JP4007245B2 - 車両用シートベルト装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウェビングの張力を変化させるプリテンショナを有し、ブレーキ制動が予測される場合にウェビングを巻き取って乗員のリスク度を回避する車両用シートベルト装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の乗員のリスク度を回避する技術として、例えば、米国特許6370461号公報(特許文献1)に記載されているものが知られている。この特許文献1に記載されている技術では、避けられない衝突を予測して、衝突前に車両の姿勢を制御するものである。避けられない衝突を予測する手段としては、運転者のブレーキ操作割合、ABS(Anti-lock Brake System)の作動信号、レーダによる障害物検知によるものが考えられる。
【0003】
また、車両姿勢制御手段としては、あらゆる種類のシャシー、車体、内装の装置が含まれる。例えば、車高を低くする、ステアリングの位置を変更する、シート位置を変更する等のほか、乗員拘束装置を事前に作動させる、作動させる際のしきい値を変更する、といった方法が考えられる。
【0004】
【特許文献1】
米国特許6370461号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の技術においては、運転者のブレーキ操作割合を検知して、避けられない衝突を予測しているが、ブレーキペダルの初期位置がずれた場合には、予測精度が低下することが避けられない。具体的には、ブレーキペダルの踏み込み量を予測に用いている場合には、ブレーキペダルの初期位置がずれると、検出した踏み込み量に誤差が含まれることになり、精度が低下する。
【0006】
また、ブレーキペダルの踏み込み速度を予測に用いている場合には、ブレーキペダルとセンサの取り付け位置によって、ブレーキペダルストロークに対するセンサ出力値の関係が線形にならなくなる。このような場合にも、初期位置のずれによって、センサ出力の変化が同じであっても、ブレーキペダルストロークのどの範囲で動いているのかによって、ブレーキペダル踏み込み速度は異なる。従って、予測精度が低下してしまう。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、シートに着座した乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングを巻き取り、巻き戻しするリトラクタを備えた車両用シートベルト装置において、前記ウェビングを前記リトラクタに所望する張力で巻き取り駆動する第1のプリテンショナと、緊急時に前記ウェビングに張力を付与し、乗員を最終的に拘束する第2のプリテンショナと、車両のブレーキ操作を検出するブレーキペダルストロークセンサと、前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データに基づいて、急ブレーキが発生していると判断される場合に、前記第1のプリテンショナによるウェビング巻き取り時の張力を制御する制御手段と、を具備し、前記第1のプリテンショナは、可逆的に動作する電動プリテンショナであり、前記制御手段は、前記ブレーキペダルストロークセンサにてブレーキ操作が行われていないと判断されたときに、当該ブレーキペダルストロークのゼロ点位置を補正する手段を備え、且つ、前記制御手段は、イグニッションがオンとされた後、前記ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点位置を補正する処理が行われるまでは、前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データに基づく前記第1のプリテンショナの作動条件が成立した場合であっても、前記第1のプリテンショナを作動させないことを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
本発明によれば、ブレーキ操作をしていないと判断したときに、そのときのブレーキペダルストロークをブレーキペダルストロークセンサのゼロ点として、ブレーキペダルストロークセンサの値を補正する手段を設けたので、ブレーキペダルストロークセンサの値のゼロ点を補正することができ、ブレーキペダルストロークセンサの値に基づいて、第1のプリテンショナの作動判断をして、ウェビングを巻き取る制御の精度が向上する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシートベルト装置の配置構成図である。
【0010】
同図に示すように、シートベルト装置10は、3点式パッシブシートベルトに例をとって示し、シートSに着座した乗員Hを拘束するウェビング11と、このウェビング11の一端側を巻回するリトラクタ12とを備え、ウェビング11の他端側はシートSのドア側に配置したアンカーを介して車体に固定してあるとともに、ウェビング11の中間部に移動自在に挿通したタング13を、シートSの車体中央側で車体に固定したバックル14に着脱自在に係合し、このバックル14と前記リトラクタ12との間でウェビング11をセンターピラーPcの上部のスルーリング15を介して移動自在に支持するようになっている。
【0011】
リトラクタ12は、ウェビング11をリトラクタ12に巻き取り駆動し、またはリトラクタ12から巻き戻し駆動する第1のプリテンショナ16と、緊急時にウェビング11に張力を付与し乗員Hを最終的に拘束する第2のプリテンショナ17と、を設けてある。
【0012】
第1のプリテンショナ16は、可逆的な動作が可能な電動プリテンショナとして構成され、モータMと減速ギヤ機構16aとからなり、モータMの回転数を減速してトルクをリトラクタ12に設けたウェビング11を巻回するリールに伝達するようになっている。
【0013】
第2のプリテンショナ17は、この実施形態では火薬式(火薬プリテイン)として構成され、衝突検知によって火薬の爆発力でウェビング11を瞬時にリトラクタ12に巻取るようになっている。
【0014】
尚、第2のプリテンショナ17は火薬式に限ることなく、ウェビング11を迅速に巻取ることができる限りにおいてモータ等を用いることができる。
【0015】
また、前記リトラクタ12には、衝突時に巻取ったウェビング11の張力が所定値以上に上昇して乗員Hに大きな負担を掛けるのを防止するためのロードフォースリミッタ、及びウェビング11の急激な引き出しを感知してこのウェビング11の引き出しをロックするロック機構を設けてある。
【0016】
そして、衝突時には、ロック機構により、乗員の体をシートに拘束し、第2のプリンテンショナ16が作動して、ウェビング11の弛みを除去して、乗員の拘束性を向上させる。また、ロードフォースリミッタが作用して、シートベルトにより乗員の体へ作用する力を所定値以下に抑制する。
【0017】
更に、本実施形態に係るシートベルト装置10は、第1のプリテンショナ16を制御する第1のコントローラ30と、第2のプリテンショナ17を制御する第2のコントローラ53と、を具備している。
【0018】
第1のコントローラ30は、車両のブレーキ操作量を検出するブレーキペダルストロークセンサ20にて検知されるブレーキストローク信号、及び車速センサ21の検出信号に基づいて、第1のプリテンショナ16を制御する。
【0019】
第2のコントローラ53は、衝突時の衝撃を検知する衝撃センサ52より衝突を示す検知信号が与えられた際には、第2のプリテンショナ17を駆動させるべく制御する。
【0020】
図2は、第1のコントローラ30の詳細な構成を示す機能ブロック図である(図1に示した第2のコントローラ53については、記載を省略している)。同図では、第1のプリテンショナ16のモータMを2個(M1,M2)設けてあり、このうちM1は運転席用のシートベルト装置10のものであり、M2は助手席用のシートベルト装置10のものとなっている。
【0021】
第1のコントローラ30は、図2に示すようにCPU31を備え、更に、このCPU31にバッテリ(BATT)からフューズ22を介して電源電圧を入力する電源回路32と、イグニッション信号を入力するIGN(イグニッション)入力回路33と、車速センサ21の車速信号を入力するCAN(Controller Area Network)・I/F34と、ブレーキペダルストロークセンサ20のブレーキストローク信号を入力するアナログI/F35と、を備えている。
【0022】
ここで、電源回路32により安定化された電圧は、CPU31の駆動源として用いる以外に、センサ電源回路32aを介してブレーキペダルストロークセンサ20に供給されるようになっている。
【0023】
CPU31より出力される制御信号は、駆動回路36を介してリレー37に供給され、且つ、運転席用及び助手席用のモータM(M1,M2)を駆動制御し、且つ回転方向を切り換えるH−Bridge(Hブリッジ)38a,38bに供給されるようになっている。
【0024】
H−Bridge38a,38bには、リレー37を介して、フューズ22、バッテリ電源よりの電圧が与えられ、且つ、各モータMは、H−Bridge38a,38bにより回転方向が制御されるとともに、これらモータMの回転速度は、CPU31で演算したデューティ比(以下、デューティと称す)によって制御されるようになっている。
【0025】
ブレーキペダルストロークセンサ20は、運転者の制動操作によるブレーキペダルの踏込み量を、ポテンショメータの回転角で検出するようになっており、このブレーキペダルストロークセンサ20は、センサ電源回路32aより与えられる電源電圧を、ブレーキペダルの踏込み量に応じた電圧信号に変換し、この電圧信号を、アナログI/F35を介してCPU31に出力する。
【0026】
車速センサ21で検出した車速データは、CAN・I/F34を経由してCPU31に供給される。この場合、CAN・I/F34を経由することなく、車速センサ21から車速に応じた周期のパルスを出力して、このパルス周期から車速を検出するようにしてもよい。
【0027】
CPU31は、ブレーキペダルストロークセンサ20の検出信号に基づいて、ブレーキペダルが踏み込まれたときの制動が、緊急制動であるかどうかを判断する共に、緊急制動であれば衝突回避動作であると判断して、H−Bridge38a,38bに電流指令値をデューティ出力し、モータMの回転数を制御してウェビング11に張力を加え、該ウェビング11を巻き取る制御を行う。
【0028】
また、第1のコントローラ30に入力される、ブレーキペダルストローク、車速を検出する各センサが故障した場合には、これらの故障を検知するフェールセーフ機能を有しており、このフェールセーフロジックに基づいて、各モータM(M1,M2)への電流の通電を停止する。
【0029】
図3は、CPU31の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、CPU31は、ブレーキペダルストロークセンサ20の検出信号に基づいて、ブレーキの作動を判断するブレーキ操作判断部31aと、車速センサ21の検出信号に基づいて、制動の終了を判断する制動終了判断部31bと、緊急制動判断部31cと、フェールセーフ部31dと、動作モード判定部31eと、各モータM(M1,M2)への出力電流、および通電時間を算出する出力電流及び通電時間算出部31fと、運転席側のモータM1の作動を判断する運転席作動判断部31gと、助手席側のモータM2の作動を判断する助手席作動判断部31hと、を備えている。
【0030】
更に、ブレーキペダルストロークのゼロ点を補正するためのゼロ点補正部31iを備えている。
【0031】
次に、実施形態に係るシートベルト装置10の動作について説明する。図4は、該シートベルト装置10の全体的な動作を示すフローチャートである。また、図5〜図9は、詳細フローチャートである。
【0032】
まず、図4に基づいて、全体動作について説明すると、車両走行中には、ステップS1にて、車速センサ21にて検出される当該車両の走行速度が、CAN・I/F34を介してCPU31に取り込まれる。次いで、ステップS2では、ブレーキペダルストロークセンサ20により検出されたブレーキペダルのストローク量(踏み込み量)が検知され、アナログ・I/F35を介してCPU31に取り込まれる。
【0033】
ステップS3では、ブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理が行われる。
【0034】
ステップS4では、上記の処理で得られた車速データ、及びブレーキペダルのストローク量のデータに基づいて、緊急制動が行われているかどうかが判断される。例えば、運転者が運転中、前方に障害物が急に現れたり、障害物の発見が遅れた場合には、衝突を回避するために、緊急制動を行う。そして、ブレーキペダルストロークセンサ20の出力信号に基づき、緊急の制動操作が発生していることが検出される。
【0035】
また、ステップS5では、緊急制動が終了しているかどうかが判断される。ここでは、例えば、車両が停止している場合や速度が略一定である場合、或いは加速している場合に、緊急制動が終了しているものと判断する。
【0036】
ステップS6では、出力デューティを算出する処理が行われる。
【0037】
ステップS7では、フェールセーフのロジックにより、センサ類が故障した場合には、各モータMへの電圧供給を停止させる処理が行われる。
【0038】
ステップS8では、フェールセーフ、作動禁止条件に基づいて、シートベルト制御の作動、非作動を判断し、その後、ステップS1からの処理に戻る。
【0039】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら、ステップS3に示したブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理について説明する。
【0040】
まず、ステップS11で、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以下であるかどうかが判断される。そして、所定値以下である場合には(ステップS11でYES)、ステップS12で、ブレーキペダルストロークが所定値以下であるかどうかが判断される。
【0041】
所定値以下である場合には(ステップS12でYES)、ステップS13で、この状態(ステップS11,12で共にYESとなる状態)が所定時間以上経過したかどうかが判断され、所定時間以上経過した場合には(ステップS13でYES)、ステップS14で、このときのブレーキペダルストロークセンサ20の検出信号の値をブレーキペダルストロークのゼロ点とし、ステップS15でブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0042】
また、ブレーキペダルストロークの変化が所定値よりも大きい場合(ステップS11でNO)、ブレーキペダルストロークが所定値よりも大きい場合(ステップS12でNO)、及び所定時間が経過しない場合(ステップS13でNO)には、現在ブレーキ操作中であると判断できるので、ステップS14のブレーキペダルストロークのゼロ点の設定を行わず、ステップS15でブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0043】
また、ステップS15における補正処理の補正値は、「ブレーキペダルストローク」−「ゼロ点」、即ち、ブレーキペダルストロークの値とゼロ点として設定された値との差分として求めることができる。
【0044】
図6は、図4のステップS4に示した、緊急制動判断の処理手順を示すフローチャートである。まず、ステップS21の処理で、車速が所定の速度V1よりも大きいか否かが判断される。そして、V1以下の場合には(ステップS21でNO)、第1のプリテンショナ16によるウェビング張力の制御を行わない。
【0045】
また、車速がV1を超えていれば(ステップS21でYES)、ステップS22で、ブレーキペダルストロークセンサ20の出力信号から、ブレーキの踏み込み速度を算出する。そして、ステップS23では、ブレーキ踏み込み量、及びブレーキ踏み込み速度に基づいて、運転者が期待する減速G(Gは加速度を示す)である、期待減速Gを算出する。
【0046】
次いで、ステップS24では、期待減速Gと緊急制動判断のしきい値G1とを比較し、期待減速Gが緊急制動判断のしきい値G1よりも大きい場合には(ステップS24でYES)、緊急制動であると判断して、ステップS25で、緊急制動フラグを「1」にセットする。
【0047】
図7は、図4に示したステップS5の、制動判断終了処理を詳細に示すフローチャートである。同図に示すステップS31では、車速が所定値V0(例えば、V0は時速5Km程度)未満であるかどうかが判断され、V0未満である場合には(ステップS31でYES)、車両は停止しているものと見なして、ステップS33にて、変数「タイマ」をインクリメントする。
【0048】
また、車速がV0以上である場合には(ステップS31でNO)、ステップS32で、車両の減速度が所定の減速度G2よりも小さいかどうかが判断され、小さい場合には(ステップS32でYES)、略一定の速度で走行しているか、或いは加速しているものと判断し、前述のステップS33と同様に、ステップS34にて、変数「タイマ」をインクリメントする。
【0049】
他方、減速度が減速度G2以上である場合には(ステップS32でNO)、ステップS35て、「タイマ」をリセットする。つまり、変数「タイマ」=0とする。
【0050】
その後、ステップS36では、変数「タイマ」の値と所定の時間T1とを比較し、「タイマ」がT1を超えた場合には、ステップS37で緊急制動フラグをリセットする。つまり、時間T1以上継続して減速度が小さくなった場合、或いは、車両が停止した場合には、緊急制動終了と判断する。また、「タイマ」がT1以下である場合には、緊急制動フラグをそのまま維持する。
【0051】
ここで、「タイマ」が所定の時間T1を超えるまで待つ理由(即時に緊急制動を終了させない理由)は、車両停止ではないけれども、タイヤロック等に起因して車両の走行速度が一瞬だけV0以下になったり、ポンピングブレーキにより、制動中ではあるが、減速度が一瞬だけG2よりも小さくなるような場合を想定し、このような場合に、緊急制動が終了すること、ひいては、ウェビング11の張力制御が終了することを防止するためである。
【0052】
図8は、図4に示したステップS6の、出力デューティ算出処理を示すフローチャートである。この処理では、まず、ステップS41で、緊急制動フラグ(図6参照)が「1」であるかどうがが判断される。そして、「1」である場合には(ステップS41でYES)、ステップS42で、出力デューティを「D1」に設定し、「1」でない場合には(ステップS41でNO)、ステップS43で、出力デューティを「0」に設定する。つまり、緊急制動フラグが「1」の場合には、「D1」でデューティ出力するが、「0」の場合にはデューティ出力しない。
【0053】
図9は、図4に示したステップS7の、フェールセーフ処理の具体的な処理手順を示すフローチャートである。まず、ステップS51で、各種センサ等において、故障が検知されたかどうかが判断され、故障が検知された場合には、ステップS53で、デューティ出力を禁止する。つまり、センサ類が故障している場合には、ブレーキ制動、或いは前方障害物への接近が検出されていないにも関わらず、ウェビング11の張力が制御される場合があり、このような場合には、乗員にリスクが生じる可能性があるので、これを回避するために、故障が検知された際には、デューティ出力を禁止する。
【0054】
また、同様に、ステップS52にて、作動禁止条件が満たされた場合においても、デューティ出力を禁止する。作動禁止条件とは、例えば、低車速時において、万が一衝突したとしても被害が小さいと想定される場合である。このような場合には、出力を禁止して、ウェビング11巻き取りの作動頻度を低下させることが、モータの耐久性の観点から望ましい。
【0055】
他方、故障が検知されず、且つ作動禁止条件が満たされていない場合には、ステップS54にてデューティ出力を許可する。
【0056】
上記の処理により、緊急制動判断が成立した際に、第1のプリテンショナ16を作動させてウェビング11に張力を付与することにより、減速時の慣性力によって乗員が前方に移動するのを抑制し、仮にそのまま障害物に衝突した場合であっても、車室内での2次衝突の可能性を極力低下させることができるのである。
【0057】
次に、図5に示したステップS14のゼロ点設定の処理について詳しく説明する。ブレーキペダルストロークセンサ20は、その取り付け部のガタ、変形、電気的特性により、図10、図11に示すように、ブレーキペダルストロークに対するセンサ出力がオフセットし、ゼロ点ずれが発生することがある。
【0058】
例えば、ブレーキペダルストロークの変化に対するセンサ出力が、図12の直線P1のように変化するように設定されているにも関わらず、オフセットが発生し、直線P2に示すように変化する場合には、ブレーキペダルストロークが、しきい値として設定された値S2を超えたときに、シートベルト制御が開始されるように設定しているにも関わらず、ブレーキペダルストロークがS1を超えたときに作動してしまうという誤動作が発生してしまう。
【0059】
その結果、図13の曲線P3に示すように、ゼロ点が正しく判断された場合には、緊急制動であると判断されないブレーキ操作であっても、ゼロ点ずれが生じたために、センサ出力が曲線P4のようになってしまい、しきい値Th1を超えてしまい、緊急制動と判断されて、シートベルト制御が開始されるので、作動頻度が増加して、乗員に煩わしさを感じさせてしまう。
【0060】
本実施形態では、ブレーキペダルストロークが操作されていない状態を判断し、このときのブレーキペダルストローク位置に基づいて、ゼロ点を設定することにより、ガタ、変形、電気的特性に起因するオフセットを除去し、上記の問題を解決している。
【0061】
ここで、ゼロ点ずれは、ブレーキペダルストロークの絶対値に対するセンサ出力の誤差となるが、ブレーキペダルストロークに対するセンサ出力の傾きは等しいので、ブレーキペダルストロークを微分して得られる、ブレーキペダルストローク速度の誤差とはならない。そのため、ブレーキペダルストロークとブレーキペダルストローク速度を用いて、緊急制動を判断する場合には、ブレーキペダルストロークの誤差のみを考慮すればよい。
【0062】
このようにして、第1の実施形態に係る車両用シートベルト装置では、ブレーキ操作をしていないと判断したときに、そのときのブレーキペダルストロークをブレーキペダルストロークセンサのゼロ点として、ブレーキペダルストロークセンサの値を補正する手段を設けたので、ブレーキペダルストロークセンサの値のゼロ点を補正することができ、ブレーキペダルストロークセンサの値に基づいて、第1のプリテンショナの作動判断をして、ウェビング11を巻き取る制御の精度が向上する。これにより、ウェビング11の張力制御を高精度に行うことができる。
【0063】
また、ブレーキ操作をしていないと判断する条件が、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以内の状態が所定時間以上継続し、且つブレーキペダルストロークの値が所定範囲内の状態が所定時間以上継続した場合としたので、ブレーキ操作が行われていないことを、確実に判断できる。
【0064】
更に、補正値を、ブレーキペダルストロークとブレーキペダルストロークのゼロ点との差分としたので、ブレーキペダルストロークセンサの値のゼロ点を高精度に補正することができる。
【0065】
次に、本発明の第2の実施形態に係るシートベルト装置について説明する。第2の実施形態では、前述した第1の実施形態の、図5に示したブレーキペダルストロークのゼロ点補正の処理手順が相違し、その他の構成については第1の実施形態と同一であるので、この処理手順についてのみ説明する。
【0066】
図14は、第2の実施形態に係るブレーキペダルストロークのゼロ点補正の処理手順を示すフローチャートである。
【0067】
同図に示すように、まず、ステップS61で、ブレーキペダルストロークのゼロ点が未設定であるかどうかが判断される。未設定である場合には(ステップS61でYES)、ステップS62で、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以下であるかどうかが判断される。そして、所定値以下である場合には(ステップS62でYES)、ステップS63で、ブレーキペダルストロークが所定値以下であるかどうかが判断される。
【0068】
所定値以下である場合には(ステップS63でYES)、ステップS64で、この状態が所定時間以上経過したかどうかが判断され、所定時間以上経過した場合には(ステップS64でYES)、ステップS65で、このときのブレーキペダルストロークセンサ20の検出信号の値をブレーキペダルストロークのゼロ点とし、ステップS66で、ブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0069】
また、ブレーキペダルストロークのゼロ点が設定されている場合(ステップS61でNO)、ブレーキペダルストロークの変化が所定値よりも大きい場合(ステップS62でNO)、ブレーキペダルストロークが所定値よりも大きい場合(ステップS63でNO)、及び所定時間が経過しない場合(ステップS64でNO)には、ステップS65のブレーキペダルストロークのゼロ点の設定を行わず、ステップS66で、ブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0070】
つまり、本実施形態では、ブレーキペダルストロークのゼロ点が未設定の場合にのみ、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以内で、且つ、ブレーキペダルストロークが所定値以下の状態が所定時間以上継続した場合に、その時点のブレーキペダルストロークをゼロ点とし、ゼロ点補正を行うようにしている。
【0071】
従って、一旦、前記の条件が成立し、ゼロ点が設定された場合には、再度ゼロ点を設定することは行わない。これは、ブレーキペダルのゼロ点がずれる原因が、取り付け部のガタ、変形、電気的特性によるものであり、ゼロ点が大きくずれることは頻繁には発生しないからである。なお、ブレーキペダルストロークのゼロ点が未設定の場合には、ゼロ点の初期値として「0」を使用して、ゼロ点補正を行えばよい。
【0072】
また、1回のイグニッションオン時に、1回ゼロ点補正を行うようにしても良い。
【0073】
このようにして、第2の実施形態に係る車両用シートベルト装置では、ゼロ点が未設定のときにのみ、ブレーキペダルストロークのゼロ点位置を補正する処理が行われるので、ゼロ点補正が頻繁に行われることを防止することができる。
【0074】
また、同一のイグニッションオン中には、1回のみゼロ点位置の補正を行うことにより、ゼロ点補正が頻繁に行われることがなく、ブレーキペダルストロークセンサの値に基づいた、第1のプリテンショナナの作動判断にばらつきが生じない。
【0075】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態の図9で示したフェールセーフ処理を、図15のフローチャートに示す処理に変更したものであり、その他の構成については、第1の実施形態と同一である。
【0076】
まず、ステップS71で、各種センサ等において、故障が検知されたかどうかが判断され、故障が検知された場合には、ステップS74で、デューティ出力を禁止する。つまり、センサ類が故障している場合には、ブレーキ制動、或いは前方障害物への接近が検出されていないにも関わらず、ウェビング11の張力が制御される場合があり、このような場合には、乗員にリスクが生じる可能性があるので、これを回避するために、故障が検知された際には、デューティ出力を禁止する。
【0077】
また、ステップS72にて、作動禁止条件が満たされた場合においても、デューティ出力を禁止する。更に、ステップS73にて、ブレーキペダルストロークのゼロ点が設定されていないと判断された場合についても同様に、ステップS74で、デューティ出力を禁止する。作動禁止条件とは、例えば、低車速時において、万が一衝突したとしても被害が小さいと想定される場合である。このような場合には、出力を禁止して、ウェビング11巻き取りの作動頻度を低下させることが、モータの耐久性の観点から望ましい。
【0078】
他方、故障が検知されず、且つ作動禁止条件が満たされず、且つ、ブレーキペダルストロークのゼロ点が設定されている場合には、ステップS75にてデューティ出力を許可する。
【0079】
従って、イグニッションをオンとした後、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以内で、且つ、ブレーキペダルストロークが所定値以下の状態が、所定時間以上継続するまでは、ウェビング11の巻き取りが行われない。これにより、ゼロ点のずれが大きい場合でも、ゼロ点の補正が行われるまではウェビング11の巻き取りが行われないので、緊急ブレーキとは言えないようなブレーキ操作の時に、ウェビング11が巻き取られる、ということを防ぐことができる。
【0080】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、第1の実施形態の図8で示した出力デューティ算出処理を、図16のフローチャートに示す処理に変更したものであり、その他の構成については、第1の実施形態と同一である。
【0081】
まず、ステップS81で、緊急制動フラグが「1」であるかどうかが判断され、「1」である場合には(ステップS81でYES)、ステップS82で、ブレーキペダルストロークのゼロ点が未設定であるかどうかが判断される。そして、未設定である場合には(ステップS82でYES)、ステップS83で、出力デューティを「D1」に設定する。
【0082】
ブレーキペダルストロークのゼロ点が設定されている場合には(ステップS82でNO)、ステップS84で、出力デューティを「D2」(但し、D2>D1)に設定する。また、緊急制動フラグが「1」でない場合には(ステップS81でNO)、ステップS85で、出力デューティを「0」とする。
【0083】
ここでの処理では、ブレーキペダルストロークのゼロ点が未設定の場合には、ゼロ点設定されているときよりも、出力デューティを低く設定するようにしている。これにより、ブレーキペダルストロークのゼロ点がずれ、且つ、ゼロ点の補正が行われてない状態で、緊急ブレーキとは言えないようなブレーキ操作であったにも関わらず、第1のプリテンショナ16の作動しきい値を超えた場合でも、ウェビング11巻き取りの張力が低めに設定されているので、乗員に違和感を感じさせることが少ない。
【0084】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、第1の実施形態の図5で示したブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理を、図17のフローチャートに示す処理に変更したものであり、その他の構成については、第1の実施形態と同一である。なお、図1において、第1のコントローラ30には、ブレーキランプスイッチ(図示省略)の検出信号が入力される構成となっている。
【0085】
図17において、まず、ステップS91では、ブレーキランプスイッチがオンとされているかどうかが判断される。ブレーキランプスイッチがオンである場合には(ステップS91でYES)、ステップS92にて、ブレーキペダルストロークのゼロ点を設定する。
【0086】
次いで、ステップS93で、ブレーキペダルストロークのゼロ点補正を行う。また、ブレーキランプスイッチがオフの場合には(ステップS91でNO)、ブレーキペダルストロークのゼロ点を設定せずに、ステップS93で、ブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0087】
ここでの処理では、ブレーキランプスイッチがオンとなった点を、ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点として設定し、ブレーキペダルストロークを補正している。ブレーキを踏むときは、必ずブレーキランプスイッチがオンとなるので、このようにすることにより、ブレーキを踏むときには必ず、ゼロ点補正が実施されることになる。
【0088】
このようにして、第5の実施形態に係る車両用シートベルト装置では、ブレーキランプスィッチがオンとなった点をブレーキペダルストロークセンサのゼロ点として、ブレーキペダルストロークセンサの値を補正するようにしたので、ブレーキ操作が行われる場合には必ずゼロ点補正が行われ、ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点ずれによって、ブレーキペダルストロークセンサの値に基づいた、第1のプリテンショナの作動判断のばらつきがなくなる。
【0089】
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、第1の実施形態の図5で示したブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理を、図18のフローチャートに示す処理に変更したものであり、その他の構成については、第1の実施形態と同一である。なお、図1において、第1のコントローラ30には、アクセルペダルストロークセンサ(図示省略)の検出信号が入力される構成となっている。
【0090】
図18において、まず、ステップS101で、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以下であるかどうかが判断される。そして、所定値以下である場合には(ステップS101でYES)、ステップS102で、ブレーキペダルストロークが所定値以下であるかどうかが判断される。
【0091】
所定値以下である場合には(ステップS102でYES)、ステップS103で、この状態が所定時間以上経過したかどうかが判断され、所定時間以上経過した場合には(ステップS103でYES)、ステップS104で、アクセルペダルストロークの変化が所定値以上であるかどうかが判断される。アクセルペダルストロークが所定値以上である場合には(ステップS104でYES)、ステップS105で、このときのブレーキペダルストロークセンサ20の検出信号の値をブレーキペダルストロークのゼロ点とし、ステップS106で、ブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0092】
また、ブレーキペダルストロークの変化が所定値よりも大きい場合(ステップS101でNO)、ブレーキペダルストロークが所定値よりも大きい場合(ステップS102でNO)、所定時間が経過しない場合(ステップS103でNO)、及びアクセルペダルストロークが所定値よりも小さい場合(ステップS104でNO)には、現在ブレーキ操作中である可能性があるので、ステップS105のブレーキペダルストロークのゼロ点の設定を行わず、ステップS106で、ブレーキペダルストロークの補正処理を行う。
【0093】
ここでの処理では、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以内で、且つ、ブレーキペダルストロークが所定値以下の状態が、所定時間以上継続したときに、アクセルペダル操作が行われたら、そのときのブレーキペダルストロークセンサの値を、ブレーキペダルストロークのゼロ点として設定し、ゼロ点補正を行うようにしている。これにより、より確実に、ブレーキ操作をしていないことを判断して、ゼロ点設定を行うことができる。
【0094】
このようにして、第6の実施形態に係る車両用シートベルト装置では、アクセルペダル操作が検出されたときに、そのときのブレーキペダルストロークセンサの値を、ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点として、補正を行うようにしたので、ブレーキ操作が行われていないことを確実に判断することができる。
【0095】
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。第7の実施形態では、第1の実施形態の図5で示したブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理を、図19のフローチャートに示す処理に変更したものであり、その他の構成については、第1の実施形態と同一である。
【0096】
図19において、まず、ステップS111で、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以下であるかどうかが判断される。そして、所定値以下である場合には(ステップS111でYES)、ステップS112で、ブレーキペダルストロークが所定値以下であるかどうかが判断される。
【0097】
所定値以下である場合には(ステップS112でYES)、ステップS113で、この状態が所定時間以上経過したかどうかが判断され、所定時間以上経過した場合には(ステップS113でYES)、ステップS115で、このときのブレーキペダルストロークセンサ20の検出信号の値をブレーキペダルストロークのゼロ点として設定し、ステップS117で、ブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0098】
また、ブレーキペダルストロークの変化が所定値よりも大きい場合(ステップS111でNO)、ブレーキペダルストロークが所定値よりも大きい場合(ステップS112でNO)、及び所定時間が経過しない場合(ステップS113でNO)には、ステップS114で、ブレーキペダルストロークのゼロ点が未設定であるかどうかが判断される。
【0099】
未設定である場合には(ステップS114でYES)、ステップS116で、ブレーキペダルストロークのゼロ点を初期値に設定し、その後、ステップS117で、ブレーキペダルストロークの補正を行う。また、未設定でない場合には(ステップS114でNO)、ステップS115、S116のブレーキペダルストロークのゼロ点の設定を行わず、ステップS117で、ブレーキペダルストロークを補正する処理を行う。
【0100】
ここでの処理では、ブレーキペダルのゼロ点が設定されていない状態、即ち、ブレーキペダル操作をしていないと判断されるまでの間(ステップS113でYESとなるまでの間)は、ブレーキペダルのゼロ点の初期値として、ゼロ以外の値を用いるようにしている。
【0101】
ここで、初期値(ステップS116で用いる初期値)としては、図20に示すように、実際のブレーキペダルストロークに対する、ブレーキペダルストロークセンサ値のずれの幅の範囲内で、第1のプリテンショナ16の作動判断の感度がもっとも鈍くなる値のオフセット値を、ブレーキペダルストロークのゼロ点の初期値として用いる。
【0102】
つまり、図20(a)に示すように、ブレーキペダルストロークには、バラツキが存在するので、ブレーキペダルストロークから予測される減速Gは、しきい値を0.7とした場合、例えば0.6〜0.8の範囲でばらついてしまう。つまり、この範囲が予測される減速Gの、ずれの幅ということになる。
【0103】
本実施形態では、上述したように、第1のプリテンショナ16の作動判断の感度がもっとも鈍くなる値のオフセット値を、ブレーキペダルストロークのゼロ点の初期値として用いるので、0.6〜0.7の幅(即ち、0.1)をゼロ点オフセットの値として用いる。即ち、ブレーキペダルストロークから予測される減速Gは、0.1が加算されることにより、図20(b)に示す如く、0.7〜0.9の範囲となり、第1のプリテンショナ16を作動させる際の感度が鈍くなるように設定される。
【0104】
このようにして、第7の実施形態では、ゼロ点ずれを補正するまでの間においては、第1のプリテンショナ16を作動させる際の感度が鈍く設定されるので、作動頻度が増加せず、乗員に煩わしさを感じさせることがなくなる。
【0105】
即ち、ゼロ点補正が行われるまでの期間の、ブレーキペダルストロークセンサの値による、第1のプリテンショナの作動判断のしきい値の下限が、作動バラツキの許容幅内に入るので、ウェビング11巻き取りの頻度が増えることなく、乗員に煩わしさを与えることがない。
【0106】
次に、本発明の第8の実施形態を図21を参照しながら説明する。第8の実施形態は、前述した第7の実施形態において、ブレーキペダルのゼロ点の初期値として、シートベルト作動判断のしきい値に、許容幅が考慮された場合の例である。
【0107】
ここでは、実際のブレーキペダルストロークに対する、ブレ−キペダルストロークセンサ値のずれの幅の最大値と、第1のプリテンショナ16の作動判断の許容幅の差の分だけ、第1のプリテンショナ16の作動判断の感度が鈍くなるように、ブレーキペダルストロークのゼロ点の初期値を設定する。
【0108】
即ち、図21(a)に示すように、ブレーキペダルストロークから予測される減速Gの、バラツキの許容幅が例えば0.6〜0.8の範囲である場合には、これに加えて、第1のプリテンショナ16の作動判断の許容幅(ここでは、0.05としている)が存在するので、これらを加算した分がずれの最大幅となる。ここでは、ずれの最大幅は、0.55〜0.85となっている。
【0109】
そして、本実施形態では、この許容幅0.05をゼロ点オフセットの初期値として用いる。即ち、同図(b)に示すように、ずれの最大幅が設定されるので、第1のプリテンショナ16を作動させる際の感度が鈍くなるように設定される。
【0110】
これにより、ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点補正が行われない状態においても、ブレーキペダルストロークセンサのずれの下限が、第1のプリテンショナ16の作動判断の許容範囲内となり、ウェビング11による締め付けが頻繁に作動して、乗員に煩わしさを与えることがなくなる。
【0111】
即ち、第8の実施形態に係る車両用シートベルト装置では、ブレーキペダルストロークセンサ値の、考えられる誤差の範囲内の値で、ブレーキストロークによる判断の感度が最も鈍くなる誤差値と、ブレーキストロークによる判断の誤差の許容最小値との差を、ゼロ点の初期値として用いるので、ウェビング11巻き取りの頻度が増えることなく、乗員に煩わしさを与えることがない。更に、作動判断のしきい値の許容幅を考慮しているので、許容幅を考慮しない場合に比べて、ゼロ点補正が行われるまでの間の作動判断の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートベルト装置が搭載された車両の概略構成図である。
【図2】第1のコントローラとこれに付帯する機器の構成を示すブロック図である。
【図3】CPUでの処理を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明に係る各実施形態の、全体処理を示すフローチャートである。
【図5】第1の実施形態に係り、ブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係り、緊急制動判断処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】第1の実施形態に係り、緊急制動終了判断処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施形態に係り、出力デューティを算出する処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】第1の実施形態に係り、フェールセーフの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】ブレーキペダルに生じる組み付けバラツキを示す説明図である。
【図11】ブレーキペダルストロークの変化とセンサ出力との関係を示す特性図であり、ブレーキペダルストローク、或いはストロークセンサにバラツキが発生する場合を示す。
【図12】ブレーキペダルストロークのゼロ点ずれに起因するしきい値のずれを示す説明図である。
【図13】ブレーキペダルストロークのゼロ点ずれに起因するセンサ出力の誤差を示す説明図である。
【図14】第2の実施形態に係り、ブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】第3の実施形態に係り、フェールセーフの処理手順を示すフローチャートである。
【図16】第4の実施形態に係り、出力デューティを算出する処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】第5の実施形態に係り、ブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図18】第6の実施形態に係り、ブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図19】第7の実施形態に係り、ブレーキペダルストロークのゼロ点補正処理の手順を示すフローチャートである。
【図20】第7の実施形態に係り、ゼロ点ずれの補正方法を示す説明図である。
【図21】第8の実施形態に係り、ゼロ点ずれの補正方法を示す説明図である。
【符号の説明】
10 シートベルト装置
11 ウェビング
12 リトラクタ
13 タング
14 バックル
15 スルーリング
16 第1のプリテンショナ
16a 減速ギヤ機構
17 第2のプリテンショナ
20 ブレーキペダルストロークセンサ
21 車速センサ
22 フューズ
30 第1のコントローラ(制御手段)
31 CPU
31a ブレーキ操作判断部
31b 制動終了判断部
31c 緊急制動判断部
31d フェールセーフ部
31e 動作モード判定部
31f 出力電流及び通電時間算出部
31g 運転席作動判断部
31h 助手席作動判断部
31i ゼロ点補正部
32 電源回路
32a センサ電源回路
33 IGN入力回路
34 CAN・I/F
35 アナログI/F
36 駆動回路
37 リレー
38a,38b H-Bridge
52 衝撃センサ
53 第2のコントローラ
Claims (8)
- シートに着座した乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングを巻き取り、巻き戻しするリトラクタを備えた車両用シートベルト装置において、
前記ウェビングを前記リトラクタに所望する張力で巻き取り駆動する第1のプリテンショナと、
緊急時に前記ウェビングに張力を付与し、乗員を最終的に拘束する第2のプリテンショナと、
車両のブレーキ操作を検出するブレーキペダルストロークセンサと、
前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データに基づいて、急ブレーキが発生していると判断される場合に、前記第1のプリテンショナによるウェビング巻き取り時の張力を制御する制御手段と、を具備し、
前記第1のプリテンショナは、可逆的に動作する電動プリテンショナであり、
前記制御手段は、前記ブレーキペダルストロークセンサにてブレーキ操作が行われていないと判断されたときに、当該ブレーキペダルストロークのゼロ点位置を補正する手段を備え、
且つ、前記制御手段は、
イグニッションがオンとされた後、前記ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点位置を補正する処理が行われるまでは、前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データに基づく前記第1のプリテンショナの作動条件が成立した場合であっても、前記第1のプリテンショナを作動させないことを特徴とする車両用シートベルト装置。 - シートに着座した乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングを巻き取り、巻き戻しするリトラクタを備えた車両用シートベルト装置において、
前記ウェビングを前記リトラクタに所望する張力で巻き取り駆動する第1のプリテンショナと、
緊急時に前記ウェビングに張力を付与し、乗員を最終的に拘束する第2のプリテンショナと、
車両のブレーキ操作を検出するブレーキペダルストロークセンサと、
前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データに基づいて、急ブレーキが発生していると判断される場合に、前記第1のプリテンショナによるウェビング巻き取り時の張力を制御する制御手段と、を具備し、
前記第1のプリテンショナは、可逆的に動作する電動プリテンショナであり、
前記制御手段は、前記ブレーキペダルストロークセンサにてブレーキ操作が行われていないと判断されたときに、当該ブレーキペダルストロークのゼロ点位置を補正する手段を備え、
且つ、前記制御手段は、
前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データを用いた、前記第1のプリテンショナ作動条件が成立した場合で、イグニッションがオンとされた後、前記ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点補正を行うまでの間は、ゼロ点補正を行った後よりも、前記第1のプリテンショナが発生する張力を低い値に設定することを特徴とする車両用シートベルト装置。 - 前記ブレーキ操作が行われていないと判断する条件は、ブレーキペダルストロークの変化が所定値以下であり、且つ、ブレーキペダルストローク値が所定値以下となる状態が所定時間以上経過した場合であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の車両用シートベルト装置。
- シートに着座した乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングを巻き取り、巻き戻しするリトラクタを備えた車両用シートベルト装置において、
前記ウェビングを前記リトラクタに所望する張力で巻き取り駆動する第1のプリテンショナと、
緊急時に前記ウェビングに張力を付与し、乗員を最終的に拘束する第2のプリテンショナと、
車両のブレーキ操作を検出するブレーキペダルストロークセンサと、
前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データに基づいて、急ブレーキが発生していると判断される場合に、前記第1のプリテンショナによるウェビング巻き取り時の張力を制御する制御手段と、を具備し、
前記第1のプリテンショナは、可逆的に動作する電動プリテンショナであり、
前記制御手段は、前記ブレーキペダルストロークセンサにてブレーキ操作が行われていないと判断されたときに、当該ブレーキペダルストロークのゼロ点位置を補正する手段を備え、
且つ、前記制御手段は、
車両に搭載されるブレーキランプスイッチがオンとなった前記ブレーキペダルストローク位置を、ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点として、前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データを補正することを特徴とする車両用シートベルト装置。 - シートに着座した乗員を拘束するウェビングと、該ウェビングを巻き取り、巻き戻しするリトラクタを備えた車両用シートベルト装置において、
前記ウェビングを前記リトラクタに所望する張力で巻き取り駆動する第1のプリテンショナと、
緊急時に前記ウェビングに張力を付与し、乗員を最終的に拘束する第2のプリテンショナと、
車両のブレーキ操作を検出するブレーキペダルストロークセンサと、
前記ブレーキペダルストロークセンサの検出データに基づいて、急ブレーキが発生していると判断される場合に、前記第1のプリテンショナによるウェビング巻き取り時の張力を制御する制御手段と、を具備し、
前記第1のプリテンショナは、可逆的に動作する電動プリテンショナであり、
前記制御手段は、前記ブレーキペダルストロークセンサにてブレーキ操作が行われていないと判断されたときに、当該ブレーキペダルストロークのゼロ点位置を補正する手段を備え、
且つ、前記制御手段は、
車両に搭載されるアクセルペダル操作が検出された場合には、そのときのブレーキペダルストロークセンサの検出データをブレーキペダルストロークのゼロ点として、補正を行うことを特徴とする車両用シートベルト装置。 - 前記ゼロ点位置を補正する際の補正値は、ブレーキペダルストロークとブレーキペダルストロークのゼロ点との差分として求めることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の車両用シートベルト装置。
- ブレーキペダルストロークのゼロ点位置を補正する処理は、ゼロ点が未設定の場合にのみ行うことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の車両用シートベルト装置。
- ブレーキペダルストロークセンサのゼロ点位置を補正する処理は、同一イグニッションオン中には、1回のみ行うことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の車両用シートベルト装置。
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