CO2タンク26、分散促進剤タンク31、無電解めっき液タンク41及び電解めっき液タンク51を備える。これらのタンクは、後述するように、混合分散部60を介してめっき槽61に接続される。以下に、上記の構成を詳述する。
洗浄液タンク11は、洗浄液として純水あるいはイオン交換水を収容する。この洗浄液タンク11は、混合分散部60に洗浄液供給管を介して接続されている。この洗浄液供給管には、液ポンプ12、加熱部13及び供給弁14が設けられている。液ポンプ12は純水あるいはイオン交換水を加圧するために用いられ、加熱部13は、純水あるいはイオン交換水を加熱するために用いられる。供給弁14は、開閉制御されることにより、洗浄液タンク11と混合分散部60との連通・遮断を行ない、混合分散部60への純水あるいはイオン交換水の供給又は供給停止を制御する。
CO2タンク21は、拡散流体としての液体CO2を収容する。このCO2タンク21は、混合分散部60にCO2供給管を介して接続されている。このCO2供給管には、切換弁21a、液ポンプ22、加熱部23及び供給弁24aが設けられている。切換弁21aと液ポンプ22との間には、切換弁26aが設けられた供給管を介して、高純度CO2タンク26が接続されている。高純度CO2タンク26は、CO2タンク21よりも高純度のCO2が収容され、CO2タンク21中のCO2が汚れた場合の交換や、配管系の洗浄のために使用される。切換弁21a,26aの開閉制御により、CO2タンク21からのCO2又は高純度CO2タンク26からのCO2のいずれかが、混合分散部60へと供給される。
一方、液ポンプ22はCO2を加圧するために用いられ、加熱部23はCO2を加熱するために用いられる。これらにより、CO2タンク21から供給されるCO2を高圧の超臨界状態にして、混合分散部60に供給する。供給弁24aは、開閉制御されることにより、CO2タンク21と混合分散部60との連通・遮断を行ない、混合分散部60へのCO2の供給又は供給停止を制御する。
一方、分散促進剤タンク31は、分散促進剤を収容する。本実施形態では、分散促進剤としてフッ素系化合物を用いる。
フッ素系化合物は、フッ素基と親水性基とを有する。本発明で使用されるフッ素系化合物として望ましい化合物には、非イオン性親水性基を有するフッ素系化合物が挙げられる。この非イオン性親水性基を有するフッ素系化合物は高圧CO2中で良好な分散促進機能を発現する。
また、フッ素基としては、直鎖或いは枝分かれを有するペルフルオロアルキル基、またはペルフルオロポリエーテル基を始めとした炭素鎖中にヘテロ原子を含むものが挙げられる。これらのうちでも炭素鎖長がペルフルオロアルキル基では3〜15程度、炭素鎖中にヘテロ原子を含むものでは3〜50程度のものが使用可能である。
また、親水性基にはエーテル、エステル、アルコール、チオエーテル、チオエステル、アミド等の極性基が挙げられる。これらのうちでも本実施例で挙げたフッ素基がペルフルオロポリエーテル基であり、親水性基が短鎖のポリエチレングリコール基であるものが特に優れている。
また、従来の分散促進剤である炭化水素系の界面活性剤は長鎖のポリエチレングリコール基を有しているため化学的な安定性に課題があった。これに比べて、フッ素系化合物はより安定なため、長期間の繰り返し使用に対する耐久性を期待できる。また炭化水素系界面活性剤の分解物に由来する異物混入可能性も少なくなる。
フッ素系化合物は、疎水性のフッ素基を有するため、CO2とめっき液とが安定した分散状態を維持している時間(分散保持時間)が短く、炭化水素系で生じやすいめっき液の泡立ちが発生しないので、めっき液とCO2との分離が容易であり、操作性の面でも優れている。このフッ素系化合物を用いた場合、分散操作を停止すると、例えば数秒〜数十秒程度で、めっき分散体はCO2とめっき液に分離する。
分散促進剤タンク31は、混合分散部60に分散促進剤供給管を介して接続されている。分散促進剤供給管には、液ポンプ32、加熱部33及び供給弁34が設けられている。液ポンプ32は、分散促進剤タンク31から供給される分散促進剤を加圧するために用いられる。加熱部33は、分散促進剤を加熱するために用いられる。供給弁34は、開閉制御されることにより、分散促進剤タンク31と混合分散部60との連通・遮断を行ない、分散促進剤の混合分散部60への供給又は供給停止を制御する。
更に、無電解めっき液タンク41は、無電解めっき液を収容する。この無電解めっき液として、本実施形態では、金属塩としてテトラアンミンパラジウムジクロライド、還元剤としてヒドラジン、pH調整剤として水酸化アンモニウム、錯化剤としてEDTA2ナトリウム塩を含むものを用いる。無電解めっき液タンク41は、加熱・保温手段を備え、無電解めっき液を所定の温度になるように加熱し保温する。更に、この無電解めっき液タンク41は、無電解めっき液供給管を介して混合分散部60に接続されている。この無電解めっき液供給管には、液ポンプ42、加熱部43及び供給弁44が設けられている。液ポンプ42は、無電解めっき液を加圧するために用いられ、加熱部43は、無電解めっき液を加熱するために用いられる。供給弁44は、開閉制御されることにより、液タンク41と混合分散部60との連通・遮断を行ない、混合分散部60への無電解めっき液の供給又は供給停止を制御する。なお、めっき液を所定の温度に保持するため、無電解めっき液が流れるラインは、すべて加熱保温制御が行なわれる。
また、電解めっき液タンク51は、電解めっき液を収容する。この電解めっき液は、本実施形態では、塩化パラジウムにグリシン、亜硝酸カリウムを加えて、支持電解質に臭化カリウム、pH調整剤にホウ酸を加えたものを用いる。この電解めっき液タンク51は、加熱・保温手段を備え、電解めっき液を所定の温度になるように加熱し保温する。更に、この電解めっき液タンク51は、混合分散部60に電解めっき液供給管を介して接続されている。この電解めっき液供給管には、液ポンプ52、加熱部53及び供給弁54が設けられている。液ポンプ52は、電解めっき液を加圧するために用いられ、加熱部53は、金属塩の析出を防止し反応温度に維持するために用いられる。供給弁54は、開閉制御されることにより、電解めっき液タンク51及び混合分散部60との連通・遮断を行ない、混合分散部60への供給又は供給停止を制御する。なお、この電解めっき液供給管においては、めっき液の成分が析出しない温度以上に常時保温されている。ここでも、金属塩の析出を防止するため、電解めっき液が流れるラインも加熱保温制御が行なわれる。
一方、各タンク(11,21,26,31,41,51)に接続されている混合分散部60は、めっき液、CO2及び分散促進剤を、めっき適正温度範囲を中心に、CO2が液〜臨界点以上の温度圧力条件で、めっき処理に適した比率(添加もしない場合も含む)で混合し、攪拌して混合した流体を分散体にする。本実施形態では、この混合分散部60は、混合器と分散機とから構成される。混合器において、めっきを行なうための各成分が混合されてめっき混合液が形成される。そして、分散機においては、めっき混合液を分散状態にしてめっき分散体を形成する。分散機は、その内部に、永久磁石に取り付けられたメッシュ付きロータが配置され、その外部に、コイルが取り付けられたステータが配置されている。このステータに流す電流の制御により、磁場を発生させ、この磁場の強さでメッシュ付きロータの回転速度及び回転方向が制御される。この回転されるメッシュ付きロータにより、混合器から供給されためっき混合液をせん断することにより、めっきに適した分散体を形成する。
混合分散部60は、めっき槽61に接続されている。このめっき槽61において、混合分散部60から供給されるめっき分散体を用いて、無電解めっき及び電解めっきを行なう。このめっき槽61には、後述するように、その内部に電解めっきを行なうための円筒形の電極が配設され、この電極には電源62が接続される。この電極は、基体管と所定の距離を保つように並行して配置される。
高圧の流体を用いて洗浄やめっきの各処理を行なう際に、処理が行なわれない側を大気圧等の状態にしておくと、基体管の内外に大きな差圧が発生して破損することがある。従って、洗浄やめっき処理の際に、基体管の内外に差圧が発生しないように処理を施す。具体的には、基体管の内外の空間でめっきや洗浄を行なわない側に、非圧縮流体に近く、しかも、めっき操作で使用される流体(本実施形態では、脱気した水)を封入して、圧縮性ガスの残留を0に近づける。
本実施形態では、めっき槽61内に設置した基体管の内側にめっきを行なうため、混合分散部60から供給されるめっき分散体はバルブV3を設けた内側供給ラインを介してめっき槽61に接続される。この内側供給ラインには、バルブV6、シリンダCY、バルブV7を介して外側供給ラインに接続される。この外側供給ラインには、差圧が発生しないように脱気した水を基体管の外側に充填するために用いられる。そして、このシリンダCYは、内側供給ライン内の流体と外側供給ライン内の流体との差圧を調整するために用いられる。
このめっき槽61には、バルブV2を備えた内側排出ラインを介して分離槽65が接続されている。この分離槽65には、めっき槽61において使用されためっき分散体が排出される。この内側排出ラインには、バルブV5を介して外側排出ラインに接続される。このバルブV5は、内側排出ライン内の流体と外側排出ライン内の流体との差圧を調整するために用いられる。そして、分離槽65において、CO2とめっき液とに分離される。なお、めっき分散体に分散促進剤が含まれている場合には、この分散促進剤はCO2に混合されたまま、めっき液から分離される。
分離槽65は、CO2タンク21及びめっき液排出部70に接続されている。めっき分散体から分離されたCO2(又は分散促進剤を含むCO2)は、これに含まれている水素や酸素などのガスやCO2に溶解していた有機物が除去された後、圧力温度を調整して液状態でCO2タンク21に供給される。一方、めっき分散体から分離されためっき液は、めっき液排出部70に排出される。このめっき液排出部70は、排出切換弁を介して、電解めっき液再生装置や廃液タンクと連通可能になっている。電解めっき液再生装置は、分離槽65から排出された電解めっき液から不純物を除去し、その成分を調整することによりめっき液を再生する。
更に、本実施形態のめっき装置は、制御手段としての制御部80を備える。この制御部は、CPU、RAM、ROM等から構成され、格納されたプログラムにより、液ポンプ(12,22,32,42,52)、加熱部(13,23,33,43,53)、供給弁(14,24a,34,44,54)、切換弁(21a,26a)及び電源62等についての制御を行なう。
また、制御部80には、基体管101に形成されるPd膜の形成状況を検出する検出手段が接続される。本実施形態では、この検出手段として、所定の距離を離して基体管101の表面に接触させて設置した1対の端子の間に電圧を印加して流れる電流を計測する電流センサ64を用いる。本実施形態の基体管101は、上述したようにアルミナで構成される不導体であるため、表面に金属のPd膜が形成されると電流値が変化する。これを利用して、電流センサ64は基体管101の表面に形成されるPd膜の形成状況を検出する。
更に、電解めっきを開始するための基準値をメモリに記憶しておく。この基準値としては、Pd膜が基体管101の表面全体に形成された場合に流れる電流値を用いる。そして、制御部80は、電流センサ64から取得した電流値と、メモリに記憶されている基準値とを比較し、基準値を超えた場合、電解めっき処理を行なうためのプロセスを実行する。
(めっき槽61の構造)
次に、図4及び図5を用いてめっき槽61の構造を詳述する。このめっき槽61は、図4に示すように、管状の筐体110により構成される。この筐体110には、1対の支持部材111,112が収容される。支持部材111は、この筐体110から脱着可能な蓋として機能し、シール部材113を介して筐体110に固定される。
また、支持部材111,112には、互いに対向する面には円環状の溝が形成されている。この溝にはシール部材114が収容されている。支持部材111,112は、保持手段であり、このシール部材114を介してめっき処理の対象である基体管101を支持する。
このような構成により、基体管101が取り付けられると、図4に示すように、めっき槽61内は、基体管101の内側となる内側領域115と、外側となる外側領域116とにより区画される。
更に、支持部材111には、内側領域115に軸方向に連続的に流体を供給するために、供給排出手段としての内側用供給管117と内側用排出管118とが設けられている。この内側用排出管118は、支持部材112に設けられ、内側領域115から流体を排出する。従って、基体管101が取り付けられた場合、この内側用供給管117を介して、外側領域116から区画された内側領域115に、外側領域116とは独立して流体を供給し、排出することができる。
本実施形態では、基体管101の内側表面にPd膜を形成するために、内側用供給管117は混合分散部60に接続され、内側用排出管118は分離槽65に接続される。そして、混合分散部60において生成されためっき分散体は、内側用供給管117からめっき槽61の内側領域115に供給され、内側領域115内を通過して、内側用排出管118から分離槽65に排出される。
更に、筐体110には、外側領域116に流体を供給するための外側用供給管119と、この領域から流体を供給するための外側用排出管120がそれぞれ設けられている。従って、この外側用供給管119を介して、内側領域115に流れる流体とは独立して流体を外側領域116に流すことができる。
また、本実施形態では、内側領域115内に、めっきの対極が、基体管101の内面から等距離を保持するように設けられる。更に、電流センサ64は、筐体110の内側表面の両端部間に流れる電流を測定する。
上述のように、本実施形態では、めっき槽61の内側用供給管117を混合分散部60に接続し、内側用排出管118を分離槽65に接続することにより、基体管101の軸方向に連続的に流体を供給するための供給排出手段として機能させる。
(水素分離体100の製造方法)
次に、基体管101にPd膜を形成した水素分離体100を製造するためのめっき処理を説明する。ここでは、活性化処理、化学めっき、電解めっきの順に行なう。この活性化処理では、吸着析出核となるPdの微粒子をアルミナに吸着させ、そのPdを還元する。次に、化学めっきで、Pdの錯化剤とその還元剤でPd還元析出を行なう。そして、電解めっきにおいて、酸性めっき液を供給し、通電してPdを析出させる。本実施形態では、活性化処理を施したアルミナ管を装置に装着して、化学めっき及び電解めっきを行なう。なお、活性化処理〜電解めっきのすべてをめっき槽で連続して行なってもよい。
以下に、上述の処理を詳述する。まず、触媒担持セラミックス層101aと細孔セラミックス層101bとを設けた基体管101を準備し、この基体管101に対して活性化処理を行なう。
(活性化処理)
まず、基体管101の脱脂を行なう。具体的には、エタノールに30分間、浸漬させる。なお、CO2を用いることも可能である。次に、感応化処理、活性化処理及び還元処理を行なう。本実施形態では、基体管101の内側表面に活性化処理を施す。この感応化処理は、還元しやすい金属イオンを吸着させる処理であり、例えば塩化第一スズ水溶液に1分間、浸漬させることにより行なわれる。活性化処理は、塩酸酸性の塩化パラジウム水溶液を用い、1分間、浸漬させることにより行なわれる。そして、還元処理は吸着触媒核Pdを還元する処理であり、例えばヒドラジン水溶液に30秒間、浸漬することにより行なわれる。そして、蒸留水に10秒間、浸漬して洗浄を行なう。
(化学めっき)
次に、めっき槽61に活性化処理を行なった基体管101を取り付け、無電解めっきを行なう。具体的には、図5に示すように、支持部材111を筐体110から取り外す。そして、支持部材112の円環状の溝に、基体管101の一端部を遊嵌させた後、基体管101の他端部を支持部材111の円環状の溝に遊嵌させる。そして、この状態で、支持部材111の端面をシール部材113に接触させて、支持部材111を筐体110に固定する。
以降の工程では、具体的には、図4に示すように、バルブV5,バルブV6,バルブV7を閉じて、バルブV1,バルブV4を開いて外側供給ラインに下から上に脱気した水をバルブV4側から導入する。基体管外部の空気を追い出し、バルブV1まで水封を確認したところでバルブV1,バルブV4は閉じる。バルブV5あるいはバルブV6,バルブV7を開き(3つとも開いてもよい)、更にバルブV2,バルブV3を開いて内側供給ライン側に高圧の流体を流し始める。
そして、超臨界CO2を用いた前処理を行なう。ここでは、純水あるいはイオン交換水とCO2とを混合した分散体を用いて行なう。この場合、制御部80は、供給弁14,24aを開き、加熱部13,23において加熱を行なうとともに、液ポンプ12,22を駆動する。また、制御部80は、切換弁21aを閉じ、切換弁26aを開いて、高純度CO2タンク26と混合分散部60とを連通する。この場合、洗浄液タンク11からの純水あるいはイオン交換水とともに、高純度CO2タンク26から、CO2が加圧及び加熱されて超臨界状態となって混合分散部60に供給される。そして、混合分散部60において、純水あるいはイオン交換水とCO2とが混合されて攪拌される。この結果、CO2と純水あるいはイオン交換水とが均一に分散された状態の洗浄分散体が形成され、混合分散部60からめっき槽61に供給される。
めっき槽61ではこの混合分散部60に接続されている内側用供給管117を介して、めっき槽61の内側領域115に、洗浄分散体が供給されて、基体管101の内側が洗浄される。ここで、使用された洗浄分散体は、内側領域115から内側用排出管118を介して分離槽65へと排出される。
なお、このめっき槽61において洗浄に用いられた洗浄分散体は、分離槽65に排出されて、CO2と純水あるいはイオン交換水とに分離される。この分離されたCO2は、不要なガスが除去された後、再生されてCO2タンク21に供給される。また、分離された純水あるいはイオン交換水は、排出切換弁を介して廃液タンクに排出される。そして、制御部80は、所定時間、洗浄分散体をめっき槽61に供給することにより、前処理工程としての洗浄を終了する。
次に、制御部80は、無電解めっき処理工程を行なう。ここでは、温度50℃、圧力12MPaを用いる。具体的には、制御部80は、供給弁14を閉じ、供給弁34,44を開く。また、液ポンプ12の駆動を停止し、液ポンプ32,42を駆動する。更に、加熱部13における加熱を停止し、加熱部33,43における加熱を開始する。これにより、分散促進剤タンク31からの分散促進剤と、無電解めっき液タンク41からの無電解めっき液とが混合分散部60に供給される。また、制御部80は、液ポンプ22及び加熱部23の駆動を継続し、供給弁24aの開状態を維持することにより、CO2の供給を継続する。このとき、制御部80は、切換弁21a,26aを切り換えて、CO2タンク21と混合分散部60とを連通する。この結果、混合分散部60においては、CO2タンク21からの超臨界CO2と無電解めっき液と分散促進剤とが混合され、更に攪拌されて、より均一な分散状態となって、無電解めっき液を含むめっき分散体が形成される。そして、このめっき分散体は、混合分散部60からめっき槽61に内側領域115を介して供給される。この内側領域115に供給されためっき分散体中のPdが、基体管101の内側表面に析出し始める。
この場合、本実施形態では、制御部80は、めっき分散体の分散保持時間内に、分散体がめっき槽61内を流れきるように、各液ポンプ22,32,42の駆動を制御する。
このように無電解めっきを継続することにより、基体管101の内側表面の全体に、無電解めっきによるPd膜が形成される。なお、無電解めっきの析出速度が遅い場合は、めっき分散流体を再利用(リサイクル)してもよい。この場合、めっき液の混合分散部60の混合部への供給を停止し、これに代えて、めっき槽61の出口から分離槽65の配管途中に混合分散部60の分散部に接続するバイパス配管を設けて、めっき分散流体のリサイクルフローを作る。そして、再度、分散させた後に、めっき槽61に供給する。この場合のめっき流体供給とめっき流体リサイクルフローの比は0〜100%の間で固定してもよいし、また可変にすることもできる。
その後、制御部80は、電流センサ64により、基体管101の表面を覆うようにPd膜が形成されたことに伴って変化する電流値を検出する。この電流値が基準値を超えた場合、制御部80は、無電解めっきを中止する。具体的には、まず、供給弁44を閉じ、液ポンプ42の駆動を停止して、無電解めっき液の混合分散部60への供給を停止する。そして、制御部80は、供給弁14を開き、液ポンプ12を駆動し、純水あるいはイオン交換水を洗浄液タンク11から混合分散部60に供給する。このとき、制御部80は、液ポンプ22,32及び加熱部23,33の駆動を継続し、供給弁24a,34の開状態を維持することにより、CO2と分散促進剤との供給を継続する。そして、所定時間、純水あるいはイオン交換水を流して、無電解めっき液を洗い流す。そして、所定時間経過後に純水あるいはイオン交換水の供給を停止する。
(電解めっき)
次に、電解めっきを行なう。この電解めっきは、温度:40℃、圧力:12Mpaの条件下で、電流値として0.01A/cm2を用いて3分間、実施する。制御部80は、供
給弁54を開き、液ポンプ52を駆動し、電解めっき液を電解めっき液タンク51から混合分散部60に供給する。制御部80は、液ポンプ22,32及び加熱部23,33,53の駆動を継続し、供給弁24a,34の開状態を維持することにより、CO2と分散促進剤との供給が継続される。これにより、混合分散部60においては、CO2と電解めっき液と分散促進剤とが混合され攪拌されて、より均一に分散された状態のめっき分散体となり、めっき槽61に供給される。そして、制御部80は、電源62を用いて、めっき槽61内に配設した電極に通電する。めっき槽61では、基体管101の内側表面に形成されたPd膜が陰極として機能し、電解めっきによりPd膜が形成される。
この電解めっき処理を行なっている間、制御部80は、各液ポンプ22,32,52を駆動し続け、混合分散部60において形成されためっき分散体をめっき槽61に継続的に供給しながら電解めっき処理を行なう。そして、めっき分散体の分散保持時間内に、分散体がめっき槽61内を流れきるように、各液ポンプ22、32、52の駆動を制御する。これにより、めっき処理によりめっき分散体中に溶解した水素ガスや基体管101の表面から剥離した不純物は速やかにめっき槽61から排出される。
分離槽65に排出されためっき分散体は、分散促進剤が含まれたCO2が分離されて、不要なガスが除去された後、CO2タンク21に還流される。一方、CO2と分散促進剤が分離された残りの電解めっき液は、めっき液排出部を介して電解めっき液再生装置に排出される。そして、この電解めっき再生装置において再生された電解めっき液は、電解めっき液タンク51に供給される。なお、分散促進剤によっては、CO2側よりもめっき液側に2液相で残留するものやめっき液に溶解する場合もある。2液相で残留する場合は、主にデカンテーションでめっき液と分離する。
そして、制御部80は、各液ポンプ22,32,52を駆動し、かつ加熱部23,33,53において加熱を行ない、混合分散させためっき分散体を、めっき槽61において供給・排出を継続し、所定の厚さの膜を形成するために要する時間だけ電解めっき処理を継続する。
(洗浄工程)
上述の各工程の終了後には洗浄処理が行なわれる。具体的には、所定の薬液の供給を停止し、ガス〜超臨界状態のCO2でめっき槽内の残留薬液を流し出す。そして、液〜超臨界状態のCO2と水との分散体を供給して、めっき槽内部の洗浄(薬液の回収)を行なう。更に、イオン交換水を流すことにより仕上げの洗浄を行なう。最後に、乾燥した液体〜超臨界CO2を供給して、水を追い出すと共に、内部を脱水乾燥する。
本実施形態では、洗浄工程を実行する場合、制御部80は、供給弁14、切換弁26aを開く。この場合、純水あるいはイオン交換水と高純度CO2とが混合分散部60に供給される。そして、前処理工程の洗浄と同様に、CO2と純水あるいはイオン交換水とが混合された洗浄分散体が、混合分散部60からめっき槽61に供給されて、洗浄が行なわれる。
そして、所定時間、純水あるいはイオン交換水を含む洗浄分散体をめっき槽61に供給した後、制御部80は、乾燥を行なうために供給弁14を閉じる。この場合、洗浄液タンク11からの純水あるいはイオン交換水の供給が停止され、高純度CO2タンク26からのCO2が、混合分散部60を介してめっき槽61に供給され、乾燥が行なわれる。具体的には、めっき槽61の内壁や基体管101に付着した純水あるいはイオン交換水を、CO2の流れにより洗い流すとともに、乾燥した液体〜超臨界状態となっているCO2に溶解させて除去する。
そして、CO2のみを所定時間、供給した後、乾燥を終了し、供給弁24aを閉じ、CO2の供給を停止する。更に、液ポンプ12の駆動及び加熱部13の加熱を停止する。以上により、水素透過層102としてのPd膜を形成するためのめっき処理を完了する。
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態では、水素分離体100には、多孔質基体としての基体管101の内側表面に、水素の溶解拡散を行なう水素透過層102が積層される。そして、この基体管101は、触媒担持セラミックス層101aと細孔セラミックス層101bとから構成される。そして、混合ガスとしての改質ガス中に含まれる水素ガスが、細孔セラミックス層101bを優先的に透過する。すなわち、細孔セラミックス層101bによって、水素透過層102に対する水素以外のガスの接触量が減少される。このため、水素透過層102の性能を低下させるガスが改質ガス中に含有していたとしても、このような改質ガスから水素ガスを分離精製するに際し、水素透過層102の性能が維持され易い。この結果、水素ガスを効率的に分離精製することができる。また、水素透過層102には水素ガスがより選択的に接触されるため、その水素透過層102を透過する水素ガスの透過量が高められる結果、水素ガスを効率的に分離精製することができる。
また、この細孔セラミックス層101bにおいては、多孔質管の細孔のサイズを、一酸化炭素ガスや炭化水素ガスと水素ガスとのふるい分けをできる程度に小さくしている。このため、改質ガスを多孔質の細孔のサイズで水素ガスをフィルタリングして、一酸化炭素ガスの水素透過層102への到達を抑制できる。従って、水素透過層102における一酸化炭素ガス等の吸着を抑制でき、しかも高濃度で水素をPd膜へ接触させるので効率的に水素ガスを分離精製することができる。
(2) 本実施形態では、触媒担持セラミックス層101aは比較的大きな孔径を有し、この多孔管内に、触媒金属を担持させる。そして、この触媒金属により、一酸化炭素ガスと水とを反応させて二酸化炭素ガスにするシフト反応や、一酸化炭素ガスの部分酸化反応を行なう。このため、触媒担持セラミックス層101aにおいて、一酸化炭素ガスの水素透過層102への到達を抑制できる。従って、水素ガスの水素透過層102における一酸化ガス等の吸着を抑制でき、効率的に水素ガスを分離精製することができる。
(3) 本実施形態の水素分離体100は、基体管101の内側表面に、水素透過層102としてのPd膜が形成されている。水素透過を促進させるために水素分離体100の温度を上げる必要がある。このためには、水素分離体100をシェルユニット1のNi充填層103に密接させて熱伝導を向上させる。この場合においても、水素透過層102は基体管101の内側表面に形成されるため、Ni充填層103に密接して伝熱を促進させても、Pd膜は磨耗等劣化の心配は無い。
(4) 本実施形態では、水素透過層102として、超臨界CO2を用いためっき法により約1μmのPd膜を用いて構成する。このように、超臨界CO2を用いることにより、薄膜であってもピンホールのない緻密な水素透過層を形成することができる。特に、薄膜にすることにより、水素の溶解拡散に要する時間を短くすることができ、水素の分離精製効率を向上させることができる。この場合、10μm程度のPd膜を利用する場合、1次側に8気圧の圧力を印加するが、Pd膜を薄膜化することにより、圧力を下げても同じ分離精製効率を確保することができる。
(5) 本実施形態の水素分離体100は、超臨界CO2と無電解めっき液と分散促進剤とを含むめっき分散体、又は超臨界CO2と電解めっき液と分散促進剤とを含むめっき分散体を、めっき槽61において基体管101を取り付けたことにより区画される内側領域115に供給する。このため、基体管101の内側領域115に供給されためっき分散体中のPdが基体管101の内側表面に析出されて、基体管101の内側表面にPd膜を形成する。すなわち、細い基体管101という極めて局所的な領域に、超臨界CO2を用いためっき処理を行なうことができる。特に、めっき液の拡散力を高める超臨界CO2を用いるため、めっき皮膜の付き回りがよく、ピンホールなどの欠陥の少ない良好なめっきを形成することができる。そして、孔径が小さい細孔セラミックス層101bに対しても、確実にPd膜の付き回りを確保することができ、アンカー効果により、基体管101に対するPd膜の密着性を向上させることができる。更に、金属は孔内部深くまで侵入して析出するので、セラミクス多孔体の基体管101への付着力を高め、水素選択透過性金属層の機械的強度を向上させることができる。
(6) 本実施形態では、Pd膜を、無電解めっき液の拡散力を高める超臨界CO2を含むめっき分散体を用いた無電解めっきを行なってPd膜を基体管101の表面に形成する。そして、無電解めっきによるPd膜の形成に連続して、超臨界CO2と電解めっき液とを含むめっき分散体を用いて電解めっきを行なう。このため、非導電性のセラミックス多孔材料から構成されている基体管101の表面に形成するPd膜の一部を、電解めっきを用いて形成することができる。通常の無電解めっきの場合、ピンホールのないめっき皮膜を得るためには、数時間のめっき処理が必要であるが、本願発明においては、ピンホールのないめっき皮膜を電解めっきにより実現できるため、Pd膜を形成した基体管101の生産性を向上させることができる。従って、水素分離体100及びこれを用いた燃料電池等のコスト低減を期待できる。
(7) 本実施形態では、制御部80が、供給弁44,54の開閉制御により、超臨界CO2によって形成される雰囲気を維持しながら、めっき分散体を変更し、更に、電源62の通電制御を行なう。従って、無電解めっきから電解めっきを完了するまで、超臨界CO2を供給しながら連続的に行なうことができるので、Pd膜を効率よく形成することができる。
(8) 本実施形態では、基体管101の内部に、めっき分散体を流しながらめっき処理を行なう。従来の超臨界CO2を用いためっきでは、超臨界CO2とめっき液とをめっき槽61内部で混合拡散させる必要がある。本実施形態の基体管101は、長物であるため、めっき槽内に攪拌子などを設けて攪拌させても、めっき液と超臨界CO2を分散状態とすることは難しい。また、基体管101の内側領域115は狭く限られた空間であって、この内側領域115内で攪拌子を回転させることはできない。本実施形態では、このような空間においても、超臨界CO2とめっき液とを混合分散させためっき分散体を流すことにより、良好なめっきを行なうことができる。
(9) 本実施形態では、めっき分散体を流しながらめっき処理を行なうため、めっきにより発生する不純物を迅速にめっき槽61から排出することができる。従って、不純物によるピンホールの発生を抑制でき、良好なめっき皮膜を得ることができる。更に、制御部80は、めっき液と超臨界CO2とが分離する前に、めっき分散体がめっき槽61を透過させるように流速を制御する。めっき槽61内において、良好な皮膜を形成するためには、CO2とめっき液との分散状態を維持できる分散促進剤を用いることが好適である。本発明では、めっき分散体が形成された状態を保ったまま、めっき槽61においてめっきが行なわれるので、基体管101に、より均一なめっきを施すことができる分散促進剤を選択することができる。
また、分散促進剤にフッ素系化合物を用いてめっきを行なった場合、実験結果では、従来の炭化水素系界面活性剤を用いた場合に比べてより平坦な皮膜を形成することができた。従って、基体管101に形成したPd膜を良好に、かつ均一に形成することができる。
更に、めっき液の拡散力を高める拡散流体として用いた超臨界状態のCO2が、副反応によって発生した水素を溶解するので、ピンホールの発生を更に抑制することができる。
(10) 本実施形態では、バルブV5,バルブV6,バルブV7を閉じて、バルブV1,バルブV4を開いて外側供給ラインに下(バルブV4側)から上に脱気した水を導入する。めっき槽内の基体管外部の空気を追い出し、バルブV1まで水封を確認したところでバルブV1,バルブV4を閉じる。バルブV5あるいはバルブV6,バルブV7を開き、更にバルブV2,バルブV3を開いて内側供給ライン側に高圧の流体を流し始める。この場合、バルブV5〜バルブV7のすべてのバルブも開いてもよい。これにより、めっきや洗浄を行なわない基体管の外側領域116には非圧縮流体に近い流体(脱気した水)が充填され、水封処理が行なわれるため、内側領域115との圧力差を調整することができる。特に、超臨界CO2を含むめっき分散体を用いる場合、内側領域115を高圧にする必要がある。従って、基体管101の内側領域115と、外側領域116との圧力差を調節しない場合には、めっき対象物である基体管101が歪んだり破断したりする可能性がある。このため、内側領域115と外側領域116との圧力差を調整することにより基体管101の変形や破断を回避しながら、めっきを行なうことができる。
(11) 本実施形態では、電流センサ64を用いて基体管101の表面に設置された端子間の電流を測定することにより、基体管101の表面上のPd膜の成膜状況を把握することができる。従って、制御部80は、電流センサ64の電流値に基づいて、基体管101の表面が、無電解めっきによりPd膜が形成された後には、迅速に電解めっきに移行することができ、Pd膜を効率よく形成することができる。
(第2実施形態)
次に、本実施形態を具体化した第2実施形態について、図6及び図7を用いて説明する。なお、以下の各実施例において、上述の実施形態と同様の部分については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施形態の水素分離体100は、図6に示すように、基体管101の外側表面に、水素透過層102となるPd膜を形成し、基体管101の内側にNi充填層103を配置させたものである。この場合、混合ガスを導入させる導入面は、水素分離体100の内側面になり、その対面である水素分離体100の外側表面に水素選択透過性金属層としてのPd層が形成される。なお、図6では、基体管内部に改質反応触媒層を形成しているが、これに限らず改質されたガスを基体管内に単に供給するようにしてもよい。本実施形態の水素分離体100においても、Ni充填層103の改質ガスは、触媒担持セラミックス層101aと細孔セラミックス層101bから水素透過層102の順番に燃料ガスを透過させて、水素ガスを分離精製する。この場合、水素分離体100では、燃料ガスは基体管101の内側から外側に流れる。
本実施形態では、上記第1実施形態で説明しためっき装置を用いる。また、本実施形態では、上記第1実施形態のめっき装置において、内側領域115に供給する流体と、外側領域116に供給する流体とを入れ替えることにより、基体管101の外側表面に、水素透過層102となるPd膜を形成する。
具体的には、本実施形態では、めっき槽61の外側用供給管119を混合分散部60に接続し、外側用排出管120を分離槽65に接続し、基体管101の軸方向に連続的に流体を供給するための供給排出手段として機能させる。そして、混合分散部60において生成しためっき分散体を、めっき槽61の外側領域116を透過させて分離槽65に排出する。これにより、めっき分散体を、めっき槽と前記多孔質基体との間に形成された空間部に、管状構造の軸方向と垂直方向(円周方向)に連続的に供給することができる。
バルブV6,バルブV7,バルブV5を閉じて、バルブV2,バルブV3を開いて内側供給ラインに下から上に脱気した水を導入する。基体管内部の空気を追い出し、バルブV2まで水封を確認したところでバルブV2,バルブV3を閉じる。バルブV5あるいはバルブV6,バルブV7を開き、更にバルブV1,バルブV4を開いて外側供給ライン側に高圧なめっきや洗浄のための流体を流し始める。なお、ここで、バルブV5〜バルブV7の全部を開いてもよい。
従って、本実施形態では、めっき槽61の外側用供給管119を混合分散部60に接続し、外側用排出管120を分離槽65に接続することにより、基体管101の軸方向に連続的に流体を供給するための供給排出手段として機能させる。
また、本実施形態では、めっき槽61において、外側領域116内に、基体管101の外面と所定の距離を保持した円筒形のプラス電極を設ける。
次に、本実施形態のめっき処理について、図3、図5〜図7を用いて説明する。
上記第1実施形態と同様に、触媒担持セラミックス層101aと細孔セラミックス層101bとを設け、活性化処理を行なった基体管101を、めっき槽61に取り付ける。本実施形態の場合には、基体管101の外側表面に活性化処理を施す。
次に、前処理工程としての洗浄工程を行なう。このとき、混合分散部60において生成された純水あるいはイオン交換水とCO2とを含む洗浄分散体を、外側用供給管119を介して、めっき槽61の外側領域116に供給し、基体管101の外側を洗浄する。そして、洗浄に使用された洗浄分散体は、外側領域116から外側用排出管120を介して分離槽65に排出される。
次に、無電解めっき工程を行なう。すなわち、超臨界CO2と分散促進剤と無電解めっき液とが混合されためっき分散体を、混合分散部60からめっき槽61の外側領域116に供給する。そして、この外側領域116に供給されためっき分散体中のPdが、基体管の外側表面に析出して、基体管101の外側表面に無電解めっきによるPd膜が形成される。
そして、制御部80は、電流センサ64によりPd膜の形成状況を取得し、上記第1実施形態と同様に、無電解めっき液タンク41と電解めっき液タンク51とを切り換えて、更に電源62を用いて通電を行なう。この場合、電解めっき液を含むめっき分散体が、混合分散部60からめっき槽61に供給される。そして、基体管101の表面に無電解めっきで形成したPd膜を陰極として、このPd膜にめっき液中のPdが析出する。そして、無電解めっきにより形成されたPd膜の外側に連続して、電解めっきによるPd膜が形成される。
その後、この電解めっきにより所定の厚さのPd膜が形成されると、後処理工程が行なわれる。そして、Pd膜が外側表面に形成された基体管101の内側に、改質器に改質触媒としてのNi充填層103を充填することにより、水素分離ユニットの内側から改質した水素ガスを接触させる。
本実施形態によれば、上記実施形態の(1)〜(9)、(11)に記載の効果と同様な効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(12) 本実施形態では、基体管101の外側に水素透過層102としてのPd膜を形成する。このため、水素分離体100の内側から外側へガスを透過させることにより、一酸化炭素ガス等の吸着を抑制して、効率的に水素ガスを分離精製することができる。
(13) 本実施形態では、基体管101の外周に、軸方向及び円周方向にめっき分散体を流しながらめっき処理を行なう。このため、基体管101の外周の空間が狭い場合であっても、超臨界CO2とめっき液とを混合分散させためっき分散体を流しながら、良好なめっきを行なうことができる。従って、めっき槽61の容積を小さくすることができる。
(14) 本実施形態では、バルブV6,バルブV7,バルブV5を閉じて、バルブV2,バルブV3を開いて内側供給ラインに下から上に脱気した水を導入する。基体管内部の空気を追い出し、バルブV2まで水封を確認したところでバルブV2,バルブV3を閉じる。バルブV5あるいはバルブV6,バルブV7を開き、続いてバルブV1,バルブV4を開いて外側供給ライン側に高圧なめっきや洗浄のための流体を流し始める。なお、ここで、バルブV5〜バルブV7の全部を開いてもよい。この場合、内側領域115には非圧縮流体に近い流体が充填されるため、内側領域115との圧力差を調整することができる。特に、超臨界CO2を含むめっき分散体を用いる場合、外側領域116を高圧にする必要がある。従って、内側領域115と外側領域116との圧力差を調整することにより基体管101の変形や破断を回避しながら、めっきを行なうことができる。また、基体管101の内側領域115と外側領域116との圧力差を調整するために超臨界CO2を用いるので、めっき液と混合させる拡散流体を有効に利用することができる。
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 上記各実施形態において、水素分離体100は、触媒担持セラミックス層101aと細孔セラミックス層101bとから構成された水素透過層102を形成する。これに加えて、触媒担持セラミックス層101aの外側に金属多孔体(例えば、SUS多孔体)を設けてもよい。アルミナの熱伝導率は比較的低いが、金属多孔体を用いることにより、熱容量を増大させ、熱伝導を向上させ、水素の溶解・拡散の促進を図ることができる。
○ 上記各実施形態において、めっき槽61において、基体管101の両端の開口部を支持することにより、基体管101を保持した。これに限らず、Pd膜を形成しない他の表面で、基体管101を保持してもよい。例えば、第1実施形態のように基体管101の内側表面にPd膜を形成する場合には、基体管101の外側表面で、基体管101を挟持するように保持してもよい。
○ 上記各実施形態においては、無電解めっきにより基体管101の表面に形成されたPd膜の形成状況を検出する検出手段として、電流センサ64を用いた。これに限らず、検出手段は、基体管101に形成される無電解めっきの形成状況が把握できれば、他の機器でもよい。例えば、基体管101の端子間の抵抗を測定する抵抗計測器や、基体管101の表面の反射光量を計測する光度計測器などを用いてもよい。
○ 上記実施形態においては、水素分離体100は、管状構造の基体管101を用いた。これに限らず、水素分離体100は、水素透過層102を透過する前に基体管101に燃料ガスが透過する構成であれば、平板形状等であってもよい。
○ 上記実施形態においては、水素分離体100は、基体管101の一表面に水素透過層102としてのPd膜を、他表面にNi充填層103を設けた。水素ガスを含む混合ガスの供給はこのような形態に限られるものではなく、他のプロセスや装置等で生成した水素リッチな改質ガスを用いて水素ガスを分離精製することができる。
○ 上記実施形態においては、無電解めっき及び電解めっきの各処理工程において、分散促進剤を使用している。この分散促進剤を省略してもよい。また、分散促進剤としては、フッ素系化合物に限らず、従来の炭化水素系界面活性剤を分散促進剤として使用してもよい。
○ 上記実施形態においては、拡散流体として超臨界状態のCO2を用いた。これに限らず、拡散流体としては、亜臨界状態、すなわち、臨界点近傍で高温高圧な液体状態にあるCO2を用いてもよいし、またCO2に限らず、亜臨界状態又は超臨界状態の他の流体を用いてもよい。
○ 上記実施形態においては、水素分離体100を水素製造装置に適用する場合を説明した。この水素分離体100は、水素製造装置に限らず、生成した水素ガスを供給するような装置、例えば水素タンクやプラントに適用してもよい。また、第2の実施形態の水素分離体100の外側に燃料極、電解質、空気極を設けることにより、円筒形の固体酸化物燃料電池を構成することも可能である。この場合、内部に水素ガスを含む燃料ガスを導入し、外部に空気を導入する。この場合も、細孔層や触媒担持層により、水素選択透過性金属層(燃料電池の場合は触媒金属層)への一酸化炭素ガス等の吸着を抑制することができる。
○ 上記実施形態においては、固体酸化物燃料電池の集電及びガスシール部分でセラミックスと金属の接合部分の下地処理に本めっき方法を用いても良い。SOFC(Solid Oxide Fuel Cell )セルを構成するセラミックスに本方法を用いて、例えば横縞型円筒セルを形成するアルミナ管等の両端にニッケルをめっきすることで、ガスシールと集電機能をもつ金属キャップとセルスタック接続できるようになる。めっき層はセラミックス表面の細孔の奥深くまで金属は侵入し、ナノサイズで析出して、金属皮膜層をセラミックス表面に形成する。従って、セラミックスに室温と1000℃の厳しいヒートサイクルで用いても剥離し難く緻密でガスも透過しにくい金属皮膜が得られる、セラミックスの膨張収縮の挙動にめっき皮膜は追随する。めっき層を介してセラミックスと金属パーツをタイトに(メルト)接合し、同時に、気密にシールすることができる。
○ 上記実施形態においては、めっきを行なわない領域に非圧縮流体に近い流体を充填する。これに代えて、めっきを行なわない領域に、連結管で接続した状態で同じ圧の水やCO2を流してもよい。これにより、処理を行なう領域と、その他の領域との差圧を抑制することができる。
次に、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
無電解めっき処理工程では、めっき液としてのPd無電解めっき液(PdCl2:0.01mol/L、Ethylendiamine:0.08mol/L、Na2HPO3:0.02mol/L、Thiodiglycollic acid:30mg/L、pH:10.6)を用いて、アルミナ製の基体管101に対してPd膜を形成した。基体管101には、予め、感受性化(sensitization)及び活性化(activation)処理を施した後、上記Pd無電解めっき液を用いて、10分間、Pd無電解めっき処理を施した。その基体管101を、めっき槽61に装着した後、そのめっき槽61に、50℃、12MPaの条件で、超臨界二酸化炭素を供給した。そして、めっき槽61内の温度及び圧力が、前記条件にて安定したことを確認した。その後、上記Pd無電解めっき液(還元剤を除く)、フッ素系化合物としてのエチルパーフルオロオクタノート(F(CF2)7COOCH2CH3)、及び還元剤を、混合分散部60へ供給するとともに混合分散部60からめっき槽61へ供給することにより、Pd無電解めっき処理を開始した。電流センサ64が基準値となるまで、Pd無電解めっき処理を継続した後、Pd無電解めっき液(還元剤を除く)、フッ素系化合物、及び還元剤のめっき槽61への供給を停止することにより、Pd無電解めっき処理を終了した。続いて、50℃、12MPaの条件の二酸化炭素を用いて、Pd無電解めっき液等を含む残留液を、めっき槽61から排出した後、水と二酸化炭素をめっき槽61の内部に流通させることによって、めっき槽61の内部及び基体管101の洗浄を行った。
電解めっき処理工程では、パラジウムめっき浴と、拡散流体としての超臨界状態のCO2と、フッ素系化合物としてのエチルパーフルオロオクタノート(F(CF2)7COOCH2CH3)とを用いて、上記無電解めっき処理工程で形成されたPd膜を陰極として、さらにPd膜を形成した。パラジウムめっき浴の組成は、PdCl2:0.10mol/L、KBr:4.00mol/L、KNO2:0.10mol/L、H3BO3:0.49mol/L、Glycine:0.10mol/Lであり、パラジウムめっき浴のpHは6.6である。また、超臨界状態のCO2とパラジウムめっき液との配合比は、体積比率で4対6とした。電解めっき処理工程の条件としては、温度40℃、圧力12MPa、電流密度1.0A/dm、及びめっき時間3分である。得られたPd膜の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、ピンホールの発生は確認されなかった。
第1実施形態の水素分離膜ユニットの構造の概略説明図であり、(A)はシェルユニットの外観、(B)はチューブユニットを示す。 水素分離膜ユニットにおける水素分離体の説明図。 実施形態の水素分離体を製造するめっき装置のシステム配管の概略図。 第1実施形態において用いられるめっき槽の概略構成図。 基体管の取り付けを説明するためのめっき槽の分解図。 第2実施形態の水素分離体の構造を説明するための正面図及び断面図。 第2実施形態において用いられるめっき槽の概略構成図。
符号の説明
61…めっき槽、100…水素分離体、101…多孔質基体としての基体管、101a…触媒担持セラミックス層、101b…細孔層としての細孔セラミックス層、102…水素選択透過性金属層としての水素透過層、103…Ni充填層。

Claims (3)

  1. 水素ガスを含む混合ガスから水素ガスを分離精製する水素分離体であって、
    前記水素分離体は、前記混合ガスを導入させる導入面を有する多孔質基体と、この導入面の対面上に形成され、溶解拡散機構に基づいた水素選択透過性を有する金属膜によって形成された水素選択透過性金属層とを備え、
    前記多孔質基体は細孔層を備え、該細孔層は、前記混合ガスに含まれるとともに前記水素選択透過性金属層の性能を低下させるガスに比べて、水素ガスを優先的に透過させるとともに前記導入面から導入されて前記細孔層を通じた水素ガスが前記水素選択透過性金属層に接触する構成であり、前記水素選択透過性金属層の性能を低下させるガスは、一酸化炭素ガス、窒素酸化物ガス、硫黄酸化物ガス、及び炭化水素ガスの少なくとも一種を含み、前記多孔質基体に、前記水素選択透過性金属層の性能を低下させるガスのシフト反応又は部分酸化反応を促進させる触媒金属を担持させたことを特徴とする水素分離体。
  2. 前記多孔質基体は、管状構造を有しており、
    前記水素選択透過性金属層を、前記管状構造の内側表面に形成したことを特徴とする請求項1に記載の水素分離体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の水素分離体を備えたことを特徴とする水製造装置
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