JP4007142B2 - 電動機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電動機の制御装置に関し、例えば回転子に永久磁石を備えた三相同期電動機(Internal Permanent Magnet Motor:以下、IPMモータと記載)におけるセンサレス制御技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2002−171799号公報
電動機をインバータで駆動し、速度制御系として制御するためには、回転子の磁極位置(位相)を検出する必要がある。回転子の位置をセンサレスで検出する方法としては、例えば、上記特許文献1に記載されたものがある。上記文献においては、駆動電圧に加え空間電圧ベクトルの軌跡が真円となる高周波電圧を重畳し、軌跡が楕円となる高周波空間電流ベクトルを正相電流ベクトルと鏡相電流ベクトルに分離し、2つのベクトルの間の中間角度を算出することにより磁極位置を検出している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法においては次のごとき問題があった。すなわち、高負荷時には、インダクタンスが最も小さくなる位置(楕円の長軸)がd軸(磁極位置)とならず、駆動電流位相とともに移動する特性があるため、d軸を検出することができなくなる。また駆動電流によっては、楕円が真円となる場合もある。そのため、高負荷時にはセンサレス動作ができなくなるという問題があった。
【0004】
本発明は上記のごとき問題を解決するためになされたものであり、高負荷時でもセンサレス動作が可能な電動機の制御装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明においては、電動機を駆動する駆動電流に、該駆動電流よりも周波数の高い高周波電流を重畳し、その重畳した高周波電流を抽出し、該高周波電流の空間電流ベクトル軌跡と同方向に回転する同相電流ベクトルと逆方向に回転する鏡相電流ベクトルとの成す角の中間角に基づいて回転子の磁極位置を算出するように構成し、かつ、高負荷時の補正としては、重畳した高周波電流の空間電流ベクトル軌跡の長軸長さと短軸長さとの少なくとも一方に基づいた特徴量を検出し、特徴量目標値と検出された特徴量とを一致させるように制御するための補正角を算出し、電動機のトルクまたは駆動電流が所定値以上の高負荷時には、前記磁極位置検出手段で算出した磁極位置を前記補正角で補正した値を磁極位置とするように構成している。
【0006】
【発明の効果】
本発明においては、高負荷時以外では、空間電流ベクトル軌跡と同方向に回転する同相電流ベクトルと逆方向に回転する鏡相電流ベクトルとの成す角の中間角に基づいて回転子の磁極位置を算出し、高負荷時には特徴量に基づいた補正角で補正した値を磁極位置とすることにより、磁極位置センサ無し(いわゆるセンサレス制御)で、高負荷時でも低負荷時でも常に正確な磁極位置を用いてトルク制御を行うことが出来る。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施例の全体構成を示すブロック図である。
図1において、制御手段1(詳細後述)は、電流センサ4と電圧センサ6の信号を入力し、PWM(Pulse Width Modulation)指令7を算出してインバータ回路2へ送る。インバータ回路2は、電源部5の直流電力をPWM指令7に応じた三相電力に変換し、その電力でIPMモータ3(以下、モータ3と略記)を駆動する。電流センサ4はインバータ回路2からモータ3へ送られる三相電力のうちの二相(例えばU相とV相)の電流を検出する。また、電圧センサ6は電源部5の出力電圧(インバータ2の入力電圧)を検出する。上記電流センサ4と電圧センサ6の検出値は制御手段1へ送られ、PWM指令7の算出に用いられる。なお、三相電流は、U+V+W=0の関係があるので、何れかの二相を検出すれば演算で残りの一相の電流も求めることが出来る。
【0008】
図2は、図1の制御手段1の詳細を示す第1の実施例のブロック図である。
図2において、電流目標算出部8では、外部から与えられたトルク目標T*からテーブル参照により、下記(数1)式に示すように、dq軸電流目標値id *、iq *を算出する。上記のテーブルはあらかじめ実験的に取得しておく。なお、モータ3の回転速度を入力しない理由は、停止時や低速時におけるセンサレス制御では弱め磁束制御領域に入らないので、速度によりdq軸電流目標値が変らないためである。
【0009】
【数1】
ただし、T*:トルク目標[N・m]
id *、iq *:d軸/q軸電流目標値[A]
次に、dq軸電流制御部9は、後述するdq軸電流id、iqをdq軸電流目標値id *、iq *と一致させるように制御するためのdq軸電圧指令vd'*、vq'*を出力する。この演算は、例えば下記(数2)式に示すようなPI制御によって行う。
【0010】
【数2】
ただし、vd'*、vq'*:d軸/q軸電圧指令[V]
id *、iq *:d軸/q軸電流目標値[A]
id、iq:d軸/q軸電流[A]
s:ラプラス演算子
Kpd、Kpq:d軸/q軸比例ゲイン
Kid、Kiq:d軸/q軸積分ゲイン
なお、dq軸電流制御部9の次段に、必要に応じて非干渉制御部を設けてもよい。非干渉制御の例としては、下記(数3)式に示すごとき制御を行う。
【0011】
【数3】
ただし、vd *、vq *:d軸/q軸電圧指令[V](非干渉制御部の出力)
vd'*、vq'*:d軸/q軸電圧指令[V](dq軸電流制御部8の出力)
id、iq:d軸/q軸電流[A]
Ld、Lq:d軸/q軸インダクタンス[H]
Φ:誘起電圧定数[Wb]
ω:角速度(電気角)[rad/s]
次に、三相変換部10では、後述する磁極位置θ(位相)を用い、下記(数4)式に示すようにdq軸電圧指令vd *、vq *を三相電圧指令vu *、vv *、vw *に変換する。
【0012】
【数4】
ただし、vd *、vq *:d軸/q軸電圧指令[V]
vu *、vv *、vw *:三相電圧指令[V]
θ:磁極位置[rad]
上記の三相電圧指令vu *、vv *、vw *は加算器11によって後述する高周波電圧指令vuh *、vvh *、vwh *と加算された後、PWM信号に変換し、このPWM信号に従って、パワーモジュール12(図1のインバータ回路2に相当)で直流電圧をスイッチングすることにより、モータ3に三相交流電流を与えて駆動する。電流センサ4は上記三相の駆動電流iu、iv、iwを検出する。ただし、何れかの二相を検出すれば演算で残りの一相の電流も求めることが出来る。
上記の高周波電圧指令vuh *、vvh *、vwh *は、三相平衡(振幅が等しく、120[°]ずつ位相差をもつ状態、空間ベクトル上では真円の軌跡となる)で印加する。適切な振幅および周波数は、実験的に求める。
【0013】
次に、dq軸変換部13では、後述する磁極位置θを用いて、電流センサ4から得られる三相電流iu、iv、iwを、下記(数5)式に示すようにdq軸電流id、iqに変換し、前記dq軸電流制御部9へ送る。
【0014】
【数5】
ただし、id、iq:d軸/q軸電流[A]
iu、iv、iw:三相電流[A]
θ:磁極位置[rad]
次に、高周波回転座標変換部(正)14、高周波回転座標変換部(負)15では、下記(数6)式に示すように、三相電流iu、iv、iwを高周波の回転座標系に変換する。正は正の回転で、負は負の回転である。
【0015】
【数6】
ただし、ωh:高周波電圧指令角周波数[rad/s]
θh+:高周波回転座標位相(正)[rad]
θh−:高周波回転座標位相(負)[rad]
s:ラプラス演算子
iγ+,iδ+:高周波回転座標(正)電流[A]
iγ−,iδ−:高周波回転座標(負)電流[A]
iu,iv,iw:三相電流[A]
次に、ローパスフィルタ部16、17は、高周波回転座標変換部(正)14、高周波回転座標変換部(負)15より与えられる高周波回転座標電流iγ+,iδ+、iγ−,iδ−から、下記(数7)式に示すように、直流成分を抽出する。
【0016】
【数7】
ただし、iγ+,iδ+:高周波回転座標(正)電流[A]
iγ−,iδ−:高周波回転座標(負)電流[A]
iγdc+,iδdc+:高周波回転座標(正)直流電流[A]
iγdc−,iδdc−:高周波回転座標(負)直流電流[A]
G(s):ローパスフィルタ
s:ラプラス演算子
次に、高周波回転座標逆変換部(正)18、高周波回転座標逆変換部(負)19では、ローパスフィルタ部16、17から与えられる直流電流iγdc+,iδdc+、iγdc−,iδdc−を、下記(数8)式に示すように、二相の固定座標系(αβ軸)の正相電流iαi,iβiと鏡相電流iαm,iβmに変換する。
【0017】
【数8】
ただし、iγdc+,iδdc+:高周波回転座標(正)直流電流[A]
iγdc−,iδdc−:高周波回転座標(負)直流電流[A]
θh+:高周波回転座標位相(正)[rad]
θh−:高周波回転座標位相(負)[rad]
iαi,iβi:正相電流[A]
iαm,iβm:鏡相電流[A]
ここで、これまで求めた正相電流、鏡相電流から磁極位置θ(位相角)を求める方法の原理を説明する。
図3は、前記の高周波電圧指令の空間ベクトルの軌跡を示す図であり、(a)は高周波電圧の空間ベクトル(αβ軸上)の軌跡、(b)は高周波電圧のα軸成分vαとβ軸成分vβを示す。
図示のごとく、高周波電圧指令は、その空間ベクトル(αβ軸上)の軌跡が真円となるように印加する。つまり高周波電圧指令vuh *、vvh *、vwh *は、三相平衡(振幅が等しく、120[°]ずつ位相差をもつ状態)であり、vαとvβは、振幅が等しく、90[°]の位相差を持つ。vαが進んでいる場合は、ベクトルは反時計回りに回転している。
【0018】
図4は、上記の高周波電圧を与えた際における高周波電流を示す図であり、(a)は空間ベクトルの軌跡、(b)は高周波電流のα軸成分iαとβ軸成分iβを示す。
図示のごとく、高周波電流の空間ベクトルの軌跡は、モータのインダクタンス差により、楕円となる。IPMモータでは、磁石軸(d軸)のインダクタンスが小さくなるため、楕円の長軸方向はd軸と一致(実際には抵抗分で多少ずれる)する。
【0019】
図5は、高周波電流を正と負の高周波座標系に変換した結果を示す図であり、(a)は空間ベクトルの軌跡、(b)は高周波座標系電流を示す。
図6は、高周波座標系に変換した電流の平均値(ローパスフィルタ後の直流値)を逆変換した同相/鏡相電流を示す図である。
図5に示すごとく、高周波座標系に変換した電流は、それぞれ変動する波形となるが、その平均値(ローパスフィルタ後の直流値)を逆変換すると、図6(a)に示すように、軌跡が真円となる2つの電流が得られる。実線で示した正の周波数を持つ方(回転方向が反時計回り)が同相電流であり、破線で示した負の周波数を持つ方(回転方向が時計回り)が鏡相電流である。これらは図4に示した元の高周波電流を分解しただけであり、それぞれを加算すると、元の高周波電流となる。この回転方向が逆となる同相/鏡相電流ベクトルは、その方向が時間的に変化し、楕円の長軸で方向が一致する。つまり、2つの電流ベクトルの中間の角度は常に楕円の長軸(d軸)を指す。この楕円の長軸の角度(α軸からの角度)が磁極位置となる。
【0020】
図7は、同相電流、鏡相電流とdq軸、αβ軸との関係を示す図である。
図7において、大きな真円は同相電流ベクトルの軌跡、小さな真円は鏡相電流ベクトルの軌跡、楕円は高周波電流ベクトルの軌跡を示す。図示のように、高周波電流ベクトルは同相電流ベクトルと鏡相電流ベクトルの合成ベクトルである。
【0021】
再び図2に戻って、磁極位置検出部20では、上記の正相電流ベクトルと鏡相電流ベクトルの中間の角度として、磁極位置を検出する。
まず、下記(数9)式に示すように、正相電流ベクトルと鏡相電流ベクトルを単位ベクトル化し、加算したベクトルの角度を求める。
【0022】
【数9】
ただし、ii,im:正相/鏡相電流ベクトルの大きさ[A]
iαi,iβi:正相電流[A]
iαm,iβm:鏡相電流[A]
iαi',iβi':単位ベクトル化正相電流
iαm',iβm':単位ベクトル化鏡相電流
θ':磁極位置[rad]ただし±(π/2)範囲
ただし、上記のようにして求めた角度θ’は±(π/2)[rad]範囲でしか求まらないため、前回の演算値(磁極位置θ)との差が±(π/2)[rad]以上の場合は、π[rad]を加算して±π[°]範囲に拡張する。このようにして拡張した値を磁極位置θ[rad]とする。
なお、初期値は±(π/2)[rad]範囲とし、π[rad]ずれているか否かを、d軸強め電流(正の電流)による磁気飽和を用いたNS判定(回転子の磁極NSの位置判定)で確認する。このNS判定は、制御開始の初期に1度だけ行う。
【0023】
図8は、角度θ’から磁極位置θを算出する演算のフローチャートである。
図8において、まずステップS1では、演算が初回か否かを判別し、初回の場合には、ステップS2で、今回算出した角度θ’をそのまま磁極位置θとして出力する。
ステップS1で初回でなかった場合には、ステップS3で前回の演算における磁極位置θの値と今回の演算値θ’との差が±(π/2)以上か否かを判断する。
ステップS3で“NO”の場合は、ステップS2へ行き、今回算出した角度θ’をそのまま磁極位置θとして出力する。
ステップS3で“YES”の場合は、ステップS4で、今回算出した角度θ’にπを加算した値を磁極位置θとして出力する。
【0024】
次に、図9は、NS判定演算を示すフローチャートである。このフローは、前記図8のフローとは異なる制御周期で、初期値の確認のために1回のみ行なわれるフローである。
図9において、まず、ステップS5では、q軸電流目標値iq *を0、d軸電流目標値id *を負の値とし、ステップS6で、上記の状態における高周波回転座標(正)直流電流の二乗と高周波回転座標(負)直流電流の二乗の和の最大値Vmax1を求める。つまり、
Vmax1=(iγdc+ 2+iδdc+ 2+iγdc− 2+iδdc− 2)の最大値
次に、ステップS7では、q軸電流目標値iq *を0、d軸電流目標値id *を正の値とする。ただし、ステップS5とステップS7におけるd軸電流目標値id *の値は、正負は異なっても絶対値は等しい値とし、その値は実験的に適正値を求める。
【0025】
ステップS8では、上記の状態における高周波回転座標(正)直流電流の二乗と高周波回転座標(負)直流電流の二乗の和の最大値Vmax2を求める。
このステップはd軸強め電流(正の電流)を与えて磁気飽和させ、検出角度がπ[rad]だけずれているか否かを判定するために行う。
次に、ステップS9では、q軸電流目標値iq *とd軸電流目標値id *の値を共に0とする。そしてステップS10では、Vmax1がVmax2より大か否かを判断する。
ステップS10で“NO”の場合は、検出角度がずれていなかった場合なので、ステップS12で検出角度θ’をそのまま磁極位置θとして出力する。“YES”の場合は、回転子のN極とS極が逆位置、つまりπだけずれている場合なので、ステップS11で“θ’+π”を磁極位置θとして出力する。
【0026】
これまで説明した制御による磁極位置算出では、高負荷時には正確な磁極位置算出が出来なくなる。この理由は図10に示すように、高負荷時には楕円の長軸方向とd軸との角度が、駆動電流位相と相関をもつためである。一方、図11に示すように、高負荷時には、楕円の大きさも駆動電流の位相と相関をもつ。したがって、これを制御することにより駆動電流の位相を制御できることになる。
磁気飽和が起こるような高負荷域においては、楕円の長軸とd軸の差θeは図12に示すようになる。図12において、縦軸は長軸とd軸の差θe、横軸βは電流位相角(q軸からの位相角)であり、電流ia=√(id 2+iq 2)毎の特性を示している。電流値が小さい場合は、楕円の長軸とd軸は多少の誤差は有るものの、長軸がd軸を示すことに変わりはない(図12では100A〜400A程度の範囲)。しかし、電流値が大きい場合は、楕円の長軸は電流位相角に従って動き、d軸との相関はなくなって、電流位相角との相関が高くなる。このような状態では、位相検出はできない。そこで、高負荷域では、楕円電流から得られる他の特徴量を用いることにする。この特徴量としては、長軸の長さa、短軸の長さb、a+b、a−b、b÷a、a×b、a2+b2、√(a2+b2)、(a2+b2)÷(a×b)、√(a2+b2)÷(a+b)等を用いることが出来る。
【0027】
図13〜図17は、図12と同様な条件における各特徴量と電流位相βとの関係を示す図であり、図13は楕円電流の長軸の長さa、図14はa+b、図15は短軸の長さb、図16はb/a、図17はa×bの各特性を示す。
【0028】
上記の特徴量を求めるため、図2の特徴量演算部21では、ローパスフィルタ部16、17から与えられる直流電流iγdc+,iδdc+、iγdc−,iδdc−を入力し、下記(数10)式に例を示すように、長軸の長さaと短軸の長さbとの少なくとも一方に基づいた特徴量を算出する。
【0029】
【数10】
ただし、ft:特徴量
これらの特徴量を所定値(トルク目標T*に対応した特徴量目標値)に制御するため、特徴量制御部22を設けている。特徴量制御部22では、トルク目標T*からテーブル参照により下記(数11)式に示すような特徴量目標値を算出し、その値と実際の特徴量とを一致させるためPI制御等を行い、下記(数12)式に示すごとき補正角θcrを算出する。上記のテーブルは予め実験的に取得しておく。また、ゲインをトルク目標T*からテーブル参照で変化させると、安定性を増すことができる。
【0030】
【数11】
ただし、T*:トルク目標[N・m]
ft*:特徴量目標値
【0031】
【数12】
ただし、θcr:補正角[rad]
ft:特徴量
ft*:特徴量目標値
s:ラプラス演算子
Kpθ,Kiθ:比例/積分ゲイン
スイッチ部SW1は、駆動電流が所定値以上の高負荷時にはオンになり、磁極位置検出部20で算出した磁極位置(位相角)と上記補正角θcrとを加算器23で加算することによって補正した値を、高負荷時における磁極位置θとして出力する。なお、前記図13〜図17の特性から判るように、特徴量は電流位相βに応じて右下がりの特性を持っているため、実際の特徴量が特徴量目標値より大きい場合は、検出位相を進め(補正角θcrを+)、電流位相を進める効果を出す。同様に、特徴量目標値より小さい場合は、検出位相を遅らせ(補正角θcrを−)、電流位相を遅らす効果を出す。この際、制御ゲインは実験的に決定する。
上記の補正角θcrによる補正は、磁気飽和が生じる高負荷域においてのみ行う。つまり、スイッチ部SW1はIPMモータ3の駆動電流が予め定めた所定値以上の場合にオン、小さい場合にはオフとなる。
【0032】
なお、楕円電流の大きさから得られる特徴量としては、前記のように、長軸の長さa、短軸の長さb、a+b、√(a2+b2)等、種々考えられるが、b/a、√(a2+b2)÷(a+b)等の無単位(比率)の特徴量を用いることにより、正確な制御が可能となる。
また、b/aを採用する場合は、楕円電流が真円になることも防げるが、他の特徴量の場合は、楕円電流が真円にならないように、特徴量目標値を設定しなけれはならない。
また、図17のように、a×bの場合には、最大トルク時電流位相角は、30°〜50°程度であり、電流毎に傾きは異なるものの直線的であり制御しやすい。この特性はa+b、√(a2+b2)でも同様である。ただし、電動機により特性は異なるので、常に良好な特性となるとは限らない。なお、a×bの場合には、√ の演算が無いため、演算負荷を低減できるという利点も有る。
【0033】
上記のように第1の実施例においては、空間電流ベクトル軌跡の長軸長さと短軸長さとの少なくとも一方に基づいた特徴量をフィードバックして位相角を補正することにより、高負荷域でもセンサレスで位相角の検出が可能になる。
また、回転数変化による位相検出の遅れを吸収することが可能である。
また、特徴量として「a×b」を用いた場合は、「a+b」や「√(a2+b2)」と同様に、最大トルク発生電流位相角付近(約30°〜60°)での特性が良く、かつ、演算量が少なくて済む、という利点がある。
【0034】
次に、図18は、図1の制御手段1の詳細を示す第2の実施例のブロック図である。
この実施例は、高負荷域では磁極位置検出部20からの位相角を用いず、特徴量制御部22のみで、位相を検出する構成を示すものである。この場合、特徴量制御部22の出力は、補正角ではなく、磁極位置そのものとなる。
スイッチ部SW2は、高負荷域以外では、磁極位置検出部20側に接続され、磁極位置検出部20からの位相角を後続の回路へ送る。そして磁気飽和を生じる高負荷域では、特徴量制御部22側に切り替えられ、特徴量制御部22で算出した値を位相角θとして後続の回路へ送る。
【0035】
次に、図19は、図1の制御手段1の詳細を示す第3の実施例のブロック図である。
この実施例は、高周波電流の空間ベクトル軌跡が真円となるように制御し、その結果としての高周波電圧指令(空間ベクトル軌跡が楕円)を図2と同様に処理することにより磁極位置を算出するものである。
【0036】
図19において、まず、周波数分離部24では、ハイパスフィルタ等を用いて、電流センサ4より得られる三相電流iu、iv、iwから高周波電流iuh、ivh、iwhを抽出する。
次に、高周波電流制御部25では、上記高周波電流と高周波電流目標値と入力し、高周波空間電流ベクトル軌跡が真円(図20a参照)となるように、PI制御等を行って三相の高周波電圧指令を作成する。この高周波電圧指令は、前記のように加算器11によって三相電圧指令に加算される。
高周波電圧指令を空間ベクトル化すると、図20(b)に示すように、その軌跡は楕円となる。磁気飽和が生じない低負荷時には、楕円の長軸方向はq軸(インダクタンス最大の位置)を指しており、d軸検出はq軸位相から90°を差し引くことによって行うことが出来る。高負荷域における特徴量による補正は、前記第1の実施例と同様に、図20(b)の楕円の長軸の長さと短軸の長さの少なくとも一方に基づいた特徴量を所定の特徴量目標値に保つことにより、補正角θcrを算出し、それによって補正する。
【0037】
なお、図18に図19を組み合わせた構成、つまり、図18に図19の周波数分離部24、高周波電流制御部25を付加した構成も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の全体構成を示すブロック図。
【図2】図1の制御手段1の詳細を示す第1の実施例のブロック図。
【図3】高周波電圧指令の空間ベクトルの軌跡を示す図であり、(a)は高周波電圧の空間ベクトル(αβ軸上)の軌跡、(b)は高周波電圧のα軸成分vαとβ軸成分vβを示す。
【図4】高周波電圧を与えた際における高周波電流を示す図であり、(a)は空間ベクトルの軌跡、(b)は高周波電流のα軸成分iαとβ軸成分iβを示す。
【図5】高周波電流を正と負の高周波座標系に変換した結果を示す図であり、(a)は空間ベクトルの軌跡、(b)は高周波座標系電流を示す。
【図6】高周波座標系に変換した電流の平均値(ローパスフィルタ後の直流値)を逆変換した同相/鏡相電流を示す図。
【図7】同相電流、鏡相電流とdq軸、αβ軸との関係を示す図。
【図8】角度θ’から磁極位置θを算出する演算のフローチャート。
【図9】NS判定演算を示すフローチャート。
【図10】楕円の長軸方向とd軸との角度と、駆動電流位相との相関を示す図。
【図11】楕円の大きさと駆動電流の位相と相関を示す図。
【図12】楕円の長軸とd軸の差θeとの関係を示す図。
【図13】特徴量としての楕円電流の長軸の長さaと電流位相βとの関係を示す図。
【図14】特徴量としてのa+bと電流位相βとの関係を示す図。
【図15】特徴量としての短軸の長さbと電流位相βとの関係を示す図。
【図16】特徴量としてのb/aと電流位相βとの関係を示す図。
【図17】特徴量としてのa×bと電流位相βとの関係を示す図。
【図18】図1の制御手段1の詳細を示す第2の実施例のブロック図。
【図19】図1の制御手段1の詳細を示す第3の実施例のブロック図。
【図20】真円の電流ベクトル軌跡と楕円の電圧ベクトル軌跡とを示す図。
【符号の説明】
1…制御手段 2…インバータ回路
3…モータ 4…電流センサ
5…電源部 6…電圧センサ
7…PWM指令 8…電流目標算出部
9…dq軸電流制御部 10…三相変換部
11…加算器 12…パワーモジュール
13…dq軸変換部 14…高周波回転座標変換部(正)
15…高周波回転座標変換部(負) 16、17…ローパスフィルタ部
18…高周波回転座標逆変換部(正) 19…高周波回転座標逆変換部(負)
20…磁極位置検出部 21…特徴量演算部
22…特徴量制御部 23…加算器
24…周波数分離部 25…高周波電流制御部
SW1、SW2…スイッチ部
Claims (5)
- 直流電源に接続され、前記直流電源からの電力を交流に変換して出力し、この交流電力によって電動機を駆動するインバータ回路と、該インバータ回路をトルク目標値と電動機回転子の磁極位置とに基づいて制御する制御手段と、を備え、電動機回転子の磁極位置を検出するセンサを持たないで上記の制御を行う電動機の制御装置において、
前記電動機を駆動する駆動電流に、該駆動電流よりも周波数の高い高周波電流を重畳する手段と、
前記重畳した高周波電流を抽出し、該高周波電流の空間電流ベクトル軌跡と同方向に回転する同相電流ベクトルと逆方向に回転する鏡相電流ベクトルとの成す角の中間角に基づいて前記回転子の磁極位置を検出する磁極位置検出手段と、
前記重畳した高周波電流の空間電流ベクトル軌跡の長軸長さと短軸長さとの少なくとも一方に基づいた特徴量を検出する特徴量演算手段と、
外部から与えられるトルク目標に応じた特徴量目標値と、前記検出された特徴量とを一致させるように制御するための補正角を算出する手段と、
電動機のトルクまたは駆動電流が所定値以上の高負荷時には、前記磁極位置検出手段で検出した磁極位置を前記補正角で補正した値を磁極位置とし、前記高負荷時以外では前記磁極位置検出手段で検出した値を磁極位置とする手段と、
を備えた電動機の制御装置。 - 直流電源に接続され、前記直流電源からの電力を交流に変換して出力し、この交流電力によって電動機を駆動するインバータ回路と、該インバータ回路をトルク目標値と電動機回転子の磁極位置とに基づいて制御する制御手段と、を備え、電動機回転子の磁極位置を検出するセンサを持たないで上記の制御を行う電動機の制御装置において、
駆動電流から抽出した高周波電流と高周波電流目標値と入力し、高周波空間電流ベクトル軌跡が真円となるように、三相の高周波電圧指令を作成し、それを三相電圧指令に加算することにより、前記電動機を駆動する駆動電流に、該駆動電流よりも周波数の高い高周波電流を重畳する手段と、
前記高周波電圧指令を入力し、高周波電流の空間電流ベクトル軌跡と同方向に回転する同相電流ベクトルと逆方向に回転する鏡相電流ベクトルとの成す角の中間角に基づいて前記回転子の磁極位置を検出する磁極位置検出手段と、
前記重畳した高周波電流の空間電流ベクトル軌跡の長軸長さと短軸長さとの少なくとも一方に基づいた特徴量を検出する特徴量演算手段と、
外部から与えられるトルク目標に応じた特徴量目標値と、前記検出された特徴量とを一致させるように制御するための補正角を算出する手段と、
電動機のトルクまたは駆動電流が所定値以上の高負荷時には、前記磁極位置検出手段で検出した磁極位置を前記補正角で補正した値を磁極位置とし、前記高負荷時以外では前記磁極位置検出手段で検出した値を磁極位置とする手段と、
を備えた電動機の制御装置。 - 前記特徴量として、空間電流ベクトル軌跡の長軸長さaと短軸長さbとの積a×bを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
- 前記特徴量として、空間電流ベクトル軌跡の短軸長さbと長軸長さaとの比b/aを用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
- 前記特徴量として、空間電流ベクトル軌跡の長軸長さaと短軸長さbとを下記の式
√(a2+b2)÷(a+b)
に代入して得られる値を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動機の制御装置。
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